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明細書 :熱電変換用高分子膜、その製造方法、及び熱電変換素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-181680 (P2016-181680A)
公開日 平成28年10月13日(2016.10.13)
発明の名称または考案の名称 熱電変換用高分子膜、その製造方法、及び熱電変換素子
国際特許分類 H01L  35/24        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
C08L  65/00        (2006.01)
C08J   5/22        (2006.01)
C08L  25/18        (2006.01)
FI H01L 35/24
H01L 35/34
C08L 65/00
C08J 5/22
C08L 25/18
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2016-009084 (P2016-009084)
出願日 平成28年1月20日(2016.1.20)
優先権出願番号 2015060234
優先日 平成27年3月24日(2015.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】岸 直希
【氏名】近藤 雄哉
【氏名】國枝 泰希
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4F071
4J002
Fターム 4F071AA22
4F071AA51
4F071AA69
4F071AC14
4F071AE10
4F071AF37
4F071AG28
4F071AH15
4F071FA08
4F071FB02
4F071FC04
4F071FD03
4J002BC12X
4J002CE00W
4J002CH023
4J002EV256
4J002FD313
4J002FD316
4J002GQ02
要約 【課題】様々な基板上に形成可能、かつ高い熱電特性を有する高分子膜からなる熱電変換材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)からなる熱電変換用高分子膜であり、界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)水分散液を用い、基板上に界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)の膜を形成し、その後加熱処理を行うことを特徴とする。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)からなる熱電変換用高分子膜。
【請求項2】
界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)水分散液を用い、基板上に前記界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)の膜を形成し、その後加熱処理を行うことを特徴とする熱電変換用高分子膜の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が陰イオン界面活性剤または非イオン性界面活性剤である、請求項2に記載の熱電変換用高分子膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1の高分子膜、または、請求項2もしくは請求項3に記載の製造方法により得られた高分子膜を用いた熱電変換素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子膜からなる熱電変換材料の製造方法に関し、特に、界面活性剤を含む高分子材料を用いた熱電変換用高分子膜、その製造方法、及び熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電発電は、クリーンなエネルギー源として期待されている。これまで熱電変換材料としては、テルル化ビスマスをはじめとする無機材料を対象とし活発に研究が行われてきた。
【0003】
一方で、近年、新たな熱電変換材料として導電性高分子をはじめとする有機系材料が注目されている。特にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、「PEDOT:PSS」と言う)は、高分子材料の中でも高い導電性、高いゼーベック係数を示すことが知られており、有機系熱電変換材料として期待されている。またPEDOT: PSSは、スピンコートやディップコートなどのPEDOT:PSS水分散液を用いた湿式プロセスによる簡易な薄膜形成が可能であり、低コストプロセスによる熱電変換素子作製が期待されている。
【0004】
しかしながら従来の無機熱電変換材料と比べ、その導電性やゼーベック係数が低く、熱電特性の改善のためにそれらを向上させる技術が求められていた。このような背景のもと、 PEDOT:PSSに添加材料を複合することによる熱電特性の向上が試みられている。非特許文 献1では、PEDOT:PSSにジメチルスルホオキシド(以下、「DMSO」と言う)を添加することにより、ゼーベック係数は維持しながらその導電性を向上させ、熱電性能指数が0.42と高い値が実現できることが報告されている。また特許文献1では、PEDOT:PSSにエチレングリコール(以下、「EG」と言う)を複合化することによっても同様にPEODT:PSSの熱電性能指数の向上が期待できることが報告されている。
【0005】
スピンコート法やディップコート法などのPEDOT:PSS水分散液を用いた湿式プロセスによるPEDOT:PSS薄膜形成においては、基板の種類によっては均一なPEDOT:PSS薄膜を得ることが困難であった。この原因として、PEDOT:PSS水分散液の基板に対する濡れ性が低いことが挙げられる。そのため、PEDOT:PSS水分散液の種々の基板への濡れ性の改善を同時に満 たす熱電特性の改善手法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】G. H. Kim et al., “Engineered doping of organic semiconductors for enhanced thermoelectric efficiency”Nature Materials, 12 (2013) 719-723, Macmillan publishers
【0007】

【特許文献1】特開2013-168463公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、様々な基板上に形成可能、かつ高い熱電特性を有する高分子膜からなる熱電変換材料とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、種々の基板に対し高い濡れ性を有するPEDOT:PSS 水分散液を用いた湿式プロセスによるPEDOT:PSS熱電変換材料の製造方法を創案した。すなわち、高い濡れ性を有するPEDOT:PSS水分散液として、界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液を用いることにより、種々の基板への均一成膜だけでなく熱電特性も改善できることを見出した。
【0010】
[1]界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)からなる熱電変換用高分子膜。
[2] 界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)水分散液を用いて、基板上に前記界面活性剤を含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)の膜を形成し、その後加熱処理を行う、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)からなる熱電変換用高分子膜の製造方法。
【0011】
[3]前記界面活性剤が陰イオン界面活性剤または非イオン性界面活性剤である、前記[2] に記載の熱電変換用高分子膜の製造方法。
【0012】
[4]前記[1]の高分子膜、または、前記[2]もしくは前記[3]に記載の製造方法により得られた高分子膜を用いた熱電変換素子。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施例で作製したPEDOT:PSS水分散液、及び界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液の各種基板に対する接触角を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例の濃度/パワーファクターを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0015】
(界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液の作製)
界面活性剤水溶液を作製する。界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤または非イオン性界面活性剤が好ましい。陰イオン性界面活性剤としてはスルホン酸塩または硫酸エステル塩が特に望ましい。非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル型が特に好ましい。界面活性剤水溶液の濃度は1~60重量%が好ましく、35~45重量%が特に好ましい(図2参照)。PEDOT:PSS水分散液に前記の界面活性剤水溶液を混合し、界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液を作製する。

【0016】
(界面活性剤を含むPEDOT:PSS熱電変換材料の作製)
前記の界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液を用い基板上に界面活性剤を含むPEDOT:PSS膜を湿式プロセスにより形成する。基板としては、ガラス、合成樹脂、紙、布が挙げられる。このうち合成樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と言う)やポリエチレンナフタレートが良い。湿式プロセスとしてはスピンコート法、ディップコート法、スプレー法、ドロップキャスト法、印刷法、インクジェット法が挙げられる。成膜後、基板を加熱して、膜中に含まれる水分の除去、およびPEDOT:PSSの結晶化を促進する。加熱温度は80℃~250℃が好ましい。加熱処理を行う雰囲気としては空気中、あるいは窒素中が好ましい。

【0017】
(熱電変換素子の作製)
前記熱電変換材料を用いた熱電変換素子の作製プロセスとして、2つ挙げられる。
まず作製プロセス1として、電極をパターニングした基板上に前記の界面活性剤を含むPEDOT: PSS熱電変換材料をパターニング形成する手法が挙げられる。
作製プロセス2としては、基板上に前記の界面活性剤を含むPEDOT:PSS熱電変換材料をパターニング形成した後、パターニングした電極を形成する方法が挙げられる。
電極材料としては、金、銀、銅、チタン、アルミニウム、ニッケル、炭素を含む単層または積層した膜が挙げられる。電極のパターニング手法としては、パターンが加工された金属マスクを用いたパターニング、フォトリソグラフィー、印刷法、インクジェット法が挙げられる。前記熱電変換材料のパターニング手法としては、印刷法、インクジェット法が挙げられ、また、自己組織化単分子膜を用いた分子テンプレートパターニングを施した基板上にスピンコート法、ディップコート法、スプレー法、ドロップキャスト法を行うことによっても可能である。
【実施例】
【0018】
(界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液の作製)
界面活性剤の水溶液を10重量%の濃度で作製した。界面活性剤として、スルホン酸塩の陰イオン性界面活性剤である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、「SDBS」と言う。和光純薬製)、硫酸エステル塩の陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(以下、「SDS」と言う。東京化成製)、またエーテル型の非イオン性界面活性剤であるTriton X(シグマアルドリッチ製)を用いた。PEDOT:PSS水分散液(Heraeus社PH 510)と前記界面活性剤水溶液を体積比で20:1の割合で混合し、界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液を作製した。
【実施例】
【0019】
(濡れ性評価)
界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液の基板に対する濡れ性を、基板上に滴下した界面活性剤を含むPEDOT:PSS水分散液の接触角を測定することにより評価した。基板にはホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、PETを用いた。比較として、非特許文献1、特許文献1にて報告されている添加材料であるDMSO、EGを複合化したPEDOT:PSS水分散液の接触角も評価した。DMSO、EGのPEDOT:PSSに対する割合は、体積比でPEDOT:PSS水分散液20に対しDMSOまたはEGを1とした。図1にPEDOT:PSS水分散液、またDMSO、EG、SDS、SDBS、Triton Xを含むPEODT:PSS水分散液のホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、PET基板に対する接触角を示す。ソーダライムガラス基板では、全てのPEDOT:PSS水分散液において接触角が小さい値であるが、ホウケイ酸ガラス、PET基板に対しては添加材料なしのPEDOT:PSS、DMSO添加あるいはEG添加の複合化PEDOT:PSSにおいては接触角が大きくなり、濡れ性が低いことが確認された。一方でSDS、SDBS、Triton Xを複合化したPEDOT:PSSにおいては、全ての基板に対し接触角が小さく、濡れ性が高いことが確認できた。
【実施例】
【0020】
(成膜性の評価)
添加材料を複合化していないPEDOT:PSS水分散液、またSDSを複合化したPEDOT:PSS水分散液をホウケイ酸ガラス基板上(2cm×2cm)にスピンコートを行い、成膜性における界面活性剤の効果を評価した。スピンコートの回転数は1500rpmとした。添加材料を複合していないPEDOT:PSSでは、基板上に局所的に0.5mm以下のPEDOT:PSS片が確認され均一な薄膜は得られなかった。一方でSDSを複合したPEDOT:PSSにおいては、基板全面に薄膜が形成された。添加材料を複合化していないPEDOT:PSS、SDSを複合したPEDOT:PSSのホウケイ酸ガラス基板に対する接触角がそれぞれ60度、31度であることからも、基板上に薄膜が形成されるか否かは濡れ性に依存することが確認できた。
以上からすべての基板に対し濡れ性の高いSDS、SDBS、およびTriton Xを添加したPEDOT:PSS水分散液の成膜性は基板によらず高いことがわかる。
【実施例】
【0021】
(界面活性剤を含むPEDOT:PSS熱電変換材料及び熱電変換素子の作製)
チタン/金の積層膜からなる電極がパターニングされたソーダライムガラス基板上に、前述のSDS、SDBSまたはTriton Xを含むPEDOT:PSSを滴下し、回転数1500rpmでスピンコートすることにより、SDS、SDBSまたはTriton Xを含むPEDOT:PSS薄膜を作製した。その後、試料を200℃で5分間、空気中で熱処理した。
【実施例】
【0022】
(熱電特性評価)
前記試料の室温におけるゼーベック係数、および四探針法を用いて導電率の評価を行った。表1にそれらの値をまとめた。SDS、SDBSを複合した試料においては、界面活性剤を添加していないPEDOT:PSSよりもわずかに低いゼーベック係数が確認された。一方で導電率に関しては、SDS、SDBS、あるいはTriton Xを添加することにより大きく改善し、特にSDBSの導入により2桁以上の増加が見られた。次に、熱電材料の性能指標であるパワーファクターを求めた。パワーファクターは以下の式1により求められる。
【実施例】
【0023】
【数1】
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SDS、SDBS、あるいはTriton Xの添加でゼーベック係数が若干の減少が見られるが、導電率が大きく増加するため、パワーファクターについても大幅な改善が確認された。特にSDBSの導入により2桁以上大きいパワーファクターが得られた。図2にパワーファクターの界面活性剤水溶液濃度依存性を示す。界面活性剤としてSDSを用いた。パワーファクターは界面活性剤濃度に依存することがわかり、40重量%の水溶液を用いた場合において最大の値が得られた。
【実施例】
【0024】
【表1】
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【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の製造方法により得られる高分子膜は、熱電変換素子に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1