TOP > 国内特許検索 > 電極材料及びその製造方法 > 明細書

明細書 :電極材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-054705 (P2017-054705A)
公開日 平成29年3月16日(2017.3.16)
発明の名称または考案の名称 電極材料及びその製造方法
国際特許分類 H01M   4/131       (2010.01)
H01M   4/48        (2010.01)
H01M   4/62        (2006.01)
FI H01M 4/131
H01M 4/48
H01M 4/62 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2015-178100 (P2015-178100)
出願日 平成27年9月10日(2015.9.10)
発明者または考案者 【氏名】新井 進
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5H050
Fターム 5H050AA02
5H050BA17
5H050CB02
5H050DA03
5H050DA10
5H050EA04
5H050FA09
5H050GA10
5H050GA13
5H050GA15
5H050GA24
5H050HA05
5H050HA10
要約 【課題】 導電助剤を使用することなくシリカを活物質として使用することを可能とする電極材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る電極材料は、基材上に、銅からなる薄板状の析出物が交錯する形態を備える銅三次元ナノ構造体が形成され、前記銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子が担持されていることを特徴とする。
銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させる方法としては、ゾルゲル法を利用して銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を析出させる方法が有効である。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
基材上に、銅からなる薄板状の析出物が交錯する形態を備える銅三次元ナノ構造体が形成され、
前記銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子が担持されていることを特徴とする電極材料。
【請求項2】
前記シリカ粒子が、粒径50nm~300nmの球体状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電極材料。
【請求項3】
基材上に、銅からなる薄板状の析出物が交錯する形態を備える銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、
ゾルゲル法により前記銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を析出させる工程と、
を備えることを特徴とする電極材料の製造方法。
【請求項4】
前記ゾルゲル法により銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を析出させる工程として、
エタノールと、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を攪拌する工程と、
攪拌後の溶液に銅三次元ナノ構造体を形成した基材を浸漬させる工程と、
次いで、アンモニア水を加えて反応させる工程と
を備えることを特徴とする請求項3記載の電極材料の製造方法。
【請求項5】
前記基材上に銅三次元ナノ構造体を形成する工程において、
添加剤としてポリアクリル酸を加えた銅めっき浴を使用し、ポリアクリル酸のモル濃度cを、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲に設定して、電解銅めっき法により銅三次元ナノ構造体を形成することを特徴とする請求項3または4記載の電極材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2記載の電極材料を負極に使用したことを特徴とするリチウムイオン電池。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電極材料及びその製造方法に関し、より詳細にはリチウムイオン電池の負極等に用いられる電極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、基材上に、薄い板状のめっき金属からなる析出物がランダムに交錯した形態となる構造体を、電解めっき法により形成する方法を提案した(特許文献1)。この構造体を銅めっきにより形成したものが銅三次元ナノ構造体である。
この銅三次元ナノ構造体は、薄い板状の析出物がランダムに交錯した形態となるため、その内部に他の物質を取り込むといったことが可能であり、たとえば、銅三次元ナノ構造体の内部にリチウムイオンの理論容量が大きな物質を取り込むことにより、リチウムイオン電池の負極材料として利用することができる。
【0003】
現行のリチウムイオン電池では、負極の活物質としてグラファイト(理論容量:372mAh/g)が使用されている。リチウムイオン電池の負極の活物質には、グラファイトよりも理論容量が大きな材料として、Sn(理論容量:991mAh/g)、Si(理論容量:4200mAh/g)、シリカ(SiO2 理論容量:約2000mAh/g)がある。したがって、負極の活物質として、グラファイトの替りにSnあるいはSi、シリカを利用することができれば、従来よりも充放電特性の優れたリチウムイオン電池を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-042776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シリカ(SiO2)は絶縁体であるため、活物質として電極材料にそのまま使用することができず、導電助剤等を使用して導電性を付与する処理をする必要がある。しかしながら、導電助剤を使用する方法では、シリカがリチウムを吸排する作用が制限され、満足する充放電特性が得られないという問題がある。
本発明は、銅三次元ナノ構造体にシリカを担持させることにより、導電助剤を使用することなく活物質としてシリカを使用することを可能にする電極材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電極材料は、基材上に、銅からなる薄板状の析出物が交錯する形態を備える銅三次元ナノ構造体が形成され、前記銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子が担持されていることを特徴とする。
銅三次元ナノ構造体に担持されているシリカ粒子は、銅三次元ナノ構造体を構成する銅の薄板状の析出物の表面に接触した状態で支持される。銅三次元ナノ構造体は銅からなる薄板状の析出物がランダムに交錯した形態となるもので、複雑な内部空間を備えている。シリカ粒子はこれらの複雑な内部領域にも析出して担持される。
シリカ粒子は銅の薄板状の析出物の担持されて支持される。シリカ粒子は、粒子同士が凝集せず、均一に、銅の薄板の表面に担持され、シリカ粒子がある程度間隔をあけて担持される形態と、薄板の全面を被覆するように担持される形態がある。
【0007】
担持されるシリカ粒子の形状及び大きさは限定されないが、少なくとも銅三次元ナノ構造体の内部に取り込まれる形状及び大きさである必要がある。粒径50nm~300nmの球体状に形成されたシリカ粒子であれば、銅三次元ナノ構造体の全域に確実に担持される。
銅三次元ナノ構造体を形成する基材には、通常、銅が用いられるが、銅以外の金属を用いることもできる。また、銅板の表面にニッケルを被覆して基材とするといったように、異種金属により被覆した構造の基材を使用することもできる。
【0008】
また、本発明に係る電極材料の製造方法は、基材上に、銅からなる薄板状の析出物が交錯する形態を備える銅三次元ナノ構造体を形成する工程と、ゾルゲル法により前記銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を析出させる工程と、を備えることを特徴とする。
ゾルゲル法を利用して銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を析出させる方法は、複雑な三次元構造を備える銅三次元ナノ構造体の内部領域を含む全域にシリカ粒子を担持させることができる点で有効である。ゾルゲル法による場合は、銅三次元ナノ構造体の内部にまでゾル溶液が浸透し、したがって銅三次元ナノ構造体の内部領域においてもシリカ粒子を析出させることができるからである。いいかえれば、ゾルゲル法を利用して銅三次元ナノ構造体の全体にシリカ粒子を担持させるには、銅三次元ナノ構造体の内部にまで確実にゾルを浸透させ、銅三次元ナノ構造体の内部を含む全域でシリカ粒子が析出され、担持されるようにする必要がある。
【0009】
前記ゾルゲル法により銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を析出させる工程としてはシリカ前駆体を用いる一般的なゾルゲル法によりシリカ粒子を析出させる方法を利用すればよい。
エタノールと、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を攪拌する工程と、攪拌後の溶液に銅三次元ナノ構造体を形成した基材を浸漬させる工程と、次いで、アンモニア水を加えて反応させる工程により、銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を容易に担持させることができる点で有効である。なお、ゾルゲル法によりシリカ粒子を担持させる際に、カルボキシルメチルセルロース(CMC)等のバインダー成分を加えてもよいし、バインダー成分を加えなくてもよい。
【0010】
基材上に銅三次元ナノ構造体を形成する際には、添加剤としてポリアクリル酸を加えた銅めっき浴を使用し、ポリアクリル酸のモル濃度cを、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲に設定して、電解銅めっきを施すことにより、銅三次元ナノ構造体を確実に形成することができる。
なお、基材上に銅三次元ナノ構造体を形成する際に、銅三次元ナノ構造体が過度に緻密な構造にならないようにするのがよい。本発明方法ではゾルゲル法を利用して銅三次元ナノ構造体の内部領域を含む全域にシリカ粒子を析出させるから、銅三次元ナノ構造体をある程度疎な構造とし、銅三次元ナノ構造体の内部にゾル溶液が浸透しやすくするようにするとよい。
【0011】
本発明に係る電極材料は、銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子が担持された構造を備えることから、絶縁材であるシリカ粒子を取り込んだ形態で導電性が確保される。この結果、導電助剤といった導電性を付与する操作をすることなく、シリカ粒子を活物質として備える電極材料として利用することができる。
シリカの理論容量はグラファイトを上回っており、シリカを活物質として使用することにより、グラファイトを活物質としている従来のリチウムイオン電池の充放電特性を改善することができる可能性がある。実験によれば、本発明に係る電極材料をリチウムイオン電池の負極材として利用することにより、グラファイトを負極材とするリチウムイオン電池を上回る充放電特性が得られており、本発明に係る電極材料を負極材として使用することによりリチウムイオン電池の充放電特性を効果的に向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電極材料は、導電助剤を用いることなく、シリカを活物質として利用した電極材料として提供される。また、本発明に係る電極材料の製造方法によれば、銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持した電極材料を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.1 Adm-2、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとしたサンプルのSEM像である。
【図2】銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を1.0 Adm-2、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとしたサンプルのSEM像である。
【図3】銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を1.0 Adm-2、シリカ粒子を合成する反応時間を60minとしたサンプルのSEM像である。
【図4】銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.5 Adm-2、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとしたサンプルのSEM像である。
【図5】銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.5 Adm-2、シリカ粒子を合成する反応時間を60minとしたサンプルのSEM像である。
【図6】図1のサンプルについて充放電特性(サイクル特性)を測定した結果を示すグラフである。
【図7】図2のサンプルについて充放電特性(サイクル特性)を測定した結果を示すグラフである。
【図8】図3のサンプルについて充放電特性(サイクル特性)を測定した結果を示すグラフである。
【図9】図4のサンプルについて充放電特性(サイクル特性)を測定した結果を示すグラフである。
【図10】図5のサンプルについて充放電特性(サイクル特性)を測定した結果を示すグラフである。
【図11】銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.1 Adm-2、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとし、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を溶解したアンモニア水を用いて反応させたサンプルのSEM像である。
【図12】図11のサンプルについて充放電特性(サイクル特性)を測定した結果を示すグラフである。
【図13】図11のサンプルについてレート特性を測定した結果を示すグラフである。
【図14】銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.1 Adm-2、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとし、CMCを溶解していないアンモニア水を用いて反応させたサンプルについて、充放電特性を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電極材料は、基材上に形成した銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させて構成されている。この電極材料は、基材上に銅三次元ナノ構造体を形成し、ゾルゲル法を利用して銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させることにより作製することができる。
以下に、電解めっき法により、基材上に銅三次元ナノ構造体を形成し、銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させた実験例について説明する。

【0015】
(銅三次元ナノ構造体の作製)
銅三次元ナノ構造体は、下記のめっき浴で添加剤としてポリアクリル酸を使用し、電解めっき法により形成した。
銅めっき浴:
CuSO4・5H2O 0.85M
H2SO4 0.55M
添加剤:
ポリアクリル酸(PA-5000) 3×10-4 M

【0016】
銅三次元ナノ構造体は、銅からなる薄板状(厚さ数十nm)の電析物が基材上にランダムに交錯した形態に形成される。この銅三次元ナノ構造体は、添加剤として使用するポリアクリル酸の添加量を調節することによって形成することができる。
銅三次元ナノ構造体を形成するためのポリアクリル酸の添加量として好適なモル濃度cは2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲にあり、とくに好適なモル濃度範囲cは1×10-4 M<c<5×10-4 Mである(特許文献1)。

【0017】
銅三次元ナノ構造体を形成する電析条件は以下のように設定した。実験では、電流密度を変えた複数種のサンプルを作製し、銅三次元ナノ構造体の構造とシリカの担持状態を観察した。
電流規制法 電流密度:0.1、0.5、1.0 Adm-2
通電量: 27C
アノード: 含リン銅板
カソード: 純銅板(開口面積10cm2
液温: 25℃

【0018】
(シリカ粒子の担持方法:実施例1)
銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させる方法としてゾルゲル法を利用した。
上述した電解めっきにより銅板上に銅三次元ナノ構造体を形成した後、下記の方法により、銅三次元ナノ構造体上にシリカ粒子を担持させた。
まず、エタノール40mLとオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)10mLを100mLビーカーに入れ、スターラーで攪拌する。
次いで、銅三次元ナノ構造体を形成した銅板を、ビーカーに収容されているエタノールとTEOSの混合液中に浸漬させる。
次いで、アンモニア水を50mL加え、常温で静置して反応させる。反応時間は、10minと60minとした。
反応後、ビーカーから銅板を取り出し、流水で濯いでサンプルとした。表1に、使用した浴組成を示す。

【0019】
【表1】
JP2017054705A_000003t.gif

【0020】
(シリカ粒子を担持した銅三次元ナノ構造体)
図1は、銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.1 Adm-2とし、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとしたサンプルのSEM像を示す。上段が低倍率、下段が高倍率であり、左側が表面SEM像、右側が断面SEM像である。SEM像で球状に見えるのがシリカ粒子である。
表面SEM像から、銅三次元ナノ構造体の薄板状の析出物(電析物)の表面にシリカ粒子が略均一な間隔をあけて付着している様子が見える。また、断面SEM像から、銅の薄板状の析出物が交錯した形態で銅三次元ナノ構造体が形成されていること、薄板状の銅の析出物に挟まれた内部(隙間)にシリカ粒子が入り込んで担持されていることがわかる。
銅の板状体(析出物)の表面に析出しているシリカ粒子の大きさは200~300nmであり、略均一な大きさのシリカ粒子が析出している。

【0021】
図2は、銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を1.0 Adm-2とし、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとしたサンプルのSEM像を示す。左側が表面SEM像、右側が断面SEM像である。
このサンプルについても、シリカ粒子が板状体の析出物(電析物)の表面に付着するようにして析出している。シリカ粒子の粒径は200~300nmで略均一である。この実験例の断面SEM像から、銅三次元ナノ構造体の表面付近にシリカ粒子が偏在し、銅三次元ナノ構造体の内部にシリカ粒子があまり担持されていないように見える。

【0022】
図3は、銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を1.0 Adm-2とし、シリカ粒子を合成する反応時間を60minとしたサンプルの表面SEM像を示す。上段が低倍率、下段が高倍率像である。
このサンプルのSEM像と、図2のSEM像(シリカ合成時間10min)とを比較すると、シリカの合成時間を60minと長く設定した場合も、合成されるシリカ粒子の大きさは変わらず(径200~300nm)、銅の析出物の表面に担持されているシリカ粒子の密度も図2の例と大きくは変わらない。

【0023】
図4は、銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.5 Adm-2とし、シリカ粒子を合成する反応時間を10minとしたサンプルの表面SEM像、図5は、銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を0.5 Adm-2とし、シリカ粒子を合成する反応時間を60minとしたサンプルの表面SEM像を示す。いずれも上段が低倍率、下段が高倍率像である。
図4、5から、銅三次元ナノ構造体を形成するときの電流密度を共通としてシリカ粒子を合成する時間を変えても(10min、60min)、銅の析出物の表面に担持されるシリカ粒子の大きさや密度はほとんど変わらない。

【0024】
上述した実験例に示すように、銅三次元ナノ構造体は銅の薄い板状体がランダムに交錯した形態として構成され、構造体の内部空間はきわめて複雑な形態となるが、ゾルゲル法によれば、銅三次元ナノ構造体の内部にまでシリカ粒子を容易に析出(担持)させることができる。

【0025】
(充放電特性試験)
上述した方法で作製した銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させたサンプルを負極に用いたコインセルを作製し、充放電試験を行った。
充放電試験に使用したセルは下記の構成からなる。
セル : 2電極式コインセル
正極 :Li
電解質: 1 M LiPF6 (EC : DEC = 1 : 1 vol%)
測定電位範囲:0 - 3 V
電流値: 0.1 C
CC(Constant Current)モード

【0026】
図6は、図1に示したサンプル(銅三次元ナノ構造体を形成する電流密度:0.1 Adm-2、シリカ粒子の反応時間:10min)を用いて作製したコインセルについて充放電特性を測定した結果を示す。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は、0.1557mgである。
充放電特性は50サイクルまで測定した。放電容量は50サイクル経過後も400mAh/g以上の放電容量が得られ、グラファイトを超える特性が得られた。

【0027】
図7は、図2に示したサンプル(電流密度:1.0 Adm-2、反応時間:10min)を用いて作製したコインセルについての充放電特性の測定結果を示す。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は、0.3812mgである。
充放電特性は、10サイクル経過するまでは250mAh/g程度であったが、10サイクル経過後は300mAh/gを超える特性が得られた。

【0028】
図8は、図3に示したサンプル(電流密度:1.0 Adm-2、反応時間:60min)を用いて作製したコインセルについての充放電特性を示す。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は0.4619mgである。
充放電特性は、測定開始当初から50サイクル経過時まで、略200mAh/g程度で一定していた。

【0029】
図7と図8のサンプルのシリカ粒子の担持量を比較すると、シリカの合成時間を60minとしたものの方が合成時間を10minとしたものと比較して、シリカ粒子の担持量が多くなっている。これはシリカの合成時間を長くしたためと考えられる。
図7と図8の充放電特性を比較すると、シリカ粒子の担持量が少ない図7の測定結果の方が放電容量が大きく表れている。この測定結果は、シリカ粒子の担持量を多くすることが必ずしも放電特性の向上をもたらさないことを示唆する。

【0030】
図9は、図4に示したサンプル(電流密度:0.5 Adm-2、反応時間:10min)を用いて作製したコインセルについての充放電特性を示す。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は0.2329mgである。
充放電特性は、測定開始当初から50サイクル経過時まで、略400mAh/gを超える放電容量値となった。

【0031】
図10は、図5に示したサンプル(電流密度:0.5 Adm-2、反応時間:60min)を用いて作製したコインセルについての充放電特性を示す。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は0.3517mgである。
充放電特性は、測定開始当初から50サイクル経過時まで、略200mAh/gを超える放電容量値となった。

【0032】
図9と図10のサンプルのシリカ粒子の担持量を比較すると、合成時間が60minであるサンプルの方が合成時間を10minとしたサンプルよりもシリカ粒子の担持量が多くなっている。また、図9、図10に示す測定結果は、シリカ粒子の担持量を多くしても充放電特性が向上しないことを示す。

【0033】
(シリカ粒子の担持方法:実験例2)
ゾルゲル法を利用して、銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させる際にバインダー成分としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)を利用する場合と、バインダー成分を利用しない場合について実験した。
電解めっき法を利用して基材上に銅三次元ナノ構造体を形成する方法は、実験例1におけるめっき条件と同様である。電析条件は、電流密度0.1 Adm-2とした。

【0034】
シリカ粒子を担持する操作として、まず、エタノール40mLとオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)10mLを100mLビーカーに入れ、スターラーで攪拌した。次いで、銅三次元ナノ構造体を形成した銅板を、ビーカーに収容されているエタノールとTEOSの混合液中に浸漬させた。
次いで、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を0.1g溶かしたアンモニア水50mLを混合液に加え、常温で10min反応させた。
反応処理後、ビーカーから銅板を取り出し、エアにより乾燥させてサンプルとした。
上記サンプルとは別に、カルボキシルメチルセルロース(CMC)をまったく加えていないアンモニア水50mLを混合液に加え、常温で10min反応させた別のサンプルを作製した。

【0035】
図11は、CMCを加える方法によって作製したサンプルのSEM像である。表面SEM像を見ると、実験例1の場合とは異なり、シリカ粒子が銅三次元ナノ構造体の析出物(薄板)の表面に緻密に、隙間なく析出している。高倍率の表面SEM像、断面SEM像からもシリカ粒子が緻密に析出している様子がわかる。なお、シリカ粒子の粒径は約50nm~300nmで、実験例1の場合と比較してややばらついている。

【0036】
図12は、CMCを加えたアンモニア水を使用したサンプルを負極に用いたコインセルを作製して充放電試験を行った結果を示す。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は0.170mgである。コインセルの測定条件は前述した実施例1での条件と同様で、電流値を0.2Cとした。
図12に示すように、測定開始時の放電容量は約600mAh/gで、測定開始から20サイクル程度を経過するまで徐々に放電容量が増大し、約1000mAh/gに達した後、100サイクル経過時まで徐々に放電容量が低下し、100サイクルで908mAh/gとなった。
この放電容量値は、前述した実験例1での放電容量値と比較して、大幅に改善されている。

【0037】
図13は、上記サンプルのレート特性を測定した結果を示す。レート特性は充放電サイクルを繰り返しながら、段階的に電流値を変えて、放電特性を測定する実験を行ったものである。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は0.158mgである。
実際には、充放電サイクルを開始した当初の電流値を0.1Cとし、10サイクル経過時ごとに、電流値を0.2C、0.5C、1.0Cと段階的に変更し、最後に0.1Cに戻す操作を行ってそれぞれの充放電容量を測定した。
図13は、電流値を上げるとともに、放電容量が段階的に低下し、電流値を元に戻すことによって、測定開始当初よりもやや上回るように放電容量が回復したことを示す。この結果から、放電サイクルを繰り返しても、銅三次元構造体にシリカ粒子が担持された構造が劣化していないことが分かる。

【0038】
図14は、CMCを加えていないアンモニア水を使用したサンプルを負極に用いたコインセルについて充放電試験を行った結果を示す。コインセルあたりのシリカ粒子の担持量は0.166mgである。
図14に示す実験結果は、測定開始時の放電容量が約800mAh/gで、CMCを加えたアンモニア水を使用したサンプルの測定開始時の放電容量を上回っている。また、50サイクル経過時までの測定結果であるが、このサンプルでは50サイクル経過時の放電容量が997mAh/gとなった。この放電容量値も、実験例1で示したサンプルの放電容量値を大きく上回っており、上述した、バインダー成分(CMC)を用いて作製したサンプルの測定結果と遜色のない充放電特性が得られた。。

【0039】
図13、14に示す実験結果は、ゾルゲル法を利用して銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させる場合に、バインダー成分(CMC)を使用する方法が必ずしも充放電特性を改善する上で有効とは限らないことを示している。すなわち、ゾルゲル法を利用してシリカ粒子を担持させる場合に、バインダー成分を使用する方法は必ずしも必須の方法ではないと言うことができる。

【0040】
上述した実験例2において、実験例1と比較して充放電特性が大幅に向上した理由としては、銅三次元ナノ構造体の内部にまで均一に緻密に、シリカ粒子が担持されたためであると考えられる。図1~4のSEM像と図12のSEM像とを比較すると、図12のサンプルでは、銅三次元ナノ構造体の表面に担持されているシリカ粒子の密度が、図1~4のサンプルと比較してより高密度になっている。すなわち、銅三次元ナノ構造体に、シリカ粒子を緻密に高密度に担持させることにより充放電特性を向上させることが可能である。

【0041】
銅三次元ナノ構造体は、薄板状の銅の板状体がランダムに交錯したきわめて複雑な三次元構造となっている。したがって、複雑形状の銅三次元ナノ構造体の内部にまで緻密にシリカ粒子が担持されることも重要な要件である。
図12の断面SEM像を見ると、銅三次元ナノ構造体の内部領域にも緻密にシリカ粒子が担持されている。このように、銅三次元ナノ構造体の内部領域にもシリカ粒子が確実に担持されるようにするには、銅三次元ナノ構造体の内部にまで十分にゾル溶液が浸透するようにする必要がある。そのためには、銅三次元ナノ構造が過度に高密度な構造とならないよう、やや疎の構造となるようにめっき条件を設定するのがよい。
シリカ粒子は活物質としてリチウムイオンを吸排する作用をなすから、シリカ粒子を緻密に高密度に担持することにより電池の充放電特性を効率的に向上させることが可能である。銅三次元ナノ構造体はその構造上、きわめて比表面積が大きいことから活物質であるシリカ粒子を多く保持することができ、リチウムイオンの吸排作用が効率的になされるという利点もある。

【0042】
上述した銅三次元ナノ構造体にシリカ粒子を担持させた電極材料を負極に使用して作製したコインセルについての充放電特性の測定結果は、シリカを銅三次元ナノ構造体に担持させることにより、絶縁体であるシリカを活物質として優れた充放電特性を備える電池が得られることを示す。絶縁体であるシリカを活物質として使用して充放電特性が得られる理由は、シリカ粒子が銅三次元ナノ構造体の銅からなる析出物に接触した状態で担持されることにより、導電助剤を用いることなく導電性が確保されるためと考えられる。

【0043】
シリカは、リチウムイオンの吸排に係る理論容量がグラファイトの約5倍もあり、リチウムイオン電池の負極材料として有力な潜在能力を有している。上述したシリカと銅三次元ナノ構造体とを組み合わせて電極材料とする方法は、導電助剤を用いることなく活物質としてシリカを使用した電極材料を提供する方法として有効な方法である。

図面
【図6】
0
【図7】
1
【図8】
2
【図9】
3
【図10】
4
【図12】
5
【図13】
6
【図14】
7
【図1】
8
【図2】
9
【図3】
10
【図4】
11
【図5】
12
【図11】
13