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明細書 :膵臓ホルモン産生細胞の生産方法及び膵臓ホルモン産生細胞、並びに分化誘導促進剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年1月14日(2016.1.14)
発明の名称または考案の名称 膵臓ホルモン産生細胞の生産方法及び膵臓ホルモン産生細胞、並びに分化誘導促進剤
国際特許分類 C12N   5/071       (2010.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N  15/00        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI C12N 5/00 202A
C12N 15/00 A
C12N 15/00 ZNA
C07K 14/47
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 35
出願番号 特願2014-516862 (P2014-516862)
国際出願番号 PCT/JP2013/064469
国際公開番号 WO2013/176249
国際出願日 平成25年5月24日(2013.5.24)
国際公開日 平成25年11月28日(2013.11.28)
優先権出願番号 2012120281
優先日 平成24年5月25日(2012.5.25)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】豊島 秀男
【氏名】岡崎 康司
【氏名】横尾 友隆
【氏名】菅原 泉
出願人 【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B065
4H045
Fターム 4B024AA01
4B024BA01
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA11
4B024CA20
4B024DA02
4B024EA04
4B024GA11
4B024HA01
4B024HA11
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AC14
4B065BA01
4B065BD25
4B065BD39
4B065CA24
4B065CA44
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA71
要約 多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞へと高効率に分化誘導することが可能な膵臓ホルモン産生細胞の生産方法(分化誘導方法)及び生産された膵臓ホルモン産生細胞、並びにその生産方法に用いられる分化誘導促進剤を提供する。
本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法は、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程で、特定の分化誘導促進剤を培地中に添加することを特徴とする。分化誘導促進剤としては、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチドやその改変体、あるいは配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA、又はこのDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを外来遺伝子として組み込んだ細胞の培養上清が用いられる。
特許請求の範囲 【請求項1】
多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞を生産する膵臓ホルモン産生細胞の生産方法であって、
多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程で、下記(1)~(3)から選ばれる少なくとも1種の分化誘導促進剤を培地中に添加することを特徴とする膵臓ホルモン産生細胞の生産方法、
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導促進作用を持つポリペプチド、
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA、又はこのDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを外来遺伝子として組み込んだ細胞の培養上清。
【請求項2】
(A1)TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)スーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で多能性幹細胞を培養する工程、
(B1)前記工程(A1)で得られた細胞をFGF(線維芽細胞増殖因子)の存在下で培養する工程、
(C1)前記工程(B1)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程、
(D1)前記工程(C1)で得られた細胞をγ-セクレターゼ阻害剤の存在下で培養する工程、及び
(E1)前記工程(D1)で得られた細胞を、エキセンジン-4、HGF(肝細胞増殖因子)、IGF-1(インスリン様増殖因子-1)、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する工程、を含み、
前記工程(A1)~(E1)の少なくとも1つの工程で前記分化誘導促進剤を培地中に添加する請求項1記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法。
【請求項3】
(A2)TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)スーパーファミリーに属する増殖因子と、Wnt(ウィングレス型MMTV組み込み部位)ファミリーに属する増殖因子及びGSK-3(グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3)阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の因子との存在下で多能性幹細胞を培養する工程、
(B2)前記工程(A2)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する工程、
(C2)前記工程(B2)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程、
(D2)前記工程(C2)で得られた細胞を、cAMP(環状アデノシン一リン酸)増加剤、デキサメタゾン、TGF-β1型受容体阻害剤、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する工程、を含み、
前記工程(A2)~(D2)の少なくとも1つの工程で前記分化誘導促進剤を培地中に添加する請求項1記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法。
【請求項4】
(A3)TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)スーパーファミリーに属する増殖因子、レチノイド、FGF(線維芽細胞増殖因子)、及びニコチンアミドの非存在下で膵臓組織幹/前駆細胞を培養する工程、
(B3)前記工程(A3)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する工程、
(C3)前記工程(B3)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程、
(D3)前記工程(C3)で得られた細胞をFGFの存在下で培養する工程、及び
(E3)前記工程(D3)で得られた細胞をニコチンアミドの存在下で培養する工程
を含み、
前記工程(A3)~(E3)の少なくとも1つの工程で前記分化誘導促進剤を培地中に添加する請求項1記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法によって人工的に生産された膵臓ホルモン産生細胞。
【請求項6】
次の(1)~(3)の少なくとも1種を含み、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化を誘導する分化誘導促進剤;
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導促進作用を持つポリペプチド、
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA、又はこのDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを外来遺伝子として組み込んだ細胞の培養上清。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導多能性幹細胞(以下、「iPS細胞」ともいう。)や胚性幹細胞(以下、「ES細胞」ともいう。)等の多能性幹細胞、あるいは膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞を生産する膵臓ホルモン産生細胞の生産方法及び生産された膵臓ホルモン産生細胞、並びにその生産方法に用いられる分化誘導促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓は内分泌細胞と外分泌細胞とを有し、内分泌及び外分泌の両方で重要な役割を担っている器官である。内分泌細胞は膵臓ホルモンを産生・分泌する役割を果たし、α細胞からはグルカゴンが、β細胞からはインスリンが、δ細胞からはソマトスタチンが、PP細胞からは膵ポリペプチドがそれぞれ分泌されることが知られている。特にインスリンは血糖値低下作用を有し、血糖を正しい濃度に保つ重要な役割を果たす。
【0003】
近年、多能性幹細胞や膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞へと分化誘導する方法が数多く報告されている(非特許文献1~4、特許文献1~6等を参照)。このような分化誘導方法によって効率的に膵臓ホルモン産生細胞を得ることができれば、膵島移植の代替となる糖尿病の治療方法に繋がると期待される。さらに、患者本人由来の多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞を得ることにより、拒絶反応の問題も解消し得ると考えられる。
【0004】
しかし、これまで報告されている分化誘導方法は、いずれも膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導効率が十分ではなかった。例えば、非特許文献1におけるインスリン産生細胞への分化誘導効率は12%程度である。このため、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞へと高効率に分化誘導することが可能な分化誘導方法が望まれている。また、非特許文献3では、マウスES細胞にpdx1遺伝子を導入して培養することによってインスリン産生細胞へと分化誘導しているが、安全性の観点からは、遺伝子導入を伴わない分化誘導方法であることが好ましい。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2007/103282号
【特許文献2】国際公開第2005/063971号
【特許文献3】国際公開第2009/048675号
【特許文献4】国際公開第2007/051038号
【特許文献5】国際公開第2006/108361号
【特許文献6】国際公開第2008/066199号
【0006】

【非特許文献1】D’Amour,K.A. et al., Nature Biotechnology, 24, pp.1392-1401(2006)
【非特許文献2】Wei Jiang et al., Cell Research, 17, pp.333-344(2007)
【非特許文献3】Miyazaki,S. et al., Diabetes, 53, pp.1030-1037(2004)
【非特許文献4】Yuya Kunisada et al.,Stem Cell Research, 8, pp.274-284(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞へと高効率に分化誘導することが可能な膵臓ホルモン産生細胞の生産方法(分化誘導方法)及び生産された膵臓ホルモン産生細胞、並びにその生産方法に用いられる分化誘導促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ヒトTM4SF20として公知のポリペプチド、あるいはヒトTM4SF20をコードするDNAを外来遺伝子として組み込んだ細胞の培養上清を培地に添加することにより、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞へと高効率に分化誘導することが可能になることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、より具体的には以下のとおりである。
【0009】
[1]
多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞を生産する膵臓ホルモン産生細胞の生産方法であって、
多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程で、下記(1)~(3)から選ばれる少なくとも1種の分化誘導促進剤を培地中に添加することを特徴とする膵臓ホルモン産生細胞の生産方法、
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導促進作用を持つポリペプチド、
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA、又はこのDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを外来遺伝子として組み込んだ細胞の培養上清。
【0010】
[2]
(A1)TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β)スーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で多能性幹細胞を培養する工程、
(B1)上記工程(A1)で得られた細胞をFGF(線維芽細胞増殖因子)の存在下で培養する工程、
(C1)上記工程(B1)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程、
(D1)上記工程(C1)で得られた細胞をγ-セクレターゼ阻害剤の存在下で培養する工程、及び
(E1)上記工程(D1)で得られた細胞を、エキセンジン-4、HGF(肝細胞増殖因子)、IGF-1(インスリン様増殖因子-1)、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する工程、を含み、
上記工程(A1)~(E1)の少なくとも1つの工程で上記分化誘導促進剤を培地中に添加する上記[1]記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法。
【0011】
[3]
(A2)TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子と、Wnt(ウィングレス型MMTV組み込み部位)ファミリーに属する増殖因子及びGSK-3(グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3)阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の因子との存在下で多能性幹細胞を培養する工程、
(B2)上記工程(A2)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する工程、
(C2)上記工程(B2)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程、
(D2)上記工程(C2)で得られた細胞を、cAMP(環状アデノシン一リン酸)増加剤、デキサメタゾン、TGF-β1型受容体阻害剤、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する工程、を含み、
上記工程(A2)~(D2)の少なくとも1つの工程で上記分化誘導促進剤を培地中に添加する上記[1]記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法。
【0012】
[4]
(A3)TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子、レチノイド、FGF、及びニコチンアミドの非存在下で膵臓組織幹/前駆細胞を培養する工程、
(B3)上記工程(A3)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する工程、
(C3)上記工程(B3)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程、
(D3)上記工程(C3)で得られた細胞をFGFの存在下で培養する工程、及び
(E3)上記工程(D3)で得られた細胞をニコチンアミドの存在下で培養する工程
を含み、
上記工程(A3)~(E3)の少なくとも1つの工程で上記分化誘導促進剤を培地中に添加する上記[1]記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法。
【0013】
[5]
上記[1]~[4]のいずれか1項記載の膵臓ホルモン産生細胞の生産方法によって人工的に生産された膵臓ホルモン産生細胞。
【0014】
[6]
次の(1)~(3)の少なくとも1種を含み、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化を誘導する分化誘導促進剤;
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導促進作用を持つポリペプチド、
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA、又はこのDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを外来遺伝子として組み込んだ細胞の培養上清。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞へと高効率に分化誘導することが可能な膵臓ホルモン産生細胞の生産方法(分化誘導方法)及び生産された膵臓ホルモン産生細胞、並びにその生産方法に用いられる分化誘導促進剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(IBCAP)の発現ベクターをトランスフェクトした細胞の培養上清を、ヒトiPS細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程の最終段階(工程(D1)、(E1))で添加した場合の、グルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の発現量を示す図である。
【図2】配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(IBCAP)の発現ベクターをトランスフェクトした細胞の培養上清を、ヒトiPS細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程の初期段階(工程(A1-1)、(A1-1))又は中間段階(工程(B1)、(C1))で添加した場合の、グルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の発現量を示す図である。
【図3】配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(IBCAP)の発現ベクターをトランスフェクトした細胞の培養上清を、マウス膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程の最終段階(工程(E3))で添加した場合の、マウスインスリン-1(Ins1)の発現量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法は、多能性幹細胞又は膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程で、特定の分化誘導促進剤を培地中に添加することを特徴とする。以下ではまず、多能性幹細胞、膵臓組織幹/前駆細胞、分化誘導促進剤について順に説明し、次いで、具体的な膵臓ホルモン産生細胞の生産方法(分化誘導方法)について説明する。

【0018】
<多能性幹細胞>
多能性幹細胞とは、少なくとも一種類ずつの三胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)に属する分化細胞に分化する能力(多分化能)のある自己複製可能な幹細胞のことをいい、例えば、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)、胚性癌細胞(EC細胞)、成体多能性幹細胞(APS細胞)等が包含される。本発明に係る生産方法では、その中でも、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性幹細胞(ES細胞)を用いることが好ましい。

【0019】
iPS細胞とは、体細胞を初期化することによって得られる多能性を有する細胞である。iPS細胞の作製は、京都大学のDr.Yamanakaらのグループ、マサチューセッツ工科大学のDr.Jaenischらのグループ、ウィスコンシン大学のDr.Thomsonらのグループ、ハーバード大学のDr.Hochedlingerらのグループ等を含む複数のグループが成功している。

【0020】
iPS細胞の作製に用いる体細胞の種類は特に限定されず、任意の体細胞を用いることができる。すなわち、生体を構成する細胞の内生殖細胞以外の全ての細胞を用いることができ、分化した体細胞であってもよく、未分化の幹細胞であってもよい。体細胞の由来は、哺乳動物、鳥類、魚類、爬虫類、両生類のいずれでもよく特に限定されないが、哺乳動物が好ましく、ヒト又はマウスが特に好ましい。ヒトの体細胞を用いる場合、胎児、新生児、成人のいずれの体細胞を用いてもよい。

【0021】
体細胞からiPS細胞を作製するには、少なくとも1種類の初期化遺伝子を体細胞に導入し、初期化する必要がある。初期化遺伝子とは、体細胞を初期化してiPS細胞とする作用を有する初期化因子をコードする遺伝子である。ヒトiPS細胞を作製する場合の初期化遺伝子の組み合わせとしては、例えば以下の(i)~(iv)を挙げることができるが、これらの例に限定されるものではない。
(i)OCT遺伝子、KLF遺伝子、SOX遺伝子、MYC遺伝子
(ii)OCT遺伝子、SOX遺伝子、NANOG遺伝子、LIN28遺伝子
(iii)OCT遺伝子、KLF遺伝子、SOX遺伝子、MYC遺伝子、hTERT遺伝子、SV40 large T遺伝子
(iv)OCT遺伝子、KLF遺伝子、SOX遺伝子

【0022】
一方、ES細胞とは、動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊から作製された、多分化能、自己複製能を有する幹細胞である。ES細胞の由来は、特に限定されないが、哺乳動物が好ましく、ヒト又はマウスが特に好ましい。ES細胞としては、その分化の程度の確認を容易とするために、例えばPDX1遺伝子付近にレポーター遺伝子を導入した細胞を用いることもできる。

【0023】
<膵臓組織幹/前駆細胞>
膵臓組織幹/前駆細胞とは、動物の膵臓に存在する、多分化能、自己複製能を有する組織幹/前駆細胞である。膵臓組織幹/前駆細胞の由来は、特に限定されないが、哺乳動物が好ましく、ヒト又はマウスが特に好ましい。膵臓から組織幹/前駆細胞を分離する方法としては、従来公知の方法を任意に採用することができ、特に限定されない。例えば、胎児膵臓では、PDX1が膵臓組織幹/前駆細胞のマーカー分子として既知である(Jonsson,J. et al., Nature, 371, pp.606-609(1994);Offield,M.F. et al., Development, 22, pp.983-995(1996))。胎児のPDX1発現細胞は、内分泌細胞、外分泌細胞、及び膵管細胞に分化し、成体膵に存在するあらゆる種類の細胞を生じる。そこで、PDX1をマーカー分子として、膵臓組織幹/前駆細胞を分離することができる。
なお、この膵臓組織幹/前駆細胞は、株化されていないものであってもよく、株化されたものであってもよい。

【0024】
<分化誘導促進剤>
本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法で用いられる分化誘導促進剤は、下記(1)~(3)から選ばれる少なくとも1種である。
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導促進作用を持つポリペプチド。
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA、又はこのDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを外来遺伝子として組み込んだ細胞の培養上清。

【0025】
配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAは、ヒトTM4SF20をコードするDNAとして公知の全長2308bpのものである(NCBI:LOCUS NM 024795)。このDNAのCDSは38..727であり、配列番号3に記載の229個のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている(配列番号2を参照)。本発明に係る生産方法では、このポリペプチドを分化誘導促進剤として用いることができる。

【0026】
また、本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法では、膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導促進作用が維持されている限り、上述のポリペプチドのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド(以下、「改変ポリペプチド」ともいう。)を分化誘導促進剤として用いることもできる。あるアミノ酸配列に対する1又は数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は付加により修飾されたアミノ酸配列からなるポリペプチドが、その生物学的活性を維持することは既に知られている(Mark,D.F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, pp.5662-5666(1984);Zoller,M.J. et al., Nucleic Acids Research, 10, pp.6487-6500(1982);Wang,A. et al., Science, 224, pp.1431-1433;Dalbadie-McFarland,G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, pp.6409-6413(1982)等を参照)。

【0027】
ここで、上述のポリペプチドのアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸を他のアミノ酸に置換する場合には、置換前後でアミノ酸側鎖の性質が保存されていることが望ましい。アミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)が挙げられる(括弧内のアルファベットはいずれもアミノ酸を一文字表記したものである)。

【0028】
1若しくは数個のアミノ酸を置換、欠失、及び/又は付加する場合、その数は例えば1~20個であってもよく、1~15個であってもよく、1~10個であってもよく、1~5個であってもよい。
また、改変ポリペプチドと元のポリペプチドとの相同性は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。

【0029】
なお、配列番号3の1~163番目、179~229番目のアミノ酸は、異なる生物種間で高度に保存された部分である。このため、その部分のアミノ酸は、改変前後で保存されていることが好ましい。

【0030】
上述のポリペプチドや改変ポリペプチドは、化学合成してもよいが、遺伝子工学的に取得することもできる。例えば、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA、又はこのDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを外来遺伝子として、培養可能な宿主細胞に組み込み、その宿主細胞を培養して遺伝子発現させることで、その培養上清から上述のポリペプチドや改変ポリペプチドを得ることができる。
宿主細胞としては、細菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等の公知の細胞を適宜使用することができる。動物細胞としては、HEK293細胞、HEK293T細胞、CHO-K1細胞、COS細胞等が挙げられる。

【0031】
ここで「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、特定のDNA(配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNA)をプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法等を採用することにより取得できるDNAを意味する。例えば、コロニーやプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを使用し、0.7~1.0M塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2×SSC溶液(1×SSCの組成:150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を使用し、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等が挙げられる(必要であれば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY., 1989.等を参照のこと)。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列の、プローブとして使用するDNAの塩基配列との相同性は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。

【0032】
これらのポリペプチドや改変ポリペプチドの分離・精製は、例えば、イオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の、ペプチド化学において通常使用される方法によって行うことができる。

【0033】
また、本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法では、上述のポリペプチドや改変ポリペプチドを含む培養上清を分化誘導促進剤として用いることもできる。培養上清を分化誘導促進剤として用いる場合、限外濾過等により培養上清を濃縮することが好ましい。さらに、必要に応じて透析を行い、不要な化学物質等を除いてもよい。

【0034】
<多能性幹細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導方法(膵臓ホルモン産生細胞の生産方法)>
本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法では、多能性幹細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程で、上述した分化誘導促進剤を培地中に添加する。多能性幹細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導方法としては、従来公知の方法を任意に採用することができ、特に限定されない。分化誘導促進剤としてポリペプチド又は改変ポリペプチドを添加する場合、その濃度は、10~200ng/mLが好ましく、50~180ng/mLがより好ましく、60~150ng/mLがさらに好ましい。また、分化誘導促進剤として培養上清を添加する場合、その濃度は、0.5~20%(v/v)が好ましく、1~10%(v/v)がより好ましく、1.5~5%(v/v)がさらに好ましい。

【0035】
以下、多能性幹細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導方法(膵臓ホルモン産生細胞の生産方法)の例として2種類の方法について説明するが、本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法はこの例に限定されるものではない。

【0036】
[第1の分化誘導方法]
第1の分化誘導方法は、非特許文献1に記載の方法に準じたものである。この文献は参照により本願に援用する。
第1の分化誘導方法は、下記の工程(A1)~(E1)を含む。このうち少なくとも1つの工程で、上述した分化誘導促進剤が培地中に添加される。分化誘導促進剤を添加する工程は、工程(A1)~(C1)の少なくとも1つの工程であることが好ましく、工程(B1)~(C1)の少なくとも1つの工程であることがより好ましい。なお、ある工程に分化誘導促進剤を添加する場合、その工程の最初から添加してもよく、工程の途中から添加してもよい。
(A1)TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で多能性幹細胞を培養する工程。
(B1)上記工程(A1)で得られた細胞をFGFの存在下で培養する工程。
(C1)上記工程(B1)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程。
(D1)上記工程(C1)で得られた細胞をγ-セクレターゼ阻害剤の存在下で培養する工程。
(E1)上記工程(D1)で得られた細胞を、エキセンジン-4、HGF、IGF-1、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する工程。

【0037】
(工程(A1))
工程(A1)では、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で多能性幹細胞を培養する。

【0038】
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子としては、アクチビン、ノーダル、BMP(骨形成タンパク質)等が挙げられ、その中でもアクチビンが好ましい。このようなTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子は、多能性幹細胞から胚体内胚葉細胞への分化を促進することが知られている(非特許文献1、特許文献1~3等を参照)。アクチビンとしては、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB等が挙げられ、その中でもアクチビンAが好ましい。
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の濃度は、5~250ng/mLが好ましく、10~200ng/mLがより好ましく、50~150ng/mLがさらに好ましい。

【0039】
また、工程(A1)では、Wntファミリーに属する増殖因子を培地中に添加することが好ましい。TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子とともにWntファミリーに属する増殖因子を添加することにより、胚体内胚葉細胞への分化効率を高めることができる。
Wntファミリーに属する増殖因子としては、Wnt1、Wnt3a、Wnt5a、Wnt7a等が挙げられ、Wnt1、Wnt3aが好ましく、Wnt3aがより好ましい。
Wntファミリーに属する増殖因子の濃度は、1~1000ng/mLが好ましく、10~100ng/mLがより好ましく、10~50ng/mLがさらに好ましい。

【0040】
なお、工程(A1)では、Wntファミリーに属する増殖因子の代わりに、GSK-3阻害剤(例えば、CHIR)を添加してもよい。GSK-3阻害剤(例えば、CHIR)は、Wntシグナル経路を活性化させることが知られている(J. Biol. Chem. 277(34),pp.30998-31004(2002))。

【0041】
また、工程(A1)では、胚体内胚葉細胞への分化効率を高め得る追加の因子を培地中に添加してもよい。追加の因子としては、例えば、PDGF(血小板由来増殖因子)、EGF(上皮増殖因子)、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、KGF(ケラチノサイト増殖因子)、HGF、NGF(神経増殖因子)、GDF(増殖分化因子)、GLP(グルカゴン様ペプチド)、ニコチンアミド、エキセンジン-4、レチノイン酸、エタノールアミン、副甲状腺ホルモン、プロゲステロン、アプロチニン、ヒドロコルチゾン、ガストリン、ステロイドアルカロイド、銅キレーター(トリエチレンペンタミン等)、フォルスコリン、酪酸ナトリウム、ノギン、バルプロ酸、トリコスタチンA、インディアンヘッジホッグ、ソニックヘッジホッグ、プロテアソーム阻害剤、ノッチ経路阻害剤、ヘッジホッグ経路阻害剤等が挙げられる。

【0042】
培養に用いる容器としては、分化誘導能、機能発現能、生存能等の観点から、生体適合材料を用いたスキャフォールドでコートされた培養プレートが好ましい。スキャフォールドとしては、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ゼラチン、エンタクチン、ポリオルニチン等が挙げられる。市販品としては、Becton Dickinson製のMATRIGELTM、増殖因子減少MATRIGELTM等が入手可能である。特に、MATRIGELTMでコートされた培養プレートを用いることが好ましい。

【0043】
培養に用いる培地は、動物細胞の培養に用いることのできる基本培地に、細胞の維持増殖に必要な各種栄養源やその他の成分を添加して作製される。

【0044】
基本培地としては、RPMI1640培地、DMEM培地、CMRL1066培地、ハムF12培地、イーグルMEM培地、グラスゴーMEM培地、IMEM Zinc Option培地、IMDM培地、ウィリアムE培地、フィッシャー培地、マッコイ培地、BME培地、αMEM培地、BGJb培地、Medium199培地、あるいはこれらの混合培地等が挙げられる。

【0045】
栄養源としては、グリセロール、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、デンプン、デキストリン等の炭素源;脂肪酸、油脂、レシチン、アルコール等の炭化水素類;硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム等の窒素源;ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、リン酸塩等の無機塩類;各種ビタミン類;各種アミノ酸類;等が挙げられる。

【0046】
その他の成分としては、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質;コレラトキシン;インスリン;トランスフェリン;亜セレン酸;アルブミン;2-メルカプトエタノール;血清又は血清代替物;等が挙げられる。インスリン、トランスフェリン、及び亜セレン酸としては、Invitrogen製のITS-X、ITS-A、ITS-G等が市販品として入手可能である。また、血清代替物としては、Invitrogen製のB-27TMサプリメント、N-2サプリメント、KnockoutTM血清代替物等が市販品として入手可能である。

【0047】
ここで、工程(A1)における分化効率を高めるためには、培地中のインスリン、IGF等の含有量を十分に低くすることが重要であることが知られている(国際公開第2006/020919号を参照)。このため、工程(A1)では、無血清培地又は低血清培地を用いることが好ましい(非特許文献1、特許文献1~3等を参照)。血清濃度は、0~2%(v/v)が好ましく、0~1%(v/v)がより好ましく、0~0.5%(v/v)がさらに好ましい。

【0048】
好適な実施形態では、アクチビンA、Wnt3a、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、L-グルタミン又はL-グルタミンを含むジペプチドを添加した、無血清又は低血清のRPMI1640培地が用いられる。

【0049】
工程(A1)の培養期間は例えば1~6日であり、2~4日が好ましい。
胚体内胚葉細胞への分化誘導の進行は、形態学的観察によるほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。多能性幹細胞から胚体内胚葉細胞への分化が進行するに従って、幹細胞のマーカー遺伝子であるOCT4、NANOG、SOX2、ECAD等の発現が減少し、胚体内胚葉細胞のマーカー遺伝子であるSOX17、CER、FOXA2、CXCR4等の発現が亢進する。

【0050】
なお、胚体内胚葉細胞への分化効率を高めるためには、培地中の血清濃度を低めることが必要であるが、細胞の生存率を高めるためには、培地中の血清濃度を高める方が好ましい。
そこで、工程(A1)を、無血清の第1の培地で培養する工程(A1-1)と、低血清の第2の培地で培養する工程(A1-2)とに分けることが好ましい。

【0051】
工程(A1-1)で用いられる第1の培地は、無血清であるほかは上記と同様でよい。すなわち、第1の培地は、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子を含有し、その他に、Wntファミリーに属する増殖因子を含有していてもよい。この第1の培地は、Wntファミリーに属する増殖因子を含有する方が好ましい。

【0052】
工程(A1-1)の培養期間は例えば1~3日であり、1~2日が好ましい。この培養により、多能性幹細胞から中内胚葉細胞への分化が進行する。
中内胚葉細胞への分化誘導の進行は、形態学的観察によるほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。多能性幹細胞から中内胚葉細胞への分化が進行するに従って、幹細胞のマーカー遺伝子であるOCT4、NANOG、SOX2、ECAD等の発現が減少し、中内胚葉細胞のマーカー遺伝子であるBRA、FGF4、WNT3、NCAD等の発現が亢進する。

【0053】
工程(A1-2)で用いられる第2の培地は、低血清であるほかは上記と同様でよい。すなわち、第2の培地は、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子を含有し、その他に、Wntファミリーに属する増殖因子を含有していてもよい。血清濃度は、0.05~2%(v/v)が好ましく、0.05~1%(v/v)がより好ましく、0.1~0.5%(v/v)がさらに好ましい。

【0054】
工程(A1-2)の培養期間は例えば1~3日であり、1~2日が好ましい。この培養により、中内胚葉細胞から胚体内胚葉細胞への分化が進行する。
上述したとおり、胚体内胚葉細胞への分化誘導の進行は、形態学的観察によるほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。

【0055】
なお、得られた細胞は、次の工程(B1)に進む前に、公知の方法で濃縮、単離、及び/又は精製してもよい。

【0056】
(工程(B1))
工程(B1)では、工程(A1)で得られた細胞をFGFの存在下で培養する。

【0057】
FGFとしては、FGF-1、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-15、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23等が挙げられ、FGF-2(bFGF)、FGF-5、FGF-7、FGF-10が好ましい。
FGFの濃度は、5~150ng/mLが好ましく、10~100ng/mLがより好ましく、20~80ng/mLがさらに好ましい。

【0058】
また、工程(B1)では、ヘッジホッグ経路阻害剤を培地中に添加することが好ましい。FGFとともにヘッジホッグ経路阻害剤を添加することにより、分化効率を高めることができる。
ヘッジホッグ経路阻害剤としては、KAAD-シクロパミン(28-[2-[[6-[(3-フェニルプロパノイル)アミノ]ヘキサノイル]アミノ]エチル]-17β,23β-エポキシベラトラマン-3-オン)、KAAD-シクロパミンの類似体、ジェルビン(17,23β-エポキシ-3β-ヒドロキシベラトラマン-11-オン)、ジェルビンの類似体、ヘッジホッグ経路遮断抗体等が挙げられ、その中でもKAAD-シクロパミンが好ましい。
ヘッジホッグ経路阻害剤の濃度は、0.01~5μMが好ましく、0.02~2μMがより好ましく、0.1~0.5μmがさらに好ましい。

【0059】
培養に用いる容器は、工程(A1)と同様でよい。培地は、上述した各因子や培地の血清濃度を除き、工程(A1)と同様でよい。培地の血清濃度は、0.1~5%(v/v)が好ましく、0.5~5%(v/v)がより好ましく、1~5%(v/v)がさらに好ましい。
なお、工程(A1)で低血清培地が用いられる場合、工程(B1)では、工程(A1)よりも高い血清濃度の培地を用いることが好ましい。

【0060】
好適な実施形態では、FGF-10、KAAD-シクロパミン、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、L-グルタミン又はL-グルタミンを含むジペプチドを添加した、低血清のRPMI1640培地が用いられる。

【0061】
工程(B1)の培養期間は例えば1~6日であり、2~4日が好ましい。
分化誘導の進行は、形態学的観察によるほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。分化が進行するに従って、HNF1B、HNF4A等の遺伝子の発現が亢進する。

【0062】
なお、得られた細胞は、次の工程(C1)に進む前に、公知の方法で濃縮、単離、及び/又は精製してもよい。

【0063】
(工程(C1))
工程(C1)では、工程(B1)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する。

【0064】
レチノイドとしては、レチノール、レチナール、レチノイン酸等が挙げられ、その中でもレチノイン酸が好ましい。
レチノイドの濃度は、0.2~10μMが好ましく、0.4~8μMがより好ましく、1~4μMがさらに好ましい。

【0065】
また、工程(C1)では、ヘッジホッグ経路阻害剤を培地中に添加することが好ましい。レチノイドとともにヘッジホッグ経路阻害剤を添加することにより、分化効率を高めることができる。
ヘッジホッグ経路阻害剤としては、KAAD-シクロパミン、KAAD-シクロパミンの類似体、ジェルビン、ジェルビンの類似体、ヘッジホッグ経路遮断抗体等が挙げられ、その中でもKAAD-シクロパミンが好ましい。
ヘッジホッグ経路阻害剤の濃度は、0.01~5μMが好ましく、0.02~2μMがより好ましく、0.1~0.5μMがさらに好ましい。

【0066】
また、工程(C1)では、FGFを培地中に添加することが好ましい。レチノイドとともにFGFを添加することにより、分化効率を高めることができる。
FGFとしては、FGF-1、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-15、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23等が挙げられ、FGF-2(bFGF)、FGF-5、FGF-7、FGF-10が好ましい。
FGFの濃度は、0.5~50ng/mLが好ましく、1~25ng/mLがより好ましく、2~10ng/mLがさらに好ましい。

【0067】
また、工程(C1)では、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子を培地中に添加してもよい。
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の濃度は、5~250ng/mLが好ましく、10~200ng/mLがより好ましく、20~150ng/mLがさらに好ましい。

【0068】
培養に用いる容器は、工程(B1)と同様でよい。培地は、上述した各因子を除き、基本的に工程(B1)と同様でよい。ただし、培地には、血清の代わりに血清代替物を添加することが好ましい。血清代替物の市販品としては、Invitrogen製のB-27TMサプリメント、N-2サプリメント、KnockoutTM血清代替物等が入手可能であり、その中でもB-27TMサプリメントが好ましい。
B-27TMサプリメントの濃度は、0.1~10%(v/v)が好ましく、0.2~5%(v/v)がより好ましく、0.4~2.5%(v/v)がさらに好ましい。なお、このB-27TMサプリメントは、50倍ストック溶液として市販されているため、B-27TMサプリメントの濃度を0.1~10%(v/v)とするには、5~500倍希釈されるように培地中に添加すればよい。

【0069】
好適な実施形態では、レチノイン酸、KAAD-シクロパミン、FGF-10、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、B-27TMサプリメントを添加した、無血清のDMEM/ハムF12培地が用いられる。

【0070】
工程(C1)の培養期間は例えば1~6日であり、2~4日が好ましい。
分化誘導の進行は、形態学的観察によるほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。分化が進行するに従って、PDX1、HNF6、HLXB9等の遺伝子の発現が亢進する。

【0071】
なお、得られた細胞は、次の工程(D1)に進む前に、公知の方法で濃縮、単離、及び/又は精製してもよい。

【0072】
[工程(D1)]
工程(D1)では、工程(C1)で得られた細胞をγ-セクレターゼ阻害剤の存在下で培養する。

【0073】
γ-セクレターゼ阻害剤としては、DAPT(N-[N-(3,5-ジフルオロフェナセチル-L-アラニル)]-S-フェニルグリシン-tert-ブチルエステル)、L-685458([1S-ベンジル-4R-[1-(1S-カルバモイル-2-フェネチルカルバモイル)-1S-3-メチルブチルカルバモイル]-2R-ヒドロキシ-5-フェネチルペンチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル)等が挙げられ、その中でもDAPTが好ましい。
γ-セクレターゼ阻害剤の濃度は、1~50μMが好ましく、2~40μMがより好ましく、5~20μMがさらに好ましい。

【0074】
また、工程(D1)では、エキセンジン-4を培地中に添加することが好ましい。γ-セクレターゼ阻害剤とともにエキセンジン-4を添加することにより、分化効率を高めることができる。
エキセンジン-4の濃度は、5~150ng/mLが好ましく、10~100ng/mLがより好ましく、20~80ng/mLがさらに好ましい。

【0075】
培養に用いる容器や培地は、工程(C1)と同様でよい。すなわち、培地には血清代替物を添加することが好ましい。

【0076】
好適な実施形態では、DAPT、エキセンジン-4、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、B-27TMサプリメントを添加した、無血清のDMEM/ハムF12培地が用いられる。

【0077】
工程(D1)の培養期間は例えば1~6日であり、2~3日が好ましい。
分化誘導の進行は、形態学的観察によるほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。分化が進行するに従って、NKX6-1、NGN3、PAX4、NKX2-2等の遺伝子の発現が亢進する。

【0078】
なお、得られた細胞は、次の工程(E1)に進む前に、公知の方法で濃縮、単離、及び/又は精製してもよい。

【0079】
(工程(E1))
工程(E1)では、工程(D1)で得られた細胞を、エキセンジン-4、HGF、IGF-1、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する。

【0080】
エキセンジン-4、HGF、IGF-1、及びニコチンアミドとしては、そのうちの2種以上を添加することが好ましく、3種以上を添加することがより好ましい。
エキセンジン-4の濃度は、5~150nMが好ましく、10~100nMがより好ましく、20~80nMがさらに好ましい。
HGFの濃度は、5~150ng/mLが好ましく、10~100ng/mLがより好ましく、20~80ng/mLがさらに好ましい。
IGF-1の濃度は、5~150ng/mLが好ましく、10~100ng/mLがより好ましく、20~80ng/mLがさらに好ましい。
ニコチンアミドの濃度は、1~30mMが好ましく、3~20mMがより好ましく、5~15mMがさらに好ましい。

【0081】
培養に用いる容器や培地は、工程(D1)と同様でよい。すなわち、培地には血清代替物を添加することが好ましい。

【0082】
好適な実施形態では、エキセンジン-4、HGF、IGF-1、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質、B-27TMサプリメントを添加した、無血清のCMRL1066培地が用いられる。

【0083】
工程(E1)の培養期間は例えば3~20日であり、3~10日が好ましい。
この工程(E1)により、膵臓ホルモン産生細胞が得られる。
膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導の進行は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン等の膵臓ホルモンの産生を確認するほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。分化が進行するに従って、INS、GCG、GHRL、SST、PPY等のうち、少なくとも1つの遺伝子の発現が亢進する。

【0084】
[第2の分化誘導方法]
第2の分化誘導方法は、非特許文献4に記載の方法に準じたものである。この文献は参照により本願に援用する。
第2の分化誘導方法は、下記の工程(A2)~(D2)を含む。このうち少なくとも1つの工程で、上述した分化誘導促進剤が培地中に添加される。分化誘導促進剤を添加する工程は、工程(C2)~(D2)の少なくとも1つの工程であることが好ましく、工程(D2)であることが特に好ましい。なお、ある工程に分化誘導促進剤を添加する場合、その工程の最初から添加してもよく、工程の途中から添加してもよい。
(A2)TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子と、Wntファミリーに属する増殖因子及びGSK-3阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の因子との存在下で多能性幹細胞を培養する工程。
(B2)上記工程(A2)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する工程。
(C2)上記工程(B2)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程。
(D2)上記工程(C2)で得られた細胞を、cAMP増加剤、デキサメタゾン、TGF-β1型受容体阻害剤、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する工程。

【0085】
(工程(A2))
工程(A2)では、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子と、Wntファミリーに属する増殖因子及びGSK-3阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の因子との存在下で多能性幹細胞を培養する。

【0086】
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子としては、アクチビン、ノーダル、BMP等が挙げられ、その中でもアクチビンが好ましい。アクチビンとしては、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB等が挙げられ、その中でもアクチビンAが好ましい。
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の濃度は、5~250ng/mLが好ましく、10~200ng/mLがより好ましく、50~150ng/mLがさらに好ましい。

【0087】
Wntファミリーに属する増殖因子としては、Wnt1、Wnt3a、Wnt5a、Wnt7a等が挙げられ、Wnt1、Wnt3aが好ましく、Wnt3aがより好ましい。
Wntファミリーに属する増殖因子の濃度は、1~1000ng/mLが好ましく、10~100ng/mLがより好ましく、10~50ng/mLがさらに好ましい。

【0088】
GSK-3阻害剤としては、GSK-3α阻害剤及びGSK-3β阻害剤のいずれを用いてもよいが、GSK-3β阻害剤を用いることが好ましい。具体例としては、CHIR99021(6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル)、SB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、SB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、インジルビン-3’-モノオキシム(3-[(3E)-3-(ヒドロキシイミノ)-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-2-イリデン]-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-2-オン)、ケンパウロン(7,8-ジヒドロ-9-ブロモインドロ[3,2-d][1]ベンゾアゼピン-6(5H)-オン)等が挙げられ、その中でもCHIR99021が好ましい。
GSK-3阻害剤の濃度は、0.01~20μMが好ましく、0.1~20μMがより好ましく、1~5μMがさらに好ましい。

【0089】
また、工程(A2)では、分化効率を高め得る追加の因子を培地中に添加してもよい。追加の因子としては、例えば、PDGF、EGF、VEGF、KGF、HGF、NGF、GDF、GLP、ニコチンアミド、エキセンジン-4、レチノイン酸、エタノールアミン、副甲状腺ホルモン、プロゲステロン、アプロチニン、ヒドロコルチゾン、ガストリン、ステロイドアルカロイド、銅キレーター(トリエチレンペンタミン等)、フォルスコリン、酪酸ナトリウム、ノギン、バルプロ酸、トリコスタチンA、インディアンヘッジホッグ、ソニックヘッジホッグ、プロテアソーム阻害剤、ノッチ経路阻害剤、ヘッジホッグ経路阻害剤等が挙げられる。

【0090】
培養に用いる容器としては、分化誘導能、機能発現能、生存能等の観点から、生体適合材料を用いたスキャフォールドでコートされた培養プレートが好ましい。スキャフォールドとしては、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ゼラチン、エンタクチン、ポリオルニチン等が挙げられる。市販品としては、Becton Dickinson製のMATRIGELTM、増殖因子減少MATRIGELTM等が入手可能である。特に、MATRIGELTMでコートされた培養プレートを用いることが好ましい。

【0091】
培養に用いる培地は、動物細胞の培養に用いることのできる基本培地に、細胞の維持増殖に必要な各種栄養源やその他の成分を添加して作製される。

【0092】
基本培地としては、RPMI1640培地、DMEM培地、CMRL1066培地、ハムF12培地、イーグルMEM培地、グラスゴーMEM培地、IMEM Zinc Option培地、IMDM培地、ウィリアムE培地、フィッシャー培地、マッコイ培地、BME培地、αMEM培地、BGJb培地、Medium199培地、あるいはこれらの混合培地等が挙げられる。

【0093】
栄養源としては、グリセロール、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、デンプン、デキストリン等の炭素源;脂肪酸、油脂、レシチン、アルコール等の炭化水素類;硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム等の窒素源;ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、リン酸塩等の無機塩類;各種ビタミン類;各種アミノ酸類;等が挙げられる。

【0094】
その他の成分としては、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質;コレラトキシン;インスリン;トランスフェリン;亜セレン酸;アルブミン;2-メルカプトエタノール;血清又は血清代替物;等が挙げられる。インスリン、トランスフェリン、及び亜セレン酸としては、Invitrogen製のITS-X、ITS-A、ITS-G等が市販品として入手可能である。また、血清代替物としては、Invitrogen製のB-27TMサプリメント、N-2サプリメント、KnockoutTM血清代替物等が市販品として入手可能である。

【0095】
ここで、工程(A2)における分化効率を高めるためには、培地中のインスリン、IGF等の含有量を十分に低くすることが重要であることが知られている。このため、工程(A2)では、無血清培地又は低血清培地を用いることが好ましい。血清濃度は、0~3%(v/v)が好ましく、0~2%(v/v)がより好ましい。

【0096】
好適な実施形態では、アクチビンA、CHIR99021を添加した低血清のRPMI1640培地が用いられる。
工程(A2)の培養期間は例えば1~3日であり、1~2日が好ましい。

【0097】
(工程(B2))
工程(B2)では、工程(A2)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する。

【0098】
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子としては、アクチビン、ノーダル、BMP等が挙げられ、その中でもアクチビンが好ましい。アクチビンとしては、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB等が挙げられ、その中でもアクチビンAが好ましい。
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の濃度は、5~250ng/mLが好ましく、10~200ng/mLがより好ましく、50~150ng/mLがさらに好ましい。

【0099】
培養に用いる容器や培地は、工程(A2)と同様でよい。すなわち、好適な実施形態では、アクチビンAを添加した低血清のRPMI1640培地が用いられる。
工程(B2)の培養期間は例えば1~4日であり、1~3日が好ましい。

【0100】
(工程(C2))
工程(C2)では、工程(B2)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する。

【0101】
レチノイドとしては、レチノール、レチナール、レチノイン酸等が挙げられ、その中でもレチノイン酸が好ましい。
レチノイドの濃度は、0.2~10μMが好ましく、0.4~8μMがより好ましく、1~4μMがさらに好ましい。

【0102】
また、工程(C2)では、BMP受容体阻害剤を培地中に添加することが好ましい。
BMP受容体阻害剤としては、ドルソモルフィン(6-[4-[2-(1-ピペリジニル)エトキシ]フェニル]-3-(4-ピリジル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン)、LDN-193189(4-(6-(4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)キノリン)等が挙げられ、その中でもドルソモルフィンが好ましい。
BMP受容体阻害剤の濃度は、0.2~5μMが好ましく、0.3~3μMがより好ましく、0.5~2μMがさらに好ましい。

【0103】
また、工程(C2)では、TGF-β1型受容体阻害剤を培地中に添加することが好ましい。
TGF-β1型受容体阻害剤としては、SB431542(4-[4-(1,3-ベンゾジオキソル-5-イル)-5-(2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド)、SB525334(6-[2-(1,1-ジメチルエチル)-5-(6-メチル-1,2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-4-イル]キノキサリン)、LY364947(4-[3-(2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-4-イル]キノリン)等が挙げられ、その中でもSB431542が好ましい。また、TGF-β1型受容体阻害剤としては、Calbiochem製のAlk5インヒビターIIを用いることも可能である。
TGF-β1型受容体阻害剤の濃度は、1~50μMが好ましく、2~30μMがより好ましく、5~20μMがさらに好ましい。

【0104】
培養に用いる容器は、工程(B2)と同様でよい。培地は、上述した各因子を除き、基本的に工程(B2)と同様でよい。ただし、培地には、血清の代わりに血清代替物を添加することが好ましい。血清代替物の市販品としては、Invitrogen製のB-27TMサプリメント、N-2サプリメント、KnockoutTM血清代替物等が入手可能であり、その中でもB-27TMサプリメントが好ましい。
B-27TMサプリメントの濃度は、0.1~10%(v/v)が好ましく、0.2~5%(v/v)がより好ましく、0.4~2.5%(v/v)がさらに好ましい。なお、このB-27TMサプリメントは、50倍ストック溶液として市販されているため、B-27TMサプリメントの濃度を0.1~10%(v/v)とするには、5~500倍希釈されるように培地中に添加すればよい。

【0105】
好適な実施形態では、レチノイン酸、ドルソモルフィン、SB431542、B-27TMサプリメントを添加した、無血清のIMEM Zinc Option培地が用いられる。
工程(C2)の培養期間は例えば5~9日であり、6~8日が好ましい。

【0106】
(工程(D2))
工程(D2)では、工程(C2)で得られた細胞を、cAMP増加剤、デキサメタゾン、TGF-β1型受容体阻害剤、及びニコチンアミドからなる群から選択される少なくとも1種の因子の存在下で培養する。

【0107】
cAMP増加剤、デキサメタゾン、TGF-β1型受容体阻害剤、及びニコチンアミドとしては、そのうちの2種以上を添加することが好ましく、3種以上を添加することがより好ましい。

【0108】
cAMP増加剤としては、フォルスコリン等のアデニル酸シクラーゼ活性化剤;3-イソブチル-1-メチルキサンチン等のホスホジエステラーゼ阻害剤;ジブチリルcAMP等のcAMPアナログ;等が挙げられ、その中でもフォルスコリンが好ましい。
cAMP増加剤の濃度は、1~50μMが好ましく、2~30μMがより好ましく、5~20μMがさらに好ましい。

【0109】
デキサメタゾンの濃度は、1~50μMが好ましく、2~30μMがより好ましく、5~20μMがさらに好ましい。

【0110】
TGF-β1型受容体阻害剤としては、SB431542、SB525334、LY364947等が挙げられ、その中でもSB431542が好ましい。また、TGF-β1型受容体阻害剤としては、Calbiochem製のAlk5インヒビターIIを用いることも可能である。
TGF-β1型受容体阻害剤の濃度は、1~50μMが好ましく、2~30μMがより好ましく、5~20μMがさらに好ましい。

【0111】
ニコチンアミドの濃度は、1~30mMが好ましく、3~20mMがより好ましく、5~15mMがさらに好ましい。

【0112】
培養に用いる容器や培地は、工程(C2)と同様でよい。すなわち、培地には血清代替物を添加することが好ましい。

【0113】
好適な実施形態では、フォルスコリン、デキサメタゾン、Alk5インヒビターII、ニコチンアミド、B-27TMサプリメントを添加した、無血清のIMEM Zinc Option培地が用いられる。
工程(D2)の培養期間は例えば9~13日であり、10~12日が好ましい。

【0114】
この工程(D2)により、膵臓ホルモン産生細胞が得られる。
膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導の進行は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン等の膵臓ホルモンの産生を確認するほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。多能性幹細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化が進行するに従って、膵臓ホルモン産生細胞のマーカー遺伝子であるINS、GCG、GHRL、SST、PPY等のうち、少なくとも1つの遺伝子の発現が亢進する。

【0115】
<膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導方法(膵臓ホルモン産生細胞の生産方法)>
本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法では、膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導過程で、上述した分化誘導促進剤を培地中に添加する。膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導方法としては、従来公知の方法を任意に採用することができ、特に限定されない。分化誘導促進剤としてポリペプチド又は改変ポリペプチドを添加する場合、その濃度は、10~200ng/mLが好ましく、50~150ng/mLがより好ましく、60~120ng/mLがさらに好ましい。また、分化誘導促進剤として培養上清を添加する場合、その濃度は、0.5~20%(v/v)が好ましく、1~10%(v/v)がより好ましく、1.5~5%(v/v)がさらに好ましい。

【0116】
以下、膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導方法(膵臓ホルモン産生細胞の生産方法)の一例について説明するが、本発明に係る膵臓ホルモン産生細胞の生産方法はこの例に限定されるものではない。

【0117】
以下の分化誘導方法は、非特許文献2に記載の方法に準じたものである。この文献は参照により本願に援用する。
この分化誘導方法は、下記の工程(A3)~(E3)を含む。このうち少なくとも1つの工程で、上述した分化誘導促進剤が培地中に添加される。分化誘導促進剤を添加する工程は、工程(D3)~(E3)の少なくとも1つの工程であることが好ましく、工程(E3)であることが特に好ましい。なお、ある工程に分化誘導促進剤を添加する場合、その工程の最初から添加してもよく、工程の途中から添加してもよい。
(A3)TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子、レチノイド、FGF、及びニコチンアミドの非存在下で膵臓組織幹/前駆細胞を培養する工程。
(B3)上記工程(A3)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する工程。
(C3)上記工程(B3)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する工程。
(D3)上記工程(C3)で得られた細胞をFGFの存在下で培養する工程。
(E3)上記工程(D3)で得られた細胞をニコチンアミドの存在下で培養する工程。

【0118】
(工程(A3))
工程(A3)では、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子、レチノイド、FGF、ニコチンアミドの非存在下で膵臓組織幹/前駆細胞を培養する。

【0119】
培養に用いる容器としては、分化誘導能、機能発現能、生存能等の観点から、生体適合材料を用いたスキャフォールドでコートされた培養プレートが好ましい。スキャフォールドとしては、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ゼラチン、エンタクチン、ポリオルニチン等が挙げられる。市販品としては、Becton Dickinson製のMATRIGELTM、増殖因子減少MATRIGELTM等が入手可能である。特に、MATRIGELTMでコートされた培養プレートを用いることが好ましい。

【0120】
培養に用いる培地は、動物細胞の培養に用いることのできる基本培地に、細胞の維持増殖に必要な各種栄養源やその他の成分を添加して作製される。

【0121】
基本培地としては、RPMI1640培地、DMEM培地、CMRL1066培地、ハムF12培地、イーグルMEM培地、グラスゴーMEM培地、IMEM Zinc Option培地、IMDM培地、ウィリアムE培地、フィッシャー培地、マッコイ培地、BME培地、αMEM培地、BGJb培地、Medium199培地、あるいはこれらの混合培地等が挙げられる。

【0122】
栄養源としては、グリセロール、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、デンプン、デキストリン等の炭素源;脂肪酸、油脂、レシチン、アルコール等の炭化水素類;硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、尿素、硝酸ナトリウム等の窒素源;ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、リン酸塩等の無機塩類;各種ビタミン類;各種アミノ酸類;等が挙げられる。

【0123】
その他の成分としては、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質;コレラトキシン;インスリン;トランスフェリン;亜セレン酸;2-メルカプトエタノール;アルブミン;血清又は血清代替物;等が挙げられる。インスリン、トランスフェリン、及び亜セレン酸としては、Invitrogen製のITS-X、ITS-A、ITS-G等が市販品として入手可能である。また、血清代替物としては、Invitrogen製のB-27TMサプリメント、N-2サプリメント、KnockoutTM血清代替物等が市販品として入手可能である。

【0124】
好適な実施形態では、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸、2-メルカプトエタノール、アルブミンを添加した、無血清のDMEM/ハムF12が用いられる。
インスリンの濃度は、2~30μg/mLが好ましく、5~20μg/mLがより好ましい。トランスフェリンの濃度は、1~20μg/mLが好ましく、3~10μg/mLがより好ましい。亜セレン酸の濃度は、1~20ng/mLが好ましく、5~20ng/mLがより好ましい。2-メルカプトエタノールの濃度は、50~200μMが好ましく、50~100μMがより好ましい。アルブミンの濃度は、1~10ng/mLが好ましく、2~5ng/mLがより好ましい。
工程(A3)の培養期間は例えば1~3日であり、1~2日が好ましい。

【0125】
(工程(B3))
工程(B3)では、工程(A3)で得られた細胞をTGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の存在下で培養する。

【0126】
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子としては、アクチビン、ノーダル、BMP等が挙げられ、その中でもアクチビンが好ましい。アクチビンとしては、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB等が挙げられ、その中でもアクチビンAが好ましい。
TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子の濃度は、5~250ng/mLが好ましく、10~200ng/mLがより好ましく、50~150ng/mLがさらに好ましい。

【0127】
培養に用いる容器は、工程(A3)と同様でよい。培地は、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子を添加することを除き、工程(A3)と同様でよい。すなわち、好適な実施形態では、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸、2-メルカプトエタノール、アルブミンを添加した、無血清のDMEM/ハムF12が用いられる。
工程(B3)の培養期間は例えば2~6日であり、3~5日が好ましい。

【0128】
(工程(C3))
工程(C3)では、工程(B3)で得られた細胞をレチノイドの存在下で培養する。

【0129】
レチノイドとしては、レチノール、レチナール、レチノイン酸等が挙げられ、その中でも全トランス型レチノイン酸が好ましい。
レチノイドの濃度は、0.2~10μMが好ましく、0.4~8μMがより好ましく、1~4μMがさらに好ましい。

【0130】
培養に用いる容器は、工程(A3)と同様でよい。培地は、TGF-βスーパーファミリーに属する増殖因子を添加することを除き、工程(A3)と同様でよい。
好適な実施形態では、全トランス型レチノイン酸、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸、2-メルカプトエタノール、アルブミンを添加した、無血清のDMEM/ハムF12が用いられる。
工程(C3)の培養期間は例えば2~6日であり、3~5日が好ましい。

【0131】
(工程(D3))
工程(D3)では、工程(C3)で得られた細胞をFGFの存在下で培養する。

【0132】
FGFとしては、FGF-1、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-15、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23等が挙げられ、FGF-2(bFGF)、FGF-5、FGF-7、FGF-10が好ましい。
FGFの濃度は、1~30ng/mLが好ましく、2~20ng/mLがより好ましく、5~15ng/mLがさらに好ましい。

【0133】
培養に用いる容器は、工程(A3)と同様でよい。培地は、FGFを添加することを除き、基本的に工程(C3)と同様でよい。
好適な実施形態では、FGF-2(bFGF)、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸、アルブミンを添加した、無血清のDMEM/ハムF12が用いられる。
工程(D3)の培養期間は例えば1~5日であり、2~4日が好ましい。

【0134】
(工程(E3))
工程(E3)では、工程(D3)で得られた細胞をニコチンアミドの存在下で培養する。
ニコチンアミドの濃度は、1~30mMが好ましく、3~20mMがより好ましく、5~15mMがさらに好ましい。

【0135】
また、工程(E3)では、FGFを培地中に添加することが好ましい。
FGFとしては、FGF-1、FGF-2(bFGF)、FGF-3、FGF-4、FGF-5、FGF-6、FGF-7、FGF-8、FGF-9、FGF-10、FGF-11、FGF-12、FGF-13、FGF-14、FGF-15、FGF-16、FGF-17、FGF-18、FGF-19、FGF-20、FGF-21、FGF-22、FGF-23等が挙げられ、FGF-2(bFGF)、FGF-5、FGF-7、FGF-10が好ましい。
FGFの濃度は、1~30ng/mLが好ましく、2~20ng/mLがより好ましく、5~15ng/mLがさらに好ましい。

【0136】
培養に用いる容器は、工程(A3)と同様でよい。培地は、ニコチンアミドを添加することを除き、基本的に工程(D3)と同様でよい。
好適な実施形態では、ニコチンアミド、FGF-2(bFGF)、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸、アルブミンを添加した、無血清のDMEM/ハムF12が用いられる。
工程(E3)の培養期間は例えば3~20日であり、3~10日が好ましい。

【0137】
この工程(E3)により、膵臓ホルモン産生細胞が得られる。
膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導の進行は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン等の膵臓ホルモンの産生を確認するほか、RT-PCRにより遺伝子発現を確認することによっても評価することができる。膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化が進行するに従って、膵臓ホルモン産生細胞のマーカー遺伝子であるINS、GCG、GHRL、SST、PPY等のうち、少なくとも1つの遺伝子の発現が亢進する。

【0138】
<膵臓ホルモン産生細胞の応用例>
上述のようにして得られた膵臓ホルモン産生細胞は、糖尿病等の治療薬に応用することができる。例えば、膵臓ホルモン産生細胞がインスリンを産生・分泌する場合には、そのインスリン産生細胞をそのまま、あるいはフィルター濾過により濃縮したペレット等の細胞塊を糖尿病治療薬として用いることができる。この糖尿病治療薬は、DMSO等の保護剤を加え、凍結保存することもできる。なお、より安全に利用するためには、加熱処理、放射線処理、マイトマイシンC処理など、糖尿病治療薬としての機能を残しつつ、病原体のタンパク質が変性する程度の条件下で処理をすることが好ましい。

【0139】
インスリン産生細胞を用いた糖尿病治療薬のヒトへの投与形態(移植方法)としては、例えば、ヒト患者の右下腹部に小切開を置き、腸間膜の細い血管を露出して直視下にカテーテルを挿入して細胞を移植する方法、エコーにて肝臓の門脈を同定して、カテーテルを穿刺して細胞を移植する方法、あるいは腹部エコーガイド下に脾臓を直接穿刺することにより脾臓に移植する方法が挙げられる。投与量(移植量)は、1×10~1×1010細胞/個体が好ましく、5×10~1×1010細胞/個体がより好ましい。なお、投与量(移植量)は、投与される患者の年齢、体重、症状等によって適宜変更することができる。

【0140】
また、上述のようにして得られた膵臓ホルモン産生細胞を研究試薬として用いることもできる。例えば、膵臓ホルモン産生細胞を培養している培養容器や、膵臓ホルモン産生細胞を封じ込めたバイオリアクター内に新薬を添加することにより、新薬のスクリーニングを行うことができる。

【0141】
さらに、上述のようにして得られた膵臓ホルモン産生細胞を用いて、バイオ人工膵臓を製造することも可能である。バイオ人工膵臓としては、中空糸型のバイオリアクター(デバイス)と膵臓ホルモン産生細胞とを組み合わせたハイブリッド型の人工膵臓が挙げられる。バイオ人工膵臓には、体外に装着して血管に接続するもの、体内に留置して血管に接続するもの、血管に接続せずに腹腔内に留置するもの、血管に接続せずに皮下に留置するもの等があり、いずれの形態のバイオ人工膵臓にも適用可能である。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって何ら限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0143】
<実施例1>
(1)分化誘導促進剤の調製
分化誘導促進剤は以下のようにして調製した。10% FBS(ウシ胎児血清)(ニチレイ、171012)、1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies Japan、15140-122)を添加したハムF12培地(Sigma、N6658)で継代培養したCHO-K1細胞を10cmディッシュに5×10個プレーティングした。その翌日、FuGENE6(Roche)を使用して、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによりコードされるポリペプチド(以下、「IBCAP」という。)の発現ベクター(pCAGGS-IBCAP)をCHO-K1細胞にトランスフェクトし、IBCAPを強制発現させた。その48時間後に細胞を1/20濃度に希釈し、10cmディッシュに再度プレーティングした。その翌日、最終濃度400μg/mLのG418(ナカライテスク、09380-44)を添加し、以後、3~5日おきに培地交換を行い、コロニー形成させた。限界希釈法でクローン化したコロニーを単離し、増殖後、サザンブロット法及びノザンブロット法で遺伝子発現を確認し、安定型IBCAP発現CHO-K1細胞株(以下、「IBCAP発現Stable CHO細胞」という。)を作製した。
【実施例】
【0144】
その後、このIBCAP発現Stable CHO細胞を、1% GLUTAMAX I(Life Technologies Japan、35050-061)及び1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies Japan、15140-122)を添加したCD OptiCHO(Life Technologies Japan、12681-011)に馴化させた。さらに、馴化させたIBCAP発現Stable CHO細胞を、強制通気式COインキュベーター(タイテック、CO-BR-43FL、温度:37℃、振とう速度:120rpm、ガス条件:5% CO、20mL/min/フラスコ)にて振とう培養を行い、以後、この細胞を用いて培養上清を作製した。
【実施例】
【0145】
培養上清は、生存率が90%以上あることを確認し、細胞数が5×10個/mLとなるよう継代し(培養液量:150mL培養液/500mLフラスコ)、5日後に回収した(細胞数は約4~5×10個/mL)。回収した培養上清はその後、セントリプレップ(Millipore、4302、YM-3)を用いて約10倍に濃縮し(300mLを約30mLに濃縮し)、さらに2Lの30mM HEPES(pH7.6)に対して3回透析した。そして、透析後の培養上清(以下、「IBCAP培養上清」という。)を分化誘導促進剤として準備した。
【実施例】
【0146】
また、Mockコントロールとして、空ベクター(pCAGGS)をCHO-K1細胞にトランスフェクトし、上記と同様にして透析後の培養上清(以下、「Mock培養上清」という。)を準備した。
【実施例】
【0147】
(2)ヒトiPS細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導
ヒトiPS細胞としては、埼玉医科大学のDr.Mitaniから供与されたTIG3/KOSM細胞を用いた。この細胞は、センダイウイルスを用いてTIG-3細胞に4因子(OCT遺伝子、KLF遺伝子、SOX遺伝子、MYC遺伝子)を導入することにより、産業技術総合研究所にて樹立されたものである(Nishimura,K. et al., J. Biol. Chem., 286, pp.4760-4771(2011))。TIG3/KOSM細胞は、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、20%(v/v) KnockoutTM血清代替物(Gibco)、1% (v/v) 非必須アミノ酸(Gibco)、2.5mM L-グルタミン、0.1mM 2-メルカプトエタノール(Gibco)、5ng/mL FGF-2(R&D Systems)、5mM 塩化ナトリウムを添加したDMEM/ハムF12培地中で維持した。
【実施例】
【0148】
分化誘導を開始する前日、10cmディッシュに増やしたTIG3/KOSM細胞を、MATRIGELTM(Becton Dickinson)でコートされた6ウェルプレートに1×10個/ウェルの細胞密度でプレーティングし、STOフィーダー細胞による馴化培地中で一晩培養した。そして、培地を取り除き、CTK(0.25% トリプシン、1mg/mL Collagenase IV、20% KSR、1mM CaCl in PBS)1mLを添加し、37℃で5分間処理をし、STOフィーダー細胞を取り除いた後に、ピペッティングにより懸濁してTIG3/KOSM細胞を剥がした。その後、剥がしたTIG3/KOSM細胞を15mLチューブにとり、1000rpm(150×g)で5分間遠心後、上清を取り除き、MatrigelTMでコートされた6ウェルプレートに1×10個/ウェルの細胞密度でプレーティングした。
【実施例】
【0149】
なお、上記の馴化培地は、以下のようにして調製したものである。すなわち、マイトマイシン処理済みSTO細胞を15cmディッシュに7.5×10個プレーティングし、翌日、ヒトiPS培地(FGF-2なし)に培地交換し、1~3時間処理後、再度ヒトiPS培地に交換して24時間培養した。その翌日、上清を回収し、1500rpm(330×g)で10分間遠心することによって細胞を取り除き、-20~-30℃にてストックした。
【実施例】
【0150】
分化誘導の開始初日に、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2mM L-グルタミン(Gibco)、100ng/mL アクチビンA(Humanzyme)、25ng/mL Wnt3a(ナカライテスク)を添加したAdvanced RPMI1640培地(Gibco)に培地交換し、1日間培養した(工程(A1-1))。次いで、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、0.2%(v/v) FBS(ウシ胎児血清)、2mM L-グルタミン(Gibco)、100ng/mL アクチビンA(Gibco)を添加したAdvanced RPMI1640培地(Gibco)に培地交換し、2日間培養した(工程(A1-2))。
【実施例】
【0151】
次いで、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2%(v/v) FBS、2mM L-グルタミン(Gibco)、50ng/mL FGF-10(R&D Systems)、0.25μM KAAD-シクロパミン(ナカライテスク)を添加したAdvanced RPMI1640培地(Gibco)に培地交換し、2日間培養した(工程(B1))。
【実施例】
【0152】
次いで、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2%(v/v) B-27TMサプリメント(Gibco)、2μM レチノイン酸(Sigma)、0.25μM KAAD-シクロパミン(ナカライテスク)、50ng/mL FGF-10(R&D Systems)を添加したDMEM/ハムF12培地(Gibco)に培地交換し、4日間培養した(工程(C1))。
【実施例】
【0153】
次いで、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2%(v/v) B-27TMサプリメント(Gibco)、10μM DAPT(Sigma)、55nM エキセンジン-4(Phoenix Pharmaceuticals)を添加し、さらに2%(v/v) IBCAP培養上清又はMock培養上清を添加したDMEM/ハムF12培地(Gibco)に培地交換し、3日間培養した(工程(D1))。
【実施例】
【0154】
最後に、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2%(v/v) B-27TMサプリメント(Gibco)、55nM エキセンジン-4(Phoenix Pharmaceuticals)、50ng/mL HGF(Humanzyme)、50ng/mL IGF-1(Humanzyme)を添加し、さらに2%(v/v) IBCAP培養上清又はMock培養上清を添加したCMRL1066培地(Gibco)に培地交換し、6日間培養した(工程(E1))。
【実施例】
【0155】
(3)定量的RT-PCR分析
分化誘導前のTIG3/KOSM細胞、及び工程(E1)を経て得られた細胞について、グルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の遺伝子発現を定量的RT-PCRで確認した。具体的には、まず、NucleoSpinTM RNA II(タカラバイオ)を用いて細胞からRNAを抽出し、Fast SYBRTM Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いて定量的RT-PCR分析を行った。プライマー配列を以下に示す。
HsGCG_264F:GCATTTACTTTGTGGCTGGA(配列番号4)
HsGCG_368R:CCTGGGAAGCTGAGAATGAT(配列番号5)
HsSST_206F:CCCCAGACTCCGTCAGTTTC(配列番号6)
HsSST_313R:TCCGTCTGGTTGGGTTCAG(配列番号7)
【実施例】
【0156】
PCR産物は3%アガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロマイド、BioDoc-It Imaging System(BMbio)により可視化した。
【実施例】
【0157】
工程(E1)を経て得られた細胞におけるグルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の発現量をそれぞれ図1(a)、(b)に示す。この図1(a)、(b)は、分化誘導前のTIG3/KOSM細胞におけるグルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の発現量を1とした相対値(誘導倍率)で示したものである。
【実施例】
【0158】
図1(a)に示すように、無添加の場合にはグルカゴン(GCG)の誘導倍率が約22.6倍であったのに対し、工程(D1)、(E1)でMock培養上清を添加した場合には約12.8倍であり、IBCAP培養上清を添加した場合には約36.8倍であった。
また、図1(b)に示すように、無添加の場合にはソマトスタチン(SST)の誘導倍率がほぼ0倍であったのに対し、工程(D1)、(E1)でMock培養上清を添加した場合には約0.4倍であり、IBCAP培養上清を添加した場合には約9.5倍であった。
この結果から、工程(D1)、(E1)でIBCAP培養上清を添加することにより、ヒトiPS細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導効率が向上することが分かる。
【実施例】
【0159】
<実施例2>
IBCAP培養上清又はMock培養上清を工程(A1-1)、(A1-1)、あるいは工程(B1)、(C1)で添加するとともに、工程(E1)の培養期間を3日間とするほかは、実施例1と同様にしてTIG3/KOSM細胞を培養し、グルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の遺伝子発現を定量的RT-PCRで確認した。
【実施例】
【0160】
工程(E1)を経て得られた細胞におけるグルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の発現量をそれぞれ図2(a)、(b)に示す。この図2(a)、(b)は、分化誘導前のTIG3/KOSM細胞におけるグルカゴン(GCG)及びソマトスタチン(SST)の発現量を1とした相対値で示したものである。
【実施例】
【0161】
図2(a)に示すように、無添加の場合にはグルカゴン(GCG)の誘導倍率が約120.1倍であったのに対し、工程(A1-1)、(A1-2)でMock培養上清を添加した場合には約100.7倍であり、IBCAP培養上清を添加した場合には約193.8倍であった。また、工程(B1)、(C1)でMock培養上清を添加した場合には約31.2倍であり、IBCAP培養上清を添加した場合には約218.5倍であった。
また、図2(b)に示すように、無添加の場合にはソマトスタチン(SST)の誘導倍率が約117.6倍であったのに対し、工程(A1-1)、(A1-2)でMock培養上清を添加した場合には約16.6倍であり、工程(A1-1)、(A1-2)でIBCAP培養上清を添加した場合には約65.2倍であった。また、工程(B1)、(C1)でMock培養上清を添加した場合には約8.8倍であり、IBCAP培養上清を添加した場合には約164.1倍であった。
この結果から、工程(A1-1)、(A1-2)でIBCAP培養上清を添加する場合と、工程(B1)、(C1)でIBCAP培養上清を添加する場合とのいずれも、ヒトiPS細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導効率が向上することが分かる。
【実施例】
【0162】
<実施例3>
(1)マウス膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導
マウス膵臓組織幹/前駆細胞としては、埼玉医科大学のDr.Matsumotoから供与されたTec3DR細胞を用いた。この細胞は、マウス胎児期の膵臓から分離された組織幹/前駆細胞をクローン化することにより樹立されたものである。Tec3DR細胞は、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、15%(v/v) FBS、50μM 2-メルカプトエタノール(Gibco)を添加したDMEM培地中で維持した。
【実施例】
【0163】
分化誘導の開始初日に、24ウェルプレートにTec3DR細胞を1×10個/ウェルの細胞密度でプレーティングし、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、0.1%(v/v) BSA(ウシ血清アルブミン)(Sigma)、1%(v/v) ITS-X(Gibco)、55μM 2-メルカプトエタノール(Gibco)を添加したDMEM/ハムF12培地(Gibco)で2日間培養した(工程(A3))。
【実施例】
【0164】
次いで、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、0.1%(v/v) BSA(Sigma)、1%(v/v) ITS-X(Gibco)、55μM 2-メルカプトエタノール(Gibco)、50ng/mL アクチビンA(Humanzyme)を添加したDMEM/ハムF12培地(Gibco)に培地交換し、4日間培養した(工程(B3))。
【実施例】
【0165】
次いで、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、0.1%(v/v) BSA(Sigma)、1%(v/v) ITS-X(Gibco)、55μM 2-メルカプトエタノール(Gibco)、1μM レチノイン酸(Sigma)を添加したDMEM/ハムF12培地(Gibco)に培地交換し、4日間培養した(工程(C3))。
【実施例】
【0166】
次いで、トリプシン-EDTAで処理することにより培養中の細胞を回収し、24ウェルプレートに1×10個/ウェルの細胞密度でプレーティングし、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2mg/mL BSA(Sigma)、1%(v/v) ITS-X(Gibco)、10ng/mL FGF-2(ナカライテスク)を添加したDMEM/ハムF12培地(Gibco)で3日間培養した(工程(D3))。
【実施例】
【0167】
最後に、1%(v/v) ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)、2mg/mL BSA(Sigma)、1%(v/v) ITS-X(Gibco)、10ng/mL FGF-2(ナカライテスク)、10mM ニコチンアミド(Sigma)を添加したDMEM/ハムF12培地(Gibco)に培地交換し、5日間培養した。その途中、2~3日経過後に新しい培地に交換した。その後、培地中に2%(v/v) IBCAP培養上清又はMock培養上清を添加し、さらに6日間培養した(工程(E3))。
【実施例】
【0168】
(2)定量的RT-PCR分析
分化誘導前のTec3DR細胞、及び工程(E3)を経て得られた細胞について、マウスインスリン-1(Ins1)の遺伝子発現を定量的RT-PCRで確認した。具体的には、まず、NucleoSpinTM RNA II(タカラバイオ)を用いて細胞からRNAを抽出し、Power SYBRTM Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いて定量的RT-PCR分析を行った。プライマー配列を以下に示す。
MnIns1_qPCR_Fw:CACTTCCTACCCCTGCTGG(配列番号8)
MnIns1_qPCR_Rv:ACGCCAAGGTCTGAAGGTC(配列番号9)
【実施例】
【0169】
PCR産物は3%アガロースゲル電気泳動により分離し、エチブジウムブロマイドで染色し、BioDoc-It Imaging System(BMbio)により可視化した。
【実施例】
【0170】
工程(E3)を経て得られた細胞におけるインスリン-1(Ins1)の発現量を図3に示す。この図3は、分化誘導前のTec3DR細胞におけるインスリン-1(Ins1)の発現量を1とした相対値で示したものである。
【実施例】
【0171】
図3に示すように、工程(E3)でMock培養上清を添加した場合には約0.3倍であり、IBCAP培養上清を添加した場合には約17.0倍であった。
この結果から、工程(E3)でIBCAP培養上清を添加することにより、マウス膵臓組織幹/前駆細胞から膵臓ホルモン産生細胞への分化誘導効率が向上することが分かる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2