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明細書 :単核ニッケル錯体、それを用いた水素製造法、センサー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-132692 (P2017-132692A)
公開日 平成29年8月3日(2017.8.3)
発明の名称または考案の名称 単核ニッケル錯体、それを用いた水素製造法、センサー
国際特許分類 C07F   9/58        (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
G01N  27/333       (2006.01)
C25B  11/06        (2006.01)
C25B   1/04        (2006.01)
B01J  31/24        (2006.01)
C07F  15/04        (2006.01)
FI C07F 9/58 B
G01N 27/416 311H
G01N 27/333 331E
C25B 11/06 A
C25B 1/04
B01J 31/24 M
C07F 15/04
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2016-011449 (P2016-011449)
出願日 平成28年1月25日(2016.1.25)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】猪股智彦
【氏名】小澤智宏
【氏名】増田秀樹
【氏名】立松涼
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
4H050
4K011
4K021
Fターム 4G169AA06
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE06A
4G169BE13A
4G169BE13B
4G169BE14A
4G169BE14B
4G169BE18A
4G169BE20A
4G169BE22A
4G169BE26A
4G169BE27B
4G169BE33A
4G169BE34A
4G169BE34B
4G169BE35A
4G169BE35B
4G169BE37A
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB81
4G169CD08
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4H050AB80
4H050WB14
4H050WB16
4H050WB21
4K011AA24
4K011AA25
4K011AA50
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB03
4K021DA13
4K021DA15
4K021DC03
要約 【課題】水素生成反応を促進する触媒。
【解決手段】下式で示される単核ニッケル錯体。前記単核ニッケル錯体を用いて、媒媒として、水素を製造する方法及び水素を検出するセンサー。
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(R、R及びRは夫々独立にH、C1~10の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖/分岐アルキル基、C1~10のアルコキシアルキル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基又はピリジル基(9個の基等);R~Rは夫々独立に、H、C1~10の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖/分岐アルキル基、C1~10のアルコキシアルキル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基又はハロゲニル基(F,Cl,Br,I);Xは対アニオンであり、ClO、PF、NO、OTsやOTf等のスルホン酸誘導体又はBFやB(C等のホウ酸誘導体)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の化1の一般式で示される、プロトン供与部位を配位子内に有する単核ニッケル錯体。
【化1】
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化1中、RとRとRは、それぞれ独立に、H、
炭素数1~10の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖および分岐アルキル基、
炭素数1~10のアルコキシアルキル基、
フェニル基、トリル基、ベンジル基、ピリジル基(9個の基等)から任意に3つを選定する。
~Rは、それぞれ独立に、H、
炭素数1~10の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖および分岐アルキル基、
炭素数1~10のアルコキシアルキル基、
アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲニル基(F,Cl,Br,I)から(8個の基等から)任意に3つを選定する。
Xは対アニオンであり、ClO、PF、NO、OTsやOTfなどのスルホン酸誘導体、BFやB(Cなどのホウ酸誘導体を表わす。
【請求項2】
請求項1の単核ニッケル錯体を触媒とした水素製造法。
【請求項3】
請求項1の単核ニッケル錯体を用いた水素を検出するセンサー。




発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成反応を促進する酵素ヒドロゲナーゼの活性中心構造をモデルとした、プロトン供与部位を配位子内に有する単核ニッケル(II)錯体の製造法及び、それを触媒とした水素製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素燃料は燃焼過程において水蒸気のみを生成するクリーンなエネルギー源として注目されており、水素自動車や航空機燃料、また工業的なアンモニアやメタノール合成時の原料として幅広く普及し利用されている。化石燃料の燃焼に伴って排出される温室効果ガス、大量消費によるエネルギー資源の枯渇などが重大な社会問題となる現代において、水素は環境問題の解決に大きく貢献する次世代の代替エネルギーとして期待を集めている。
【0003】
水素燃料の工業的製造方法は水蒸気改質が利用され、反応条件に高温高圧条件が必要となることから、環境への負荷やそれに伴う二酸化炭素の排出が問題視されている。そこで水素を常温常圧で製造できる触媒の開発が求められている。
【0004】
水素燃料の工業的な水素製造法としては、水蒸気改質法の他に水の電解による水素製造法が挙げられる。主な水電解技術としては、アルカリ水電解、固体高分子水電解、高温水電解に大別される。
【0005】
一方、自然界では、嫌気性細菌である硫酸還元菌や大腸菌などの多くの微生物において水素生成能を有することが知られている。その働きを司る因子はヒドロゲナーゼと呼ばれる酵素分子であり、活性中心構造内に存在するプロトン捕捉部位が触媒反応を促進していると考えられている(非特許文献1)。特許文献1では常温、中性条件におけるヒドロゲナーゼ自身を用いた水素製造方法が報告されている(特許文献1)。しかし酵素自身を用いる場合には、その培養が必須であること、酵素自身が不安定であることなどの理由から大規模なスケールでの製造は困難である。
【0006】
そこで、酵素と同様の機能を持つ金属錯体触媒の開発が注目を集めている。ヒドロゲナーゼの構造・機能を一部模倣し、同様の機能を持つよう設計・合成された人工分子を用いることで、酵素を用いる際の問題点が解決され、高効率な水素製造法の確立が期待される。
【0007】
非特許論文2においてプロトン捕捉部位のペンダントアミンを置換基として配位子内に導入した単核ニッケル(II)錯体が報告されている。プロトン源としてアセトニトリル中で酸解離定数6.1を示す強酸を用いており、電気化学的測定法によって優れた水素生成能を確認したものである(非特許文献2)。これはヒドロゲナーゼ骨格に導入されているプロトン捕捉部位を模倣した金属錯体が、水素製造の触媒として機能する可能性を示したものである。
【0008】
従来の水電解技術では、強アルカリ電解質の利用や強酸性条件での触媒の使用、貴金属などの高価な触媒電極の使用、高温条件下での使用などの問題点があった。また金属錯体触媒では強アルカリ・強酸性条件下では、触媒が分解してしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2010-193806公報
【特許文献2】特開2012-167045公報
【0010】

【非特許文献1】J.C.Fontecilla-Camps,A.Volbeda,C.Cavazza,Y.Nicolet,Chemical Reviews誌,2007年,107巻,4273頁.
【非特許文献2】M.L.Helm,M.P.Stewart,R.M.Bullock,M.RakowskiDuBois,D.L.DuBois,Science誌,2011年,333巻,863頁.
【非特許文献3】T.Kitagawa,T.Inomata,Y.Funahashi,T.Ozawa,H.Masuda,Chemical Communications誌,2013年,49巻,2013,10184頁.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、電気化学的水素製造法において、従来の貴金属を用いる高価な触媒に代えて、ニッケルを中心金属とした安価な金属錯体触媒を提供することである。また、金属錯体触媒の寿命を延ばすため、プロトン原として酸性度の低い水を使用できる製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を踏まえて鋭意検討した結果、配位子内に1級または2級アミンを有する単核ニッケル(II)錯体を設計・開発するに至った。配位子内にプロトン供与部位を導入することによって弱酸を用いての水素製造が可能となり、アミンの水素原子との水素結合によって反応中間体であるヒドリド種の安定化が期待される。電気化学的手法によって水素生成能について検討したところ、プロトン源に弱酸を用いた際の触媒回転数は8000回を上回り、高効率な水素製造を担う触媒として作用していることが証明された。このように、配位子内にプロトン供与部位を導入した錯体を用いることで、弱酸条件下での高効率な触媒反応を実現する。
すなわち、本発明は1分子内に、一般式(I)で表わされる構造を有する人工分子である。
【化1】
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化1中、RとRとRは、それぞれ独立に、H、炭素数1~10の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖および分岐アルキル基、炭素数1~10のアルコキシアルキル基、
フェニル基、トリル基、ベンジル基、ピリジル基(9個の基等)から任意に3つを選定する。R~Rは、それぞれ独立に、H、炭素数1~10の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖および分岐アルキル基、炭素数1~10のアルコキシアルキル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲニル基(F,Cl,Br,I)から(8個の基等から)任意に3つを選定する。Xは対アニオンであり、ClO、PF、NO、OTsやOTfなどのスルホン酸誘導体、BFやB(Cなどのホウ酸誘導体を表わす。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気化学的手法による水素製造の触媒として、単核ニッケル(II)錯体を使用することができる。従来の高価な貴金属を使用しなくて済む。例えば、貴金属として通常用いられている白金の価格は、ニッケルの価格の3000倍程度と言われている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)の結晶構造を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化15、[NiL2](BF)の結晶構造を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)の電気化学的水素製造の結果を示した説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化15、[NiL2](BF)の電気化学的水素製造の結果を示した説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)とイオン液体1の修飾電極の作製法を示した説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態により得られたイオン液体1を修飾金電極に固定化された単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)の電気化学的水素製造の結果を示した説明図である。
【図7】電気化学的水素製造のモデルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態および実施例について説明する。本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0016】
(第1実施形態)
まずは単核ニッケル(II)錯体の製造法について説明する。本実施形態は1分子内に、化1で表される構造を有する化合物(以下、触媒)である。
化1中、RとRとRは、それぞれ独立に、H、炭素数1~10の直鎖または/および分岐アルキル基、炭素数1~10のアルコキシアルキル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、ピリジル基を表す。R~Rは、それぞれ独立に、H、炭素数1~10の直鎖または/および分岐アルキル基、炭素数1~10のアルコキシアルキル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲニル基(F,Cl,Br,I)を表す。Xは対アニオンであり、ClO、PF、NO、OTsやOTfなどのスルホン酸誘導体、BFやB(Cなどのホウ酸誘導体を表わす。

【0017】
上記の条件を満足する化1で表される触媒として、錯体の配位子内に1級または2級アミンを有するものが好ましい。なお、一般式である化1で表される触媒は、これらに限定されるものではない。
具体的には、化2~化27で示される触媒がある。
【化2】
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化2は、R~Rはフェニル基、R~RはH、XはBFである。
【化3】
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化3は、R~Rはピリジル基、R~RはH、XはBFである。
【化4】
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化4は、R~Rはイソプロピル基、R~RはH、XはBFである。
【化5】
JP2017132692A_000006t.gif

化5は、R~Rはターシャリーブチル基、R~RはH、XはBFである。
【化6】
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化6は、R~Rはベンジル基、R~RはH、XはBFである。
【化7】
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化7は、R~Rはフェニル基、RおよびR~RはH、Rはメチル基、XはBFである。
【化8】
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化8は、R~Rはフェニル基、R~R4およびRはH、R5はニトロ基、XはBFである。
【化9】
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化9は、R~Rはフェニル基、R~R4およびRはH、R5はブロモ基、XはBFである。
【化10】
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化10は、R~Rはフェニル基、RおよびR5はブロモ基、RおよびRはH、XはBFである。
【化11】
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化11は、R~Rはフェニル基、RおよびR5はクロロ基、RおよびRはH、XはBFである。
【化12】
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化12は、R~Rはフェニル基、Rはニトロ基、R~RはH、XはBFである。
【化13】
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化13は、R~Rはピリジル基、R~RはH、XはClOである。
【化14】
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化14は、R~Rはピリジル基、R~RはH、XはOTsである。
【化15】
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化15は、R~Rはフェニル基、R~R5はH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化16】
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化16は、R~Rはピリジル基、R~R5はH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化17】
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化17は、R~Rはイソプロピル基、R~RはH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化18】
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化18は、R~Rはターシャリーブチル基、R~RはH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化19】
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化19は、R~Rはベンジル基、R~RはH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化20】
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化20は、R~Rはフェニル基、RおよびRはH、Rはメチル基、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化21】
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化21は、R~Rはフェニル基、R~R4はH、R5はニトロ基、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化22】
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化22は、R~Rはフェニル基、R~R4はH、R5はブロモ基、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化23】
JP2017132692A_000024t.gif

化23は、R~Rはフェニル基、RおよびR5はブロモ基、RはH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化24】
JP2017132692A_000025t.gif

化24は、R~Rはフェニル基、RおよびR5はクロロ基、RはH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化25】
JP2017132692A_000026t.gif

化25は、R~Rはフェニル基、Rはニトロ基、R4~R5はH、Rはネオペンチル基、XはBFである。
【化26】
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化26は、R~Rはピリジル基、R~R5はH、Rはネオペンチル基、XはClOである。
【化27】
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化27は、R~Rはピリジル基、R~R5はH、Rはネオペンチル基、XはOTsである。

【0018】
本実施形態の触媒の合成方法について説明する。本実施形態の触媒は配位子Lを用いて表すと[NiL](X)と表されるものである。
まず、配位子Lにニッケル(II)誘導体を反応させる方法が好ましく用いられる。配位子Lとしては、化28に示すように、中心金属(例えばニッケル)に対して2座配位を強制できるものが好適に用いられる。
【化28】
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【0019】
反応溶媒としては一般的な有機溶媒を用いることができ、好ましくは酢酸エチル、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、メタノールが用いられる。
反応温度は特に限定されないが、反応を進行させるには加温が好ましく、30℃~70℃の範囲で行うことが特に好ましい。加温についてはオイルバス、ウォーターバス、ホットプレート等を使用することができる。
反応時間は特に限定されないが、通常1日~1週間、好ましくは3日から5日間であり、反応温度によって時間を変更することが望ましい。

【0020】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
実施例1は、第1実施形態に対応する実施例である。次の示すような方法で配位子L1を合成した。
以下の操作はすべてアルゴン雰囲気下で行った。テトラヒドロフラン30mLにpotassium tert-butoxide1.68g(15.0mmol)を溶解させ、diphenylphosphine0.93g(5.0mmol)を加え30分攪拌した。その後、N-(6-(bromomethyl)pyridine-2-yl)pivalamide1.35g(5.0mmol)を溶解させたテトラヒドロフラン溶液20mLを滴下しながら加え、3日間攪拌した。減圧濃縮後、ジクロロメタン50mLに溶解させ、蒸留水50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで有機相を脱水した。有機相の溶媒を減圧濃縮によって除去したところ黄色油状物を得た。この油状物をメタノール100mLに溶解させ、水酸化カリウム11.1g(198.9mmol)を加え70℃で一週間攪拌した。減圧濃縮後、ジクロロメタン50mLに溶解させ、蒸留水50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで有機相を脱水した。有機相の溶媒を減圧濃縮によって除去することによって、目的物の白色粉末を得た。
収率62%.H-NMR(d/ppm vs.TMS in C,300MHz):3.48(s,2H,PyCHP),3.68(bs,2H,PyNH),5.75(d,1H,Py(3)),6.28(d,1H,Py(5)),6.89(t,1H,Py(4)),7.00-7.15(m,6H,Ph(2,4,6)),7.40-7.50(m,4H,Ph(3,5)).31P-NMR(d/ppm vs.80%HPO水溶液 in C,300MHz):-11.0(s,CHPPh).

【0021】
合成した配位子L1の構造を化29に示す。
【化29】
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【0022】
(実施例2)
実施例2は、第1実施形態に対応する実施例である。次の示すような方法で配位子L2を合成した。
以下の操作はすべてアルゴン雰囲気下で行った。テトラヒドロフラン30mLにpotassium tert-butoxide1.68g(15.0mmol)を溶解させ、diphenylphosphine0.93g(5.0mmol)を加え30分攪拌した。その後、N-(6-(bromomethyl)pyridine-2-yl)pivalamide1.35g(5.0mmol)を溶解させたテトラヒドロフラン溶液20mLを滴下しながら加え、3日間攪拌した。減圧濃縮後、ジクロロメタン50mLに溶解させ、蒸留水50mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで有機相を脱水した。有機相の溶媒を減圧濃縮によって除去したところ黄色油状物を得た。この油状物を水素化アルミニウムリチウム0.54g(13.8mmol)を懸濁させたジエチルエーテル溶液50mLに加えて、一晩間攪拌した。その後、反応溶液に水80mLを滴下して加え、セライト濾過によって沈殿物を除去した。濾液を酢酸エチル50mLで抽出し、無水硫酸ナトリウムで有機相を脱水した。有機相の溶媒を減圧濃縮によって、目的物の黄色油状物を得た。
収率85%.H-NMR(d/ppm vs. TMS in C,300MHz):0.77(s,9H,NHCH(CH),2.95(d,2H,NHCH(CH),3.54(s,2H,PyCHP),4.08(t,1H,PyNHCH),5.80(d,1H,Py(3)),6.34(d,1H,Py(5)),6.98(t,1H,Py(4)),7.02-7.10(m,6H,Ph(2,4,6)),7.49-7.55(m,4H,Ph(3,5)).31P-NMR(d/ppm vs.80%HPO水溶液 in C,300MHz):-11.7(s,CHPPh).

【0023】
合成した配位子L2の構造を化30に示す。
【化30】
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【0024】
(実施例3)
実施例3は、第1実施形態に対応する実施例である。次の示すような方法で単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)を合成した。
以下の操作はすべてアルゴン雰囲気下で行った。メタノール20mLにテトラフルオロホウ酸ニッケル(II)六水和物64mg(0.18mmol)を加え、配位子L1 109mg(0.37mmol)を溶解させたメタノール溶液10mLを滴下して加えた。1時間攪拌後、減圧濃縮によって溶媒を除去し、得られた橙色粉末をジクロロメタン10mLで洗浄した。その後、メタノールとジエチルエーテルを用いて再結晶操作を行い、橙色の板状結晶を得た。
収率42%, Elemental anal.Calcd.for C3738ONiB([NiL1](BF・MeOH):C,52.32,H,4.51,N,6.60.Found:C,52.41,H,4.53,N,6.83.Cyclic voltammetry:E1/2II/I=-0.81V vs.Fc/Fc,ΔE=70mV.E1/2I/0=-1.48V vs.Fc/Fc,ΔE=150mV.

【0025】
合成した単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)の構造およびX線構造解析により得られた結晶構造を化31に示す。
【化31】
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【0026】
図1は、本発明の第1実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)の結晶構造を示す説明図である。

【0027】
(実施例4)
実施例4は、第1実施形態に対応する実施例である。次の示すような方法で単核ニッケル(II)錯体(化15、[NiL2](BF)を合成した。
以下の操作はすべてアルゴン雰囲気下で行った。メタノール20mLにテトラフルオロホウ酸ニッケル(II)六水和物64mg(0.18mmol)を加え、配位子L2 134mg(0.37mmol)を溶解させたメタノール溶液10mLを滴下して加えた。1時間攪拌後、減圧濃縮によって溶媒を除去し、得られた橙色粉末をジクロロメタン10mLで洗浄した。その後、アセトニトリルを用いて再結晶操作を行い、橙色の板状結晶を得た。
収率42%, Elemental anal.Calced for C4654NiP([NiL2](BF):C,57.72,H,5.69,N,5.85.Found:C,57.45,H,5.58,N,5.93.Cyclic voltammetry:E1/2II/I=-0.72V vs. Fc/Fc,ΔE=90mV.E1/2I/0=-1.46V vs. Fc/Fc,ΔE=120mV.

【0028】
合成した単核ニッケル(II)錯体(化15、[NiL2](BF)の構造およびX線構造解析により得られた結晶構造を化32に示す。
【化32】
JP2017132692A_000033t.gif



【0029】
図2は、本発明の第1実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化15、[NiL2](BF)の結晶構造を示す説明図である。

【0030】
(第2実施形態)
次に本第2実施形態として水素製造法について説明する。第1実施形態に対応する単核ニッケル(II)錯体について、酸条件下における電気化学的な水素製造方法が好ましく用いられる。

【0031】
単核ニッケル(II)錯体については、電解質溶液中に溶解する、あるいは作用電極1上に固定化する形で用いることができる。電解質溶液中に溶解する場合は、錯体の濃度は0.1mM~100mM、好ましくは1~10mMが用いられる。作用電極1上に固定化する場合は、物理吸着法、化学修飾法、担持体の利用など、様々な手法を用いることができる。好ましくは物理吸着法としてはカーボンペースト、化学修飾法としては自己組織化単分子膜法、担持体としてはイオン液体が用いられる。

【0032】
プロトン源としては酢酸、安息香酸、トリエチルアンモニウム等の弱酸が好ましい。
支持電解質としては一般的な支持塩を用いることができ、テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩(TBAP)、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロりん酸塩(TBAPF)が好ましく用いられる。

【0033】
作用電極1、参照電極3、対極5には一般的な電極を用いることができ、作用電極1としてはグラッシーカーボン電極、参照電極3としては銀/塩化銀電極、対極5としては白金電極が一般的に用いられるが、これらに限定されるものではない。特に対極5は化学的に安定かつ作用電極1に対して十分に大きな表面積を持つ材料であればよい。図7に、電気化学的水素製造のモデルを示す。

【0034】
測定溶媒としては、単核ニッケル(II)錯体を溶解させる場合は一般的な有機溶媒を用いることができ、好ましくはアセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等が用いられる。単核ニッケル(II)錯体を電極上に固定化する場合は、水および一般的な有機溶媒を用いることができ、好ましくは水が用いられる。

【0035】
測定温度は特に限定されないが、20℃~40℃の範囲で行うことが特に好ましい。

【0036】
(実施例5)
実施例5は、第2実施形態に対応する実施例である。次の示すような方法で水素製造を行った。
以下の操作はすべてアルゴン雰囲気下で行った。単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)を1mM、支持電解質としてTBAPを0.1Mに調整したアセトニトリル溶液を3mL用いて電気化学的測定を行った。作用電極1、参照電極3、対極5にはそれぞれグラッシーカーボン電極、銀/塩化銀電極、白金電極を用いた。掃引速度は0.7V/sで測定を行った。ここに酢酸を25μL加え挙動の変化を観測したところ、錯体のI/0の酸化還元電位から触媒電流が立ち上がり、約-2.5Vでその電流値が飽和した。これはプロトンの2電子還元によって水素が発生したことを示唆しており、非特許論文2を元に、実験値から触媒回転数(TOF)を算出したところ8000回を上回る値を示した。算出式を数1に示す(非特許文献2)。また、図3に電気化学的測定結果を示す。

【0037】
【数1】
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数1は、本発明の第2実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化2)の触媒回転数を求める算出式を示した説明図である。

【0038】
図3は、本発明の第2実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)の電気化学的水素製造の結果を示した説明図である。

【0039】
(実施例6)
実施例6は、第2実施形態に対応する実施例である。次の示すような方法で水素製造を行った。
以下の操作はすべてアルゴン雰囲気下で行った。単核ニッケル(II)錯体(化15、[NiL2](BF)を1mM、支持電解質としてTBAPを0.1Mに調整したアセトニトリル溶液を3mL用いて電気化学的測定を行った。作用電極1、参照電極3、対極5にはそれぞれグラッシーカーボン電極、銀/塩化銀電極、白金電極を用いた。掃引速度は0.5V/sで測定を行った。ここに酢酸を35μL加え挙動の変化を観測したところ、錯体のI/0の酸化還元電位から触媒電流が立ち上がり、約-2.5Vでその電流値が飽和した。これはプロトンの2電子還元によって水素が発生したことを示唆しており、非特許論文2を元に、実験値から触媒回転数(TOF)を算出したところ37000回を上回る値を示した。算出式を数1に示す(非特許論文2)。また、図4に電気化学的測定結果を示す。

【0040】
図4は、本発明の第2実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化15、[NiL2](BF)の電気化学的水素製造の結果を示した説明図である。

【0041】
(実施例7)
実施例7は、第2実施形態に対応する実施例である。次の示すような方法で水素製造を行った。電極表面へ修飾可能なイオン液体およびその修飾電極の作製法は特許文献2および非特許文献3を参考に行った。

【0042】
14mm角に切断した天然マイカを劈開により清浄面を露出させ、その上に真空蒸着法によりφ1mmのAu線(99.999%)を原料として厚さ200nmの金薄膜を析出させた。末端にジスルフィドを有する四級ホスホニウム型イオン液体(イオン液体1)を1mM含有するアセトニトリル溶液を調整し、この溶液中に上記の金薄膜を析出させた天然マイカを3日間浸漬させることでイオン液体1が修飾された金薄膜を得た。続いて、単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)を1mM含むアセトニトリル溶液に上記のイオン液体1が修飾された金薄膜を3日間浸漬させることで、金薄膜上に修飾されたイオン液体1の分子間に単核ニッケル(II)錯体(化2)が固定化された目的の金電極を得た。

【0043】
図5は、本発明の第2実施形態により得られた単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)とイオン液体1の修飾電極の作製法を示した説明図である。

【0044】
以下の操作はすべてアルゴン雰囲気下で行った。支持電解質としてNaClOを0.1M含有する水溶液を用いて電気化学的測定を行った。作用電極1、参照電極3、対極5にはそれぞれ上記で作製した単核ニッケル(II)錯体(化2)が固定化されたイオン液体修飾金電極、銀/塩化銀電極、白金電極を用いた。掃引速度は100mV/sで測定を行った。ここに酢酸を1μL加え挙動の変化を観測したところ、錯体のI/0の酸化還元電位から触媒電流が立ち上がり、約-1.18Vでその電流値が飽和した。これはプロトンの2電子還元によって水素が発生したことを示唆しており、非特許論文2を元に、実験値から触媒回転数(TOF)を算出したところ2700回を上回る値を示した。算出式を数1に示す(非特許論文2)。また、図6に電気化学的測定結果を示す。すなわちプロトン原として酸性度の低い水を使用できる。

【0045】
図6は、本発明の第2実施形態により得られたイオン液体1を修飾金電極に固定化された単核ニッケル(II)錯体(化2、[NiL1](BF・MeOH)の電気化学的水素製造の結果を示した説明図である。

【0046】
(第3実施形態)
触媒は酵素であるヒドロゲナーゼと同様、逆反応(水素の酸化による分解反応)を行うことも可能である。水素の分解反応は電気化学的に検出することが可能なため、触媒を電極上に固定化することで、水素センサーとしての応用も可能である
【産業上の利用可能性】
【0047】
プロトン供与部位を導入した配位子を用いて単核ニッケル(II)錯体を合成し、これを触媒とした電気化学的水素製造法を確立した点。
ヒドロゲナーゼから機能を抽出し模倣した単核ニッケル(II)錯体を合成した。配位子内に導入されたプロトン供与部位の効果によって、高効率な水素製造触媒としての利用が期待される。
【符号の説明】
【0048】
1 作用電極
3 参照電極
5 対極
7 電源
9 コントローラ
11 容器
13 溶液

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6