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明細書 :電気化学反応器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成28年1月21日(2016.1.21)
発明の名称または考案の名称 電気化学反応器
国際特許分類 C25B   9/00        (2006.01)
C25B   1/00        (2006.01)
C25B   1/02        (2006.01)
C25B  13/04        (2006.01)
C25B  11/08        (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
C25B   9/16        (2006.01)
FI C25B 9/00 Z
C25B 1/00 Z
C25B 1/02
C25B 13/04 301
C25B 11/08 A
C25B 11/06 A
C25B 9/16
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 21
出願番号 特願2014-518442 (P2014-518442)
国際出願番号 PCT/JP2013/064679
国際公開番号 WO2013/180081
国際出願日 平成25年5月27日(2013.5.27)
国際公開日 平成25年12月5日(2013.12.5)
優先権出願番号 2012121231
優先日 平成24年5月28日(2012.5.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】平田 好洋
【氏名】鮫島 宗一郎
【氏名】松永 直樹
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査請求 未請求
テーマコード 4K011
4K021
Fターム 4K011AA02
4K011AA15
4K011AA17
4K011BA04
4K011DA11
4K021AA01
4K021AB25
4K021BA08
4K021BA17
4K021BC05
4K021CA12
4K021DB05
4K021DB18
4K021DB19
4K021DB20
4K021DB36
4K021DB53
4K021DC03
4K021DC15
要約 セル(10)のカソード(1)側では電子が導入され、二酸化炭素の還元が促進される。一方、アノード(2)側では多孔質GDC電解質(3)を経由して輸送された酸化物イオンによって、メタンの酸化が促進される。一酸化炭素及び酸化物イオンが生成されると、メタンガスとともにアノード(2)に輸送され、一酸化炭素及び水素を生成する。また、アノード(2)ではCuと酸化物イオンとが反応し、メタンガスの酸化が促進される。
特許請求の範囲 【請求項1】
ニッケル、銅又はルテニウムを含有し、二酸化炭素から一酸化炭素及び酸化物イオンを生成するカソード電極と、
前記カソード電極に向けて供給されたメタン及び前記カソード電極により生成された酸化物イオンを透過させる多孔質の電解質と、
銅を含有し、前記電解質を透過したメタン及び酸化物イオンから水素及び一酸化炭素を生成するアノード電極と、
を有することを特徴とする電気化学反応器。
【請求項2】
前記カソード電極、電解質及びアノード電極は、3層からなるセルによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気化学反応器。
【請求項3】
前記電解質は、ガドリニウム固溶セリアを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学反応器。
【請求項4】
前記カソード電極は、ニッケル、銅又はルテニウムと、ガドリニウム固溶セリアとを含むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の電気化学反応器。
【請求項5】
前記アノード電極は、銅と、ガドリニウム固溶セリアとを含むことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の電気化学反応器。
【請求項6】
ニッケル、銅又はルテニウムを含有し、二酸化炭素から一酸化炭素及び酸化物イオンを生成するカソード電極と、前記カソード電極に向けて供給されたメタン及び前記カソード電極により生成された酸化物イオンを透過させる多孔質の電解質と、銅を含有し、前記電解質を透過したメタン及び酸化物イオンから水素及び一酸化炭素を生成するアノード電極と、を有することを特徴とする電気化学反応器を用いた燃料ガスの製造方法であって、
前記アノード電極と前記カソード電極との間に電圧を印加する工程と、
前記カソード電極に向けて前記メタン及び前記二酸化炭素を含むガスを供給する工程と、
を有することを特徴とする燃料ガスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、固体酸化物形燃料電池等の燃料として利用できる水素及び一酸化炭素を生成するために用いて好適な電気化学反応器及び燃料ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタンガスを主成分とするガスから水素を得る燃料改質装置の研究が多くなされている。一般にこれらの燃料改質装置は、脱硫器、燃料改質器、CO変成器、及びCO除去器の4つの機器から構成されている。例えば都市ガスの主成分であるメタンと水蒸気とを燃料改質器で反応させ、一酸化炭素及び水素を得ている。そして、CO変成器において、発生した一酸化炭素と水蒸気とをさらに反応させて二酸化炭素及び水素を得ている。
【0003】
一方、再生可能なエネルギーとしてバイオマスエネルギーが着目されている。このバイオマスエネルギーは、環境にやさしいエネルギーとして有望であり、家畜排泄物や下水処理場のメタン発酵で発生するバイオガスには、メタンが60%、二酸化炭素が40%含まれている。近年、このメタン及び二酸化炭素を有効利用することが行われており、改質反応(ドライリフォーミング)では、Ni触媒を用いて以下の(1)式の反応により水素及び一酸化炭素が生成される。これらの反応により生成される水素及び一酸化炭素は、固体酸化物形燃料電池等の燃料として利用できるものである。また、発電後に生成する二酸化炭素をバイオガスと再度混合することにより、燃料のクローズドシステムが可能となる。
CH4+CO2 → 2H2+2CO ・・・(1)
【0004】
しかし、600℃以下で改質反応を行うと、以下の(2)式の反応により、一酸化炭素が触媒上で二酸化炭素と炭素とに分解する不均化反応が起こる。この不均化反応を避けるためには600℃以上の高温にする必要がある。一方、高温では、以下の(3)式の反応によりメタンの熱分解が進行し、析出する炭素がNi触媒を覆うため、触媒能が時間とともに低下する。また、析出した炭素により、反応ガスの閉塞が起こる。
2CO → CO2+C ・・・(2)
CH4 → 2H2+C ・・・(3)
【0005】
以上のように、メタン含有ガスから水素等を得るための装置は、原料ガスの種類や反応温度の制御が複雑である。特に水蒸気改質では、過剰な水蒸気が供給されるため、厳密な水蒸気/メタン比の制御が必要である。また、前述した燃料改質装置では、高純度の炭化水素化物を原料として使用する必要があるとともに、副生成物として数十%のCOが生成する。さらに固体高分子形燃料電池の電極に使用されているPtを被毒するCOをCOに改質したり、除去したりする必要がある。したがって、この装置はバイオマスガスエネルギーから水素及び一酸化炭素を生成するのに適しているとはいえない。
【0006】
また、従来の燃料改質装置は、複数の機器から構成されるため大規模の装置が必要であり、互いの機器を独立して作動させることが困難である。例えば、燃料改質器及びCO変成器の両方に水蒸気が用いると、燃料改質器のメタンと水蒸気との割合が変わると、生成ガス中のCO/CO比が変化し、CO変成器のHO/CO比もそれに応じて変動する。また、反応に際して、液体の水を加熱して水蒸気に変えるとき、燃料メタンの燃焼熱を利用するなど、2つの機器が密接に関係する。このため、水素発生プロセスの制御が複雑になり、その分ソフトウェアが複雑化してコストが上昇してしまう。
【0007】
そこで、より効率良く水素及び一酸化炭素を生成させるために、電極での酸化還元反応を利用してメタン及び二酸化炭素から水素及び一酸化炭素を生成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】国際公開第2009/157454号
【0009】

【非特許文献1】高効率環境浄化セラミックスの開発 淡野正信、片山真吾、藤代芳伸、セルゲイブレディヒン、前田邦裕、セラミックス、39巻、No.3、pp.199-204(2004)
【非特許文献2】固体電解質膜を用いたメタン部分酸化による合成ガスへの転換、佐藤剛一、中村潤児、内島俊雄、早川孝、角田達郎、竹平勝臣、74th CATSJ Meeting Abstract、Vol. 36, No. 1B06, pp. 452-455 (1994)
【非特許文献3】F. Y. Wang, G. B. Jung, A.Su, S. H. Chan, X. Hao and Y. C. Chiang, J. Power Sources, 185, 862-866 (2008).
【非特許文献4】T. J. Huang, C. L. Chou, W.J. Chen and M. C. Haung, Electrochem. Commun., 11, 294-297 (2009).
【非特許文献5】I.V. Yentekakis, J. PowerSources, 160, 422-425 (2006).
【非特許文献6】G. Goula, V. Kiousis, L.Nalbandian and I.V. Yentekakis, Solid State Ionics, 177, 2119-2123 (2006).
【非特許文献7】I.V. Yentekakis, T. Papadamand G. Goula, Solid State Ionics, 179, 1521-1525 (2008).
【非特許文献8】S. Sameshima, Y. Hirata, J.Sato and N. Matsunaga, J. Ceram. Soc. Japan, 116, 374-379 (2008).
【非特許文献9】S. Sameshima, Y. Hirata, K.Hamasaki, H. Ohshige and N. Matsunaga, J. Ceram. Soc. Japan, 117, 630-634(2009).
【非特許文献10】Y. Hirata, Y. Terasawa, N.Matsunaga and S. Sameshima, Ceram. Inter., 35, 2023-2028 (2009).
【非特許文献11】S. Matayoshi, Y. Hirata,S. Sameshima, N. Matsunaga and Y. Terasawa, J. Ceram. Soc. Japan, 117,1147-1152 (2009).
【非特許文献12】M. Ando, Y. Hirata, S.Sameshima and N. Matsunaga, J. Ceram. Soc. Japan, 119, 794-800 (2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したような燃料改質装置は、複数の機器が密接に関係し、装置が大規模になったり制御が複雑化したりしてコストが多くかかってしまう。さらに、これらの燃料改質装置では、触媒としてRu,Pt,Pd等の高価な貴金属を用いているため、その分コストも多くかかってしまう。また、特許文献1に記載の方法においても、高価なルテニウム金属を電極において必須としているため、電気化学反応器が高価であるという問題点がある。
【0011】
本発明は前述の問題点に鑑み、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスから安価でかつ効率良く水素及び一酸化炭素を生成できる電気化学反応器及び燃料ガスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電気化学反応器は、ニッケル、銅又はルテニウムを含有し、二酸化炭素から一酸化炭素及び酸化物イオンを生成するカソード電極と、前記カソード電極に向けて供給されたメタン及び前記カソード電極により生成された酸化物イオンを透過させる多孔質の電解質と、銅を含有し、前記電解質を透過したメタン及び酸化物イオンから水素及び一酸化炭素を生成するアノード電極と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の燃料ガスの製造方法は、ニッケル、銅又はルテニウムを含有し、二酸化炭素から一酸化炭素及び酸化物イオンを生成するカソード電極と、前記カソード電極に向けて供給されたメタン及び前記カソード電極により生成された酸化物イオンを透過させる多孔質の電解質と、銅を含有し、前記電解質を透過したメタン及び酸化物イオンから水素及び一酸化炭素を生成するアノード電極と、を有することを特徴とする電気化学反応器を用いた燃料ガスの製造方法であって、前記アノード電極と前記カソード電極との間に電圧を印加する工程と、前記カソード電極に向けて前記メタン及び前記二酸化炭素を含むガスを供給する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アノードに高価なルテニウムを用いた電気化学反応器と同等の効率によって、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスから水素及び一酸化炭素を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態における金属触媒付き電気化学反応器の概略を説明するための図である。
【図2】図2は、実施例1において、セルAを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合、並びに出口側のガスの流量と電流密度との時間依存性を示す図である。
【図3】図3は、実施例1における改質実験後のセルAのカソード1及びアノード2のX線回折パターンを示す図である。
【図4】図4は、実施例2において、セルBを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合、並びに出口側のガスの流量と電流密度との時間依存性を示す図である。
【図5】図5は、実施例3において、セルCを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合、並びに出口側のガスの流量と電流密度との時間依存性を示す図である。
【図6】図6は、比較例であるセルD及びセルEを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合を示す図である。
【図7】図7は、参考例において、Cu-GDC触媒からなるセルを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合、並びに出口側のガスの流量の時間依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、金属触媒付き電気化学反応器の概略を説明するための図である。
図1に示すように、セル10には、カソード1、多孔質電解質3及びアノード2の3層が形成されており、アノード2には銅とGDCとの混合物(以下、Cu/GDC)が用いられる。ここで、GDCとはガドリニウム固溶セリアであり、Ce0.8Gd0.21.9からなる物質である。一方、カソード1には、ニッケルとGDCとの混合物(以下、Ni/GDC)、Cu/GDC、またはルテニウムとGDCとの混合物(以下、Ru/GDC)を用いることができる。なお、カソード1及びアノード2にGDCを用いる代わりにYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いてもよい。また、カソード1及びアノード2の厚さは、いずれも4mm~5mmであることが好ましい。

【0017】
また、多孔質電解質3には 、例えば、GDCを用いることができる。多孔質電解質3の厚さは1mm以下であることが好ましく、多孔質電解質3の開気孔率については、18%~55%であることが好ましい。開気孔率が18%未満では、十分にガスを通気させることができず、開気孔率が55%を超えると、多孔質電解質3の強度を維持することが難しくなるからである。また、GDCを用いる代わりにYSZを用いてもよい。

【0018】
ここで、図1で示される両電極での電気化学反応は、両電極での原子と電子との質量バランスのため互いに関係する。すなわち、水素及び一酸化炭素の収率は、低い反応率を持つ電極の性能によって支配される。すなわち、いずれもアノードにはCuを用いているため、カソードでの二酸化炭素の反応性によって水素及び一酸化炭素の収率に違いが生じる。800℃でのNiの酸化に対する標準Gibbs自由エネルギーは-138.3kJ/molであり、Cuの酸化に対する標準Gibbs自由エネルギーは-88.2kJ/molである。このようにNiの酸化に対する標準Gibbs自由エネルギーはCuよりも低いことから、NiはCuよりも二酸化炭素との間で高い反応性を示す。一方、Ruはこれらの材料の中では最も高価である。このことから、カソード1に用いる材料はNi/GDCが好ましい。

【0019】
カソード1に用いるNi、Cu又はRuとGDCとの比については、GDCの割合が50~70vol%であることが好ましい。GDCの割合が50vol%未満では、含有金属の焼結が進行し、細孔径が小さくなる可能性が高い。一方、GDCの割合が70vol%を超えると、金属粒子の接触が妨げられ、電極の導電性が低下する。

【0020】
また、アノード2に用いるCuとGDCとの比については、GDCの割合が50~70vol%であることが好ましい。GDCの割合が50vol%未満では、銅粒子の焼結が進行しやすくなる。一方、GDCの割合が70vol%を超えると、電極の導電性が低下する。

【0021】
この電気化学反応器によれば、セル10のカソード1側では電子が導入され、以下の(4)式の反応により二酸化炭素の還元が促進される。さらには、(3)式によりメタンガスが炭素及び水素に一部分解される。
CO2+2e- →CO+O2- ・・・(4)

【0022】
(4)式の反応により一酸化炭素及び酸化物イオンが生成されると、メタンガスとともに酸化物イオンと電子との混合電導体である多孔質電解質3を通ってアノード2に転送される。アノード2において、メタンガスは酸化物イオンと反応し、以下の(5)式の反応によって一酸化炭素及び水素を生成する。このとき、700℃及び800℃での改質効率は、カソード1がCu/GDC、Ru/GDC、Ni/GDCの順に高くなる。
CH4+O2- → 2H2+CO+2e- ・・・(5)

【0023】
また、アノード2ではCuと酸化物イオンとが反応し、以下の(6)式及び(7)式の反応により、メタンガスの酸化が促進される。
2Cu+O2- → Cu2O+2e- ・・・(6)
Cu2O+CH4 → 2Cu+CO+2H2 ・・・(7)

【0024】
次に、3種類のカソードを用いた場合の反応について説明する。

【0025】
カソード1にNi/GDCを用いた場合、カソード1では(3)式の反応によりメタンガスが分解して炭素が生成される。そして、生成された炭素のナノ粒子が混合ガスにより多孔質電解質3へ運搬され、Ni-C-Cuの電気伝導パスが形成される。一方、カソード1では、カソード1で生成された酸化物イオンと炭素とが、以下の(8)式の反応を起こし、炭素が除去される。
C+O2- → CO+2e- ・・・(8)

【0026】
なお、(8)式の反応によって生成される電子は、形成された電気伝導パスを介して輸送される。このことから、反応温度に依存して前述の(3)式、(4)式及び(8)式の3つの並列反応が起きる。一方、アノード2では、(6)式の反応によりCu2Oが生成され、メタンガスの酸化に貢献して水素及び一酸化炭素を生成する。

【0027】
反応温度としては、800℃を超えると、(3)式の反応がより進行し、カソード1に炭素が吸着して寿命が低下する恐れがあることから、800℃以下で反応させることが好ましい。また、Cuの融点が1083℃であり、高温では、Cu粒子の焼結が進行しやすくなる。

【0028】
一方、カソード1にCu/GDCを用いた場合、CuはNiほど二酸化炭素との親和力が高くないため、(4)式の反応により供給される酸化物イオンの量がNiほど多くはなく、メタンガスの改質効率はやや劣る。反応温度が800℃を超えると、カソード1及びアノード2の両方にCuを用いていることから、Cuの焼結及び粒成長の影響を受けやすく、ガスの流量が大きく低下する恐れがある。したがって800℃以下で反応させることが好ましい。

【0029】
また、カソード1にRu/GDCを用いた場合、(3)式によるメタンガスの分解が抑制され、炭素が生成しにくい。しかし、Ni/GDCカソードに比べて、CO2との親和性が低く、CH4の改質効率は低下する。

【0030】
以上のように本実施形態では、高純度の炭化水素化物を使用する必要はなく、30%~70%のCOが混合されている場合においても良好なガス改質特性を示す。すなわち、家畜排泄物や下水処理場で発生するバイオガスを燃料とすることができる。また、改質触媒としてRu,Pt,Pd等の高価な貴金属の使用量を大幅に低減でき、コストを抑えることができる。また、一般的な水蒸気改質と比較して、余分なエネルギーも不要にすることができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実験における条件等は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した例であり、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
まず、シュウ酸塩前駆体(Ce0.8Gd0.22(C243を大気中において、600℃で2時間加熱し、Ce0.8Gd0.21.9のGDC粉体を作製した。次に、GDC粉体を直径3mmのアルミナボールで24時間粉砕し、粉砕したGDC粉体を1.4mol/lのNi(NO32水溶液、1.4mol/lのCu(NO32水溶液、及び0.2mol/lのRuCl3水溶液の混合液に浸した。そして、混合物のサスペンションを6時間撹拌した後、凍結乾燥した。さらに、凍結乾燥した粉体を大気中において、600℃~800℃で1時間加熱し、NiO/GDC粉体、CuO/GDC粉体、及びRuO/GDC粉体を作製した。
【実施例】
【0033】
次に、以下の表1に示すセルAを作製するために、カソード粉体層として、Ni:GDC=3:7(体積比)の割合の混合粉を用意し、アノード粉体層として、Cu:GDC=3:7(体積比)の割合の混合粉を用意した。なお、Ni/GDC粉体の詳細な調整方法については、非特許文献10~12に記載されている方法により調製した。
【実施例】
【0034】
そして、直径10mm、厚さ1mmの円板状の多孔質GDC粉体を、厚さ4mmのカソード粉体層と厚さ4mmのアノード粉体層とで挟み、100MPaで一軸加圧した。その後、150MPaで等方加圧し、カソード-多孔質電解質-アノードの三層からなるセルを作製した。さらに、このセルを空気中において、900℃で2時間加熱し、セルAを作製した。なお、カソード1及びアノード2の開気孔率は表1に示すものであった。
【実施例】
【0035】
【表1】
JP2013180081A1_000003t.gif
【実施例】
【0036】
次に、図1に示す回路を製造するために、Pt線を取り付けたPtメッシュを、Ptペーストを用いて両電極(カソード1及びアノード2)に取り付けた。そして、電気化学セルをアルミナホルダーに設置し、ガラスOリングを870℃で15分加熱することによりシーリングした。なお、600℃~800℃で加熱した電極(セルA)のX線回折パターンをX線回折装置(RINT 2200PCH/KG, Rigaku Co., Japan、以下同様)で測定したところ、Ni金属が酸化されているが、NiO-GDCの2相が共存しており、これらの間では反応性がないことを確認した。
【実施例】
【0037】
次に、800℃に冷却した後に、酸化されたNi酸化物をNi金属に還元するため、3vol%のH2Oを含む水素ガスを、50ml/分で24時間カソード1に供給し、以下の(9)の反応によりNi金属に還元した。
NiO+H2 → Ni+H2O ・・・(9)
【実施例】
【0038】
このとき、出口側で流量を計測したところ、H2Oを含む水素ガスの流量は、800℃で40~48ml/分であり、通気性が良好であることを確認した。
【実施例】
【0039】
その後、1Vの外部電圧をポテンシオスタット(HA-501G,
Hokuto Denko Co., Japan)を用いて印加し、メタンと二酸化炭素との割合が1:1(体積比)の混合ガスをカソード1に50ml/分で供給した。出口側のガスの組成については、0.2mlの出口ガスを100℃のArキャリアガスに注入することにより、100℃の熱伝導検出器を用いて活性炭(60/80mesh)を持つガスクロマトグラフ(GT 3800, Yanaco Co., Japan)により分析した。
【実施例】
【0040】
図2の結果201には、1.1V/cmで作動させたセルAを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合を示す。図2の結果201に示すように、入口側でメタンガスと二酸化炭素との割合が1:1である場合に、改質温度の増加に伴って水素及び一酸化炭素に多く変化した。その結果、800℃に昇温してから2.5時間経過した場合の出口側のガスの組成(体積%)は、メタンガスが1%、二酸化炭素が2%、水素が52%、一酸化炭素が45%であった。
【実施例】
【0041】
図2の結果202には、出口側のガスの流量と電流密度との時間依存性を示す。なお、図2の結果202における○印はガスの流量を示し、●印は電流密度を示している。図2の結果202に示すように、400℃~700℃では、出口側のガスの流量は改質温度の増加に伴ってわずかに増加した。この結果は、(1)式に示したように、出口側のガスの体積が増加したことによるものである。
【実施例】
【0042】
図3の分析結果301には、改質実験後のセルAのカソード1のX線回折パターンを示し、図3の分析結果302には、改質実験後のセルAのアノード2のX線回折パターンを示す。図3の分析結果301に示すように、Ni及びGDC以外に、炭素のピークが認められた。すなわち、800℃ではカソード1側でメタンガスが分解し、炭素が析出されたものと考えられる。一方、図3の分析結果302に示すように、アノード2ではGDCはCuと共存し、Cu2Oのピークも認められた。しかしながら、炭素に関連する相はアノード2では認められなかった。
【実施例】
【0043】
以上の点を踏まえると、カソード1のNiは800℃において(4)式の反応による二酸化炭素の還元を促進するとともに、(3)式の反応によるメタンガスの熱分解を促進することを示唆している。また、アノード2のCuは(5)式の反応によりメタンガスの酸化を促進するとともに、メタンガスの分解を抑制することを示唆している。さらに、アノード2では、CuとCu2Oとの両方が生成されていることから、前述の(6)式及び(7)式の触媒反応が起こっていることがわかる。
【実施例】
【0044】
一方、図2の結果202に示すように、電流密度は高温において対数スケールで増加した。電流密度Jは、J=σEという関係により伝導度(σ)と電場(E)とに関係づけられる。電場E=1.1V/cmである場合には、多孔質GDC、Ni、Cu、Cのそれぞれの電流密度Jを計算すると、1.38×10-1、2.42×104、1.35×105、1.72×103A/cm2となる。このことは、セルAの電流密度Jが、多孔質GDC電解質の高い抵抗値に影響を受けることを意味している。
【実施例】
【0045】
また、測定した電流密度と多孔質電解質3に対して計算された電流密度との比は、500℃では16.9、600℃では598.8、700℃では65.2、800℃では914.3であった。このように500℃~800℃で電流密度が大きくなっていく理由としては、メタンガスが分解して生成された炭素のナノ粒子が混合ガスにより多孔質GDC電解質へ運搬され、Ni-C-Cuの電気伝導パスが形成されたからと考えられる。
【実施例】
【0046】
一方、700℃で電流密度がわずかに減少している理由としては、カソード1で生成された酸化物イオンと炭素とが、前述した(8)式の反応がより進行し、炭素が除去されているからだと考えられる。以上のようにカソード1では、前述した(3)式、(4)式及び(8)式の3つの反応が起きたことが推定できる。
【実施例】
【0047】
(実施例2)
表1に示すセルBを作製するため、カソード1にCu/GDCを用いる点を除いて実施例1と同様の手順によりセルBを作製した。そして、実施例1と同様の手順により実験を行った。なお、600℃~800℃で加熱した電極(セルB)のX線回折パターンを測定したところ、Cuが酸化されてCuOが形成されているが、CuO-GDCの2相が共存しており、これらの間では反応性がないことを確認した。また、800℃に冷却した後に、酸化されたCu酸化物をCuに還元するため、3vol%のH2Oを含む水素ガスを、50ml/分で24時間カソード1に供給し、出口側で流量を計測したところ、H2Oを含む水素ガスの流量は、800℃で40~48ml/分であり、通気性が良好であることも確認した。
【実施例】
【0048】
図4の結果401には、1.1V/cmで作動させたセルBを通過して、800℃で生成されたメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合を示す。図4の結果401に示すように、出口側のガスの組成は反応時間にほとんど依存せず、入口側でメタンガスと二酸化炭素との割合が1:1である場合には、800℃でメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合(体積%)はそれぞれ、36:29:14:21であった。また、800℃で1.5時間の改質実験後、炭素に関連する相はCu触媒を持つ両電極で認められなかった。なお、800℃での実験後、GDC及びCuがそれぞれカソード1とアノード2とでX線回折パターンによって同定された。また、アノード2ではCu2O相の生成は認められなかったが、この理由として、生成された酸化物イオンが実施例1と比べて少ないからだと推定できる。
【実施例】
【0049】
図4の結果402には、メタン、二酸化炭素の混合ガスの改質中における出口ガスの流量と電流密度との時間依存性を示す。なお、図4の結果402における○印はガスの流量を示し、●印は電流密度を示している。この結果、電流密度はセルAで計測された値より顕著に低かった。このことから、(3)式の反応が実施例1と比べて少ないと推定できる。
【実施例】
【0050】
(実施例3)
表1に示すセルCを作製するため、カソード1にRu/GDCを用いる点を除いて実施例1と同様の手順によりセルCを作製した。そして、実施例1と同様の手順により実験を行った。なお、600℃~800℃で加熱した電極(セルC)のX線回折パターンを測定したところ、Ruが酸化されてRuO2が形成されているが、RuO2-GDCの2相が共存しており、これらの間では反応性がないことを確認した。また、800℃に冷却した後に、酸化されたCu酸化物をCuに還元するため、3vol%のH2Oを含む水素ガスを、50ml/分で24時間カソード1に供給し、出口側で流量を計測したところ、H2Oを含む水素ガスの流量は、800℃で40~48ml/分であり、通気性が良好であることも確認した。
【実施例】
【0051】
図5の結果501には、1.1V/cmで作動させたセルCを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合を示す。このセルCはセルBよりも効果的に反応し、入口側でメタンガスと二酸化炭素との割合が1:1である場合には、800℃でメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合(体積%)はそれぞれ、14:11:38:37であった。その後、700℃に低下した場合、水素及び一酸化炭素の割合はそれぞれ27%、33%に減少した。700℃で混合ガスを反応させた後に、カソード1のX線回折パターンを測定したところ、Ru及びGDCが同定された。一方、アノード2には、GDC、Cu及びCu2Oが共存していた。なお、アノード2の相はセルAのアノード2で観察された相とほぼ一致していた。
【実施例】
【0052】
図5の結果502には、出口側のガスの流量及び電流密度の時間依存性を示す。出口側のガスの流量は、700℃でやや低下したがスムーズにガスが流れていることが確認できた。また、電流密度は非常に小さい値であり、2電極間での電子伝導パスが形成されていないことが示唆された。
【実施例】
【0053】
(比較例)
比較例として、表1に示すセルD及びセルEを作製するため、アノード2にRu/GDCを用いる点を除いて実施例3と同様の手順によりセルDを作製した。さらに、アノード2にSrRuO3/GDCを用いる点を除いて実施例1と同様の手順によりセルEを作製した。そして、それぞれのセルについて実施例1と同様の手順により実験を行った。なお、600℃~800℃で加熱した電極(セルD及びセルE)のX線回折パターンを測定したところ、Ruが酸化されてRuO2が形成されているが、RuO2-GDCの2相が共存しており、これらの間では反応性がないことを確認した。セルEに関しては、SrRuO3-GDCの2相も共存しており、これらの間では反応性がないことを確認した。また、800℃に冷却した後に、酸化されたRu酸化物をRuに還元するため、3vol%のH2Oを含む水素ガスを、50ml/分で24時間カソード1に供給し、出口側で流量を計測したところ、H2Oを含む水素ガスの流量は、800℃で40~48ml/分であり、通気性が良好であることも確認した。
【実施例】
【0054】
図6の結果601は、400℃~800℃で1.25V/cmで作動させたセルDを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合を示す。また、図6の結果602には、400℃~800℃で1.25V/cmで作動させたセルEを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合を示す。図6の結果601に示すように、セルDの場合は入口側でメタンガスと二酸化炭素との割合が1:1である場合には、700℃でメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合(体積%)はそれぞれ、23:23:27:27であった。一方、図6の結果602に示すように、セルEの場合は入口側でメタンガスと二酸化炭素との割合が1:1である場合には、700℃でメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合(体積%)はそれぞれ、13:13:30:43であった。なお、これらの数値は何れも平均値である。
【実施例】
【0055】
以下の表2には、表1に示したセルA~セルEにより700℃で改質された出口側のガスの組成の結果を示す。なお、セルBでは、図4に示す800℃の結果を示している。水素及び一酸化炭素の合計量は、セルB<セルD<セルC<セルE<セルAの順に高くなるという結果が得られた。このようにRuの代わりにCuをアノードに用いた場合でも十分に高い改質能が認められた。
【実施例】
【0056】
【表2】
JP2013180081A1_000004t.gif
【実施例】
【0057】
(参考例)
まず、実施例1と同様の手順により、Cu/GDC粉体を作製し、直径が10mmで厚さが9mmのCu/GDC粉体を100MPaで一軸加圧し、150MPaで等方加圧した後、空気中において800℃で2時間加熱し、CuO-GDC触媒からなるセルを作製した。そして、実施例1と同様の実験を行った。なお、X線回折パターンを測定したところ、2相が確認された。この触媒は、H2Oを含むH2雰囲気中、800℃で還元してCu-GDC系へ相を変化させた。
【実施例】
【0058】
図7の結果701には、400℃~900℃においてCu-GDC触媒からなるセルを通過したメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合を示す。また、図7の結果702には、400℃~900℃における出口側のガスの流量の変化を示す。なお、外部電流はこの触媒に供給しないようにした。図7の結果701に示すように、この触媒を用いると、入口側でメタンガスと二酸化炭素との割合が1:1である場合には、900℃でメタンガス、二酸化炭素、水素及び一酸化炭素の割合(体積%)はそれぞれ、20:10:35:35であった。
【実施例】
【0059】
図2及び図5に示す結果と比較すると、外部回路により少量の電子を供給すると、メタンガスと二酸化炭素との反応性を高めることがわかった。また、900℃で実験を行った後にX線回折パターンを測定したところ、Cu及びGDCが同定され、Cu2O及び炭素関連の相は認められなかった。このことから、Cuに二酸化炭素が吸着し、以下の(10)式の反応によりCu2Oを生成する。そして、生成したCu2Oにメタンガスが吸着し、(7)式の反応により、メタンガスの酸化が促進されたものと考えられる。
2Cu+CO2 → Cu2O+CO ・・・(10)
【実施例】
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想の範疇内において、各種の変形例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、再生可能なエネルギーを固体酸化物形燃料電池等の燃料に変換することができ、省エネルギーに貢献できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6