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明細書 :組織体形成装置及び組織体形成キット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-000029 (P2016-000029A)
公開日 平成28年1月7日(2016.1.7)
発明の名称または考案の名称 組織体形成装置及び組織体形成キット
国際特許分類 C12M   3/00        (2006.01)
C12N   5/07        (2010.01)
FI C12M 3/00
C12N 5/00 202
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2015-055254 (P2015-055254)
出願日 平成27年3月18日(2015.3.18)
優先権出願番号 2014104726
優先日 平成26年5月20日(2014.5.20)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】野口 亮
【氏名】森田 茂樹
【氏名】野出 孝一
【氏名】小網 博之
出願人 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査請求 未請求
テーマコード 4B029
4B065
Fターム 4B029AA02
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC08
4B029CC10
4B065AA90X
4B065BC41
4B065BC42
4B065CA44
要約 【課題】外来異物となるスキャフォールドを含むことなく細胞集合体に対して、有意な外部刺激を与えることによって、強度及び生体適合性の高い組織体を形成する組織体形成装置を提供する。
【解決手段】
組織体形成装置は、培養液で充たした培養槽に複数の細胞粒子を投入し、当該複数の細胞粒子を相互に連結して組織体を形成する組織体形成装置において、少なくとも上方に開口部を有する中空体を形成する枠体で形成され、当該枠体が前記培養槽内に収容され、複数の細胞粒子の拡散を規制する規制枠部と、前記規制枠部の開口部上面に配設され、前記開口部内に収納される複数の細胞粒子を押圧して整形する押圧整形部とを備え、強度及び生体適合性の高い組織体を形成する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
培養液で充たした培養槽に複数の細胞粒子を投入し、当該複数の細胞粒子を相互に連結して組織体を形成する組織体形成装置において、
少なくとも上方に開口部を有する中空体を形成する枠体で形成され、当該枠体が前記培養槽内に収容され、複数の細胞粒子の拡散を規制する規制枠部と、
前記規制枠部の開口部上面に配設され、前記開口部内に収納される複数の細胞粒子を押圧して整形する押圧整形部とを
備えることを特徴とする
組織体形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の組織体形成装置において、
前記培養槽を揺動させる揺動手段を
備えることを特徴とする
組織体形成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の組織体形成装置において、
前記培養槽に含まれる培養液の液量を、経時的に増減させる容積増減手段を
備えることを特徴とする
組織体形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の組織体形成装置において、
前記押圧整形部の下面に、波状、直線状、格子状、及び渦状の形状のうち少なくとも1つ又はこれらを組み合わせた溝で形成された溝部を
有することを特徴とする
組織体形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の組織体形成装置において、
前記押圧整形部が、上面から下面まで貫通する1又は複数の貫通孔を有することを特徴とする
組織体形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の組織体形成装置において、
多孔質性の棒状の筒体から成り、前記押圧整形部により前記複数の細胞粒子から形成された平板状の組織体を屈曲させて外周に周回可能な軸部と、
前記軸部に周回された前記組織体の外表面を遊嵌状態で装着される外部筒部と、
前記軸部の多孔質筒体に対して透過な培養液の充填・排出を交互に行う圧力制御手段とを備え、
前記圧力制御手段の充填・排出動作により前記軸部と外部筒部との間で前記組織体に対して加圧及び減圧を加えることを特徴とする
組織体形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の組織体形成装置と、当該組織体形成装置を構成する前記培養液中で培養された前記複数の細胞粒子とを備えることを特徴とする
組織体形成キット。
【請求項8】
請求項7に記載の組織体形成キットにおいて、
前記細胞粒子の各々の大きさが、50μm~300μmであり、
前記枠体中における前記複数の細胞粒子の密度が、1×10~6×10細胞数/cm2であることを特徴とする
組織体形成キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、組織体を形成する組織体形成装置及び組織体形成キットに関し、特に、生体適合性及び強度に優れた組織体を形成できる組織体形成装置及び組織体形成キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種幹細胞技術の進展や、組織工学技術の進歩によって、再生医療分野での開発が活発に進んでいる。例えば、損傷した心臓、血管及び弁膜等の体内器官を修復する方法としては、現在、生体材料や自己心膜が使用されている。例えば、心血管修復のための生体材料としては、馬心膜パッチなどがある。また、生体材料を作製する過程において足場として使用されるスキャフォールドを含む生体材料が主流である。
【0003】
しかし、現在使用されている生体材料は、外来異物となるスキャフォールドをはじめ、他種由来の生体材料を用いるために、炎症反応、石灰化、及び免疫応答が生じやすいという問題がある。さらに、感染に弱く、自己成長しないことや、血栓化しやすいという問題もある。
【0004】
このような問題を解決するものとして、他種由来の生体材料を用いるのではなく、自己細胞のみを3次元化させて細胞塊(細胞凝集塊)を得ることにより、組織型移植片(組織体)を作成することが望まれている。
【0005】
このような自己細胞のみを3次元化させる手法として、例えば、組織体の原料となる細胞集合体を培養するための培養空間を仕切ることによって、自己細胞のみから細胞塊を得て組織型移植片(組織体)を作成する方法が提案されている。この種の従来の組織体形成装置としては、例えば、1つの容器内を仕切り板によって、細胞集合体を培養するための培養部と、培養液を交換するための培養液交換部とに分けるものがある(特許文献1参照)。
【0006】
さらに、培養空間を仕切ることに加えて、培養して作成された組織体の形状を維持することや、組織体を生体内に移植した後の生着率を改善することを目的として、培養時に組織体の原料となる細胞集合体を担持する基材に、当該細胞集合体と非接着性の基材を用いる方法も提案されている。
【0007】
このような従来の組織体形成装置としては、例えば、細胞集合体を細胞非接触性基材上で浮遊培養し、細胞塊を得る方法がある(特許文献2参照)。また、心筋細胞を培養により凝縮させる際に、壁面によって仕切られた細胞非接着性容器を用いて、当該容器の表面に細胞塊同士が接触し続ける程度に隙間無く並べて播種し、浮遊培養を行うものもある(特許文献3参照)。
【0008】
また、培養液を効率的に細胞集合体に供給する方法も提案されている。例えば、細胞集合体を培養する際に、細胞集合体を担持する基材を多孔構造とし、培養液を十分に細胞集合体に供給する方法も提案されている(特許文献4参照)。また、培養時に細胞集合体を担持する基材を、直径0.2~200μmの巨視孔を複数有するナノ多孔シリコン構造とし、培養液を灌流することにより、細胞集合体の生存度を維持するものがある(特許文献5参照)。
【0009】
また、得られる組織体の強度や特性を高めるために、細胞集合体の培養時に、外部からの刺激を間接的に与える方法も提案されている。例えば、外部刺激として熱又は光を細胞集合体に与え、培養されて得られる細胞塊の親疎水性を変化させる方法がある(特許文献6参照)。また、細胞集合体に対して、外部刺激として、pH変化、温度の変化、電磁波に対する暴露、特定の塩もしくは有機化合物に対する暴露、または所与の濃度に対する暴露、電場の印加、磁場の印加、音波の印加、振動の付与を行い、細胞成長または細胞分化を促進させる方法がある(特許文献7参照)。
【0010】
この他、培養時の細胞塊に対する形成制御として、細胞集合体に対して、培養容器の上面から、攪拌部材(例えば、ローラー)を所定の押込量で押し当てて、水平方向に移動させて、細胞塊を所望の形状に形成する方法がある(特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開平8-070847号公報
【特許文献2】特開平5-168470号公報
【特許文献3】再表2009/017254号公報
【特許文献4】特開2011-172533号公報
【特許文献5】米抄2002/0072116号公報
【特許文献6】特開2008-173018号公報
【特許文献7】特表2010-516273号公報
【特許文献8】特表2010-233563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の組織体形成装置に従って、自己細胞のみから得られた組織型移植片(組織体)は、組織体の原料となる細胞集合体が単に凝集したものであり、組織体として強度的にも脆く、生体内での適合可能な水準まで至っていない。例えば、得られた組織体を、血管や心弁などのように外圧を絶えず受ける部位に用いようとしても、当該外圧に組織体が耐え切れず、実用化できる状況にまでは至っていない。培養の期間中、外部からの刺激を利用する方法も提案されているが、細胞集合体への刺激は、間接的な刺激にとどまっていることから、刺激として弱いものであり、細胞集合体に十分な強度を与えることや、組織化を促進させるまでには至っていないという課題があった。
【0013】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、外来異物となるスキャフォールドを含むことなく細胞集合体に対して、有意な外部刺激を与えることによって、強度及び生体適合性の高い組織体を形成する組織体形成装置及び組織体形成キットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願に開示する組織体形成装置は、培養液で充たした培養槽に複数の細胞粒子を投入し、当該複数の細胞粒子を相互に連結して組織体を形成する組織体形成装置において、少なくとも上方に開口部を有する中空体を形成する枠体で形成され、当該枠体が前記培養槽内に収容され、複数の細胞粒子の拡散を規制する規制枠部と、前記規制枠部の開口部上面に配設され、前記開口部内に収納される複数の細胞粒子を押圧して整形する押圧整形部とを備えるものである。このように、本願に開示する組織体形成装置は、押圧整形部が培養液中に浸漬されて当該培養液による浮力を受けて自重との相間により浮遊又は半浮遊した状態で前記規制枠部の上面に配設されることから、複数の細胞粒子が培養されて組織体が形成されるまでの間、規制枠部と押圧整形部から形成された内部空間に収容された複数の細胞粒子に対して、押圧整形部から外部刺激が直接的に与えられることとなり、強度及び生体適合性の高い組織体を形成することができる。
【0015】
また、本願に開示する組織体形成装置は、必要に応じて、前記培養槽を揺動させる揺動手段を備えるものである。このように、本願に開示する組織体形成装置は、前記培養槽を揺動させる揺動手段を備えることから、経時的に強さが増減する外部刺激を、複数の細胞粒子に与え続けることとなり、より強度の高い組織体を形成することができる。
【0016】
また、本願に開示する組織体形成装置は、必要に応じて、前記培養槽に含まれる培養液の液量を、経時的に増減させる容積増減手段を備えるものである。このように、本願に開示する組織体形成装置は、前記培養液の液量の増減に伴い、押圧整形部が培養液から受ける浮力が増減されることから、押圧整形部の自重との相間により浮遊又は半浮遊した状態が経時的に変動することとなり、前記複数の細胞粒子に対して、押圧整形部からの変動する外部刺激が直接的に与えられ、当該外部刺激を受けることにより強度を増した組織体を形成することができる。
【0017】
また、本願に開示する組織体形成装置は、必要に応じて、前記押圧整形部の下面に、波状、直線状、格子状、及び渦状の形状のうち少なくとも1つ又はこれらを組み合わせた溝で形成された溝部を有するものである。このように、本願に開示する組織体形成装置は、前記押圧整形部の下面に、波状、直線状、格子状、及び渦状の形状のうち少なくとも1つ又はこれらを組み合わせた溝で形成された溝部を有することから、当該溝部を経由して、前記複数の細胞粒子に対して、培養液からの栄養分が絶えず供給されることとなり、前記複数の細胞粒子が確実に成長することによりさらに強度の高い組織体を形成することができる。
【0018】
また、本願に開示する組織体形成装置は、必要に応じて、前記押圧整形部が、上面から下面まで貫通する1又は複数の貫通孔を有するものである。このように、本願に開示する組織体形成装置は、前記押圧整形部が枠体の上面の開口部に載置された際に、枠体の上面から受ける空気圧及び培養液から受ける水圧が、当該1又は複数の貫通孔を経由して開放されることから、前記押圧整形部がより安定的且つ円滑に枠体の上面の開口部に載置されることとなり、前記押圧整形部の載置に伴う負荷を抑制して、強度及び生体適合性の高い組織体を安定的に形成することができる。
【0019】
また、本願に開示する組織体形成装置は、必要に応じて、多孔質性の棒状の筒体から成り、前記押圧整形部により前記複数の細胞粒子から形成された平板状の組織体を屈曲させて外周に周回可能な軸部と、前記軸部に周回された前記組織体の外表面を遊嵌状態で装着される外部筒部と、前記軸部の多孔質筒体に対して透過な培養液の充填・排出を交互に行う圧力制御手段とを備え、前記圧力制御手段の充填・排出動作により前記軸部と外部筒部との間で前記組織体に対して加圧及び減圧を加えるものである。このように、本願に開示する組織体形成装置は、前記圧力制御手段の充填・排出動作により前記軸部と外部筒部との間で前記組織体に対して加圧及び減圧を加えることから、前記軸部に周回された前記組織体が、その内部及び外部から、変動する圧力による外部刺激を受け続けることとなり、前記複数の細胞粒子がより強い外部刺激を受けて成長することによりさらに強度の高い組織体を形成することができる。
【0020】
また、本願に開示する組織体形成キットは、前記組織体形成装置と、当該組織体形成装置中の前記培養液中で培養された前記複数の細胞粒子とを備えるものである。このように、本願に開示する組織体形成キットは、前記組織体形成装置と、当該組織体形成装置中の前記培養液中で培養された前記複数の細胞粒子とを備えることから、当該複数の細胞粒子が、前記規制枠部と前記押圧整形部から形成された内部空間に収容され、前記押圧整形部から外部刺激が直接的に与えられることとなり、強度及び生体適合性の高い組織体を簡易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る組織体形成装置の構成図((a)斜視図、(b)側面図、(c)培養槽と枠体の上面図、(d)方形状の培養槽)を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る組織体形成装置を用いた組織体の形成を示すフロー図を示す。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る組織体形成装置の構成図((a)斜視図、(b)側面図)、及び第3の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る組織体形成装置の押圧整形部の構成図を示す。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る組織体形成装置の構成図((a))、及び、本発明の第6の実施形態に係る組織体形成装置の構成図((b))を示す。
【図6】本発明の第7の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。
【図7】本発明の第8の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。
【図8】本発明に係る組織体形成装置により得られた組織体についてのSEM写真を示す。
【図9】本発明に係る組織体形成装置により得られた組織体についてHE染色及びマッソン・トリクローム染色の実験結果を示す。
【図10】本発明に係る組織体形成装置により得られた組織体について細胞粒子の細胞数の異なる各サンプルを凝集させて、得られたスフェロイドの直径と経過時間との関係を示す。
【図11】本発明に係る組織体形成装置により得られた組織体について粒子直径100~150μmの細胞粒子から得られたサンプルのHE染色及びマッソン・トリクローム染色の実験結果を示す。
【図12】本発明に係る組織体形成装置により得られた組織体について粒子直径が異なる細胞粒子から得られたサンプルの細胞塊(スフェロイド)を、蛍光生死判定キットで染色して撮影した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態に係る組織体形成装置の構成図((a)斜視図、(b)側面図、(c)培養槽と枠体の上面図、(d)方形状の培養槽)を示す。

【0023】
本実施形態に係る組織体形成装置は、図1(a)~(c)に示すように、培養液200で充たした培養槽1に複数の細胞粒子100を投入し、この複数の細胞粒子100を相互に連結して組織体を形成する組織体形成装置において、少なくとも上方に開口部Aを有する中空体を形成する枠体2(モールド)で形成され、この枠体2がこの培養槽1内に収容され、複数の細胞粒子の拡散を規制する規制枠部21と、この規制枠部21の開口部A上面に配設され、この開口部A内に収納される複数の細胞粒子100を押圧して整形する押圧整形部22とを備える構成である。

【0024】
培養槽1については、培養液200により複数の細胞粒子100が浸漬されれば、その形状は、特に制限されるものではなく、例えば、円形状、方形状とすることができる。例えば、図1(d)に示すように、方形状のものを用いることができる。

【0025】
次に、前記培養槽1に投入された細胞粒子100を培養液200に浸漬した状態で且つ細胞粒子100を押圧して整形する構成を、細胞粒子100の形態と、前記押圧整形とに分けて説明する。

【0026】
先ず、細胞粒子100の形態に関しては、整形のための押圧状態を前提として以下の内容となる。

【0027】
(細胞粒子の形態)
前記複数の細胞粒子100は、同種の細胞粒子が複数あってもよいし、異種の細胞粒子が複数あってもよい。また、心臓の細胞、肝臓、皮膚、腎臓の細胞を選択して配合してもよいし、線維芽細胞、血管内皮細胞などと混合してもよい。例えば、ヒト血管平滑筋細胞、ヒト血管内皮細胞、及びヒト皮下線維芽細胞の3種類の細胞の少なくとも1つ又はこれらを組み合わせて混合したものを用いることができる。

【0028】
この複数の細胞粒子100の各々の直径は、特に限定されないが、組織体として凝集され易いという点から、50μm~300μmであることが好ましく、組織体の内部壊死を抑制するという点から、50μm~200μmであることがより好ましく、より細胞生存率を高めるという観点から、50μm~150μmであることがさらに好ましく、例えば、100μm又は150μmとすることができる。

【0029】
後述する実施例に記載のように、この細胞粒子100の各々の直径が150μmと250μmで作成した細胞塊(スフェロイド)について、この直径が150μmを超えて250μmになった場合に壊死が増える傾向が確認されたことからも、スフェロイドの直径は50μm~150μmであることがさらに好ましいことが確認されている。

【0030】
また、この枠体2中におけるこの細胞粒子100の密度は、1×10~6×10細胞数/cm2であることが好ましい。この密度の範囲内によって、枠体2中に投入されたこの細胞粒子100が、少なくとも一部分でも隣り合う他の細胞粒子100に接触する状態で配置されることとなり、充満性が確保され、品質の高い組織体が形成される。また、この密度が、1×10細胞数/cm2より小さい場合には、得られる組織体に細胞粒子100の欠落が生じやすく、空隙や強度の低下が生じやすい。また、この密度が、6×10細胞数/cm2より大きい場合には、高さ方向に重なり易くなり、融合効率が低下して壊死する細胞粒子100が増え、結果的に組織体の強度、形状が維持し難くなる。

【0031】
細胞粒子100の種類は、特に限定されないが、例えば、コラーゲンを含む毛細血管構造を有する構造体を得るためには、ヒト皮膚繊維芽細胞、ヒト大動脈血管平滑筋細胞、及びヒト臍帯静脈血管内皮細胞の3種類を、2:2:1の比率として、1つの部位の組織体につき細胞粒子100の数が、1000~3000個であることが好ましい。

【0032】
次に、前記押圧整形について説明する。

【0033】
(押圧整形)
この細胞粒子100に印加する圧力値としては、先ずは、初期の押圧の圧力(初期圧力)として、細胞粒子100が凝集できるのに十分となる微弱な圧力で、細胞粒子100を押圧することが好ましい。この初期圧力としては、この組織体の平板状構造を維持しながら培養できる圧力として、この押圧整形部22の重さ、この培養液200の浮力、及び所望とする組織体の面積に基づいて、1.77g/cm~2.58g/cmであることが好ましい。この初期圧力が1.77g/cmより低圧となる場合には、圧力不十分のため細胞粒子100が十分に凝集されず、また、この初期圧力が2.58g/cmより高圧となる場合には、この細胞粒子100が潰れやすくなり十分に凝集され難くなる。

【0034】
この初期圧力によって組織体が一旦形成された後は、この組織体が生体内で適応可能となるように、徐々に圧力を高めていき、この組織体を形成するためのより高い圧力(形成圧力)が印加されることが好ましい。この形成圧力は、150g/cm~250g/cmであることが好ましい。この形成圧力によって、120mmHg(163g/cm)程度の人体の血圧に対しても、十分な耐久性を有する部位となる組織体が形成される。

【0035】
また、この形成圧力は、経時的に間欠的に変動してもよい。間欠的に変動することによって、培養液200がこの規制枠部21の内部に一定周期で還流されることから、この組織体が生体内で受ける圧力状況に類似する環境下で押圧されることとなり、より高い生体適合性を具備する組織体を形成することができる。

【0036】
また、この形成圧力の圧力値が間欠的に変動することによって、この組織体に対して、上部から押圧整形部22による圧力を受けることのみならず、下部にあるこの規制枠部21、及びこの培養液200から受ける浮力を含めた全方向から動的な圧力を受けることとなり、組織体の全体にわたって均一且つ強固な押圧が与えられ、より高い生体適合性を具備する組織体を形成することができる。

【0037】
また、この形成圧力の圧力値が間欠的に変動することによって、この押圧整形部22の下面に、溝で形成された溝部を有する場合には、この溝部を経て培養液200が流入し、経時的に脈動する圧力となってこの細胞粒子100に印加されることから、この組織体に対して生体内で擬似される動的な圧力が与えられることとなり、組織体の全体にわたって均一且つ強固な押圧が与えられ、より高い生体適合性を具備する組織体を形成することができる。

【0038】
また、この形成圧力は、所望とする組織体の部位に応じてその圧力値を設定することが好ましい。例えば、皮膚及び血管のような常に高い圧力に曝される部位を得るためには高めの圧力を印加する。さらに、骨及び軟骨のような骨部に対しては、より高い圧力を印加する。このように所望とする組織体の部位に応じて印加する圧力を設定することより、所望とする部位を効率的かつ強固な組織体として得ることができる。

【0039】
また、この培養液200の液面については、この液面が低過ぎる場合には、この培養液200中での浮力が小さくなることから、この押圧整形部22が、動き難くなることとなり、組織体と密着したままの状態となり、装置内でこの培養液200の循環が滞ってしまう。また、この培養液200の液面が高過ぎる場合には、この培養液200中での浮力が大きくなることから、この押圧整形部22が、組織体に対して押圧し難くなると共に、この枠体2の上部の位置から脱落してしまう虞がある。

【0040】
枠体2は、樹脂を用いて成形されたものを用いることができる。規制枠部21により形成される前記中空体は、収容される複数の細胞粒子100が拡散しなければ、その形状は特に制限されるものではなく、例えば、方形状、円形状、又は三角形状などとすることができる。中空体の開口部Aの面積や形状は特に限定されないが、容器底面からの高さは2-5mm程度が好ましい。底面からの高さが2mmより低い場合には、細胞凝集塊が容器の移動などで空間外に飛び出す虞があり、5mmより高い場合は容器内の培地循環が低下する傾向にあり、細胞の壊死や、融合不良を引き起こす虞がある。

【0041】
押圧整形部22は、樹脂を用いて成形されたものを用いることができ、好ましくは、複数の細胞粒子100に対して、非接触性を有する材料であり、例えば、PTFEを用いることができる。また、押圧整形部22は、前記中空体に収容される形状であることが好ましく、より好ましくは、中空体の開口部Aと同形状を有することである。

【0042】
次に、第1の実施形態に係る組織体形成装置を用いた組織体の形成を、図2に基づいて説明する。図2は、第1の実施形態に係る組織体形成装置を用いた組織体の形成を示すフロー図である。

【0043】
まず、上述した細胞粒子100を用意する(S1)。これら複数の細胞粒子100を混合する(S2)。この混合により、細胞粒子100が凝集して、複数の細胞塊(細胞凝集塊:スフェロイド)となる。細胞塊(スフェロイド)の大きさを大きくすることや、その数を増すことで、構築する組織の厚みなどを増すことができる。単純拡散培養による組織の培地供給を考慮すれば、複数の細胞粒子100から成る細胞塊(スフェロイド)は直径150μm以下にすることが好ましい。

【0044】
次に、この複数の細胞塊(スフェロイド)と成った複数の細胞粒子100を培養層1の中空部となる開口部Aに投入(播種)する(S3)。この投入(播種)後、タッピングなどの軽い旋回運動を行い、スフェロイドを均一に配置し、5~30分程度静置することが好ましい。この投入(播種)によって、開口部Aに収容された複数の細胞粒子100が、培養液200中で細胞間相互に連結してコロイド状(細胞懸濁液状態)となり、コロイド状細胞100aが形成される。さらに、コロイド状細胞100aを24~48時間程度、そのまま放置して培養することにより、コロイド状細胞100aを構成する細胞間(スフェロイド同士)の融合が促進され、平板状の組織体100bが形成される。

【0045】
次に、この平板状の組織体100bに対して、規制枠部21の開口部Aの上部から、押圧整形部22を載置する(S4)。押圧整形部22が、培養液200中に浸漬されることにより、培養液200による浮力を受けて自重との相間により浮遊又は半浮遊した状態で規制枠部21の上面に配設されることから、規制枠部21と押圧整形部22から形成された内部空間に収容された平板状の組織体100bに対して、押圧整形部22からの外部刺激が培養中に直接的に与えられることとなる。

【0046】
このように、平板状の組織体100bは、押圧整形部22からの外部刺激が直接的に与えられ続け、規制枠部21と押圧整形部22から形成された内部空間で培養されて成熟化した平板状の組織体100bとなる(S5)。得られた組織体100bは、押圧整形部22からの外部刺激が直接的に与えられ続けることによって、強度及び生体適合性の高いものとなる。また、また、得られた組織体100bは、折り畳んだり、丸めたりすることにより、生体内における所望の形状の組織体として利用することが可能である。

【0047】
得られた組織体の利用方法としては、例えば、バイオリアクターを用いて成熟化を行うことによって、血管組織型パッチなどを作製することができる。さらに、得られた組織体から、所望のサイズ、面積、形状をもたせた自由度の高いパッチ形成も可能である。本実施形態により得られる組織体は、直接的な外部刺激によって、強度が増すのみならず、スキャホールドなどの外来異物を含まないことからも、抗免疫性に優れ、抗感染性や抗炎症性などの観点からも、弁形成、弁置換用弁の形成、ロール状にすることで自己細胞のみから成る人工血管、心房中隔欠損症などの心臓壁及び血管壁の修復や、ステンドグラフトへの応用など、広範に亘る有用な外科的利用が可能となる。

【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る第2の実施形態を図3(a)及び(b)に基づいて説明する。図3(a)及び(b)は、第2の実施形態に係る組織体形成装置の構成図((a)斜視図、(b)側面図)を示す。

【0049】
第2の実施形態に係る組織体形成装置は、図3(a)及び(b)に示すように、上記の第1の実施形態と同様に、前記培養槽1、前記枠体2、前記規制枠部21、前記押圧整形部22とを備え、さらに追加で、前記培養槽1を揺動させる揺動手段3を備える構成である。

【0050】
揺動手段3は、磁力や超音波などにより振動を発生させる装置を用いることができ、例えば、マグネットスターラーや超音波振動子などを用いることができる。この他、図3(a)に示すように、前記培養槽1を回転させる装置を用いることもできる。

【0051】
揺動手段3の揺動動作によって、図3(b)に示すように、前記押圧整形部22が鉛直方向及び水平方向に揺動する。このような揺動手段3の揺動動作から、経時的に強さが増減する外部刺激を、平面状の組織体100bに培養中に与え続けることとなり、より強度の高い組織体100bを形成することができる。

【0052】
(第3の実施形態)
以下、本発明に係る第3の実施形態を図3(c)~(f)に基づいて説明する。図3(c)は、第3の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。特に、図3(d)~(f)は、第3の実施形態に係る組織体形成装置の容積増減の様子を示す構成図である。

【0053】
第3の実施形態に係る組織体形成装置は、図3(c)に示すように、上記の第1の実施形態と同様に、前記培養槽1、前記枠体2、前記規制枠部21、前記押圧整形部22とを備え、さらに追加で、前記培養槽1に含まれる培養液200の液量を、経時的に増減させる容積増減手段4を備える構成である。

【0054】
容積増減手段4は、例えば、前記培養槽1に含まれる培養液200を吸引する動作と、前記培養槽1に培養液200を排出する動作を繰り返すことにより、培養液200の液量を、経時的に増減させることができる。

【0055】
例えば、容積増減手段4は、図3(d)に示すように、培養液200の液面を、前記押圧整形部22よりも高い位置から、培養液200の液量を減少させて、図3(e)に示すように、前記押圧整形部22と同じ位置まで減少させる。この間で、平面状の組織体100bに掛かる前記押圧整形部22からの自重は、液面が低下することに伴い、前記押圧整形部22の浮力が経時的に減少していくことから、経時的に増大していく。さらに、図3(e)に示すように、培養液200の液面が、前記押圧整形部22より低い位置まで到達すると、平面状の組織体100bに掛かる前記押圧整形部22からの自重は、さらに増大する。

【0056】
この後、容積増減手段4は、図3(f)から(d)に戻るように、培養液200の液面を、前記押圧整形部22よりも低い位置から高い位置まで、培養液200の液量を増大させていく。この間で、平面状の組織体100bに掛かる前記押圧整形部22からの自重は、液面が高くなることに伴い、経時的に減少していく。

【0057】
このように、培養液200の液量の増減に伴い、押圧整形部22が培養液200から受ける浮力が増減されることから、押圧整形部22の自重との相間により浮遊又は半浮遊した状態が経時的に変動することとなり、平面状の組織体100bに対して、押圧整形部22からの変動する外部刺激が直接的に与えられ、外部刺激を受けることにより強度を増した組織体100bを形成することができる。

【0058】
なお、第3の実施形態に係る組織体形成装置は、上記の第1の実施形態に係る組織体形成装置に対して、前記容積増減手段4を備える構成としたが、上記の第2の実施形態に係る組織体形成装置に対して、前記容積増減手段4を備える構成とすることも可能である。その場合には、前記揺動手段3の揺動動作と、前記容積増減手段4の容積増減動作が相俟って、経時的に強さが増減する外部刺激を、鉛直方向及び水平方向共に抑揚が付けられて、平面状の組織体100bに与え続けることとなり、さらに強度の高い組織体100bを形成することができる。

【0059】
(第4の実施形態)
以下、本発明に係る第4の実施形態を図4に基づいて説明する。図4は、第4の実施形態に係る組織体形成装置の押圧整形部の構成図を示す。

【0060】
第4の実施形態に係る組織体形成装置は、図4に示すように、上記の第1~第3のいずれかの実施形態における押圧整形部22の下面に、波状、直線状、格子状、及び渦状の形状のうち少なくとも1つ又はこれらを組み合わせた溝で形成された溝部22aを有する構成である。

【0061】
押圧整形部22の下面に構成される溝部22aは、図4(a)に示すように、波状の形状とすることができる。また、図4(b)に示すように、波状の形状とすることもできる。また、図4(b)に示すように、直線状の形状とすることもできる。また、図4(d)に示すように、格子状の形状とすることもできる。

【0062】
本実施形態に係る組織体形成装置は、押圧整形部22の下面に構成される溝部22aを有することから、溝部22aを経由して、平面状の組織体100bに対して、培養液200からの栄養分が絶えず供給されることとなり、平面状の組織体100bが培養によって確実に成長することにより、さらに強度の高い組織体100bを形成することができる。

【0063】
さらに、図4(e)に示すように、押圧整形部22が、上面から下面まで貫通する1又は複数の貫通孔22bを有してもよい。このように、押圧整形部22が枠体2の上面の開口部に載置された際に、枠体2の上面から受ける空気圧及び培養液200から受ける水圧が、1又は複数の貫通孔22bを経由して開放されることから、押圧整形部22がより安定的且つ円滑に枠体2の上面の開口部に載置されることとなり、押圧整形部2の載置に伴う負荷を抑制して、強度及び生体適合性の高い組織体を安定的に形成することができる。

【0064】
なお、押圧整形部22は、上述した溝部22aのみを備えることも可能であり、また、1又は複数の貫通孔22bのみを備えることも可能である。

【0065】
(第5の実施形態)
以下、本発明に係る第5の実施形態を図5(a)に基づいて説明する。図5(a)は、第5の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。

【0066】
第5の実施形態に係る組織体形成装置は、図5(a)に示すように、上記の第1~第4のいずれかの実施形態における前記培養槽1の底面が、屈曲状に湾曲した形状を有する構成である。このように、前記培養槽1の底面が、屈曲状に湾曲した形状を有することから、屈曲形状を有する組織体100bが形成できることとなり、例えば、心弁などの屈曲形状を含む生体部位への適用が容易となる。

【0067】
(第6の実施形態)
以下、本発明に係る第6の実施形態を図5(b)に基づいて説明する。図5(b)は、第6の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。

【0068】
第6の実施形態に係る組織体形成装置は、図5(b)に示すように、上記の第1~第5のいずれかの実施形態により得られた組織体100bに対して、その形状をロール状(チューブ状)に加工成型するものである。

【0069】
第6の実施形態に係る組織体形成装置は、図5(b)に示すように、上記の第1~第5のいずれかの実施形態により得られた組織体100bに対して、多孔質性の棒状の筒体から成り、前記押圧整形部22により前記複数の細胞粒子100から形成された平板状の組織体100bを屈曲させて外周に周回可能な軸部5と、軸部5に周回された組織体100bの外表面を遊嵌状態で装着される外部筒部6と、軸部5の多孔質筒体に対して透過な培養液200の充填・排出を交互に行う圧力制御手段7とを備え、圧力制御手段7の充填・排出動作により軸部5と外部筒部6との間で前記組織体100bに対して加圧及び減圧を加える構成である。

【0070】
軸部5を構成する多孔質性の棒状の筒体としては、多孔質性の部材であれば、特に限定されないが、例えば、セラミクス製のものを使用することができる。外部筒部6は、前記複数の細胞粒子100と非接触性の部材を用いることが好ましく、例えば、PTFEなどの樹脂を用いることができる。

【0071】
圧力制御手段7は、圧力の増減を、軸部5の多孔質性の間隙を経由して、前記複数の細胞粒子100の内部に伝播することができる。さらに、この圧力制御手段7からの圧力の印加によって、前記複数の細胞粒子100が外部に膨張し、この際に、前記複数の細胞粒子100の外表面が、外部筒部6と接触して外部筒部6からの力を受けることとなる。次に、この圧力制御手段7からの圧力が減圧される際には、前記複数の細胞粒子100の外表面が、外部筒部6から隔離され、外部筒部6からの力が途絶えることとなる。この圧力制御手段7による圧力の増減によって、前記複数の細胞粒子100の内部及び外表面が、交互に繰り返し、外部刺激としての圧力を断続的に受け続けることとなる。

【0072】
このように、本実施形態に係る組織体形成装置は、圧力制御手段7の充填・排出動作により軸部5と外部筒部6との間で前記組織体100bに対して加圧及び減圧を加えることから、軸部5に周回された前記組織体100bが、その内部及び外部から、変動する圧力による外部刺激を受け続けることとなり、前記複数の細胞粒子100がより強い外部刺激を受けて成長することによりさらに強度の高い組織体100bを形成することができる。

【0073】
(第7の実施形態)
以下、本発明に係る第7の実施形態を図6に基づいて説明する。図6は、第7の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。

【0074】
第7の実施形態に係る組織体形成装置は、図6に示すように、上記の第1~第5のいずれかの実施形態により得られた組織体100bに対して、その形状をロール状(チューブ状)に加工成型するものである。

【0075】
第6の実施形態に係る組織体形成装置は、図6に示すように、上記の第1~第5のいずれかの実施形態により得られた組織体100bに対して、多孔質性の棒状の筒体から成り、前記押圧整形部22により前記複数の細胞粒子100から形成された平板状の組織体100bを屈曲させて外周に周回可能な軸部5を備え、培養液200中で軸部5を移動させる構成である。このような構成から、組織体100bの外部から、培養液200からの水圧を受け続けることとなり、前記複数の細胞粒子100がより強い外部刺激を受けて成長することによって、さらに強度の高い組織体100bを形成することができる。

【0076】
(第8の実施形態)
以下、本発明に係る第8の実施形態を図7に基づいて説明する。図7は、第8の実施形態に係る組織体形成装置の構成図を示す。

【0077】
第8の実施形態に係る組織体形成装置は、図7(a)に示すように、上記の第1~第5のいずれかの実施形態の変形例であり、前記培養槽1が培養液200を収容する閉じた内部空間を形成し、前記枠体2で形成される中空体を代替する透水性のシート8と、前記押圧整形部22を代替して、シート8に収容された平面状の組織体100bに対して、前記内部空間内の加圧を行う加圧部22cと、を備えるものである。

【0078】
第8の実施形態に係る組織体形成装置は、このシート8の内部に平面状の組織体100bを収容し、加圧部22cからの内部空間の圧力が増減され、前記押圧整形部22による平面状の組織体100bへの外部刺激に相当する外部からの圧力を行うものである。平面状の組織体100bへの外部刺激を制御し、外部からの圧力を最適に選定することによって、強度の高い組織体100bを形成することが可能となる。このような構成により、培養時に平面状の組織体100bへの外部刺激が継続的に行われ、さらに強度の高い組織体100bを形成することができる。

【0079】
また、図7(b)に示すように、特に、上記の第3の実施形態で述べた前記容積増減手段4を備える構成とした場合を示す。この場合には、加圧部22cからの内部空間の圧力増減と、前記容積増減手段4の容積増減動作が相俟って、経時的に強さが増減する外部刺激を、培養液200中の溶液中のあらゆる角度から平面状の組織体100bに与え続けることとなり、さらに強度の高い組織体100bを形成することができる。

【0080】
(第9の実施形態)
以下、本発明に係る第9の実施形態を説明する。

【0081】
第9の実施形態は、上記の第1~第5のいずれかに記載の組織体形成装置と、この組織体形成装置を構成する前記培養液200中で培養された前記複数の細胞粒子100とを備える組織体形成キットである。

【0082】
第9の実施形態に係る組織体形成キット(3次元組織形成キット)では、この組織体形成装置において、容易に平板状の組織体を得ることができる。枠体で囲まれる部分の底面積及び形状は、所望とする平板状構造およびこれをおり重ねて円筒状構造体を作成する為に必要な形状とすることができる。

【0083】
このキットでは、 また、枠体内で培養する期間は、6~24時間以内にとどめる。それ以外の培養期間では、組織の融合効率が悪くなるため、上記期間内に枠体を除去する。

【0084】
上記の操作は、この組織体形成キット内で、常に培養液に組織体全体が浸漬された状態で操作される。この組織体形成キットにより得られた平板状組織は、その一部分を同組織の一部分に接触させて、より複雑な形状の組織体を得ることができる。その場合には、得られた組織体の内部に、円筒形、球形、又は扇型の細胞非接着性の素材でできた物質を包み込むようにして接触させることが好ましい。

【0085】
さらに、この得られた平板状の組織体を元にして、組織体形成装置内で組織形成開始から72時間以内に、平板状組織の一部分を同組織の一部分に接触させ、この接触させた状態を維持して好ましくは24時間~72時間培養することができる。これ以上の培養時間とする場合では、凝集が進み過ぎて、得られた平板状組織体の細胞間の融合能力が低下して円滑な組織の癒合が得られなくなり、得られた組織体の利用価値が低下するためである。このように、このキットによって得られた組織体は、円筒形又は袋状の形状をしたより複雑な形状の組織体を形成する原料として利用することができる。

【0086】
例えば、円筒形構造体を作成する場合には、内腔1mmの円筒形構造体を作成するために、このキットによって、少なくとも平板状組織形成初期に1-1.5cmの幅を持たせた平板状組織を作成する。その幅は、所望とする円筒形(血管状)組織体の直径を2rとすると 2r×π(円周率)×4-6程度の長さの辺をもつ平板状組織を作る必要がある。

【0087】
さらに1週間以上培養し、円筒形の構造体が形成される。この円筒形組織形成後の培養期間は、特に限定されず、例えば、数か月にわたり培養してもよい。その際、内腔を既知のポンプなどで還流したりしてもよい。さらには、外層を本組織体形成装置の固形物(半透膜)を用いて、間歇的に圧迫しながら培養することが望ましい。この培養中で、培地は特に制限を設けないが、血管形成を促進する物質をこの培地に添加してもよい。

【0088】
この組織体形成キットによって、組織体形成装置によって簡易に得られた平板状組織を原料に利用することによって、円筒形組織体(血管)及び袋状組織体(心臓)などの生体形状に沿った形状の組織体が容易に得られる。その方法としては、例えば、円筒形の入り口部と心臓の入り口部を接触させて1週間程度培養液中で連結させることが挙げられる。

【0089】
以下に実施例を示すが、これらの実施例は本発明に係る組織体形成装置を単に例示するためのものであり、本発明を限定するものではない。

【0090】
(実施例1)
装置は、上記第1の実施形態で示した装置を用いた。上記枠体2としてのモールドは、市販のPTFE(プラポート社)をカットして作製し、このモールドを構成するボルトやナットの部材も市販のもの(ウィルコ社)を組み合わせて作製した。また、培養皿には、90mmの低接着性培養皿(住友ベークライト社製、MS-9090X)を用いた。ヒト由来である、血管内皮細胞、線維芽細胞、血管平滑筋細胞の3種類を用いた。これら3種類の細胞を、それぞれ独立して大量培養して予定とする細胞数に達した段階で、培養皿から剥離し、細胞懸濁液状態とした3種類の細胞を混合して浮遊培養し、細胞凝集塊(スフェロイド)を作成した。(血管)組織型スフェロイドの体積と数を枠体2の開口部Aの面積を埋め尽くす程度に調節し枠体2(モールド)内の中空体から成る空間へ播種する。図8(a)のSEM写真に示すように、3.0X10程度の直径100μmの組織型スフェロイドを播種した。

【0091】
図8(b)のSEM写真に示すように、スフェロイドを播種後、タッピングによりスフェロイドを均一に配置し、30分程度した。その後、スフェロイドが拡散しないようCo2インキュベーターに移動した。培養開始から3時間程度でスフェロイド同士の融合が始まった。24~48時間程度で全てのスフェロイドが融合し、図8(c)のSEM写真に示すように、3次元構造体が構築されたことが確認された。また、24-48時間程度で周囲の囲いを除去し培地循環を改善したところ、図8(d)に示す組織体が得られ、強固な組織体が得られたことが確認された。

【0092】
さらに、得られた組織体に対して、バイオリアクターを用いて成熟化を行い、細胞のみから成る、1.5cm四方、厚さ0.2~0.5mmの血管組織型パッチを作製した。図9に示すように、得られた組織体から、HE染色やマッソン・トリクローム染色によって、豊富な膠原線維を確認できた。また、血管組織型スフェロイド作成時に混合する細胞数を調節することによって、所望とする直径のスフェロイド作成が可能であった。さらに、得られた組織体から、所望のサイズ、面積、形状をもたせた自由度の高いパッチ形成も可能であることが確認された。

【0093】
以上の結果から、本発明に従い、スフェロイドに対して外的刺激を直接且つ有意に与えることによって、細胞のみを利用して3次元化させた強固且つ生体適合性の高い血管組織型パッチが作成できた。本発明に従えば、自己細胞のみから成る自由度の高い3次元化組織を構築でき、さらに、スキャホールドなどの外来異物を含まないことからも、抗免疫性に優れ、抗感染性や抗炎症性などの観点からも、有用な外科的手法となり得ることが確認された。

【0094】
(実施例2)
上記の実施例1と同様の組織体形成装置と、この組織体形成装置を構成する培養液中で培養された前記複数の細胞粒子とを備える組織体形成キットを構成し、上記の実施例1と同様の手順で、平板状の組織体を得た。

【0095】
上記の実施例1と同様の手順で、異なる細胞数(2500、5000、10000、20000、30000及び40000)の細胞粒子の各サンプルを凝集させて、得られたスフェロイドの直径と経過時間との関係を図10に示す。細胞数と、形成されるスフェロイド(細胞凝集塊=コロイド)の直径は正比例の関係であった。また、作成後48時間以内に急速に凝集し、その後はなだらかなに凝集した(径が小さくなった)。つまり、凝集開始から、枠体内でコロイド同士が融合されて平板状組織が作成される時期は、凝集開始から48時間以内であると考えられた。

【0096】
また、上記の実施例1と同様の手順に従って、原料となる細胞粒子として粒子直径100~150μmの線維芽細胞、血管平滑筋細胞、及び血管内皮細胞を、細胞配合比2:2:1で配合し、細胞数が1000個/コロイドとして、前記枠体中における複数の細胞粒子の密度が1×10~6×10細胞数/cm2として、得られた組織体のサンプルについて、HE染色及びマッソン・トリクローム染色の実験結果を図11に示す。

【0097】
さらに、上記の実施例1と同様の手順に従って、粒子直径150μm又は250μmの細胞粒子を原料として得られた細胞塊(スフェロイド)を、蛍光生死判定キット(死んだ細胞を赤で染色するキット)で染色して撮影した結果を図12に示す。得られた結果から、この直径が150μmを超えて250μmになると赤色に染色された部分(壊死を示す)が増えたことが確認された。このことから、細胞粒子の直径は、50μm~150μmの範囲がより好適であることが確認された。
【符号の説明】
【0098】
1 培養槽
2 枠体
21 規制枠部
22 押圧整形部
22a 溝部
22b 貫通孔
22c 加圧部
3 揺動手段
4 容積増減手段
5 軸部
6 外部筒部
7 圧力制御手段
8 シート
100 細胞粒子
100a コロイド状細胞
100b 組織体
200 培養液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11