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明細書 :キレート機能を有する新規化合物、その製造方法及び用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-212240 (P2015-212240A)
公開日 平成27年11月26日(2015.11.26)
発明の名称または考案の名称 キレート機能を有する新規化合物、その製造方法及び用途
国際特許分類 C07D 257/02        (2006.01)
A61K   8/64        (2006.01)
A61Q   1/00        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P   3/12        (2006.01)
A23L   1/03        (2006.01)
FI C07D 257/02
A61K 8/64
A61Q 1/00
A61K 37/02
A61P 3/12
A23L 1/03
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2014-095406 (P2014-095406)
出願日 平成26年5月2日(2014.5.2)
発明者または考案者 【氏名】永井 宏史
【氏名】北谷 龍樹
出願人 【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100177714、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昌平
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
審査請求 未請求
テーマコード 4B035
4C083
4C084
Fターム 4B035LG14
4B035LK19
4C083AD411
4C083CC01
4C083EE01
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA16
4C084BA24
4C084CA51
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZC411
要約 【課題】天然物由来のキレート機能を有する新規化合物、該化合物の製造方法、及び、該化合物を活性成分とするキレート剤及び該キレート剤の飲食品、化粧品、医薬、及び洗剤への用途の提供。
【解決手段】刺胞動物の刺胞から分離取得したキレート機能を有するDDLL新規シクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体化合物Cnidarin4A、及び、DLLL立体異性体Cnidarin4B。更に、該化合物を活性成分とするキレート剤及び該キレート剤の飲食品、化粧品、医薬、及び洗剤への用途。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I)
【化1】
JP2015212240A_000007t.gif

(I)
で表わされるDDLL立体異性体シクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する新規化合物Cnidarin4A、又は、
式(II)
【化2】
JP2015212240A_000008t.gif

(II)
で表わされるDLLL立体異性体シクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する新規
化合物Cnidarin4B、又は、その製剤上許容される塩。
【請求項2】
刺胞動物の刺胞を水性溶媒で抽出処理し、該抽出物からCnidarin4A、又は、Cnidarin4Bを精製、分離取得することを特徴とする新規化合物Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの製造方法。
【請求項3】
刺胞動物が、アナサンゴモドキ又はカツオノエボシからなるヒドロ虫綱刺胞動物、ハブク ラゲ又はアンドクラゲからなる箱虫綱刺胞動物、ミズクラゲ、アカクラゲ、エチゼンクラゲ、又はイラモからなる鉢虫綱刺胞動物、或いは、ウンバチイソギンチャクからなる花虫綱刺胞動物であることを特徴とする請求項2に記載の新規化合物Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの製造方法。
【請求項4】
Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの精製、分離取得が、水性溶媒で抽出処理物からのHPLC-逆相クロマトグラフィーを用いた精製、分離取得であることを特徴とする請求項2又は3に記載の新規化合物Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物Cnidarin4A、又は、式(II)で表される化合物Cnidarin4B、又はその製剤上許容される塩を活性成分とする、キレート剤。
【請求項6】
キレート剤が、飲食品用、化粧品用、医薬用又は洗剤用であることを特徴とする請求項5に記載のキレート剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、刺胞動物の刺胞から抽出、分離されるキレート機能を有する新規シクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体(stereoisomer)化合物、該化合物の製造方法、及び、該化合物をキレート活性成分とするキレート剤及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
刺胞動物(Cnidarian)は、刺胞動物門に属する動物の総称であり、大部分が海産で、クラゲや、イソギンチャク、ウミトカサ、ウミエラ、サンゴなどが属する。刺胞動物は、「刺胞」と呼ばれる、毒液を注入する針(刺糸)を備えた細胞内小器官をもち、基本的に肉食性であり、触手に接触した動物を刺胞の毒で麻痺させたり、刺胞から出る粘着性の刺糸でからめとって、摂食している。従来より、刺胞動物については、該刺胞動物が分泌する毒素等についての研究報告や、該刺胞動物から採取した生理活性物質についての報告がなされている。
【0003】
例えば、非特許文献1(Pharm. Biol., Vol.45 No.1, P.37-43, 2007.)には、カリブ海由来の刺胞動物から抽出した抽出物の毒性試験について、非特許文献2(Comp. Biochem. Physiol. A, Vol.151, No.1,P144-149, 2008.)には、刺胞動物ハチクラゲ(Pelagia noctiluca)から、ポリエチレングリコールで分離された毒素の溶血活性毒性試験について、非特許文献3(「日本化学会講演予稿集」、Vol.90,No.4,P1080,2010.)には、ウミトサカ(Dendronephthya sp.)からのメタノールによる抽出により炎症惹起作用を有する成分であるトリプタミンを単離したことについて、及び、非特許文献4(FEBS J., Vol.277, No.12,P2641-2653, 2010.)には、イソギンチャク(Urtina crassicornis)から単離した新規ホスホリパーゼA2の同定と、コブラ科神経毒のPLA2Sとの類似性について、報告されている。
【0004】
また、刺胞動物から抽出した活性抽出物として、非特許文献5(「日本薬学会年会要旨集」Vol.,117,No.2,P125,1997.)には、刺胞動物イシワケイソギンチャクに含有される新規アセタールリン脂質について、非特許文献6(Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Bio. , Vol. 122B No.4, P.397-407,1999.)には、刺胞動物イソギンチャクの極性溶媒で抽出された、細胞接着予防作用を有する多糖を有するポリペプチドについて、非特許文献7(Helv. Chim. Acta, Vol. 89, No. 4, P.813-820,2006.)には、刺胞動物ヤギ目群体動物Muricella flexuosa 及びMenella verrucosa Brundinから得られた3種類の新規ポリ酸素化ステロイドの単離について、非特許文献8(Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Bio. , Vol. 148 No.1, P.65-73,2007.)には、刺胞動物ヤギ目サンゴLeptogorgia virgulataから単離した、抗微生物活性成分、先天性免疫反応の活性成分であるホマリン及びホマリン類似体について、非特許文献9(「月刊海洋」、Vol. 41, No. 5, P.275-283, 2009.)には、クラゲから抽出されるクニウムチンのようなムチンについて、非特許文献10(Steroids, Vol., 76, No.5,P.425-454,2011.)には、刺胞動物由来のステロイド系配糖体について、報告されている。
【0005】
更に、特許文献1(特開平10-298007号公報)には、ヨロイイソギンチャク等の刺胞動物から抽出分離した、水生生物付着防止作用を有するカルボニルアンヒドラーゼについて、特許文献2(特開2008-266204号公報)には、刺胞動物スナギンチャクに共生するAspergillus funmigatusから単離した、骨粗鬆症モデルマウスの骨強度及び骨重量を増加する作用を持つ、ノルゾアンタミンについて、特許文献3(特開2012-105589号公報)、特許文献4(特開2014-60947号公報)には、刺胞動物ウミサボテン科生物由来の蛍光蛋白質について、及び、特許文献5(特表2010-540431号公報)には、刺胞動物イソギンチャクの極性溶媒で抽出された、細胞接着予防作用を有する多糖を有するポリペプチドについて、開示されている。
【0006】
上記のとおり、刺胞動物については、従来より、該刺胞動物から分離された各種化合物成分についての研究報告や、該刺胞動物から採取した生理活性物質についての報告がなされている。しかしながら、今までに、刺胞動物から、シクロポリグルタミン酸のような成分を分離した報告はなされておらず、又、該刺胞動物から、キレート活性を有する化合物成分を単離した報告もない。
【0007】
一方で、化合物シクロポリグルタミン酸に関する報告としては、バクテリアのポリグルタミン酸の構造の研究のために、異なるシリーズのγ-オリゴグルタミン酸及びそのエステルを合成し、調査する過程において、シクロ-γ-オリゴグルタミン酸を合成したことが報告されている(非特許文献11:Acta. Chim. (Budapest),73(2),PP. 247-254,1972.)。該報告には、シクロ-γ-テトラグルタミン酸についての報告がなされているが、該合成されたシクロ-γ-テトラグルタミン酸は、すべてL体の立体異性体(stereoisomer)であり、また、該報告には、該化合物のキレート活性のような活性についての報告は何もなされていない。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平10-298007号公報。
【特許文献2】特開2008-266204号公報。
【特許文献3】特開2012-105589号公報。
【特許文献4】特開2014-60947号公報。
【特許文献5】特表2010-540431号公報。
【0009】

【非特許文献1】Pharm. Biol., Vol.45 No.1, P.37-43, 2007.
【非特許文献2】Comp. Biochem. Physiol. A, Vol.151, No.1,P144-149, 2008.
【非特許文献3】「日本化学会講演予稿集」、Vol.90,No.4,P1080,2010.
【非特許文献4】FEBS J., Vol.277, No.12,P2641-2653, 2010.
【非特許文献5】「日本薬学会年会要旨集」Vol.,117,No.2,P125,1997.
【非特許文献6】Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Bio. , Vol. 122B No.4, P.397-407,1999.
【非特許文献7】Helv. Chim. Acta, Vol. 89, No. 4, P.813-820,2006.
【非特許文献8】Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Bio. , Vol. 148 No.1, P.65-73,2007.
【非特許文献9】「月刊海洋」、Vol. 41, No. 5, P.275-283, 2009.
【非特許文献10】Steroids, Vol., 76, No.5,P.425-454,2011.
【非特許文献11】Acta. Chim. (Budapest),73(2),PP. 247-254,1972.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、天然物由来のキレート機能を有する新規化合物、該化合物の製造方法、及び、該化合物を活性成分とするキレート剤及び該キレート剤の飲食品、化粧品、医薬、及び洗剤への用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、刺胞動物が分泌する或いは刺胞動物から抽出される種々の活性成分について、検討する中で、刺胞動物の刺胞から、キレート機能を有する新規シクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体(stereoisomer)化合物を分離取得することに成功し、本発明をなすに至った。
【0012】
本発明で、刺胞動物の刺胞から分離取得したキレート機能を有する新規シクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体(stereoisomer)化合物は、次の式(I)で表わされるDDLL立体異性体シクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する新規化合物Cnidarin4A、次の式(II)で表わされるDLLL立体異性体シクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する新規化合物Cnidarin4Bからなる。
【0013】
式(I)
【化1】
JP2015212240A_000002t.gif

(I)
【0014】
式(II)
【化2】
JP2015212240A_000003t.gif

(II)
【0015】
本発明で、刺胞動物の刺胞から分離取得した新規シクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体(stereoisomer)化合物は、キレート活性を有し、キレート剤として、飲食品、飲食品、化粧品、医薬、及び洗剤への利用が可能であり、該化合物は、γ-グルタミン酸4つの環状結合化合物であるので、毒性がなく、特に、飲食品用のキレート剤として有用である。
【0016】
すなわち、本発明は具体的には以下の発明よりなる。
[1]前記式(I)で表わされるDDLL立体異性体シクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する新規化合物Cnidarin4A、又は、前記式(II)で表わされるDLLL立体異性体シクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する新規化合物Cnidarin4B、又は、その製剤上許容される塩。
[2]刺胞動物の刺胞を水性溶媒で抽出処理し、該抽出物からCnidarin4A、又は、Cnidarin4Bを精製、分離取得することを特徴とする新規化合物Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの製造方法。
[3]上記[2]に記載の刺胞動物が、アナサンゴモドキ又はカツオノエボシからなるヒドロ虫綱刺胞動物、ハブクラゲ又はアンドクラゲからなる箱虫綱刺胞動物、ミズクラゲ、アカクラゲ、エチゼンクラゲ、又はイラモからなる鉢虫綱刺胞動物、或いは、ウンバチイソギンチャクからなる花虫綱刺胞動物であることを特徴とする上記[2]に記載の新規化合物Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの製造方法。
[4]Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの精製、分離取得が、水性溶媒で抽出処理物からのHPLC-逆相クロマトグラフィーを用いた精製、分離取得であることを特徴とする上記[2]又は[3]に記載の新規化合物Cnidarin4A、又は、Cnidarin4Bの製造方法。
[5]上記[1]記載の式(I)で表される化合物Cnidarin4A、又は、式(II)で表される化合物Cnidarin4B、又はその製剤上許容される塩を活性成分とする、キレート剤。
[6]キレート剤が、飲食品用、化粧品用、医薬用又は洗剤用であることを特徴とする上記[5]に記載のキレート剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、天然物由来のキレート機能を有する新規化合物、該化合物の製造方法、及び、該化合物を活性成分とするキレート剤及び該キレート剤の飲食品、化粧品、医薬、及び洗剤への用途を提供する。本発明のキレート剤の活性成分であるシクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体(stereoisomer)化合物は、γ-グルタミン酸4つの環状結合化合物であり、毒性がなく、飲食品用等の用途において、安全に使用することができるキレート剤として、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施例の化合物Cnidarinsの精製、単離において、化合物単離用抽出物の調製のフローを示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例において、精製、単離した化合物の同定における、HPLC逆相クロマトグラフィー(RPLC)によるクロマトグラムを示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施例において、精製、単離した化合物の同定における、ESI-TOFMS(ElectroSpray Ionization-Time-of-Flight mass spectrometer)マススペクトル(MS)による、化合物Cnidarin4A、4Bのスペクトルを示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施例において、精製、単離した化合物の同定における、Hを測定対象とする核磁気共鳴(HNMR)のCnidarin4BのHNMRスペクトル(in CDOD400MHz)を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例において、精製、単離した化合物の同定における、Hを測定対象とする核磁気共鳴(HNMR)のCnidarin4AのHNMRスペクトル(in CDOD400MHz)を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施例の精製、単離した化合物の同定における、立体配置の確認試験において、本発明化合物Cnidarin4AとDDLL合成品の比旋光度の測定結果を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施例の精製、単離した化合物の同定における、立体配置の確認試験において、本発明化合物Cnidarin4BとLDDD、DLLL合成品の比旋光度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の新規化合物Cnidarin4Aは、前記式(I)で表される構造を有し、DDLL立体配置のシクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する。また、本発明の新規化合物Cnidarin4Bは、前記式(II)で表わされる構造を有し、DLLL立体配置のシクロテトラ-γ-グルタミン酸構造を有する。化合物Cnidarin4A、及び、化合物Cnidarin4Bは、シクロテトラ-γ-グルタミン酸の立体異性体(stereoisomer)である。化合物Cnidarin4A及び化合物Cnidarin4Bの物理化学的性状を表1に示す。本発明の化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)にやや難溶、クロロホルム、酢酸エチルに難溶である。エタノール、メタノール及び水に可溶である。

【0020】
【表1】
JP2015212240A_000004t.gif

【0021】
本発明の化合物Cnidarins4A、及び、化合物Cnidarins4Bにおいて、該化合物の「製剤上許容される塩」としては、該化合物をキレート剤として製剤化するに際して、該製剤化に許容される塩、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などの無機酸、或いは酢酸、プロピオン酸、酪酸、リンゴ酸などの有機酸との塩が挙げられる。

【0022】
本発明の化合物は、刺胞動物の刺胞から、溶媒抽出、クロマトグラフィーによる精製により、分離取得することができる。本発明の化合物の分離源となる刺胞動物としては、アナサンゴモドキ又はカツオノエボシからなるヒドロ虫綱刺胞動物、ハブクラゲ又はアンドクラゲからなる箱虫綱刺胞動物、ミズクラゲ、アカクラゲ、エチゼンクラゲ、又はイラモからなる鉢虫綱刺胞動物、或いは、ウンバチイソギンチャクからなる花虫綱刺胞動物を挙げることができる。本発明の化合物(Cnidarin4A、4B)は、刺胞動物の刺胞内に特異的に存在する。海洋生物について行ったCnidarinsの存在についての検出試験の結果を、表2に示す。

【0023】
【表2】
JP2015212240A_000005t.gif

【0024】
本発明の化合物を刺胞動物から分離及び精製するには、その性状を利用した通常の分離手段、例えば溶剤抽出法、吸着剤を用いた吸脱着法、各種樹脂を用いたクロマトグラフ法を適宜組み合わせて用い、行うことができる。具体的には、分離源となる刺胞動物から、刺胞のある触手を採取し、該触手をエタノールのような溶媒を用いて溶媒抽出し、精製して、溶媒抽出物を作製する。該抽出物から、本発明の化合物を単離するには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の逆相クロマトグラフィ-(RPLC)を用いることができる。該化合物について、本発明の立体異性体化合物を検出するには、ESI-TOFMS(ElectroSpray Ionization-Time-of-Flight mass spectrometer)のような質量分析、HNMRのような核磁気共鳴分析(NMR)により行うことができる。

【0025】
本発明のシクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体(stereoisomer)化合物は、キレート活性を有し、キレート剤として、飲食品、飲食品、化粧品、医薬、及び洗剤への利用が可能である。特に、該化合物は、γ-グルタミン酸4つの環状結合化合物であるので、毒性がなく、特に、飲食品用のキレート剤として有用である。

【0026】
該キレート剤の利用に際しては、該化合物のキレート機能を利用して、有害金属イオン等の除去や、或いは、該化合物のキレート機能を利用して、有用金属等の保持により、該有用金属等の利用を図ることができる。例えば、飲食品等への利用においては、飲食品等の製造に利用し、飲食品の混濁や、腐敗の原因となる金属イオン等の除去に利用することができ、また、食品組成物として、菓子類、インスタントラーメン等の加工食品等に含有させ、金属イオンに起因する油脂の酸化作用の防止・抑制、金属イオンに起因する色素類の変色の防止・抑制に安定剤などとして使用することができる。他方、予め、キレート剤に、カルシウムイオンや亜鉛イオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等の有用金属イオンを配位させた複合体を作成し、これを健康食品などの特定保健食品などに含有させ、金属のサプリメントとして使用することもできる。

【0027】
該キレート剤の医薬への利用においては、医薬製剤製造における、有害金属イオン等の除去や、有用金属イオン等の保持、利用に用いることができるほか、例えば、原発性ヘモクロマトーシス、続発性ヘモクロマトーシス、慢性又は急性の鉄過剰症に代表される金属過剰症、等の予防又は治療用薬;解毒剤、生体内からの金属(イオン)除去剤等、直接的な医薬成分としての利用を行うことができる。

【0028】
該キレート剤の化粧品への利用においては、例えば、化粧料組成物に於いては、その任意成分として、ワセリンやマイクロクリスタリンワックス等のような炭化水素類、ホホバ油やゲイロウ等のエステル類、牛脂、オリーブ油等のトリグリセライド類、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリンや1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、エタノール、カーボポール等の増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、粉体類等が挙げられる。該化粧料組成物においては、本発明のキレート剤は、金属イオンに起因する油脂の酸化作用の防止・抑制、金属イオンに起因する色素類の変色の防止・抑制、金属イオンに起因する塩基交換による石鹸の不溶化や界面活性能の低下の防止・抑制等の作用物質として、利用することができる。

【0029】
その他、本発明のキレート剤は、例えば、洗浄剤、安定剤、硬水の軟化剤、金属又はイオンのマスキング剤、キレート滴定用試薬、比色分析用試薬、金属指示薬、金属イオン緩衝剤、沈澱剤又は抽出剤(金属塩の分離、精製用試薬)、重量分析用試薬、比色試薬、等の用途に用いることができる。すなわち、本発明のキレート剤は、飲食品用、化粧品用、医薬用又は洗剤用以外の広い分野において、毒性のない、安全なキレート剤として、多用途に利用することができる。

【0030】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
[化合物Cnidarinsの精製、単離]
予備実験でハブクラゲの触手組織抽出液と刺胞内液をLC-MSに供した結果トータルイオンクロマトグラム(TIC)上で1.5min付近で違いが見られる箇所があった(Column;Hypersil BDS C18,Φ2.1*50mm.Mobile phase; A DW, B 95%MeCN,(50mM HCOOH 2mM HCOONH4),Flow rate;0.2 mL/min,Grad.0-5min.10-95% phase B.Ion mode ESI(-)(+) )。1.5min付近の構成イオンを積算したマススペクトルでは分子量516の化合物が顕著に観察された。この結果より、刺胞内には触手と比べて分子量516の化合物が存在することが示された。また、LC-MS/MSを行ったところ、そのフラグメントパターンから4つのγ-グルタミン酸からなるペプチドであることが観測された(Column;Hypersil BDS C18,Φ2.1*50mm.Mobile phase; A DW, B 95%MeCN,(50mM HCOOH 2mM HCOONH4),Flow rate;0.2 mL/min,Isocratic.5% phase B,Ionmode ESI(+),Collision Energy 30)。該予備実験に基いて、供試刺胞動物として、ハブクラゲ(刺胞動物門、箱虫綱、ネッタイアンドンクラゲ目、ハブクラゲ属ハブクラゲChironex yamaguchii.)を用いた。以下の方法に従って、本発明の化合物Cnidarinsの精製、単離を行った。
【実施例1】
【0032】
<化合物単離用抽出物の調製>
化合物単離用抽出物の調製を、図1のフローにしたがって行った。ハブクラゲは、沖縄県浦添市西州の岸壁で採取したものから、触手を採取し、化合物単離用抽出物の採取源とした。該ハブクラゲ触手をエタノール(EtOH)で抽出し、該抽出残渣に、蒸留水を加えて再び抽出したものを用意した(ハブクラゲ水抽出物)。該ハブクラゲ水抽出物は、ろ紙によるろ過、及び、ODSカラム(Octa Decyl Silyl基表面修飾多孔性球状シリカゲルカラム)による処理を行った。該ハブクラゲ水抽出物を、ロータリーエバポレーターで、溶媒を除去し、メタノール(MeOH)に溶解するもののみを取り出し、12,000rpm(15,000g)の条件で遠心分離し、上清のみを取り出し、再度、ロータリーエバポレーターに供し、MeOHを飛ばした。そこに、蒸留水を加え、再び、遠心したものの上清を、ハブクラゲ水抽物とした。
【実施例1】
【0033】
<化合物の単離>
ハブクラゲ水抽物から、本発明の化合物を単離するために、HPLC逆相クロマトグラフィー(RPLC)による分離を行った。該逆相クロマトグラフィーの溶出条件は、以下のとおり:
カラム(Column):Develosil C30,Φ10*250mm,
流速(Flow rate):2mL/min、
溶媒(Mobile phase):A液:蒸留水(DW)(50mM HCOOH 2mM HCOONH4);B液: 95%アセトニトリル(MeCN)(50mM HCOOH 2mM HCOONH4)、
グラジエント(Grad.):0-45min,0%phaseB, 45-65min,0-5%phaseB,65-130min,5%phaseB,
サンプル:ハブクラゲ水抽物、
検出器:HPLC検出器として、PDA(フォットダイオードアレイPhot Diode Array検出器を用いた。
【実施例1】
【0034】
<化合物の同定(I)>
各分析によるスペクトルを以下に示す:
【実施例1】
【0035】
(1)HPLC逆相クロマトグラフィー(RPLC):
HPLC逆相クロマトグラフィー(RPLC)によるクロマトグラムを、図2に示す。
【実施例1】
【0036】
(2)ESI-TOFMS(ElectroSpray Ionization-Time-of-Flight mass spectrometer)マススペクトル(MS):
表記マススペクトル(MS)による、化合物Cnidarin4A、4Bのスペクトルを、図3に示す。
【実施例1】
【0037】
(3)Hを測定対象とする核磁気共鳴(HNMR)のCnidarin4BのHNMRスペクトル(in CDOD400MHz)を、図4に示す。
【実施例1】
【0038】
(4)Hを測定対象とする核磁気共鳴(HNMR)のCnidarin4AのHNMRスペクトル(in CDOD400MHz)を、図5に示す。
【実施例1】
【0039】
<化合物の同定(II)>
本発明の化合物Cnidarin4A、及び、4Bの立体配置(stereoisomer構造)を確認するために、DDLL、LDDD、及び、DLLL立体配置の合成品を作製し、比旋光度を用いて、比較試験を行った。
【実施例1】
【0040】
(1)Cnidarin4Aの立体配置
Cnidarin4Aと、DDLL合成品の比旋光度の測定結果を、図6に示す。比旋光度の測定結果から、Cnidarin4Aは、DDLLの立体配置をとることが確認された。
【実施例1】
【0041】
(2)Cnidarin4Bの立体配置
Cnidarin4Bと、LDDD、DLLL合成品の比旋光度の測定結果を、図7に示す。比旋光度の測定結果から、Cnidarin4Bは、DLLLの立体配置をとることが確認された。
【実施例2】
【0042】
[化合物Cnidarinsのキレート活性]
分離したCnidarin4A、及び、4Bのキレート活性について試験した。
【実施例2】
【0043】
<試験方法>
容積が100マイクロリットルのシリンジにおいて、外筒がガラス製で、内筒が鉄性のものを用意し、該シリンジを用い、試料を吸引し、試料のキレート活性によって溶液の色がシリンジ内で変色(薄ピンク色に変色)するか否かを試験した。試験試料として、本化合物(Cnidarin4A、4B、及び4C)2mg/ml濃度のもの(無色)を用い、対照試料として蒸留水(無色)を用いた。
【実施例2】
【0044】
<結果>
結果を、表3に示す。本化合物(Cnidarin4A、及び、4B)は、いずれも薄ピンク色に変色し、該化合物がキレート活性を有することが確認された。
【実施例2】
【0045】
【表3】
JP2015212240A_000006t.gif

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、天然物由来のキレート機能を有する新規化合物、該化合物の製造方法、及び、該化合物を活性成分とするキレート剤及び該キレート剤の飲食品、化粧品、医薬、及び洗剤への用途を提供する。本発明のキレート剤の活性成分であるシクロテトラ-γ-グルタミン酸立体異性体(stereoisomer)化合物は、γ-グルタミン酸4つの環状結合化合物であり、毒性がなく、飲食品用等の用途において、安全に使用することができるキレート剤を提供する。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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