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明細書 :SiC単結晶の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-065976 (P2017-065976A)
公開日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 SiC単結晶の製造方法
国際特許分類 C30B  29/36        (2006.01)
C30B  19/02        (2006.01)
FI C30B 29/36 A
C30B 19/02
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2015-193699 (P2015-193699)
出願日 平成27年9月30日(2015.9.30)
発明者または考案者 【氏名】太子 敏則
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G077
Fターム 4G077AA02
4G077BE08
4G077CC04
4G077CG02
4G077CG05
4G077HA06
4G077HA12
4G077QA04
4G077QA12
要約 【課題】 SiC単結晶を育成する工程中において、溶液中のSiとCの組成比が変化することを抑え、高品質のSiC単結晶が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るSiC単結晶の製造方法は、SiCからなる材料20を使用し、材料20と溶剤金属30とを用いて、溶液法によりSiCの単結晶を製造する方法であって、材料20の上に溶剤金属30を配置して加熱し、材料20の上部に溶融金属30の融液を位置させ、溶剤金属30の融液にSiCの種結晶14を接触させ、溶剤金属30の融液中に材料20からSiとCを溶出させることにより、種結晶14にSiCを析出させてSiCの単結晶を成長させる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
SiCからなる材料を使用し、前記材料と溶剤金属とを用いて、溶液法によりSiCの単結晶を製造する方法であって、
前記材料の上に前記溶剤金属を配置して加熱し、前記材料の上部に前記溶融金属の融液を位置させ、
前記溶剤金属の融液にSiCの種結晶を接触させ、前記溶剤金属の融液中に前記材料からSiとCを溶出させることにより、前記種結晶にSiCを析出させてSiCの単結晶を成長させることを特徴とするSiC単結晶の製造方法。
【請求項2】
るつぼの底部側に前記SiCからなる材料を配置し、該材料の上に前記溶剤金属を配置して加熱することにより、SiCの単結晶を成長させることを特徴とする請求項1記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記るつぼとして、黒鉛からなるるつぼを使用することを特徴とする請求項2記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記材料として、ブロック形状のSiCからなる固化体を使用し、
前記材料の上に前記溶剤金属を配置し、前記材料の上部で前記溶剤金属の融液を保持することにより、るつぼを使用することなく、SiCの単結晶を成長させることを特徴とする請求項1記載のSiC単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記溶剤金属としてCrを用いることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のSiC単結晶の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は溶液法を用いるSiC単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは次世代のパワーデバイス用材料として注目されている。このSiCを電子デバイス用の材料として使用するためには高品質のSiCの単結晶を得る必要がある。単結晶の製造方法には様々あるが、溶液法(溶液引上げ法)は融液法により単結晶を製造するシリコンの単結晶の製造に類似し、高品質で大型の単結晶を効率的に製造する方法として有効である。しかしながら、SiCの単結晶の製造に溶液法を適用する場合に、SiCを出発材料とすると、SiCは常圧下で加熱した場合、2000℃で昇華してしまい、融液とならない。したがって、単に一般的な溶液法を利用する方法ではSiCの単結晶を作製することができない。
【0003】
このため、溶液法によってSiC単結晶を製造する方法として従来行われている手法は、黒鉛からなるるつぼに、組成材料であるシリコン(Si)を供給し、Siを融解してSiC単結晶を製造する方法である。この製造方法では、るつぼから黒鉛(C)がSiの融液に溶け出すことでSiにCが供給され、SiCの単結晶が成長する。
しかしながら、黒鉛のるつぼからSiの融液へ溶け出すC(カーボン)の量は僅かであり(1500℃で0.01%以下、2050℃で約0.45%)、SiC単結晶の成長速度を向上させるには、Siの融液により多くのCを溶解させる必要がある。Siの融液に効率的にCを溶解させる方法として考えられている方法が、CrやTi、AlをSiの融液に加えることによりCがSiの融液に溶け込みやすくする方法である(特許文献1、2、3)。この方法であれば、黒鉛のるつぼから効率的にSiの融液にCを溶解させることができ、SiCの単結晶を形成することができる。
【0004】
しかしながら、黒鉛のるつぼを使う方法では、SiCが結晶成長するにしたがってSi-Cの溶液から次第にSi成分が失われ、溶液の組成が変化してしまうという問題がある。また、黒鉛のるつぼから過剰にCが融液中に溶け出してSi-Cの溶液の組成が変化するという問題や、溶液の組成が変化することにより結晶転位が生じて完全な単結晶にならないという問題もある。
これらの問題を解消する方法として、SiC成長開始後にSiCを補給する方法(特許文献4)や、SiCを主成分とするるつぼを使用する方法(特許文献5)等がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-264790号公報
【特許文献2】特開2004-2173号公報
【特許文献3】特開2008-303125号公報
【特許文献4】特開2011-98853号公報
【特許文献5】特開2015-110501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、溶液法によりSiC単結晶を製造する方法において、溶液中のSiとCの組成の変化を生じさせずにSiC単結晶を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るSiC単結晶の製造方法は、SiCからなる材料を使用し、前記材料と溶剤金属とを用いて、溶液法によりSiCの単結晶を製造する方法であって、前記材料の上に前記溶剤金属を配置して加熱し、前記材料の上部に前記溶融金属の融液を位置させ、前記溶剤金属の融液にSiCの種結晶を接触させ、前記溶剤金属の融液中に前記材料からSiとCを溶出させることにより、前記種結晶にSiCを析出させてSiCの単結晶を成長させることを特徴とする。
溶剤金属は、溶融した融液がSiCからなる材料に接触する界面で材料が溶出しSiとCの融液となる作用をなす。融液中に溶出したSiとCは種結晶に析出し、種結晶からSiCの単結晶が成長する。
【0008】
本発明に係るSiC単結晶の製造方法においては、材料と溶剤金属とをるつぼに収容してSiC単結晶を成長させる方法と、るつぼを使用せずにSiC単結晶を成長させる方法が可能である。
るつぼを使用する方法では、るつぼの底部側に前記材料を配置し、該材料の上に前記溶剤金属を配置して加熱することにより、SiCの単結晶を成長させる。
るつぼとしては、黒鉛からなるるつぼが好適に使用できる。本方法では、黒鉛からなるるつぼを使用し、るつぼから前記溶剤金属の融液にカーボンが溶出することを抑制してSiC単結晶を成長させることができる。
【0009】
るつぼを使用しない方法では、前記材料として、ブロック形状のSiCからなる固化体を使用し、前記材料の上に前記溶剤金属を配置し、前記材料の上部で前記溶剤金属の融液を保持することにより、るつぼを使用することなく、SiCの単結晶を成長させる。
この方法では、溶剤金属の融液は材料の上面で表面張力によって保持される。材料に保持された融液に種結晶を接触させることによりSiCの単結晶を成長させることができる。材料をブロック状とした固化体とは、材料として保形性を保つことができる材料を使用するという意味であり、固化体の形態としては円柱状、角柱状等の任意の立体形状とすることができ、固化体の形成方法は焼結方法に限らず適宜方法により固化体としたものが使用できる。
【0010】
溶剤金属には、材料からSiCを溶出させることができる金属が用いられる。溶剤金属に求められる性質としては下記の1)~5)が挙げられる。
1)溶剤金属の融液にSiとCを固溶することができるもの。特に、Si及びCの固溶限が高く、ほぼ同等であるものが好ましい。
2)溶剤金属成分がSiC結晶中に偏析しにくい(取り込まれない)、あるいは混入量が極めて低いもの。
3)溶剤金属成分とSiおよびCが化合物を形成しにくいもの、あるいは、SiCの方が溶剤金属との化合物よりも形成されやすいもの。
4)高温下で溶剤金属成分単独、あるいはSiやCとの化合物の状態で、蒸発あるいは昇華しにくいもの。
5)溶剤金属の融点がSiCの分解点(2780℃)以下であるもの。
これらの条件を満足する溶剤金属の例として、Cr(クロム)とNi(ニッケル)等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るSiC単結晶の製造方法によれば、結晶育成工程において、溶液中のSiとCの組成比を変えずにSiC単結晶を製造することができる。溶液中のSiとCの組成比が変化しないことにより、高品質のSiC単結晶が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】SiC単結晶の製造方法の第1の実施の形態を示す説明図である。
【図2】るつぼに材料としてSiCセラミックスと溶剤金属を収納し、溶剤金属を溶融した後、室温まで降温させた状態におけるるつぼの断面写真である。
【図3】室温まで降温させた後のるつぼ表面のEPMA(電子線マイクロアナライザ)の分析結果(カーボンの分布)を示す図である。
【図4】室温まで降温させた後のるつぼ表面のEPMAの分析結果(クロムの分布)を示す図である。
【図5】室温まで降温させた後のるつぼ表面のEPMAの分析結果(シリコンの分布)を示す図である。
【図6】結晶成長実験後の支持軸の端面の写真(a)と、端面のラマンスペクトル(b)である。
【図7】結晶成長実験後のるつぼの種結晶直下の写真(a)と、ラマンスペクトル(b)である。
【図8】SiC単結晶の製造方法の第2の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明に係るSiC単結晶の製造方法は、溶液引上げ法によりSiCの単結晶を製造する方法に係るものであり、材料としてSiCからなる固体を使用し、SiCの固体と溶剤金属とを用いてSiCの単結晶を製造する。
図1は、本発明に係るSiC単結晶の製造方法についての第1の実施の形態の構成を示す。図1に示すSiC単結晶の製造方法においては、黒鉛(カーボン)からなるるつぼ10に、SiCの固体(焼結体)からなる材料20を収納し、材料20の上に溶剤金属30を配置してSiCの単結晶を製造する。

【0014】
図1において、るつぼ10は円筒状に形成された抵抗加熱型のカーボンヒータ12の内側にセットされ、るつぼ10の中心位置の上方にSiCの種結晶14を支持する支持手段16が配置される。支持手段16は種結晶14の昇降位置を位置決めする昇降機構を備える。種結晶14は支持手段16の下端部に取り付けられる。

【0015】
図1に示す結晶製造方法において特徴とする構成は、るつぼ10の底部にSiCからなる材料20を配置し、材料20の上に溶剤金属30を配置して加熱することにより、溶剤金属30の融液と材料20とを接触させ、溶剤金属30の融液に材料からSiとCを溶出させてSiCの単結晶を成長させるようにした点にある。
種結晶14は、溶剤金属30の融液の表面近傍で溶剤金属30の融液に浸漬するように支持手段16により高さ位置を制御する。溶剤金属30の融液に材料20からSiとCが溶出して種結晶14にSiCが析出し、種結晶からSiCの単結晶が成長する。

【0016】
本実施形態のSiCの単結晶の製造方法においては、材料20と溶剤金属30を収容するるつぼとして黒鉛からなるるつぼ10を使用している。したがって、SiCの単結晶を成長させている際にるつぼ10から溶剤金属30の融液にカーボンが溶け込む可能性がある。
図2は、るつぼAに材料としてSiCセラミックスBを収納し、SiCセラミックBの上に溶剤金属CとしてCrの粉体を供給し、約1950℃に加熱した後、室温まで降温させた後のるつぼの断面写真である。
図2で、溶剤金属とSiCの材料との界面部分(破線の四角:D部分)を見ると、SiCセラミックスの表面が凹凸状となり、SiCセラミックスから溶剤金属(Cr)の融液にSiCが溶出したことを示す。

【0017】
一方、カーボン製のるつぼの内面(内壁面の四角の部分:E部分)と溶剤金属との界面を見ると、るつぼの内面の形態がそのままの形状で残っており、るつぼから溶剤金属の融液にカーボンが溶出した痕跡が見られない。
この実験結果は、上記実験条件においては、るつぼから溶剤金属(Cr)の融液へカーボンが溶解することが抑制されており、SiCの焼結体から溶剤金属の融液にSiとCが優先的に溶解されることを示す。

【0018】
すなわち、黒鉛からなるるつぼに、SiCからなる材料と溶剤金属とをセットしてSiCの単結晶を製造する方法によれば、るつぼから溶剤金属の融液中にカーボンを溶出させることを抑制して、るつぼに収容したSiCからなる材料からSiとCを優先的に融液に溶出させることができる。SiCからなる材料から優先的に溶剤金属の融液中にSiCが溶出され、るつぼからカーボンが溶出されることが抑制されることから、単結晶の育成工程中において、融液中におけるSiとCの組成比がほとんど変化することがなく、したがって高品質のSiC単結晶を製造することが可能になる。

【0019】
図3、4、5は、図2に示したサンプル表面(融液が固化した部分の表面の中央部)におけるEPMA(電子線マイクロアナライザ)による分析結果を示す。図3はC(カーボン)、図4はCr(クロム)、図5はシリコン(Si)の元素分布を示す。図3、4、5から、シリコンとカーボンの分布が完全に一致し、シリコンとカーボンの分布域では、クロムと比較してシリコンとカーボンの分布が高いことがわかる。この測定結果は、溶融操作によりSiCが形成されたことを示している。すなわち、図2に示す形態において、溶剤金属の融液にSiCの種結晶を浸漬することにより、融液中からSiCが析出しSiCの単結晶が育成されることを示唆する。

【0020】
上記のように、SiCからなる材料を使用し、材料の上に溶剤金属を配置して溶剤金属を溶融させ、溶剤金属の融液に種結晶を接触させて種結晶からSiCの単結晶を製造する方法によれば、融液中のSiとCの組成比をほとんど変化させることなくSiCの単結晶を育成することができ、従来の溶液法においては、るつぼからCが融液中に溶出するために、SiとCの融液の組成が単結晶の育成中に変化してしまうという問題を解消することができる。

【0021】
また、図2に示すように、材料の上部(上面)に配置する溶剤金属の分量を、溶剤金属の融液によってSiCからなる材料の上面が薄く覆われる程度(融液の深さが浅くなる)に設定することにより、融液中におけるSiとCの分量比(融液の分量に対するSiとCの溶解量)が大きくすることができ、種結晶にSiCが析出しやすくなり、結晶成長速度を向上させ、より効率的にSiC単結晶を製造することが可能となる。

【0022】
本実施形態のSiC単結晶製造方法では、材料の上部に溶融金属の融液が常時存在する状態が維持されながら種結晶にSiCが析出する。したがって、材料は上部側から徐々に溶剤金属の融液に溶出して高さ方向に縮小するとともに、SiCの単結晶が成長していく。すなわち、SiCからなる材料の分量が減る(材料の高さが低くなる)とともに、SiCの単結晶が成長していくことになる。溶剤金属として、SiCの単結晶に取り込まれないか、取り込まれたとしても取り込まれる量がきわめて微小で、単結晶の育成工程中での蒸発量が僅かな金属を使用することにより、溶剤金属の分量を抑えながら、効率的にSiCからなる材料の全量を使用してSiCの単結晶を育成することができる。

【0023】
SiCの単結晶の製造に用いる材料としては、SiCセラミックスのような焼結体として提供されるもの、SiCの粉体、SiCの粉体を粉末成形したもの等の他に、SiCの単結晶を製造する過程で生じたSiCの多結晶等の製品に用いられなかった部分を材料として用いることもできる。
また、上記実施形態では、材料と溶剤金属を収容する容器として黒鉛のるつぼを使用する例を示したが、SiCからなるるつぼを容器として使用することも可能である。

【0024】
(実験例)
るつぼにSiCの焼結体からなる材料と、その上に溶剤金属としてCrを配置し、溶剤金属を溶融させた状態で、融液にSiCの種結晶を接触させる方法によりSiC単結晶を成長させる実験を行った。
結晶成長温度1800℃、成長時間120min、単結晶を支持する支持軸の回転速度2.0rpm、るつぼの軸線の回りの回転速度-2.0rpmとした。なお、結晶成長温度は図1のるつぼ10の下部の温度(るつぼを支持する支持部の温度)である。溶融金属を供給した部位の温度はこれよりも高く、1950℃程度と推定される。単結晶を支持する支持軸は高純度炭素材からなり、支持軸とるつぼは軸線の回りに相互に逆向きに回転させた。

【0025】
図6は、実験後にるつぼから引き上げた支持軸の端面の写真(図6(a))と端面のラマンスペクトル(図6(b))を示す。種結晶には円板状のSiCの単結晶を使用した。写真のpoint-1で示した部位は種結晶の部位、point-2は結晶成長した部位である。
図6(b)では、SiC単結晶のスペクトルを参照スペクトルとして示した。種結晶の部位(point-1)ではSiC単結晶と同様なシャープなスペクトルが得られている。また、結晶成長した部位(point-2)では、SiCの単結晶と比較するとシャープではないが、SiCの単結晶に対応するピークが見られ、SiC単結晶が成長したことがわかる。

【0026】
図7は、実験後のるつぼ側における、種結晶直下の写真(図7(a))とるつぼの上部のラマンスペクトル(図7(b))を示す。point-3は種結晶が残っている部位、point-4、point-5は結晶成長したと思われる部位である。point-3ではSiC単結晶のラマンスペクトルと同等のシャープなピークが見られている。point-4、point-5でシャープなピークが見られないが、SiC単結晶に対応するピークが見られている。

【0027】
材料の上で溶融している溶剤金属の融液にSiCの単結晶を接触させて結晶成長させる方法は、SiCの単結晶を融液の表面に正確に接触させる位置決め制御が難しい。上記実験結果は、位置決め制御が必ずしも正確ではなかったために、完全なSiC単結晶を成長させるまでには至らなかったが、SiCの種結晶とるつぼの双方に部分的にではあるが、SiCの単結晶が成長した結果を認めることができた。すなわち、溶融金属の融液にSiCの種結晶を接触させる方法によりSiC単結晶を育成する可能性を示すものである。

【0028】
(第2の実施の形態)
図8は、溶液法によりSiCの単結晶を製造する第2の実施形態を示す。
上述した第1の実施の形態においては、黒鉛のるつぼ10にSiCからなる材料20と溶剤金属30とを収容してSiCの単結晶を製造した。本実施形態においては、材料を収容するるつぼを用いずにSiCの単結晶を製造する。

【0029】
本実施形態のSiCの単結晶の製造装置は、図3に示すように、円筒状の抵抗加熱型のカーボンヒータ12と、カーボンヒータ12の内側に配置した支持手段16とを備える。支持手段16は種結晶14の昇降位置を位置決めする昇降機構を備える。種結晶14は支持手段16の下端部に取り付けられる。

【0030】
本実施形態においては、SiCの単結晶を作製するための材料20aとして保形性を備えるSiCの固化体を使用し、SiCの固化体からなる材料20aの上部(上面)に溶剤金属30を配置してSiCの単結晶を製造する。
本実施形態では、材料20aを、上面を平坦面とした円柱体状に形成しているが、材料20aの形態及び大きさは適宜設定することが可能であり、円柱体状の他に、角柱状、多角柱状等の任意の立体形状としたものを使用することができる。
SiCの固化体としては、SiCセラミックスのようなSiCの焼結体として形成したものの他、粉末成形等によって一定の保形性を備えるものとして形成されたものを使用することができる。

【0031】
材料20aは、その上部(上面)に溶剤金属30を配置するとともに、溶剤金属30の融液をその上部で保持しながらSiCの単結晶を製造する。溶剤金属30の融液を材料20aの上面で支持するため、材料20aは溶剤金属30を保持する保持面が水平方向となるように保持する。溶剤金属30の融液は表面張力によって材料20aの上面に支持されるから、材料20aの上部(上面)に供給する溶剤金属30の分量は、材料20aの上面で保持できる量に合わせて供給する。

【0032】
SiCの単結晶を育成する際は、図8に示すように、カーボンヒータ12で溶剤金属30を溶融し、溶剤金属30の融液の表面に種結晶14が接触するように支持手段16の昇降位置を制御する。
材料20aと溶剤金属30の融液との界面では、融液中に材料20aからSiとCが徐々に溶出し、種結晶13にSiCが析出してSiCの単結晶が成長する。溶剤金属30の融液に材料20aからSiCが溶出してSiCの単結晶が育成される作用は第1の実施の形態と同様である。

【0033】
本実施形態においては、材料を収容する容器(るつぼ)を使用せず、材料20aと溶剤金属30のみを使用してSiC単結晶を製造するから、SiC単結晶を製造する過程で材料20aと溶剤金属30以外の材料が混入することがない。すなわち、本方法によれば、るつぼからカーボンが融液中に溶出するといった、過剰な炭素が溶解し、混入するという問題を排除してSiCの単結晶を製造することができる。溶剤金属30の融液中のSiとCの組成比がSiC単結晶の育成工程においてまったく変化しないことにより、高品質のSiC単結晶を製造することが可能である。

【0034】
本実施形態においては、材料20aの上部で溶剤金属30の融液を保持しながらSiCの単結晶を製造するから、作製しようとするSiCの単結晶の大きさに合わせてSiCの固化体からなる材料20aを用意する必要がある。

【0035】
なお、上記各実施形態では材料と溶剤金属を加熱する手段として、カーボンヒータ12を使用したが、材料と溶剤金属とを加熱する手段はカーボンヒータを用いる例に限られるものではない。例えば、高周波コイルと発熱体を用いて高周波加熱する方法を利用することももちろん可能である。また、加熱炉の構造、SiC単結晶の育成工程における温度制御等についても適宜方法を利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 るつぼ
12 カーボンヒータ
14 種結晶
16 支持手段
20、20a 材料
30 溶剤金属
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7