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明細書 :傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造方法、並びに傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5754569号 (P5754569)
登録日 平成27年6月5日(2015.6.5)
発行日 平成27年7月29日(2015.7.29)
発明の名称または考案の名称 傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造方法、並びに傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料
国際特許分類 C22C   1/08        (2006.01)
B23K  20/12        (2006.01)
B22F   3/11        (2006.01)
FI C22C 1/08 A
B23K 20/12 360
B22F 3/11 B
B23K 20/12 364
B23K 20/12 330
請求項の数または発明の数 15
全頁数 27
出願番号 特願2011-536158 (P2011-536158)
出願日 平成22年10月13日(2010.10.13)
国際出願番号 PCT/JP2010/067979
国際公開番号 WO2011/046152
国際公開日 平成23年4月21日(2011.4.21)
優先権出願番号 2009237447
優先日 平成21年10月14日(2009.10.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年9月20日(2013.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
発明者または考案者 【氏名】半谷 禎彦
【氏名】宇都宮 登雄
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査官 【審査官】米田 健志
参考文献・文献 特表2006-523771(JP,A)
特開2006-097075(JP,A)
特開2006-307295(JP,A)
調査した分野 C22C 1/08
特許請求の範囲 【請求項1】
熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を、前記金属部材の材料組成を異ならせて複数種形成する工程と、
前記発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、前記複数種の発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合する工程と、
を含む傾斜機能材料前駆体の製造方法。
【請求項2】
前記複数種の発泡金属前駆体のうち少なくとも1つは、
発泡剤と前記発泡剤を挟持して積層される一対の金属板とからなる積層体を形成する工程と、
前記積層体の所望の面から摩擦攪拌接合を行うことにより、前記発泡剤を前記金属板内に拡散させて、前記一対の金属板を接合する工程と、
から形成される請求項1に記載の傾斜機能材料前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記複数種の発泡金属前駆体のうち少なくとも1つは、
所望の溶融金属材料を金型に圧入する工程と、
前記金型から取り出した金属部材を、摩擦攪拌することにより前記金属部材内部に混入されたガス及び気孔形成核を前記金属部材内部で均一に分散する工程と、
から形成される請求項1に記載の傾斜機能材料前駆体の製造方法。
【請求項4】
前記複数種の発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合する工程において、所望の材料組成からなる緻密金属部を前記複数種の積層体のうち一部又は全部に、摩擦攪拌接合する
請求項1に記載の傾斜機能材料前駆体の製造方法。
【請求項5】
熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を形成する工程と、
前記発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、前記発泡金属前駆体と前記金属部材の材料組成とは異なる材料組成からなる緻密金属部とを摩擦攪拌接合する工程と、
を含む傾斜機能材料前駆体の製造方法。
【請求項6】
前記発泡金属前駆体は、
発泡剤と前記発泡剤を挟持して積層される一対の金属板とからなる積層体を形成する工程と、
前記積層体の所望の面から摩擦攪拌接合を行うことにより、前記発泡剤を前記金属板内に拡散させると同時に前記一対の金属板を接合する工程と、
から形成される請求項5記載の傾斜機能材料前駆体の製造方法。
【請求項7】
前記発泡金属前駆体は、
所望の溶融金属材料を金型に圧入する工程と、
前記金型から取り出した金属部材を、摩擦攪拌することにより前記金属部材内部に混入されたガス及び気孔形成核を前記金属部材内部で均一に分散する工程と、
から形成される請求項5記載の傾斜機能材料前駆体の製造方法。
【請求項8】
熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を、前記金属部材の材料組成を異ならせて複数種形成する工程と、
前記発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、前記複数種の発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合することにより、傾斜機能材料前駆体を形成する工程と、
前記傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより、前記発泡金属前駆体の内部を発泡させて発泡金属部を形成する工程と、
を含む傾斜機能材料の製造方法。
【請求項9】
熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を形成する工程と、
前記発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、前記発泡金属前駆体と前記金属部材の材料組成とは異なる材料組成からなる緻密金属部とを摩擦攪拌接合することにより傾斜機能材料前駆体を形成する工程と、
前記傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより、前記発泡金属前駆体の内部を発泡させて発泡金属部を形成する工程と、
を含む傾斜機能材料の製造方法。
【請求項10】
熱処理を施すことにより、金属部材の内部に複数の気孔が生じる一の発泡金属前駆体と、
前記発泡金属前駆体とは材料組成が異なる一種、又は複数種の他の発泡金属前駆体とが互いに摩擦攪拌接合して一体に形成された
傾斜機能材料前駆体。
【請求項11】
さらに、前記一の発泡金属前駆体及び前記他の発泡金属前駆体の一部又は全部に摩擦攪拌接合して形成された緻密金属部
を有する請求項10に記載の傾斜機能材料前駆体。
【請求項12】
熱処理を施すことにより、金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体と、
前記発泡金属前駆体とは異なる材料組成を有し、前記発泡金属前駆体の所望の面に摩擦攪拌接合して形成された緻密金属部と、
を有する傾斜機能材料前駆体。
【請求項13】
熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を前記金属部材の材料組成を異ならせて複数種形成し、前記発泡金属前駆体を形成すると同時に、又は後に、前記複数種の発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合することにより、傾斜機能材料前駆体を形成し、前記傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより、前記発泡金属前駆体の内部を発泡させて形成された発泡金属部を有する
傾斜機能材料。
【請求項14】
請求項13において、前記発泡金属部の所望の面に緻密金属部が接合されている
傾斜機能材料。
【請求項15】
熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を形成し、前記発泡金属前駆体を形成すると同時に、又は後に、前記発泡金属前駆体と前記金属部材の材料組成とは異なる材料組成からなる緻密金属部とを摩擦攪拌接合することにより傾斜機能材料前駆体を形成し、前記傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより、前記発泡金属前駆体の内部を発泡させて形成された発泡金属部を有する
傾斜機能材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、材料組成、若しくは、材料組成及び気孔率が連続的、又は段階的に変化するように形成された傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造方法と、その製造方法で製造された傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡金属に代表されるポーラスアルミニウムは、軽量性と優れた衝撃エネルギー吸収特性を併せ持った多機能な素材であり、今後、自動車の燃費向上と衝突安全性向上の両立が可能な高機能素材として期待されている。
【0003】
ポーラスアルミニウムの作製方法は、数多く提案されており、その代表的なものとして、プリカーサ法がある(非特許文献1)。プリカーサ法とは、アルミニウム母材中に、あらかじめ発泡剤粉末を混合した、プリカーサ(発泡金属前駆体)と呼ばれるものを作製する方法である。プリカーサ法においては、プリカーサ形成後、このプリカーサを加熱することで発泡剤を分解してガスを発生させ、このガスの発生によりアルミニウム母材を膨張させてポーラス化する。これにより、ポーラスアルミニウムが完成される。
【0004】
また、プリカーサを作製するプリカーサ法としては、粉末法(非特許文献2、特許文献1、2)と圧延接合法(非特許文献3、特許文献3)とがある。
【0005】
粉末法は、母材粉末と発泡剤粉末とを均一になるまで混合し、さらに、得られた混合粉末に熱間押出や熱間圧延などの操作を施すことにより固化させてプリカーサとする方法である。
【0006】
圧延接合法は、母材である板材を複数用意し、この板材の間に発泡剤を挟み、所定の圧下率、例えば50%で圧延して板材を接合し、さらに、この圧延工程を繰り返して板材中に発泡剤を均一に分散させることで、プリカーサとする方法である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】ドイツ特許出願公開第1048360号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第4101630号明細書
【特許文献3】特許第3895292号公報
【0008】

【非特許文献1】J.Banhart,Manufacture,characterization and application of cellular metals and metal foams.ProgressinMaterials Science,2001.46(6):pp559-632
【非特許文献2】F.Baumgartner,I.Duarte and J.Banhart,Industrialization of powder compact foaming process.Advanced Engineering Materials,2000.2(4):pp168-174
【非特許文献3】K.Kitazono,E.Sato,and K.Kuribayashi,Novel manufacturing process of closed-cell aluminum foam by accumulative roll-bonding.ScriptaMaterialia,2004.59(4):pp495-498.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した粉末法は、母材の粉末の価格が一般に流通している板材などの材料と比較して高いこと、母材がアルミニウム合金の粉末である場合、粉末の表面に酸化被膜が存在するため十分に緻密なプリカーサを製造することが困難である等の問題点がある。
【0010】
圧延接合法は、安価な板材を使用でき、既存の圧延設備を使用できるという長所はあるものの、圧延によって板材を接合するために、焼鈍や接合面の表面処理などの前処理が必要であること、及び圧延前後で熱処理が必要であること等の問題点がある。
【0011】
一方、ポーラスアルミニウムは、更なる用途の拡大の為に、傾斜機能性が付与されることが望まれる。例えば、表面は耐食性に優れ、内部は高強度といったように、ポーラスアルミニウム内で材料の機能を傾斜的に変化させることができれば、自動車を始め、航空宇宙、鉄道車両、医療機械、建築部材、産業用機械等に用いられる部材として、より高機能化が実現できる。
【0012】
上述の点に鑑み、本発明は、低コストで品質の安定性に優れ、材料組成が傾斜化した傾斜機能材料前駆体、及びその製造方法を提供する。さらに、材料組成、若しくは、材料組成及び気孔率が傾斜化され、高機能化が図られた傾斜機能材料、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の傾斜機能材料前駆体の製造方法は、熱処理を施すことにより、金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を、金属部材の材料組成を異ならせて複数種形成する工程を有する。また、発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、複数種の発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合する工程を有する。
【0014】
また、本発明の傾斜機能材料前駆体の製造方法は、熱処理を施すことにより、金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を形成する工程を有する。また、発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、金属部材の材料組成とは異なる材料組成からなる緻密金属部と発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合する工程を有する。
【0015】
本発明の傾斜機能材料前駆体の製造方法によれば、組成材料の異なる発泡金属前駆体同士、又は発泡金属前駆体と緻密金属部が一体化された傾斜機能材料前駆体が形成される。
【0016】
また、本発明の傾斜機能材料の製造方法は、熱処理を施すことにより、金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を、金属部材の材料組成を異ならせて複数種形成する工程を有する。また、発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、複数種の発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合することにより、傾斜機能材料前駆体を形成する工程を有する。また、傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより、発泡金属前駆体の内部を発泡させて発泡金属部を形成する工程を有する。
【0017】
また、本発明の傾斜機能材料の製造方法は、熱処理を施すことにより、金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を形成する工程と、発泡金属前駆体を形成する工程と同時に、又は後に、金属部材の材料組成とは異なる材料組成からなる緻密金属部と発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合することにより傾斜機能材料前駆体を形成する工程を有する。また、傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより、発泡金属前駆体の内部を発泡させて発泡金属部を形成する工程を有する。
【0018】
本発明の傾斜機能材料の製造方法では、材料組成の異なる発泡金属部同士、又は発泡金属部と緻密金属部が一体化された傾斜機能材料が形成される。これにより、材料組成、若しくは、材料組成及び気孔率が連続的、又は段階的に変化された傾斜機能材料が得られる。
【0019】
また、本発明の傾斜機能材料前駆体は、熱処理を施すことにより、金属部材の内部に複数の気孔が生じる一の発泡金属前駆体と、発泡金属前駆体とは材料組成が異なる一種、又は複数種の他の発泡金属前駆体が互いに摩擦攪拌接合して一体に形成されている。
また、本発明の傾斜機能材料前駆体は、熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体と、発泡金属前駆体とは異なる材料組成を有し、発泡金属前駆体の所望の面に摩擦攪拌接合して形成された緻密金属部とから構成されている。
【0020】
また、本発明の傾斜機能材料は、熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を金属部材の材料組成を異ならせて複数種形成し、発泡金属前駆体を形成すると同時に、又は後に、複数種の発泡金属前駆体を摩擦攪拌接合することにより傾斜機能材料前駆体を形成し、傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより、発泡金属前駆体の内部を発泡させて形成された発泡金属部を有する。
また、本発明の傾斜機能材料は、熱処理を施すことにより金属部材の内部に複数の気孔が生じる発泡金属前駆体を形成し、発泡金属前駆体を形成すると同時に、又は後に、発泡金属前駆体と金属部材の材料組成とは異なる材料組成からなる緻密金属部とを摩擦攪拌接合することにより傾斜機能材料前駆体を形成し、傾斜機能材料前駆体を熱処理することにより発泡金属前駆体の内部を発泡させて形成された発泡金属部を有する。

【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低コストで品質の安定性に優れ、材料組成が傾斜化した傾斜機能材料前駆体が得られる。また、材料組成、若しくは、材料組成及び気孔率が傾斜化され、高機能化が図られた傾斜機能材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】A,B 本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図2】A,B 本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図3】A,B 第1の実施形態において、第1積層体及び第2積層体を構成する金属板の他の例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図5】図4のA-A線上に沿う概略断面構成図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図7】図6のx-x線上に沿う概略断面構成図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図11】A,B 本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図14】本発明の第1の実施形態で製造された傾斜機能材料前駆体の概略斜視図である。
【図15】本発明の第1の実施形態で製造された傾斜機能材料の概略構成図である。
【図16】A,B 第1の実施形態で製造された傾斜機能材料前駆体の外観写真と、それに対応するEPMAでの観察結果を示す。
【図17】A,B 第1の実施形態で製造された傾斜機能材料の外観写真と、それに対応するEPMAでの観察結果を示す。
【図18】A,B 変形例1における傾斜機能材料前駆体の概略斜視図と、傾斜機能材料の概略構成図である。
【図19】変形例2における傾斜機能材料の概略構成図である。
【図20】A,B 変形例3における傾斜機能材料前駆体の概略構成図である。
【図21】本発明の第2の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図22】本発明の第2の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図23】本発明の第2の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図24】図23のx-x線上に沿う概略断面構成図である。
【図25】本発明の第2の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図26】本発明の第2の実施形態で製造された傾斜機能材料前駆体の概略斜視図である。
【図27】本発明の第2の実施形態で製造された傾斜機能材料の概略構成図である。
【図28】A,B 第2の実施形態で製造された傾斜機能材料前駆体の外観写真と、要部の拡大写真である。
【図29】A,B 第2の実施形態で製造された傾斜機能材料前駆体のEPMAでの観察結果を示す。
【図30】A,B,C 第2の実施形態で製造された傾斜機能材料の外観写真と、それに対応するEPMAでの観察結果を示す。
【図31】A,B 本発明の第3の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図32】本発明の第3の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図33】本発明の第3の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造工程を示す概略構成図である。
【図34】本発明の第3の実施形態で製造された傾斜機能材料前駆体の概略斜視図である。
【図35】本発明の第3の実施形態で製造された傾斜機能材料の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体、傾斜機能材料、及びその製造方法の一例を、図1~図35を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:異種材料からなる傾斜機能材料前駆体、及び傾斜機能材料の例
変形例1:3つの異種材料を用いる例
変形例2:気孔率を変化させる例
変形例3:添加材料を変化させる例
2.第2の実施形態:緻密金属を接合した傾斜機能材料前駆体、及び傾斜機能材料の例
3.第3の実施形態:ダイカスト材を用いる例

【0024】
〈1.第1の実施形態〉
図1~図17を用いて、本発明の第1の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料の製造方法について説明する。

【0025】
まず、図1Aに示すように、発泡剤3と気孔形態安定剤4を挟持して一対の第1金属板1a,1bを積層し、図2Aに示す第1積層体7を形成する。同様にして、発泡剤3と気孔形態安定剤4を挟持して、第1金属板1a,1bとは異なる材料組成からなる一対の第2金属板2a,2bを積層し、図2Bに示す第2積層体8を形成する。

【0026】
第1金属板1a,1b及び第2金属板2a,2bとしては、アルミニウム及びその合金、マグネシウム及びその合金、チタン及びその合金、鉄および鉄鋼材料、銅および銅合金などのいずれかを用いることができる。そして、このとき、第1積層体7を構成する第1金属板1a,1bと第2積層体8を構成する第2金属板2a,2bとは異なる材料組成で構成する。

【0027】
本実施形態例では、第1金属板1a,1bとして、純度99.5%のアルミニウム(JIS規格:A1050)の圧延板を用いた。また、第2金属板2a,2bとして、材料組成がアルミニウム(Al)と珪素(Si)とマグネシウム(Mg)を主成分とするアルミニウム合金(JIS規格:A6061)の圧延板を用いた。また、本実施形態例の第1金属板1a,1b及び第2金属板2a,2bは、長さ210mm、幅80mm、厚さ3mmの圧延板とした。本実施形態例では、一対の第1金属板1a,1b、又は一対の第2金属板2a,2bをそれぞれ同じ厚みとしたが、異なる厚みとしてもよい。

【0028】
発泡剤3には、第1金属板1a,1bや、第2金属板2a,2bに悪影響を与えないようなものであれば特に制限はなく、例えば、水素化チタン、水素化ジルコニウム、炭酸カルシウムなどの無機系発泡剤や、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体等の有機系発泡剤を用いることができる。
また、気孔形態安定剤4にはアルミナ、炭化珪素、二酸化珪素などを用いることができる。

【0029】
本実施形態例では、発泡剤3として粒径が45μmよりも小さい水素化チタン(TiH)の粉末を用い、気孔形態安定剤4には平均粒径が1μmのアルミナ(α-Al)を用い、2枚の第1金属板1a,1b間、及び2枚の第2金属板2a,2b間に散布した。散布領域は、後述する摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)の工程で、摩擦攪拌工具が通る個所とされている。発泡剤3及び気孔形態安定剤4の散布量は、これらの粉末を散布した面積に後述する摩擦攪拌工具のプローブの長さ(5mm)をかけた第1金属板1a,1b(又は第2金属板2a,2b)の体積分の質量に対して、発泡剤3は1mass%、気孔形態安定剤4は10mass%とした。

【0030】
また、第1積層体7及び第2積層体8を形成する場合には、第1積層体7又は第2積層体8を構成する下層の第1金属板1b、第2金属板2bを、図3Aに示すように、発泡剤を収容するための溝部9を有する形状にしてもよい。また、図3Bに示すように、凹陥部10を有する形状としてもよい。

【0031】
次に、第1積層体7と第2積層体8において、図4に示すように、それぞれの一方の面からFSWを行う。FSWは、接合方法の一つであり、単純かつ高速プロセスで、金属部材内部を攪拌すると同時に接触する複数の金属部材を結合することができる接合方法である。
第1積層体7及び第2積層体8におけるFSWはそれぞれ同様の工程にて行われるので、以下の説明では、第1積層体7と第2積層体8におけるFSWを同時に説明する。

【0032】
FSWは、円柱状の本体5bと、本体の先端に取り付けられた棒状のプローブ5aとから構成される摩擦攪拌工具5によって実施される。本体5b及びプローブ5aを矢印bで示すように所定の回転数で回転させながら、本体5b及びプローブ5aを矢印aで示す方向に押圧することで、第1積層体7(第2積層体8)の一方の面の一端にプローブ5aを貫入させる。そして、矢印cで示すように第1積層体7(第2積層体8)の他端に向かって本体5b及びプローブ5aを移動させる。

【0033】
図5は、図4のA-A線上に沿う断面を示した概略構成図である。図5において、実線は摩擦攪拌工具5のプローブ5aを第1積層体7(第2積層体8)に接触させた状態を示し、二点鎖線は、第1積層体7(第2積層体8)に押圧してプローブ5aを貫入させた状態を示している。図5に示すように、プローブ5aは第1積層体7の2枚の第1金属板1a,1bの接合面を貫通して、下層の第1金属板1bに達する深さに貫入する。

【0034】
本実施形態例のFSWでは、日立設備エンジニアリング株式会社製(品名:SHH204-720)のFSW装置を用いた。また、本実施形態例では、SKH51高速度工具鋼(JIS規格)製で、円柱状の本体5bの径が17mm、プローブ5aの径が6mm、プローブ5aの長さが5mmの摩擦攪拌工具5を用いた。そして、本実施形態例では、第1積層体7の摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌工具5の回転速度を2200rpm、移動速度を100mm/min、前進角を3°とした。また、第2積層体8の摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌工具の回転速度を1000rpm、移動速度を100mm/min、前進角を3°とした。

【0035】
図6は、第1積層体7(第2積層体8)の一端から他端にかけてFSWを行ったときの概略構成図である。また、図7は、図6のx-x上に沿う概略断面構成であり、FSWを行った時の第1積層体7(第2積層体8)の内部の様子を示したものである。FSWを行うことにより、第1積層体7(第2積層体8)と、摩擦攪拌工具5との間に摩擦熱が発生し、摩擦攪拌された部分には攪拌部6が形成される。この場合、実際には、本体5bと金属板の表面で摩擦熱が発生され、プローブ5aによって攪拌される。そして、攪拌部6においては2枚の第1金属板1a,1b(第2金属板2a,2b)と発泡剤3及び気孔形態安定剤4(図1参照)が均一に混合されると同時に、2枚の第1金属板1a,1b(第2金属板2a,2b)が接合される。これにより、第1積層体7は、第1金属板1a,1b内に発泡剤3及び気孔形態安定剤4が混入された第1発泡金属前駆体11とされ、第2積層体8は、第2金属板2a,2b内に発泡剤3及び気孔形態安定剤4が混入された第2発泡金属前駆体12とされる。

【0036】
本実施形態例では、図8に示すように、摩擦攪拌工具5のプローブ5aの直径分を摩擦攪拌の走査方向と直交する方向(紙面右側から左側に向かう方向)にずらしながら合計4回(4列分)の摩擦攪拌を行った。さらに、図9に示すように、一度摩擦攪拌を行った同一箇所に対して走査方向を逆転させて攪拌を行い、一回目とは反対の方向(紙面左側から右側に向かう方向)にずらしながら摩擦攪拌を行った。また、本実施形態例では第2積層体8においてのみ、さらに、図8~図9における摩擦攪拌を同一箇所において、再度行った。このように、本実施形態例では、攪拌工程を同一箇所において複数回実施するマルチパス法を用いた。マルチパス法を用いることにより、発泡剤3や気孔形態安定剤4がより均一に第1金属板1a,1b(第2金属板2a,2b)内に拡散され、図10に示すように、一個所に対して所望の回数ずつFSWが施された第1発泡金属前駆体11(第2発泡金属前駆体12)が形成された。

【0037】
本実施形態例のように、走査方向と直交する方向に移動させながら所定回数だけ摩擦攪拌を繰り返すことにより、広い範囲で第1発泡金属前駆体11(第2発泡金属前駆体12)が得ることができ、また、同一箇所に対して複数回の摩擦攪拌を繰り返すことで発泡剤が十分に攪拌できる。なお、本実施形態例では、第1積層体7と第2積層体8において、一方の面からFSWを行う例としているが、両面から行ってもよい。

【0038】
次に、図11A,Bに示すように、第1発泡金属前駆体11と、第2発泡金属前駆体12のそれぞれを機械加工することにより、摩擦攪拌が施された面(攪拌部6)が端部に露出されるよう調整する。

【0039】
続いて、図12に示すように、第1積層体7の摩擦攪拌が施された面と、第2積層体8の摩擦攪拌が施された面とを接触させて配置し、その接触面に対して、FSWを行う。本実施形態例では、接触面に対するFSWは、摩擦攪拌工具5の回転速度を1000rpm、移動速度を100mm/min、前進角を3°として行った。さらに、接触面に対するFSWにおいてもマルチパス法を用いてもよく、本実施形態例では、図13に示すように、走査方向を逆転させることにより、摩擦攪拌を同一箇所に対して2往復行った。

【0040】
以上の工程により、第1発泡金属前駆体11と第2発泡金属前駆体12が接合され、その結果、材料組成が傾斜化して変化する傾斜機能材料前駆体13が形成された。

【0041】
次に、前述の工程で形成された傾斜機能材料前駆体13をその融点近傍の温度にて加熱する。本実施形態例では、図14に示すように、前述までに形成された傾斜機能材料前駆体13から第1発泡金属前駆体11及び第2発泡金属前駆体12の部分がそれぞれ17.5mm×12mm×6mmとなるように切り取り(図13の破線で囲む領域)、35mm×12mm×6mmの傾斜機能材料前駆体13とした。本実施形態例における熱処理では、あらかじめ1003Kに温めておいた電気炉(株式会社デンケン製、品名:KDF-S80)に入れ、その温度に保ったまま10分間保持した後電気炉から取り出し、空冷した。

【0042】
そして、上述の熱処理工程により、図15に示すような傾斜機能材料14が作製される。なお、この熱処理工程では、傾斜機能材料前駆体13内部の発泡剤3が分解され、複数の気孔が生じる。これにより、傾斜機能材料14では、図15に示すように複数の気孔17を有する発泡金属部15,16が形成される。本実施形態例では、第1積層体7を構成する第1金属板1a,1bと第2積層体8を構成する第2金属板2a,2bとは異なる材料組成であるため、第1発泡金属前駆体11であった領域では、純アルミニウムからなる発泡金属部15が形成され、第2発泡金属前駆体12であった領域では、アルミニウム合金からなる発泡金属部16が形成される。これにより、組成材料が傾斜化して形成された傾斜機能材料14が完成される。また、本実施形態例では、傾斜機能材料前駆体13において、第1発泡金属前駆体11と第2発泡金属前駆体12の接合部は摩擦攪拌により混合されているため、組成材料の異なる発泡金属部15,16の中間領域は、異なる組成が入り交じった状態となる。

【0043】
以上の工程で形成された本実施形態例の傾斜機能材料前駆体13、及び傾斜機能材料14における組成成分の分布を観察した結果を詳述する。

【0044】
本実施形態例で得られた傾斜機能材料前駆体13及び傾斜機能材料14の材料組成の傾斜化の様子を、第2積層体8の第2金属板2a,2bに適用されたアルミニウム合金のみに含まれるマグネシウム(Mg)元素の分布により観察した。なお、この観察は、図14に示す傾斜機能材料前駆体13、及び図15に示す傾斜機能材料14の、FSWの走査方向に垂直な断面に対して行った。

【0045】
断面の観察に際して、傾斜機能材料前駆体13、及び傾斜機能材料14の観察断面は、研磨紙により研磨した後(エメリー紙にて1200番まで研磨)、さらに電解研磨により研磨した。

【0046】
図16Aに、傾斜機能材料前駆体13の観察断面の外観写真を示し、図16Bに、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro-Analysis)で解析した図16Aの観察断面におけるマグネシウム(Mg)分布を示す。また、図17Aに、傾斜機能材料14の観察断面の外観写真を示し、図17Bに、電子線マイクロアナライザで解析した図17A観察断面におけるマグネシウム(Mg)分布を示す。

【0047】
図16及び図17では、中心から左側が第1積層体7で構成される部分で、中心から右側が第2積層体8で構成される部分である。

【0048】
図16Aの観察断面では、FSWに特有な同心円状のオニオンリングが何カ所か確認された。図16Bに示す電子線マイクロアナライザの解析では、マグネシウム(Mg)元素をより多く含む部分が白っぽく観察されている。図16Bに示すように、マグネシウム(Mg)元素をより多く含むアルミニウム合金からなる第2金属板2a,2bで構成された第2積層体8側でマグネシウム(Mg)元素が多く観察された。一方、純アルミニウムからなる第1金属板1a,1bで構成された第1積層体7側ではマグネシウム(Mg)元素がほとんど観察されなかった。また、電子線マイクロアナライザの解像度の問題からわかりにくいが、第1積層体7と第2積層体8の接合部では、マグネシウム(Mg)元素の存在している個所と、存在しない個所とが複雑に混合していることがわかる。これにより、本実施形態例で形成された傾斜機能材料前駆体では、近似的に右側から左側にかけてマグネシウム(Mg)元素の割合が徐々に変化しているのが観察され、組成が傾斜化していることがわかる。

【0049】
また、図17Aに示すように、本実施形態例で得られた発泡金属部15,16からなる傾斜機能材料14は、第1金属板1a,1bを構成していた純アルミニウムと、第2金属板2a,2bを構成していたアルミニウム合金の継ぎ目が全く見られない。また、図17Bに示すように、傾斜機能材料前駆体13において第1金属板1a,1bを構成する純アルミニウムであった個所である左側ではマグネシウム(Mg)元素がほとんど観察されない。一方、傾斜機能材料前駆体13において第2金属板2a,2bを構成するアルミニウム合金であった個所である右側では、マグネシウム(Mg)元素が多く観察された。図17Bにおいても、電子線マイクロアナライザの解像度の問題からわかりにくいが、第1積層体7と第2積層体8のもともとの継ぎ目部分では、マグネシウム(Mg)元素の割合が徐々に変化しているのが観察され、組成が傾斜化していることがわかる。

【0050】
このように、本実施形態例で形成された傾斜機能材料14では、比較的柔らかい素材である純アルミニウムからなる発泡金属部15と、純アルミニウムよりも硬い素材であるアルミニウム合金からなる発泡金属部16とが傾斜的に接合されている。このように、一つの材料内で機能が傾斜化しているので、本実施形態例の傾斜機能材料14を、例えば自動車部品等に用いる場合には、より高機能化した部品を提供することができる。

【0051】
また、本実施形態例によれば、FSWを用いて金属板内に発泡剤を分散させ、発泡金属前駆体を形成することができるため、従来の粉末法や圧延法に比較して、安定した品質を有する発泡金属前駆体を低コストで容易に製造することができる。また、省エネルギーであり、発泡剤が、一対の金属板に挟持された状態で摩擦攪拌されるため、発泡剤が飛散することがなく、作業環境の悪化も少ない。

【0052】
本実施形態例では、第1金属板1a,1bとして、純アルミニウムを用い、第2金属板2a,2bとして、アルミニウム合金を用いる例を示した。しかし、本実施形態例の傾斜機能材料前駆体13及び傾斜機能材料14はこれに限られるものではない。第1積層体7を構成する第1金属板1a,1bと第2積層体8を構成する第2金属板2a,2bとで材料組成を異ならせることで形成することができ、種々の応用が可能である。

【0053】
また、本実施形態例では、第1発泡金属前駆体11及び第2発泡金属前駆体12を形成するためのFSWと第1発泡金属前駆体11と第2発泡金属前駆体12とを接合するためのFSWとを別の工程で行ったが、同時に行うようにしてもよい。この場合には、第1積層体7と第2積層体8とを接触させて配置し、FSWを全面に行うことで第1積層体7及び第2積層体8の内部の攪拌及び接合と、第1積層体7と第2積層体8の接合とを同時に行うことができる。これにより、工程数の低減を図ることが可能である。

【0054】
また、本実施形態例では、第1積層体7及び第2積層体8の表面に気孔形態安定剤4であるアルミナ(Al)を添加してFSWを行う例とした。これにより、金属部材の粘性が増し、発泡した際に、気孔同士の合体が抑制されるとともに、気孔の浮上による外部へのガスの放出が抑制できる。そして、完成される傾斜機能材料14において気孔の真球度を向上できる。また、気孔形態安定剤4が気孔形成核としても機能するため、気孔率を増大させることができる。なお、本実施形態例では、気孔形態安定剤4を添加する例としたが、必ずしも添加する必要はなく、添加しない場合においても気孔が形成される。

【0055】
ところで、本実施形態例で作製される傾斜機能材料に対して、再度熱処理を施すことにより、機械的性質を向上させることができる。例えば、6000系のアルミニウム合金では、熱処理を行うことにより機械的性質が良好になるため、熱処理工程によりポーラス化した傾斜機能材料の一部、又は全部を、例えば100℃~250℃の温度で再度熱処理することにより、その機械的性質を向上させることが可能である。傾斜機能材料の一部のみを熱処理する場合には、一つの傾斜機能材料内の一部において、機械的性質を向上させることができ、より傾斜機能性を高めることができる。

【0056】
[変形例1]
次に、変形例1に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料について図18A,Bを参照しながら説明する。変形例1は、組成材料の異なる積層体を3つ接合する例である。図18A,Bにおいて、図14及び図15に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。

【0057】
図18Aに示すように、変形例1における傾斜機能材料前駆体40は、第1発泡金属前駆体11、第2発泡金属前駆体12に加え、さらに、材料組成の異なる第3発泡金属前駆体42を接合して構成されている。例えば、第3発泡金属前駆体42を構成する材料として、耐食性が高いアルミニウム合金(JIS規格:A5083)からなる一対の第3金属板41a,41bを用いる。この場合、第3発泡金属前駆体42も、第1発泡金属前駆体11及び第2発泡金属前駆体12の製造方法と同様に、第3金属板41a,41bの間に、発泡剤及び気孔形態安定剤を挟持して積層しFSWを行うことで形成することができる。そして、第1~第3発泡金属前駆体11,12,42は、図11~図13の工程と同様に、FSWによりそれぞれの接合面を接合する。

【0058】
そして、これらの第1~第3発泡金属前駆体11,12,42で構成された傾斜機能材料前駆体40を、第1の実施形態と同様の方法で熱処理を行うことにより、図18Bに示すような傾斜機能材料44を形成することができる。これにより、本例では、比較的柔らかい素材である純アルミニウムからなる発泡金属部15と、純アルミニウムよりも硬い素材であるアルミニウム合金からなる発泡金属部16と、耐食性に優れた発泡金属部43とからなる傾斜機能材料44が構成される。上述したように、本例によれば、1つの材料に複数の機能を付加することが可能である。

【0059】
なお、上述した変形例1では、3種類の異なる材料組成を有する発泡金属部15,16,43からなる傾斜機能材料44を形成する例としたが、3種以上の発泡金属部で構成することも可能である。また、変形例1においても、第1の実施形態と同様、第1~第3発泡金属前駆体11,12,42を形成するためのFSWと第1~第3発泡金属前駆体11,12,42とを接合するためのFSWとを別の工程で行う例としたが、同時に行うようにしてもよい。

【0060】
[変形例2]
次に、変形例2に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料について図19を参照しながら説明する。変形例2は、材料組成及び気孔率を変化させる例である。図19において、図15に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。

【0061】
変形例2は、含有する発泡剤に分布を持たせることにより、気孔率を変化させる例である。図1A,Bにおける発泡剤3の散布において、第1積層体7と第2積層体8で発泡剤3の量を変えて構成する。例えば、第1積層体7では、発泡剤3の散布量は、これらの粉末を散布した面積に後述する摩擦攪拌工具のプローブの長さ(5mm)をかけた体積分の第1金属板1a,1bの質量に対して、1.0mass%とし、第2積層体8では、第2金属板2a,2bの質量に対して0.2mass%とする。
これにより、図19に示すように、気孔率の異なる発泡金属部51,52が接合された構造を持つ傾斜機能材料50が形成される。

【0062】
[変形例3]
次に、変形例3に係る傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料について図20A,Bを参照しながら説明する。変形例3は、傾斜機能材料前駆体及び傾斜機能材料に添加される添加材料に分布を持たせる例である。図20A,Bにおいて、図15に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。

【0063】
図20Aは、変形例3で形成された傾斜機能材料60の概略構成図である。図20Aは、第1発泡金属部63に強度向上のためのアルミナ61を添加し、第2発泡金属部64に炭化珪素(SiC)62を添加した例である。また、図20Bは、アルミナ61の添加量を10%から0%にまで傾斜して減少するように傾斜機能材料70を構成した例である。このような傾斜機能材料70を形成する場合には、図1A,Bに示す工程において第1積層体7及び第2積層体8における添加剤の散布量を変えればよい。

【0064】
変形例3に示すように、発泡金属部を構成する金属材料の組成のみならず、添加剤の種類や量を変えることによって傾斜機能材料を形成することも可能である。また、変形例3においても、第1の実施形態と同様、各発泡金属前駆体を形成するためのFSWと各発泡金属前駆体とを接合するためのFSWとを別の工程で行うようにしても、同時に行うようにしてもよい。

【0065】
〈2.第2の実施形態〉
次に、図21~図30を用いて、本発明の第2の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体、及び傾斜機能材料の製造方法について説明する。本実施形態例は、発泡金属部の一端に緻密金属部を接合する例である。

【0066】
まず、図21に示すように、2枚の金属板20a,20bを準備し、それらの金属板20a,20bの間に粉末状の発泡剤3、及び気孔形態安定剤4を挟持して積層する。これにより図22に示す積層体22を形成する。さらに、その積層体22の下層に緻密金属部21を積層する。金属板20a,20b、発泡剤3、及び気孔形態安定剤4としては、第1の実施形態と同様の材料を用いることができる。また、緻密金属部21には金属板20a,20bと異なる材料組成を有する金属材料を用いる。

【0067】
本実施形態例では、2枚の金属板20a,20bには、純度99.5%のアルミニウム(JIS規格:A1050)からなる、長さ180mm×幅110mmの圧延板を用いた。また、積層体22全体の厚みが、後述する摩擦攪拌工具のプローブの長さ(5mm)となるように、上層の金属板20aの厚みは3mm、下層の金属板20bの厚みは2mmとした。
また、緻密金属部21には、鋼板(JIS規格:SS400)からなる、長さ180mm×幅110mm、厚み3mmの圧延板を用いた。

【0068】
また、本実施形態例では、発泡剤3として粒径が45μmよりも小さい水素化チタン(TiH)を用い、気孔形態安定剤4として平均粒径が1μm程度のアルミナ(α-Al)の粉末を用い、それらの発泡剤3及び気孔形態安定剤4を2枚の金属板20a,20bの間に散布した。散布領域は、後述するFSWの工程で、摩擦攪拌工具が通る個所とされている。発泡剤3及び気孔形態安定剤4の散布量は、これらの粉末を散布した面積に後述する摩擦攪拌工具のプローブの長さ(5mm)をかけた体積分の金属板20a,20bの質量に対して、発泡剤3は1mass%、気孔形態安定剤4は10mass%とした。

【0069】
次に、積層体22の緻密金属部21に接する面とは反対側の面側から、図23に示すように、FSWを行う。

【0070】
本実施形態例においても、FSWは摩擦攪拌工具5のプローブ5aを矢印bで示すように所定の回転数で回転させながら、本体5b及びプローブ5aを矢印aで示す方向に押圧することで、積層体22の一方の面の一端にプローブ5aを貫入させる。そして、プローブ5aを貫入させた状態で、矢印cで示すように積層体22の他端に向かって摩擦攪拌工具5を移動させる。

【0071】
図24は、図23のx-x線上に沿う断面を示した概略構成図である。本実施形態例では、プローブ5aの長さは、積層体22の厚みとほぼ同じに構成されているため、図24に示すように、プローブ5aが積層体22を構成する2枚の金属板20a,20bの接合面を貫通し、プローブ5aの先端がわずかに緻密金属部21に食い込む程度に貫入した状態で攪拌される。そして、FSWを行うことにより、積層体22と、摩擦攪拌工具5との間に摩擦熱が発生し、摩擦攪拌された部分には攪拌部6が形成される。

【0072】
本実施形態例においても、第1の実施形態と同様のFSW装置を用い、摩擦攪拌工具5の回転速度を2200rpm、移動速度を100mm/min、前進角を3°とし、マルチパス法を用いて摩擦攪拌を行った。

【0073】
図25は、積層体22の一端から他端にかけてFSWを行い、マルチパス法を用いて同一個所を2回攪拌した後の概略構成図である。本実施形態例では、攪拌部6においては金属板20a,20bと発泡剤3、及び気孔形態安定剤4が均一に混合されると同時に、2枚の金属板20a,20b、及び緻密金属部21が接合される。これにより、積層体22部分が発泡金属前駆体24とされると同時に、発泡金属前駆体24と緻密金属部21とが接合した傾斜機能材料前駆体23が形成される。

【0074】
次に、前述の工程で形成された傾斜機能材料前駆体23をその融点近傍の温度にて加熱する。本実施形態例では、図26に示すように、傾斜機能材料前駆体23のFSWが施された部分を、長さ12mm×幅12mm×厚さ8mm(発泡金属前駆体24の厚み5mmと緻密金属部21の厚み3mmによる)となるように切り取り、この傾斜機能材料前駆体23を熱処理した。すなわち、本実施形態例では、切り取った傾斜機能材料前駆体23をあらかじめ1003Kに温めておいた電気炉(株式会社デンケン製、品名:KDF-S80)に入れ、その温度に保ったまま9分30秒間保持した後、電気炉から取り出し、空冷した。

【0075】
図27は、本実施形態例で完成された傾斜機能材料25の概略構成図である。図27に示すように、熱処理工程により、本実施形態例の傾斜機能材料25は、発泡金属前駆体24だった領域でのみ気孔26が発生して発泡金属部27となるため、発泡金属部27と緻密金属部21とが接合した状態とされる。また、本実施形態例では、傾斜機能材料前駆体23において、発泡金属前駆体24と緻密金属部21の接合部は摩擦攪拌により混合されているため、図27に示すように、組成材料の異なる発泡金属部27と緻密金属部21の中間領域は、異なる組成が入り交じった状態となる。すなわち、本実施形態例の傾斜機能材料25は、発泡金属部27から緻密金属部21へと材料組成及び気孔率が傾斜化して変化した状態とされる。

【0076】
次に、以上の工程で形成された本実施形態例の傾斜機能材料前駆体23、及び傾斜機能材料25における組成成分の分布を観察した結果を詳述する。

【0077】
本実施形態例で得られた傾斜機能材料前駆体23及び傾斜機能材料25の材料組成の傾斜化の様子について、アルミニウム(Al)元素及び鉄(Fe)元素の分布を電子線マイクロアナライザ(EPMA)で解析することにより観察した。また、この観察は、傾斜機能材料前駆体23、及び傾斜機能材料25の、FSWの走査方向に垂直な断面に対して行った。

【0078】
断面の観察に際して、傾斜機能材料前駆体23、及び傾斜機能材料25の観察断面は、研磨紙により研磨(エメリー紙にて1200番まで研磨)後、電解研磨により研磨した。

【0079】
図28Aに、傾斜機能材料前駆体23の観察断面の外観写真を示す。図28Aでは、上層が発泡金属前駆体24で、下層が緻密金属部21である。図28Aの発泡金属前駆体24の白色を呈した領域はアルミナを示すものであり、攪拌の様子の指標となる。中央部のプローブが通過した個所(攪拌部6)ではFSW特有のオニオンリングが確認され、アルミニウム、発泡剤、アルミナが混合されていることが分かる。また、2枚の金属板20a,20bや緻密金属部21の接合は、攪拌部6全体にわたってほぼ良好に行われている。

【0080】
図28Bは、図28A中の攪拌部6における発泡金属前駆体24と緻密金属部21との界面近傍の拡大写真である。図28Bから、発泡金属前駆体24と緻密金属部21との界面では、緻密金属部21に発泡金属前駆体24を構成するアルミニウムが侵入すると共に、緻密金属部21を構成する鋼のバリのようなものが発泡金属前駆体24中に張り出しているのが観察される。このことから、FSWでは、プローブ5a先端はわずかであるが緻密金属部21の表面に到達し、発泡金属前駆体24を構成するアルミニウムとの接合が行われたものと考えられる。

【0081】
図29A,Bに、図28A中の攪拌部6における発泡金属前駆体24と緻密金属部21との界面近傍のアルミニウム(Al)元素及び鉄(Fe)元素の分布をEPMAで観察した結果を示す。緻密金属部21中に、発泡金属前駆体24を構成するアルミニウムの存在が若干観察されるが、アルミニウム元素、鉄元素の界面を越えた顕著な拡散は観察されず、アンカー効果のような機械的な接合が生じたものと考えられる。

【0082】
図30Aに、図28Aで攪拌が行われた部分を発泡させた場合の外観写真を示す。発泡後も、発泡金属部27を構成するアルミニウムと緻密金属部21の接合は維持され、発泡金属部27と緻密金属部21とが分離することはなかった。

【0083】
図30B,Cに、図30Aの発泡金属部27と緻密金属部21との界面近傍のアルミニウム元素と鉄元素の分布をEPMAで観察した結果を示す。界面上に両元素が検出される領域が観察される。顕著な拡散が起こり、拡散接合されると共に、Fe-Al系金属間化合物が生成されたものと考えられる。

【0084】
また、発泡金属部27内にも、鉄元素が検出されている。これは、発泡時に、発泡金属部27と緻密金属部21との界面で生成されたFe-Al系金属間化合物がドレナージなどの溶液の動きにより半溶融状態のアルミニウム内を移動した為と考えられる。ただし、このような発泡金属部27の鉄元素の分布は、発泡金属部27と緻密金属部21との界面近傍に限られており、発泡金属部27全体には渡っていないことを確認している。

【0085】
なお、比較例として、緻密金属部上部に発泡金属前駆体を置いて発泡させる実験を行った。この比較例では、発泡金属前駆体は第1の実施形態と同様の方法で形成し、緻密金属部と発泡金属前駆体とは接合されていない状態とした。この結果、緻密金属部上部に発泡金属前駆体をおいて発泡させるのみでは、発泡金属部と緻密金属部との接合は起こらず、簡単に分離してしまうことがわかった。

【0086】
この比較例の結果により、発泡金属前駆体24と緻密金属部21との間がFSWにより接合される本実施形態例では、発泡金属前駆体24や緻密金属部21の酸化皮膜が破壊され、新生面が表出することにより発泡過程において拡散接合が行われるものと予想される。

【0087】
このように、本実施形態例によれば、緻密金属部21と発泡金属部27とが接合されることにより、材料組成、及び気孔率が傾斜化して形成された傾斜機能材料を形成することができる。

【0088】
そして、本実施形態例によれば、発泡金属部27と緻密金属部21とが接合された構成である傾斜機能材料を得ることができるので、自動車部品等に用いる際に塗装を容易にすることや、製品組み立ての際に他部材との接合を容易にするなど、広範な部品への適用が可能となる。その他、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。

【0089】
また、従来、発泡金属(一般的なポーラス部材)と緻密金属との複合化は、主に接着剤を用いることで行われていた。しかし、接着剤の利用は、環境への負荷が大きい、リサイクルを困難にする、高温環境下では接着剤の樹脂が軟化する、等の問題がある。本実施形態例ではFSWを用いることにより、接着剤を用いずに発泡金属部と緻密金属部とを接合することができるので、従来の問題を解決することができる。

【0090】
ところで、本実施形態例では、緻密金属部21を、発泡金属部27となる積層体の積層方向に積層する構成としたが、積層体22の積層方向に垂直な積層体22の側面に接合するように構成してもよい。この場合には、FSWを積層体22に行う共に、積層体22と緻密金属部21との接合面に行うことで、本発明の傾斜機能材料前駆体、及び傾斜機能材料を実施することができる。

【0091】
また、本実施形態例では、1種類の発泡金属部27と緻密金属部21とが接合された傾斜機能材料25が形成される例としたが、第1の実施形態で形成される傾斜機能材料前駆体13を構成する2種の発泡金属前駆体の一部、又は全部に接合して形成することもできる。この場合には、緻密金属部と、その緻密金属部と接合する発泡金属前駆体との接合面にFSWを行う構成とすればよい。また、本実施形態例で形成された傾斜機能材料25は、発泡金属部27と緻密金属部21との材料組成が異なる例としたが、同じ材料組成の発泡金属部と緻密金属部とを接合してもよい。この場合には、気孔率が異なる傾斜機能材料が形成される。

【0092】
上述した第1及び第2の実施形態例では、傾斜機能材料前駆体を構成する発泡金属前駆体は、発泡剤を一対の金属板で挟持して積層体を形成し、その積層体の一方の面からFSWを行うことにより形成する例であった。しかしながら、発泡金属前駆体の製造方法は、これに限られるものではなく、ダイカスト法を適用することによっても、本発明の課題を達成することが可能である。以下に示す方法は、ダイカスト法を用いた例である。

【0093】
〈3.第3の実施形態〉
次に、図31~図35を用いて、本発明の第3の実施形態に係る傾斜機能材料前駆体、及び傾斜機能材料の製造方法について説明する。本実施形態例は、ダイカスト材によって傾斜機能材料前駆体、及び傾斜機能材料を形成する例である。

【0094】
まず、図31A,Bに示すように、ダイカスト法を用いて第1金属部材36と第2金属部材37を形成する。ダイカスト法は、溶融した金属材料を所定の金型に圧入することにより、高精度の鋳物を短時間に大量に成型できる鋳造法である。ダイカスト法としては、一般的な大気開放ダイカスト法、金型のキャビティ内を減圧した状態で溶融金属を注入して巻き込み巣の発生を防止する真空ダイカスト法、キャビティ内に溶融金属を低速で注入し、かつ、溶融金属に圧力をかけて凝固させるスクイズダイカスト法、キャビティ内に酸素を充填し、その酸素の作用によりキャビティ内を減圧し巣の発生を防止する無孔性(酸素置換)ダイカスト法、固体と液体がシャーベット状態の金属材料を金型に圧入する半溶解・半凝固ダイカスト法などが挙げられる。

【0095】
また、ダイカスト法において、金型に圧入される金属材料としては、Al-Si-Cu系のダイカスト用アルミニウム合金(JIS規格:ADC12,ADC10,ADC10Z,ADC12Z,ADC14)、Al-Si系のダイカスト用アルミニウム合金(JIS規格:ADC1)、Al-Si-Mg系のダイカスト用アルミニウム合金(JIS規格:ADC3)、Al-Mg系のダイカスト用アルミニウム合金(JIS規格:ADC5,ADC6)を用いることができる。また、この他、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、銅、銅合金等のダイカスト用材料を用いることができる。

【0096】
ダイカスト法によって成形される金属部材の内部には、通常、ガス及び気孔形成核が含まれている。ガスは、ダイカスト装置の金型に溶融金属を極めて速い速度で注入するときに空気が溶融金属に混入して金属部材内に含まれるもの、あるいは金型に塗布した離型剤が溶融金属に接することで気化し、溶融金属に混入して金属部材内に含まれるものなどがある。また、気孔形成核は、金属材料の原料に既に含まれているか、あるいは、ダイカスト法による鋳造工程で含まれるものである。例えば、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなる金属部材を形成する場合には、初晶Si、共晶Si、Al-Fe-Si化合物、Al-Cu化合物、等が気孔形成核となる。また、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる金属部材を形成した場合には、Mg-Al化合物、Mg-(Al,Zn)化合物、等が気孔形成核となる。

【0097】
本実施形態例では、大気開放ダイカスト法を用い、鋳造圧力を70MPaとして溶融した金属材料を金型に圧入することにより第1金属部材36と、第1金属部材36とは異なる材料組成からなる第2金属部材37を形成した。

【0098】
次に、図32に示す工程と同様にして、第1金属部材36及び第2金属部材37のそれぞれに、摩擦攪拌プロセシング(FSP)を行う。FSPは、FSWと同様の技術である。本実施形態例では、第1の実施形態と同じ構成のFSW装置を用い、マルチパス法を採用した。

【0099】
FSPにより、第1金属部材36及び第2金属部材37の内部に含まれているガス及び気孔形成核が第1金属部材36及び第2金属部材37において均一に拡散する。これにより、第1金属部材36は第1発泡金属前駆体28とされ、第2金属部材37は第2発泡金属前駆体29とされる。

【0100】
次に、第1の実施形態における図11A,Bの工程と同様にして、第1発泡金属前駆体28と、第2発泡金属前駆体29のそれぞれを機械加工することにより、摩擦攪拌が施された面が端部に露出されるよう調整する。

【0101】
次に、図33に示すように、第1発泡金属前駆体28と第2発泡金属前駆体29を、それぞれの摩擦攪拌が施された面を接触させて配置し、その接触面に対して、FSWを行う。本実施形態例では、接触面に対するFSWは、摩擦攪拌工具5の回転速度を1000rpm、移動速度を100mm/min、前進角を3°として行った。さらに、接触面に対するFSWにおいてもマルチパス法を用いてもよく、本実施形態例では、第1の実施形態と同様に、走査方向を逆転させることにより、摩擦攪拌を同一箇所に対して2度行った。

【0102】
以上の工程により、図34に示すように、第1発泡金属前駆体28と第2発泡金属前駆体29が接合され材料組成が傾斜化して変化する傾斜機能材料前駆体30が形成された。

【0103】
その後、第1の実施形態と同様にして傾斜機能材料前駆体30を加熱処理することにより、傾斜機能材料前駆体30の内部に既に存在していたガスが膨張し、また、傾斜機能材料前駆体30の内部に既に存在していた気孔形成核により気孔が発生して膨張する。これにより、図35に示すように、第1発泡金属前駆体28であった部分は、第1発泡金属33となり、第2発泡金属前駆体29であった部分は、第2発泡金属34となり、本実施形態例の傾斜機能材料31が完成される。

【0104】
本実施形態例では、ダイカスト材を用いて形成した組成材料の異なる第1発泡金属前駆体28と第2発泡金属前駆体29をFSWにより接合し、加熱処理することで、材料組成が傾斜化した傾斜機能材料31を形成することができる。

【0105】
本実施形態例によれば、第1発泡金属前駆体28や第2発泡金属前駆体29がダイカスト材で形成されるため、高価な発泡剤粉末が不要であり、また、従来の粉末冶金法に比較して製造工程が簡単であるため、生産性が高くコストの低減を図ることができる。

【0106】
以上の第1~第3の実施形態は、それらを組み合わせて実施することも可能であり、種々の変更が可能である。

【0107】
例えば、傾斜機能材料前駆体を構成する一方の発泡金属前駆体を第1の実施形態の形成方法を用いて形成し、他方の発泡金属前駆体を第3の実施形態のダイカスト法を用いて形成することもできる。また、第3の実施形態で形成した発泡金属前駆体に緻密金属部を接合することにより、第2の実施形態と同様の構成の傾斜機能材料を形成することも可能である。

【0108】
さらに、第1の実施形態において、第1積層体7の上層の第1金属板1aと下層の第1金属板1bとを、材料組成の異なる金属材料で形成すれば、容易に異種材料からなる発泡金属同士が接合された傾斜機能材料を形成することができる。この場合には、上層と下層の第1金属板1a,1bの摩擦攪拌接合と、第1金属板1a,1b内部へ発泡剤3を拡散するための摩擦攪拌とを1工程のFSWにて行うことができ、発泡金属前駆体を形成する工程と、それらを接合する工程とを一度に行うことができる。

【0109】
また、第3の実施形態では、2種類の発泡金属前駆体を接合して傾斜機能材料前駆体を形成する例としたが、第1の実施形態における変形例のように、材料組成が異なる複数種の発泡金属前駆体を接合して傾斜機能材料前駆体を形成してもよい。

【0110】
このように、本発明によれば、材料組成、及び気孔率の異なる複数(本実施形態例では2種)の金属材料からなる傾斜機能材料前駆体、及び傾斜機能材料を形成することができる。

【0111】
本発明によれば、異種材料からなる複数種の発泡金属部が接合されることで形成された傾斜機能材料や、複数の気孔を有する発泡金属部と無気孔の緻密金属部とが接合された傾斜機能材料を容易に形成することができる。

【0112】
このように、材料組成や、材料組成及び気孔率が異なるものが、一体に形成される本発明の傾斜機能材料は、用途に合わせてその機能を傾斜化することにより、自動車部品等に有用であり、高機能な材料として適用され得る。
【符号の説明】
【0113】
1a・・第1金属板
1b・・第1金属板
2a・・第2金属板
2b・・第2金属板
3・・発泡剤
4・・気孔形態安定剤
5・・摩擦攪拌工具
5a・・プローブ
5b・・本体
6・・攪拌部
7・・第1積層体
8・・第2積層体
9・・溝部
10・・凹陥部
11・・第1発泡金属前駆体
12・・第2発泡金属前駆体
13・・傾斜機能材料前駆体
14・・傾斜機能材料
15・・発泡金属部
16・・発泡金属部
17・・気孔
20a・・金属板
20b・・金属板
21・・緻密金属部
22・・積層体
23・・傾斜機能材料前駆体
24・・発泡金属前駆体
25・・傾斜機能材料
26・・気孔
27・・発泡金属部
28・・第1発泡金属前駆体
29・・第2発泡金属前駆体
30・・傾斜機能材料前駆体
31・・傾斜機能材料
33・・第1発泡金属
34・・第2発泡金属
36・・第1金属部材
37・・第2金属部材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図18】
15
【図19】
16
【図20】
17
【図21】
18
【図22】
19
【図23】
20
【図24】
21
【図25】
22
【図26】
23
【図27】
24
【図31】
25
【図32】
26
【図33】
27
【図34】
28
【図35】
29
【図16】
30
【図17】
31
【図28】
32
【図29】
33
【図30】
34