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明細書 :太陽電池モジュールから有価物を回収する方法及び回収するための処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-093804 (P2016-093804A)
公開日 平成28年5月26日(2016.5.26)
発明の名称または考案の名称 太陽電池モジュールから有価物を回収する方法及び回収するための処理装置
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
H01L  31/042       (2014.01)
B09B   5/00        (2006.01)
FI B09B 3/00 303Z
H01L 31/04 500
B09B 3/00 304Z
B09B 5/00 ZABC
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2015-211632 (P2015-211632)
出願日 平成27年10月28日(2015.10.28)
優先権出願番号 2014227701
優先日 平成26年11月10日(2014.11.10)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】水口 仁
【氏名】高橋 宏雄
【氏名】金子 正彦
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4D004
5F151
Fターム 4D004AA23
4D004AB03
4D004AB05
4D004AB10
4D004AC05
4D004BA05
4D004BA10
4D004CA08
4D004CA24
4D004CA34
4D004CB32
4D004CB46
4D004CC02
4D004CC09
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA20
5F151EA20
要約 【課題】太陽電池モジュール中のエチレンビニルアセテート等のポリマーを完全分解し、有価物を低コストで短時間に回収する方法の提供。
【解決手段】酸化物半導体を担持した通気性を有する触媒担持ハニカム8の支持体の上に被処理物である太陽電池モジュール5を、受光面を上にし、太陽電池モジュール5のバック・シート7に該酸化物半導体を接触させ、酸素存在下において酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で太陽電池モジュール5を加熱することにより、太陽電池モジュール5中のポリマー4を水と炭酸ガスに完全分解し、ガラス1、太陽電池セル、インター・コネクタ3等の有価物を回収し、加熱処理室からの排ガスは、排気口に連結された酸化物半導体担持ハニカム装備のVOC浄化装置により、無害化される太陽電池から有価物を回収する方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
被処理物である太陽電池モジュールを、酸化物半導体を坦持した通気性を有する支持体の上に受光面を上にして載せることにより、前記太陽電池モジュールのバック・シートに酸化物半導体を接触させ、酸素存在下において、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で前記被処理物を加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解除去し、解体物から有価物を回収することを特徴とする太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項2】
被処理物である太陽電池モジュールのバック・シートを酸化物半導体の懸濁液にディップ・コーティングすることにより、前記太陽電池モジュールの前記バック・シートに酸化物半導体を接触させ、前記被処理物を通気性を有する支持体の上に置いて、酸素存在下において、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で前記被処理物を加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解除去し、解体物から有価物を回収することを特徴とする太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項3】
被処理物である太陽電池モジュールの1ないし4つの側面を酸化物半導体の懸濁液にディップ・コーティングすることにより、前記被処理物の側面に酸化物半導体を接触させ、前記被処理物を通気性を有する支持体の上に置いて、酸素存在下において、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で前記被処理物を加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解除去し、解体物から有価物を回収することを特徴とする太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項4】
前記有価物は、ガラス、太陽電池セル、インター・コネクターのいずれか、あるいはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項5】
前記被処理物中のポリマーを分解し、解体物から有価物を回収した後に、
回収物の中の太陽電池セルを硝酸に浸漬することにより、前記太陽電池セルの電極である銀または銀の化合物を溶解し、さらに塩酸を滴下することによって銀または銀の化合物の塩化物を生じさせ、銀または銀の化合物を回収することを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項6】
前記被処理物中のポリマーを分解除去し、解体物から有価物を回収する方法として、
前記解体物をステンレス網上に移し、20度以上40度以下の範囲で基板を傾け、第1の振動数で振動させ、まずガラス塊を落下・分離させ、次に、第2の振動数で振動させて、太陽電池セルとインター・コネクターを落下・分離させることを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項7】
前記第1の振動数は5Hz以上で20Hz以下の範囲にあり、前記第2の振動数は10Hz以上で200Hz以下の範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項8】
前記酸化物半導体を坦持した通気性を有する支持体として、縦横に複数本の溝を有するハニカムの上に、溝に合わせた形状で溝の深さ以下の厚みをもつステンレス網を載せたものを使用し、
前記ステンレス網の上に前記被処理物を載せて処理することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項9】
前記通気性を有する支持体として、前記酸化物半導体が担持されていないハニカムを使用し、
前記ハニカムの上にステンレス網を載せ、さらにその上に前記被処理物を置いて処理することを特徴とする請求項2または3に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項10】
酸素存在下において、前記被処理物を加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解除去する過程は、前記被処理物を載せた前記支持体を一定速度で搬送する連続処理装置に導入し、前記連続処理装置内の前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に加熱される加熱処理部内に滞在する期間に行われ、
前記解体物から有価物を回収する過程は、前記連続処理装置内の分別回収部において、まずガラスを回収し、次に太陽電池セルおよびインター・コネクターを回収することにより、分別・回収されることを特徴とする請求項1ないし請求項4および請求項6ないし請求項9に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項11】
前記加熱処理部は排気口を有し、前記排気口には前記酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を備えたVOC浄化装置が連結され、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に前記構造体が加熱されることによって、前記加熱処理部から排出され前記VOC浄化装置を通過するガスが無害のガスに浄化されることを特徴とする請求項10に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収する方法。
【請求項12】
太陽電池モジュールに酸化物半導体を接触させた状態で、被処理物である前記太陽電池モジュールを搭載した通気性を有する支持体を、一定速度で搬送するコンベヤと、
前記通気性を有する支持体に搭載された被処理物を、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解する加熱処理部と、
前記加熱処理部内にエアを供給するエアの供給機構とを有し、加熱処理により前記加熱処理部内に発生するガスを排出する排気口には、前記酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を備えたVOC浄化装置が連結され、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に前記構造体が加熱されることによって、前記加熱処理部から排出され前記VOC浄化装置を通過するガスが無害のガスに浄化され、前記加熱処理部において前記被処理物中の前記ポリマーを分解除去して得られる解体物から、有価物を回収する回収部とを備えることを特徴とする太陽電池モジュールから有価物を回収するための処理装置。
【請求項13】
前記加熱処理部はエアの導入口と排気口および前記通気性を有する支持体に搭載された被処理物を通過させる入口扉と出口扉を有する処理室であり、前記入口扉から前記被処理物が導入された後に前記入口扉が閉じ、前記入口扉と前記出口扉が閉じ、前記被処理物が停止した状態で前記被処理物中のポリマーが分解除去され、得られた解体物は出口扉から搬出されることを特徴とする請求項12に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収するための処理装置。
【請求項14】
前記解体物から有価物を回収する回収部において、まずガラスを回収し、次に太陽電池セルおよびインター・コネクターを回収することにより、分別・回収することを特徴とする請求項12または13に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収するための処理装置。
【請求項15】
被処理物である太陽電池モジュールに酸化物半導体を接触させた状態で、前記太陽電池モジュールを設置する加熱処理室を有し、前記加熱処理室において前記被処理物は、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に加熱されることにより、前記被処理物中のポリマーが分解され、前記加熱処理室は外部からエアを供給するエアの導入口と加熱処理により発生するガスを排出する排気口を有し、前記加熱処理室の排気口には、前記酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を備えたVOC浄化装置が連結され、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に前記構造体が加熱されることによって、前記加熱処理室から排出され前記VOC浄化装置を通過するガスが無害のガスに浄化され、前記加熱処理室において前記被処理物中のポリマーを分解除去して得られる解体物から、有価物を回収することを特徴とする太陽電池モジュールから有価物を回収するための処理装置。
【請求項16】
前記加熱処理室内の前記排気口の近くに前記酸化物半導体を坦持した通気性を有する構造体が配置され、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度に前記構造体が加熱されることにより、排気口へ導かれるガスが浄化されることを特徴とする請求項15に記載の太陽電池モジュールから有価物を回収するための処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールから有価物を回収する方法及び回収するための処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者の一人は有機物、ポリマー、ガス体等の被処理物を分解する方法として、半導体を真性電気伝導領域となる温度に加熱して電子・正孔キャリアーを大量に発生させ、被処理物を加熱処理により発現した強力な酸化力を持つ正孔に接触させ、酸素の存在下において被処理物を完全分解する処理方法(半導体の熱活性法,Thermal Activation of Semi-Conductors,以後TASCと略称する)について提案した(特許文献1、非特許文献1)。TASC法で使用できる半導体は高温、酸素雰囲気で安定な半導体であれば良い。従って、酸化物半導体が好んで用いられる。酸化物半導体の例として、BeO、CaO、CuO、CuO、SrO、BaO、MgO、NiO、CeO、MnO、GeO、PbO、TiO、VO、ZnO、FeO、PdO、AgO、TiO、MoO、PbO、IrO、RuO、Ti、ZrO、Y、Cr、ZrO、WO、MoO、WO、SnO、Co、Sb、Mn、Ta、V、Nb、MnO、Fe、YS、MgFe、NiFe、ZnFe、ZnCo、MgCr、FeCrO、CoCrO、CoCrO、ZnCr、CoAl、NiAl等がある。この中で、酸化クロム(Cr)は高温安定性(融点:約2200℃)に優れ、さらに飲料用のガラス瓶の染色にも使われる安全な材料である。また、酸化鉄(α-Fe:ヘマタイト)は安全で廉価な材料であるので実用性が高い。
【0003】
TASC法において用いられる酸化物半導体は室温においては絶縁体であるが、350-500℃に加熱すると半導体の真性電気伝導領域に入る。その際に、価電子帯に発生する正孔が強力な酸化力を発現し、ポリマー等から結合電子を奪い、ポリマー内に不安定なカチオン・ラジカルを形成させる。次に、このラジカルが被分解物であるポリマー内を伝播することによりポリマー全体を不安定化し、ポリマーは自滅するような形でエチレンのような小分子に裁断化(ラジカル開裂)され、空気中の酸素と反応して水と二酸化炭素に完全分解される。つまり、分解過程は正孔の酸化力によるラジカルの形成、ラジカル開裂によるフラグメント化、そして裁断化された分子と酸素との完全燃焼の3つから構成される。本手法はポリマーの厚みが20mm以上でもラジカルの伝播が起こり、被分解物の内部まで分解効果が及ぶのが特徴である。
また、繊維強化プラスチックに同じTASC法を用いて、プラスチックを完全分解し、カーボン・ファイバーやグラス・ファイバー等の強化繊維をほぼ無傷で完全回収する方法を提案した(特許文献2、非特許文献2)。この方法は特にコストの高いカーボン・ファイバー等の繊維を切断するなどのダメージを与えることなく強化繊維を回収して再使用することができるので、非常に有用であり、強化繊維に限らず、無機物とポリマーを混合した複合材料から無機物だけを回収できる普遍性のある方法である。
【0004】
太陽光発電システムは燃料を必要としないので資源枯渇の心配がなく、クリーンなエネルギーを供給して環境に負荷を与えない有用な技術であり、最近急速に普及が進展している。太陽電池システムの主要構成要素である太陽電池モジュールの耐用年数は20-30年と言われ、今後大量の処理需要の発生が見込まれる。太陽電池モジュールの部品をそのまま再使用するリユースはコスト面から経済性に乏しく、不要部材を処理して有価物である強化ガラス、太陽電池セル、インター・コネクタなどを素材として回収するリサイクル技術の確立が望まれている。
【0005】
しかしながら、現状の太陽電池モジュールの大部分は、セル部とガラス基板が、例えば、熱可塑型の樹脂であるEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂:エチレンビニルアセテート)により接着された構造となっている。EVAはセルが大気にさらされて腐食することなどを防いでいるが、逆にセル部やガラスを分離して取り出そうとすると、EVAを効率的に除去する方法がないために取り出しが困難であり、リサイクル技術は実用化されていないのが実情である。一般にポリマーを室温・空気中で加熱分解すると燃焼方法にも依存するが、多くの炭化物等に由来する黒状残渣が残存することが知られている。
【0006】
EVAを除去して太陽電池素子構成材料の回収をするための方法として、特開2014-108375号公報には、炉内酸素濃度が1~3体積%、装置炉内の温度を「予備加熱部:300℃」「熱処理部:500℃」となる様に昇温し、「予備加熱部滞在時間:20分」「熱処理部滞在時間:20分」となる周回コンベアの回転速度を合わせる。結晶Si系モジュールを連続処理装置に入れて、セル部及びガラス基板に結合したEVA封止材を爆発現象や炭化を起こすことなく除去して、太陽電池素子の構成材料を、安全に低コストで回収できる、と記載されている。爆発を抑制するためには酸素濃度を下げることが好ましいが、これはポリマーの炭化を促進することにつながり、処理速度が低下する等の問題点が残る。また、特開2004-42033号には従来の硝酸浸漬法を改良し、太陽電池モジュールを浸漬する70℃以上80℃以下に加温した硝酸に界面活性剤を添加することにより、従来100時間かかっていたEVAの分解時間を約半分の50時間に短縮することができた、と記載されている。処理中にセルが割れることなく回収できる利点はあるものの、処理時間が依然として長く、更に強酸を用いるなどから実用的とは言えない。
【0007】
そこで、EVAの除去に、本出願の方法である「半導体の熱活性技術(TASC)」を適用するならば、TASC法はポリマーを水と二酸化炭素に完全分解するクリーンな技術であるので、太陽電池モジュールから有価物であるガラス、太陽電池セル、インター・コネクタなどを容易にかつ安価に回収するシステムを構築しうる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第4517146号公報
【特許文献2】特開2013-146649号公報
【特許文献3】特開2014-108375号公報
【特許文献4】特開2004-42033号公報
【0009】

【非特許文献1】T. Shinbara, T. Makino, K. Matsumoto, and J. Mizuguchi: Complete decomposition of polymers by means of thermally generated holes at high temperatures in titanium dioxide and its decomposition mechanism, J. Appl. Phys. 98, 044909 1-5 (2005)
【非特許文献2】水口 仁:半導体の熱活性によるFRPの完全分解とリサイクル技術、加工技術 47巻, 37-47 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、太陽電池モジュールのリサイクルにおいては、太陽電池素子のEVA等のポリマーを除去することが困難であり、太陽電池素子構成材料の回収の実用化を妨げていた。この問題を半導体の熱活性法(TASC)で解決し、太陽電池モジュール中のEVA等のポリマーを完全分解して有価物であるガラス、太陽電池セル、インター・コネクタなどを回収する方法を提供することを課題とする。また、太陽電池セルを構成するシリコン・ウェファーと金属電極を分別して回収する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、半導体の熱活性技術(TASC)を太陽電池モジュールの解体に適用し、被処理物である太陽電池モジュールの表面に酸化物半導体を接触させ、酸素存在下において、酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で被処理物を加熱することにより、EVA等のポリマーを完全分解して有価物であるガラス、太陽電池セル、インター・コネクタを回収する。回収した太陽電池セルを濃硝酸に浸して銀電極を溶解し、これに塩酸を滴下してAgClとして回収して、さらに残ったシリコン・ウェファーを分別・回収する。
【0012】
太陽電池モジュールは、電極を介して相互に接続された太陽電池セルの受光面側に強化ガラスが配置され、太陽電池セルの周辺部分がEVA等のポリマーによって密封充填され、有機物フィルムからなるバック・シートがEVA等のポリマーの裏面側に接着された構造を有する。
本発明者は、このような太陽電池モジュールからEVA等のポリマーを完全分解して除去し、有価物を回収するために、鋭意実験を重ね、以下の経緯を経て本発明に至った。
TASC法によるポリマーの分解は、前述したように、正孔の酸化により生成したラジカルがポリマーから結合電子を奪い、ポリマーを不安定化して小分子に裁断されるプロセスである。ラジカルは20mm以上でも伝播すると述べたが、本課題ではラジカルがどの程度ポリマー内を伝播できるかが、問題解決の鍵となる。
上述した太陽電池モジュールの構造から判断すると、仮に、底部のバックシートに酸化物半導体を接触させたとすると、バックシートの上には(無機物である)太陽電池セルが一面に張り巡らされているため、ラジカルの伝播はここで途切れてしまい、太陽電池セルとガラスの界面まで及ばないと想定した。そこで、太陽電池モジュール(120×120×5mm)の横方向の4辺に酸化物半導体の分散膜を塗布し、ラジカルを横方向に走らせる実験を行った。20mmをはるかに超える60mmまでラジカルが走破するとは見通せなかったが、実際のTASC処理の結果、驚くべきことに、太陽電池モジュールはバックシートを含め、総てのポリマーは完全分解され、モジュールからガラス、シリコン・ウェーファー、インター・コネクタが分離回収され、ポリマーに充填されていた無機物も残渣として回収できた。
【0013】
さらに驚くべきことは、モジュール4辺のコーティングを3辺、2辺、1辺としても全く同じ結果が得られたことである。つまり、ラジカルはモジュールの120mm四方の面内でも十分に伝播していたことが確認された。このことは、ラジカルはモジュールの温度さえ十分であれば、所定の大きさのモジュール全体に及ぶことが期待された。そして、長辺の長さが330mmのモジュール片の一方の短辺の端面に酸化物半導体をコーティングして水平においてTASC処理したところ、期待通り合わせモジュール中のポリマーは完全分解された。この結果を踏まえて、モジュールのバックシートを、酸化物半導体を担持したハニカムの上に載せてTASC処理を施したところ、すべてのポリマーは完全分解され、モジュールからガラス、シリコン・ウェーファー、インター・コネクタが分離回収することができた。結果として、ラジカルはバックシートの上に全面に並べられた太陽電池セルの間の僅かなスペースを通してガラス面にまで伝播し、充填されていたポリマーを完全分解することがわかった。以上の結果と考察から、本発明は完成した。モジュールのバックシートを、酸化物半導体を担持したハニカムの上に載せてTASC処理を施す手法はバックシートを下にして、モジュール片を単に触媒担持ハニカムの上に置くだけの操作であるので、酸化物半導体の塗布工程も必要なく、さらに酸化物半導体の粉が回収物に混入することがない最もクリーンな処理方法である。
【0014】
すなわち、本発明に係る太陽電池モジュールから有価物を回収する方法は、被処理物である太陽電池モジュールを、酸化物半導体を坦持した通気性を有する支持体の上に受光面を上にして載せることにより、前記太陽電池モジュールのバック・シートに酸化物半導体を接触させ、酸素存在下において、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で前記被処理物を加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解除去し、解体物から有価物を回収することを特徴とする。
なお、被処理物である太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールをユニットとしてパネル状としたものを処理対象とすることもできるし、処理しやすい大きさの個片に分離したもの、もしくは破砕したもの等を処理対象とすることができる。本発明における被処理物は太陽電池モジュールの大きさ、形態がとくに限定されるものではない。
また、本発明において、通気性を有する支持体とは、多孔質状あるいはハニカム状の良好な通気性を有する支持体を意味する。TASC法では裁断化された分子を水と炭酸ガスに完全分解するには十分な酸素が必要であり、被処理物を通気性の高い支持体上に支持して処理する方法が効果的である。
【0015】
また、太陽電池モジュールから有価物を回収する他の方法として、被処理物である太陽電池モジュールのバック・シートを酸化物半導体の懸濁液にディップ・コーティングすることにより、前記太陽電池モジュールの前記バック・シートに酸化物半導体を接触させ、前記被処理物を通気性を有する支持体の上に置いて、酸素存在下において、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で前記被処理物を加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解除去し、解体物から有価物を回収することを特徴とし、また、被処理物である太陽電池モジュールの1ないし4つの側面を酸化物半導体の懸濁液にディップ・コーティングすることにより、前記被処理物の側面に酸化物半導体を接触させ、前記被処理物を通気性を有する支持体の上に置いて、酸素存在下において、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度で前記被処理物を加熱することにより、前記被処理物中のポリマーを分解除去し、解体物から有価物を回収することを特徴とする。
なお、被処理物に酸化物半導体をディップ・コーティングして処理する場合に使用する支持体は、表面に酸化物半導体を担持していないものであってもよいし、酸化物半導体を担持したものであってもよい。
【0016】
また、本発明に係る太陽電池モジュールから有価物を回収するための連続処理装置は、太陽電池モジュールに酸化物半導体を接触させた状態で、被処理物である前記太陽電池モジュールを搭載した通気性を有する支持体を、一定速度で搬送するコンベヤと、前記通気性を有する支持体に搭載された被処理物を、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に加熱する加熱処理部と、前記加熱処理部内にエアを供給するエアの供給機構と、前記加熱処理部において前記被処理物中のポリマーを分解除去して得られる解体物から、有価物を回収する回収部とを備えることを特徴とする。
また、前記解体物から有価物を回収する回収部において、まずガラスを回収し、次に太陽電池セルおよびインター・コネクターを回収することにより、分別・回収することを特徴とする。
【0017】
太陽電池モジュールから有価物を回収するための処理装置は、被処理物である太陽電池モジュールに酸化物半導体を接触させた状態で、前記太陽電池モジュールを設置する加熱処理室を有し、前記加熱処理室において前記被処理物は、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に加熱され、前記加熱処理部は外部からエアを供給するエアの導入口と加熱処理により発生するガスを排出する排気口を有し、前記加熱処理室の排気口には、前記酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を備えたVOC浄化装置が連結され、前記構造体が、前記酸化物半導体が真性電気伝導領域となる温度以上に加熱されることによって、前記加熱処理部または前記加熱処理室から排出され前記VOC浄化装置を通過するガスが無害のガスに浄化され、前記加熱処理室において前記被処理物中のポリマーを分解除去して得られる解体物から、有価物を回収することを特徴とする。
本発明において、通気性を有する構造物とは、多孔質状あるいはハニカム状の良好な通気性を有する構造物を意味する。TASC法では裁断化された分子を水と炭酸ガスに完全分解するには十分な酸素が必要であり、被処理ガスを通気性の高い構造体を通して浄化する方法が効果的である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、太陽電池モジュールを半導体の熱活性法(TASC)で処理することにより、有機物であるEVA等のポリマーを完全分解して除去することができるので、解体物から有価物であるガラス、太陽電池セル、インター・コネクタを低コストで短時間に回収することができる。また、EVA等のポリマーを完全分解、除去することにより、廃物サイズの縮小という効果も得られる。さらに、酸処理により太陽電池セルから銀とシリコン・ウェファーを分別して回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】触媒担持ハニカム8上に置かれた太陽電池モジュール5の断面図である。
【図2】回収されたガラス1、太陽電池セル2、およびインター・コネクタ3を示す写真である。
【図3】太陽電池モジュール処理装置の断面図である。
【図4】太陽電池モジュール5の側面に酸化物半導体13をコーティングした例を示す上面図である。
【図5】ステンレス網14を入れ込んだ触媒担持ハニカム8の上に太陽電池モジュール5を載せる手順の説明図である。
【図6】太陽電池モジュール用TASC連続処理装置15の平面図である。
【図7】太陽電池モジュール用TASC処理装置22の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
太陽電池は使用できる最小の単位であるセルをつなぎ合わせ、ガラスやポリマーで保護したものを太陽電池モジュールと呼び、太陽電池モジュールをアルミニウム製などの枠に入れてパネル状にしたものを太陽電池パネルと呼んでいる。さらに太陽電池パネルを並べたものは太陽電池アレイと呼ばれている。家の屋根等に設置されているものは太陽電池アレイである。本願における処理単位は、使用寿命を終えた太陽電池モジュール5または製造過程で不良品となった太陽電池モジュールである。
単結晶または多結晶のシリコンからなる太陽電池セルは、p型のシリコン・ウェファーの上部にn型シリコン層を形成し、さらに電極等を配置したものである。太陽電池セルは図1に示すように、金属のインター・コネクタ3により電極が相互に接続され、端子6を通して外部の電極に接続されている。太陽電池セル2の受光面側には3-5mm程度の厚さの強化ガラス1が配置される。結合された太陽電池セル2の周辺はEVA等のポリマー4で密閉充填される。その後、バック・シート7がEVA等のポリマー4に接着される。バック・シート7は様々な性能をもつ有機物フィルムである。

【0021】
太陽電池モジュール5から太陽電池セル2等を回収するためには、まず太陽電池パネルのアルミフレームを外し、約120×120×5mmのモジュール片を切り出す。このモジュール片を電気炉内で、空気中500℃で20-30分間Cr等の酸化物半導体13と接触させ、ポリマー成分(フレームとモジュールを固定するポリマー、充填物としてのEVA等のポリマー4、下地のバック・シート7など)を完全分解し、モジュール片を完全解体する。太陽電池モジュール5に酸化物半導体を接触させる方法としては、酸化物半導体をコーティングしたハニカム(触媒担持ハニカム8)上に、太陽電池モジュール5をモジュールのバック・シート7を下(つまり、受光面を上)に置く方法、モジュール底面に酸化物半導体の分散膜を塗布する方法、太陽電池モジュール5の側面に酸化物半導体13の分散膜を塗布する方法のいずれであってもよい。図1は触媒担持ハニカム8上に太陽電池モジュール5を置いた場合を示している。

【0022】
処理後のモジュール片は熱強化ガラス1がひび割れている状態になっているので、ガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3、残渣等を効率良く分離するためにTASC処理後の太陽電池モジュール5を網目のあるステンレス板の上に移すと良い。ステンレス網14を傾け、低周波数で振動させると、ポリマーに含有されていた無機物の白い残渣はメッシュを通して落下し、ガラス1塊、太陽電池セル2、インター・コネクタ3はステンレス網14を滑り落ちることにより、分別回収することができる。ハニカムに予め溝を設け、ステンレス網14をはめ込んでおけば、ステンレス網14上の残渣物をハニカムからとり外すことがより容易になるので好ましい。

【0023】
このようにして、太陽電池モジュール5にTASC処理を施した後の解体物から、容易に耐熱ガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3が図2に示すように回収される。
回収した太陽電池セル2の受光面には格子状の銀電極、裏面にはAlの電極が全面に形成されている。この太陽電池セル2を濃硝酸液に入れ、両金属を溶解し、その後に塩酸を滴下して、銀は塩化物(AgCl)の沈澱として単離する。残ったシリコン・ウェファーはメタル・フリーのシリコン基板として回収される。

【0024】
太陽電池モジュール5からガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3を回収する実用的な方法としては、連続処理装置を用いるのが良い。これは一定速度で搬送されるコンベア上に、搬入部、予備加熱部、TASC処理部、冷却部、搬出部、分別回収部を連結して備える。ハニカム上に置かれた太陽電池モジュール5は搬送部から搬入され、TASC処理部にてTASC処理が行われ、搬出部から搬出されて、分別回収部でガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3が分別回収される。
【実施例】
【0025】
実施例1
ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社製の太陽電池パネル(型式:VLXA-125)を用いて実験を行った。まず、約800×1600×40mmの大きさの太陽電池パネルからAl製の外枠をダイヤモンド・カッターで切断し、取り外した。外枠と太陽電池アレイは黒いバインダー樹脂で接着されていた。この黒い接着樹脂を含むような形で、120×120×5mmの太陽電池モジュール5の1片を切り出し、TASC処理の解体試料とした。太陽電池モジュール5の上面は約3.5mmのガラス1板、最下面には約0.5mm程度の白色のポリマー・シート(バック・シート7)があり、ガラス1板とポリマー・シートの中間には約1mm程度の透明の樹脂層(充填剤)があった。
【実施例】
【0026】
太陽電池モジュール5の1片のバック・シート7を下にして、酸化物半導体13としてCrをコーティングしたコージライト(2MgO・2Al・5SiO)組成のハニカム上に載せた。酸化物半導体13はTASC処理においてそれ自体は変化・消耗することなく、これに接触している被処理物中の有機物を分解・除去する作用をするので、酸化物半導体13を担持したハニカムは触媒担持ハニカム8とも称する。太陽電池モジュール5の1片を載せた触媒担持ハニカム8を図3の電気炉9に入れて、空気導入口11から空気を導入しながらヒーター10に通電して500℃まで昇温し、30分間500℃に制御した。この後温度制御の電源をオフにして冷却した。以上の一連のTASC処理により、モジュール片のバック・シート7および充填剤を構成するポリマーは完全に分解され、下層から順に、薄いガラス・ファイバーと思われる布、インター・コネクタ3/太陽電池セル2/インター・コネクタ3、さらに細かくひび割れしたガラス1塊が得られた。分解されたポリマーは水と炭酸ガスとなり、排気口12から排出される。酸化物半導体13(Cr)と太陽電池モジュール5はバック・シート7表面でのみ接触しているが、酸化物半導体13に発現する酸化力により、バック・シート7表面でポリマーから結合電子を奪い、ポリマー内に不安定なカチオン・ラジカルが形成される。このラジカルが被分解物であるポリマー内を伝播することによりポリマー全体を不安定化し、ポリマーは自滅するような形でエチレンのような小分子に裁断化(ラジカル開裂)され、空気中の酸素と反応して水と二酸化炭素に完全分解される。これがTASC法の特徴である。つまり、ポリマー表面でラジカルが一度形成されると、厚み方向に次々に分解反応が続くので、充填剤の領域まで完全分解が実現する。
【実施例】
【0027】
分解されたモジュールを、ガラス・ファイバーと思われる布から外し、5メッシュのステンレス網14に移した。これを約30度傾け、低周波数で振動させると、ガラス塊は転がるように落下した。次に、周波数を上げて振動させると、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3も落下し、分別・回収することができた。この間に、ポリマーに含有されていた無機物の白い残渣(充填物:TiO,CaCO,SiO等)はメッシュを通して落下した。以上の操作で、図2に示すように、ガラス1塊、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3は容易に分別できた。ステンレス網14を傾ける角度は20度以上40度以下が好ましい。またガラス1塊を落下させるための振動数(第1の振動数)は5Hz以上で20Hz以下の範囲で、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3を落下させるための振動数(第2の振動数)は10Hz以上で200Hz以下の範囲で、ガラスの厚みおよび太陽電池セルの構造などに依存して最適値に設定すればよい。振動の強さは分別・回収ができるように、適宜調整するのが良い。
【実施例】
【0028】
インター・コネクタ3は幅2mm、厚みが0.2mm、長さが100mm程度の金属であり、蛍光X線分析の結果、銅と錫が主成分であることが分かった。また、太陽電池セル2の受光面には格子状の電極がスクリーン印刷されていた。太陽電池セル2ならびに格子状の電極材料は、蛍光X線分析の結果、それぞれシリコンならびに銀が主成分であることが判明した。太陽電池セル2の受光面上の銀電極は以下の手順により、AgClとして回収した。まず、銀電極のついた太陽電池セル2を濃硝酸で溶解し、薄黄色の溶液を得た。次に、これに塩酸を滴下し、銀をAgClとして沈殿させた。水洗後にろ過・乾燥させ、AgClの粉末を得た。9.6gの太陽電池セルから、0.3gのAgClを回収した(約3.2重量%)。
【実施例】
【0029】
実施例2
実施例1で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。酸化物半導体13として、実施例1で使用したCrの代わりにα-Fe(酸化鉄:ヘマタイト)を用い、実施例1と同様のTASC処理を行った。その結果、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【実施例】
【0030】
実施例3
実施例1で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。モジュールの下面のポリマー・シート(バック・シート)の上に、Crの懸濁液をスプレー・コーティング法で5-10ミクロン程度コーティングした。この面を下にして、無垢(Crが未コート)のコージライト組成のハニカム上に載せ、空気中、500℃で30分加熱した(TASC処理)。モジュール片のポリマーは実施例1と同様に完全に分解され、ガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3も容易に分別され、格子状の銀電極もAgClの形で回収した。なお、酸化物半導体が担持されていないハニカムを用いたが、酸化物半導体が担持されているハニカムを用いても良い。またハニカムでなくてもモジュール片を載せる支持体であれば良いが、TASC法では裁断化された分子を水と炭酸ガスに完全分解するには十分な酸素が必要であるので、通気性の高い多孔質の支持体が好ましい。
【実施例】
【0031】
実施例4
実施例3において、太陽電池モジュール5の1片の底辺部に酸化物半導体13であるCrを塗膜する代わりに、図4(a)に示すように、モジュール片の4つの側面を順次、酸化物半導体13であるCrの懸濁液に漬けてディップ・コーティングした。これを無垢のハニカム(Crが塗布されていないハニカム)の上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。なお、酸化物半導体が担持されていないハニカムを用いたが、酸化物半導体が担持されているハニカムを用いても良い。またハニカムでなくてもモジュール片を載せる支持体であれば良いが、TASC法では裁断化された分子を水と炭酸ガスに完全分解するには十分な酸素が必要であるので、通気性の高い多孔質の支持体が好ましい。
【実施例】
【0032】
実施例5
実施例4において、太陽電池モジュール5の1片の4つの側面の代わりに、図4(b)に示すように、3辺を順次、酸化物半導体13であるCrの懸濁液に漬けてディップ・コーティングした。これを無垢のハニカムの上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。
【実施例】
【0033】
実施例6
図4(c)に示すように、太陽電池モジュール5の1片の4つの側面の内、相対する2つのエッジを順次、酸化物半導体13であるCrのCr懸濁液に漬けてディップ・コーティングし、これを無垢のハニカムの上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。
【実施例】
【0034】
実施例7
図4(d)に示すように、太陽電池モジュール5の1片の4つの側面の内、1つのエッジを酸化物半導体13であるCrの懸濁液に漬けてディップ・コーティングし、これを無垢のハニカムの上に置き、空気中、500℃で30分TASC処理を行った。その結果、実施例3と同様に良好な結果を得た。
このように、ポリマーの表面でのみ酸化物半導体と接触させておけば、TASC法の特徴により、120mm離れた端までポリマーの完全分解が自動的に進行することが実証された。
【実施例】
【0035】
実施例1-7で述べたように、TASC法のためには酸化物半導体13が有機物の表面でのみ接触していればよい。従って、接触させる方法は酸化物半導体13を坦持したハニカムに太陽電池モジュール5のバック・シート7が接触するようにモジュールを載せる方法、バック・シート7に酸化物半導体13の懸濁液をコーティングして無垢のハニカムにモジュールを載せる方法、モジュール片の4辺の少なくとも一辺に酸化物半導体13の懸濁液をコーティングして無垢のハニカムにモジュールを載せる方法のいずれであってもよい。しかしながら、有機物表面に酸化物半導体13の懸濁液をコーティングした場合は、回収物(ガラス1、太陽電池セル2、インター・コネクタ3等)に酸化物半導体13の粉が微少ではあるが混入することは避けられない。一方、酸化物半導体13を坦持したハニカムに太陽電池モジュール5のバック・シート7が接触するようにモジュールを載せる方法では回収物に酸化物半導体13が混入しないことや処理操作が極めて容易である点で好ましい方法である。
【実施例】
【0036】
実施例8
Changzhou Trina Solar Energy Co. Ltd.製の太陽電池パネル(型式:TSM-05DC80.08)を用いた。この太陽電池パネルはAl製の外枠と太陽電池アレイの固定には、太陽電池モジュール5の1片のベース体と同じポリマー・バインダーが使用されていた。実施例1の方法で、太陽電池モジュール5の1片(120×120×5 mm)を切り出し、実施例1と同様のTASC処理を行った。実施例1と同様に、太陽電池モジュール5の1片のポリマーは完全に分解され、下層から、インター・コネクタ3/太陽電池セル2/インター・コネクタ3/細かくひび割れしたガラス1塊、が得られた。これらは容易に分別できた。太陽電池セルならびに格子状の電極材料は、蛍光X線分析の結果、それぞれ、シリコンならびに銀が主成分であることが判明した。実施例1と同様の手法で、AgClを回収した。5.5gの太陽電池セルから、0.08gのAgClを回収した(1.48重量%)。
【実施例】
【0037】
実施例9
実施例8で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。酸化物半導体13として、実施例8で使用したCrの代わりにα-Fe(ヘマタイト)を用い、実施例8と同様のTASC処理を行った。その結果、実施例8と同様に良好な結果が得られた。
【実施例】
【0038】
実施例10
実施例8で使用した太陽電池パネルから、同様の太陽電池モジュール5の1片を切り出した。このモジュール片を用いて、実施例3と同様に、モジュールの下面のバック・シート7の上に、Crの懸濁液をスプレー・コーティング法で5-10ミクロン程度コーティングした。この面を下にして、無垢(Crが未コート)のコージライト組成のハニカム上に載せ、空気中、500℃で30分加熱した(TASC処理)。モジュール片のポリマーは実施例8と同様に完全に分解され、ガラス、太陽電池セル2、インター・コネクタ3も容易に分別され、格子状の銀電極もAgClの形で回収した。
【実施例】
【0039】
実施例11
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例4と同様な実験を行った(4辺処理、図4(a))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【実施例】
【0040】
実施例12
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例5と同様な実験を行った(3辺処理、図4(b))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【実施例】
【0041】
実施例13
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例6と同様な実験を行った(2辺処理、図4(c))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【実施例】
【0042】
実施例14
実施例8の太陽電池モジュール5の1片を用いて、実施例7と同様な実験を行った(1辺処理、図4(d))。その結果、実施例8と同様に良好な結果を得た。
【実施例】
【0043】
実施例15
実施例1もしくは実施例2または実施例8もしくは実施例9において、太陽電池モジュール5の1片のバック・シート7を下にして、酸化物半導体13をコーティングしたハニカム上に載せる際に、ガラス等を回収する便宜のために図5のようにステンレス網14を挿入する。予め、ハニカムには溝を掘っておき、溝深さ以下の厚みをもつステンレス網14をはめ込めるようにしておく。こうすれば、ハニカムに坦持された酸化物半導体13はモジュール片のバック・シート7表面と接触するので、TASC処理には支障がなく、かつTASC処理後に解体物を別途用意したステンレス網14に移す工程を経ることなく、ステンレス網14とステンレス網14上の解体物をハニカムから外し、実施例1に記載した方法でガラス塊、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3を容易に分別することができる。
【実施例】
【0044】
実施例16
実施例3もしくは実施例7または実施例10もしくは実施例14において、太陽電池モジュール5の1片を、酸化物半導体13が担持されていないハニカムの上に載せる際に、ガラス等を回収する便宜のために、実施例15と同様にステンレス網14を挿入する。ただし、太陽電池モジュール5の1片には既に酸化物半導体13が塗布されているから、ハニカムに溝を掘っておく必要はなく、単にハニカムの上にステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片の順に載せればよい。こうすれば、TASC処理には支障がなく、かつTASC処理後に解体物を別途用意したステンレス網14に移す工程を経ることなく、ステンレス網14とステンレス網14上の解体物をハニカムから外し、実施例1に記載した方法でガラス塊、太陽電池セル2ならびにインター・コネクタ3を容易に分別することができる。
【実施例】
【0045】
実施例17
太陽電池モジュール5のTASC処理を連続的に行うには図6に示した太陽電池モジュール用TASC連続処理装置15を用いるのが良い。ハニカムの上に、ステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片を順に載せて、装置入口側の搬入部16に置く。酸化物半導体13坦持ハニカムを用いる場合は、実施例15に従い溝を掘ったハニカムとし、ハニカムの上にステンレス網14を、さらに太陽電池モジュール5の1片をバック・シート7が下になるようにして載せる。太陽電池モジュール5の1片のバックシート表面または太陽電池モジュール5の1片の側面に酸化物半導体13を塗布した場合は、酸化物半導体13を坦持しないハニカムを用いて、実施例16に従ってステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片を載せる。ハニカムと一体となってその上に置かれたステンレス網14、太陽電池モジュール5の1片は搬入部16から搬出部20に渡って設置されているコンベヤにより、約100mm/minの搬送速度で連続的に搬送される。予備加熱部17、TASC処理部18、冷却部19には空気が外部から導入される。ハニカムと太陽電池モジュール5の1片は予備加熱部17を通過する間に500℃に加熱される。約1000mmに渡って500℃に制御された加熱処理部であるTASC処理部18を通過するときにTASC処理が行われ、モジュール片の中の有機物成分が完全に分解除去される。冷却部19を通過する間に冷却が行われる。なお、室温まで冷却される必要はなく、冷却される温度は適宜でよい。冷却部19から出てきたハニカム上の解体物からは有機物がTASC処理により完全に分解除去されており、搬出部20においてハニカムが除かれ、ステンレス網14とその上の解体物が搬出部20に戻される。搬出部20を経て分別回収部に送られると分別回収部21において、実施例1に記載された方法により無機物の白い残渣を、メッシュを通して落下させる。第一振動によりステンレス網14から滑り落ちたガラスと第2振動によりステンレス網14から滑り落ちた太陽電池セル2およびインター・コネクタ3は分別・回収される。
【実施例】
【0046】
連続処理装置において搬入部から搬出部に至るすべての経路を一定速度で搬送すると述べたが、搬入部、搬出部及び分別回収部では太陽電池モジュールを載せたハニカムを一定速度で連続的に搬送し、予備加熱部、TASC処理部及び冷却部を一体化したTASC処理室では停止状態でTASC処理を行うシステムでもよい。この場合、TASC処理室には入口・出口の扉を持った電気炉が中央に置かれており、太陽電池モジュールを載せたハニカムの搬入の際には、入口の扉が開き、炉内に被処理物が運ばれ、入口が閉じられる。そして、処理後には出口側の扉が開き、TASC処理されたハニカム上の解体物が搬出される。バッチ方式を踏襲した本システムは搬送制御がやや複雑になるが、メリットは温度管理がし易いこと、必要な酸素を制御できることであり、着実なTASC処理が可能である。
【実施例】
【0047】
実施例18
さらに段落46で述べた半自動装置から搬入部、搬出部を取り払い、完全バッチ方式によってもTASC処理による太陽電池モジュールからの有価物の回収を行うことができる。図7において、太陽電池モジュールに酸化物半導体を接触させた状態で、太陽電池モジュールを電気炉9である加熱処理室内に配置する。加熱処理室9は空気導入口11と排気口12を有する。加熱処理室9を約500℃に加熱すると、TASC処理により太陽電池モジュール5中の有機物は分解され、生じた高温のガスは上昇するので、排気口12は加熱処理室9の天井内に設けるのが良い。加熱処理室9から廃棄されるガスはまだ完全には炭酸ガスと水にはなっておらず、低分子化された有機物が含まれることもあるため、排気口12の外側にTASC法によるVOC浄化装置23を配置する。これは酸化物半導体13を担持したハニカム8にヒーターを埋め込んだものを複数枚直列に配列した装置であり、ヒーターで約500℃に加熱することにより、通過する低分子有機物は完全に炭酸ガスと水に分解され、無害のガスとして大気に放出される。酸化物半導体を担持したハニカム構造体8を、加熱処理室9内で天井の排気口12付近に配置すると、約500℃に加熱されたハニカム構造体8を通過する低分子有機物ガスが炭酸ガスと水に分解されるのでさらに良い。酸化物半導体を担持したハニカム構造体8を側面にも付加的に設けて太陽電池モジュール5を取り囲むように配置してもよい。このような装置によりTASC処理を行うと、太陽電池モジュール5中の有機物は完全に分解除去され、電気炉9内の解体物から有価物を容易に回収することができる。連続処理炉および半自動処理炉においては複数枚の太陽電池モジュールを同時に処理するには装置を非常に大がかりにする必要があるが、完全バッチ炉においては電気炉9内に複数枚、たとえば5枚程度の太陽電池モジュール5を並べて無理なく配置することはスペース的に十分可能であり、こうすることにより一枚当たりの処理速度を上げることができる。図7のバッチ処理方式は連続処理炉に比べて小型、安価、低消費電力との特徴を有する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、半導体の熱活性(TASC)法を用いて太陽電池モジュールから有価物であるガラス、太陽電池セル、インター・コネクタを低コストで短時間に回収することができるので、今後大量の処理需要の発生が見込まれる太陽光発電システムの廃棄物に対して、従来実現されていなかったリサイクルを実用的な事業として成立させえて、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス
2 太陽電池セル
3 インター・コネクタ
4 EVA等のポリマー
5 太陽電池モジュール
6 端子
7 バック・シート
8 触媒担持ハニカム
9 電気炉
10 ヒーター
11 空気導入口
12 排気口
13 酸化物半導体
14 ステンレス網
15 太陽電池モジュール用TASC連続処理装置
16 搬入部
17 予備加熱部
18 TASC処理部
19 冷却部
20 搬出部
21 分別回収部
22 太陽電池モジュール用TASC処理装置
23 VOC浄化装置
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図2】
6