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明細書 :新規多官能グリシド酸エステル化合物及びその製法ならびにそれを用いたポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-214497 (P2015-214497A)
公開日 平成27年12月3日(2015.12.3)
発明の名称または考案の名称 新規多官能グリシド酸エステル化合物及びその製法ならびにそれを用いたポリマー
国際特許分類 C07D 303/48        (2006.01)
C08G  59/20        (2006.01)
C07D 301/12        (2006.01)
FI C07D 303/48 CSP
C08G 59/20
C07D 301/12
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2014-097194 (P2014-097194)
出願日 平成26年5月8日(2014.5.8)
発明者または考案者 【氏名】落合 文吾
【氏名】矢野 成和
【氏名】添川 勝貴
出願人 【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001508、【氏名又は名称】特許業務法人 津国
【識別番号】100078662、【弁理士】、【氏名又は名称】津国 肇
【識別番号】100131808、【弁理士】、【氏名又は名称】柳橋 泰雄
【識別番号】100116528、【弁理士】、【氏名又は名称】三宅 俊男
【識別番号】100146031、【弁理士】、【氏名又は名称】柴田 明夫
審査請求 未請求
テーマコード 4C048
4J036
Fターム 4C048AA01
4C048BB26
4C048BB27
4C048CC02
4C048CC03
4C048UU05
4C048XX01
4C048XX02
4C048XX04
4J036AJ01
4J036AJ02
4J036AJ05
4J036AJ07
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC06
4J036JA01
4J036JA11
要約 【課題】生体への毒性が低いエポキシ樹脂化合物を提供することを課題とする。
【解決手段】複数のグリシド酸エステル基を含む化合物、とりわけ、式(I)(式中の定義は、発明の詳細な説明に記載したとおりである)で示される、多官能ジグリシド酸エステル化合物である。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のグリシド酸エステル基を含むことを特徴とする化合物。
【請求項2】
式(I):
【化17】
JP2015214497A_000023t.gif

[式中、
Aは、n価の、炭素原子数1~20個の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基(ここで、該基中の末端以外のメチレン基は、NH、S、Oから選択される1~4個のヘテロ原子又はアリーレン基もしくはヘテロアリーレン基で置きかえられていてもよく、該基中の水素原子は、場合により、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ハロゲンもしくはフェニルで置換されていてもよい)であるか、又は、ポリエーテル構造を有するn価の基であり、Aは直鎖状であっても分岐を有していてもよく;
、R及びRは、各々独立して、水素、C1-6アルキル又はフェニルから選択され;そして、
nは化合物に含まれるグリシド酸エステル基の数を示し、2~4の整数である]
で示されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、炭素原子数1~10個の飽和脂肪族炭化水素基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
nが、2又は3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式(I)の化合物が、以下の式:
【化18】
JP2015214497A_000024t.gif

(式中、Aは、炭素原子数1~10個のアルキレン基である)
で示される化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物及び/又はその誘導体を含む組成物であって、前記誘導体が、式(I)の化合物において、下記式(Ia):
【化19】
JP2015214497A_000025t.gif

で示されるn個の分子中のグリシド酸エステル基の一つ以上n個未満に、代わりに、下記式(Ib):
【化20】
JP2015214497A_000026t.gif

で示される構造を有する化合物である、組成物。
【請求項7】
組成物全体における、請求項6に記載の式(Ia)で示される構造と式(Ib)で示される構造のモル比が、(Ia):(Ib)=100:1~1:100の範囲である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又は請求項6又は7に記載の組成物を調製するための方法であって、
式(II):
【化21】
JP2015214497A_000027t.gif

[式中、A、R、R、R及びnは、請求項1に定義した通りである]で示される化合物を、四級アンモニウム塩及び炭素-炭素二重結合をエポキシ基に転換する酸化剤の存在下で、オレフィンを酸化させることを含む方法。
【請求項9】
前記酸化剤を、式(II)の化合物中のアクリレート基に対して2モル当量以上の過剰量用いる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又は請求項6又は7に記載の組成物を重合させて得られるポリマー。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又は請求項6又は7に記載の組成物を、ポリアミンと反応させて得られる、請求項10に記載のポリマー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な多官能グリシド酸エステル及びその製法、ならびに当該多官能グリシド酸エステルから得られるポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシドは環状エーテルの最も簡単な構造であり、高い環ひずみに基づく反応性を利用して、医薬品等の合成中間体のほか、塗料、半導体関連部品、接着剤等に用いられるエポキシ樹脂として広く利用されている。接着剤等に用いられるエポキシ樹脂は一般に1分子に2個以上のエポキシ基を持つ化合物を指し、硬化に使われる硬化剤を変えることで多種多様な化学構造や分子量を持った樹脂を形成することができる。エポキシ樹脂においては、プレポリマーとしてのエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基を硬化剤により開環反応させることで、架橋ネットワークを形成させて硬化するため、揮発成分が発生せず簡便に合成できると共に、三次元網目状の構造を形成し、不融不溶の樹脂となるため、耐水性及び耐薬品性に優れたものになる。
従来、代表的に使用されているエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型等の構造が挙げられる。現状は、市販のエポキシ樹脂の9割以上がグリシジルエーテル型であり、特にグリシジルエーテル型であるビスフェノールA型エポキシ樹脂等が広く使用されている。ビスフェノールA型エポキシ樹脂のプレポリマーは、ビスフェノールAにエポキシ基を有する化合物であるエピクロロヒドリンを結合させることで得られる。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平5-39277号公報
【0004】

【非特許文献1】Ochiai, B. and Hirano, T., Heterocycles, 2014, 89, 487-493
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エポキシ樹脂には様々な用途があり広範に使用されているが、エポキシ樹脂は、皮膚炎等のアレルギー症状を引き起こすことがある等、環境及び生体への毒性が懸念されている物質でもある。特にグリシジルエーテル型のビスフェノールA型エポキシ樹脂に関しては、健康被害を防止するための各種検討が行われている。また、フタル酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル型のエポキシ樹脂は、グリシジルエーテル型と比較して安全性が高いことが知られているが、依然として生体に悪影響を及ぼすことが知られている。エポキシ樹脂が生体に対して毒性を示す原因や機構に関しては、必ずしも明らかにされていないが、未反応のエポキシドが原因とも言われる。
また、従来のエポキシ樹脂には、製造工程に起因する塩素が比較的高い濃度で含まれており、特に電気絶縁性や耐熱性等、樹脂の物性の低下を招くことや、電子部品の封止に使用した際の腐食の発生原因となることが知られている。このような塩素は、例えば上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂においては、プレポリマーの原料であるエピクロロヒドリンに起因することが知られている。また、グリシジルエステル型のエポキシ樹脂においては、一般的にグリシジルエーテル型よりも高濃度の塩素を含むことが知られている。
本発明は、上記課題を解決し、従来と比較して生体に対する毒性が低いエポキシ樹脂を提供することを課題とする。また、当該エポキシ樹脂を製造する方法であって、製造工程でエポキシ樹脂に導入される塩素量を低減可能なエポキシ樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、官能基として複数のグリシド酸エステルを含む化合物をエポキシ樹脂とすることで、グリシジルエーテル型の化合物を用いた場合よりも毒性が低いことを見出した。また、上記複数のグリシド酸エステルを含む化合物を製造する製造方法としては、単官能性グリシド酸エステルを製造する方法として知られている反応条件(特許文献1、非特許文献1)を更に改良し、複数のアクリル酸官能基を有するアクリル酸誘導体を出発原料とすることにより、原料に起因してエポキシ樹脂中に残留する塩素量を低減可能であることを見出した。すなわち、本発明は、複数のグリシド酸エステル基を含むことを特徴とする化合物、それを含む組成物、及びそれらの製造方法並びにそれらを重合させて得られるエポキシ樹脂ポリマーに存する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、グリシジルエーテル型よりも毒性が低いエポキシ樹脂が提供される。また、当該エポキシ樹脂中の塩素濃度を従来のエポキシ樹脂よりも低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の化合物の調製において、NaOClの量とエポキシ生成率との相関を示すグラフである。
【図2】本発明の化合物の、大腸菌に対する毒性の評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、生体に対する毒性を低減可能なエポキシ樹脂について、発明者がエポキシ基を含む各種の物質を探索・検討したところ、グリシド酸エステルの形態によりエポキシ基を含む化合物において毒性が低減できることを見出したことに基づくものである。以下、本発明について詳細に説明する。

【0010】
用語の定義
本発明において、以下の用語は、単独で現れるか又は組み合わせて現れるかにかかわらず、それぞれについて説明される内容を示すものとして使用される。

【0011】
本明細書において、用語「アルキル基」は、炭素原子による骨格を有する直鎖又は分岐鎖状の炭素鎖を含む、1価の飽和炭化水素基を示す。また、用語「アルキレン基」は、直鎖状又は分岐鎖状の炭素鎖からなる2価の炭化水素基を示す。「低級アルキル基」又は「低級アルキレン基」は、炭素数が1~6の範囲である、上記アルキル又はアルキレン基を示し、「C1-6アルキル」としても表される。

【0012】
本明細書において、用語「アリール」は、環員数6~14個の炭素原子からなる、芳香族の、単環式又は多環式である1価の基を表し、「アリーレン」は、2価であるアリール基を表す。多環式芳香族の場合、構成する環のうち、少なくともアリール基が結合する骨格に直接結合している環が芳香族性を有する環であればよい。アリールの例には、非限定的に、フェニル、ナフチル、アントラセニルが挙げられる。これらに対応するアリーレン基の例は、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレンである。

【0013】
本明細書において、用語「ヘテロアリール」は、環員数6~14個であり、N、S、Oから選択されるヘテロ原子を1~4個含み、残りが炭素原子からなる、芳香族の、単環式又は多環式である1価の基を表し、「ヘテロアリーレン」は、2価であるヘテロアリール基を表す。ヘテロアリールの例には、非限定的に、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリニル、ピラゾリル、フラニル、オキソピラゾリル、チエニル、チアジアゾリル等が挙げられる。ヘテロアリーレンの具体例には、上記基の環骨格を構成する元素のうち任意の二つが結合手となっているものが含まれることが理解される。

【0014】
本明細書において、用語「グリシド酸エステル」は、下式で示されるように、エポキシに直接結合したカルボン酸と、アルコールとのエステルである化合物群を意味する。
【化1】
JP2015214497A_000003t.gif

エポキシ基内の炭素に結合する水素原子は、それぞれC1-6アルキル又はフェニルにより置換されてもよい。エポキシ基中の置換基によっては、グリシド酸エステルは立体異性体を持ちうるが、本明細書において「グリシド酸エステル」は、光学的に純粋なグリシド酸エステル単体、ラセミ体を含む光学異性体の混合物、ジアステレオマーの混合物を包含する。
本明細書において、用語「グリシジルエステル」は、下式で示されるように、エポキシ基がCHを介してエステル基の酸素と結合した化合物群を意味する。
【化2】
JP2015214497A_000004t.gif

また、本明細書において、用語「グリシジルエーテル」は、下式で示されるように、エポキシ基とエーテル結合が組み合わされた構造を有する化合物群を意味する。
【化3】
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【0015】
本発明は、複数のグリシド酸エステル基を含むことを特徴とする化合物を提供する。具体的には、本発明の一つの実施態様は、式(I):
【化4】
JP2015214497A_000006t.gif

[式中、
Aは、n価の、炭素原子数1~20個の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基(ここで、該基中の末端以外のメチレン基は、NH、S、Oから選択される1~4個のヘテロ原子又はアリーレン基もしくはヘテロアリーレン基で置きかえられていてもよく、該基中の水素原子は、場合により、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、ニトロ、ハロゲンもしくはフェニルで置換されていてもよい)であるか、又は、ポリエーテル構造を有するn価の基であり、Aは直鎖状であっても分岐を有していてもよく;
、R及びRは、各々独立して、水素、C1-6アルキル又はフェニルから選択され;そして、
nは化合物に含まれるグリシド酸エステル基の数を示し、2~4の整数である]
で示される化合物である。

【0016】
すなわち、式(I)の化合物は、多官能グリシド酸エステル化合物を構成する。当該化合物において、基Aは、複数のグリシド酸エステル部位を結び付けるリンカーとしての部分を構成する。基Aは、その構成する主骨格として飽和又は不飽和の炭化水素基を有する。炭化水素基は、分岐鎖状又は直鎖状いずれの構造であってもよく、また1,4-シクロヘキシレン基のように、炭化水素基による骨格が環状構造をとっていてもよい。炭素鎖の炭素数は、特に制限されないが、樹脂として硬化させる際の取り扱いの容易性や硬化反応の行いやすさの点から、1~20個の範囲にあることが好ましい。炭素数1~10の炭化水素基であることが、より好ましい。また、基Aは、分子鎖中に、N、S、O等のヘテロ原子、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等を有していてもよい。さらに、基Aは、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリマーからなるポリエーテル構造であることもできる。

【0017】
基Aの例は、非限定的に、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン等の直鎖状炭化水素、2,2-ジメチルプロピレン、2-エチル-2-メチルプロピレン等の分岐鎖状炭化水素、1,4-シクロヘキシレン等の環状炭化水素、糖、PEG鎖等、さらにこれらの基が3価又は4価の基となったものが挙げられる。

【0018】
好ましい基Aは、炭素数1~10のアルキレン基である。好ましい基Aの具体例は、ノニレン、2,2-ジメチルプロピレンである。

【0019】
基R、R、Rは、水素、C1-6アルキル、フェニルから各々独立して選択される。原料となる化合物の入手容易性や、硬化反応の容易性等の点からは、Rがメチルであり、R及びRが水素であること、又はR、R、Rのいずれもが水素であることが好ましい。

【0020】
本発明において、nは、分子中のグリシド酸エステル基の数を示し、2以上の整数を表す。nが5以上の、多数のグリシド酸エステル基を有するような化合物を調製することも可能であるが、nは、2~4であることが好ましい。さらに好ましくは、nは2又は3であり、nが2であることが最も好ましい。

【0021】
本発明の一つの実施態様は、式(I)の化合物及び/又はその誘導体を含む組成物であって、前記誘導体が、式(I)の化合物において、下記式(Ia):
【化5】
JP2015214497A_000007t.gif

で示されるn個の分子中のグリシド酸エステル基の一つ以上n個未満に、代わりに、下記式(Ib):
【化6】
JP2015214497A_000008t.gif

で示される構造を有する化合物である、組成物である。

【0022】
組成物全体における、上記式(Ia)で示される構造と式(Ib)で示される構造のモル比は、任意の範囲を採ることができるが、エポキシ樹脂として機能させるためには、(Ia):(Ib)=100:1~1:100の範囲であることが好ましい。(Ib)で示される構造を含むことにより、アクリルモノマーなどのラジカル重合性モノマーの重合体との複合化や、チオールとのエン-チオール反応による硬化なども可能となる。エポキシ樹脂としての機能を発揮しやすくする点からは、より好ましくは、100:1~1:1の範囲である。完全に式(Ia)の部分のみからなること、すなわち、式(I)の化合物単体であることもできる。
また、生体に対する毒性を低減する観点からは、エポキシ基をグリシド酸エステル基として化合物に含有させることが望ましいが、その用途等に応じて、グリシド酸エステル基の一部をグリシジルエーテルやグリシジルエステルの構造とすることも可能である。

【0023】
本発明の化合物は、エステル又はエポキシ基部分での加水分解生成物であるアルコール又はジオールや、エポキシ基の異性化物であるピルビン酸を副生することがある。本発明の化合物は、これらの化合物を含む組成物となっていてもよく、そのような組成物もまた、本発明の一つの態様である。

【0024】
式(I)の化合物の好ましい例は、以下の式:
【化7】
JP2015214497A_000009t.gif

(式中、Aは、炭素原子数1~10個のアルキレン基である)
で示される、ジグリシド酸エステル化合物である。さらに好ましい式(I)の化合物の例は、以下:
【化8】
JP2015214497A_000010t.gif

で示される化合物である。また、これらの化合物が有するエポキシ基の一部がオレフィンとなった構造の化合物、ならびにそれを含む組成物もまた、本発明の好ましい一態様である。

【0025】
nが3である場合の式(I)で示される化合物、例えば、下記式:
【化9】
JP2015214497A_000011t.gif

(式中、Rは、各々独立して、エポキシ基又はエテニル基であるが、三つのRのうち少なくとも一つはエポキシ基である)で示される三官能グリシド酸エステル化合物もまた、本発明の一態様である。当該化合物が有するエポキシ基の一部がオレフィンとなった構造の化合物、ならびにそれを含む組成物もまた、本発明の好ましい一態様である。

【0026】
本発明の多官能グリシド酸エステルは、式(II):
【化10】
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[式中、A、R、R及びRは、先に定義した通りである。nは、括弧内の構造の個数を示す。]で示される化合物を、四級アンモニウム塩及び次亜塩素酸ナトリウム等の炭素-炭素二重結合をエポキシ基に転換する酸化剤の存在下で、オレフィンを酸化させることを含む方法により得ることができる。

【0027】
式(II)で示される化合物は、市販されている物を使用するか、又はポリオールとアクリル酸誘導体の縮合反応により得ることができる。ポリオールとアクリル酸誘導体からエステルを合成する反応自体は、当業者に公知の方法を用いることができる。原料となるポリオ-ルは、式:(HO)-A(式中、A及びnは、先に定義されたとおりである)で示される。ポリオールの例は、非限定的に、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2,3-プロパントリオール(グリセリン)、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ポリエチレングリコール、グルコースを含む糖、ジエタノールアミン等が挙げられる。

【0028】
原料となるアクリル酸誘導体は、上記式(Ib)で示される構造を骨格とするカルボン酸である。カルボン酸の例は、非限定的に、アクリル酸、メタクリル酸、cis又はtrans-2-ブテン酸、(E)又は(Z)-3-メチル-2-ブテン酸、桂皮酸、コーヒー酸等が挙げられる。

【0029】
本発明の方法において、式(II)で示される化合物から本発明の多官能グリシド酸エステルを得る反応は、溶媒、特に廃棄や分離の問題が伴う有機溶媒を用いることなく行うことができるが、場合により、水性媒体中、例えば緩衝液の存在下で行うこともできる。式(II)の化合物のエステル構造を分解せず、良好な転化率を達成できることから、緩衝液を用いた系で本発明の方法を行うことが好ましい。緩衝液の種類は特に問わず、エポキシ化反応を阻害しない限り当業者に公知のものであれば用いることができる。好ましい緩衝液の例は、炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8.2)である。

【0030】
本発明の方法において、式(II)で示される化合物から本発明の多官能グリシド酸エステルを得る反応で用いられる四級アンモニウム塩は、相間移動触媒として用いられる。四級アンモニウム塩の具体例としては、非限定的に、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド等が挙げられる。なかでも、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド等、適度な炭素鎖長のアンモニウム塩が好ましい。テトラヘキシルアンモニウムブロミドが最も好ましい。四級アンモニウム塩は、式(II)の化合物に対して1~100mol%の量で用いられる。

【0031】
本発明の方法において、式(II)で示される化合物から本発明の多官能グリシド酸エステルを得る反応では、式(II)で示される化合物中の炭素-炭素二重結合をエポキシ基に転換する酸化剤が用いられる。酸化剤は公知の酸化剤から適宜選択して用いることが可能であるが、具体例としては非限定的に、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸アンモニウム、過酸化水素(水)、過酢酸、m-クロロ過安息香酸、過安息香酸、t-ブチルヒドロペルオキシド、オキソン、金属酸化物(バナジルアセチルアセトネートなど)、次亜臭素酸アンモニウム、次亜臭素酸カルシウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム等が挙げられる。中でも次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウムなどの水溶性の塩が好ましい。次亜塩素酸ナトリウムが最も好ましい。本発明の方法において用いられる酸化剤は、式(II)の化合物中のオレフィンに対して過剰量、好ましくは1.5当量以上、更に好ましくは2.0当量以上の過剰量用いることで、目的とする式(I)の化合物を良好な収率で得ることができる点で望ましい。一方、酸化剤の量を抑制することで、アクリレートを残し、エポキシドとオレフィンが混在したもの、すなわち、上記式(Ia)及び(Ib)の構造が混在した組成物も調製することが可能である。

【0032】
本発明の方法において、式(II)で示される化合物から本発明の多官能グリシド酸エステルを得る反応は、反応時の雰囲気には特に制限はなく、アルゴンや窒素のような不活性雰囲気化でも、大気圧の空気下で行ってもよい。反応温度、反応時間は、用いる基質の種類によって変動するが、通常は、例えば40℃、1時間程度の温和な条件下で行うことができる。

【0033】
本発明の方法によっては、式(I)の化合物中のエポキシ基が加水分解を受けたジオール、又はエステル結合が加水分解を受けたアルコールが副生することがあり、また、本発明の化合物は、異性化によりピルビン酸誘導体を形成することがあり、共に不純物として本発明の化合物に混合する場合がある。本発明の化合物に混合した当該不純物は、当業者に公知の方法、例えばシリカゲルクロマトグラフィー等の方法によって容易に精製することができる。

【0034】
本発明の多官能グリシド酸エステルは、エポキシ基を有しているため、本発明の化合物をプレポリマーとして、硬化物の原料とすることができる。エポキシ樹脂硬化物の製造方法は当業者に公知であり、硬化物に求められる物性及び用途に応じて、脂肪族又は芳香族ポリアミン、ポリアミノアミド、ポリメルカプタン、硬化促進剤の存在下でのジシアンアミド、フェノールノボラック樹脂、酸無水物等公知の硬化剤を用いることができる。具体的な硬化剤の例は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、フェノールノボラック樹脂、4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ジシアンアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。エポキシ樹脂と硬化剤の配合比、反応温度等の反応条件は、基質に応じて適宜設定する必要があるが、例えば室温(25℃)、1時間程度の反応で硬化は完了する。本発明の化合物又は組成物を重合して得られるポリマーもまた、本発明の一態様である。更に具体的な本発明の一態様は、本発明の化合物又は組成物とポリアミンとを反応させて得られる、ポリマーである。

【0035】
先に述べた式(Ia)と(Ib)の構造が混在している組成物には、硬化反応に供するエポキシ基のほかに、反応活性なオレフィンが存在しているので、さらなる官能基化、オレフィン重合等を行うことが可能であり、高度にネットワーク化された、高機能性の重合物を得ることができる。

【0036】
本発明の多官能グリシド酸エステルは、後述の実施例で示されるように、エピクロルヒドリンから誘導されるグリシジルエーテル構造を有するエポキシ樹脂と比較して、生体に対しての毒性が小さいことが示されている。グリシド酸エステル型のエポキシ樹脂が生体に対してより低い毒性を示す理由は必ずしも明らかでないが、グリシド酸エステル基が生体内で容易に分解されてピルビン酸メチルへと変化することが関係すると予想される。つまり、グリシド酸エステル基はグリシジルエーテル等と比較して生体内での残留時間が短く、且つ、分解によって生じるピルビン酸は生体内の解糖系でも生成する物質であって生体への影響が小さいことが予想される。
また、本発明の複数のグリシド酸エステル基を含む化合物の製造工程においてはハロゲンが介在せず、例えば、ビスフェノールAにおけるエピクロロヒドリンのようにハロゲンの含有の原因となる物質の使用が必要とされないため、硬化後の製品段階においても不純物としてのハロゲンの残存を気にすることなく、ハロゲンフリーの材料として用いられることも期待される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等によって限定されるものではない。なお、以下の例で用いた薬品は、とくに断りの無い場合は市販品をそのまま用いた。
【実施例】
【0038】
実施例1
NaOClによるネオペンチルグリコールジアクリレートのエポキシ化
【化11】
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ナスフラスコにネオペンチルグリコールジアクリレート(4.25g、20.0mmol)、テトラヘキシルアンモニウムブロミド(5.56g、64.0mol%)、5wt% NaOCl水溶液(3.2eq.、95.3mL)を加え、40℃の油浴中で1時間攪拌させた。反応終了後、H-NMRスペクトルにより転化率(>99%)と生成率(97%)を算出した。その後分液ロートに移し、酢酸エチル(15.0ml)と飽和食塩水(15.0ml)を加えた。水層を取り除いた後、有機層を飽和食塩水(30.0ml×3)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後の揮発成分を減圧留去した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより触媒を除去した(流出溶媒:ジエチルエーテル:ヘキサン(v/v=2/1))。これにより無色透明の液体である、ネオペンチルグリコールジグリシデートを単離した(1.04g、4.29mmol、21.3%)。
H-NMR (400 MHz, CDCl3, at rt, δ, ppm, J in Hz) 1.02 (s, 3H, -C-CH3), 2.96 (dd, 1H, J = 2.0, 2.4 -O-CH2-CH-), 2.97 (dd, 1H, J = 2.0, 2.4 -O-CH2-CH-), 3.45 (dd, 1H, J = 2.0, 2.0 -CH-), 4.02 (t, 2H, J = 2.4, -O-CH2-C-). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3, at r.t, δ, ppm) 21,7 (-C-CH3), 34.9 (-CH2-C-CH3), 46.5 (-O-CH2-CH-COO-), 47.3 (-O-CH2-CH-COO-), 69.9 (-O-CH2-C-), 169.2 (C=O).
【実施例】
【0039】
上記反応において、NaOClの当量を変え、また緩衝液(炭酸水素ナトリウム水溶液、pH8.2)の存在下又は非存在下にて、同様に実験を行った。エポキシドの生成率をNMRにて測定した。これらの実験の結果を表1に示す。いずれの例においても、良好にエポキシドが生成したことが示された。
【実施例】
【0040】
【表1】
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【実施例】
【0041】
実施例2
NaOClによる1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナンのエポキシ化
【化12】
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ナスフラスコに1,9-ビス(アクリロイルオキシ)ノナン(2.68g、10.0mmol)、テトラヘキシルアンモニウムブロミド(2.78g、64.0mol%)、炭酸水素ナトリウム水溶液(78g/L、pH8.2)、5wt% NaOCl水溶液(4.8eq.、71.5mL)を加え、40℃の油浴中で1時間攪拌させた。反応終了後、H-NMRスペクトルにより転化率と生成率を算出した(転化率:>99%、生成率:98%)。その後分液ロートに移し、クロロホルム(15.0ml)と飽和食塩水(15.0ml)を加えた。水層を取り除いた後、有機層を飽和食塩水(30.0ml×3)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後の揮発成分を減圧留去した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより触媒を除去した(ジエチルエーテル:ヘキサン(v/v=2/3))。これにより無色透明の液体、1,9-ブタンジオールジグリシデートを単離・精製した(1.73g、5.77mmol、57.7%)。
H-NMR (400 MHz, CDCl3, at rt, δ, ppm, J in Hz) 1.26 - 1.42 (5H, -O-C2H4-CH2-CH2-CH2-), 1.67 (tt, 2H J = 3.4, 3.6 -O-CH2-CH2-CH2-), 2.95 (dd, 1H, J = 3.2, 3.6 -O-CH2-CH-), 2.97 (dd, 1H, J = 3.2, 3.6 -O-CH2-CH-), 3.44 (dd, 1H, J = 3.2, 3.2 -CH-), 4.02 (t, 2H, J = 7.2, -O-CH2-C-). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3, at r.t, δ, ppm) 25.8 (-O-C4H8-CH2-), 28.5 - 29.3 (-O-CH2-CH2-CH2-CH2-), 46.3 (-O-CH2-CH-COO-), 47.4 (-O-CH2-CH-COO-), 65.8 (-O-CH2-CH2-), 169.3 (C=O).
【実施例】
【0042】
上記反応において、NaOClの当量を変え、また緩衝液(炭酸水素ナトリウム水溶液、pH8.2)の存在下又は非存在下にて、同様に実験を行った。エポキシドの生成率をNMRにて測定した。これらの実験の結果を表2に示す。特に炭酸水素ナトリウム水溶液を用いた例において、良好にエポキシドが生成したことが示された。また、NaOCl当量を調節することにより、エポキシドの生成量を制御し、アクリロイル基の二重結合を残した状態の組成物を調製することが可能であることが示された。
【実施例】
【0043】
【表2】
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【実施例】
【0044】
実施例1、2で得られたプレポリマーにおけるCHOの割合に関して、元素分析において実測値としてC:54.26%、H:6.73%(実施例1)、C:60.05%、H:7.83%(実施例2)が得られた。これらの値は、理論値であるC:54.09%、H:6.60%(実施例1)、C:60.00%、H:8.00%(実施例2)と各々良く一致する。このことから、実施例1、2で得られたプレポリマーには塩素等のハロゲンが実質的に含まれないと考えられる。
【実施例】
【0045】
実施例3
NaOClによるトリメチロールプロパントリアクリレートのエポキシ化
【化13】
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ナスフラスコにトリメチロールプロパントリアクリレート(2.96g、10mmol)、テトラヘキシルアンモニウムブロミド(2.78g、64.0mol%)、5wt% NaOCl水溶液(9.6eq.、143mL)を加え、40℃の油浴中で1時間攪拌させた。反応終了後、H-NMRスペクトルにより転化率(>99%)と生成率(94%)を算出した。その後分液ロートに移し、酢酸エチル(15.0ml)と飽和食塩水(15.0ml)を加えた。水層を取り除いた後、有機層を飽和食塩水(30.0ml×3)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後の揮発成分を減圧留去した。さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより触媒を除去した(流出溶媒:ジエチルエーテル:ヘキサン(v/v=2/1))。これにより無色透明の粘性体を単離した(1.52g、4.4mmol、44%)。
【実施例】
【0046】
実施例3と同様の実験を、NaOClの量を3.6当量から10.0当量の間で変更して行い、エポキシドの生成率を算出した。結果をまとめたグラフを図1に示す。これにより、NaOClの量を調節することで、アクリロイル基の転化率を調節し、生成物中のエポキシドの量を制御できることが示された。
【実施例】
【0047】
実施例4
ネオペンチルグリコールジグリシデートとジエチレントリアミンとの硬化反応
【化14】
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実施例1で合成したネオペンチルグリコールジグリシデート(244mg、1.00mmol)に、ジエチレントリアミン(206mg、1.50mmol)を加え、常温(25℃)で3分間攪拌後、1時間静置した。硬化反応の進行は、IRスペクトルを測定し、原料であるジグリシデートのエポキシ基に由来するC-O-C対称伸縮振動(866cm-1)の消失により確認した。得られた生成物は、THF(生成物10mgに対して5mL)で25℃にて24時間洗浄し、DSCによりガラス転移点(T)を測定した。さらに、ジエチレントリアミンを1.00、0.500、0.250又は0.100mmol用いて、同様に硬化反応を行った。
各々の硬化反応で得られた生成物の物性をまとめたものを、表3に示す。
【実施例】
【0048】
【表3】
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【実施例】
【0049】
実施例5
9-ノナンジオールジグリシデートとジエチレントリアミンとの硬化反応
【化15】
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実施例2で合成した1,9-ノナンジオールジグリシデート(300mg、1.00mmol)に、ジエチレントリアミン(206mg、1.50mmol)を加え、常温(25℃)で3分間攪拌後、1時間静置した。硬化反応の進行は、IRスペクトルを測定し、原料であるジグリシデートのエポキシ基に由来するC-O-C対称伸縮振動(866cm-1)の消失により確認した。さらに、ジエチレントリアミンを1.00、0.500、0.250又は0.100mmol用いて、同様に硬化反応を行った。
各々の硬化反応で得られた生成物の物性をまとめたものを、表4に示す。
【実施例】
【0050】
【表4】
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【実施例】
【0051】
実施例6
ネオペンチルグリコールジグリシデートとフェノール樹脂との硬化反応
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(240mg、1.0mmol)、フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製EP4080G)(0.45g)、およびアセトン(0.5mL)を加えて撹拌したのち、60℃で2日間乾燥した。生じた混合物を100℃で1日加熱したところ、硬化物が得られた。
【実施例】
【0052】
実施例7 大腸菌に対する毒性の評価
実施例1で合成したネオペンチルグリコールジグリシデートを用いて、大腸菌(E. coli)に対する毒性の評価を行った。対照として使用したネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルは以下の構造を有するグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂であり、ネオペンチルグリコールジグリシデートとはカルボニル基の有無で相違する。
【化16】
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【実施例】
【0053】
抗生物質のアンピシリンナトリウムを毒性のあるネガティブコントロールとし、食用サラダ油を毒性のないポジティブコントロールとした。菌に化合物を何も加えないものをコントロールとし、培養時間24時間後の濁度(O.D.620)を増殖率100%とした。96穴マイクロプレートに培養した菌を10倍に希釈し、10μl、DMSOを終濃度が1.0%になるように加え、さらに培地と水を加えた。そこにDMSOに溶けた化合物を各々最終濃度が10、1、0.1、0.01、0.001 mg/mlとなるように加え、37℃で24時間培養させた。その後、O.D.620をマイクロプレートリーダーで測定した。一連の実験はすべて滅菌操作で行った。結果を図2に示す。
【実施例】
【0054】
図2から、合成したネオペンチルグリコールジグリシデートは、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(LD50=4,500mg/kg)よりも毒性が低いということが明らかとなった。すなわち、10mg/mLの濃度において、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテルを加えた場合では大腸菌のほとんどが死滅したのに対し、ネオペンチルグリコールジグリシデートを加えた場合では、大腸菌のおよそ半数は生存しており、大腸菌に対する毒性が低減されていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の多官能グリシド酸エステル化合物は、低毒性のエポキシ樹脂又はその材料として有用であり、防食塗料用樹脂、炭素繊維強化樹脂、接着剤、電子材料の封止剤等に用いられるため、工業上極めて重要である。
図面
【図1】
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【図2】
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