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明細書 :ゲーミフィケーションと社会心理学に基づくオンラインアンケート調査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-001410 (P2016-001410A)
公開日 平成28年1月7日(2016.1.7)
発明の名称または考案の名称 ゲーミフィケーションと社会心理学に基づくオンラインアンケート調査方法
国際特許分類 G06Q  50/10        (2012.01)
G06Q  30/02        (2012.01)
FI G06Q 50/10 180
G06Q 30/02 140
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 5
出願番号 特願2014-121034 (P2014-121034)
出願日 平成26年6月12日(2014.6.12)
発明者または考案者 【氏名】水本 正晴
出願人 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100154966、【弁理士】、【氏名又は名称】海野 徹
審査請求 未請求
テーマコード 5L049
Fターム 5L049BB07
5L049CC20
要約 【課題】ゲーミフィケーションの手法により、回答者の興味を維持しつつ自発的に調査に協力してもらう手法を提供する。
【解決手段】回答者が点数を競うゲームとして楽しめる点数の配分方法、および自己診断ゲームとして楽しめる情報の開示方法を備える。
【効果】たとえ報酬がない場合でも、興味を維持しつつ自発的に誠実な態度でアンケート調査に協力してもらうことができる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
社会心理学の認知バイアスを利用したゲーミフィケーションの手法により、回答者の興味を維持しつつ自発的に誠実な態度でアンケート調査に協力してもらうオンライン上のアンケート方法。
【請求項2】
認知バイアス・偽の合意効果(False-consensus effect)を利用した、請求項1に記載のオンライン上のアンケート方法。
【請求項3】
金銭やポイントなどの報酬による動機づけと純粋な自己診断に対する興味、あるいはゲーム上の得点を競う楽しみを組み合わせることにより、不特定多数の回答者をオンライン上で集め、安価で正確なアンケート調査を実現する方法。
【請求項4】
たとえ報酬がない場合でも、回答者が点数を競うゲームとしてアンケートを楽しむための点数の配分方法。
【請求項5】
たとえ報酬がない場合でも、回答者が自己診断ゲームとしてアンケートを楽しむための情報の開示方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オンライン上での安価で正確なアンケート調査を実現する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカではAmazon がMechanical Turk というサイトを運営し、ワーカーと呼ばれる多数の参加者が質問に答えることで報酬を受け取るシステムが確立されている。それにより、企業のマーケティングだけでなく、研究者も一定の金額を支払うことで安価に一般の人々に対し心理学、言語学、社会学、哲学、といった様々な学術研究調査をオンライン上で行えるようになっている。
それに対し、日本のウェブサイト上でも安価にアンケートを行うサービスはあるものの、(以下に触れるように)その信用性は低く、調査目的で一般的に利用されているとは言い難い。
そのためにはアンケート参加者の興味を引きつける工夫によってアンケートの信頼性を増す工夫が考えられるが、そのような工夫の例としては、エヌイーシーシステムテクノロジー株式会社による以下の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2002-149942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献の基本的なアイデアは、回答者が他の回答者の回答全体の中の自分の位置を知ることができる、という点で回答者の興味を引き出して正直な感想を引き出す、というものである(その他はそれを実現するネットワークについての技術的な提案となっている)。この手法の問題は、1)一定数の回答が集まらなければ自分の回答の位置づけを知ることができない、ということであり、2)オンライン上ではなく主催者がアンケート調査場を提供し、回答者を直接会場に招待することを前提としたものであること、さらに3)美術作品などの評価を主に想定しており、最初から興味を持つ回答者であればよいが、特に興味をもとから持たない回答者に対しては効果が小さくなる、という点が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、ゲーミフィケーションの手法により、回答者の興味を維持しつつ自発的に調査に協力してもらう手法を提案する。オンラインでの学術調査は主に様々な質問と回答の選択肢から成るが、回答者に報酬を支払うものであれば、報酬に限りがあり参加者が限られるため多くの他の参加者が回答できない。そこで、報酬による一定の参加者の回答を得た後も調査を続け、それ以降の回答者には、それぞれの回答の後、「自分の回答は多数派か、少数派か」あるいは「自分の回答は全体の中でどのくらいの位置にあると思うか」といった質問に答えてもらう。そのとき、(例えば2者択一の場合)回答Aと回答Bの割合の差が10%以内であれば、正答に10点、誤答に-1点、逆に一方が90%を超えているような場合、正答に1点、誤答に-10点、というように重みづけをした点数を加算するようにする。これにより、たとえ報酬が提供できない場合でも、回答者は答えの偏った「常識的」と思える質問についても、直観的に難しい微妙な質問についても、どちらの場合も点数のスリルを味わいながら楽しく回答することができるようになる。
また、記述形式の調査はこのようなゲームを設定することは難しいが、本発明は、ゲームの参加者に「ゲームを楽しみながらポイント(お金)を稼げる」という点をインセンティヴにするものであり、少なくとも調査者の最初に設定した回答者数を満たすまでは、研究者が少額の謝礼を1問ごとに支払う形を取ることで(回答者数が満たされれば、純粋にゲームとして楽しむ)、ゲーム的要素がなくとも記述問題は確実に謝礼がもらえる問題として歓迎されるようになる。
また、本発明においては、ゲームのみを楽しみたい参加者はこうした問題をスキップすることもできるようにするが、インセンティヴとしてのポイントと、ゲームの点数とは厳密に区別する。これにより、回答者が再び「楽して儲けるテクニック」に走ることを防ぐことができるようになる。
回答者は、1)自分の回答が多数派であったか少数派であったか、の結果と共に、2)第2の質問の結果としての点数をi)直前の結果、ii)10問毎の平均点の推移、iii)これまでの累積点、についてそれぞれを参照することができ、それによってa)自分がどの程度「平均的/個性的」であるか、b)自分の意見とは独立に一般的意見(「常識」)を正しく見積もれているかどうか、などを数値や全体の中の順位で知ることができ、それにより自分をどれほど客観的に正しく認識できているか、およびその変遷を確認することができる。2)についての数値の上位(例えば)30人はハンドルネームで公開され、他人と数値の高さを競うこともでき、その順位からも自分を客観視できる度合いを相対的に知ることができ、回答を続けることでb)に関する能力を訓練しながらその効果を見ることもできる。こうした情報の開示方法により、回答者が点数を競うゲームとして、あるいは自己診断ゲームとして、たとえ報酬がなくともゲームを楽しみながらアンケートに回答することができるようになった。
【0006】
すなわち本発明は、以下のものである。
第1の発明は、社会心理学の認知バイアスを利用したゲーミフィケーションの手法により、回答者の興味を維持しつつ自発的に誠実な態度でアンケート調査に協力してもらうオンライン上のアンケート方法である。
第2の発明は、金銭やポイントなどの報酬による動機づけと純粋な自己診断に対する興味、あるいはゲーム上の得点を競う楽しみを組み合わせることにより、不特定多数の回答者をオンライン上で集め、安価で正確なアンケート調査を実現する方法である。
第3の発明は、たとえ報酬がない場合でも、回答者が点数を競うゲームとしてアンケートを楽しむための点数の配分方法である。
第4の発明は、たとえ報酬がない場合でも、回答者が自己診断ゲームとしてアンケートを楽しむための情報の開示方法である。
【0007】
本発明で利用されている認知バイアスについて、以下に説明する。
認知バイアスの一つとして知られる「偽の合意効果(False-consensus effect)」というものは、他の人も自分と同様の見解を持っている、と考える傾向のことである。
Ross, L., Greene, D., & House, P. (1977). The “false consensus effect”: An egocentric bias in social perception and attribution processes. Journal of Experimental Social Psychology, 13, 279-301.
http://en.wikipedia.org/wiki/False-consensus_effect
http://www.psychologycampus.com/social-psychology/false-consensus.html
こうしたバイアスのため、人は自分の意見は多数派に属していると思いがちであり、このバイアスが強ければ強いほど、このゲームの点数は低くなる、ということになる。逆に言えば、バイアスを極力抑えることのできる者が、平均点においても累積点においても高得点を記録できる。従ってこのゲームにおいては、全体として、このバイアスを最小限にするような圧力が働くことになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、回答者はゲームを楽しみながらアンケートに回答することができ、それにより調査者の方は回答者から単なる報酬目当てでない正直で誠実な回答を引き出すことができるようになった。
またこうして報酬による動機づけと自分を知るためのゲームをする動機づけとを組み合わせることにより、先の1)一定数の回答が集まらなければ自分の回答の位置づけを知ることができない、という問題を解決し、2)アンケート調査場に回答者を直接招待することなしに、オンライン上で大量の回答者を安価に集めることを可能にし、さらに3)最初から質問内容に興味を持つ回答者でなくとも、ゲームとして自分の回答と他の回答者のズレと一致を楽しむことができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実装したゲームプログラムを「自己診断ゲームを楽しみながらお金も稼げる」アプリとしてスマートフォンなどのアプリダウンロードサイトで無料配布する。
回答者(プレーヤー)側:アプリをダウンロードしたプレー(回答)希望者は、まず性別、誕生日、などの最低限の個人情報を登録する。報酬のやり取りをクレジットカードで行うか、電子マネーで行うか、買い物などが可能なポイントで行うか、などはプレーヤー(回答者)の選択とする。また、報酬を全く希望しない純粋なゲームプレーヤーも、性別や誕生日などの情報を入力する限りで容認する。
調査者側(アンケート実施者):調査者は、別のウェブサイトより登録を行うことにより、主にHTMLによる質問の作成を自由にできるようになる。いくつもの質問を事前登録でき、好きなタイミングでその中から適当な質問を選んでアンケートを実施できる。実施前、調査者はその特定の調査について、(例えば)「1問につき10円」などの価格設定、必要な回答者の数、回答時間、回答者の絞り込み条件、などを設定する。ここでも報酬はクレジットカードによる引き落としか、ポイントの事前購入など複数の選択肢を設ける。回答数が設定した数に達すれば、メールによって自動的に知らせてくれる。調査者はエクセルにまとめられた詳細な結果をウェブ上でダウンロードする。
ゲーム内容:プレーヤーがゲームを開始すると、自動的に一つの質問が選択され、画面上に現れる。プレーヤーは、質問を読んでスキップすることも可能であるが、回答することを選択すれば、報酬のある質問、すなわちまだ十分な回答が集まっていない質問の場合、「回答ありがとうございました。今の回答で〇ポイント(〇円)獲得しました」という画面が表示され、(選択式の質問で)十分な回答が集まっている質問の場合、回答後、「あなたのこの回答は多数派ですか、少数派ですか」あるいは「あなたのこの回答は全体の中でどのくらいの位置にありますか」といった質問が表示される。この回答には「正解」があり、正解すれば、回答者はそれに対応する得点を得ることができる。得点の配点は、例えば以下の表のようになる。

【0010】
【表1】
JP2016001410A_000002t.gif

【0011】
これはX1, X2 をそれぞれの回答の割合として、C(X1, X2)を正解した場合、I(X1, X2)を不正解の場合、のそれぞれの得点とすれば、それらは以下のような式によって表せる。
C(X1, X2) = 10-ROUNDDOWN(|X1-X2|, -1)/10
I(X1, X2) = -(ROUNDDOWN(|X1-X2|, -1)/10+1)

【0012】
これをN者択一の問題に拡張するやり方は様々にあり得るが、一つの単純なやり方は、正解がK (1≦K≦N)のとき、正解と不正解の得点を、以下の式で与えるというものであろう。
【数1】
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あるいは、回答者が自分の回答が全体の何%であるかを直接当てさせる、というものでもよい。その場合、ピッタリと当てれば10点、誤差5%以内ならば5点、10%以内ならば3点、15%以内ならば1点とし、それ以上はマイナス、などと設定することができよう。

【0013】
プレーヤーは、個々の質問に対する回答後、それが正しかったかどうか、その結果何点得たか、失ったか、それにより累積点および総合順位がどうなったか、などを直ちに知ることができる。また別画面により、自分がどれほど「常識的」か(どれほどの割合で多数派であったか)、を累積点で見ることができ、また得点についても過去の10問(あるいは50問、100問)ごとの平均点の変化を見ることができる。

【0014】
さらに、例えば回答10問ごとにプレーヤーに「チャレンジ」の権利が生じ、ここぞという質問に対しその権利を行使することにより、得点が10倍になる、といった工夫もゲーム性を高めるためには採用してもよいだろう。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のアンケート方法は、携帯、スマートフォンなどのオンラインゲームアプリとして無料で配布することで、安価なアンケートシステムとして利用することができる。(本発明の方法は、マーケンティグや学術調査の分野での応用が期待される。)