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明細書 :細胞結合性の組成物とその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-219108 (P2015-219108A)
公開日 平成27年12月7日(2015.12.7)
発明の名称または考案の名称 細胞結合性の組成物とその利用
国際特許分類 G01N  33/553       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/553
G01N 33/543 575
G01N 33/53 S
G01N 33/53 Y
G01N 33/543 525E
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2014-102882 (P2014-102882)
出願日 平成26年5月16日(2014.5.16)
発明者または考案者 【氏名】若尾 雅広
【氏名】隅田 泰生
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
【識別番号】307011381
【氏名又は名称】株式会社スディックスバイオテック
審査請求 未請求
要約 【課題】細胞の糖鎖結合性を評価できる糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を利用して、培養細胞などの品質や細胞状態を判別できる手法を提供する。
【解決手段】生体内に存在する糖鎖構造を含有する糖鎖と主鎖に炭化水素鎖を有するリンカー化合物から糖鎖リガンド複合体を調製し、調製した糖鎖リガンド複合体と所定のコア/シェル構造を備える蛍光性ナノ粒子から得られた糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を用いて、細胞に対する糖鎖結合性を評価し、細胞の状態を判別する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
生体内糖鎖構造由来の糖鎖を含有する1種または2種以上の糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた1種または2種以上のリンカー化合物とからなり、上記リンカー化合物の主鎖が、その一端に上記糖鎖と結合したアミノ基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えている糖鎖リガンド複合体と、
第一および第二の金属成分からなる粒子コアが第一および第三の金属成分からなる層によって被覆された蛍光性ナノ粒子と、を含有し、
上記炭化水素構造が上記層に固定化されてなることを特徴とする、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子。
【請求項2】
上記生体内糖鎖構造由来の糖鎖を含有する1種または2種以上の糖鎖が、以下の化学式1、14~16に示す糖鎖から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子。
【請求項3】
アミノ化されたオリゴエチレングリコールと、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えたリンカー化合物と、からなり、上記リンカー化合物の主鎖が、その一端に上記アミノ化されたオリゴエチレングリコールと結合したカルボキシル基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えている複合体、をさらに含有し、
上記炭化水素構造が上記層に固定化されてなることを特徴とする、請求項1から2の何れか1項に記載の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子。
【請求項4】
上記第一の金属成分が、カドミウム、亜鉛、銀、インジウムおよび硫黄からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子。
【請求項5】
上記第二の金属成分が、テルルおよび硫黄からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子。
【請求項6】
上記第三の金属成分が、カドミウム、硫黄および亜鉛からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子と、細胞とを混和することによって、上記糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子に固定化された、生体内の糖鎖構造を含有する糖鎖と、細胞とを反応させる工程を含むことを特徴とする、細胞の糖鎖結合性を評価する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に存在する糖鎖構造を固定化した蛍光性ナノ粒子およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
培養細胞などの細胞の品質管理は、iPS細胞やES細胞などを用いた再生医療や、動物細胞株を用いた抗体、ワクチン開発が進展するにしたがい重要な課題となっている。
【0003】
一般に、細胞の品質管理には、細胞種特異的な表面タンパク質の検査やmRNAなどの遺伝子解析が用いられる(非特許文献1、2)。しかしながら、細胞接着や組織形成などの細胞間認識においては、タンパク質-糖鎖相互作用や糖鎖-糖鎖相互作用も重要な因子となるため、細胞表層に特異的に発現する糖鎖の解析や、細胞特異的な糖鎖結合性の解析も必須の課題となっており、mRNAやタンパク質に次ぐ、細胞の品質管理に利用できる糖鎖マーカーの探索が求められている。近年、細胞表層の糖鎖の解析法として、糖鎖結合性タンパク質(レクチン)をアレイ化したレクチンアレイを用いた方法が開発されており、iPS細胞やES細胞の表層に発現している糖鎖の解析ならびに細胞品質管理に向けた研究が行われている(非特許文献3、特許文献1)。しかしながら、これらの機器類は非常に高価であり汎用性に乏しく、その普及は限られている。また細胞の糖鎖結合性については評価できない。
【0004】
また、細胞に対する糖鎖結合性の評価には、磁気微粒子で標識した糖鎖の開発も進められているが(非特許文献4)、この方法でも検査に高価な磁気イメージング(MRI)装置が必要であるため汎用性が限られている。
【0005】
一方、発明者らは、これまでに、均一な粒径、高い水分散性および発光性を有し、かつ、粒子表面に糖鎖が固定化された糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を開発している(特許文献2、非特許文献5、6)。
【0006】
また、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を用いて、糖鎖-タンパク質相互作用解析や細胞イメージング解析への応用を行っている。
【0007】
さらに、発明者らは、上記糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の調製に用いうる蛍光性リンカー化合物についても独自に開発している(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】PCT/JP2010/057938(平成22年5月11日)
【0009】

【特許文献2】特願2010-053040(平成22年3月10日)
【0010】

【非特許文献1】S.E.Ilyin,et al.,TRENDS Biotechnol.,22,411-416(2004).
【0011】

【非特許文献2】N.Rifai,et al.,Nat.Biotechnol.,24,971-983(2006).
【0012】

【非特許文献3】K.Nagano,et al.,Proteomics,8,4025-4035(2008)
【0013】

【非特許文献4】K.EL-Boubbou,et al.,J.Am.Chem.Soc.,132,4490-4499(2010).
【0014】

【非特許文献5】H.Shinchi,et al.,Chem.:Asian J.,7,2678-2682(2012).
【0015】

【非特許文献6】H.Shinchi,et al.,Bioconjugate Chem.,25,286-295(2014)
【0016】

【非特許文献7】M.Sato,et al.,J.Biochem.,146,36-41(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
現在行われている細胞の品質管理法は、細胞の形態観察に加え、上述したような細胞種特異的な表面タンパク質の検査やmRNAなどの遺伝子解析などである。しかしながら、細胞の形態観察においては、熟練者の経験に依るところが大きく、細胞の状態を一様に評価することができない。また、タンパク質やmRNAなどのマーカー分子を用いる場合においては、細胞種特異的なマーカーを複数選択し、発現しているマーカーの有無をパターン化することによって細胞種を判断しており、同じ細胞株において、細胞の良し悪しなどの細胞状態をモニターすることは難しい。
【0018】
iPS細胞などを用いた再生医療や、動物細胞株を用いた抗体開発が進展する中、培養細胞の品質管理は、益々重要な課題となっている。本発明は、これまでに開発している糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を活用して、糖鎖ベースの細胞状態の判別方法を開発することを目的とした。
【0019】
我々は、このような背景に立脚して研究を開始し、生体内に存在する「糖鎖」に標的を定め、最新のナノテクノロジーを駆使して、細胞の糖鎖結合性について解析してきた。本発明では、今までに開発してきた糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の技術(特許文献2、非特許文献5、6)に基づき、グルコースやガラクトース、N-アセチルガラクトサミンなどを非還元末端に持つ蛍光性ナノ粒子を調製し、これらの糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を用いて、細胞に対する糖鎖結合性を評価したところ、細胞株ごとで糖鎖の結合性が異なることを見出した。
【0020】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の利用し、再生医療や抗体開発などにおける細胞状態の判別方法、および品質管理法を提供することにある。
【0021】
本発明は、例えば、培養細胞に対して糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を添加し、細胞の糖鎖結合性を解析することによって、細胞状態を判別し、品質を管理できる手法を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、生体内に見られる糖鎖を含有する1種または2種以上の糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた1種または2種以上のリンカー化合物とからなり、上記リンカー化合物の主鎖が、その一端に上記糖鎖と結合したアミノ基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えている糖鎖リガンド複合体と、第一および第二の金属成分からなる粒子コアが第一および第三の金属成分からなる層によって被覆された蛍光性ナノ粒子と、を含有し、上記炭化水素構造が上記層に固定化されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、細胞と親和性があると考えられる生体内に存在する糖鎖を有しており、細胞の糖鎖受容体と結合することができる。
【0024】
細胞に対する糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の結合性は、細胞株ごとで、または細胞状態で異なることが考えられるため、異なる糖鎖構造を持つ数種の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の結合性評価によって、細胞の判別および品質管理が行えるため、実用化の可能性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】末端にα-N-アセチルグルコサミンを含有する糖鎖リガンド複合体の化学構造を示す図である。

【0026】
【図2】末端にβ-N-アセチルガラクトサミンを含有する糖鎖リガンド複合体の化学構造を示す図である。

【0027】
【図3】末端にα-フコースを含有する糖鎖リガンド複合体の化学構造を示す図である。

【0028】
【図4】末端にα-マンノースを含有する糖鎖リガンド複合体の化学構造を示す図である。

【0029】
【図5】末端にシアリルα2-3-β-ガラクトースを含有する糖鎖リガンド複合体の化学構造を示す図である。

【0030】
【図6】末端にシアリルα2-6-β-ガラクトースを含有する糖鎖リガンド複合体の化学構造を示す図である。

【0031】
【図7】糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子における糖鎖の固定化を示すチャートを示す図である。

【0032】
【図8】GlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αGlcNAc-FNP)のDLS測定による粒径分布を示す図である。

【0033】
【図9】Fucα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αFuc-FNP)のDLS測定による粒径分布を示す図である。

【0034】
【図10】αGlcNAc-FNPのPositive modeによるMALDI-TOF/MS分析の結果を示す図である。

【0035】
【図11】GlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αGlcNAc-FNP)と糖鎖結合性タンパク質との凝集実験における遠心分離後の沈殿物の蛍光発光の結果を示す図である。

【0036】
【図12】GlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αGlcNAc-FNP)と糖鎖結合性タンパク質との凝集実験における遠心分離後の上澄みの蛍光スペクトルを示す図である。

【0037】
【図13】HeLa細胞に対するSFNPの結合性を示すヒストグラムである。

【0038】
【図14】HeLa細胞の糖鎖結合性を示すグラフである。

【0039】
【図15】細胞種ごとの糖鎖結合性を示すグラフである。

【0040】
【図16】同組織由来の癌細胞と正常細胞の糖鎖結合パターンを比較したグラフである

【0041】
【図17】クラスター解析による細胞の系統樹である。

【0042】
【図18】70%コンフルエントまたは100%コンフルエントに達したHeLa細胞の形態を示す図である。

【0043】
【図19】70%コンフルエントまたは100%コンフルエントに達したHeLa細胞のSFNPの結合性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
〔1.糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子〕
以下に本発明について詳述する。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全ては、本明細書中において参考として援用される。

【0045】
本明細書において、「糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子」とは、以下に詳述する糖鎖リガンド複合体と、蛍光性ナノ粒子(蛍光性の金属ナノ粒子ともいう。)とを結合させてなるものである。なお、蛍光性ナノ粒子は後述するように製造してもよいし、市販のものを使用してもよい。

【0046】
なお、本明細書において、「金属ナノ粒子」は、無機金属成分を含むナノ粒子であれば特に限定されず、本発明において好適に用いられる金属成分としては、Si、Ge、Cd、Zn、Cu、Ag、Ga、As、In、Te、S、Auなどが挙げられるがこれらに限定されない。

【0047】
また、本明細書中において、「ナノ粒子」は水溶液中で分散してコロイド溶液を形成するものが意図される。よって、ナノ粒子の平均粒子径は、0.5~400nmの範囲内であることが好ましく、0.5nm~100nmの範囲内であることがより好ましく、1nm~10nmの範囲内であることがさらに好ましい。平均粒子径は0.5nm未満であってもよいが、そのような粒子の製造は高コストであって実用的でなく、400nmを超えると、粒子の分散安定性が経時的に変化しやすいので好ましくない。

【0048】
なお、本明細書において、上記平均粒子径は、動的光散乱法(DLS)によって測定した平均粒子径をいう。

【0049】
(1-1.生体内に見られる糖鎖)
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、生体内に見られる糖鎖を含有する1種または2種以上の糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えたリンカー化合物とからなり、上記リンカー化合物の主鎖が、その一端に上記糖鎖と結合したアミノ基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えている糖鎖リガンド複合体と、第一および第二の金属成分からなる粒子コアが第一および第三の金属成分からなる層によって被覆された蛍光性ナノ粒子と、を含有し、上記炭化水素構造が上記層に固定化されてなる。

【0050】
細胞は、細胞株や細胞状態に合わせて、細胞表層に特定の糖鎖結合性のタンパク質を発現しており、これらのタンパク質に特定の糖鎖構造が結合することで、シグナル伝達や細胞間認識などが行われると考えられている。

【0051】
よって糖鎖結合性によって細胞状態のモニターし、細胞の品質を管理するという本発明の目的に鑑みると、生体内で細胞の表層に見出される糖鎖またはその類似構造を用いることが好ましい。こうした観点からは、例えば、還元末端に、グルコース、ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルマンノサミン、シアル酸、マルトース、イソマルトース、ラクトース、パノース、セロビオース、メリビオース、マンノオリゴ糖鎖、キトオリゴ糖鎖、ラミナリオリゴ糖鎖、グルコサミン、グルクロン酸、フコイダン、デキストラン、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ならびにデルマタン硫酸からなる群より選ばれる1種または2種以上の糖鎖構造を用いることが好ましい。

【0052】
中でも、上記糖鎖が、還元末端に、グルコース、ガラクトース、マンノース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、フコースならびにシアル酸からなる群より選ばれる1種または2種以上の糖鎖構造を用いることが好ましい。

【0053】
なお、上記リガンド複合体に導入されている糖鎖は、還元末端を有するものであれば単糖でもよいし、同一の単糖分子からなる単一オリゴ糖鎖または多糖鎖であってもよいし、種々の単糖分子やその誘導体からなる複合糖鎖・多糖鎖であってもよい。また、上記糖鎖は、いずれも、自然界から単離/精製して得られる種々の天然の糖鎖であってもよく、人工的に合成された糖鎖であってもよい。

【0054】
本明細書において「生体内に見られる糖鎖」とは、動植物や細菌類が持っている糖鎖の意味である。本明細書において「生体内に存在する糖鎖」とは、単糖成分からなるもの、二糖成分からなるもの、三糖成分以上からなるものも含む。

【0055】
(1-2.リンカー化合物、糖鎖リガンド複合体)
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の構成要素である糖鎖リガンド複合体は、任意の蛍光性ナノ粒子と結合することのできるリンカー化合物と、生体内に見られる糖鎖(以下「生体内糖鎖」とする)とから構成されている。

【0056】
そのため、上記糖鎖リガンド複合体は、タンパク質などと疎水性に基づく非特異的な相互作用を形成しないことが必要とされる。好ましくは、上記糖鎖リガンド複合体は、1種または2種以上の糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた1種または2種以上のリンカー化合物とからなり、上記リンカー化合物の主鎖が、その一端に生体内糖鎖と結合したアミノ基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えている。

【0057】
上記炭化水素誘導鎖は、炭素及び水素からなる炭化水素鎖であり、一部の炭素や水素が他の原子や置換基に置き換わっていてもよい。すなわち、上記炭化水素誘導鎖とは、末端にアミノ基を有し、炭化水素鎖の主鎖構造である炭素-炭素結合(C-C結合)の一部が、炭素-窒素結合(C-N結合)、炭素-酸素結合(C-O結合)、アミド結合(CO-NH結合)に置き換わっていてもよいものを指す。

【0058】
また、上記硫黄原子を含む炭化水素構造とは、炭素及び水素からなる炭化水素構造にて、一部の炭素が硫黄に置き換わっているものを意味する。また、この硫黄原子を含む炭化水素構造は、鎖状(直鎖、枝分かれ鎖の両方を含む)であっても、環状であってもよく、また、鎖状構造および環状構造の両方の構造を含んでいてもよい。

【0059】
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子において、上記硫黄原子を含む炭化水素構造は、S-S結合またはSH基を含む炭化水素構造を備えているものであってもよい。つまり、上記硫黄原子を含む炭化水素構造中に、ジスルフィド結合(S-S結合)またはチオール基(SH基)が含まれていてもよい。

【0060】
また、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子において、上記アミノ基は芳香族アミノ基であることが好ましい。還元アミノ化反応の最適条件であるpH3~4においては、アミノ基がプロトン化されないことが必要である。そのため、芳香族との共役によってpH3~4でも非共有電子対が窒素原子上に存在する芳香族アミノ基が好ましい。

【0061】
本発明に利用されるリガンド複合体として好適なものは、WO2005/077965に示されている化合物が挙げられる。具体的には、一般式(1)
【化1】
JP2015219108A_000002t.gif
(式中、p,qはそれぞれ独立して0以上6以下の整数)にて表される構造を備え、上記Xとして、末端に芳香族アミノ基を有するとともに、主鎖に炭素-窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を、1鎖又は2鎖又は3鎖含んでなる構造を備え、上記Yとして、硫黄原子又は硫黄原子を含む炭化水素構造を備えることが好ましい。また、上記Zとして、炭素-炭素結合又は炭素-酸素結合を持つ直鎖構造を備えているリンカー化合物と、還元末端を有する糖とが、上記芳香族アミノ基を介して結合している構造を有していることが好ましい。

【0062】
上記Xは、一般式(2)、または一般式(3)、または一般式(4)
【化2】
JP2015219108A_000003t.gif
【化3】
JP2015219108A_000004t.gif
【化4】
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【化5】
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(式中、m~mはそれぞれ独立して0以上6以下の整数、R’は水素(H)またはR)にて表される構造を備え、上記Rは糖鎖由来化合物(例えば還元末端を有する糖)であることがより好ましく、上記Zは、式(6)または式(7)
【化6】
JP2015219108A_000007t.gif
【化7】
JP2015219108A_000008t.gif
(式中、n,nはそれぞれ1以上6以下の整数)であってもよい。より好ましくは、本発明に利用可能なリガンド複合体は、例えば、一般式(8)、一般式(9)、一般式(10)、一般式(11)、一般式(12)、または一般式(13)
【化8】
JP2015219108A_000009t.gif
【化9】
JP2015219108A_000010t.gif
【化10】
JP2015219108A_000011t.gif
【化11】
JP2015219108A_000012t.gif
【化12】
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【化13】
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(式中、m~mはそれぞれ独立して0以上6以下の整数、n,nはそれぞれ独立して1以上6以下の整数、qは0以上6以下の整数)にて表される構造を有するリンカー化合物の芳香族アミノ基に、還元末端を有する糖が導入された構造を有するものが挙げられる。一般式(13)で表されるリンカー化合物は、発明者らが開発した、それ自体が蛍光性を有するリンカー化合物である(非特許文献7)。

【0063】
本発明に利用可能なリンカー化合物は、例えば、チオクト酸と、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護されたアミン化合物との縮合反応を行い、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護することによって製造される。

【0064】
また、上記一般式(12)にて表されるリンカー化合物は、例えば、γ-メルカプト酪酸の2量体と、2分子の芳香族アミノ基末端が保護基によって保護されたアミン化合物との縮合反応を行い、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護することによって製造される。

【0065】
上記チオクト酸は、
【化14】
JP2015219108A_000015t.gif
にて表される構造を備えており、上記アミン化合物は、保護基によって保護された芳香族アミノ基末端を有するものであれば特に限定されるものではない。

【0066】
本発明の一実施形態において、上記一般式(10)にて表される構造においてnおよびqが0であるリンカー化合物(以下の式(14))
【化15】
JP2015219108A_000016t.gif
に、還元末端を有する糖が導入されたリガンド複合体が用いられる。当該リガンド複合体の製造方法については、(1-5糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の製造方法)で述べる。
一般式(15)
【化16】
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で表されるリンカー化合物は、上述のようにそれ自体が蛍光を呈するリンカー化合物(非特許文献7、以下、「蛍光性リンカー化合物」と称する)であり、当該蛍光を指標として糖鎖リガンド複合体を精製することもできる。

【0067】
一般式(8)~(12)で表されるリンカー化合物は蛍光性リンカー化合物ではないため、これらのリンカー化合物を用いた場合、糖鎖リガンド複合体は白色固体として得られるが、一般式(8)~(12)で表されるリンカー化合物を用いて得られた糖鎖リガンド複合体も、後述する蛍光性ナノ粒子に固定化することができるため、本発明に好適に用いることができる。

【0068】
なお、一般式(10)にて表される構造においてnおよびqが0であるリンカー化合物に還元末端を有する糖が導入された糖鎖リガンド複合体の合成手順は、WO2005/07965号公報に開示されており、一般式(8)、(9)、(11)、(12)で表されるリンカー化合物に還元末端を有する糖が導入された糖鎖リガンド複合体も、同様の手順によって合成することができる。

【0069】
このように本発明に利用可能なリンカー化合物は、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えており、主鎖の一末端にアミノ基を有している。さらに、上記リンカー化合物は、末端にアミノ基を有していることによって、糖鎖分子を簡便に導入することができる。なお、上記アミノ基は、修飾されているアミノ基(例えばアセチル基、メチル基やホルミル基等で修飾されたアミノ基)や、芳香族アミノ基であってもよいし、未修飾のアミノ基であってもよい。

【0070】
上記リンカー化合物は、1種または2種以上を用いることができる。つまり、本発明では、1種類のリンカー化合物(例えば、式(14)で表されるリンカー化合物)を用い、当該リンカー化合物を、1種類の生体内糖鎖(例えば、Fucα1-6Glc糖鎖)と結合させた糖鎖リガンド複合体のみを用いてもよい。

【0071】
また、1種類のリンカー化合物(例えば、式(14)で表されるリンカー化合物)を、2種類以上の生体内糖鎖(例えば、Fucα1-6Glc糖鎖とGalβ1-4Glc糖鎖)と混和し、1種類のリンカー化合物に、それぞれ独立して異なる種類の糖鎖が結合した糖鎖リガンド複合体を調製して用いてもよい。

【0072】
さらに、2種類以上のリンカー化合物(例えば、式(14)で表されるリンカー化合物と、一般式(15)にて表されるリンカー化合物)を用い、これらのリンカー化合物を、1種類の生体内糖鎖(例えば、Fucα1-6Glc糖鎖)または2種類以上の生体内糖鎖(例えば、Fucα1-6Glc糖鎖と、Galβ1-4Glc糖鎖)と結合させた糖鎖リガンド複合体を調製して用いてもよい。

【0073】
糖鎖リガンド複合体には、硫黄原子(S)が含まれており、この硫黄原子(S)は、例えば、蛍光性ナノ粒子に含まれるカドミウム(Cd)と、金属-硫黄結合(Cd-S結合)を形成し、蛍光性ナノ粒子に結合することができる。

【0074】
本発明に利用可能なリンカー化合物は、金属-硫黄結合(例えばCd-S結合)を容易に形成することができるという点で、S-S結合またはSH基が含まれている炭化水素構造を主鎖の他端に備えていることが好ましい。

【0075】
これによって、上記リンカー化合物は、蛍光性ナノ粒子上に糖鎖分子を集合化して配列することができる。ジスルフィド結合(S-S結合)またはSH基中の硫黄(S)は、例えば、蛍光性ナノ粒子上に存在するカドミウム(Cd)と、金属-硫黄結合(Cd-S結合)を形成し、金属との結合を強固にすることができる。

【0076】
そして、上記糖鎖リガンド複合体には、上記リンカー化合物のアミノ基に、生体内糖鎖であって、還元末端を有する糖鎖が導入されている。言い換えれば、上記糖鎖リガンド複合体は、上記リンカー化合物と、還元末端を有する糖鎖とが、アミノ基を介して結合している構造を有している。

【0077】
この糖鎖の導入は、例えば、上記リンカー化合物のアミノ基(-NH基)と糖鎖との還元アミノ化反応によって行うことができる。つまり、平衡によって生じる糖鎖中のアルデヒド基(-CHO基)またはケトン基(-CRO基、Rは炭化水素基)と、上記リンカー化合物が有するアミノ基とが反応する。そして、この反応によって形成されたシッフ塩基を引き続き還元することによって、アミノ基に容易に糖鎖を導入することができる。

【0078】
なお、上記「還元末端を有する糖鎖」とは、アノマー炭素原子が置換を受けていない単糖、オリゴ糖鎖、多糖鎖である。つまり、上記還元末端を有する糖鎖とは、還元糖鎖である。上記還元末端を有する糖鎖としては、市販のものであっても天然のものであってもよく、あるいは、市販および天然の多糖鎖を分解して調製したものを用いることができる。

【0079】
上記還元末端を有する糖鎖としては、例えば、(1-1.生体内に見られる糖鎖)で上述した生体内糖鎖を用いることができる。

【0080】
上記糖鎖リガンド複合体に含まれるリンカー化合物は、金属に結合可能な硫黄原子と、オリゴ糖鎖等の糖鎖分子に結合可能なアミノ基とを有している。従って、例えばCd-S結合などの金属-硫黄結合により上記糖鎖リガンド複合体が蛍光性ナノ粒子上の金属に固定されるので、上記リンカー化合物を介して、本発明に係る蛍光性ナノ粒子に糖鎖分子を強固にかつ簡単に結合させることができるとともに、蛍光性ナノ粒子をコロイド状態で安定化することができる。

【0081】
また、上記糖鎖リガンド複合体の蛍光性ナノ粒子への固定化は、還元剤処理した上記リガンド複合体と蛍光性ナノ粒子を含む溶液とを混和するだけで行うことができるので、非常に容易に糖鎖を固定化することができる。上記還元剤処理に用いる還元剤は水素化ホウ素ナトリウムであることが好ましい。

【0082】
これにより、リンカー化合物内のS-S結合を還元して-SH基に変換し、任意の金属と、金属-硫黄(S)結合、例えばカドミウム-硫黄(Cd-S)結合により結合することができる。

【0083】
また、上記糖鎖リガンド複合体は、リンカー化合物との結合部に水酸基が多く存在する非環状の部分構造が存在するため(つまり、リンカー化合物に結合した還元末端の糖ユニットが、水酸基が多く存在する非環状の部分構造を有するため)、タンパク質との非特異的な相互作用の影響をほとんど無視することができる。それゆえ、上記リンカー化合物を有する上記リガンド複合体を用いることによって、上記糖鎖と細胞との結合性を再現性よく評価することが可能になる。

【0084】
上記糖鎖リガンド複合体は、リンカー化合物と糖鎖分子とを含んでなっているので、リンカー化合物内のS-S結合にて、金属-硫黄(S)結合、例えばカドミウム-硫黄(Cd-S)結合によって、任意の金属と結合することができる。これにより、例えばこのCd-S結合を介して、蛍光性ナノ粒子上に糖鎖分子が固定化されてなる糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を提供することができる。上記任意の金属としては、上記糖鎖リガンド複合体と結合可能なものであればよく、上記カドミウムの他、亜鉛、銅、銀、インジウム等の金属を用いることができるが、特にカドミウム、亜鉛を用いることが好ましい。

【0085】
後述するように、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、第一および第二の金属成分からなる粒子コアが第一および第三の金属成分からなる層によって被覆された蛍光性ナノ粒子を含有する。そして、上記糖鎖リガンド複合体は、リンカー化合物がその他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えているため、上記炭化水素構造が上記層に固定化される。つまり、上記炭化水素構造が備えるS-S結合が、上記層に含有される金属と金属-硫黄(S)結合を形成することによって、上記炭化水素構造が上記層に固定化される。

【0086】
(1-3.オリゴエチレングリコールの固定化)
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、上記糖鎖リガンド複合体を含有するが、糖鎖リガンド複合体に加えて、さらに以下の複合体を含有することが好ましい。すなわち、アミノ化されたオリゴエチレングリコールと、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えたリンカー化合物と、からなり、上記リンカー化合物の主鎖が、その一端に上記アミノ化されたオリゴエチレングリコールと結合したカルボキシル基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えている複合体を含有することが好ましい。

【0087】
つまり、本発明に係る生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子には、固定化した糖鎖の局所密度をオリゴエチレングリコールを共固定化することによって調整した蛍光性ナノ粒子もその適用範囲に含まれる。

【0088】
このような、アミノ化されたオリゴエチレングリコールと、上記リンカー化合物との複合体をさらに含有することによって、オリゴエチレングリコールを上記糖鎖と共に蛍光性ナノ粒子に固定化することができるため、蛍光性ナノ粒子に固定化した糖鎖の局所密度を好適に調整することができる。

【0089】
上記オリゴエチレングリコールとは、エチレングリコールが2個以上10個以下脱水重縮合して得られるアルコールである。中でも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコールを用いることが好ましく、入手が容易であるため、テトラエチレングリコールを用いることが特に好ましい。用いるオリゴエチレングリコールは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。

【0090】
アミノ化されたオリゴエチレングリコールと、リンカー化合物とからなる複合体は、リンカー化合物と、アミノ化したオリゴエチレングリコールとのアミド化縮合反応を行うことによって作製することができる。

【0091】
上記リンカー化合物としては、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備え、上記リ主鎖は、その一端に上記アミノ化したオリゴエチレングリコールと結合するカルボキシル基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えていることが好ましい。例えば、下記一般式(16)にて表される構造を有するリンカー化合物などを用いることができる。用いるリンカー化合物は、1種であっても、2種以上であってもよい。
【化20】
JP2015219108A_000018t.gif
(式中、nは1以上6以下の整数)

【0092】
生体内糖鎖と、オリゴエチレングリコールとの好適なモル比は、用いる生体内糖鎖の種類によって異なるので一概には言えない。例えば後述する実施例に示すように、生体内糖鎖がGlcNAcα1-6Glc糖鎖(化学式18)である場合は、オリゴエチレングリコールが含まれていない方が検出結果が良好であったが、生体内糖鎖がFucα1-6Glc糖鎖(化学式20)である場合は、Fucα1-6Glc糖鎖とテトラエチレングリコールとのモル比が3:7のときに最も良好な検出結果が得られている。

【0093】
したがって、上記モル比は用いる生体内糖鎖の種類によって適宜調整することが好ましい。後述する実施例に示すように、生体内糖鎖がFucα1-6Glc糖鎖のとき、生体内糖鎖と、オリゴエチレングリコールとのモル比が10:0~1:9のいずれでも蛍光を発する凝集体が観察されているため、当該モル比が好適なモル比の一例であると言える。

【0094】
(1-4.蛍光性ナノ粒子)
本実施形態の糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の構成要素である蛍光性ナノ粒子は、第一および第二の金属成分からなる粒子(コア)が第一および第三の金属成分からなる層(シェル)によって被覆されている「コア/シェル」構造を有している。後述するように、蛍光性ナノ粒子は加熱処理されているため、シェル層の表面が均質化されて、上記糖鎖リガンド複合体を効率よく結合させることができ、その結果、蛍光性ナノ粒子上に高い安定性を付与し得る。

【0095】
第一の金属成分は、カドミウム、亜鉛、銀、インジウムおよび硫黄からなる群より選択されることが好ましく、第二の金属成分が、テルルおよび硫黄からなる群より選択されることが好ましい。また、第三の金属成分は、カドミウム、硫黄および亜鉛からなる群より選択されることが好ましい。本発明に使用可能な「コア/シェル」構造の蛍光性ナノ粒子としては、CdTe/CdS、ZAIS/ZnSが挙げられるがこれらに限定されない。なお、ZAISとはZn、Ag、InおよびSを意味する。

【0096】
このように、本発明で開示される糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、蛍光性ナノ粒子として、CdとTeとで構成されるコア/シェル型の量子ドットをその基本構造としているが、Zn、Ag、In、およびSから構成されるZAISと一般に称されるナノ粒子を用いた場合もその適用範囲に含まれる。

【0097】
1つの局面において、上記蛍光性ナノ粒子の製造方法は、第一の金属成分を含む第一溶液と、第二の金属成分を含む第二溶液とを加熱条件下にて混合し、第一溶液と第二溶液との混合溶液を室温に冷却し、第一および第二の金属成分からなる粒子を混合溶液から精製することによって行われ、第一工程において混合された溶液が第三の金属成分をさらに含んでいることによって、第一および第二の金属成分からなる粒子が、第一および第三の金属成分からなる層によって被覆される。

【0098】
別の局面において、上記蛍光性ナノ粒子の製造方法は、第一の金属成分を含む第一溶液と、第二の金属成分を含む第二溶液とを加熱条件下にて混合し、第一溶液と第二溶液との混合溶液を室温に冷却し、第一および第二の金属成分からなる粒子を混合溶液から精製し、精製した粒子および第三の金属成分を含む水溶液を加熱処理することによって、第一および第二の金属成分からなる粒子が、第一および第三の金属成分からなる層によって被覆される。

【0099】
粒子コアを精製した後に加熱処理を行うことによって、シェル層の表面の均質化がより一層改善されて、上記糖鎖リガンド複合体の上記蛍光性ナノ粒子への結合性が著しく向上する。この場合、精製の前に行われる加熱処理は、30分間~8時間にわたって行われることが好ましい。これにより、粒径が均一でありかつ高い水分散性を有する糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子が得られる。

【0100】
なお、本明細書において、「室温」は通常の実験室内での温度であり、20~30℃が好ましいが、加熱処理における反応を停止することができる温度であれば特に限定されず、いわゆる低温室における温度(例えば4℃)であってもよい。

【0101】
本実施形態において、第一溶液は、第一の金属成分の塩または錯塩が溶解した溶液であり、第二溶液は、第二の金属成分の塩または錯塩が溶解した溶液であっても、親水化された第二の金属成分が溶解した溶液であってもよい。

【0102】
(1-5.糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の製造方法)
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子)は、以下のようにして作製することができる。ここでは、生体内糖鎖として、Fucα1-6Glc糖鎖を用い、リンカー化合物として式(14)で表されるリンカー化合物を用いる場合について説明するが、他の生体内糖鎖および他のリンカー化合物を用いる場合も、以下の方法に準じて糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を作製することができる。

【0103】
まず、化学合成により、保護基を有するフコース成分を調製する。その後、保護基をしたグルコースを反応させる。最後に、保護基を除去して、還元末端にフコースを有するFucα1-6Glc糖鎖を合成する。

【0104】
次いで、その糖鎖に、式(14)で表される独自開発のリンカー化合物を還元アミノ化反応によって導入し、利用して精製し、糖鎖リガンド複合体(Fucα1-6Glc糖鎖リガンド複合体)を得る。その糖鎖リガンド複合体を既存の方法(特許文献2、非特許文献6)によってコア/シェル型の蛍光性ナノ粒子に固定化し、遠心限界濾過法を用いて精製することによって、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を作製することができる。

【0105】
ここで、上記既存の方法について説明する。本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、加熱処理した親水性の蛍光性ナノ粒子を含む溶液と、還元剤処理した上記糖鎖リガンド複合体との混和によって得ることができ、糖鎖リガンド複合体のS-S結合の各S原子が、蛍光性ナノ粒子上の金属と金属-硫黄結合によって結合する。得られる糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は水溶液中で分散する。

【0106】
具体的には、例えば、蛍光性ナノ粒子の溶液に、還元剤処理した上記糖鎖リガンド複合体を含む溶液を添加することによって、上記糖鎖リガンド複合体のS-S結合を、蛍光性ナノ粒子上の金属-硫黄結合に変換して、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を得ることができる。

【0107】
また、上述した、アミノ化されたオリゴエチレングリコールと上記リンカー化合物との複合体をさらに含有させる場合は、当該複合体を含む溶液をさらに添加すればよい。

【0108】
なお、親水性の蛍光性ナノ粒子の加熱処理の条件は、特に限定されるものではないが、チオール安定化剤の存在下にて、50~200℃で行われることが好ましく、70~180℃がより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。チオール安定化剤としては、特に限定されないが、チオアセトアミド、3-メルカプトプロピオン酸(3-MPA)、チオグリコール酸(TGA)、4-メルカプトブタン酸、システイン、シスタミンなどのチオ化合物および塩類が挙げられる。

【0109】
還元剤処理に用いられる還元剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの塩類および陽イオン成分が異なる塩類等を挙げることができる。

【0110】
蛍光性ナノ粒子および糖鎖リガンド複合体を含む溶液に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、これらの混合溶媒等を挙げることができる。

【0111】
糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の精製は、例えば上記混和によって得られた糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を遠心濾過し、低分子の塩などの成分を除くことによって行うことができ、溶液状態で安定な糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を得ることができる。

【0112】
糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を調製するために用いる金属ナノ粒子、上記糖鎖リガンド複合体、還元剤の混合比は、特に限定されるものではないが、金属成分としてカドミウムが含まれる場合は、蛍光性ナノ粒子および糖鎖リガンド複合体を含む溶液中のカドミウム濃度が、最終濃度で0.1mM~1mMであることが好ましい。

【0113】
上記糖鎖リガンド複合体の濃度は、蛍光性ナノ粒子および糖鎖リガンド複合体を含む溶液中の最終濃度として0.1mM~10mMであることが好ましい。

【0114】
また、上述した、アミノ化されたオリゴエチレングリコールと上記リンカー化合物との複合体を用いる場合、当該複合体の濃度は、上記溶液中の最終濃度として、0.1mM~10mMであることが好ましい。

【0115】
また、用いられる還元剤の濃度は、上記溶液中の最終濃度として糖鎖リガンド複合体濃度の10倍モル濃度であることが好ましい。

【0116】
蛍光性ナノ粒子に糖鎖が固定化されていることについては、例えば、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子をMALDI-TOF型の質量分析計で測定すればよい。この際、蛍光性ナノ粒子と硫黄-金属結合で固定化されている糖鎖リガンド複合体(生体内糖鎖リガンド複合体)が、硫黄-金属結合で還元的に解離するために、生体内糖鎖リガンド複合体が蛍光性ナノ粒子に固定化されている場合は、それに相当する分子イオンピーク(m/Z)が観測される。

【0117】
また、生体内糖鎖を構成している糖鎖と特異的に結合することが既知であるレクチン(糖鎖結合性蛋白質)を用いて、生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の凝集と遠心分離による沈殿物生成を調べればよい。

【0118】
すなわち、上記レクチンと、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を含む溶液とを混和し、糖鎖とタンパク質とを相互作用させて特異的に結合させ、凝集物の生成を確認することによって、蛍光性ナノ粒子に糖鎖が固定化されていることを確認することができる。

【0119】
上記レクチンとしては、例えば、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の末端に位置する糖鎖がグルコースの場合は、グルコースを認識することができるタンパク質であるコンカナバリンA(ConA)、レンチルレクチン(LCA)、エンドウマメレクチン(PSA)等を用いることができる。

【0120】
同様に、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の末端に位置する糖鎖がガラクトースである場合は、ガラクトースを認識するタンパク質であるヒママメレクチン(RCA120)等を用いることができる。また、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の末端に位置する糖鎖がN-アセチルグルコサミンである場合は、N-アセチルグルコサミンを認識するタンパク質である小麦胚芽レクチン(WGA)等を用いることができる。

【0121】
〔2.糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を用いた細胞結合性評価方法〕
本発明に係る細胞の糖鎖結合性の評価方法は、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子と、細胞を混和することによって、上記糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子に固定化された糖鎖と細胞を結合させる工程を含むものである。

【0122】
上記糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子には、既に説明したように、1種または2種以上の生体内糖鎖が固定化されている。糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を細胞と混和すると、糖鎖構造によって異なる結合性を示すため、蛍光を指標にして、フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡等の機器によって、細胞の糖鎖結合性を評価することができる。

【0123】
細胞としては、株化細胞であってもよいし、初代培養細胞でもよい。またヒト由来の細胞であってもよいし、ヒト以外の哺乳類由来の細胞であってもよい。

【0124】
糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子と、上記細胞懸濁液との混和は、糖鎖固定化ナノ粒子を含む溶液と、上記細胞懸濁液とを近接させて、糖鎖と細胞の結合が可能な状況を提供しうるものであればよい。例えば、プラスチックチューブなどに細胞懸濁液を入れ、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を含む溶液を添加して放置することにより混和を行うことができる。

【0125】
上記「糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を含む溶液」とは、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子が液体に分散したコロイド溶液が意図される。糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を含んでいれば、他に塩などが含まれていてもよい。上記液体としては、例えば水や緩衝液等を用いることができる。

【0126】
上記混和を行うことによって、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子が、上記細胞に結合するため、この細胞懸濁液をフローサイトメーターおよび蛍光顕微鏡等の機器を用いて、糖鎖の結合性を評価することができる。

【0127】
例えば、作製した糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(生体内糖鎖を固定化した蛍光性ナノ粒子)を緩衝液で希釈し、細胞懸濁液に加えてプラスチックチューブ中で混和し、15分から3時間放置した後、遠心分離する。細胞をPBSで洗浄した後、再びPBSに懸濁し、フローサイトメトリーによって解析することで細胞を糖鎖結合性を解析できる。

【0128】
以上のように、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を用いることによって、細胞の状態を評価できる。

【0129】
〔3.細胞品質管理に用いる試薬〕
本発明の生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、細胞結合性を有しており、細胞の糖鎖結合性パターンを解析することよって、株化細胞をはじめとする様々な細胞において、品質評価を行うことができる試薬として利用可能である。すなわち、本発明に係る細胞の品質評価に用いる試薬は、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を含有する。

【0130】
上述したように、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、1種または2種以上の生体内糖鎖と、上述したリンカー化合物とからなる糖鎖リガンド複合体が、上述した蛍光性ナノ粒子に固定化されてなるものである。そのため、1種または2種以上の上記生体内糖鎖と細胞の結合性を解析することによって、細胞状態を評価することができる。

【0131】
それゆえ、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を含有する試薬を、細胞の品質を管理するための試薬として用いることができる。

【0132】
糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、上述したようにコロイド溶液として用いることが好ましいため、上記試薬は、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子が液体に分散したコロイド溶液の形態であることが好ましい。本発明に細胞の品質評価試薬において、本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子以外に含有しうる成分としては、例えば水、緩衝液、上述したアミノ化されたオリゴエチレングリコールと上記リンカー化合物との複合体等がある。

【0133】
上記コロイド溶液において、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を構成する糖鎖リガンド複合体の濃度は、上述したように、溶液中の最終濃度として0.1mM~10mMであることが好ましい。また、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を調製するために用いる金属ナノ粒子、上記糖鎖リガンド複合体、還元剤の混合比は、特に限定されるものではないが、金属成分としてカドミウムが含まれる場合は、溶液中のカドミウム濃度が、最終濃度で0.1mM~1mMであることが好ましい。用いられる還元剤の濃度は、溶液中の最終濃度として糖鎖リガンド複合体濃度の10倍モル濃度であることが好ましい。

【0134】
なお、本発明は以下のように構成することも可能である。

【0135】
本発明に係る生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、生体内に見られる糖鎖とカドミウム及びテルルからなる蛍光を発する金属ナノ粒子からなる。

【0136】
本発明に係る細胞の品質評価方法は、上記生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子と細胞を混合することによって、細胞に糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を結合させ、その結合パターンから、細胞の状態を判別し、品質の評価を行う。

【0137】
本発明に係る生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、生体内糖鎖と亜鉛、銀、インジウム、硫黄からなる蛍光を発する金属ナノ粒子からなる。

【0138】
本発明に係る細胞の結合性を評価する方法は、上記生体内糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子と細胞を混合することによって、細胞に糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子を結合させ、その結合パターンから、細胞の状態を判別し、品質を評価する。

【0139】
本発明に係る株化細胞をはじめとした細胞状態の判別試薬は、本発明に係る糖鎖またはナノ粒子を含む。

【0140】
本発明では以上の知見にもとづき、新規な細胞状態の判別のための検査キットの開発を目指し、生体内に見られる糖鎖部分を固定化した蛍光性ナノ粒子を調製した。

【0141】
本発明は、医学上または産業上有用な方法・物質として下記1)~3)の発明を含むものである。
1)生体内に見られる糖鎖部分にリンカー化合物を結合させた構造を有する糖鎖リガンド複合体。
2)平均粒子径が8.9nmの大きさをもつ、上記糖鎖リガンド複合体とが固定化された蛍光性ナノ粒子。
3)蛍光性ナノ粒子には、コアシェル構造を有するカドミウムとテルル、または亜鉛、銀、インディウム、硫黄を構成元素としてもつ半導体ナノ粒子。

【0142】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0144】
〔実施例1:糖鎖リガンド複合体の合成〕
図1は、末端にα-N-アセチルグルコサミンを含有する糖鎖リガンド複合体(GlcNAcα1-6Glc-mono)の化学構造を示す図である。当該糖鎖リガンド複合体は、以下の手順で合成された。
【実施例】
【0145】
式14に示すリンカー化合物(99.1mg,339μmol)と末端にα-N-アセチルグルコサミンを含有する二糖(97.3mg,261μmol)をジメチルアセトアミド/水(1:1,7.00ml)に溶解し、酢酸(1.40ml)を加え、40℃で5時間放置した。反応液にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(170mg,2.61mmol)を加え、40℃でさらに72時間放置した。その後、水を加え凍結乾燥させ、得られた残渣を、Chromatorex ODSを用いたカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。GlcNAcα1-6Glc-monoは白色の固体として得られた。収量は、132mg(76.2%)であった。スペクトルデータは以下の通りである。
【実施例】
【0146】
GlcNAcα1-6Glc-mono
H-NMR(600MHz,DO)δ7.02(1H,t,J=8.2Hz,aromatic),6.78(1H,s,aromatic),6.65(1H,d,J=8.2Hz,aromatic),6.38(1H,d,J=8.2Hz,aromatic),4.61(1H,d,J1‘,2’=3.4Hz,H-1‘),3.76(1H,ddd,J2,3=6.8Hz,J2,1a=5.4Hz,J2,1b=4.8Hz,H-2),3.73-3.60(5H,m,H-3,H-5,H-6a,H-2’,H-6a‘),3.55-3.49(5H,m,H-4,H-3’,H-5‘,H-6b’,-SSCHCHCH=),3.39(1H,d,J6a,6b=8.2Hz,H-6b),3.23(1H,dd,J4‘,3’=8.8Hz,J4‘,5’=9.5Hz,H-4‘),3.17(1H,dd,J1a,2=4.8Hz,J1a,1b=8.8Hz,H-1a),3.07(1H,ddd,J=10.7Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),3.01(1H,ddd,J=11.3Hz,6.8Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.94(1H,dd,J1b,2=5.4Hz,J1b,1a=8.2Hz,H-1b),2.32(1H,dddd,J=12.7 Hz,6.1Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.22(2H,t,J=7.48Hz,-NHCOCH-),1.83(3H,s,-COCH),1.82-1.78(1H,m,-SSCHCHCH=),1.64-1.59(1H,m,-NHCOCHCH-),1.55-1.44(3H,m,-NHCOCHCH-,-NHCOCHCHCHCH-),1.34-1.27(2H,m,-NHCOCHCHCH-).
【実施例】
【0147】
HRMS(positive mode);Found:m/z 686.2391[(M+Na)],Calcd.for C264211Na:686.2388.
【実施例】
【0148】
図2、図3にて表される糖鎖リガンド複合体も上記と同様の手順で合成された。これらのリガンド複合体のH-NMRスペクトルを測定し、得られたチャートより、リガンド複合体の構造が確認されている。スペクトルデータは以下の通りである。
【実施例】
【0149】
図2は、末端にβ-N-アセチルガラクトサミンを含有する糖鎖リガンド複合体(GalNAcβ1-3Glc-mono)の化学構造を示す図である。上記と同様の手順で合成され、スペクトルデータは以下の通りである。
【実施例】
【0150】
GalNAcβ1-3Glc-mono
H-NMR(600MHz,DO)δ7.02(1H,t,J=8.2Hz,aromatic),6.78(1H,s,aromatic),6.65(1H,d,J=8.2Hz,aromatic),6.38(1H,d,J=8.2Hz,aromatic),4.61(1H,d,J1‘,2’=3.4Hz,H-1‘),3.76(1H,ddd,J2,3=6.8Hz,J2,1a=5.4Hz,J2,1b=4.8Hz,H-2),3.73-3.60(5H,m,H-3,H-5,H-6a,H-2’,H-6a‘),3.55-3.49(5H,m,H-4,H-3’,H-5‘,H-6b’,-SSCHCHCH=),3.39(1H,d,J6a,6b=8.2Hz,H-6b),3.23(1H,dd,J4‘,3’=8.8Hz,J4‘,5’=9.5Hz,H-4‘),3.17(1H,dd,J1a,2=4.8Hz,J1a,1b=8.8Hz,H-1a),3.07(1H,ddd,J=10.7Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),3.01(1H,ddd,J=11.3Hz,6.8Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.94(1H,dd,J1b,2=5.4Hz,J1b,1a=8.2Hz,H-1b),2.32(1H,dddd,J=12.7 Hz,6.1Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.22(2H,t,J=7.48Hz,-NHCOCH-),1.83(3H,s,-COCH),1.82-1.78(1H,m,-SSCHCHCH=),1.64-1.59(1H,m,-NHCOCHCH-),1.55-1.44(3H,m,-NHCOCHCH-,-NHCOCHCHCHCH-),1.34-1.27(2H,m,-NHCOCHCHCH-);HRMS(positive mode);Found:m/z 686.2391[(M+Na)],Calcd.for C264211Na:686.2388.
【実施例】
【0151】
図3は、末端にα-フコースを含有する糖鎖リガンド複合体(Fucα1-6Glc-mono)の化学構造を示す図である。上記と同様の手順で合成され、スペクトルデータは以下の通りである。
【実施例】
【0152】
Fucα1-6Glc-mono
H-NMR(600MHz,DO)δ7.02(1H,t,J=8.2Hz,aromatic),6.78(1H,s,aromatic),6.65(1H,d,J=8.2Hz,aromatic),6.38(1H,d,J=8.2Hz,aromatic),4.61(1H,d,J1‘,2’=3.4Hz,H-1‘),3.76(1H,ddd,J2,3=6.8Hz,J2,1a=5.4Hz,J2,1b=4.8Hz,H-2),3.73-3.60(5H,m,H-3,H-5,H-6a,H-2’,H-6a‘),3.55-3.49(5H,m,H-4,H-3’,H-5‘,H-6b’,-SSCHCHCH=),3.39(1H,d,J6a,6b=8.2Hz,H-6b),3.23(1H,dd,J4‘,3’=8.8Hz,J4‘,5’=9.5Hz,H-4‘),3.17(1H,dd,J1a,2=4.8Hz,J1a,1b=8.8Hz,H-1a),3.07(1H,ddd,J=10.7Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),3.01(1H,ddd,J=11.3Hz,6.8Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.94(1H,dd,J1b,2=5.4Hz,J1b,1a=8.2Hz,H-1b),2.32(1H,dddd,J=12.7Hz,6.1Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.22(2H,t,J=7.48Hz,-NHCOCH-),1.83(3H,s,-COCH),1.82-1.78(1H,m,-SSCHCHCH=),1.64-1.59(1H,m,-NHCOCHCH-),1.55-1.44(3H,m,-NHCOCHCH-,-NHCOCHCHCHCH-),1.34-1.27(2H,m,-NHCOCHCHCH-);HRMS(positive mode);Found:m/z 686.2391[(M+Na)],Calcd.for C264211Na:686.2388.
【実施例】
【0153】
図4は、末端にα-マンノースを含有する糖鎖リガンド複合体(Manα1-6Glc-mono)の化学構造を示す図である。上記と同様の手順で合成され、スペクトルデータは以下の通りである。
【実施例】
【0154】
Manα1-6Glc-mono:
H-NMR(600MHz,DO)δ7.20(1H,t,J=8.2Hz,aromatic),6.95(1H,s,aromatic),6.85(1H,J=7.5Hz,d,aromatic),6.58(1H,d,J=7.5Hz,aromatic),4.82(1H,s,H-1‘),3.97-3.92(1H,ddd,J2,3=7.7Hz,J2,1a=4.1Hz,J2,1b=4.1Hz,H-2),3.92-3.88(1H,m,H-2’),3.88-3.80(4H,m,H-3,H-6a,H-6a‘,H-6b’),3.80-3.76(1H,dd,J3‘,4’=6.1Hz,J3‘,2’=3.4Hz,H-3‘),3.73-3.59(6H,m,H-4,H-5,H-6b,H-4’,H-5‘,-SSCHCHCH=),3.35(1H,dd,J1a,2=4.1Hz,J1a,1b=9.5,H-1a),3.25(1H,ddd,J=10.1Hz,6.8Hz,6.8Hz,-SSCHCHCH=),3.19(1H,ddd,J=10.1Hz,6.8Hz,6.8Hz,-SSCHCHCH=),3.16-3.11(1H,dd,J1b,1a=8.2Hz,J1b,2=5.4Hz,H-1b),2.50(1H,dddd,J=12.3Hz,6.1Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.40(2H,t,J=6.8Hz,-NHCOCH-),2.00(1H,dddd,J=12.3Hz,6.1Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),1.82-1.76(1H,m,-NHCOCHCH-),1.76-1.64(3H,m,-NHCOCHCH-,-NHCOCHCHCHCH-),1.53-1.47(2H,m,-NHCOCHCHCH-);HRMS(positive mode);Found:m/z 645.2126[(M+Na)+],Calcd.for C264211Na:645.2122.
【実施例】
【0155】
図5は、末端にシアリルα2-3-β-ガラクトースを含有する糖鎖リガンド複合体(SAα2-3Galβ1-4Glc-mono)の化学構造を示す図である。上記と同様の手順で合成され、スペクトルデータは以下の通りである。
【実施例】
【0156】
SAα2-3Galβ1-4Glc-mono
H-NMR(600MHz,DO)δ7.40(1H,t,J=8.2Hz,aromatic),7.34(1H,s,aromatic),7.21(1H,d,J=8.2Hz,aromatic),6.90(1H,d,J=8.2Hz),7.41-6.90(4H,m,aromatic),4.58(1H,dd,J1‘,2’=7.5Hz,H-1‘),4.09-4.08(2H,m,H-2,H-3’),3.96-3.58(18H,m,H-3,H-4,H-5,H-6a,H-6b,H-2‘,H-4’,H-5‘,H-6a’,H-6b‘,H-4“,H-5”,H-6“,H-7”,H-8“,H-9a”,H-9b“,-SSCHCHCH=),3.52-3.49(1H,m,H-1a),3.37-3.26(2H,m,H-1b,-SSCHCHCH=),3.23(1H,ddd,J=11.3Hz,6.8Hz,6.8Hz,-SSCHCHCH=),2.78-2.76(1H,m,H-3a”),2.59-2.52(1H,m,-NHCOCHCH-),2.47(2H,t,J=6.8Hz,NHCOCHCH),2.06(3H,s,-COCH),2.05-2.01(1H,m,-SSCHCHCH=),1.83-1.71(5H,m,H-3b“,-NHCOCHCH-,-NHCOCHCHCHCH2-),1.55-1.53(2H,m,-NHCOCHCHCH-);HR-MS(positive mode);Found:m/z 958.2894[(M+2Na)],Calcd.for C375819Na:958.2896.
【実施例】
【0157】
図6は、末端にシアリルα2-6-β-ガラクトースを含有する糖鎖リガンド複合体(SAα2-6Galβ1-4Glc-mono)の化学構造を示す図である。上記と同様の手順で合成され、スペクトルデータは以下の通りである。
【実施例】
【0158】
SAα2-6Galβ1-4Glc-mono
H-NMR(600MHz,DO)δ7.28(1H,t,J=7.5Hz,aromatic),7.25-7.23(2H,m,aromatic),6.71(1H,d,J=6.8Hz,aromatic),4.47(1H,d,J1‘,2’=8.2Hz,H-1‘),4.04(1H,m,H-2),3.93-3.52(19H,m,H-3,H-4,H-5,H-6a,H-6b,H-2’,H-3‘,H-4’,H-5‘,H-6a’,H-6b‘,H-4“,H-5”,H-6“,H-7”,H-8“,H-9a”,H-9b“,-SSCHCHCH=),3.43(1H,dd,J1a,1b=8.8Hz,J1a,2=4.1Hz,H-1a),3.31-3.29(2H,m,H-1b,-SSCHCHCH=),3.24(1H,ddd,J=10.7Hz,6.8Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.75-2.72(1H,m,H-3a”),2.55(1H,dddd,J=12.3Hz,6.1Hz,6.1Hz,6.1Hz,-SSCHCHCH=),2.45(2H,t,J=6.8Hz,-NHCOCH-),2.06(3H,s,-COCH),2.04-2.02(1H,m,-NHCOCHCH-),1.82-1.76(1H,m,-NHCOCHCH-),1.86-1.69(4H,m,H-3b“,-NHCOCHCH-,-NHCOCHCHCH-),1.55-1.53(2H,m,-NHCOCHCHCH-);HRMS(positive mode);Found:m/z 958.2892[(M+2Na)+],Calcd.for C375819Na:958.2896.
【実施例】
【0159】
〔実施例2:GlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の調製〕
蛍光性ナノ粒子成分については、特許文献2にしたがい図7に示す方法で合成した。10μMのCdTe/CdS core/shell QD溶液400μLを分注し、Amicon Ultra 10K(Millipore、MA、USA)を用いて遠心濾過(14000g、5分間)し、続いて、ナノ粒子を200μLの超純水に懸濁した。
【実施例】
【0160】
実施例1で調製したGlcNAcα1-6Glc-mono(10mM、100μL)にNaBHの水溶液(100mM、100μL)を室温で混合し、10分間放置した。その後、先に調製したQD溶液200μLを、上記10分間放置した溶液に加え、暗所で室温にて24時間撹拌した。未反応の糖鎖リガンド複合体はAmicon Ultra 10K(Millipore、MA、USA)を用いた遠心限外濾過(14000×g、5min)によって除去し、さらに引き続いて超純水で3回洗浄し、沈殿物を最後にPBSに懸濁させることによってGlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αGlcNAc-FNP)溶液を調製した。
【実施例】
【0161】
図8は、GlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αGlcNAc-FNP)のDLS測定による粒径分布を示す図である。図8に示すように、DLS測定(使用機器:Zetasizer Nano ZS90、Malvern Instruments、Worcestershire、UK)によれば、このナノ粒子(αGlcNAc-FNP)の平均粒子径は9.1nmであった。
【実施例】
【0162】
GalNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αGalNAc-FNP)、Manα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αMan-FNP)、SAα2-3Galβ1-4Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(SAα2-3Gal-FNP)、SAα2-6Galβ1-4Glc-mono糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(SAα2-6Gal-FNP)も同様の方法で合成した。
【実施例】
【0163】
〔実施例3:Fucα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の調製〕
蛍光性ナノ粒子成分については、特許文献2にしたがい図7に示す方法で合成した。10μMのCdTe/CdS core/shell QD溶液400μLを分注し、Amicon Ultra 10K(Millipore、MA、USA)を用いて遠心濾過(14000g、5分間)し、続いて、ナノ粒子を200μLの超純水に懸濁した。
【実施例】
【0164】
実施例1で調製したFucα1-6Glc-mono(10mM、30μL)と、特許文献2にしたがって合成した式(23)に示すTEG-mono(10mM、70μL)
【化21】
JP2015219108A_000019t.gif
との混合液に、NaBHの水溶液(100mM、100μL)を室温で混合し、10分間放置した。この場合、Fucα1-6GlcとTEGとのモル比は3:7となる。その他に、Fucα1-6Glc糖鎖とTEGとのモル比が10:0、5:5、1:9となるように調製した。未反応の糖鎖リガンド複合体はAmicon Ultra 10 K(Millipore、MA、USA)を用いた遠心限外濾過(14000g、5min)によって除去し、さらに引き続いて超純水で3回洗浄し、沈殿物を最後にPBSに懸濁させることによってFucα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αFuc-FNP)溶液を調製した。
【実施例】
【0165】
図9は、Fucα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αFuc-FNP)のDLS測定による粒径分布を示す図である。図9に示すように、DLS測定(使用機器:Zetasizer Nano ZS90、Malvern Instruments、Worcestershire、UK)によれば、このナノ粒子(αFuc-FNP)の平均粒子径は11.4nmであった。
【実施例】
【0166】
〔実施例4:固定化した糖鎖リガンド複合体のMALDI-TOF/MSによる確認〕
実施例2で調製したGlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子のPBS溶液1μLを飽和DHBA溶液(水/メタノール 1/1溶液)10μLと混合し、1μLを測定プレートに載せ、自然乾燥させた。そのプレートをVoyager-DE-PRO(Applied Biosystems、CA、USA)の測定部へ入れ、質量分析を行った。
【実施例】
【0167】
図10は、αGlcNAc-FNPのPositive modeによるMALDI-TOF/MS分析の結果を示す図である。
【実施例】
【0168】
図10に示すように、実施例2で調製したGlcNAcα1-6Glc固定化糖鎖リガンド複合体と同じ質量数を有するピーク(m/Z値)が得られ、蛍光性ナノ粒子にGlcNAcα1-6Glc糖鎖が固定化されていることが確認された。
【実施例】
【0169】
〔実施例5:糖鎖-タンパク質相互作用の測定1〕
蛋白質Wheat Germ Agglutinin(WGA)、Concanavalin A(ConA)、Ricin communis agglutinin I(RCA120)、Bovine serum albumin(BSA)に対してのSFNP(1μM)の結合活性を調べた。BSA以外は、糖鎖結合性蛋白質(レクチン)である。
【実施例】
【0170】
WGA、ConA、RCA120、BSAを2μMの濃度となるように、それぞれPBSに溶解させ、その10μLを200μLの容量のプラスチックチューブに移した。
【実施例】
【0171】
そこに、実施例3で調製したSFNPの1μMのPBS溶液を10μL加え、ボルテックスミキサーで撹拌後、室温で暗所に一定時間(3時間)放置し、14000gで5分間遠心分離を行った。上記チューブに紫外光を照射し、沈殿物の蛍光を観測して写真撮影を行った後、上清の蛍光スペクトルを測定した。
【実施例】
【0172】
図11は、GlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子(αGlcNAc-FNP)と糖鎖結合性タンパク質との凝集実験における遠心分離後の沈殿物の蛍光発光の結果を示す図であり、図12は、上記遠心分離後の上澄みの蛍光スペクトルを示す図である。
【実施例】
【0173】
図11に示すように、WGAにのみ、目視で判別可能な蛍光を発する沈殿が生じた。また、図12に示すように、WGAの上澄みの蛍光強度だけが大きく減少した。図11および図12より、GlcNAcα1-6Glc糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の糖鎖が特異的にWGAと結合し、その結果、会合体を形成したことが分かる。
【実施例】
【0174】
〔実施例6:細胞の糖鎖結合性評価1〕
実施例2,3で調製したSFNPの細胞結合性をフローサイトメトリー(FACS)を用いて解析した。コントロールとしてテトラエチレングリコール(TEG)を固定化したナノ粒子(TEG-FNP)を用いた。
【実施例】
【0175】
細胞には、癌細胞として子宮頚癌由来の細胞であるHeLa細胞、肝臓癌由来細胞であるHuH-7細胞およびHepG2細胞、腎臓癌由来の細胞であるVMRC-RCW細胞、皮膚類上皮癌由来の細胞であるA431細胞を用い、正常細胞には正常腎臓由来の細胞であるRPTEC細胞、正常皮膚由来の細胞であるHs68細胞を用いた。細胞を5×10個/mLに希釈した後、6ウェルまたは12ウェルプレートに1mLずつ播種し、37℃で12~48時間培養した。その後、培養上清を除去し、100μg/mLのSFNPまたはTEG-FNPを含む培地を加えて37℃で3時間培養した。SFNPまたはTEG-FNPを含む培地を除去した後、PBSで2回洗浄し、セルスクレイパーで細胞をプレートから剥がし、細胞を含むPBS溶液を調製した。この溶液を、FACS解析に供した。
【実施例】
【0176】
図13は、HeLa細胞に対するSFNPの結合性を示すヒストグラムであり、横軸は蛍光強度、縦軸は細胞数、また黒色線は細胞のみ(コントロール)を示す。図14は、HeLa細胞の糖鎖結合性を示すグラフであり、細胞のみの蛍光強度中央値を1としたSFNPを加えた細胞の相対的な蛍光強度中央値のグラフである。図15は、細胞種ごとの糖鎖結合性を示すグラフである。図16は、同組織由来の癌細胞と正常細胞の糖鎖結合パターンを比較したグラフである。
【実施例】
【0177】
図13に示すように、細胞結合性を持つSFNPでは、右側へのピークシフトが観察され、細胞結合性を持たないTEG-FNPはピークシフトが観察されなかった。また、図14に示すように、HeLa細胞に対するSFNPの細胞結合性は糖鎖構造ごとに異なり、図15および図16に示すように、細胞種ごとに異なるSFNPの結合性パターンを示し、癌細胞と正常細胞でもSFNPの結合性パターンは異なる。
【実施例】
【0178】
〔実施例7:細胞の糖鎖結合性に基づくクラスター解析1〕
実施例6で解析した細胞のSFNPの結合性に基づくクラスター解析により細胞種の分類を行った。
【実施例】
【0179】
クラスター解析には、データ解析ソフトIBM SPSS Statistics 21を用いた。フローサイトメトリー解析で得られた相対的蛍光強度中央値を変数として、Ward’s法をもちいて算出した。
【実施例】
【0180】
図17は、クラスター解析による細胞の系統樹である。
【実施例】
【0181】
図17に示すように、糖鎖の結合性に基づき、細胞種の分類や癌細胞と正常細胞の区別ができることが分かる。
【実施例】
【0182】
〔実施例8:細胞の糖鎖結合性評価2〕
細胞へのストレス刺激として細胞の増殖阻害がかかる過密度条件での継代培養を行い、実施例6と同様に、実施例2,3で調製したSFNPの細胞への結合性をフローサイトメトリー(FACS)を用いて解析した。
【実施例】
【0183】
細胞には、子宮頸癌由来の細胞であるHeLa細胞を用い、70%コンフルエントまたは100%コンフルエントに達してから、5~8代継代した細胞を用いた。
【実施例】
【0184】
図18は、70%コンフルエントまたは100%コンフルエントに達した細胞の形態を示す図であり、図19は、上記の細胞のSFNPの結合性を示すグラフである。
【実施例】
【0185】
図18に示すように、2つの条件で細胞形態の違いはなかった。しかし、図19に示すように、SFNPの結合パターンは大きく異なり、100%コンフルエントで継代した細胞は、SFNPに対する結合性に大きなバラつきがあることが観察された。図18および19より、細胞の糖鎖結合性を解析することで、細胞の形態観察だけでは分からない細胞の状態変化を判別、解析できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明に係る糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子は、生体内に見られる糖鎖構造を蛍光性ナノ粒子に結合させたものである。細胞は、糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子に対して細胞種、細胞状態に応じて異なる結合性を示すため、この結合性を解析することによって、様々な細胞の状態を判別、評価でき、細胞の品質管理に適用できる。したがって、培養細胞を用いる再生医療、抗体医薬、ワクチン開発等において広く利用することが可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
17
【図19】
18