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明細書 :空中窒素固定化材料及び固定化方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-218101 (P2015-218101A)
公開日 平成27年12月7日(2015.12.7)
発明の名称または考案の名称 空中窒素固定化材料及び固定化方法
国際特許分類 C01C   1/16        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  31/38        (2006.01)
C01C   1/02        (2006.01)
FI C01C 1/16 Z
B01J 35/02 J
B01J 31/38 M
C01C 1/02 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-105224 (P2014-105224)
出願日 平成26年5月21日(2014.5.21)
発明者または考案者 【氏名】星野 勝義
【氏名】秋葉 大
【氏名】小林 達郎
【氏名】青木 伸之
出願人 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100121658、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 昌義
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
Fターム 4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BA48A
4G169BC66B
4G169BE07A
4G169BE07B
4G169BE21A
4G169BE21B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB82
4G169DA05
4G169EB18Y
4G169FA02
4G169FB02
4G169FB06
4G169FB46
4G169HA01
4G169HB01
4G169HD03
4G169HD04
4G169HE20
要約 【課題】
従来技術よりも窒素固定効率の良い空中窒素固定化のための材料及び固定化方法を提供する。
【解決手段】
本発明に係る窒素固定化材料は、酸素欠陥を含む酸化チタンと、導電性ポリマーとを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る窒素固定方法は、酸素欠陥を含む酸化チタンと、導電性ポリマーと、を含む窒素固定化材料に対し、窒素含有雰囲気中において光照射を行い、窒素固定化材料表面に窒素化合物を生成させることを特徴とする。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
酸素欠陥を含む酸化チタンと、導電性ポリマーと、を含む窒素固定化材料。
【請求項2】
前記酸素欠陥を含む酸化チタンは、TiO2-x(0<x<2)である請求項1記載の窒素固定化材料。
【請求項3】
前記導電性ポリマーは、Polyethylene Dioxythiophene(PEDOT)を含む請求項1記載の窒素固定化材料。
【請求項4】
鉄含有粉を含む請求項1記載の窒素固定化材料。
【請求項5】
酸素欠陥を含む酸化チタンと、導電性ポリマーと、を含む窒素固定化材料に対し、窒素含有雰囲気中において光照射を行い、前記窒素固定化材料表面に窒素化合物を生成させる窒素固定方法。
【請求項6】
液体溶媒を前記窒素固定化材料表面に塗布し、前記液体溶媒を回収し前記窒素化合物を抽出する請求項5記載の窒素固定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、空中窒素固定化材料及び固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素化合物は、植物の育成に必須であり肥料としての用途があるだけでなく、ロケットエンジンの推進剤、麻酔や血管拡張剤等の医薬品等の用途において枚挙に暇がない。
【0003】
一方で、空気の80%は窒素分子であり、この窒素分子から窒素化合物を作り出す技術、いわゆる窒素固定化技術は非常に重要である。
【0004】
この窒素固定化技術の例として、例えば、ハーバーボッシュ法がある。ハーバーボッシュ法は、一般的には、メタンから触媒を使って単離した水素と大気中の窒素とを反応させてアンモニアを合成する。
【0005】
しかしながら、ハーバーボッシュ法は、多大なエネルギーを消費するといった課題があり、より少ないエネルギーで窒素固定化を行おうとする試みが検討されている。
【0006】
この試みとして、例えば下記特許文献1には、導電性高分子及び酸化チタンを用いて窒素固定を行う方法及び材料が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2012-55786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、窒素ガスの還元反応に関する酸化チタンの触媒活性が低く、アンモニア生成効率が低いといった課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、エネルギー消費が少なく、より窒素固定効率の良い空中窒素固定化材料及び固定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の観点に係る窒素固定化材料は、酸素欠陥を含む酸化チタンと、導電性ポリマーとを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一の観点に係る窒素固定方法は、酸素欠陥を含む酸化チタンと、導電性ポリマーと、を含む窒素固定化材料に対し、窒素含有雰囲気中において光照射を行い、窒素固定化材料表面に窒素化合物を生成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明により、従来技術よりも窒素固定効率の良い空中窒素固定化のための材料及び固定化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る窒素固定化材料のイメージを示す図である。
【図2】実施形態に係る窒素固定化材料の製造方法の例を示す図である。
【図3】本発明に係る窒素固定の原理を示す図である。
【図4】実施例1でで得られた窒素固定化材料における窒素固定収量を示す図である。
【図5】本実施例で用いた露光装置の概略を示す図である。
【図6】実施例5の鉄粉キャリアT-80の総量と窒素固定収量の相関関係を示す図である。
【図7】実施例6で求めたアルゴンプラズマ処理によって作製した酸化チタンナノ粒子のTG-DTA分析結果を示す図である。
【図8】実施例7で求めたアルゴンプラズマ処理によって作成した酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子の拡散反射スぺクトル測定の結果を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例における例示にのみ限定されるわけではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る窒素固定化材料のイメージを示す図である。本実施形態に係る窒素固定化材料1は、酸素欠陥を含む酸化チタン2と、導電性ポリマー3と、を含む。
【0016】
本実施形態において、「酸素欠陥を含む酸化チタン」とは、チタンに対し酸素が欠乏している状態にある酸化チタンあって、この限りにおいて限定されるわけではないが、具体的にはTiO2-x(0<x<2)であり、好ましくはTiO2-x(0<x<1.5)である。
【0017】
本実施形態において、酸素欠乏を含む酸化チタンは粒状であることが好ましく、この粒径は、限定されるわけではないが、80%以上の粒子が6nm以上10μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは6nm以上1μm(1000nm)以下の範囲内である。
【0018】
また本実施形態において、導電性ポリマーは、文字通り導電性を有するポリマーであって、窒素固定を行なうことができる限りにおいて限定されるわけではないが、下記式で示される化合物Polyethylene Dioxythiophene(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、以下「PEDOT」ともいう。)又はそれら誘導体の少なくともいずれかを含むことが好ましい。PEDOTは、ClOを含み、これが光との反応を介してHClOとなり、同様に光照射によって精製されるNHと結合しアンモニウム塩を窒素固定化材料表面に析出させることができる。なお、下記式中n、mは整数である。
【化1】
JP2015218101A_000003t.gif

【0019】
また本実施形態において、酸化チタンは、導電性ポリマーに覆われている状態であることが好ましく、導電性ポリマーの含まれる量としては、窒素固定化を行うことができる限りにおいて適宜調整可能であり限定されるわけではないが、酸化チタン粒子の重量を1とした場合、0.001以上100以下であることが好ましく、より好ましくは0.01以上10以下である。
【0020】
本実施形態に係る窒素固定化材料は鉄含有粉を含んでいることが好ましい。鉄含有粉は鉄を含むことにおいて限定されるわけではないが、鉄粉や、酸化鉄、塩化鉄等の鉄塩等が好ましい。鉄含有粉の粒径は限定されるわけではないが、80%以上の粒子が0.1nm以上1mm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上50μm以下である。鉄含有粉を含むことで、窒素の三重結合を切れやすくし、窒素固定効率を著しく増大させることができると考えられる。
【0021】
本実施形態において鉄含有粉の量は、窒素を固定化することができる限りにおいて限定されるわけではないが、酸化チタン粒子の重量を1とした場合、0.0001以上1000以下であることが好ましく、より好ましくは0.001以上100以下である。
【0022】
ここで、本実施形態に係る窒素固定化材料の製造方法について説明する。窒素固定化材料は、製造できる限りにおいて限定されないが、例えば、導電性ポリマーを溶解又は分解させた溶液3に酸素欠陥を含む酸化チタン2を投入し、混合、撹拌の後、溶媒の除去を行うことで窒素固定化材料1を作成することができる。このイメージ図を図2に示しておく。なお、本図においては、導電性ポリマーを溶解又は分散させた溶液に酸素欠陥を含む酸化チタンを加える方法を開示しているが、これに限定されず、例えば、酸素欠陥を含む酸化チタンを配置した容器内に導電性ポリマーを溶解又は分散させた溶液を滴下させる方法もあり、これに限定されるわけではない。
【0023】
本実施形態における酸素欠陥を含む酸化チタンは、製造することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、酸化チタンナノ粒子にアルゴンプラズマを照射する処理、すなわちアルゴンプラズマ処理や、酸化チタンにヒドラジンを用いて化学還元処理を施すことによって製造することができる。アルゴプラズマ処理やヒドラジンを用いた化学還元処理により、酸素欠陥を含む酸化チタンの酸素欠陥濃度が増大し、窒素固定収量を従来技術よりも飛躍的に増大させることが可能となる。
【0024】
アルゴンプラズマ処理において、アルゴンプラズマ処理の時間は、酸化チタンナノ粒子に酸素欠陥を生成できる限りにおいて限定されないが、1秒以上1月以下であることが好ましく、より好ましくは1分以上30分未満、更に好ましくは1分以上10分未満の範囲である。
【0025】
また本実施形態において、導電性ポリマーを分散させた溶液を作成するにあたり、用いる溶媒としては、この機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えばニトロメタン、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、γ-ブチロラクトン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン等を用いることができる。なお、この溶媒に対する導電性ポリマーの濃度も適宜調整可能であり限定されるわけではないが、例えば、溶媒の重量を1とした場合0.001重量%以上10以下の範囲、より好ましくは0.01以上1以下としておくことが分散性を高める上で好ましい。
【0026】
また、導電性ポリマーと酸素欠陥を含む酸化チタンを混合、撹拌した後に行う溶媒の除去は、溶媒を除去できる限りにおいて限定されるわけではないが、熱処理により溶媒を除去することが好ましい。溶媒を除去するための熱処理の温度及び時間は適宜調整可能であり、特に限定されない。
【0027】
鉄含有粉は、本実施形態における製造方法において、露光を行う前に加えられる限りにおいて特に限定されるわけではなく、導電性ポリマーを分散させた溶媒に導電性ポリマーとともに投入されてもよく、酸素欠陥を含む酸化チタンとともに導電性ポリマーを分散させた溶媒に投入されてもよく、酸素欠陥を含む酸化チタンと導電性ポリマーを分散させた溶媒を混合、撹拌後にできる分散液に加えてもよく、溶媒を留去した後に残る酸化チタンと導電性ポリマーの固体状粉末混合物に添加して混合分散してもよい。
【0028】
以上の工程を経ることで本実施形態に係る窒素固定材試料を作成することができる。
【0029】
またここで、本窒素固定化材料を用いた窒素固定方法について説明する。具体的に本実施形態に係る窒素固定方法は、酸素欠陥を含む酸化チタンと、導電性ポリマーとを含む窒素固定化材料に対し、窒素含有雰囲気中において光照射を行うことで、窒素固定化材料表面に窒素化合物を生成させることが実現できる。なお本実施形態において窒素を含む雰囲気としては、限定されず、空気中で十分可能である。また、光としては太陽光を用いることができる。即ち本実施形態に係る窒素固定化材料は、空気中において太陽光に晒すだけで窒素を固定することができる。また、この固定化された窒素化合物は、水等の溶媒に窒素固定化材料を浸して溶かすことで窒素固定化材料と分離し、当該溶媒を蒸発等させることで抽出することができる。
【0030】
本実施形態において、照射する光の波長としては、上記のとおり、太陽光を用いることができるが、具体的には可視から赤外にかけての領域の光であることが好ましく、具体的には200nm以上3000nm以下の範囲であり、好ましくは300nm以上2000nm以下の範囲である。
【0031】
また、本実施形態において照射する光の強さとしては、2光子吸収を起こさない限りにおいて限定されるわけではないが、1W/m以上1000000W/m以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1W/m2以上300W/m以下の範囲内である。
【0032】
また、本実施形態において光を照射する時間は、窒素固定を行うことができる限りにおいて限定されるわけではないが、1秒以上あることが好ましい。
【0033】
ここで、図3に、本実施形態に係る窒素固定化の原理について示しておく。まず、本実施形態に係る窒素固定化材料に太陽光が当たると、導電性ポリマー及び酸素欠陥を含む酸化チタンの接合界面で電子eとホールhが生成される。生成された電子は、酸素欠陥Vを含む酸化チタンの酸素欠陥部位に取りこりこまれ、この電子により酸素欠陥部位にトラップされた水分子HOが原子状の水素Hadになる反応が進行する。さらに、酸素欠陥部位のなかにトラップされた窒素原子と原子状の水素が反応することでアンモニアNHが生成される。一方、導電性ポリマー中ではClOがドープされており、太陽光によってClOが遊離し、水素イオンと結合してHClOとなる。そして生成されたアンモニアとHClOとが反応して過塩素酸アンモニウム(NHClO)の針状結晶として導電性ポリマー表面に析出することとなる。すなわち、本実施形態に係る窒素固定化材料は、反応の場を広く有しているため、極めて効率よく窒素固定を行なうことができるようになる。特に、本実施形態に係る窒素固定化材料は、公知の材料とは異なり、酸素欠陥を含む酸化チタンの酸素欠陥濃度を増やすことで、従来技術よりも窒素固定収量が増大することができる。
【0034】
上記の結果、本実施形態により析出されるアンモニウム塩は過塩素酸アンモニウムNHClOであり、導電性ポリマーから脱ドープしたドーパンと反応することで生成されるドーパントアニオンのアンモニウム塩となる。また、上記のようにアンモニアも同時に生成することになる。
【0035】
以上、本実施形態により、エネルギー消費が少なく、より窒素固定効率の良い空中窒素固定化材料及び固定化方法を提供することが可能となる。
【実施例】
【0036】
ここで、上記窒素固定化材料の効果について、実際に材料を作製し、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0037】
(実施例1:アルゴンプラズマ処理による酸素欠陥を含む酸化チタンの作成)
(アルゴンプラズマ処理)
ジルコニアボートにP-25酸化チタン(日本アエロジル株式会社製、平均粒径21nm)を入れ、それをチャンバー内に設置して、チャンバー内を0.3 Paまで排気した。その後、100Paに保つようにArを流しながらメインバルブを調節した。この工程を二回繰り返した後、マッチングボックスと周波数発生器の電源を入れ、80Wの入力電力を1、5、10、20、30分間印加し酸素欠陥を含む酸化チタンを作成した。
【0038】
サンプル管瓶(ラボラン社製サンプル管瓶、容量5ml、容器底面積約1.76cm)に、作成した酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子10mgとPEDOT((株)アルドリッチジャパン製)を1wt%の濃度でニトロメタン中に分散させた導電性ポリマー溶液を100mg入れ、撹拌した後に溶媒を留去し、窒素固定化材料を作成した。作成した窒素固定化材料に白色光をあて、各プラズマ処理時間ごとの窒素固定収量を調べた。なお白色光はセリック社製のXC-100BF1RC,100Wを用いて露光強度は260W/m、温度23℃、湿度60%RH、露光時間は7日とし、窒素固定収量を調べた。図4に本実施例で得られた窒素固定化材料における窒素固定収量の結果を、図5に本実験で用いた露光装置の概略図を示す。
【0039】
図4で示すように電圧印加時間が1分の場合では窒素固定収量は従来の約2倍程であり、電圧印加時間が5分以上の場合には約3倍の収量の増加が確認された。また、20分と30分のアルゴンプラズマ処理を施した酸化チタンナノ粒子には、白色からベージュへの変色が見られた。酸化チタンナノ粒子の変色は、酸化チタンの価電子帯と伝導体の中間に酸素欠陥準位ができているために起こるものと考えられている。
【0040】
(実施例2:ヒドラジン還元処理による酸素欠陥を含む酸化チタンの作成)
ヒドラジン一水和物(和光純薬工業 特級 分子量50.06)10mlをポリプロピレン容器に取り、そこに0.2M水酸化ナトリウム水溶液を3ml加えpHを14以上に調整した。そこにP-25(日本アエロジル株式会社製、平均粒径21nm)を0.1g投入し、約6時間マグネティックスターラーで攪拌分散させた。その後、吸引濾過と恒温乾燥により酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子を取り出した。この時点で、酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子は凝集しており、ナノ粒子の特性を失ってしまうため、メノウ乳鉢を用いて20分間磨り潰した。回収した酸化チタンナノ粒子は、アルゴンプラズマ処理を施した酸化チタンナノ粒子と同様に、白からベージュへの変色が確認された。
【0041】
サンプル管瓶(ラボラン社製サンプル管瓶、容量5 ml、容器底面積約1.76cm)に、本実施例2により作成した酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子10mgとPEDOT((株)アルドリッチジャパン製)を1wt%の濃度でニトロメタン中に分散させた導電性ポリマー溶液を100mg入れ、撹拌した後に溶媒を留去し、窒素固定化材料を作成した。作成した窒素固定化材料に白色光をあて窒素固定収量を調べた。なお白色光はセリック社製のXC-100 BF1RC,100Wを用いて露光強度は260W/m、温度23℃、湿度60%RH、露光時間は7日とした表1に本実施例で得られた窒素固定化材料における窒素固定収量の結果を示す。
【0042】
【表1】
JP2015218101A_000004t.gif

【0043】
表1で示すように、3回の実験を実施したところ、 ヒドラジン還元処理により酸素欠陥濃度を増加させた酸素欠陥を含む酸化チタンの平均窒素固定収量は平均で34.4mmol/mであり、従来のナノコンポジットを用いた場合に比べ、約3倍の収量の増加が確認された。この値から、アルゴンプラズマ処理を施した実施例1と同等の酸素欠陥密度を実現できたと考えられる。
【0044】
(実施例3:種々の酸化チタンナノ粒子を用いた窒素固定化)
サンプル管瓶(ラボラン社製サンプル管瓶、容量5ml、容器底面積約1.76cm-2)に酸化チタンナノ粒子10mgと導電性ポリマーとしてPEDOT((株)アルドリッチジャパン製)を1wt%の濃度でニトロメタン中に分散させた導電性ポリマー溶液100mgを入れ、窒素固定化材料を作成した。
【0045】
本実施例では、酸化チタンナノ粒子としてP-25(日本アエロジル株式会社製、平均粒径21nm)及び、P-90(日本アエロジル株式会社製、平均粒径14nm)を用いた窒素固定化材料をそれぞれ作成した。
【0046】
本実施例において作成した窒素固定化材料にそれぞれ白色光をあて、窒素固定収量を調べた。なお、白色光はセリック社製のXC-100 BF1RC,100Wを用いて露光強度は260 W/m、温度23℃、湿度60%RH、露光時間は7日とし、窒素固定収量を調べた。
【0047】
本実施例により得られた結果を表2に示す。表2の単独系は、酸化チタンのみに白色光露光を行った場合の窒素固定収量を示し、コンポジットは、本実施例で作成したPEDOTと酸化チタンナノ粒子の窒素固定化材料の窒素固定収量を示している。
【0048】
【表2】
JP2015218101A_000005t.gif

【0049】
表2に示すように、本実施例に係る窒素固定化材料を用いた場合の窒素固定収量は単独系で得られた窒素固定収量よりも、約8倍から14倍多かった。また、P-25よりも比表面積が約2倍となるP-90の窒素固定収量は、P-25の固定量を大きく上回る結果となった。
【0050】
(実施例4:酸化チタンナノ粒子水洗処理の効果)
酸化チタンナノ粒子にあらかじめトラップされているアンモニアを除く目的で、P-25(日本アエロジル株式会社製、平均粒径21nm)の洗浄を行った。フィルターを使用してナノ粒子を蒸留水でよく洗い流し、真空乾燥機で一時間乾燥させた後、メノウ乳鉢で10分間磨り潰した。
【0051】
サンプル管瓶に、酸化チタンナノ粒子10mgとPEDOT((株)アルドリッチジャパン製)を1wt%の濃度でニトロメタン中に分散させた導電性ポリマー溶液100mgを入れて窒素固定化材料を作成し、窒素固定収量を測定した。なお、白色光はセリック社製のXC-100BF1RC,100Wを用いて露光強度は260W/m、温度23℃、湿度60%RH、露光時間は7日とし、窒素固定収量を調べた。
【0052】
その結果、水洗処理を行った酸化チタンナノ粒子を用いた窒素固定化材料は、水洗処理を行わない酸化チタンナノ粒子を用いた窒素固定化材料に比べ、収量が約2倍となる24.9 mmol/mをあった。
【0053】
(実施例5:鉄含有粉を含む窒素固定化材料)
鉄含有粉として鉄粉キャリアT-80(パウダーテック社製、平均粒径80μm)を含む窒素固定材を作製した。サンプル管瓶に、鉄粉キャリアT-80、酸化チタンナノ粒子10mg及びPEDOT((株)アルドリッチジャパン製)を1wt%の濃度でニトロメタン中に分散させた導電性ポリマー溶液100mgを入れて窒素固定化材料を作成し、窒素固定収量を測定した。
【0054】
鉄粉キャリアT-80の量は1mg、10mg、100mgとした。前記それぞれの量で窒素固定化材料を作成し、窒素固定収量を測定した。
【0055】
白色光の露光強度は260W/m、温度23℃、湿度60%RH、露光時間は7日とした。窒素固定化材料に添加した鉄粉キャリアT-80の総量と窒素固定収量の相関関係を図6に示す。鉄粉キャリアT-80を1mg又は10mg添加した場合、鉄粉を加えていないナノコンポジットを用いた時の窒素固定収量に比べおよそ4倍の収量が得られた。鉄により配位窒素分子の結合切断が進行された可能性がある。鉄粉キャリアT-80の添加量が100mgの場合は通常の収量との差は確認されなかった。鉄粉キャリアT-80を100mg添加した場合に収量の増加が確認されなかった原因は、粒径の大きいT-80をP-25酸化チタンナノ粒子の重量の10倍にも相当する量を添加したので、P-25酸化チタンナノ粒子に光が届かずに、その結果収量が減少した可能性が考えられる。
【0056】
酸化チタンナノ粒子10mgを含む窒素固定化材料における窒素固定収量を上げるためには、鉄粉キャリアの量は1mg~10mgであることが好ましい。
【0057】
(実施例6:アルゴンプラズマ処理によって作成した酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子の熱分析)
実施例1のアルゴンプラズマ処理によって作製した酸化チタンナノ粒子の酸素欠陥濃度を相対的に求める目的で、SHIMADZUDTG-60Hを用いてTG-DTA分析を行った。測定は室温から1000℃まで昇温速度10℃/min、大気中加熱とし、無処理のP-25酸化チタンナノ粒子(日本アエロジル株式会社製、平均粒径21nm)、実施例1と同じ方法でアルゴンプラズマ処理を10分間施したP-25及びアルゴンプラズマ処理を30分間施した酸化チタンナノ粒子をサンプルとして用いた。
【0058】
図7にTG-DTA分析結果を示す。アルゴンプラズマ処理を30分間施したサンプルは顕著な質量増加が確認された。また、10分間処理のサンプルは600℃付近まで質量減少を見せたが、800℃以上になると質量増加の傾向が出てきた。これらの重量増加は、酸素と結合したことによる増加と考えられ、アルゴンプラズマ処理を施すことにより酸化チタンナノ粒子表面の酸素欠陥濃度が増加されたことが支持された。なお、P-25の室温から100℃の温度範囲でみられる重量減は吸着水の解離によるものと推察される。また、100℃以上の温度範囲で見られる重量減は粒子表面のOH基解離によるものと推察される。
【0059】
(実施例7:アルゴンプラズマ処理によって作成した酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子の拡散反射スぺクトル測定)
酸素欠陥濃度が増加した酸化チタンナノ粒子は主にベージュ、青白色、灰色に変化することが知られている。実施例1記載のアルゴンプラズマ処理を10分又は30分施したP-25(日本アエロジル株式会社製、平均粒径21nm)の色変化を拡散反射スペクトル計測により定量的に測定した。使用したUV-VisはHITACHI U-3000である。拡散反射スペクトル計測のために、酸化チタンナノ粒子はペレット状に成形を行った。ペレットの厚みは約230μmである。
【0060】
図8に本実施例における拡散反射スペクトル測定結果を示す。酸化チタンナノ粒子は、ペレット状に凝縮させることにより、白からベージュの色変化がより顕著なものになった。アルゴンプラズマ処理を施したサンプルはピークエッジの長波長シフトが確認され、処理時間に依存してシフト域が広くなった。目視で確認された酸化チタンナノ粒子の色変化が定量的に示され、本実施例により、酸化チタンナノ粒子の色変化が確認され、酸素欠陥濃度の増加が裏付けられることとなった、
【0061】
(実施例8:アルゴンプラズマ処理によって作成した酸素欠陥を含む酸化チタンナノ粒子の電気抵抗率測定)
【0062】
酸化チタンは酸素原子とチタン原子がそれぞれ電子を共有して結合している。しかし、酸素欠陥近傍に存在するTi4+は電子を与える存在がおらず、余った電子は自由電子と同様に動きまわることができる。つまり、絶縁体からn型半導体となり電気伝導性が大幅に向上する。実施例1に記載のアルゴンプラズマ処理を施した酸化チタンナノ粒子の電気抵抗率を測定することで酸素欠陥濃度の定量を試みた。測定は三菱化学製MCP-T600を用いて四端針法により行った。
【0063】
得られた結果を表3に示した。アルゴンプラズマ処理を施した酸化チタンナノ粒子の抵抗値は10オーダーであり、未処理のサンプルに比べ三桁の電気抵抗率変化が確認された。電気物性側面からも酸素欠陥濃度の増加が確認された。
【0064】
【表3】
JP2015218101A_000006t.gif

【0065】
以上、上記実施例により本発明の効果を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、窒素固定化材料及びそれを用いた窒素固定方法において産業上の利用可能性がある。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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