TOP > 国内特許検索 > 金属イオンの吸着方法 > 明細書

明細書 :金属イオンの吸着方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-035660 (P2017-035660A)
公開日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明の名称または考案の名称 金属イオンの吸着方法
国際特許分類 B01J  20/26        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
B01J  20/28        (2006.01)
FI B01J 20/26 E
C02F 1/28 B
B01J 20/28 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2015-157918 (P2015-157918)
出願日 平成27年8月10日(2015.8.10)
発明者または考案者 【氏名】酒井 俊郎
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4D624
4G066
Fターム 4D624AA04
4D624AB15
4D624AB16
4D624AB17
4D624BA17
4D624BB01
4D624BC01
4G066AC26B
4G066AC33B
4G066AE17B
4G066BA38
4G066CA46
4G066DA08
4G066DA10
要約 【課題】溶媒に対して不溶性の高分子材を用いてきわめて簡易な金属イオンを吸着する金属イオンの吸着方法の提供。
【解決手段】高分子材からなる吸着材を用いて金属イオンを吸着する金属イオンの吸着方法であって、前記吸着材として、還元性の官能基を備えるとともに溶媒に対して不溶性である高分子材を使用し、前記吸着材を金属含有液に浸漬し、前記吸着材の内部において、前記金属含有液に含有される金属イオンを還元して金属ナノ粒子を生成させる反応処理工程を備える金属イオンの吸着方法。前記吸着材としては、吸着材の表面から内部に金属イオンが浸透する浸透性を備える高分子材を用いる金属イオンの吸着方法。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子材からなる吸着材を用いて金属イオンを吸着する金属イオンの吸着方法であって、
前記吸着材として、還元性の官能基を備えるとともに溶媒に対して不溶性である高分子材を使用し、
前記吸着材を金属含有液に浸漬し、前記吸着材の内部において、前記金属含有液に含有される金属イオンを還元して金属ナノ粒子を生成させる反応処理工程を備えることを特徴とする金属イオンの吸着方法。
【請求項2】
前記吸着材として、吸着材の表面から内部に金属イオンが浸透する浸透性を備える高分子材を用いることを特徴とする請求項1記載の金属イオンの吸着方法。
【請求項3】
前記反応処理工程においては、前記吸着材を金属含有液に浸漬した状態で、常温以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1または2記載の金属イオンの吸着方法。
【請求項4】
前記反応処理工程においては、官能基としてアミンを備える高分子材からなる吸着材を用いることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の金属イオンの吸着方法。
【請求項5】
前記吸着材がナイロンからなり、
前記金属含有液がAuイオンを含むとともに水またはエタノールを溶媒とし、
前記反応処理工程において前記吸着材にAuを吸着することを特徴とする請求項4記載の金属イオンの吸着方法。
【請求項6】
前記吸着材がナイロンからなり、
前記金属含有液がPdイオンまたはAgイオンを含むとともに、エタノールを溶媒とし、
前記反応処理工程において前記吸着材にPdまたはAgを吸着することを特徴とする請求項4記載の金属イオンの吸着方法。





発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は金属イオンの吸着方法に関し、より詳細には水不溶性の高分子材からなる金属イオンの吸着材を用いて金属イオンを吸着する金属イオンの吸着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属イオンの回収は製品のリサイクル、排水中に含まれる金属の回収等を目的として種々の方法が試みられている。本発明者は、ポリマーが金属イオンを還元する作用を利用し、シリカ粒子等の基材の表面に金属ナノ粒子を還元析出する方法を提案した(特許文献1)。この方法は、基材の表面に金属を吸着させたものであり、水溶性のポリマーを利用して金属を基材に吸着させたものである。
【0003】
金属含有液から、金属を分離回収する方法には、凝集剤を用いて凝集沈殿させる方法、有機溶剤を用いて金属イオンを抽出する方法、キレート形成により金属を回収する方法、金属イオンの吸着材を用いて金属イオンを吸着して回収する方法等がある。これらのうち金属イオンの吸着材を用いて金属イオンを吸着して回収する方法は、吸着材が安価で、吸着操作が簡単で、金属が効率的に吸着できるものが求められる。
【0004】
水不溶性の高分子材(ポリマー)を金属イオンの吸着材として使用した例として、アミン系ポリマー、親水性ポリマー、樹脂成分を含む微粒子からなるもの(特許文献2)、アミン系ポリマーと、エチレン-ビニルアルコール共重合体と、4級アンモニウム基とを有するもの(特許文献3)、3次元網目構造を有する高分子からなるイオン吸着部を化学的結合により固定支持した基体部を備えるもの(特許文献4)等がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2014-189821号公報
【特許文献2】特開2014-180643号公報
【特許文献3】特開2012-67268号公報
【特許文献4】特開2013-91062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属イオンの吸着材として従来検討されているものは、耐久性を考慮するといった理由から組成や製造工程が複雑であるという問題があった。
本発明は、溶媒に不溶性の高分子材を用いて、きわめて容易な操作により金属イオンを吸着する金属イオンの吸着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る金属イオンの吸着方法は、高分子材からなる吸着材を用いて金属イオンを吸着する金属イオンの吸着方法であって、前記吸着材として、還元性の官能基を備えるとともに溶媒に対して不溶性である高分子材を使用し、前記吸着材を金属含有液に浸漬し、前記吸着材の内部において、前記金属含有液に含有される金属イオンを還元して金属ナノ粒子を生成させる反応処理工程を備えることを特徴とする。
本発明の金属イオンの吸着方法においては、還元性の官能基を備えるとともに溶媒に対して不溶性である高分子材を吸着材として用いる。還元性の官能基を備える高分子材としては、官能基としてアミン、ポリエチレンオキシド鎖、ヒドロキシ基を備える高分子材が利用できる。
溶媒に不溶性でかつ還元性の官能基を備えている高分子材としては、ナイロン、ポリスチレン-ポリエチレンオキシドブロック共重合体、ポリ乳酸-ポリエチレンオキシドブロック共重合体、ポリエチレン-ポリエチレンオキシドブロック共重合体、セルロース等がある。
【0008】
本発明に係る金属イオンの吸着方法においては、金属イオンを吸着材により還元して吸着材と金属とを複合化させる反応処理工程を備える。この反応処理工程においては、吸着材に金属イオンを吸着し、吸着した金属イオンが吸着材(高分子材)により還元され金属ナノ粒子が吸着材の内部で生成される(複合化される)。したがって、吸着材は、吸着材の表面から内部に金属イオンが浸透する浸透性を備える高分子材を用いることが有効である。
吸着材は常温で金属イオンが吸着材の内部に浸透するものであってもよいし、常温以上に加熱することにより金属イオンが吸着材の内部に浸透するようにすることも有効である。吸着材を常温以上に加熱することにより、吸着材が柔軟化し吸着材の内部に金属イオンが浸透しやすくなる。
【0009】
本発明に係る金属イオンの吸着方法は、種々の金属イオンを含有する金属含有液に適用することが可能である。対象とする金属含有液としては、Au、Pd、Agなどの金属塩を含む溶液の他に、銅、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロミウム、マンガン、マグネシウム、カドミウム、アルミニウム、錫、タングステンなどを含む金属塩、溶液中でイオン(例えば、Ag+,Ag(CN)2-,AlCl4-,Au3+,AuCl4-,AuBr4-,PtCl62-,Mg2+,Mn2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+,Cd2+,Fe3+,Al3+,Pd2+,PdCl42-,Sn2+,SnO32-,Ga3+,WO42-)になりうる金属塩を含む溶液に適用できる。金属塩の例としては、AgAsF6,AgBF4,AgBr,AgCl,AgClO3,AgClO4,AgF,AgF2,AgF6P,AgF6Sb,AgI,AgIO3,AgMnO4,AgNO2,AgNO3,AgO3V,AgO4Re,Ag2CrO4,Ag2O,Ag23S,Ag24S,Ag2S,Ag2Se,Ag2Te,Ag3AsO4,Ag3AsO4,Ag3AsO4,Ag34P,Ag8164,KAg(CN)2,CH3CO2Ag,AgCN,AgCNO,AgCNS,Ag2CO3、AlCl312,AlCl4Cs,AlCl4K,AlCl4Li,AlCl4Na,AlC12Ti3,AlCsO4Si,AlCsO6Si2,AlCsO82,AlF4K,AlF6Na3,AlKO82,AlLiO2,AlN39,AlO4P,AlO93,Al2BaO4,Al2MgO4,Al25Ti,Al3123,Al6Bi212,Al613Si2,H4AlLi,H4AlNO82,AuBr3,KAuBr4,NaAuBr4,AuCl3,KAuCl4,NaAuCl4,HAuCl4,AuI3,Au23,HAuCl4N,AuCN、CoF2,CoF3,CoI2,CoLiO2,CoN26,CoN6Na312,CoO,CoO4S,CoSe,Co34,Co382,Co5Sm,Co7Sm2,H8CoN282,H12CoN99,H15Cl3CoN5,CoCO3、CdCl2,CdCl28,CdF2,CdI2,CdMoO4,CdN26,CdO3Zr,CdO4S,CdO4W,CuF2,CuI,CuMoO4,CuN26,CuNb26,CuO,CuO3Se,CuO4S,CuO4W,CuS,CuSe,CuTe,Cu2HgI4,Cu2O,Cu272,Cu2S,Cu2Se,Cu2Te,H8Cl4CuN2,H12CuN44S,CuCN,CuCNS、MgMn28,MgMoO4,MgN26,MgO32,MgO3Ti,MgO3Zr,MgO4S,MgO4W,Mg272,Mg382,H4MgNO4P,MnMoO4,MnN26,MnNoO4,MnO4S,H4MnO42,NiO,NiO3Ti,NiO4S,H42NiO62,H2PtCl6,H6Cl22Pt,H6Cl42Pt,H644Pt,H6Na26Pt,H8Br62Pt,H8Cl42Pt,H8Cl62Pt,H86Pt,H12Cl24Pt,H12Cl44Pt2,H1266Pt,H1442Pt,C22Pt,H6Br22Pd,H6Cl22Pd,H622Pd,H644Pd,H8Cl42Pd,H8Cl62Pd,H12Br24Pd,H12Cl24Pd,H12Cl44Pd2,H1266Pd,C22Pd,Pd(OAc)2,Pd(NO32,H4FeNO82,H8FeN282,FeCl3,C22Zn,H2SnO3,Na2SnO3,SnCl22H2O,SnO,SnSO4,SnO2,GaBr3,GaCl3,GaI3,Ga(NO33xH2O,Ga(SO43xH2O,Ga2(SO43,GaAs,GaN,GaP,GaS,Ga23,GaSe,GaSe,Ga2Se3,GaTe,Ga2Te3,GaO2H,H2WO4等が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る金属イオンの吸着方法によれば、吸着材を金属含有液に浸漬するというきわめて簡単な方法によって金属含有液に含有される金属イオンを吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る金属イオンの吸着方法を用いて金属イオンを吸着する実験方法例を示す説明図である。
【図2】6,6ナイロンからなるプラスチックボールを用いたAuの吸着試験結果(溶媒:水)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図3】6,6ナイロンからなるプラスチックボールを用いたAuの吸着試験結果(溶媒:エタノール)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図4】6,6ナイロンからなるプラスチックボールを用いたAuの吸着試験結果(溶媒:水)で処理温度を変えたときの吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図5】6,6ナイロンからなるプラスチックボールを用いたAuの吸着試験結果(溶媒:エタノール)で処理温度を変えたときの吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図6】6,6ナイロンからなるプラスチックボールを用いたときのPdを含む容器の外観写真である。
【図7】6,6ナイロンからなるプラスチックボールを用いたときのAgを含む容器の外観写真である。
【図8】ポリエチレンからなるプラスチックボールを用いてAuの吸着試験結果(溶媒:水)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図9】ポリエチレンからなるプラスチックボールを用いてAuの吸着試験結果(溶媒:エタノール)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図10】ポリエチレンからなるプラスチックボールを用いたときのPdを含む容器の外観写真である。
【図11】ポリエチレンからなるプラスチックボールを用いたときのAgを含む容器の外観写真である。
【図12】ポリプロピレンからなるプラスチックボールを用いてAuの吸着試験結果(溶媒:水)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図13】ポリプロピレンからなるプラスチックボールを用いてAuの吸着試験結果(溶媒:エタノール)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図14】ポリプロピレンからなるプラスチックボールを用いたときのPdを含む容器の外観写真である。
【図15】ポリプロピレンからなるプラスチックボールを用いたときのAgを含む容器の外観写真である。
【図16】アクリル樹脂からなるプラスチックボールを用いてAuの吸着試験結果(溶媒:水)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図17】アクリル樹脂からなるプラスチックボールを用いてAuの吸着試験結果(溶媒:エタノール)を示す吸収スペクトルと容器の外観写真である。
【図18】アクリル樹脂からなるプラスチックボールを用いたときのPdを含む容器の外観写真である。
【図19】アクリル樹脂からなるプラスチックボールを用いたときのAgを含む容器の外観写真である。
【図20】反応処理後(水溶媒)のプラスチックボール(6,6ナイロン)の外観写真である。
【図21】反応処理後(エタノール溶媒)のプラスチックボール(6,6ナイロン)の外観写真である。
【図22】反応処理後(水溶媒)のプラスチックボール(6,6ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン)の外観写真である。
【図23】反応処理後(エタノール溶媒)のプラスチックボール(6,6ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン)の外観写真である。
【図24】Au、Pd、Agの吸着試験(水溶媒)を行った後の6,6ナイロンからなるサンプルの外観写真である。
【図25】Au、Pd、Agの吸着試験(水溶媒)を行っ6,6ナイロンからなるサンプルの外観写真である。
【図26】Auを吸着させる反応処理前(a)、反応処理後(b)のプラスチックボールのEPMA像である。
【図27】Agを吸着させる反応処理前(a)、反応処理後(b)のプラスチックボールのEPMA像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<金属イオンの吸着実験>
高分子材(ポリマー)による金属イオンの吸着作用を確かめるため、6,6ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂からなる球体(プラスチックボール:3mm径)を製作し、これらのプラスチックボールによる金属イオンの吸着特性について実験した。

【0013】
(実験方法)
図1に実験方法を示す。
実験では、金属前駆体溶液5を収容した容器10にプラスチックボール15を投入し、80℃に加熱した状態で24時間静置し、さらに25℃で24時間静置した後、紫外線分光光度計と容器の目視観察を行った。以下、とくに断らない場合、反応処理とは、80℃に加熱した状態で24時間静置、次いで25℃で24時間静置する処理である。
紫外線分光光度計による測定は、溶液中における金属イオンの有無を測定するもの、目視観察はプラスチックボールの外観観察である。
プラスチックボールへ吸着される金属としてはAuとPdとAgを実験対象とした。金属前駆体溶液には、[AuCl4]-、[PdCl4]2-、Ag+をそれぞれ含む溶液を使用した。金属前駆体溶液には、溶媒に水を用いたものとアルコールを用いたものを使用した。

【0014】
[6,6ナイロン:Auイオンの吸着試験]
図2、3は、6,6ナイロンからなるプラスチックボールを使用し、[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液を用いてAuの吸着試験を行った結果を示す。図2は金属前駆体溶液の溶媒として水を使用した場合、図3は溶媒としてアルコールを使用した場合である。

【0015】
図2の紫外線分光光度計により測定したスペクトルのうち、スペクトルaは、6,6ナイロンからなるプラスチックボールを、[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液に投入した直後における金属前駆体溶液の吸収スペクトルである。この吸収スペクトルに見られる吸収ピークは[AuCl4]-イオンによる吸収ピークである。

【0016】
スペクトルbは、金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入し80℃で24時間保持し、さらに25℃で24時間経過させた反応処理工程後の吸収スペクトルである。スペクトルbにはスペクトルaに見られた[AuCl4]-イオンによる吸収ピークが見られない。この吸収スペクトルの測定結果は、[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液に6,6ナイロンからなるプラスチックボールを投入したことにより、溶液中に[AuCl4]-イオンが失われたことを示す。

【0017】
スペクトルcは金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入せず、[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液のみを80℃で24時間保持した後の金属前駆体溶液の吸収スペクトルである。80℃で24時間保持したことにより、[AuCl4]-イオンによる吸収ピークが減退しているが、溶液中には[AuCl4]-イオンが残留している。スペクトルcは金属前駆体溶液を加熱した状態で保持することで[AuCl4]-イオンが散逸しないことを示す。

【0018】
図2に示す金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入した写真を見ると、容器にプラスチックボールを投入した直後はプラスチックボールは白色であるのに対して、反応処理を行った後はプラスチックボールが黒色に変化している。これは、反応処理によりプラスチックボールにAuイオンが吸着されて還元されたためである。プラスチックボールにAuが吸着されたことにより、スペクトルbには[AuCl4]-イオンによる吸収ピークが表れない。

【0019】
溶媒をエタノールとした場合の図3の紫外線分光光度計のスペクトルのうち、スペクトルaは6,6ナイロンからなるプラスチックボールを金属前駆体溶液に投入した直後の吸収スペクトル、スペクトルbはプラスチックボールを金属前駆体溶液に投入して反応処理を行った後の吸収スペクトルである。スペクトルa、bを見ると、プラスチックボールを金属前駆体溶液に投入したことによって[AuCl4]-イオンによる吸収ピークが減退し、Auイオンがプラスチックボールに吸着されたことを示唆する。
スペクトルcは金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入せず、金属前駆体溶液のみを反応処理と同様の加熱保持処理を行った後の金属前駆体溶液の吸収スペクトルである。加熱保持処理により[AuCl4]-イオンの吸収ピークが減退するが、溶液中には[AuCl4]-イオンが残留している。

【0020】
図3の金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入したときの写真を見ると、プラスチックボールを投入直後はプラスチックボールが白色であるのに対して、反応処理を経過させた後のプラスチックボールは濃色に変化している。すなわち、この実験例の場合もプラスチックボールにAuイオンが吸着されAuに還元された。

【0021】
(処理温度による影響)
図4、5は、6,6ナイロンからなるプラスチックボールを、[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液に投入して反応させる際の処理温度を25℃、40℃、80℃としたときの紫外線分光光度計のスペクトルと、プラスチックボールの色調変化の様子を示す写真である。図4は溶媒が水の場合、図5は溶媒がエタノールの場合である。
図4から、プラスチックボールの色調が変化したのは処理温度が80℃のとき(黒色に変化)であり、処理温度が25℃のときはプラスチックボールの色調が変化していない。金属前駆体溶液のスペクトルを見ると、処理温度が25℃と40℃の場合には[AuCl4]-イオンの吸収ピークが僅かに減少するのみである。なお、処理温度が40℃のときはプラスチックボールの色調が僅かに変化していることが認められ、プラスチックボールにわずかにAuイオンが吸着されている可能性を示唆する。
溶媒をエタノールとした図5においても、プラスチックボールの色調が変化したのは処理温度が80℃のときのみで、金属前駆体溶液のスペクトルでは、処理温度が25℃と40℃の場合は[AuCl4]-イオンの吸収ピークは僅かに減少した。
Auイオンのナイロンによる吸着は、溶媒が水、エタノールの場合ともに、処理温度が80℃の場合に生じることが分かる。

【0022】
[6,6ナイロン:Pdイオンの吸着試験]
図6は、6,6ナイロンからなるプラスチックボールを[PdCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液に投入して、処理温度80℃としてPdの吸着試験を行った結果を示す。
図6の溶媒を水とした[PdCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液の場合は、金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入した直後のプラスチックボールは白色であり、反応処理を行った後のプラスチックボールも白色でプラスチックボールの色調は変化していない。
同様に、処理温度40℃としてナイロンからなるプラスチックボールを用いたPdイオンの吸着試験においても反応処理後のプラスチックボールに色調の変化はなく、処理温度25℃による吸着試験においてもプラスチックボールに色調の変化は見られなかった。

【0023】
また、図6に示すように、溶媒をエタノールとした場合のPdイオンの吸着試験では、金属前駆体溶液の処理温度を80℃とした場合には、反応処理を行った後のプラスチックボールは白色から淡褐色に変化した。また、溶媒をエタノールとした場合のPdイオンの吸着試験で、処理温度を40℃とした場合と25℃とした場合とでは、いずれもプラスチックボールに色調の変化は見られなかった。
すなわち、Pdイオンのナイロンによる吸着は溶媒をエタノールとした場合で、処理温度を80℃とした場合に生じた。

【0024】
[6,6ナイロン:Agイオンの吸着試験]
図7は、6,6ナイロンからなるプラスチックボールをAgイオンを含む金属前駆体溶液に投入し、処理温度80℃としてAgの吸着試験を行った結果を示す。
図7に示すように、水を溶媒としたAgイオンを含む金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入して反応処理を行った後も、プラスチックボールは白色のままで色調は変化しなかった。同様に、処理温度40℃とした場合も処理温度25℃とした場合も、反応処理によってプラスチックボールの色調は変化しなかった。

【0025】
図7示すように、溶媒をエタノールとした場合は、反応処理操作を行うとプラスチックボールは白色から黄色へと色調が変化した。すなわち、溶媒をエタノールとし処理温度を80℃とした場合はプラスチックボールにAgが吸着された。
また、溶媒をエタノールとした場合で、処理温度を40℃とした場合も処理温度を25℃とした場合も、ともに反応処理後のプラスチックボールの色調は変化しなかった。
すなわち、Agイオンのナイロンによる吸着は溶媒をエタノールとした場合で、処理温度を80℃とした場合に生じた。

【0026】
(処理温度による吸着作用のまとめ:6,6ナイロン)
上述した、6,6ナイロンからなるプラスチックボールを金属前駆体溶液に投入して金属イオンの吸着試験を行った結果は、吸着作用が反応処理温度に依存することを示す。表1に処理温度によって反応処理後のプラスチックボールの色調が白色からどのように変化したかを整理して示す。
【表1】
JP2017035660A_000003t.gif

【0027】
表1において、×印は、反応処理によって色調の変化が認められなかったもの、言い換えれば金属イオンの吸着作用が認められなかったものである。Au、Pd、Agの明確な吸着が認められたのは処理温度が80℃のときであり、PdとAgについては、溶媒としてエタノールを使用したときのみであった。ただし、溶媒を水として処理温度が40℃の場合にわずかにAuの吸着が認められた。

【0028】
表1に示す実験結果は、ナイロンボールを用いてAu、Pd、Agを吸着する場合は、80℃程度に加熱する方法が金属イオンを効率的に吸着する方法として有効であることを示す。
実験によると、プラスチックボールに金属が吸着される場合、金属はプラスチックボールの表面から内部に浸透して吸着される。処理温度を80℃としたときに効果的に金属の吸着作用が生じる理由としては、加熱によりプラスチックボールが柔軟化しプラスチックボールの内部に金属イオンが取り込まれやすくなり、プラスチックボールの内部で金属イオンが還元され金属ナノ粒子として生成された(プラスチックボールと金属ナノ粒子とが複合化)ものと考えられる。

【0029】
[ポリエチレン:Auイオンの吸着試験]
図8、9は、ポリエチレンからなるプラスチックボールについて[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液を使用し、処理温度80℃でAuの吸着試験を行った結果を示す。
図8は金属前駆体溶液の溶媒として水を使用した場合、図9はエタノールを使用した場合である。

【0030】
図8の紫外線分光光度計により測定したスペクトルのうち、スペクトルaは、ポリエチレンからなるプラスチックボールを金属前駆体溶液に投入した直後における金属前駆体溶液の吸収スペクトル、スペクトルbは反応処理操作を行った後の吸収スペクトルである。
スペクトルcは金属前駆体溶液のみを反応処理と同一の加熱保持操作を行った後の吸収スペクトルである。
プラスチックボールを投入して反応処理を経過させたスペクトルbと金属前駆体溶液を加熱処理したのみのスペクトルcとを比較すると、スペクトルbはスペクトルcよりもわずかに低いのみであり、紫外線分光光度計による測定結果からは、ポリエチレンからなるプラスチックボールにはほとんどAuが吸着されていないことが示唆される。

【0031】
図8の容器の外観写真は、金属前駆体溶液にプラスチックボールを投入した直後と反応処理操作を経過させた後とで、プラスチックボールの色調に変化がないことを示す。
すなわち、溶媒を水とした[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液にポリエチレンからなるプラスチックボールを投入してもプラスチックボールにAuが吸着されないということができる。

【0032】
エタノールを溶媒として使用した場合の、図9の紫外線分光光度計のスペクトルで、反応処理を施した後のスペクトルbと、金属前駆体溶液を加熱処理したのみのスペクトルcとはほぼ重複している。
また、容器の外観写真からも、反応処理の前後でプラスチックボールの色調が変化していない。すなわち、エタノールを溶媒とする場合もポリエチレンからなるプラスチックボールにAuが吸着されないということができる。

【0033】
[ポリエチレン:Pdイオンの吸着試験]
図10はポリエチレンからなるプラスチックボールを、[PdCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液に投入して反応処理を行った実験結果を示す。
図10において、溶媒を水とした場合も、溶媒をエタノールとした場合も、ともに反応処理の前後でプラスチックボールの色調に変化は見られない。
この実験結果から、ポリエチレンからなるプラスチックボールにPdイオンは吸着されないということができる。

【0034】
[ポリエチレン:Agイオンの吸着試験]
図11はポリエチレンからなるプラスチックボールを、Agイオンを含む金属前駆体溶液に投入し、処理温度80℃で反応処理を行った実験結果を示す。
図11に示すように、溶媒を水とした場合、溶媒をエタノールとした場合のいずれの場合も、投入したプラスチックボールの色調に変化は見られない。この実験結果から、ポリエチレンからなるプラスチックボールにAgイオンは吸着されないということができる。

【0035】
[ポリプロピレン:Auイオンの吸着試験]
図12、13は、ポリプロピレンからなるプラスチックボールを使用し、[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液を用いてAuの吸着試験を行った結果を示す。
溶媒を水とした場合のスペクトルbを見ると[AuCl4]-イオンによる吸収強度が減退している。この測定結果は、反応処理により[AuCl4]-イオンがプラスチックボールに吸着されたことを示唆する。しかしながら、反応処理前後のプラスチックボールの色調変化を見ると、プラスチックボールには色調の変化がない。
この実験結果は、反応処理によりポリプロピレンからなるプラスチックボールにAuイオンが吸着されたものの、Auイオンが還元されなかったため、Auとして吸着されなかったものと考えられる。すなわち、Auイオンはポリプロピレンの表面に吸着されたものの、ポリプロピレンはAuイオンを還元する作用を備えないことから、Au粒子を生成することができなかったと考えられる。

【0036】
溶媒をエタノールとした場合のスペクトルでは、反応処理後のスペクトルbに[AuCl4]-イオンによる吸収ピークが表れている。したがって、反応処理後も溶媒中に[AuCl4]-イオンが残留しており、プラスチックボールにはAuイオンが吸着されていないことが示唆される。容器の外観写真からも容器に投入したプラスチックボールは色調が変化していないことがわかる。これらの実験結果からポリプロピレンからなるプラスチックボールにはAuイオンが吸着されないということができる。

【0037】
[ポリプロピレン:Pdイオンの吸着試験]
図14はポリプロピレンからなるプラスチックボールを、[PdCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液に投入して反応処理を行った実験結果を示す。
図14において、溶媒を水とした場合も、溶媒をエタノールとした場合も、ともに反応処理の前後でプラスチックボールの色調に変化は見られない。この実験結果から、ポリプロピレンからなるプラスチックボールにPdイオンは吸着されないということができる。

【0038】
[ポリプロピレン:Agイオンの吸着試験]
図15はポリプロピレンからなるプラスチックボールを、Ag+イオンを含む金属前駆体溶液に投入して反応処理を行った実験結果を示す。
図15に示すように、溶媒を水とした場合、溶媒をエタノールとした場合のいずれの場合も、投入したプラスチックボールの色調に変化は見られない。この実験結果から、ポリプロピレンからなるプラスチックボールにAgイオンは吸着されないということができる。

【0039】
[アクリル樹脂:Auイオンの吸着試験]
図16、17は、アクリル樹脂からなるプラスチックボールを使用し、[AuCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液を用いて処理温度80℃でAuの吸着試験を行った結果を示す。
図16、17に示す紫外線分光光度計のスペクトルから、反応処理を経過した後のスペクトルbには、いずれも[AuCl4]-イオンの吸収ピークが表れており、反応処理経過後も溶媒中にAuイオンがそのまま残留していることを示唆する。
溶媒を水とした図16の容器の外観写真から、プラスチックボールの色調は反応処理によって変化していない。したがって、プラスチックボールにはAuが吸着されないといえる。
溶媒をエタノールとした場合の図17は、反応処理によってプラスチックボールが溶解し容器の底に沈殿したことを示す。
溶媒と水とした場合、エタノールとした場合のいずれの場合も、アクリル樹脂からなるプラスチックボールにはAuが吸着されないということができる。

【0040】
[アクリル樹脂:Pdイオンの吸着試験]
図18はアクリル樹脂からなるプラスチックボールを、[PdCl4]-イオンを含む金属前駆体溶液に投入して反応処理を行った実験結果を示す。
図18において、溶媒を水とした場合には、反応処理の前後でプラスチックボールの色調に変化はなく、溶媒をエタノールとした場合に、反応処理によってプラスチックボールが溶解して沈殿した。この実験結果から、アクリル樹脂からなるプラスチックボールにPdイオンは吸着されないということができる。

【0041】
[アクリル樹脂:Agイオンの吸着試験]
図19はアクリル樹脂からなるプラスチックボールを、Ag+イオンを含む金属前駆体溶液に投入して反応処理を行った実験結果を示す。
図19において、溶媒を水とした場合は反応処理の前後でプラスチックボールの色調に変化がなく、溶媒をエタノールとした場合は反応処理によってプラスチックボールが溶解して、沈殿した。この実験結果から、アクリル樹脂からなるプラスチックボールにAgイオンは吸着されないということができる。

【0042】
(プラスチックボールによる吸着作用のまとめ)
上述した6,6ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂からなるプラスチックボールについて、処理温度80℃で吸着試験を行った結果をまとめると表2のようになる。表2中で○印はプラスチックボールに金属イオンが吸着されたもの、×印は金属イオンが吸着されなかったもの、-印はプラスチックボールが溶解して沈殿したものである。

【0043】
【表2】
JP2017035660A_000004t.gif

【0044】
表2は、上記4種のプラスチックボールのうち、唯一、6,6ナイロンからなるプラスチックボールのみがAuイオン、Pdイオン、Agイオンを吸着する作用を有することを示している。4種のプラスチックボールのうち6,6ナイロンからなるプラスチックボールのみが金属イオンを吸着する作用を有しているのは、6,6ナイロンのみが還元性を備える官能基であるアミンを備え、他のプラスチックボールは還元性を備える官能基を備えていないからである。

【0045】
<金属を吸着した後のプラスチックボールの色調>
図20、21は6,6ナイロンからなるプラスチックボールについて反応処理した後、溶媒から取り出したプラスチックボールの写真である。図20は水を溶媒としたもの、図21はエタノールを溶媒としたものである。いずれも未処理のボールと、処理温度80℃、40℃、25℃のボールを示す。
図20でAuを吸着したものについて見ると、処理温度80℃のものが黒色で、処理温度40℃、25℃のものがAuナノ粒子に特徴的な薄紫色を呈している。溶液中での色調変化を観察する実験では、処理温度80℃のものについては明確に色調が変化し、処理温度40℃のものは僅かに色調が変化したのみであった。処理温度40℃と25℃のプラスチックボールが薄紫色を呈していることから、処理温度40℃、25℃においても、プラスチックボールの表面に僅かにAuイオンが吸着されたことを示す。
PdとAgについてのプラスチックボールも、処理温度80℃のものには僅かに色調の変化が認められる。これも僅かにPd、Agが吸着されて還元されたものと考えられる。

【0046】
図21のエタノールを溶媒としたものでは、処理温度80℃のときの色調の変化が明確である。水を溶媒とした場合と比較して、エタノールを溶媒とした場合の方が処理温度40℃と25℃での色調の変化が明らかである。したがって、エタノールを溶媒とした場合は、水を溶媒とした場合にくらべてナイロンボールにAu、Pd、Agが吸着されやすくなることが示唆される。
表1に示したように、前述したAuの吸着試験においては、処理温度を40℃、25℃とした場合に、ナイロンボールに金属イオンが吸着される作用が明確には認められなかった。溶液からナイロンボールを取り出した後に色調の変化が見られた理由は、ナイロンボールに僅かに吸着されていた金属イオンが時間経過とともに還元され、金属ナノ粒子として生成されたものと考えられる。ただし、処理温度40℃、25℃の場合にナイロンボールと複合化した金属粒子は処理温度80℃と比較するとはるかに少ない。

【0047】
図22、23は、6,6ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンからなるプラスチックボールについて、処理温度80℃で反応処理した後、溶媒から取り出したプラスチックボールの写真である。図22は水を溶媒としたもの、図23はエタノールを溶媒としたものである。
図22では、ナイロンボールによるAuの吸着が明確であり、ナイロンボールによるPdとAgの色調変化が僅かに見られ、ポリエチレンとポリプロピレンについてはいずれの金属についても色調の変化は見られない。
図23においても、ナイロンボールによるAu、Pd、Agの色調の変化が顕著であり、ポリエチレン、ポリプロピレンについての色調の変化は見られない。
これらの実験結果は、ナイロンボールについて特徴的に金属イオンが吸着されるという前述した実験結果と一致する。

【0048】
<異形材による金属イオンの吸着例>
上述した実験では、球体状のプラスチックボールを吸着材として金属イオンの吸着試験を行った。金属イオンの吸着に用いられる吸着材は球体状に限られるものではない。
図24、25に、円筒状及び板状の吸着材についてAu、Pd、Agの吸着試験を行った結果を示す。いずれの吸着材も6,6ナイロンからなる。
図24は、水を溶媒として処理温度80℃で反応処理したものであり、とくにAuが効果的に吸着されている様子がわかる。図25はエタノールを溶媒として処理温度80℃で反応処理したものであり、図25では、Au、Pd、Agが吸着されている様子がわかる。
このように金属イオンの吸着材は球体に限らず、任意の立体形状に形成することができ、シート状等に形成することも可能である。金属イオンは立体の表面に吸着されるから、円筒体状のような形態の場合には内筒面のような内側に露出する部位にも吸着される。

【0049】
<電子線マイクロアナライザ測定>
図26に6,6ナイロンからなるプラスチックボールにAuを吸着したときの電子線マイクロアナライザ測定(EPMA)結果を示す。
図26(a)は反応処理前のプラスチックボールについての測定結果、図26(b)はAuを吸着した後の測定結果である。
この測定結果は、反応処理によってプラスチックボールにAu(ナノ粒子)が吸着されていること、Auがプラスチックボールの表層からかなり内部に浸透した状態でナノ粒子として生成されていることを示す。

【0050】
図27に6,6ナイロンからなるプラスチックボールにAgを吸着したときの電子線マイクロアナライザの測定結果を示す。図27(a)が反応処理前のプラスチックボール、図27(b)がAgを吸着した後のプラスチックボールである。
この測定結果も、反応処理によってプラスチックボールにAgが吸着されたこと、Auに比べるとプラスチックボールの表面層の近傍ではあるが、プラスチックボールの表層から内部に浸透してAgが生成されていることがわかる。

【0051】
この電子線マクロアナライザの測定結果と、ナイロンボールを80℃程度に加熱することにより、40℃あるいは25℃といった低温の場合よりも効率的に金属が吸着できるという実験結果を考慮すると、ナイロンボールによる金属の吸着作用は次のように考えられる。すなわち、ナイロンボールを加熱するとナイロンボールが柔軟となり、ボールの表面からボール内部へ金属イオンが浸透しやすくなり、ボールの内部に浸透した金属イオンがナイロンボールにより還元されてボール内部で金属ナノ粒子として生成される。40℃あるいは25℃といった温度では、ナイロンボールに金属イオンが浸透する作用が弱く、ボールの表面近傍にのみ金属イオンが存在するため、ボールの内部で金属粒子が生成される作用は弱くなる。

【0052】
本発明に係る吸着材は水やエタノールといった溶媒に対して不溶性で、金属イオンを還元する還元性を備える高分子材からなるが、同時に吸着材は高分子材の内部に金属イオンが浸透しやすいものである必要がある。高分子材に求められる金属イオンの浸透性は、常温で所要の浸透性を備える高分子材であってもよいし、加熱することにより浸透性を向上する高分子材であってもよい。

【0053】
金属イオンの吸着材に金属を吸着して金属と吸着材とが複合化された後、金属を回収する方法としては、支持体である高分子材を焼却して金属を回収する方法や、化学的処理によって高分子材を複合化された金属から除去する方法が利用できる。吸着材に吸着された金属は吸着材に含浸された状態になるから、焼却方法が回収方法としては手軽である。

【0054】
本発明方法に係る金属イオンの吸着方法は、溶媒に不溶性の高分子材からなる吸着材を金属含有液に含浸させるだけで金属イオンを吸着することができ、金属含有液からきわめて簡単に金属イオンを吸着することができる。金属含有液の溶媒も、実験例で使用した水、エタノール以外に、適宜溶媒についても適用できる。
また、ナイロン等の量産品を吸着材に使用することにより、コスト面からも有用な吸着材として利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
5 金属前駆体溶液
10 容器
15 プラスチックボール



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26