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明細書 :抗腫瘍性プロドラッグを含む組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-017059 (P2016-017059A)
公開日 平成28年2月1日(2016.2.1)
発明の名称または考案の名称 抗腫瘍性プロドラッグを含む組成物
国際特許分類 A61K  31/704       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/704
A61P 43/00 123
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2014-142171 (P2014-142171)
出願日 平成26年7月10日(2014.7.10)
発明者または考案者 【氏名】長崎 幸夫
【氏名】池田 豊
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000741、【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA55
4C086NA06
4C086NA15
4C086ZB26
要約 【課題】より安全に使用できる抗腫瘍剤の提供
【解決手段】ドキソルビシンプロドラッグが断続的に投与される製薬学的組成物が開示される。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】

【化1】
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で表されるドキソルビシンプロドラッグ及び生理学的に許容され得る担体を含んでなる腫瘍を処置するための製薬学的組成物であって、
該プロドラッグが、その投与を必要とする患者に治療上有効な用量で間欠的に投与されるものである、
製薬学的組成物。
【請求項2】
投与が非経口的に行われる、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項3】
腫瘍が固形がんである、請求項1に記載の製薬学的組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍性プロドラッグを含む組成物、より具体的にはドキソルビシンプロドラッグを有効成分として含む製薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低酸素部位の腫瘍は浸潤、転移及び耐性癌の原因となっており、癌の根治を妨げる最大の要因であり、これら低酸素環境下にある腫瘍細胞の治療法の開発は切に望まれている。低酸素部位の腫瘍を標的とした医薬品はTriapazamine、AQ4N及びPR104等現在数種類の臨床試験が行われているが、上市された医薬品は今のところ存在しない。
【0003】
現在臨床試験が行われている上記の化合物は、低酸素部位での還元環境下で分子が還元されることにより活性化され制癌剤としての活性を持つものであるが、化合物の酸化還元電位の調節及び活性型の抗がん剤の副作用が問題となっている。
【0004】
生体内の低酸素部位で構造が変化する化合物としては2-ニトロイミダゾールがある。この化合物は酸化還元電位が比較的高く生体内の低酸素部位で効率よく還元されることがわかっており、低酸素部位特異的なラベル化剤として用いられており、幾つかの誘導体については臨床試験が行われている。しかしながら、臨床試験の結果をみると決して満足の行く結果ではなく、未だに認可された医薬品は存在しない。このような背景の下、本発明者等はこれまでに新たな低酸素環境応答性のプロドラッグを開発し、かようなプロドラッグそれ自体及びその用途について提案した(特許文献1)。本発明者等が開発した新規化合物は既存の抗がん剤(親化合物)をプロドラッグ化したものであり、生体内の低酸素部位で効率よく還元されることにより、その場(in situ)で親化合物を放出する点で、従来の化合物とは異なり、低酸素部位で選択的に細胞毒性を発揮する。したがって、生体に対する副作用が相当低減できるものと推測できる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】WO 2013/122112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で提案したプロドラッグは、がん細胞を用いるin vitro試験において選択的な低酸素環境応答性を示し、正常酸素濃度環境下では親化合物の副作用が低減することから、生体に対して毒性の低減した抗腫瘍剤といえる。しかしながら、可能であるならin vivoでより安全に使用できる抗腫瘍性製薬学的組成物又はより安全に腫瘍を処置できる方法の樹立に対するニーズは依然として存在するであろう。本発明はこのようなニーズ又は課題に答えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1で提案したプロドラッグの中、ドキソルビシンプロドラッグはin vivo試験において、親化合物ドキソルビシンが個体に対して強い副作用を有することが周知であるにもかかわらず、断続的に投与すると腫瘍細胞に対しては親化合物それ自他と同様な抗腫瘍活性を示す一方で、処置される個体に対しては実質的に副作用を示さないか又は存在するとしても極めて低い副作用を示すにすぎないことが確認された。そのため、比較的短い投与間隔でかなり高い用量での腫瘍を治療を行っても個体又は患者に対して薬剤の
副作用によるダメージをほとんどもしくは全く与えない。
【0008】
したがって、本発明によれば、式
【0009】
【化1】
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【0010】
で表されるドキソルビシンプロドラッグ及び生理学的に許容され得る担体を含んでなる腫瘍を処置するための製薬学的組成物であって、
該プロドラッグが、その投与を必要とする個体に療法上有効な用量で断続的に投与されるものである、
製薬学的組成物、
が提供される。
【0011】
こうして、本願発明によれば、仮に、親化合物それ自体が強い副作用を有し得る場合であっても、個体の腫瘍を安全に処置できる製薬学的組成物又は方法を提供できる。
【発明の詳細な記述】
【0012】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【発明の詳細な記述】
【0013】
プロドラッグは、一般的に、生体内で代謝又はその他により改変されてプロドラッグそれ自体に比べて特定の活性又は性質に変化を来し、生体に対するバイオアベイラビリティの改善、作用部位へのセンタク的移行性、薬効の持続化、副作用の軽減などを目的とした多くのものが存在する。ドキソルビシンプロドラックとは、主として、親化合物たるドキソルビシンの副作用の軽減が図られた親化合物とは異なる特性を有する化合物を意味する。ドキソルビシンプロドラッグは、上述した特許文献1に記載されたそれ自体公知化合物である。
【発明の詳細な記述】
【0014】
「個体」は、ドキソルビシンプロドラッグで処置できる動物であれば限定されるものでないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ等の愛玩動物、ウシ、ブタ、ウマ等の家畜を意味し、特に、強く意識しているのはヒト又はヒト患者である。
【発明の詳細な記述】
【0015】
「腫瘍」は、異常な新生又は増殖性細胞又は組織を意味し、良性又は悪性のいずれをも包含する。具体的には、肺癌、乳癌、大腸癌、膵臓癌、頸部癌、卵巣癌、前立腺癌、肝臓癌、胃癌、胆嚢癌、胆管癌、子宮体癌、尿路上皮癌、神経牙細胞癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、軟部内腫、等を挙げることができ、限定されるものでないが、特に興味のある処置対象としては、大腸癌、膵臓癌、卵巣癌等の固形がんをあげることができる。
【発明の詳細な記述】
【0016】
「処置」は、前記腫瘍の治療及び予防を包含する概念として使用しており、好ましい態様では「治療」と互換可能なものである。治療は、対象とする疾患の状態の改善、緩和又は安定化を含む、治療される個体にとって有益な結果が達成されることをいう。
【発明の詳細な記述】
【0017】
「療法上有効な用量」は、腫瘍に冒された又は冒される可能性のある個体に投与する際、意図する処置効果を発揮する薬剤量であって、例えば、個体におけるがんの軽減、改善、寛解又は消滅、転移の防止等を達成できるか、がんの発症または転移の防止をできる量をいう。
【発明の詳細な記述】
【0018】
「断続的投与」とは、一回投与又は分割投与とは異なる概念を意味し、投与が一定の休止期間をおいて一定のサイクルで繰り返される投与形態をいう。限定されるものでないが、療法上有効な用量のドキソルビシンプロドラッグが、例えば、1日に1度、2日に1度、3日に1度、4日に1度、5日1度、1週間に1度等の同一又は異なる投与形態を、処置される個体が必要とする期間繰り返すことを意味する。上述したとおり、ドキソルビシンプロドラッグはin vivoでも低酸素環境下で選択的に親化合物を放出するものとみなされるので、所期の効能を発揮する上で親化合物に比べてはるかに高い用量で、例えば、断続的投与を数十回のサイクルで行うことが可能である。ここにいう、1度の投与とは、薬剤が連続的に数時間注入される場合を含む。投与は、経口、非経口、特に、静脈内、皮下、筋肉内,腹腔内、直腸内、十二指腸内、腫瘍局所もしくは周辺への直接注入若しくは埋設等を通して行うことができる。例えば、静脈内注入は、上記のように薬剤が輸液等とともに数時間連続注入される場合を含む。
【発明の詳細な記述】
【0019】
投与される組成物の剤形は、経口剤として、錠剤、カプセル、ピル、粉末剤、除法剤、液剤、懸濁剤等、非経口剤として、溶液、懸濁剤等、坐剤、疾患の局所若しくは周辺への埋設若しくは移植に適した剤形等を挙げることができる。
【発明の詳細な記述】
【0020】
「生理学的に許容される担体」は、剤形により、当該技術分野で常用されているものから適宜選択できる。例えば、個体に悪影響を及ぼさず、かつ、ドキソルビシンプロドラッグそれ自体又はその作用に悪影響を及ぼさない非活性希釈剤又は充填剤であることができ、限定されるものでないが、例えば、滅菌水、緩衝化された水性溶液、界面活性剤や水混和性有機溶媒を含む水溶液、有機溶媒等であることができる。非経口投与剤としては、例えば、特に、薬局方で使用が認められている、ポリエチレングリコール含有水溶液、ブドウ糖液等であることもできる。さらに、助剤として、エタノール、キシリトール、マルトースを含むこともできる。
【発明の詳細な記述】
【0021】
療法上有効な用量は、上記に定義した量であるが、処置対象腫瘍の種類、重篤度、個体の年齢、体重等により適量が変動するので、特定できない。しかし、親化合物たる、ドキソルビシンについて今日まで常用されてきた用量を参考に、ドキソルビシンプロドラッグの特性、特に、低い毒性、等を考慮した上で対比し、さらに必要であるなら、小動物を用い得る安全性、効能についての試験を通して適量を決定すればよい。限定されるものでないが、一般的に、約1~約200mg/kg、約5~約100mg/kg、約7~約50mg/kgを、例えば、2日もしくは4日に1度静脈内もしくは腹腔内に投与できる。
【発明の詳細な記述】
【0022】
このような用量での投与において、ドキソルビシンプロドラッグは処置される個体に対して顕著な副作用、例えば、投薬の中止を必要とするような生存を危険にさらすことを含めた重大な副作用又は体重の減少等をもたらすことなく、腫瘍の体積の減少もしくは消滅等を含む抗腫瘍効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ドキソルビシンプロドラッグのマウスを用いた活性評価の結果を示すグラフである。(a)は腫瘍サイズの変化を表し、(b)は動物の体重の変化を表し、(c)は動物の生存率の変化を表す。図中、黒塗り菱形は無処置群のデータであり、黒塗り四角はドキソルビシン投与群のデータであり、黒塗り三角はドキソルビシンプロドラッグ投与群のデータである。

【実施例】
【0024】
以下、具定例を挙げ、本発明を更に説明するが、これらに本発明を限定することを意図するものではない。
【0025】
例1
ICRマウス(5週齢、オス,1群3匹)にドキソルビシンプロドラッグをジメチルスルホキシドに溶解させた組成物を薬剤として16,32,64,80mg/kgまで動物の腹腔内に投与しても動物は死亡することはなかったが、ドキソルビシンを投与した際は16mg/kgにおいてすべてのマウスが投与後10日後には死亡した。
【0026】
例2
Colon 26(大腸癌マウス)をBalb/c(4週齢、オス)の皮下に移植し、担癌マウスを作製した。1群を6匹とし、移植後10日後(Day 0とする)に、癌の長軸が1cmに成長した後に、ドキソルビシン(4mg/kg)をDay 0、ドキソルビシンプロドラッグ(16mg/kg)をDay 0,2,4,6及び8に動物の腹腔内に投与し腫瘍体積変化、体重変化及び生存率の推移を観察した。腫瘍成長抑制効果は従来のドキソルビシンと同等程度であった(図1a)が、注目すべきことして、本発明のプロドラッグは従来の抗がん剤にみられるような顕著な体重減少が全くなく、抗がん剤の副作用を劇的に減少させている事が示唆された(図1b)。さらに驚くべきことに生存率も無処置群及びドキソルビシン群と比較して大幅に改善した(図1c)。すなわち、従来の細胞殺傷型の抗がん剤を低酸素部位の腫瘍組織に集積させ、特異的に効果を発揮させることにより、重篤な副作用の大幅な低減と、生存率の改善という、これまでの抗がん剤治療では不可能だった効果が確認できた。
図面
【図1】
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