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明細書 :発泡金属用前駆体および発泡金属の製造方法、並びに前記製造方法で製造された発泡金属用前駆体および発泡金属

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5482658号 (P5482658)
登録日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発行日 平成26年5月7日(2014.5.7)
発明の名称または考案の名称 発泡金属用前駆体および発泡金属の製造方法、並びに前記製造方法で製造された発泡金属用前駆体および発泡金属
国際特許分類 C22C   1/08        (2006.01)
B22F   3/11        (2006.01)
B22F   7/04        (2006.01)
B23K  20/12        (2006.01)
FI C22C 1/08 B
B22F 3/11 A
B22F 7/04 E
B23K 20/12 364
請求項の数または発明の数 18
全頁数 12
出願番号 特願2010-528705 (P2010-528705)
出願日 平成21年8月28日(2009.8.28)
国際出願番号 PCT/JP2009/065097
国際公開番号 WO2010/029864
国際公開日 平成22年3月18日(2010.3.18)
優先権出願番号 2008235131
優先日 平成20年9月12日(2008.9.12)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月10日(2012.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
発明者または考案者 【氏名】半谷 禎彦
【氏名】宇都宮 登雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】河野 一夫
参考文献・文献 特開平11-302765(JP,A)
特開2003-119526(JP,A)
特開2004-285446(JP,A)
調査した分野 C22C 1/00 - 49/14
B22F 3/11
B22F 7/04
B23K 20/12
特許請求の範囲 【請求項1】
一の母材と他の母材との間に発泡剤を配置して重ね合わせる工程と、
前記重ね合せた一の母材と他の母材との一方の面に摩擦攪拌プロセシング(FSP)を行って前記一の母材と他の母材とを接合し、同時に前記発泡剤を前記一の母材と他の母材とに分散させる工程と、
を含む発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項2】
母材の表面に発泡剤を載置する工程と、
前記母材の表面に載置した発泡剤を、摩擦攪拌プロセシング(FSP)によって母材内部に分散させる工程と、
を含む発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記重ね合せた一の母材と他の母材との一方の面にFSPを行った後に、前記重ね合せた一の母材と他の母材との他方の面にFSPを行う請求項1に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記母材の発泡剤を載置した側の面にFSPを行った後に、前記母材の反対側の面にFSPを行う請求項2に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項5】
前記母材はチタニウム、鉄、純アルミニウム、またはアルミニウム合金である請求項1に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項6】
前記母材は純アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項2に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項7】
前記母材は純アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項3に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項8】
前記母材は純アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項4に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項9】
前記発泡剤は水素化チタンである請求項5に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項10】
前記発泡剤は水素化チタンである請求項6に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項11】
前記発泡剤は水素化チタンである請求項7に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項12】
前記発泡剤は水素化チタンである請求項8に記載の発泡金属用前駆体の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の製造方法で製造された発泡金属用前駆体を前記一および他の母材の融点近傍の温度に加熱して内部を発泡させる発泡金属の製造方法。
【請求項14】
請求項2に記載の製造方法で製造された発泡金属用前駆体を前記一および他の母材の融点近傍の温度に加熱して内部を発泡させる発泡金属の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の製造方法で製造された発泡金属用前駆体を前記一および他の母材の融点近傍の温度に加熱して内部を発泡させる発泡金属の製造方法。
【請求項16】
請求項12に記載の製造方法で製造された発泡金属用前駆体を前記一および他の母材の融点近傍の温度に加熱して内部を発泡させる発泡金属の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の製造方法で製造された発泡金属用前駆体。
【請求項18】
請求項2に記載の製造方法で製造された発泡金属用前駆体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡金属用前駆体および発泡金属の製造方法、並びに前記製造方法で製造された発泡金属用前駆体および発泡金属にかかり、特に、安定した品質を有する発泡金属用前駆体を低コストで容易に製造できる省エネルギープロセスである発泡金属用前駆体の製造方法、前記製造方法で製造された発泡金属用前駆体を用いる発泡金属の製造方法、およびこれらの製造方法で製造された発泡金属用前駆体および発泡金属に関する。
【背景技術】
【0002】
純アルミニウム、純チタニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタニウム-アルミニウム系合金、チタニウム合金、ニッケル-アルミニウム系合金、純鉄、純銅、鉄鋼材料、銅合金などの各種金属や合金を発泡させた発泡金属は、軽量であって比強度および耐食性が高く、リサイクルが容易な素材であり、衝撃吸収性や遮音性を有する。
【0003】
発泡性金属の主な用途としては、自動車、航空宇宙、鉄道車両、医療分野、建築部材、産業用機械部品などが考えられている。
【0004】
発泡金属の製造法の1つとして、アルミニウム合金などの母材中に発泡剤を混合して前駆体とし、この前駆体を加熱、発泡させるプリカーサ法がある(Banhart, J., Manufacture, characterization and application of cellular metals and metal foams. Progress in Materials Science, 2001. 46(6):p559-632)。
【0005】
プリカーサ法において前駆体を作成する方法としては、粉末法(Baumgartner, F., I. Duarte, and J. Banhart, Industrialization of powder compact foaming process. Advanced Engineering Materials, 2000. 2(4): Pp168-174、ドイツ特許出願公開第1048360号明細書、ドイツ特許出願公開第4103630号明細書)と圧延接合法(Kitazono, K., E. Sato, and K. Kuribayashi, Novel manufacturing process of closed-cell aluminum foam by accumulative roll-bonding. Scripta Materialia, 2004. 59(4): pp495-498、特許第3895292号公報)とがある。
【0006】
粉末法は、母材粉末と発泡剤粉末とを均一になるまで混合し、更に、得られた混合粉末に熱間押出や熱間圧延などの操作を施して前記混合粉末を固化させて前駆体とする方法である。
【0007】
また、圧延接合法は、母材の板材を複数用意し、前記板材に必要に応じて表面処理を施した後、前記板材の間に発泡剤を挟み、所定の圧下率、例えば50%で圧延し、これらの板材を接合する。そして前記圧延工程を繰り返して母材中に発泡剤を均一に分散させ、前駆体とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、粉末法は、母材の粉末の価格が一般に流通している板材などの材料と比較して高いこと、母材がアルミニウム合金の粉末である場合、粉末の表面に酸化皮膜が存在するから十分に緻密な前駆体を製造することが困難であること、混合粉末の調製や固化に長時間を有するから生産性が低いこと、混合粉末を固化させるときに大量のエネルギーが必要なため、エネルギー消費が大きいこと、混合粉末を調製する際に母材や発泡剤の粉末が周囲に四散しがちであり、作業環境の悪化が懸念されることなどの問題点がある。
【0009】
一方、圧延接合法は、安価な板材を使用でき、また既存の圧延設備を使用できるという長所はあるものの、圧延によって板材を接合するために、焼鈍や接合面の表面処理などの前処理が必要であること、圧延前後で熱処理が必要であり、エネルギー消費が大きいこと、発泡剤を均一に分散させるためには圧延を多数回繰り返す必要があること、圧延を繰り返すごとに圧延材を切断する必要があるなど、生産性向上を阻害する要因が多い。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、安定した品質を有する発泡金属用前駆体を低コストで容易に製造できる省エネルギープロセスである発泡金属用前駆体の製造方法、前記製造方法で製造された発泡金属用前駆体を用いる発泡金属の製造方法、およびこれらの製造方法で製造された発泡金属用前駆体および発泡金属を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、一の母材と他の母材との間に発泡剤を配置して重ね合わせる工程と、前記重ね合せた一の母材と他の母材との一方の面に摩擦攪拌プロセシング(FSP)を行って前記一の母材と他の母材とを接合し、同時に前記発泡剤を前記一の母材と他の母材とに分散させる工程と、を含むことを特徴とする発泡金属用前駆体の製造方法に関する。
【0012】
前記製造方法においては、発泡剤を間に挟持した状態で一の母材と他の母材とを重ね合わせ、重ね合わせたものの一方の面に、先端に突起を有する略円柱状の工具を軸線の周りに回転させつつ、前記工具の突起を設けた側の端部を押圧するFSPを行う。そして、FSPによって発生する摩擦熱で、前記一および他の母材を軟化させて塑性流動を生じさせ、母材同士を一体化させると同時に発泡剤を母材中に分散させ、前駆体を得る。
【0013】
本発明の第2の態様は、母材の表面に発泡剤を載置する工程と、前記母材の表面に載置した発泡剤を、摩擦攪拌プロセシング(FSP)によって母材内部に分散させる工程と、を含むことを特徴とする発泡金属用前駆体の製造方法に関する。
【0014】
前記製造方法においては、母材の表面に発泡剤を載置し、前記母材における発泡剤を載置下側の面に、先端に突起を有する略円柱状の工具を軸線の周りに回転させつつ、前記工具の突起を設けた側の端部を押圧するFSPを行う。そして、FSPによって発生する摩擦熱で、母材を軟化させて塑性流動を生じさせて発泡剤を母材中に分散させ、前駆体を得る。
【0015】
本発明の第3の態様は、第1の態様に係る発泡金属用前駆体の製造方法において、前記重ね合せた一の母材と他の母材との一方の面にFSPを行った後に、前記重ね合せた一の母材と他の母材との他方の面にFSPを行うものに関する。
【0016】
前記製造方法においては、一方の面にFSPを行うことにより、母材同士が一体化すると同時に発泡剤が母材中に分散する。そして、一方の面にFSPを行った後に他方の面にFSPを行うことにより、母材同士の一体化および発泡剤の母材内への分散が更に進行する。
【0017】
本発明の第4の態様は、第2の態様に係る発泡金属用前駆体の製造方法において、前記母材の発泡剤を載置した側の面にFSPを行った後に、前記母材の反対側の面にFSPを行うものに関する。
【0018】
前記製造方法においては、一方の面にFSPを行った後に他方の面にFSPを行うことにより、発泡剤の母材内への分散が更に進行する。
【0019】
本発明の第5の態様は、第1~第4の何れかの態様に係る発泡金属用前駆体の製造方法において、前記母材が純アルミニウムまたはアルミニウム合金であるものに関する。
【0020】
前記製造法においては、母材として純アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることにより、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とする前駆体が得られる。
【0021】
本発明の第6の態様は、第5の態様に係る発泡金属用前駆体の製造方法において、前記発泡剤が水素化チタンであるものに関する。
【0022】
前記製造方法によれば、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とし、発泡剤が水素化チタンである前駆体が得られる。
【0023】
本発明の第7の態様は、第1~第6の何れかの態様に係る製造方法で製造された発泡金属用前駆体を前記一および他の母材の融点近傍の温度に加熱して内部を発泡させる発泡金属の製造方法に関する。
【0024】
前記製造方法においては、母材中に発泡剤が分散した前駆体を融点近傍まで加熱することにより、母材が軟化すると同時に発泡剤が分解し、これによって前駆体の内部が発泡して発泡金属となる。
【0025】
本発明の第8の態様は、第1~第6の何れかの態様に係る製造方法で製造された発泡金属用前駆体に関する。
【0026】
前記第8の態様においては、第1の態様についての説明で述べたように、FSPによって発生する摩擦熱で、前記一および他の母材を軟化させて塑性流動を生じさせ、母材同士を一体化させると同時に発泡剤を母材中に分散させ、前駆体を得る
【0027】
本発明の第9の態様は、第8の態様に係る製造方法によって製造された発泡金属に関する。
【0028】
前記発泡金属は、第1~第6の何れかの態様に係る製造方法で製造された発泡金属用前駆体を前記一および他の母材の融点近傍の温度に加熱して内部を発泡させることによって製造された発泡金属である。
【発明の効果】
【0029】
第1の態様に係る製造方法においては、上述のように、FSPによって発生する摩擦熱で、前記一および他の母材を軟化させて塑性流動を生じさせ、母材同士と一体化させると同時に発泡剤を母材中に分散させ、前駆体としているから、第1の態様によれば、従来の粉末法や圧延法と比較して、安定した品質を有する発泡金属用前駆体を低コストで容易に製造でき、しかも省エネルギーであり、しかも、発泡剤が一の母材と他の母材との間に挟持されていることから、発泡剤が飛散することがなく、作業環境の悪化も少ない発泡金属用前駆体の製造方法が提供される。
【0030】
第2の態様に係る製造方法においては、上述のように、FSPによって発生する摩擦熱で母材を軟化させて塑性流動を生じさせ、発泡剤を母材中に分散させ、前駆体としているから、第2の態様によれば、従来の粉末法や圧延法と比較して、安定した品質を有する発泡金属用前駆体を低コストで容易に製造でき、しかも省エネルギーである発泡金属用前駆体の製造方法が提供される。
【0031】
第3の態様によれば、第1の態様に係る製造方法と比較して更に一および他の母材とが一体化しているとともに、発泡剤が更に均一に分散した発泡金属用前駆体が得られる発泡金属用前駆体の製造方法が提供される。
【0032】
第4の態様によれば、第2の態様に係る製造方法と比較して更に一および他の母材とが一体化しているとともに、発泡剤が更に均一に分散した発泡金属用前駆体が得られる発泡金属用前駆体の製造方法が提供される。
【0033】
第5の態様によれば、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とする前駆体を安定した品質で、しかもより少ないエネルギー消費で製造できる発泡金属用前駆体の製造方法が提供される。
【0034】
第6の態様によれば、純アルミニウムまたはアルミニウム合金を母材とし、水素化チタニウムを発泡剤とする前駆体を安定した品質で、しかもより少ないエネルギー消費で製造できる発泡金属用前駆体の製造方法が提供される。
【0035】
第7の態様によれば、第1の態様に係る製造方法によって製造された前駆体を加熱、発泡させて発泡金属を製造しているから、均一性の高い発泡金属の得られる発泡金属の製造方法が提供される。
【0036】
第8の態様によれば、従来の粉末法や圧延法で製造した前駆体と比較して、より品質が安定し、しかも安価な発泡金属用前駆体が提供される。
【0037】
第9の態様によれば、従来の粉末法や圧延法で製造した前駆体から製造された発泡金属と比較して、より品質が安定し、しかも安価な発泡金属が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の発泡金属用前駆体の製造方法において、2つの母材の間に発泡剤を挟んで積層するところを示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の発泡金属用前駆体の製造方法において、2つの母材の間に発泡剤を挟んで積層して形成された積層体を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の発泡金属用前駆体の製造方法で使用される母材に、発泡剤を収容するための溝または凹陥部を形成した例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す積層体に対してFSPを開始したところを示す斜視図である。
【図5】図5は、図2に示す積層体に対するFSPを行っているところを示す側面図である。
【図6】図6は、図2に示す積層体に対するFSPを行っているところを示す斜視図である。
【図7】図7は、積層体にFSPを行って形成された攪拌部の状態を示す概略断面図である。
【図8】図8は、本発明の発泡金属用前駆体の製造方法に使用される母材のうち、上面に発泡剤を収容する凹陥部が形成された形態のものを示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示す母材の凹陥部に発泡剤を充填したところを示す斜視図である。
【図10】図10は、図9に示す積層体に対してFSPを開始したところを示す斜視図である。
【図11】図11は、図9に示す積層体において第1回目のFSPを行っているところを示す斜視図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
1.実施形態1
以下、本発明の発泡金属用前駆体の製造方法の一例について図面を用いて説明する。
【0040】
先ず、図1に示すように、板状の母材1と同じく板状の母材2との間に発泡剤3を挟みこみ、図2に示すように母材1と母材2とを重ね合わせ、積層体7とする。図1に示す例では、母材1と比較して母材2が厚いが、母材1と母材2とは厚みが同一であってもよく、また、母材1のほうが母材2より厚くてもよい。
【0041】
更に、図1に示す例においては、下側に配置される母材2には発泡剤3を収容するための溝や凹陥部は設けられていないが、図3に示すように下側に配置される母材2に発泡剤3を収容するための溝2aまたは凹陥部2bを設けてもよい。
【0042】
次いで、図4および図5に示すように、円柱状の本体4bの先端に突起4aを設けた摩擦攪拌工具4を、矢印bで示すように所定の回転数で回転させつつ、矢印aで示すように積層体7の一方の面の一端に押圧し、矢印cで示すように積層体7の他端に向かって移動させる。なお、図5において実線は摩擦攪拌工具4の先端を積層体7に接触させた状態を、二点鎖線は積層体7に押圧して突起4aを貫入させた状態を示す。摩擦攪拌工具4が積層体7の他端に移動したところを図6に示す。
【0043】
なお、突起4aの高さは、一の母材の厚さよりも大きいことが好ましい。この場合、摩擦攪拌工具4を積層体7に押圧し、突起4aを貫入させた状態においては、図5において二点鎖線で示すように、突起4aが母材1を貫入して母材2に到達する。
【0044】
また、突起4aに螺旋を切ったり、長手方向または円周方向の溝を形成したりすれば、攪拌作用を高めることができる。
【0045】
更に、摩擦攪拌工具4を走査するときは、走査方向に沿って前進角を付与してもよく、動作方向に対して垂直に保持しつつ走査してもよい。
【0046】
摩擦攪拌工具4を軸線の回りに回転させつつ、積層体7に押圧させることにより、積層体7と摩擦攪拌工具4との間に摩擦熱が生じ、攪拌部6が形成される。攪拌部6においては、図7に示すように母材1と発泡剤3と母材2とが均一に混合される。そして、摩擦攪拌工具4が積層体7の他端に向かって移動することにより、攪拌部6が図6に示すように積層体7の他端に向かって形成される。このようにして前駆体10が形成される。なお、図7は、図6に示す積層体7を母材1および母材2の面に対して直交する面X-Xに沿って切断した断面を示す。
【0047】
摩擦攪拌工具4の直径が積層体7の幅、換言すれば母材1および母材2の幅と比較して小さく、積層体7のごく一部にしか攪拌部6が形成されないときは、摩擦攪拌工具4を、積層体7に押圧する位置をずらして積層体7の一端と他端との間を往復させるか、積層体7に押圧する位置をずらして積層体7の一端から他端に向かって移動させる操作を所定回数繰り返せばよい。
【0048】
最後に、このようにして形成された前駆体10を所定の温度に加熱して発泡剤3を分解し、前駆体10における攪拌部6を発泡させることにより、発泡金属が形成される。
【0049】
母材1および母材2としては、軽量性を重視する用途においてはアルミニウムおよびその合金、マグネシウムおよびその合金、チタンおよびその合金、具体的には、純アルミニウム、純チタニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、チタニウム-アルミニウム系合金、チタニウム合金、ニッケル-アルミニウム系合金が使用される。一方、触媒や吸着剤、吸音材、防振材などの用途においては、ニッケルおよびその合金、貴金属、亜鉛およびその合金、鉛およびその合金、錫およびその合金などが使用されるが、これらの金属や合金に限定されるものではない。
【0050】
発泡剤3としては、母材1および母材2に悪影響を与えないようなものであれば、特に制限はなく、具体的には、水素化チタン、水素化ジルコニウム、炭酸カルシウムなどの無機系発泡剤やアゾ化合物、ヒドラジン誘導体などの有機系発泡剤などが使用される。
【0051】
摩擦攪拌工具4は、円柱状の本体4bの先端面の中心部に突起が形成された形態であれば、突起4aの形状は特に限定されない。突起4aの形状としては、具体的には円柱、先端に向かって縮小する円錐、先端に向かって縮小する円錐台などがある。摩擦攪拌工具4を母材1または2に押圧する深さは、突起4aが実質的に母材1または2に埋没する程度が好ましい。
【0052】
前駆体10を発泡させる温度は、母材1および母材2の融点近傍が好ましい。
【0053】
摩擦攪拌工具4の回転速度は、500rpm~3000rpm程度が好ましいが、この範囲には特に限定はされない。
【0054】
以上、積層体7における母材1の側の面からFSPを行った例について説明したが、積層体7においては、前記面からFSPを行った後、母材2の側の面からFSPを行ってもよい。
【0055】
2.実施形態2
以下、本発明の発泡金属用前駆体の製造方法の別の例について図面を用いて説明する。
【0056】
図8に示すように、板状の母材2として、発泡剤3を収容するための凹陥部2bを中央部に形成した板状の部材を用意する。
【0057】
次いで、図9に示すように、母材2の凹陥部2bを発泡剤3で充填し、図10に示すように、摩擦攪拌工具4を矢印bで示すように所定の回転数で回転させつつ、矢印aで示すように母材2における発泡剤3を充填した部分の一端に押圧し、矢印cで示すように母材2の前記部分における他端に向かって移動させる。摩擦攪拌工具4については実施形態1のところで述べたとおりである。但し、突起4aの高さは、凹陥部2bの深さよりも大きく、母材2の凹陥部2bが形成された部分の厚さよりも小さいことが好ましい。なお、摩擦攪拌工具4が母材2の他端に移動したところを図11に示す。
【0058】
これにより、図7に示すような攪拌部が形成される。
【0059】
以上、母材2における発泡剤3を載置した側の面からFSPを行った例について説明したが、前記面からFSPを行った後、前記面とは反対側の面からFSPを行ってもよい。
【実施例】
【0060】
母材1および2として幅70mm×長さ200mmのA5083アルミニウム合金を用いた。母材1の厚さは3mm、母材2の厚さは6mmであった。発泡剤3としては水素化チタン(TiH2、粒径<45μm)を用いた。
【0061】
図1に示すように、発泡剤3は、母材2の上面中央部に母材2の長さ方向に沿って散布した。散布量は、FSPによって形成される攪拌部6のおよそ1質量%となるように設定した。母材2に発泡剤3を散布した後、母材2の上面に母材1を載置して積層体7とした。
【0062】
次いで、図4および図5に示すように、積層体7に大気中でFSPを行った。FSPには、日立エンジニアリング株式会社製のFSW装置を用いた。また、摩擦攪拌工具4としては、SKH51高速度工具鋼から製造された本体4bの直径が17mm、突起4aが円柱状で直径が6mm、突起4aの高さが4.8mmのものを用いた。摩擦攪拌工具4の回転速度は1400rpm、移動速度は100mm/min、前進角は3度に設定した。
【0063】
摩擦攪拌工具4の設定が終了したら、摩擦攪拌工具4を、母材2における発泡剤3を散布した部分の直上部を走査した。次に、突起4aの直径分だけ積層体7の長さ方向の一方の側縁に向かってずらして走査し、最後に突起4aの直径分だけ積層体7の長さ方向の一方の側縁に向かってずらして走査し、合計3パスの走査を行った。その結果、積層体7の中央部に長さ方向に沿って突起4aの直径の約3倍の幅の攪拌部6を有する前駆体10が形成された。
【0064】
最後に、前駆体10における攪拌部6から一辺が6mmの立方体を切り取って電気炉に装入し、0.5K/sの昇温速度で973Kまで昇温し、その温度を10分保持した後、前記立方体を電気炉から取り出し、空冷した。発泡後の立方体を切断したところ、内部に気泡が生じていることが判った。
【符号の説明】
【0065】
1 母材
2b 凹陥部
2a 溝
2 母材
3 発泡剤
4a 突起
4b 本体
4 摩擦攪拌工具
6 攪拌部
7 積層体
10 前駆体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10