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明細書 :セラミックスと金属との接合法およびセラミックスと金属との接合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-128473 (P2017-128473A)
公開日 平成29年7月27日(2017.7.27)
発明の名称または考案の名称 セラミックスと金属との接合法およびセラミックスと金属との接合体
国際特許分類 C04B  37/02        (2006.01)
FI C04B 37/02 B
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2016-008656 (P2016-008656)
出願日 平成28年1月20日(2016.1.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 第26回新構造・機能制御と傾斜機能材料シンポジウム(FGMs2015) ご案内 開催日(2015年9月29-30日) 開催場所(九州大学西新プラザ:福岡市早良区西新)
発明者または考案者 【氏名】渡辺 義見
【氏名】佐藤 尚
【氏名】村瀬 匡紀
【氏名】塚本 英明
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G026
Fターム 4G026BA16
4G026BB27
4G026BF06
4G026BF35
4G026BF43
4G026BG10
4G026BH07
要約 【課題】セラミックスと金属とを傾斜機能材料の技術を適応して接合する技術の提供。
【解決手段】バルク状セラミックス1および金属粒子3とセラミックス粒子4とからなる混合粉末2に遠心力場で溶融金属を注入し、これにより得られる傾斜層9を介してセラミックスと金属とが接合する技術、または、セラミックスがAlN、金属がAlであり、バルク状AlNおよび同等の粒径を有するAl粒子とAlN粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融Alを注入し、冷却を炉冷にて行うことにより得られる傾斜層を介してAlNとAlとが接合する技術である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
バルク状セラミックスおよび金属粒子とセラミックス粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融金属を注入し、これにより得られる傾斜層を介してセラミックスと金属とが接合したことを特徴とするセラミックスと金属との接合材。
【請求項2】
バルク状セラミックスおよび金属粒子とセラミックス粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融金属を注入し、これにより得られる傾斜層を介してセラミックスと金属とを接合させることを特徴とするセラミックスと金属との接合法。
【請求項3】
セラミックスがAlN、金属がAlであり、バルク状AlNおよび同等の粒径を有するAl粒子とAlN粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融Alを注入し、冷却を炉冷にて行うことにより得られる傾斜層を介してAlNとAlとが接合したことを特徴とする請求項1記載のAlN/Alからなる接合材。
【請求項4】
セラミックスがAlN、金属がAlであり、バルク状AlNおよび同等の粒径を有するAl粒子とAlN粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融Alを注入し、これにより得られる傾斜層を介してAlNとAlとを接合させることを特徴とする請求項2記載のAlNとAlからなる接合法。
【請求項5】
セラミックスがAlN、金属がAlであり、バルク状AlN、Al粒子およびAl粒子と同程度の粒径を有するAlN粒子とからなる混合粉末に真空かつ遠心力場で溶融Alを注入し、冷却を炉冷にて行うことにより得られるAlNの体積分率が20%から40%までの間で変化する傾斜層を介してAlNとAlとを接合させることを特徴とする請求項4記載のセラミックスと金属との接合法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスと金属とを傾斜機能材料の技術を適応して接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品から産業用機器に至るまで、あらゆる電子機器には半導体デバイスが使用されている。電子機器の小型化・機能向上に対する要求は極めて大きく、それに伴い半導体デバイスは集積密度向上、多機能化、高速化、高出力化および高信頼化の方向に急進展し、デバイス内で消費される電力が増大する傾向にある。そこで、半導体デバイスを搭載する基板にも、単に半導体を支持して回路を構成する機能以外にも、多くの厳しい要求が課されるようになっている。基板に求められる要求の中でも、増大する半導体の発熱は故障の原因となるため、いかに放熱するかは特に重要な問題である。そのため、基板に用いられる材料には高熱伝導性が要求される。
【0003】
基板はセラミックス板に金属回路板や金属放熱板などを接合したものが一般的である。しかし、セラミックスと金属を接合したこれらの基板では、室温から高温への温度変化あるいは高温から室温への室温変化にて、セラミックスと金属との接合界面で剥離が生じるという問題点を有する。これは、セラミックスと金属との熱膨張率の差が大きく、温度変化によって発生する応力がセラミックスと金属との接合強度を上回るためである。
【0004】
このような剥離を防止するためには、発生する熱応力を特定の接合界面に集中させず、ある領域内において分散させることが必要となる。これを実現する方法として、非特許文献1記載の傾斜機能材料の技術がある。ここで傾斜機能材料とは、例えば金属の組成からセラミックスの組成へと位置ごとに組成を連続的に変化させることにより、位置ごとの熱膨張係数を金属の値からセラミックスの値へと連続的に変化させることを目指した材料概念である。この傾斜機能材料の製造法には、特許文献1記載の溶射法、特許文献2記載の粉末冶金法、特許文献3および4記載の遠心鋳造法などがある。
【0005】
特許文献5には、母相となる金属粉末と複合化させたいセラミックス粒子粉末が混合している混合粉末を作製し、その混合粉末を遠心力鋳造装置の型に投入して、型を回転させることによって遠心力印加および型の予備加熱を行い、回転中の型へ溶解炉で溶解された金属母材溶湯を流し込むことによって、セラミックス粒子が母相に強固に固定され母相中に均一あるいは傾斜分散された金属/セラミックス粒子複合材料を製造する方法が開示されている。この技術では、位置ごとに組成が変化した傾斜機能材料の製造が可能であり、その一端の組成を金属100%の組成にすることも可能であったが、他端の組成をセラミックス100%の組成にすることは原理的に不可能であった。
【0006】
また、特許文献6には、密度および/又は粒子径の大きな高速沈降粒子および密度および/又は粒子径の小さな低速沈降粒子を混合することにより、これらの混合粉末を作製し、粉砕した溶融可能な固体を底部に配した入れ物に該混合粉末を投入し、加熱することにより該混合粉末の沈降を生じせしめた後に、十分に液体を除去することにより組成が連続的に傾斜したグリン体を製造し、当該組成傾斜を有するグリン体を焼結することにより、一端が金属、他端がセラミックスとなる傾斜機能材料を製造する方法が開示されている。しかし、この技術では、組成傾斜形成と焼結とを別工程で行っており、製造工程が複雑化し、コスト高に繋がる欠点を有していた。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平5-323067号公報
【特許文献2】特開平7-310103号公報
【特許文献3】特開2002-69546号公報
【特許文献4】特開2003-166028号公報
【特許文献5】特許第5077933号公報
【特許文献6】特開2013-181218号公報
【特許文献7】特開2012-192416号公報
【0008】

【非特許文献1】上村誠一,渡辺義見編著,「図解 傾斜機能材料の基礎と応用」,コロナ社, (2014).
【非特許文献2】Yoshimi Watanabe,Yuko Hattori and Hisashi Sato,Distribution of Microstructure and Cooling Rate in Al-Al2Cu Functionally Graded Materials Fabricated by a Centrifugal Method, J. Mater. Proc. Tech.,221,197-204 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
セラミックスと金属とでは各々特徴的な長所を有し、それらの接合体を製造すれば、両者の長所を兼ね備えた良好な材料の提供が可能となる。セラミックスと金属とでは物性値の差が大きいため、通常の直接接合法では製造が困難であるものの、傾斜機能材料を介することにより、その問題点が克服できる。しかし、既存の製造法では、連続傾斜を有し、かつセラミックス100%から金属100%への組成傾斜を有する傾斜機能材料製造は困難であった。そのため、セラミックス100%から金属100%への組成傾斜を有し、かつセラミックスと金属の接合媒体に資する傾斜機能材料の簡便なる製造技術の提供が望まれており、本発明ではこの技術を提供する。
【0010】
本明細書で開示する傾斜機能材料は、一端がセラミックス、他端が金属の組成を有する。そのため、セラミックスと金属との接合媒体として使用できるのみならず、それ自体も傾斜機能材料として使用できる。
【0011】
上記の傾斜機能材料は、セラミックスがAlN、金属がAlで構成されるものも含まれるため、高い放熱性を保ちつつ、材料表面の強度を向上させることが可能である。また、接合強度は金属側の強度を上回ることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、セラミックスと金属との接合方法も提供する。その方法は、組成傾斜形成過程と、セラミックスと金属との接合過程とを同時工程で行う。組成傾斜形成過程では、遠心力による溶融金属中のセラミックス粒子の移動現象を利用し、接合過程では遠心鋳造による溶湯の加圧浸透現象を利用する。これにより、セラミックスと金属とが傾斜機能材料領域を介し,強固に接合した材料を製造することができる。
【0013】
バルク状セラミックスおよび金属粒子とセラミックス粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融金属を注入し、これにより得られる傾斜層を介してセラミックスと金属とを接合して製造したことを特徴とするセラミックスと金属との接合材。
【0014】
バルク状セラミックスおよび金属粒子とセラミックス粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融金属を注入し、これにより得られる傾斜層を介してセラミックスと金属とを接合させることを特徴とするセラミックスと金属との接合材製造法。
【0015】
セラミックスがAlN、金属がAlであり、バルク状AlNおよび同等の粒径を有するAl粒子とAlN粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融Alを注入し、これにより得られる傾斜層を介してAlNとAlとが接合したことを特徴とするAlN/Al接合材。
【0016】
セラミックスがAlN、金属がAlであり、バルク状AlNおよび同等の粒径を有するAl粒子とAlN粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融Alを注入し、これにより得られる傾斜層を介してAlNとAlとを接合させることを特徴としたAlNとAlとの接合材製造法。
【0017】
セラミックスがAlN、金属がAlであり、バルク状AlN、Al粒子およびAl粒子と同程度の粒径を有するAlN粒子とからなる混合粉末に真空かつ遠心力場で溶融Alを注入し、これにより得られるAlNの体積分率が20%から40%までの間で変化する傾斜層を介してAlNとAlとを接合させることを特徴としたセラミックスと金属との接合材製造法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明によるセラミックスと金属との接合体製造の手順を示す図である。(a)遠心力印加可能な鋳型内にバルク状のセラミックスを設置し、その中にセラミックス粒子と金属粒子からなる混合粉末を投入する。(b)鋳型に遠心力を印加しながら金属溶湯を注湯する。(c)金属溶湯の熱により混合粉末中の金属粒子が溶融し、セラミックス粒子が金属溶湯中を移動し、組成傾斜を形成する。(d)セラミックスと金属は傾斜層を介して強固に接合される。
【図2】図2は本発明によって得られるセラミックスと金属との接合体の組成傾斜の例を示す模式図である。
【図3】図3は本発明によるセラミックスと金属との接合体製造の手順を示す図である。
【図4】図4は焼結温度1550℃,成形圧力40MPa,保持時間10minの条件でSPS焼結にて作製したAlN焼結体の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)による組織観察写真を示す図である。
【図5】図5は本発明で使用した小型真空遠心鋳造装置の概略を示す図である。
【図6】図6は製造したAlN/Al接合体の外観写真を示す図である。
【図7】図7はSEMによる反射電子像を示す図であり、(a)混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径3μmで保持時間なし、(b)混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(c)混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで1時間保持、(d)混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が20vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(e)混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(f)混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径150-212μmで保持時間なしの条件で鋳造し、炉冷にて冷却を行ったAlN/Al接合体試料の界面付近のSEMによる反射電子像を示す。
【図8】図8は混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径3μmで保持時間なしの条件で鋳造し、炉冷にて製造したAlN/Al接合体の界面付近のAlN粒子の凝集部分のSEMによる二次電子像を示す図である。
【図9】図9(a)はセラミックス粒子と金属粒子との粒径差が大きい場合、(b)はセラミックス粒子と金属粒子との粒径差が小さい場合、の混合粉末の様相を示す模式図である。
【図10】図10(a)は混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(b)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで1時間保持、(c)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が20vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(d)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(e)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径150-212μmで保持時間なしの条件で鋳造し、炉冷にて製造したAlN/Al接合体の傾斜層領域におけるAlN粒子の分散を示す図である。
【図11】図11(a)は混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(b)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで1時間保持、(c)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が20vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(d)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、(e)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径150-212μmで保持時間なしの条件で鋳造し、炉冷にて製造したAlN/Al接合体の傾斜層領域におけるAlN粒子の体積分率を示す図である。横軸は規格化した位置を示している。
【図12】図12は84Gあるいは42Gの遠心力を印加したときの660℃および700℃の溶融Al中のAlN粒子の移動速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本明細書で開示する傾斜機能材料の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。

【0020】
本明細書で開示する傾斜機能材料は、セラミックスと金属とを接合するために用いられる。組成を傾斜させることにより、熱膨張係数などの物性値が位置ごとに連続的に変化するため、セラミックスと金属との物性差による熱応力を緩和することができる。好ましくは、本明細書で開示する傾斜機能材料は、一端がセラミックスの組成を有し、他端が金属の組成を有し、その間には両者が混じり合い、連続的に組成を傾斜させたものであるが、熱応力が緩和できるのであれば、組成の傾斜は段階的であっても良く、また、一端の組成は100%がセラミックスで無くても良く、また他端も100%が金属でなくても良い。

【0021】
傾斜機能材料のセラミックス側は、接合するセラミックスと同じ組成を有し、金属端側は、接合する金属と同じ組成を有することが望ましいが、熱応力が緩和できるのであれば、その成分や組成は限定されるものではない。また、傾斜領域において、セラミックスと金属とは反応していない状態で混じりあっていることが好ましいが、反応が生じても、熱応力緩和に影響を及ぼさない程度のものであれば問題ない。

【0022】
本明細書で開示する傾斜機能材料は、セラミックスと金属とを接合する目的で組成傾斜を形成させるが、それ自体がセラミックスと金属とが組成傾斜領域を介して接合した接合体としても、また、セラミックスと金属とを接合するための中間体としても用いられる。

【0023】
セラミックスの一例としてAlN、金属の一例としてAlが挙げられ、一端がAlNのみの組成を有し、他端がAlの組成を有する傾斜機能材料であることを特徴とする。この材料においては、一端において組成傾斜を有しないAlNのみの領域、他端においては組成傾斜を有しないAlのみの領域を有することを特徴とする。また、組成傾斜領域においては、AlNとAlNとが強固に混じりあった状態になっていることを特徴とする。

【0024】
次に、本明細書で開示する傾斜機能材料製造の技術的特徴の幾つかを記す。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。

【0025】
本発明で用いる遠心力混合粉末法において、鋳型に配したセラミックスと金属とを接合することを特徴とする。図1に接合法の概要を示す。まず、図1(a)に示す様に、遠心力印加可能な鋳型内にバルク状のセラミックスを設置し、その中にセラミックス粒子と金属粒子からなる混合粉末を投入する。次に、図1(b)に示す様に、鋳型に遠心力を印加しながら金属溶湯を注湯する。このとき鋳型内部では、遠心力による加圧効果により、混合粉末の粒子間隙に金属溶湯が行き渡ると同時に、図1(c)に示すように、金属溶湯の熱により混合粉末中の金属粒子が溶融する。さらにこの時、セラミックスと金属溶湯に密度差がある場合には、混合粉末中のセラミックス粒子が金属溶湯中を移動し、連続的な組成傾斜を有する傾斜層を形成する。その後、金属溶湯を凝固させることで、図1(d)に示すように、セラミックス粒子が金属母相中に分散した傾斜層を介してセラミックスと金属との接合体が得られる。

【0026】
得られる接合体における組成傾斜の特徴を模式図として図2に示す。セラミックスと金属とは傾斜層を介して接合されており、その傾斜層の厚さと組成傾斜は混合粉末中のセラミックス粒子の粒径、混合粉末中のセラミックス粒子の体積分率、混合粉末中の投入量、鋳型の予備加熱温度、金属溶湯の温度、印加する遠心力の大きさ、遠心力印加時間などで制御可能である。
【実施例1】
【0027】
セラミックスとしてAlNを金属としてAlを用いたAlN/Al接合体の製造を実施例として挙げるが、これが本発明の材料系を特定するものではない。表1にAlNおよびAlの物性値、図3に製造手順を示す。まず、鋳型内にバルク状AlN焼結体を設置し、その中に粉末混合装置によって作製したAlN粒子とAl粒子とからなる混合粉末を投入する(図3(a)参照)。次に、鋳型を回転させ、遠心力を印加しながら鋳型にAl溶湯を注湯する(図3(b)参照)。このとき鋳型内部では、遠心力による加圧効果により、混合粉末の粒子間隙にAl溶湯が行き渡ると同時に、Al溶湯の熱により混合粉末中のAl粒子が溶融する(図3(c)参照)。また、AlNの密度は表1に示す様に3.26Mg/m、700℃におけるAl溶湯の密度は2.369Mg/mであるため、AlN粒子は遠心力場での沈降が生じ、連続的な組成傾斜を有する傾斜層を形成する。その後、Al溶湯が凝固することで、AlN粒子がAl母相中に分散した傾斜層を介してAlとAlNとの接合体が得られる(図3(d)参照)。
【実施例1】
【0028】
AlN/Al接合体の製造に供するためのAlN焼結体を作製した。出発原料として、(株)高純度化学研究所製の純度99%、粒径3μmのAlN粉末を用いた。また、(株)住友石炭鉱業製SPS-515S放電プラズマ焼結装置を利用して焼結を行った。ここで、放電プラズマ法(SPS法)とは、カーボン製のダイとパンチの間に粉末を充填し、粉体に圧力をかけながら低電圧でパルス状の大電流を印加し、粉末を焼結する手法である。低温かつ短時間の焼結が可能であるという特長を有する。しかし、これらが原料と製造法および製造装置を限定するものではない。また、この工程は、AlN/Al接合体の製造に供するためのバルク状AlNを得るために行ったものであり、必要な物性を有するバルク状AlNが入手できる場合は、省略できる。
【実施例1】
【0029】
外径40mm、内径20.4mmの円筒形のカーボン製ダイおよび直径20mmの上下パンチで構成される焼結型を使用した。このカーボン製ダイは側面に温度測定用の穴が設けられており、焼結中の試料の温度を放射温度計にて測定し、その温度を基準にして出力を制御することにより焼結中の温度制御を行った。焼結温度1550℃、成形圧力40MPa、保持時間10minの条件で焼結を行った。
【実施例1】
【0030】
この条件にて作製したAlN焼結体のSEMによる組織写真を図4に示す。図のように、焼結体内に気孔がほとんど無く、緻密な焼結体であることが確認できる。作製したAlN焼結体の密度をアルキメデス法により算出した結果、相対密度は97.8%となっており、気孔の少ない緻密なAlN焼結体がSPS法により作製できた。そこで、SPS法にて作製したAlN焼結体を接合体製造に使用した。
【実施例1】
【0031】
次に、AlN/Al接合体の製造に供するための混合粉末用のAlN粒子を作製した。出発原料として、(株)高純度化学研究所製の純度99%、粒径3μmのAlN粉末を用いた。これを、焼結温度1550℃、成形圧力40MPa、保持時間10minの条件にてSPS法にて焼結した。このAlN焼結体をハンマーで粉砕し、75μm-150μmあるいは150μm-212μmに分級した粒子を混合粉末用のAlN粒子としても使用した。この工程は、混合粉末に供するAl粒子と粒径を合わせるために行ったものであり、混合粉末用のAl粒子の粒径を類似した粒径を有するAlN粒子が入手できる場合は、省略できる。
【実施例1】
【0032】
AlN/Al接合体の製造に供するための混合粉末を作製した。まず、(株)高純度化学研究所製、粒径106μm-108μmのAl粒子と粒径3μm、75μm-150μmあるいは150μm-212μmのAlN粒子と共に内容量35mLの容器に入れた。これを、(株)シンマルエンタープライゼス製のターブラーミキサー(T2F)粉末混合装置を用いて15分間混合し、混合粉末を作製した。ここで、実施例においては混合粉末中のAlN粒子の割合を20vol%あるいは30vol%にしたが、これが本発明の請求範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0033】
次に、AlN焼結体が設置された鋳型内に混合粉末を1.8gおよび3.6g投入した。これは、2mmあるいは4mmの傾斜層が形成する量に相当する。そして、鋳造装置外部におかれた電気炉によって鋳型を600℃にて予備加熱を行い、鋳型を電気炉から図5に示す小型真空遠心鋳造装置に移動させて取り付けた。実施例ではこの予備加熱を鋳造装置外で行ったが、鋳造装置内で行っても、本質的な違いは無い。また、予備加熱温度も600℃としたが、遠心鋳造時に混合粉末中のAl粒子が溶融するのに必要な熱量を持つことができれば任意である。混合粉末中の加熱方法も、電気炉に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
その後、装置内を真空にし、高周波誘導炉にて(株)高純度化学研究所製の純度99%、2-5mmの大きさに分断したAlインゴットを1200℃にて溶解した。装置内を真空にするのは、混合粉末中のAl粒子の酸化を防ぐためのものであり、この防止策が図られれば、不活性ガスでの置換でも良い。また、インゴットを分断したのはあくまでも便宜上であり、これが本発明の請求範囲を狭めるものではない。Alインゴットの溶解温度は、混合粉末中のAl粒子が溶融するのに必要な熱量を持つことができれば任意である。
【実施例1】
【0035】
そして、鋳型を回転させ遠心力を印加すると同時にAl溶湯を鋳型内に流し込み、溶湯の注湯から5分後に鋳型の回転を停止させた。この時に印加した重力倍数は84Gであったが、混合粉末中にAl溶湯が含浸できる大きさであれば、変更可能である。また、遠心力の印加時間は5分間としたが、混合粉末中にAl溶湯が含浸し、AlN粒子の遠心力場での沈降現象により組成傾斜を形成させる時間を確保できれば、この時間も任意である。その後の冷却は600℃に加熱された炉中にて行ったが、この温度も変更可能である。鋳造装置内に金型予熱の設備を有さない場合は、電気炉に鋳型を移動し、炉冷しても良い。このとき、任意の時間の保持を行っても良く、実施例では保持時間なしと1時間保持の両者について観察した。
【実施例1】
【0036】
得られた接合体の外観写真を図6示す。製造した接合体の先端約15mmを切り出し、遠心力方向に3等分に切断し、切断後も接合状態を維持するか、剥離するかを観察した。
【実施例1】
【0037】
接合状態が維持された接合体を、3等分した内の中央部の断面を観察面とし、組織観察した。観察面を400番から2400番のエメリー紙で湿式研磨後、粒径1μmのダイヤモンド懸濁液でバフ研磨を施した。その後、AlN/Al接合体の界面付近の組織をSEMにより行った。図7(a)は混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径3μmで保持時間なし、図7(b)は混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図7(c)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで1時間保持、図7(d)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が20vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図7(e)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図7(f)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径150-212μmで保持時間なしの条件で鋳造し、炉冷にて冷却を行ったAlN/Al接合体試料の界面付近の組織写真である。左がAlN側、右がAl側である。図より、AlN粒子の粒径が3μmの条件で作製した試料を除いて、Al側においてはAlN粒子がAl母相中に分散した傾斜層を形成していることがわかる。この傾斜層中ではAl母相とAlN粒子の間には明確な界面が存在し、隙間が生じていなかった。また、AlN焼結体と傾斜層とが隙間無く接合出来ていることもわかる。
【実施例1】
【0038】
図8は混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径3μmで保持時間なしの条件で鋳造し、炉冷にて製造したAlN/Al接合体の界面付近のAlN粒子の凝集部分の組織写真である。AlN粒子の粒径が3μmの条件で作製した試料においては、部分的な接合はみられるが、図よりAlN粒子が界面付近で凝集しており、この部分においては、Al溶湯の含浸が妨げられ、AlN焼結体とAl母相の間に隙間がみられる。これは、混合粉末中のAl粒子とAlN粒子の粒径差が大きいことが原因であると考えられる。
【実施例1】
【0039】
図9(a)にセラミックス粒子と金属粒子の粒径差が大きい場合、図9(b)にセラミックス粒子と金属粒子の粒径差が小さい場合、の混合粉末の様相を模式的に示す。図9(a)に示すように、金属粒子と比べてセラミックス粒子の粒径が非常に小さい場合、セラミックス粒子が金属粒子の周囲を囲むことで金属粒子同士の接合を阻害する。また、遠心力混合粉末法では、金属粒子間の空隙を充填したセラミックス粒子が、金属溶湯の含浸を阻害してしまう。そのため、AlN粒子の粒径が3μmの場合は、全面で接合するには至らなかったと考えられる。
一方、図9(b)に示すように、セラミックス粒子と金属粒子の粒径差が小さい場合には,金属粒子同士の接触面積が大きくなるため、セラミックス粒子と金属粒子の粒径差が大きい場合に比べて、金属粒子同士の良好な接合状態が得られる。加えて、金属粒子間の空隙がセラミックス粒子によって充填されていないため、金属溶湯の含浸が容易である。したがって、全面で接合するためには、セラミックス粒子と金属粒子の粒径差が小さいことが望ましく、混合粉末に使用するAlN粒子としてAl粒子と同程度の粒径を有するAlN粒子が適している。
【実施例1】
【0040】
図10にAlN粒子が分散したAl母相の拡大図を示す。ここで、図10(a)は混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図10(b)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで1時間保持、図10(c)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が20vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図10(d)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図10(e)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径150-212μmで保持時間なしの条件で鋳造し、その後、炉冷にて製造した。図に示す様に、何れの試料においても、AlN粒子を取りまく形でAlは存在しており、界面に反応や隙間は存在していない。また、Al母相においても巣は認められず、遠心鋳造を行うことにより、密な組織の接合体が製造できることがわかった。
【実施例1】
【0041】
この傾斜層におけるAlN粒子の体積分率を界面からの距離で示したものが図11である。図11(a)は、混合粉末厚さが2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図11(b)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで1時間保持、図11(c)は混合粉末厚さ2mm、AlN粒子の体積分率が20vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図11(d)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径75-150μmで保持時間なし、図11(e)は混合粉末厚さ4mm、AlN粒子の体積分率が30vol%、AlN粒子の粒径150-212μmで保持時間なし、の条件の結果であり、横軸は規格化した位置を示している。混合粉末厚さが2mmの試料においてはAl母相中にAlN粒子が分散した傾斜層の厚さは約3mm、混合粉末厚さが4mm、AlN粒子の粒径75-150μmの試料においてはAl母相中にAlN粒子が分散した傾斜層の厚さは約10mm、混合粉末厚さが4mm、AlN粒子の粒径150-212μmの試料においてはAl母相中にAlN粒子が分散した傾斜層の厚さは約6mmであった。また、傾斜層におけるAlN粒子の体積分率は20%ないし40%であり、これら傾斜層の厚さおよびAlN粒子の体積分率は、混合粉末の量、混合粉末中のAlN粒子の体積分率、AlN粒子の粒径を調整することで制御できる。
【実施例1】
【0042】
さらに、AlNの密度は、表1に示す様に3.39Mg/m、700℃におけるAl溶湯の密度は2.35Mg/mであるため、遠心鋳造中、AlN粒子は遠心力場での沈降が生じ、傾斜層において連続的な組成傾斜を形成することが可能である。ストークスの定理を遠心力場においても適応できる形に変換し、660℃および700℃のAl溶湯中のAlN粒子の移動速度dx/dtを数1により計算した。
【実施例1】
【0043】
【数1】
JP2017128473A_000003t.gif

ここで、ρ、ρ、g、DおよびηはそれぞれAlN粒子の密度,Al溶湯の密度、重力、AlN粒子の粒子径および見かけの粘性である。重力倍数は84Gあるいは42G、溶湯の粘度は660℃の場合には1.38×10—3Pa・s、700℃の場合には1.29×10—3Pa・sとして計算した結果を図13に示す。図のように、AlN粒子は遠心力印加場でAl溶湯中、遠心力方向に移動し、その速度は粒径の大きな粒子ほど速い。また、溶湯温度を高くすることにより粘性が下がるために移動速度は速くなり、また、重力倍数を大きくすると移動速度は速くなる。
【実施例1】
【0044】
【表1】
JP2017128473A_000004t.gif
【実施例1】
【0045】
さらに、サスペンジョン化したAl溶湯の見かけの粘性ηは、Al溶湯固有の粘性をη、サスペンジョン中のAlN粒子の体積分率をV、最大にAlN粒子が充填したとき体積分率をVmaxとしたとき、数2の如く、
【実施例1】
【0046】
【数2】
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サスペンジョン粒子の体積分率によっても影響を受けるので、これらの式を考慮し、AlN粒子の沈降移動速度が予測でき、傾斜層における組成傾斜の度合いを制御できる。
【実施例1】
【0047】
なお、上記実施例では、セラミックスとしてAlN、金属としてAlを用いた。しかし、AlNを例えばAl、TiO、SiO、ZrO、MgO、TiC、SiC、TiN、あるいはSiなど他のセラミックス、Si、GaAs、GaN、GaNなどの半導体あるいはNiAl、NiAl、NiAl、TiAl、TiAlあるいはTiAlの様な金属間化合物に変えても同等な効果を得ることができる。また、AlをMg、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Znあるいはこれらの合金などに変えても同等な効果を得ることができる。重要なことは、セラミックス粒子と金属粒子とからなる混合粉末に遠心力場で溶融金属を注入し、これにより得られる傾斜層を介してセラミックスと金属とを接合する点にある。
【実施例1】
【0048】
本発明は、電子部品、自動車用部品、航空機用部品、宇宙用部品、船舶用部品、産業機械部品、電気機器部品、建築部品および各種金型などに用いられているセラミックスと金属との接合体製造に利用できる。
【実施例1】
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。加えて、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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