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明細書 :結晶化分析装置及び結晶化分析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-072436 (P2017-072436A)
公開日 平成29年4月13日(2017.4.13)
発明の名称または考案の名称 結晶化分析装置及び結晶化分析方法
国際特許分類 G01N  21/47        (2006.01)
FI G01N 21/47 Z
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 41
出願番号 特願2015-198366 (P2015-198366)
出願日 平成27年10月6日(2015.10.6)
発明者または考案者 【氏名】若松 孝
出願人 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
【識別番号】100194146、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 明
【識別番号】100194283、【弁理士】、【氏名又は名称】村上 大勇
【識別番号】100141324、【弁理士】、【氏名又は名称】小河 卓
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA01
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH02
2G059HH03
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059JJ19
2G059JJ20
2G059JJ21
2G059JJ22
2G059JJ25
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM09
2G059PP04
要約 【課題】微量のタンパク質結晶化溶液において、リアルタイムでタンパク質の結晶化状態を分析する装置を提供する。
【解決手段】
タンパク質の結晶化状態を分析する結晶化分析装置Zを用いる。光源1から入射光調整部2で調整された光を、測定試料部3の結晶化溶液31を含む溶液セル30へ入射させる。結晶化溶液31からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光は、測定散乱光変換部4で平行光に変換される。一度に所定の角度範囲の平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光が、散乱光検出部5で検出される。計測解析部6によって、散乱光検出部5で検出された散乱光の検出位置が散乱角度に変換され、散乱角に対する散乱光の強度分布を取得する。計測された散乱光データは、計測解析部6で解析され、結晶化溶液中のタンパク質の結晶化状態が分析される。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
タンパク質の結晶化溶液の結晶化分析装置であって、
前記結晶化溶液を保持する測定試料部と、
前記測定試料部に入射された光から放射される前記結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を所定の散乱角範囲で取り込み、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光に変換する測定散乱光変換部と、
前記測定散乱光変換部により変換された前記平行前方小角散乱光又は前記平行後方小角散乱光の前記所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定する散乱光検出部と、
前記散乱光検出部により測定された前記所定の散乱角範囲の強度分布から、前記結晶化溶液において前記タンパク質の凝集体形成を解析し、前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを実時間で分析する計測解析部とを備える
ことを特徴とする結晶化分析装置。
【請求項2】
前記計測解析部は、
前記散乱光検出部で検出された前記平行前方散乱光又は前記平行後方散乱光を、それぞれ前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の散乱角に対する分布関数に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の結晶化分析装置。
【請求項3】
前記計測解析部は、
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の散乱角に対する分布関数に基づいて、前記結晶化溶液における前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを分析する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶化分析装置。
【請求項4】
前記計測解析部は、
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度変化に基づいて、前記結晶化溶液における前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを分析する
ことを特徴とする請求項1に記載の結晶化分析装置。
【請求項5】
前記所定の散乱角範囲は、1°~15°であり、
前記散乱光検出部は、0.1秒以下の時間で、前記所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の結晶化分析装置。
【請求項6】
前記結晶化溶液への入射光の状態を調整する入射光調整部を備え、
前記入射光調整部は、前記入射光の光路変更機能を備えた光学素子と、
前記入射光を所定の強度に調整する機能を備えた光学素子とを含む
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の結晶化分析装置。
【請求項7】
前記測定散乱光変換部は、
シリンドリカルレンズを含み、前記結晶化溶液の前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光を、それぞれ前記平行前方小角散乱光又は前記平行後方小角散乱光に変換する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の結晶化分析装置。
【請求項8】
前記散乱光検出部は、マルチチャンネル光検出器を含み、前記平行前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の散乱角に対する各チャンネルの分布関数を、前記所定の散乱角範囲の強度分布として検出する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の結晶化分析装置。
【請求項9】
前記入射光調整部は、スペイシャルフィルター及びコリメートレンズを含む
ことを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の結晶化分析装置。
【請求項10】
前記測定試料部と前記散乱光検出部との間に、前記結晶化溶液からの透過光を防止する透過光ブロックを備え、
前記散乱光検出部は、前記透過光ブロックにより前記透過光が防止された状態で、前記結晶化溶液の前記平行前方小角散乱光を計測する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の結晶化分析装置。
【請求項11】
前記透過光ブロックは、反射ミラー、光フィルター、及び光ビームスプリッターのいずれか一種を含む
ことを特徴とする請求項10に記載の結晶化分析装置。
【請求項12】
タンパク質の結晶化溶液の結晶化状態を分析する結晶化分析方法であって、
前記結晶化溶液に光を入射させ、
入射された光から放射される前記結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を所定の散乱角範囲で取り込み、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光に変換し、
変換された前記平行前方小角散乱光又は前記平行後方小角散乱光の前記所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定し、
測定された前記所定の散乱角範囲の強度分布から、前記結晶化溶液における前記タンパク質の凝集体形成を解析し、前記結晶化溶液において前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを実時間で分析する
ことを特徴とする結晶化分析方法。
【請求項13】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ瞬時に検出された前記平行前方散乱光又は前記平行後方散乱光から得られる、前記前方小角散乱光の散乱角度に対する分布関数又は前記後方小角散乱光の散乱角に対する分布関数である
ことを特徴とする請求項12に記載の結晶化分析方法。
【請求項14】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ瞬時に検出された前記平行前方散乱光又は前記平行後方散乱光から得られる、前記前方小角散乱光の散乱角に対する平均値の分布関数又は前記後方小角散乱光の散乱角に対する平均値の分布関数である
ことを特徴とする請求項12に記載の結晶化分析方法。
【請求項15】
前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度変化に基づいて、前記結晶化溶液における前記タンパク質の結晶化状態を分析する
ことを特徴とする請求項12に記載の結晶化分析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化分析装置及び結晶化分析方法に係り、特にタンパク質の結晶化溶液の光散乱の計測によって結晶化状態の分析を行う結晶化分析装置及び結晶化分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タンパク質等の生体高分子の機能を解明するために、結晶構造解析の技術が必要不可欠となっている。生体高分子の結晶構造は、X線回折測定、更には中性子線回折測定等によって解析される。このような結晶構造の解析と評価は、いかに良質の生体高分子の結晶を作製するかに大きく依存する。ここで、生体高分子の結晶の製造においては、通常、生体高分子の過飽和溶液に各種の沈殿剤(以下、「結晶化剤」と呼ぶ。)等を添加して行われる。なお、以下では、生体高分子として、主にタンパク質を使用する例について説明する。
【0003】
ここで、タンパク質の結晶化条件は、タンパク質の溶液濃度、結晶化剤の種類や濃度、緩衝液の種類、pH値、溶液温度等の、様々な要因を考慮する必要がある。このため、従来から、試行錯誤を繰り返し、又は網羅的に結晶化試験を行い、対象のタンパク質を結晶化させるための結晶化条件を探索する方法が用いられていた。
たとえば、従来は、タンパク質の濃度を一定にし、結晶化剤の濃度を変化させた溶液試料について、結晶化要件を求める試験が行われていた。また、結晶化剤の濃度を一定にして、タンパク質の濃度を変化させた溶液試料について、結晶化要件を求める試験が行われていた。他にも、例えば、結晶化剤の種類を変えた溶液試料について、結晶化要件を求める試験が行われていた。
【0004】
しかしながら、溶液中におけるタンパク質結晶の成長速度は、一般的には、大変遅い。このため、結晶化する条件下であっても、光学顕微鏡等で結晶生成が確認できるまでに、少なくとも数日から数週間の時間が必要であった。また、タンパク質の種類や作製条件によっては、数ヶ月以上の時間を要することもあった。これに対して、従来は、実際にタンパク質結晶を作製することで、対象となる個々のタンパク質にとって最適な結晶化条件の探索をしていた。さらにまた、結晶化条件がよく判明しているタンパク質でさえ、結晶化プロセスの詳細は、未だ明確ではなかった。
【0005】
上述のように、タンパク質の結晶化条件の探索を行うためには、目的のタンパク質とその結晶化剤を含むタンパク質結晶化溶液(以下、単に「結晶化溶液」と呼ぶ。)中で、溶液中のタンパク質の状態を観測する必要があった。つまり、タンパク質分子が凝集し、結晶核形成から微結晶形成へと結晶が成長していく際に、光学顕微鏡等で観察できるようになるまでのサイズに微結晶が成長するまでの過程を観察していた。
【0006】
このため、結晶構造解析に用いるタンパク質結晶を作製する溶液においては、その作製溶液が、結晶核形成から微結晶形成へと結晶が成長する前の段階の凝集プロセスを分析できる技術が望まれていた。
つまり、光学顕微鏡等で観察できるようになるまでのサイズにタンパク質の微結晶が成長するまでに、タンパク質分子が凝集する様子をリアルタイム(実時間)で分析し、タンパク質凝集体の形成を追従して、結晶化溶液中のタンパク質が結晶化に進行する方向にあるか否かの分析をする技術を開発するニーズがあった。このような技術があれば、従来のように結晶化条件を求めるための試験をする回数を減少させることが期待できる。
【0007】
ここで、従来から、ブラウン運動している微粒子からの散乱光を計測し、その散乱光の時間的振舞いから、微粒子の粒度分布を調べる動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)法が、ミクロンメートルオーダー以下サイズのコロイド等のような微粒子の分析によく用いられている。
このような非破壊的な分析法であるDLS法は、タンパク質分子が含まれる溶液の評価にも用いられている。
【0008】
特許文献1を参照すると、タンパク質等の生体高分子含有溶液からの生体高分子の結晶化条件を探査する方法であって、生体高分子含有溶液と半透膜で隔てられた溶液に、溶液の物理化学的性質を変化させる物質を連続的又は断続的に添加して、前記生体高分子含有溶液の物理化学的性質を連続的又は断続的に変化させ、その間の生体高分子含有溶液の状態を、光散乱法によって、連続的又は断続的にモニターする方法とその装置について開示されている(以下、従来技術1と呼ぶ。)。
従来技術1では、結晶化条件を連続的に最適化しながら探索するために、結晶化条件を見逃す可能性が、従来法に比べて低いという効果がある。
【0009】
また、特許文献2では、タンパク質溶液からの低角度の前方光散乱(前方小角光散乱)が、タンパク質凝集体の形成に高感度であることが示されており、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の散乱角に対する強度分布(静的散乱分布関数、散乱光パターン)を高精度に計測して、タンパク質の結晶化を分析する方法とその装置について開示されている。
これに関連して、非特許文献1には、前方小角散乱光測定によって、タンパク質溶液の前結晶化段階におけるタンパク質凝集体を分析する方法、及び凝集体の分析結果、更にそれらの結晶化との関係について示されている。具体的には、タンパク質結晶化モデルとして代表的なリゾチーム(ニワトリ卵白由来のタンパク質)の結晶化溶液について、低角度における前方小角散乱光の散乱角度依存性(前方散乱光パターン)が高精度に計測され、得られた前方小角散乱光のデータ解析から、結晶化に進行するリゾチーム溶液中には、相似構造をもったフラクタル凝集体が形成されることが明らかにされている。非特許文献1では、測定された前方散乱光のパターンから、フラクタル凝集体の構造パラメータであるフラクタル次元Dfが算出され、このDfと結晶化条件との関係について述べられている。
特許文献2及び非特許文献1に記載の技術(以下、従来技術2と呼ぶ。)では、結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を高精度に検出することによって、溶液がタンパク質結晶化の前段階状態において、微結晶が生じていない準安定領域であるか否かについて高感度に分析できる。これにより、タンパク質の結晶化前段階の凝集体や結晶核の形成を高感度に調べることができる。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2004-45169号公報
【特許文献2】特開2012-127904号公報
【0011】

【非特許文献1】T.Wakamatsu,"Forward-Light-Scattering Characterization of Pre-Crystalline Aggregates in Crystallizing Lysozyme Solutions",American Journal of Analytical Chemistry,(2014),vol.5,pp.581-588.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここで、従来技術1においては、従来の光散乱法による生体高分子の結晶化溶液状態についての具体的な分析法に関しては、開示されていなかった。すなわち、タンパク質が未だ完全には結晶化していない状態において、タンパク質凝集体の散乱光は微弱であるために、通常の散乱測定法では、検出が難しかった。
そのため、従来技術1は、ある程度のサイズに成長した微結晶による散乱光を検出していると推測できる(例えば、特許文献1の段落[0030]等参照)。
【0013】
また、従来技術2は、結晶化溶液からの前方小角散乱又は後方小角散乱の測定において、散乱光の検出器を微小角度で角度スキャン(角度走査)して、各散乱角度における散乱光の強度を計測していた(例えば、特許文献2の段落[0068]等参照)。
したがって、従来技術2では、散乱角スキャン法によって散乱光強度—散乱角度の分布関数(静的散乱分布関数、散乱光パターン)を得ているために、ある程度の測定時間、例えば、測定に10分間程度以上の時間を必要としていた。散乱角スキャン法では、高分解能の散乱角ステップで、比較的広い散乱角範囲であればあるほど、測定時間は長くなる。たとえば、散乱角0.05°で、1°~30°の散乱角範囲では、約30分間の測定時間を必要としていた。
【0014】
このため、従来技術2は、結晶化溶液において、凝集する速度が大きく、故に、散乱光パターンが時間とともに大きく変化する場合等では、タンパク質凝集体の形成過程を追従することが困難であった。また、結晶化溶液を分析するまでの時間が掛かっていた。
つまり、従来技術2では、結晶化溶液内で結晶核形成から微結晶形成へと結晶が成長する前段階の過程を、実時間で追従することが難しかった。
【0015】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の結晶化分析装置は、タンパク質の結晶化溶液の結晶化分析装置であって、前記結晶化溶液を保持する測定試料部と、前記測定試料部に入射された光から放射される前記結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を所定の散乱角範囲で取り込み、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光に変換する測定散乱光変換部と、前記測定散乱光変換部により変換された前記平行前方小角散乱光又は前記平行後方小角散乱光の前記所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定する散乱光検出部と、前記散乱光検出部により測定された前記所定の散乱角範囲の強度分布から、前記結晶化溶液において前記タンパク質の凝集体形成を解析し、前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを実時間で分析する計測解析部とを備えることを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記計測解析部は、前記散乱光検出部で検出された前記平行前方散乱光又は前記平行後方散乱光を、それぞれ前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の散乱角に対する分布関数に変換することを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記計測解析部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の散乱角に対する分布関数に基づいて、前記結晶化溶液における前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを分析することを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記計測解析部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度変化に基づいて、前記結晶化溶液における前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを分析することを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記所定の散乱角範囲は、1°~15°であり、前記散乱光検出部は、0.1秒以下の時間で、前記所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定することを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記結晶化溶液への入射光の状態を調整する入射光調整部を備え、前記入射光調整部は、前記入射光の光路変更機能を備えた光学素子と、前記入射光を所定の強度に調整する機能を備えた光学素子とを含むことを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記測定散乱光変換部は、シリンドリカルレンズを含み、前記結晶化溶液の前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光を、それぞれ前記平行前方小角散乱光又は前記平行後方小角散乱光に変換することを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記散乱光検出部は、マルチチャンネル光検出器を含み、前記平行前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の散乱角に対する各チャンネルの分布関数を、前記所定の散乱角範囲の強度分布として検出することを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記入射光調整部は、スペイシャルフィルター及びコリメートレンズを含むことを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記測定試料部と前記散乱光検出部との間に、前記結晶化溶液からの透過光を防止する透過光ブロックを備え、前記散乱光検出部は、前記透過光ブロックにより前記透過光が防止された状態で、前記結晶化溶液の前記平行前方小角散乱光を計測することを特徴とする。
本発明の結晶化分析装置は、前記透過光ブロックは、反射ミラー、光フィルター、及び光ビームスプリッターのいずれか一種を含むことを特徴とする。
本発明の結晶化分析方法は、タンパク質の結晶化溶液の結晶化状態を分析する結晶化分析方法であって、前記結晶化溶液に光を入射させ、入射された光から放射される前記結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を所定の散乱角範囲で取り込み、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光に変換し、変換された前記平行前方小角散乱光又は前記平行後方小角散乱光の前記所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定し、測定された前記所定の散乱角範囲の強度分布から、前記結晶化溶液における前記タンパク質の凝集体形成を解析し、前記結晶化溶液において前記タンパク質が結晶化状態に移行するか否かを実時間で分析することを特徴とする。
本発明の結晶化分析方法は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ一度に検出された前記平行前方散乱光又は前記平行後方散乱光から得られる、前記前方小角散乱光の散乱角度に対する分布関数又は前記後方小角散乱光の散乱角に対する分布関数であることを特徴とする。
本発明の結晶化分析方法は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ一度に検出された前記平行前方散乱光又は前記平行後方散乱光から得られる、前記前方小角散乱光の散乱角に対する平均値の分布関数又は前記後方小角散乱光の散乱角に対する平均値の分布関数であることを特徴とする。
本発明の結晶化分析方法は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度変化に基づいて、前記結晶化溶液における前記タンパク質の結晶化状態を分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、結晶化溶液の前方小角又は後方小角の所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定して解析することによって、溶液がタンパク質結晶化へ進行するか否かを実時間で分析することで、未だ微結晶が形成されていない段階のタンパク質凝集体の形成過程を実時間で追従することができる結晶化分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置の概略制御構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置の詳細制御構成を示すブロック図である。特に、結晶化溶液の前方小角散乱光を測定するための詳細制御構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る測定試料部の溶液セルの構成例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る測定試料部と各散乱光の関係を示す平面概念図である。特に、結晶化溶液の前方小角散乱光の測定における測定試料部と各散乱光の関係を示す平面概念図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る結晶化溶液の測定、分析処理のフローチャートである。
【図6A】本発明の実施の形態の実施例に係る光検出器の受光部の受光チャンネル/ピクセル数に対する、測定された平行前方小角散乱光の強度関数を示すグラフである。
【図6B】本発明の実施の形態の実施例に係る光検出器の受光部の受光チャンネル/ピクセル数に対する、測定された平行前方小角散乱光の強度関数に関して、受光チャンネル/ピクセル数を散乱角度に変換して得られた、散乱角に対する前方小角散乱光の強度関数を示すグラフである。
【図6C】本発明の実施の形態の実施例に係る光検出器の受光部のチャンネル/ピクセル数に対する、測定された平行前方小角散乱光の強度関数に関して、受光チャンネル/ピクセル数を散乱角度に変換し、さらに散乱ベクトル(大きさ)に変換して得られた、散乱ベクトル(大きさ)に対する前方小角散乱光の強度関数の両対数を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態の実施例に係る異なる2つの結晶化剤濃度について、測定された散乱ベクトル(大きさ)に対する前方小角散乱光の強度関数の両対数を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態の実施例に係る散乱光強度の時間的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施の形態>
〔結晶化分析装置Zの構成〕
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zの概略構成について説明する。
本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zは、結晶化するタンパク質と結晶化剤を含む結晶化溶液に対して、結晶化溶液からの静的光散乱や動的光散乱の計測を行い、結晶化溶液中におけるタンパク質結晶化の状態をリアルタイム(実時間)で分析する装置である。結晶化分析装置Zは、特に前方小角光散乱、又は後方小角光散乱の計測に基づいて、結晶化の状態を実時間で分析する。
すなわち、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zは、測定対象の結晶化溶液へ光を入射し、前方小角又は後方小角における散乱光(前方小角散乱光又は後方小角散乱光)を所定の散乱光角範囲で一度に、瞬時に計測する。そして、結晶化分析装置Zは、結晶化溶液からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光の散乱角度に対する強度分布(静的光散乱、SLS:Static Light Scattering)、又はその時間的強度変化(動的光散乱、DLS)に基づいて、結晶化溶液におけるタンパク質の凝集体や結晶核の形成等を分析する。

【0020】
なお、本実施形態において、「前方小角光散乱」及び「前方小角散乱光」とは、測定対象の結晶化溶液へ光を入射して、その透過光に対する散乱角度が10°以下、特に8°以下における溶液からの散乱及び散乱光であることを示す。
また、本実施形態において、同様に、「後方小角光散乱」及び「後方小角散乱光」とは、測定対象の結晶化溶液に光を入射して、その反射光に対する散乱角度が10°以下、特に8°以下における溶液からの散乱及び散乱光であることを示す。

【0021】
具体的に、図1は、タンパク質結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を計測する際の概略制御構成を例を示す。
本実施形態の結晶化分析装置Zは、主な構成として、光源1と、入射光調整部2と、測定試料部3と、測定散乱光変換部4と、散乱光検出部5と、計測解析部6とを備えている。
ここで、図1においては、点線の矢印は光信号の流れを、実線の矢印は制御信号及び計測に係る電気信号の流れの例を示している。

【0022】
光源1は、分析対象の結晶化溶液31(図2)からの散乱光を発生させるために、結晶化溶液31へ入射させる光(以下、「入射光」という。)を発生させる光源である。
すなわち、光源1は、結晶化溶液31へ入射されると、結晶化溶液31からの散乱光、特に前方小角散乱光、又は後方小角散乱光を効率よく発生させるような性質をもつ光を発生させる。

【0023】
入射光調整部2は、測定試料部3の結晶化溶液31への入射光の状態を調整する。
具体的に、入射光調整部2は、光源1の本体から出射された入射光の光量、及び偏光状態を調整する光学素子群等として構成される。なお、この入射光調整部2により調整された入射光は、後述するように、入射光光路変更部20(図2)により、光路を変更されてもよい。

【0024】
測定試料部3は、溶液セル30(図2)及び結晶化溶液31、支持ホルダー(図示せず)が載置され、散乱光、特に前方小角散乱光、又は後方小角散乱光を計測するため適切に光学的配置がなされている。

【0025】
測定散乱光変換部4は、測定試料部3に入射された光から放射される結晶化溶液31の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を、所定の散乱角範囲(散乱角度の範囲、放射角度の範囲)で取り込み、平行前方小角散乱光又は後方小角散乱光に変換する。具体的には、測定散乱光変換部4は、結晶化溶液31におけるスポット状の照射光部分から放射される、所定の散乱角範囲の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を広げた上で、平行光である平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光に変換する。また、測定散乱光変換部4は、この平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光を、散乱光検出部5へ導く。

【0026】
散乱光検出部5は、測定散乱光変換部4によって平行光に変換された平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光の強度を検出する光検出器である。具体的には、散乱光検出部5は、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光について、所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定する。この所定の散乱角範囲は1°~15°程度であり、散乱光検出部5は、0.1秒以下の時間で、所定の散乱角範囲の強度分布を一度に測定する。
なお、散乱光検出部5は、所定の散乱角範囲の一部についてのみ、強度分布を一度に測定してもよい。つまり、散乱光検出部5は、測定散乱光変換部4により取り込まれる所定の散乱角範囲よりも狭い角度範囲の強度分布を一度に測定してもよい。この場合でも、散乱光検出部5は、後述する複数のチャンネル(ピクセル)の角度範囲の強度分布を一度に測定する。
また、タンパク質の結晶化溶液31(図2)は、透過光や反射光が強く、透過光遮蔽部45(図2)が散乱光の影になる影響もあるため、散乱角度0°近傍(光軸上)の散乱光の測定は実質的に困難である。このため、散乱光検出部5は、1°以上の散乱角度の散乱光の強度を測定するように構成することが好適である。

【0027】
計測解析部6は、散乱光検出部5により測定された所定の散乱角範囲の強度分布から、結晶化溶液31においてタンパク質の凝集体形成を解析する。このため、計測解析部6は、測定した散乱光データの記録、呼び出し、データのグラフ化等の演算処理を行う。すなわち、計測解析部6は、散乱光検出部5によって検出された散乱光による電気信号(アナログ信号)を増幅することで散乱光の強度を計測し、測定された散乱光の強度に応じた電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。計測解析部6は、このデジタル信号に対して、各種データ解析を行って、それぞれ前方小角散乱光又は後方小角散乱光の強度の散乱角に対する分布関数に変換する。そして、計測解析部6は、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の強度の散乱角に対する分布関数に基づいて、結晶化溶液31におけるタンパク質が結晶化状態に移行するか否かを分析する。結晶化溶液31におけるタンパク質の結晶化状態を実時間で分析する。この際、計測解析部6は、散乱光検出部5により測定された所定の散乱角範囲の強度分布から、結晶化溶液31におけるタンパク質が結晶化状態に移行するか否かを実時間で分析する。具体的には、計測解析部6は、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の強度分布の経時変化に基づいて、結晶化溶液31におけるタンパク質が結晶化状態に移行するか否かを分析する。これにより、計測解析部6は、タンパク質凝集体の形成過程を実時間で追従することが可能となる。

【0028】
なお、結晶化分析装置Zは、この他にも、各部に電力を供給する電源(図示せず)、各部を格納する筐体、他の分析装置やプリンター等に接続するためのインターフェイス等を備えている。
また、本実施形態においては、結晶化溶液31として、タンパク質結晶化溶液を使用する例について説明する。しかしながら、結晶化分析装置Zは、タンパク質以外の生体高分子、微粒子、その他の低分子や高分子等についての結晶化の測定、分析、及び観察についても可能である。
また、散乱光検出部5は、散乱角0°から測定可能であってもよい。たとえば、シリカ微粒子等の強く散乱する対象の場合には、透過光や反射光が弱くなるため、0°からの散乱測定を行うことが可能である。その場合、後述する透過光遮蔽部45を用いない構成であってもよい。

【0029】
〔結晶化分析装置Zの各機器の詳細構成〕
次に、図2~図4を参照して、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zを構成する各部について、より具体的な構成について詳細に説明する。

【0030】
(光源1の構成)
図2を参照して、特に、結晶化溶液31の前方小角散乱光を計測するための結晶化分析装置Zの詳細制御構成について説明する。
まずは、光源1の構成について説明する。光源1は、具体的には、例えば、各種ガスレーザ、半導体レーザ(Semiconductor Laser、Diode Laser、LD)、ダイオード励起固体(Diode-Pumped Solid-State、DPSS)レーザ、及び発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)等を光源として用いることができる。
ここで、光源1は、高輝度のレーザ光源であって、高いコヒーレンス長を持った、シングル縦モードの単色一波長を発振するレーザ光源を用いることが好ましい。このレーザ光源としては、例えば、DPSSレーザを用いてもよい。このDPSSレーザは、レーザ光発振に必要な光共振器を内蔵した、小型のレーザ光源である。このDPSSレーザは、低電力で高効率の安定な高出力レーザが得られるという特長がある。このため、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zの光源として、特に好適である。

【0031】
なお、光源1は、高いコヒーレンス長のレーザ光源でなくてもよい。たとえば、光源1として、低コヒーレンス長のLEDや、白色光源から得られた単色光等も利用できる。特に、LEDは、他のレーザ光源に比べて小型な光源である。このため、光源1としてLEDを用いた場合、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zの光源部を小型化できる。また、光源1は、分析対象である結晶化溶液31からの散乱光が比較的強い場合、上記の光源よりも低輝度の光源、例えば、白色光源から分光器によって得られる単色光等も用いることができる。

【0032】
また、光源1は、駆動電源と光源本体が小型で、結晶化分析装置Zへの組み込むのに適したサイズであることが好ましい。このため、例えば、タンパク質を結晶化溶液31として用いる場合、数mW~数十mWのレーザ光源を用いることが好適である。
また、光源1の本体と駆動電源とについても、結晶化分析装置Zに組み込む場合、できるだけ小型であることが好ましい。なお、光源1の本体と駆動電源とは、一体化されて構成されても、これらが別々に構成されてケーブルで接続されていてもよい。別々に構成されている場合でも、結晶化分析装置Zに組み込める程度のサイズであればよい。

【0033】
光源1の光の波長としては、結晶化溶液31がタンパク質結晶化溶液である場合、光散乱法によるタンパク質溶液中におけるタンパク質の凝集体や結晶核の分析に適する波長を用いる。この波長としては、測定対象のタンパク質分子に固有の光吸収帯から離れた波長領域であることが好ましい。これは、タンパク質結晶化で使用される溶液のタンパク質濃度が高い場合、タンパク質凝集体や結晶核による弾性散乱光が、外部に放出される前に、結晶化溶液31中の他のタンパク質分子に強く吸収されるためである。この場合、溶液からの測定すべき散乱光の強度が著しく低下する可能性が高い。
可視光領域でタンパク質に大きな吸収帯がある例としては、各種金属イオンを含むタンパク質分子がよく知られている。また、多くのタンパク質には、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)等のアミノ酸に由来する280nm付近の紫外線領域に大きな吸収帯がある。したがって、これらの吸収帯から離れた波長域を用いることが好適である。
さらに、光源1の光の波長を、測定対象タンパク質の吸収帯から離れた波長域とすることで、光吸収がほとんどなくなり、更に、光吸収が小さい波長域で、より短波長の光がタンパク質分子やその凝集体でより強く散乱される。
このため、散乱光検出の面から、光源1としては、できるだけ短波長であることが好ましい。これは、光吸収が非常に小さい波長領域では、物質の屈折率は、短波長であるほど単調に増加する性質(正常分散)を持つので、より短波長で光散乱の強度が大きくなるためである。

【0034】
光源1から結晶化溶液31へ入射させる入射光の形状には、特に制限はないものの、円形の光ビームを用いるのが特に好ましい。円形の光ビームは対称性がよいため、これを用いることで、散乱光の検出器による受光、結晶化分析装置Zの光学系の光軸調整(アライメント)等が容易になる。なお、入射光のビーム形状は、楕円形や長方形状等であってもよい。
また、入射光のビーム形状によって、使用する溶液セル30の形状、測定散乱光変換部4を構成するレンズ群を用いて、透過させる光又は反射させる光のビーム形状、散乱光検出部5の光検出器50の受光部の形状等を選択して決定することが好適である。

【0035】
光源1からの入射光のビームサイズは、できる限り小さく細い(スポット状)の光ビームであることが好適である。また、光源1からの入射光は、平行な光、即ち、コリメート光を用いることが好適である。入射光が円形状である場合、ビームサイズは、直径1.6mm以下、特に1mm以下が好ましい。光ビームサイズに対応して、使用する溶液セル30の形状とそのサイズ、測定散乱光変換部4を構成するレンズ群の種類とそれらのサイズ、散乱光検出部5の光検出器50の受光部の形状とそのサイズ等を決定することが可能である。以下、光源1からの、平行で小さなスポット状の光ビームを、「コリメートビーム光」等と呼ぶ。

【0036】
光源1からの入射光の広がり角は、できる限り小さくし、全放射角度で1.5mrad以下、特に1mrad以下とすることが好適である。
入射光自体の広がり角が大きい場合、測定散乱光変換部4のレンズ群によって、所定の放射散乱角範囲で溶液からの散乱光を平行光に正確に変換することが困難となる。したがって、平行な測定散乱光を散乱光検出部5の光検出器50へ正確に入射させることが難しくなるため、散乱光の角度分布測定を行うことが困難となる。
さらにまた、入射光自体の広がり角が大きいと、入射光調整部2において、レンズとピンホールを組み合わせて構成した空間(スペイシャル)フィルター(以後、「スペイシャルフィルター」という。)、平行光用のレンズ、及び絞り等の光学素子によって入射光を平行光にしようとしても、光ビーム径が拡大することが避けられない。このため、結晶化溶液31に対する高精度な散乱光角度分布の測定が困難となる。

【0037】
光源1の出力には、特に制限はなく、測定対象の結晶化溶液31の散乱光強度、使用する散乱光検出部5の光検出器50の感度、及び散乱光強度計測で使用する増幅器の増幅度(利得、ゲイン)等に対応して調整することが好適である。

【0038】
光源1からの光の偏光性には、特に制限はなく、直線偏光、円偏光、及び楕円偏光等の偏光した光を用いることができ、更に、無偏光であってもよい。特に、TE(s)偏光やTM(p)偏光等の直線偏光が利用しやすい。
また、高精度の散乱光計測には入射光の安定性が要求される。このため、光源1の出力安定度は、1時間当たり数%以下であることが好適である。
さらに、散乱光の計測において、入射光の強度変化をモニターすることにより、入射光変動の影響を避けることも可能である。

【0039】
(入射光調整部2及び入射光光路変更部20の構成)
入射光調整部2は、光量調整素子2aと偏光素子2bを含んでいる。
光量調整素子2aは、光源1からの放射される光、及び測定対象の溶液へ入射する入射光の強度を調整するニュートラルデンシティー(ND)フィルター等である。
また、偏光素子2bは、光源1から放射される光の偏光状態を調整する光学素子である。

【0040】
具体的には、光量調整素子2aとして、各種の光フィルター、例えば、金属薄膜フィルター、誘電体フィルター等を用いることができる。光量調整素子2aは、例えば透過率0.1%~50%までのNDフィルター等を用いることで、入射光の光量(光強度)を容易に調整できる。
光量調整素子2aの透過率は、対象溶液の散乱光の強度、光検出器50の検出感度、及び検出信号の増幅率等に対応して調整可能である。たとえば、光量調整素子2aにより、光源1から出射される光の光量について、測定対象の結晶化溶液31からの散乱光が良好なSN比(ノイズ信号に対するシグナル信号の比率)で得られるように調整することが好適である。

【0041】
偏光素子2bとしては、光源1から出射される光が無偏光であれば、入射光の偏光性を調整するための各種の偏光板や偏光フィルターを用いることができる。また、光源1からの出射光が直線偏光である場合には、偏光子として、1/2波長板等を用いてもよい。これを用いることで、偏光の方向を任意の方位角度に設定でき、電場ベクトルが光学系に対して水平であるTM(p)偏光、又は垂直であるTE(s)偏光が得られる。
また、測定対象の結晶化溶液31からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光の強度が入射光の偏光性に強く依存する場合、散乱光強度が大きくなるように、偏光素子2bによって入射光の偏光状態を調整することが可能である。

【0042】
また、入射光調整部2は、溶液セル30へ入射光を導くためのレンズ等の光学素子群を備える(図示せず)。入射光調整部2は、より具体的には、結晶化溶液31へコリメート(平行)ビーム光を入射させるための、レンズとピンホールとを組み合わせて構成したスペイシャルフィルターと、入射光を平行光にするためのレンズと、絞り等の光学素子とを備える。入射光調整部2により、測定試料部3の溶液セル30内の結晶化溶液31へ、入射光が平行になるように光学調整したコリメートビーム光等を入射させることが可能になる。このコリメートビーム光により、溶液セル30へ、垂直に入射光を入射させることが可能となる。このため、後述するように、前方小角散乱光を効率よく測定することができる。

【0043】
また、図2に示すように、入射光調整部2には、さらに絞り21を入射光の光軸上に配置することが可能である。絞り21は、測定試料部3の結晶化溶液31への入射光以外の迷光の入射を防止し、さらに測定試料部3や測定散乱光変換部4等からの反射光が、再度測定試料部3の結晶化溶液31へ入射することを防ぐ。
絞り21の口径は、入射光ビーム径よりも大きく、上記のような迷光や反射光を防止するために十分なサイズ(口径)であればよい。絞り21の口径として、例えば、直径1mmφの入射光ビームに対しては、直径1.5mm以上で3mm以下程度が好ましい。

【0044】
ここで、入射光調整部2のスペイシャルフィルター(図示せず)の例について説明する。このスペイシャルフィルターは、例えば、集光レンズと、ピンホールと、その集光レンズとピンホール間の距離を微調整する機構を備えた、ビーム整形用の光学素子群で構成される。このスペイシャルフィルターに入射された光は、集光レンズによって集光され、その集光位置に配置されたピンホールにより、集光された光の一部が通過される。これにより、形状ひずみの少ない、広がった光が出射される。この集光レンズの集光位置は、例えば、集光レンズが集光用凸レンズであれば、焦点位置となる。また、この集光レンズとしては、大きなNA(>0.3)をもちビームスポット径を小さく絞れるレンズ、例えば、対物レンズが用いられる。この集光レンズとしては、特に、短焦点距離で倍率が×10~×50の顕微鏡用対物レンズが好ましい。また、ピンホールとしては、例えば口径5μm~50μmの孔をもつ薄い金属板等を用いることが可能である。たとえば、穴径25μmの金属箔ピンホールを用いることが可能である。また、集光レンズとピンホール間の距離を微調整する機構としては、集光レンズ、若しくは、ピンホールを保持するホルダーを精密ステージに搭載し、その精密ステージを微小距離で移動させて、その距離を微調整するように構成することが可能である。たとえば、集光レンズが集光用凸レンズの場合、微調整する機構の精密ステージを用いて、ピンホールをこの集光用凸レンズの焦点位置に配置する。

【0045】
入射光調整部2のコリメート光変換用凸レンズは、スペイシャルフィルターから出射され広がった光を、コリメート光に変換する。さらに、そのコリメート光を光学絞りやピンホール等に更に通過させることで、その一部の光、つまり、ひずみの少ない非常に細い平行ビーム光が得られる。すなわち、スペイシャルフィルターと、コリメート光変換用凸レンズと、光学絞りやピンホール等との組み合わせによって、前方小角光散乱又は後方小角光散乱の測定に適する、ひずみの少ない非常に細いコリメート光である入射光を、結晶化溶液31へ入射させることが可能となる。
このスペイシャルフィルターから出射される広がった光をコリメートビーム光に変換するレンズとしては、各種凸レンズ、例えば球面単レンズや球面アクロマティックレンズが利用できる。また、コリメート光から一部の細い平行ビーム光を切り出すための光学絞りやピンホール等としては、口径1mm以下の光彩絞りやピンホール等を使用できる。

【0046】
なお、図2に示すように、光源1からの出射光を、入射光調整部2にて調整した後、測定対象の溶液セル30に入射光として導入するための光路変更を行う入射光光路変更部20を更に備えていてもよい。
入射光光路変更部20は、例えば、一群のミラー、レンズ、プリズム等の光学素子により光路変更を行う。
入射光光路変更部20は、より具体的には、例えば、光源1からの出射光に対して入射角度45度で平面ミラーに入射するように、2枚一組の平面ミラー20a、20bを配置し、各平面ミラーで直角に光路変更して、光の進行方向を反転させるように構成する。
このようなミラーの配置によって、溶液セル30への入射光の導入と、測定散乱光変換部4のレンズ群及び散乱光検出部5の光検出器50の配置のための光軸調整(アライメント)とが容易になり、入射光側の光学系を小型化することが可能となる。このため、結晶化分析装置Zを小型化することができる。

【0047】
また、入射光光路変更部20で、入射光の一部を分岐して入射光をモニターするように構成することも可能である。この入射光の分岐には、例えば、透過光と反射光を分路させるハーフミラー等を用いることができる。

【0048】
(測定試料部3の構成)
次に、図3により、本発明の実施の形態に係る測定試料部3の具体例について説明する。
測定試料部3は、結晶化溶液31を収納する溶液セル30と、溶液セル30を支持する支持ホルダー(図示せず)を含んでいる。

【0049】
溶液セル30は、測定対象の対象である結晶化溶液31を収容し、散乱光を測定するための容器(溶液セル)である。
また、溶液セル30は、測定試料部3の支持ホルダーによって設置位置が調整され、最終的には固定される。この溶液セル30の設置位置は、測定対象の溶液が微量で、高濃度であっても、結晶化溶液31からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光を効率よく放射させ、前方小角散乱光又は後方小角散乱光を高精度に検出して計測できるような位置であることが好適である。つまり、この設置位置は、結晶化分析装置Zの光学系における、溶液セル30の位置、溶液セル30への入射光の入射角度、入射光の照射(光ビームスポットの)位置等により設定され、調整される。

【0050】
また、光源1からのコリメートビーム光は、図3に示すように、薄い平板状の溶液セル30へ垂直に入射し、溶液セル30の結晶化溶液31を通過する。その透過光は、溶液セル30の入射側とは反対側から出射される。その際、結晶化溶液31から、溶液セル30を通して前方に、前方小角散乱光が、透過光の光軸に対して様々な角度で放射される(以下、この散乱光の角度を「散乱角度」という。)。なお、図4で示すように、結晶化溶液31からは後方には、後方小角散乱光も放射される。

【0051】
溶液セル30は、特に入射面と透過面が平面となる角型セルを用いることが好ましい。この際、光散乱測定で使用する結晶化溶液31の容量は、数十μl以下が好ましく、市販の光吸収測定用の溶液セルは適用が難しい。

【0052】
このため、タンパク質を結晶化溶液31とする溶液セル30として、例えば、図3に示すように、2つの透明な平板状基板32a、32bで、特定の厚さの平板状のスペーサー33を挟み、このスペーサー33によって形成される基板間の間隙に結晶化溶液31を注入し保持する、サンドイッチ型構造で構成される溶液セル30を用いることが好適である。

【0053】
平板状基板32aは、溶液セル30に入射する側の光学ガラス等の板状の透明部材である。平板状基板32bは、溶液セルから透過光が出射され、また散乱光(前方小角散乱光)が放射される側の板状の透明部材である。平板状基板32a、32bは、透明で均一な材料により構成されればよい。

【0054】
具体的には、平板状基板32a、32bとして、入射光側と散乱光放射側で、測定光の波長領域で透過性に優れた光学材料を用いることが好ましい。このため、各種透明ガラスや透明プラスチック等が好適である。透明ガラスは、可視光領域で透過性が高く、均質性に優れ、化学的に安定しているので、平板状基板32a、32bの素材として好適である。この場合、BK-7やパイレックス(登録商標)等のホウ珪酸ガラス、及び紫外線領域にも高い透過性を有する石英ガラスが特に好適である。また、透明プラスチックは、硬いガラス材料と異なり、容易に曲げられるフレキシブルな材料であり、平板状基板32a、32bの素材としても使用可能である。光透過性に優れ、化学的に安定な光学プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエチレン等の重合高分子化合物を用いることが好適である。

【0055】
また、タンパク質結晶化溶液の場合、特に10°以下の小さい散乱角範囲で、特に8°以下の散乱角において、散乱光が顕著に大きく、前方小角散乱光が発生する。結晶化溶液31からの散乱光は、透明な溶液セル30を通して外部に放射されるために、溶液セル30の出射側壁の曲率によって、屈折されて出射される。
したがって、溶液セル30の出射側壁の曲率によっては、屈折した散乱光の散乱角度(透過光の光軸から計った角度)は、真の散乱角度とは大きく異なることがある。この場合は、散乱角度に対して、溶液セル30の出射側壁における屈折角を考慮して補正することで対応可能である。

【0056】
また、溶液セル30へ入射する入射光としては、平行光、すなわちコリメート光が好ましい。
これは、溶液セル30の入射側の側壁面が、曲率を有する曲面である場合、コリメート光でない非平行光が、溶液セル30へ入射する際にこの入射側の曲面で屈折し、結晶化溶液31への入射光の入射角度が一定ではなくなり、そのために、溶液からの散乱光の放射角度強度分布を正確に測定することが困難となるためである。
また、入射光が結晶化溶液31を通過し、溶液セル30の透過側の側壁面が曲面である場合も、溶液を通過した透過光が溶液セル30の出射側曲面で屈折し、屈折して非平行となった透過光は、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の検出を妨げる恐れがある。
さらに同様の場合、溶液セル30からの透過光だけでなく、溶液セル30からの反射光も、溶液セル30の側壁面が曲面であるために、屈折のために広がった非平行光となり、迷光として、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の検出を妨げる恐れがある。
したがって、入射光、透過光、及び反射光の広がり角を可能な限り低く抑えることが好ましい。

【0057】
上述のように、溶液セル30からの散乱光は、入射側と出射側における屈折角の影響を受ける。これに対して、本実施形態においては、光源1からのコリメートビーム光が、平板状の溶液セル30へ垂直に入射する。溶液セル30の入射側と出射側の壁が、図3に示したように平面状であって、その厚さがある程度薄ければ、散乱角度が10°以下という前方小角では、屈折角による補正を特にする必要はない。すなわち、ある特定程度の薄い平板状の溶液セル30であれば、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の測定において、屈折角を考慮した散乱角度の補正は、特に必要ではなくなる。
したがって、溶液セル30を構成する入射側と出射側の平板状基板32a、32bは、できるだけ薄いことが好適である。前方小角散乱光測定の場合、溶液セル30の出射側平板の厚さc(図3)は、入射光ビーム径a(図3)の1/10~1/5程度以下が好ましい。すなわち、c<a/10~a/5が好ましい。特にc<a/10が好適である。
また、同様に後方小角散乱光の測定の場合では、溶液セル30の入射側平板の厚さd(図3)は、入射光ビーム径a(図3)の1/10~1/5程度以下が好ましい。すなわち、d<a/10~a/5が好ましい。特にd<a/10が好適である。

【0058】
また、平板状基板32a、32bは、同じ材質及び厚さの透明部材であってもよく、また異なる材質及び厚さの部材であってもよい。同じ材質及び厚さの透明部材により平板状基板32aと32bを構成した場合には、溶液セル30において入射側と出射側の区別はなくなる。すなわち、これらのどちらから光を入射させてもよい。この場合、平板状基板32a、32bとして、例えば、同一規格の厚さ0.2mm以下のカバーガラスを用いることが可能である。

【0059】
溶液セル30に使用するスペーサー33としては、ガラスをはじめ、ポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素ゴムやシリコンゴム等が適する。その中で、シリコンゴムが特に好ましく、シートやフイルムを使用する。
シリコンゴムは、ガラス基板などとの密着性が良く、数時間以内であれば、隙間からの水分蒸発で結晶化溶液31の各種溶質の濃度変化は、ほとんど問題にならない。しかしながら、数十時間以上の長時間、タンパク質溶液を溶液セルに保持した状態で使用する場合などでは、更に液漏れ防止のために、スペーサー33と、平板状基板32a、32bとの間をシリコングリースやフッ素グリース等でシールすることが好適である。

【0060】
上述したように、スペーサー33と、平板状基板32a、32bとは、結晶化溶液31を保持する容器として機能する。このため、例えば、平板状スペーサー内に円形、楕円形、長方形等の任意形状の溝孔を形成し、2つの平板状基板32a、32bでこのスペーサー33を挟むことによって形成される溝孔空間に、結晶化溶液31を収容することができる。すなわち、溶液セル30は、この溝孔空間に、結晶化溶液31が注入され、保持される。

【0061】
結晶化溶液31を収容するためにスペーサー33に形成する溝孔の大きさは、入射光ビームの大きさ以上あればよい。これは、本実施形態においては、結晶化溶液31は溶液濃度が一様であれば、結晶化溶液31へ入射する入射光を走査して、散乱光の測定によって溶液内のタンパク質凝集体の分布を調査する必要性がないためである。しかしながら、溝孔の縁からの散乱光の発生を考慮すると、溝孔の大きさは、入射光のビームの大きさの数倍以上であることが好適である。
より具体的には、上述のように結晶化溶液31への入射光ビームの直径が1.5mm以下の場合、例えば、スペーサー33に直径6mm~8mmの円形の溝孔を形成する。たとえば、直径6mmの円形の溝孔をスペーサー33に設けた場合、20μl程度の結晶化溶液31を溶液セル30に収容することが可能である。

【0062】
具体的には、溶液セル30は、例えば、タンパク質含有溶液と結晶化剤含有溶液とを混合させた結晶化溶液31を溝孔空間内に封じ込めて結晶化を行うバッチ法に用いることが可能である。このバッチ法によるタンパク質結晶化の場合、スペーサー33内に溝孔空間を設け、平板状基板32a、32bを用いて結晶化溶液31を封止し、結晶化溶液31の状態を上述の光散乱法で計測する。
また、溶液セル30は、例えば、タンパク質を蒸気拡散法で結晶化させる際にも用いることが可能である。光散乱法で結晶化溶液31の状態を分析する場合、バッチ法と同様に溶液セル30の溝孔空間内に、必要な各溶液を離した状態で注入し封止する。

【0063】
より具体的に説明すると、図3に示す溶液セル30のスペーサー33の厚さtは、結晶化溶液31の光路長を示している。結晶化溶液31は高濃度であるため、溶液中の多重散乱の効果を可能な限り低減させるような厚さtにすることが好適である。このため、測定対象となる溶液セル30の光路長は短く、結晶化溶液31の容量も微量であることが好適である。具体的には、測定対象の結晶化溶液31の容量は、例えば、25μl以下と微量であることが好適である。この場合、スペーサー33の厚さtは、結晶化溶液31に入射する光のビーム径程度、例えば1mm以下、特に0.5mm以下とすることが好適である。

【0064】
また、結晶化分析装置Zによるタンパク質結晶化の測定時においては、溶液セル30に結晶化溶液31を注入した後、結晶化溶液31からの蒸発を防止するために、例えばパラフィンオイル等でシールする。その後、溶液セル30から溶液が漏れ出たりしないように、スペーサー33と平板状基板32a、32bとを強く密着させ、場合によっては適宜の留め金具等で溶液セルをクリップする。さらにまた、溶液漏れを防止するために、例えばグリース等で密着する側面部分をシールしてもよい。漏れ防止グリースとして、シリコングリースやフッ素グリース等を使用することが可能である。

【0065】
なお、溶液セル30内に予め結晶化溶液31を封止した状態、すなわちバッチ法で結晶化溶液の分析を行う他に、分析の際に結晶化溶液31を作製するためのタンパク質、結晶化剤、緩衝剤等を含む結晶化溶液31を溶液セル30内に注入したり排出したりできるように構成することも可能である。この場合、溶液セル30に溶液を注入、又は排出するための挿入口や排出口等を設けてもよい。この場合、結晶化溶液31の分析中に、各物質の濃度を調整したり、変化させたりして分析を行うことが可能となる。

【0066】
なお、溶液セル30として、透過光による光吸収測定用に市販されている従来の角型や円筒形などの溶液セルを使用することも考えられる。しかしながら、多くの市販溶液セルの場合には、溶液セルを通過する入射光の光路長は、例えば5mm~1cmと長く、数ml以上の溶液が必要となるため、タンパク質の結晶化については現実的に使用するのが難しいと考えられる。

【0067】
支持ホルダーは、平行な入射光を溶液セル30に、任意の入射角度で入射するための回転機構、入射光の光軸に対する位置移動等を行う機構を備える。
溶液セル30への入射光の入射角度としては、垂直(入射角度0°)が特に好ましい。また、垂直入射に近い角度、例えば5°以下であればよく、溶液セル30の反射光が迷光となって散乱光検出部5の光検出器50の受光部に入射しないように、支持ホルダーにより入射角度を調整する。このような入射角度の調整には、各種回転ステージ、各種傾斜ステージ等を利用する。また、特に、回転ステージや傾斜ステージ等を使用しなくても、溶液セル30を支持ホルダーに固定する際に、例えば、垂直入射の入射角度付近の僅かな角度(例えば、1~2°)で入射角度を調整できるように構成されていればよい。

【0068】
また、支持ホルダーは、溶液セル30を支持し、入射光の光軸に対して垂直方向に、溶液セル30を移動させる機構を備えてもよい。たとえば、支持ホルダーをX軸光学ステージ、或いはY軸光学ステージ、又はZ軸光学ステージ上に設置して、これら各軸の光学ステージによって、溶液セル30を移動させてもよい。このような溶液セル30の移動調整によって、測定溶液である結晶化溶液31への入射光の照射位置、即ち、光ビームスポット位置を調整することが可能である。結晶化溶液31への入射光の照射位置を調整することで、使用した溶液セル30において、部分的な埃や汚れ、又は混入や残留の気泡等があって、散乱光の測定を妨げる場合等に、これらを避けて、結晶化溶液31への入射光の照射位置を設定できる。このため、溶液からの散乱光を正確に計測できる。
また、特に各軸の光学ステージを使用しなくても、溶液セル30を支持ホルダーに固定する際に、溶液セル30中の結晶化溶液31への入射光の照射位置を微調整するような機構を備えるような構成としてもよい。

【0069】
(測定散乱光変換部4の構成)
次に、図4により、測定散乱光変換部4の詳細な構成について説明する。
図4は、測定試料部3の溶液セル30と、測定散乱光変換部4のレンズ40と、散乱光検出部5の光検出器50の受光部との配置を示している。具体的には、図4は、測定試料部3の溶液セル30、透過光遮蔽部45(透過光ブロック)、測定散乱光変換部4のレンズ40、及び散乱光検出部5の光検出器50の受光部と、入射光、透過光、前方小角散乱光、後方小角散乱光、及び平行前方小角散乱光との配置の関係を示している。

【0070】
測定散乱光変換部4は、入射光が測定試料部3の溶液セル30に入射して、溶液セル30内の結晶化溶液31から放射される前方小角散乱光又は後方小角散乱光を平行光(コリメート光)、即ち、それぞれ平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光に変換し、散乱光検出部5へ導く。具体的には、測定散乱光変換部4は、結晶化溶液31から狭い所定の散乱角範囲で放射された前方小角又は後方小角散乱光を集めて、平行光に変換し、当該平行前方小角又は平行後方小角散乱光を散乱光検出部5の光検出器50へ導入する。
散乱光検出部5は、測定散乱光変換部4によって平行光に変換された平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光を検出する。

【0071】
測定散乱光変換部4は、レンズ40と、支持ホルダー(図示せず)から構成される。支持ホルダーは、レンズ40を支持し、レンズ40の位置や傾き角度を調整する機構を備えている。

【0072】
測定散乱光変換部4のレンズ40としては、各種レンズ、例えば球面平凸レンズ、球面両凸レンズ、非球面レンズ、円筒面平凸レンズ並びに円筒面両凸レンズ(以下、単に、「シリンドリカルレンズ」と呼ぶ。)等の単一レンズ、及び光学的に性質の異なる単レンズを、2つ以上貼り合わせた各種アクロマティックレンズ等を用いることが可能である。
測定散乱光変換部4は、所定の散乱角度範囲で広がった散乱光を効率よく取り込み、平行光に変換する作用を備えるように、上述の単一レンズ、アクロマティックレンズ、又は、これら各種レンズを組み合わせた光学系等で構成する。
測定散乱光変換部4として構成する単一レンズは、特に円筒形のシリンドリカルレンズを用いることが好適である。また、2つ以上の円筒面レンズを貼り合わせて1枚のレンズとしたアクロマテックシリンダーレンズも用いることが可能である。

【0073】
測定散乱光変換部4のレンズ40は、測定試料部3の溶液セル30と散乱光検出部5の光検出器50の間に配置して、結晶化溶液31から前方小角又は後方小角で放射的に散乱された光を取り込み、平行光(コリメート光)に変換する。レンズ40により変換された平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光は、散乱光検出部5の光検出器50の受光部に導かれる。
このため、測定散乱光変換部4のレンズ40は、結晶化溶液31からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光を平行光(コリメート光)に変換できる位置に配置される。そして、レンズ40で変換された平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光が、光検出器50の受光部に垂直に入射するように光検出器50が配置される。すなわち、散乱光検出部5の光検出器50の受光部は、溶液セル30からの透過光の光軸に対して垂直になるよう配置される。

【0074】
測定散乱光変換部4の支持ホルダーは、レンズ40を支持し、レンズ40の位置(高さ方向及び水平方向の位置)と、傾き角度とを微調整する。具体的には、結晶化溶液31の前方小角散乱光又は後方小角散乱光が、最適な位置でレンズ40へ入射されるように、支持ホルダーは、レンズ40の高さ方向と水平方向の位置に調整する。
また、レンズ40の位置調整には、X軸精密光学ステージ、又はY軸精密光学ステージ、及びZ軸精密光学ステージを用いることが可能である。
また、レンズ40の傾き角度の調整には、回転ステージや傾斜ステージを用いることが可能である。

【0075】
さらに、結晶化溶液31の前方小角散乱光の測定における各部の配置の詳細を示す具体例について説明する。
図4に示すように、測定試料部3の溶液セル30から測定散乱光変換部4のレンズ40までの距離Aは、測定散乱光変換部4のレンズ40の焦点距離f(図示せず)、溶液セル30の構造、入射光のビームサイズ、及び入射光ビームの広がり角等に依存する。特に、測定散乱光変換部4に使用するレンズ40の焦点距離fに大きく依存する。
結晶化溶液31からの前方小角又は後方小角の散乱光が微小な点から放射されたものと見なすと、測定散乱光変換部4のレンズ40を配置する位置は、理論的にはレンズ40の焦点距離fとなる。すなわち、理論上は、距離A=fの位置に測定散乱光変換部4のレンズ40を設置する。
しかしながら、測定散乱光変換部4のレンズ40の最も適切な配置は、レンズ40によって、平行な(コリメートされた)散乱光が得られる位置である。このため、この位置に測定散乱光変換部4のレンズ40を配置する。具体的には、測定散乱光変換部4のレンズ40を通過した散乱光が平行像となる位置に配置する。すなわち、測定散乱光変換部4のレンズ40を通過した散乱光が拡大されたり、若しくは縮小されたりしないような位置に、レンズ40を配置する。

【0076】
より具体的に、測定散乱光変換部4のレンズ40を配置する位置としては、測定試料部3の溶液セル30からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光が、測定散乱光変換部4のレンズ40によって、散乱光の平行像が得られるレンズの位置、つまり、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光が得られるレンズ40の位置になる。
散乱光は、実際には微小な点から放射されものではないために、溶液セル30からレンズ40までの距離A(図4)は、レンズ40の焦点距離fよりやや短い位置になる。
上述のようなレンズ40の最適な配置位置としては、例えば、焦点距離f=75mm、100mm、及び150mmの平凸シリンドリカルレンズの場合、それぞれ距離A=60mm、90mm、及び130mmである。つまり、平凸シリンドリカルレンズを配置する位置としては、A=f-20mm~f-10mmの位置範囲である。
実際には、レンズ40を通過した散乱光が平行像となる位置に、測定散乱光変換部4のレンズ40を配置する。
なお、このレンズ40を用いずに、前方小角散乱光又は後方小角散乱光を直接散乱光検出部5の光検出器50の受光部に導くような構成も可能である。すなわち、レンズ40を用いずに、測定試料部3からの広がった前方小角散乱光を、一度に光検出器で測定するような構成であってもよい。

【0077】
ここで、結晶化溶液31へ入射した光は、そのほとんどが散乱されずに直進透過する。この結晶化溶液31を通過した透過光は、結晶化溶液31からの散乱光に比べて強度が極めて大きい。このため、微弱な散乱光を測定する場合、強い透過光は光検出器50の検出レンジを遥かにオーバーして、微弱な散乱光を測定することが困難となる。つまり、比較的微弱な散乱光を測定するために利得(増幅度)を調整された光検出器50への透過光の入射は、検出信号のスケールオーバーを招き、好ましくない。また、この透過光は光検出器50への迷光の原因となり、微弱散乱光の計測を妨げる。このため、透過光遮蔽部45(図4)によって、溶液からの透過光の光検出器50の受光部への入射を防止することが好適である。すなわち、透過光遮蔽部45は、散乱光検出部5の光検出器50へ、溶液の透過光が入射するのを遮断し、又は透過光の強度を低下(減衰)させる。

【0078】
ここで、上述のように、結晶化溶液31に対し、散乱光に比べて強い透過光が直接、光検出器50の受光部に入射すると、微弱な散乱光の測定を妨げる。このために、溶液セルからの透過光が散乱光検出部5の光検出器50への入射することを防止するように、透過光遮蔽部45を透過光の光軸上に配置することが好適である。
透過光遮蔽部45は、特に結晶化溶液31からの前方小角散乱光を計測する場合に、例えば、レンズ40と光検出器50との間、又は溶液セル30とレンズ40との間に配置される。これにより、透過光遮蔽部45は、散乱光検出部5の光検出器50へ、溶液の透過光が入射するのを防止させる。
具体的には、透過光遮蔽部45は、測定試料部3の結晶化溶液31を透過した、溶液セル30からの透過光が散乱光検出部5の光検出器50へ入射することを防止する。これにより、結晶化溶液31の散乱光の測定において、透過光が影響しないようにすることが可能となる。

【0079】
透過光遮蔽部45は、各種吸収体、各種ミラー等を用いることができる。さらに透過光遮蔽部45は、散乱光を発生しないことが必要である。
透過光遮蔽部45の材料は、透過光を遮断する機能、又は透過光の強度を低下させ、更に散乱光を発生しない材質で構成されれば、特に制限はない。このため、透過光遮蔽部45として、例えば、紙、金属、プラスチック、ガラス、木材などの材料を用いることができる。透過光の遮断する効果、又は減衰させる効果を高めるには、これらの材料の表面に特に黒色につや消しをすることが好適である。
透過光遮蔽部45として、各種光学デバイスも用いることが可能である。たとえば、フィルター、ミラー、ハーフミラー、ビームスプリッター、光路変更用光学デバイス等を用いることが可能である。より具体的には、金属、金属膜、及び誘電体多層膜等の各種ミラーやハーフミラー、偏光板や波長板等の偏光素子、光吸収物質を含有させた吸収型NDフィルター、金属膜等で構成された反射型NDフィルター、各種プリズムやレンズ等の光路変更用光学素子などを用いてもよい。

【0080】
なお、拡散板のような透過光を拡散させて透過光を弱めるタイプの光学素子は、測定対象以外の散乱光を増やす原因となるために、透過光遮蔽部45には使用しない方がよい。上述したように、透過光遮蔽部45は、溶液セルからの透過光を防止し、更に散乱光を発生させないように構成される。透過光遮蔽部45によって散乱光が新たに発生した場合、測定対象の結晶化溶液31からの散乱光に重なって、散乱光検出部5の光検出器50で検出され、目的の散乱光を正確に測定することが困難となるためである。

【0081】
また、透過光の形状とそのサイズは、光源1から出射される入射光のビームサイズ、及び入射光調整部2から測定試料部3へ入射される光ビームの形状とサイズ、測定試料部3の溶液セルの構造、レンズ40の焦点距離f等に依存する。
このため、透過光遮蔽部45で使用する部材の形状とサイズは、透過光の形状とそのサイズに応じて、決定する。たとえば、円状の透過光の場合、それよりもサイズの大きな円板上の部材を用いる。この際、透過光遮蔽部45がレンズ40と光検出器50との間に配置される場合には、レンズ40により透過光が収束され又は拡散されるため、透過光遮蔽部45の配置位置における透過光の形状とサイズに対応した部材を用いる。

【0082】
透過光遮蔽部45は、溶液セルからの透過光を遮断する、又は透過光の強度を低下させる一方、測定試料部3の結晶化溶液31から放射される散乱光も遮断する、又は散乱光の強度を低下させる。つまり、透過光遮蔽部45は、散乱光検出部5の光検出器50へ入射する散乱光に対しては影体となり、その影の部分に相当する散乱角範囲では、正確な散乱光の測定が困難となる。したがって、結晶化溶液31の前方小角散乱光の低角度側まで正確に測定するために、透過光遮蔽部45の部材としては、可能な限り大きさを小さくすることが好適である。このため、透過光遮蔽部45には、透過光のビームのサイズよりもやや大きいサイズの部材を用いることが好適である。
たとえば、直径1mmφの円状の透過光に対しては、直径1.5mm以上で4mm以下程度の円板状の部材等が好適である。

【0083】
また、透過光遮蔽部45は、散乱光検出部5の光検出器50への溶液セル30からの透過光の入射を防止するために、測定試料部3と散乱光検出部5の間で、透過光の光軸上で、透過光を光検出器50の受光部に入射させないように配置する。また、透過光遮蔽部45は、透過光の光軸(進む方向)上に配置すればよく、その位置(距離)には制限はない。
また、透過光遮蔽部45を配置する位置は、測定試料部3と測定散乱光変換部4の間、又は測定散乱光変換部4と散乱光検出部5の間のどちらでもよい。
たとえば、図4に示すように、測定散乱光変換部4のレンズ40と、散乱光検出部5の光検出器50との間に透過光遮蔽部45を配置することが可能である。ここで、散乱光検出部5の光検出器50の受光面により近い位置に、透過光遮蔽部45を配置した方が透過光の入射を防止する効果がより高いため、測定散乱光変換部4と散乱光検出部5との間に配置することが特に好ましい。この場合、上述したように、レンズ40の集光作用により透過光が集光され、そのビーム径がより小さくなるために、よりサイズの小さい透過光遮蔽部45で透過光を遮蔽することが可能となる。また、小さいサイズで遮蔽できるようになるため、より小角の散乱角での測定が可能となる。

【0084】
なお、上述したように、透過光遮蔽部45は、測定試料部3の溶液セル30と、測定散乱光変換部4のレンズ40との間に配置してもよい。
また、透過光遮蔽部45は、後方小角散乱光を測定する構成においては、配置されなくてもよい。

【0085】
(散乱光検出部5の構成)
再び図2を参照して説明すると、散乱光検出部5は、光検出器50と、調整機構(図示せず)と、光検出器50からの信号を増幅したり光検出器50を冷却したりする増幅冷却部51と、光検出器50からの出力信号や光検出器50への制御信号をやりとりするための制御インターフェース(図示せず)と、光検出器50の駆動電源(図示せず)等とを含んで構成される。

【0086】
光検出器50は、結晶化溶液31による散乱光の検出に適した光検出器である。光検出器50は、例えば、マルチチャンネルフォトダイオードアレイ並びにリニアイメージセンサ等の多数の光センサ素子アレイ、CCDイメージセンサ(Charge-Coupled Device)、CMOSイメージセンサ等を含むマルチチャンネル光検出器(多数画素からなる光検出器)を受光部として備えるよう構成する。すなわち、本実施形態の散乱光検出部5の光検出器50として、多数の微小光検出素子を高密度で並べられた大面積の光検出器であるマルチチャンネル光検出器が好ましい。光検出器50は、例えば、0.1秒以下、より好適には、50ms(ミリ秒)以下の瞬時の時間で、一度に、例えば、所定の散乱角範囲の強度分布を取得する。
マルチチャンネル光検出器を利用する光検出方法では、光検出器50を移動させることなく、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光のビーム内の強度分布を一度に、瞬時に測定することができる。したがって、この光検出器50により、結晶化溶液31の前方小角又は後方小角散乱光を一度に、瞬時に計測することが可能となり、タンパク質凝集体形成から結晶核形成までのプロセスを追従することができるようになる。

【0087】
散乱光検出部5の光検出器50の受光感度は、散乱光測定に使用する光源1の光波長付近で高いことが好ましい。また、結晶化溶液31からの散乱光は、一般に微弱である。比較的散乱光強度が大きい、前方小角散乱光又は後方小角散乱光でさえ、各種微粒子、例えばシリカ(SiO2)微粒子、ポリエチレンやポリスチレン等の高分子コロイド、金属コロイド等の微粒子の散乱光に比べて極端に散乱光強度は小さいために、散乱光検出部5の光検出器50は高い感度をもつことが好ましい。微弱な散乱光を測定するために、光検出器50を高感度の状態で使用する。そのためには、光検出器50自体の量子効率が高いことは勿論必要であって、更に、光検出器50の暗電流ノイズを可能な限り低く抑えるように、光検出器50には、発熱を緩和するための送風機講、及び低温度に冷却する機構等を備えてもよい。

【0088】
このため、散乱光検出部5に適した光検出器50の受光部としては、特にCCDエリアイメージセンサが好ましい。微弱光検出用のCCDエリアイメージセンサが特に適しており、量子効率が80~90%以上と高く、暗電流の非常に小さく、飽和電荷量が大きく、ダイナミックレンジの広いリニアイメージセンサが好ましい。
このCCDエリアイメージセンサには、暗電流を低く抑えるために、増幅冷却部51等にペルチェ素子等の電子冷却器を内蔵して、例えば-10℃以下までCCDを冷却するように構成してもよい。
CCDエリアイメージセンサの出力応答速度、即ち、読み出し速度(電荷の転送速度)は、100μs程度以下であればよい。

【0089】
光検出器50のマルチチャンネル光検出器に含まれる微小光検出素子(最小単位の光検出素子)は、画素であるチャンネル(ピクセル)で示され、その数は画素数として表される。たとえば、光検出器50の受光部の受光面積が横24.576mm×高さ2.928mmの長方形である場合、光検出器50に入射した光を実際に検出できる微小光検出素子の有効画素サイズが、例えば24μm×24μm(正方形)であれば、有効画素数は、1024×122チャンネル(ピクセル)である。

【0090】
散乱光検出部5の多数の微小光検出素子からなる光検出器50の受光部の受光面の形状とサイズは、測定対象の結晶化溶液31から放射される前方小角又は後方小角散乱光の測定散乱角範囲を決定する。
なお、この多数画素からなる光検出器50を用いての散乱光の散乱角度の算出方法については、後述する。

【0091】
光検出器50の受光部の受光面の形状としては、特に制限はなく、長方形をはじめ、正方形、楕円形、円形、三角形等であってもよく、測定散乱光変換部4によって平行光に変換された平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光のビームの形状を考慮して、決定してもよい。
すなわち、結晶化溶液31からの散乱パターンに影響を及ぼす、溶液セル30へ入射する入射光ビームの形状とサイズ及び溶液セル30の構造、溶液セル30からの前方小角又は後方小角散乱光の放射パターン、測定散乱光変換部4によって平行光に変換された平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光の形状とビームサイズによって、散乱光検出部5の光検出器50の受光部の受光面の形状とサイズが決定される。
また、逆に、使用できる光検出器50の受光面の形状とサイズに制約がある場合には、反対に、受光面の形状とサイズを考慮して、入射光ビームの形状とサイズ、溶液セル30の構造、測定散乱光変換部4のレンズ群を選定してもよい。

【0092】
たとえば、入射光ビームの形状が円形で、溶液セル30の構造が入射側と出射側が平面状であって、従って、溶液セル30からの前方小角又は後方小角散乱光が、円錐形状に広がる放射パターンとなる場合、測定散乱光変換部4として、円筒面平凸レンズ(シリンドリカルレンズ)が用いられる。このため、得られた平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光のビーム形状に適する、散乱光検出部5の光検出器50の受光部の受光面の形状は、長方形等となる。

【0093】
また、図4を再び参照すると、散乱光検出部5の光検出器50の受光部を配置する位置は、測定散乱光変換部4のレンズ40によって変換された平行な(コリメートされた)前方小角散乱光又は後方小角散乱光を光検出器50の受光部で正確に受光できる位置であればよい。
つまり、散乱光検出部5の光検出器50の光検出器50の受光部に対し、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光を垂直に入射させ、光検出器50の受光面の各受光位置から、測定した散乱光強度の散乱角分布が得られるように、前方小角散乱光測定の場合、測定散乱光変換部4のレンズ40の後方(入射光の向きに対して下流)に光検出器50を配置する。なお、後方小角散乱光測定の場合には、溶液セル30の前方に(入射光の向きに対して上流)に、光検出器50を配置することが可能である。

【0094】
具体的には、前方小角散乱光測定の例である図4に示すように、測定散乱光変換部4のレンズ40から光検出器50の受光部までの距離Bには、特に制限はない。しかしながら、距離Bを大きくとり、散乱光検出部5の光検出器50を測定散乱光変換部4のレンズ40から離し過ぎて配置した場合、その部分の光学系にスペースをとることになり、その結果、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zが大型化する。

【0095】
このため、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zを小型な装置にするには、測定すべき散乱角範囲を考慮して、測定散乱光変換部4のレンズ40を選定し、測定散乱光変換部4のレンズ40から光検出器50の受光部までの距離Bが可能な限り短くなるように、レンズ40と光検出器50を配置することが好適である。

【0096】
加えて、レンズ40と光検出器50とは、他の光学素子等からの散乱光による迷光が、散乱光検出部5の光検出器50の受光部へ入射することを避けて、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光を正確に検出できる位置に配置することが好適である。

【0097】
具体的には、測定散乱光変換部4のレンズ40から光検出器50の受光部までの距離Bは、レンズ40の焦点距離と同じ程度の値が好ましく、つまり、B=fの付近になるように、光検出器50を配置することが好ましい。

【0098】
また、散乱光検出部5の位置の調整機構により、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光が、散乱光検出部5の光検出器50の受光部へ正確に入射するように、光検出器50の受光部の位置を微調整することが好適である。
この調整機構は、具体的には、X軸精密光学ステージ、或いはY軸精密光学ステージ、又はZ軸精密光学ステージ上に、散乱光検出部5の光検出器50を搭載して、測定散乱光変換部4によって平行光に変換された平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光が、光検出器50の受光部へ垂直に入射して、正確に散乱光の検出が行えるように、光検出器50の受光部の位置を調整する。

【0099】
ここで、溶液セル30からの透過光の光軸は、測定試料部3の溶液セル30の位置、測定散乱光変換部4のレンズ40の位置、及び光検出器50の受光部の位置を調整する際の基準となる。したがって、多数のチャンネル(ピクセル)からなる光検出器50の受光部の基準(ゼロ点)が透過光の光軸上になるように、光検出器50の位置調整(アライメント)を行うことが好ましい。しかしながら、光検出器50の受光部の中で、透過光が入射する受光位置に相当するチャンネル(ピクセル)が分かれば、受光部中のその位置を基準(ゼロ点)としてもよい。光検出器50の受光部の位置調整(アライメント)には、光検出器50を載せたX軸精密光学ステージ、或いはY軸精密光学ステージ、又はZ軸精密光学ステージによって行う。

【0100】
なお、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光の検出方法としては、受光面積の小さな一個の光検出素子、例えば受光面積の小さな一個のフォトダイオードを用いて、測定すべき広い平行散乱光ビーム内を光の進行方向に対して、横方向、例えば垂直方向に移動させて、平行散乱光ビームの強度分布を計測し、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光を測定してもよい。しかしながら、この検出方法では、光検出素子の移動機構が必要となるために、結晶化分析装置Zの小型化が難しい上に、結晶化溶液31の散乱光の瞬時測定には向かない。したがって、タンパク質の凝集体形成から結晶核形成までの結晶化の過程を実時間で追従する際には適さない。

【0101】
(計測解析部6の構成)
再び図2を参照すると、計測解析部6は、光検出器50を結晶化溶液31の散乱光を解析する。つまり、計測解析部6は、散乱光検出部5の光検出器50で検出された散乱光の強度信号を計測して、散乱光の測定データの記録、測定データの解析、及びグラフ化などの処理を行う。また、計測解析部6は、測定終了後に、記録した測定データを再現して、測定データを解析して、グラフ化したりすることも可能である。

【0102】
具体的には、計測解析部6は、例えば、散乱光検出部5から得られた、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光における散乱光強度の位置分布を、散乱角度に対する散乱光強度関数に変換する機能を備える。
すなわち、例えば、散乱光検出部5の散乱光の光検出器50が、多数の微小光検出素子(ピクセル)から構成されるCCD型の光検出器、あるいは多数の光検出素子から構成されるアレイ型の光検出器等である場合、各光検出素子(以下、単にチャンネル(ピクセル)と呼ぶ。)で測定された散乱光の強度から得られる、チャンネル(ピクセル)に対する散乱光強度の分布を、散乱角度に対する散乱光強度関数に変換する。
さらに、計測解析部6は、得られた散乱角に対する散乱強度関数を、散乱ベクトルの大きさ(以下、単に「散乱ベクトル」という。)に対する散乱光強度関数に変換する。
また、計測解析部6は、得られた散乱ベクトルに対する散乱光強度関数を両対数のグラフ化する。たとえば、横軸の散乱ベクトルを対数化し、縦軸の散乱光強度の対数化してグラフ化する。ここで対数化には、対数の底の値には制限がないが、常用対数、又は自然対数が適切である。
この際、計測解析部6は、散乱光の計測では、結晶化溶液31からの散乱光が微弱な散乱光であっても、散乱光データとして取り扱えるような演算を行う。たとえば、短時間に多数回、散乱光の測定を行い、取得した散乱光データに対する平均等の演算を行う。
さらに、計測解析部6は、測定した散乱光データを解析して、測定溶液である結晶化溶液31中に形成されたタンパク質凝集体を分析する。

【0103】
また、計測解析部6は、光検出器50を制御するコントローラ6aと、光検出器50からのデータを処理するデータ処理装置6bとを含んでいる。
コントローラ6aは、光検出器50とデータ処理装置6bとを接続するインターフェイス機能をもつデバイス等である。コントローラ6aは、データ処理装置6bによって制御される。
データ処理装置6bは、例えば、パーソナルコンピュータ(Personal Computer、PC)等の演算処理装置である。
また、計測解析部6は、CPU等の制御手段、RAMやROMやHDDやSSD等の記録媒体、入力手段としてPCに接続されるキーボードやマウス等、表示手段としてLCDや有機ELを用いたディスプレイ、出力手段としてプリンター等を備えていてもよい。また、計測解析部6は、USBメモリ等の外部の記録媒体を接続して、データを入出力することも可能である。

【0104】
より具体的に説明すると、散乱光検出部5の光検出器50で検出された散乱光強度のアナログ信号は、光検出器50に備わった増幅冷却部51によって適宜の増幅度で増幅されて、計測解析部6のデータ処理装置6bにデジタルデータとして取り込まれる。この際、光検出器50を制御するコントローラ6aが、散乱光の測定、測定データの転送を制御する。また、コントローラ6aは、データ処理装置6bによって駆動制御される。
計測解析部6のデータ処理装置6bでは、得られた散乱光の測定データを記録し、測定データをディスプレイ上にグラフとして表示し、測定データに対して必要な演算処理を行う。より具体的には、散乱光測定データのグラフ化の例として、2次元グラフでは、縦軸に散乱光の強度(Intensity)ISで横軸に受光器の微小光検出素子の位置(チャンネル(ピクセル))x[IS-x表示]、縦軸に散乱光強度ISで横軸に散乱角度θs[IS-θs表示]、縦軸に散乱光強度で横軸に散乱ベクトルq(又はq/k0、ここでk0は入射光の波数でk0=4π/λ、λは入射光の波長)[IS-q表示、又はIS-q/k0表示]等である。ここで、受光器の微小光検出素子の位置x(チャンネル(ピクセル))から、散乱角度θsや散乱ベクトルqを算出する演算方法については後述する。

【0105】
上記のような散乱光測定データのグラフは、通常の線形スケールで表示してもよい。しかしながら、測定した前方小角散乱光又は後方小角散乱光からタンパク質の結晶化を分析するには、後述するように、測定散乱光データの両対数グラフ表示によって解析することが好適である。
また、散乱光測定データのグラフ化の例として、上記の2次元グラフ化の例以外にも、散乱光測定データの時間経過を表すために、さらに時間軸を追加して3次元グラフ化することも可能である。結晶化溶液31において、タンパク質結晶化の重要な過程である、凝集体形成から結晶核形成までの結晶化ステップの様子を分析する場合には、特に上記のような時間軸を追加しての散乱光測定データの3次元グラフ化をすることが好適である。
散乱光の解析処理については、後述する。

【0106】
なお、計測解析部6は、コントローラ6aをUSB等の汎用規格のインターフェイス回路で構成し、データ処理装置6bとしてLinux(登録商標)やWindows(登録商標)等のOS(Operating System)をインストールしたPCに解析ソフトウェア(プログラム)をインストールして実行するよう構成されていてもよい。

【0107】
〔散乱光の取得方法〕
次に、再び図4を参照して、結晶化溶液31からの前方小角散乱光の取得方法の詳細について説明する。
測定散乱光変換部4によって、平行光(コリメート光)に変換された平行前方小角散乱光が、散乱光検出部5の光検出器50の多数のチャンネル(ピクセル)を含む受光部に入射して、散乱光が検出される。溶液セル30からの透過光の光軸からの散乱角度θsは、散乱光検出部5の光検出器50の受光部における微小光検出素子の位置[チャンネル(ピクセル)の位置x]に対応する。このため、所定の計算式により、散乱角度θsが算出される。この具体的な計算式は、後述する。
また、測定された散乱光の強度分布IS、即ち、光検出器50のチャンネル(ピクセル)位置xに対する散乱光の強度関数(強度分布)から、散乱角度θsに対する散乱光の強度関数(強度分布)IS-θsが得られる。さらに、求められた散乱角度θsから、所定の計算式(後述する)により、散乱ベクトルq(又はq/k0、ここでk0は入射光の波数でk0=2π/λ、λは入射光の波長)が算出され、散乱ベクトルq(又はq/k0)に対する散乱光の強度関数(強度分布)IS-q(又はIS-q/k0)が得られる。
以下で、散乱光検出部5の光検出器50により測定された散乱光から、具体的に散乱光の強度関数(強度分布)を算出する算出処理について説明する。

【0108】
〔散乱光の強度関数(強度分布)の算出処理〕
測定対象の結晶化溶液31に照射される入射光ビームのサイズが小さく、測定試料部3の溶液セル30から出射される散乱光の放射部分が、点と見なせるとすると、溶液セル30からの透過光の光軸から計った散乱角度θsは、次の式で表される。

θs=tan-1(x/f) …… 式(1)

ここで、図4に示すように、xは、散乱光検出部5の光検出器50の受光部における微小光検出素子[チャンネル(ピクセル)]の位置であり、fは、測定散乱光変換部4のレンズ40の焦点距離である。

【0109】
ここで、測定可能な前方小角散乱光の最大散乱角度θsMaxは、図4に示すように、測定散乱光変換部4のレンズ40が取り込める最大角度、及び変換された平行前方小角散乱光を検出する光検出器50の受光部の有効受光サイズ等によって決まる。レンズ40が取り込める最大角度は、具体的には、そのレンズの有効サイズ、NA値、及び焦点距離fによって決定される。

【0110】
測定する前方小角散乱光の散乱角度θsは、15°程度以下の散乱角範囲、特に10°以下、即ち、散乱角度θsは、2.618×10-1rad程度以下、特に1.745×10-1rad以下と小さい。
たとえば、測定散乱光変換部4のレンズ40として、焦点距離f=100mmのシリンドリカルレンズを用い、測定試料部3の溶液セル30から焦点距離付近の位置、即ち、A=100mm付近の位置にシリンドリカルレンズを配置する。このシリンドリカルレンズで、結晶化溶液31から放射される散乱光を取り込み、変換された平行前方小角散乱光を、散乱光検出部5の光検出器50(ここでは、有効受光サイズを25mmとする)ですべて検出したとすると、式(1)でf=100mm、x=25mmとして算出される散乱角度は、測定可能な前方小角散乱光の最大散乱角度θsMaxに対応し、θsMax=14.04°(2.450×10-1rad)と算出される。
したがって、測定すべき散乱光の最大散乱角度θsMaxに応じて、測定散乱光変換部4として用いるレンズの仕様(レンズの有効サイズ、NA値及び焦点距離f)を選定して、散乱光検出部5の光検出器50としては、測定散乱光変換部4のレンズ40によって変換された平行前方小角散乱光を検出できる有効受光サイズ以上であることが好ましい。

【0111】
測定散乱光変換部4のレンズ40によって、平行光(コリメート光)に変換された平行前方小角散乱光は、散乱光検出部5の光検出器50の受光部に入射して、受光部の各微小光検出素子[チャンネル(ピクセル)]において、散乱光が検出される。
溶液セル30からの透過光の光軸から、光検出器50の受光部におけるi番目のチャンネル(ピクセル)までの距離を距離(位置)xiとする(ここで、i番目のチャンネル(ピクセル)は、透過光の光軸から数えた微小光検出素子を示す。つまり、図4に示すように、i=0を透過光の光軸に対応させる)、位置xiは、次の式で表される。

i=iΔx …… 式(2)

ここで、Δxは、理論的な最小ユニット(1チャンネル(ピクセル)当たりの受光部サイズ)である。

【0112】
散乱光検出部5の光検出器50の受光部が、一次元に配列した多数の微小光検出素子 [チャンネル(ピクセル)]から構成されている場合、光検出器50の受光部のチャンネル(ピクセル)数をN、受光部のサイズをLとすると、Δxは単に次のようになる。

Δx=L/N …… 式(3)

光検出器50の受光部が、二次元配列した多数の微小光検出素子[チャンネル(ピクセル)]から構成されている場合であっても、受光部の形状とサイズ、及び微小光検出素子の形状とサイズに基づいて、一次元配列の光検出器同様にΔxを求めることができる。
したがって、式(1)~式(3)によって、光検出器50の受光部のチャンネル(ピクセル)位置(i番目)から、散乱角度θsを算出する。

【0113】
さらにまた、散乱ベクトルqは、散乱角度θsから、下記の式で算出される。

q=2k0sin(θs/2) …… 式(4)

ここで、k0は入射光の波数でk0=2π/λ、λは入射光の波長である。

【0114】
式(1)と式(4)から、散乱ベクトルqは、次のように表され、光検出器50の受光部のチャンネル(ピクセル)の位置xiから算出される。

q=2k0sin[1/2・tan-1(xi/f)] …… 式(5)


【0115】
〔結晶化溶液31の測定、分析処理〕
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zを用いて、結晶化溶液31の前方小角散乱光又は後方小角散乱光を解析し、タンパク質の凝集、結晶化を分析する測定、分析処理について説明する。なお、本実施形態の測定、分析処理は、本実施形態の結晶化分析方法に係る処理である。
測定、分析処理において、本実施形態の結晶化分析装置Zは、前方小角散乱光又は後方小角散乱光に基づき、結晶化溶液31におけるタンパク質の凝集、結晶化を実時間で分析する。つまり、結晶化分析装置Zは、前方小角又は後方小角の光散乱、特に前方小角散乱光の測定によって、結晶化剤を含む結晶化溶液31中におけるタンパク質の凝集体の形成から、結晶核の形成、微結晶の形成などの結晶化形成の結晶化状態を実時間で測定する。これにより、測定対象の結晶化溶液31が結晶化する状態にあるかどうか、即ち、結晶化溶液31が上述の準安定領域にあるか等、若しくは、タンパク質が凝集体形成から微結晶等の結晶化形成までの過程についての分析を行うことが可能となる。
以下で、結晶化溶液31の散乱光を散乱光検出部5で測定し、計測解析部6により測定データを分析する測定、分析処理の詳細について、図5を参照して説明する。本実施形態の測定、分析処理は、計測解析部6の制御部が、記録媒体に記録された解析ソフトウェアを、ハードウェア資源を用いて実行することで実現可能である。

【0116】
ここで、結晶化溶液31の測定、分析の前に、結晶化溶液31を調製する。ここでは、結晶化溶液31として、結晶化させたい生体高分子、例えばタンパク質と、塩等の電解質やグリコール等の有機溶媒等の結晶化剤と、緩衝液とを所定の条件(濃度、温度、pH値等)で調整する。このような結晶化溶液31の調合は、例えばマイクロチューブ等の中で各溶液を混合させて行う。この上で、調製した結晶化溶液31を溶液セル30に注入する。
そして、結晶化溶液31を溶液セル30に注入した後、溶液からの蒸発を防止するために、例えばパラフィンオイル等でシールする。また、液漏れ防止のために、2枚の平板状基板32a、32bとスペーサー33との間を疎水性のシリコングリースやフッ素グリース等でシールすることも好適である。
また、測定試料部3の溶液セル30から結晶化溶液31が漏れ出ないように、スペーサーと基板とを強く密着させ、適宜、留め金具等でクリップしてもよい。
なお、この結晶化溶液31や各種溶液(緩衝液、タンパク質溶液、結晶化剤溶液等)の測定試料部3への導入に関して、結晶化分析装置Zに備えられたマイクロパイプ等の輸液機構等を制御して実現するように構成できる。このような輸液機構等の制御には、計測解析部6のPC等を用いることができる。

【0117】
(ステップS101)
まず、結晶化分析装置Zの計測解析部6は、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の測定を行うための初期設定処理を行う。
計測解析部6は、散乱光検出部5の光検出器50の計測条件を設定する。具体的には光検出器センサの露光時間、出力増幅器の利得(アンプゲイン)、光検出器センサヘッドの温度制御、光検出器センサの読み出しモードの選択、データ取得に関する計測モードの選択、計測回数、取得するデータの種類を分類するための取得データモード、光検出器センサの信号読み出し周波数値の選択、光検出器センサの信号読み出しに関するトリガモードの選択、及び光検出器センサのシャッター制御モードの選択等を設定する。
また、計測解析部6は、光源1の種類や波長、入射光量の調整、測定散乱光変換部4を含む光学系、制御及び計測回路系の構成等について、実験を行うユーザーの設定等の入力を入力手段により取得する。
計測解析部6は、上述した結晶化溶液31の調合条件を含めて、実験を行うユーザーが設定した各計測条件等についてのデータを記録する。これらの記録した設定は、結晶化溶液31の溶液状態を分析する際に使用することが可能である。

【0118】
(ステップS102)
次に、散乱光検出部5は、前方小角散乱光又は後方小角散乱光についての散乱光測定処理を行う。
この処理において、計測解析部6は、散乱光検出部5を制御して、平行前方小角散乱光又は平行後方小角散乱光の強度信号を一度で、瞬時に取得する。

【0119】
(ステップS103)
次に、計測解析部6は、測定散乱光データ処理を行う。
計測解析部6は、散乱光検出部5の光検出器50で測定した散乱光データ、散乱角度θsや散乱ベクトルqの算出等に関する処理を行う。
計測解析部6は、具体的には、光検出器50の受光部のチャンネル(ピクセル)位置xiに対する散乱光の強度関数(強度分布)IS-xi、散乱角度θsに対する散乱光の強度関数(強度分布)IS-θs、及び散乱ベクトルq(又はq/k0)に対する散乱光の強度関数(強度分布)IS-q(又はIS-q/k0)など、ステップS105の散乱光解析で必要となるデータを処理する。
このデータ処理は、計測解析部6のPCのディスプレイ等の表示手段上で測定データを確認しながら行うことが可能である。また、計測解析部6は、PCにインストールした解析ソフトウェアを実行することによって、一連のデータ処理を自動的に、瞬時に行うことも可能である。特に、結晶化溶液31の散乱光の測定から、タンパク質の凝集体形成や結晶化への過程を分析する場合には、上記の一連のデータ処理を自動的に瞬時に行う。さらに、結晶化溶液31の散乱光の測定を行いながら、計測解析部6のPCのディスプレイ等に、上述の一連の測定データを表示して、リアルタイム(実時間)でタンパク質の凝集体形成や結晶化への過程を分析することも可能である。

【0120】
(ステップS104)
計測解析部6は、散乱光データの保存処理を行う。
計測解析部6は、上述のステップS103の測定散乱光データ処理で得られたデータ、即ち、IS-xi、IS-θs、IS-q(又はIS-q/k0)等の散乱光の処理データを、計測解析部6の記録媒体、例えば、ハードディスクやUSBメモリ等に一旦、記録しておおく。

【0121】
(ステップS105)
計測解析部6は、測定散乱光解析処理を行う。
計測解析部6は、記録した散乱光の処理データ、特にIS-q(又はIS-q/k0)の散乱光データを、計測解析部6のディスプレイ上に表示して、特に、両対数表示logIS-logq(又はlogIS-log(q/k0))で表示する。ここで、表示する対数は、底がいずれの自然数値でもよく、常用対数又は自然対数が好ましい。
また、計測解析部6は、散乱光の強度関数(強度分布)IS-q(又はIS-q/k0)が、IS=I0、又はIS=I0(q/k0(ここで、I0は、q=0のときの散乱光強度、αは正のべき数である)であるかどうかについて、データ解析する。IS=I0の両対数をとると、

logIS=logI0-αlogq …… 式(6)

又は、

logIS=logI0-αlog(q/k0) …… 式(7)

であるから、両対数表示logIS-logq(又はlogIS-log(q/k0))にすると、負の傾き-α(α>0)の直線となる。
直線、即ち、一次関数y=b+ax(bはy軸切片、aは傾き)によって、上記の散乱光データの両対数データをフィッティングして、傾きa=-αの値、特にべき数αの値を得ることが可能である。
計測解析部6は、散乱光データの両対数データに対しての一次関数のフィッティングには、様々なフィッティング解析法が利用できる。たとえば、解析方法として、最小二乗法等を用いることが可能である。この場合、最小二乗法による一次関数フィッティングから、べき数αの値、フィッティングの度合いを表す標準偏差、決定係数、及び相関係数等を算出することが可能である。

【0122】
(ステップS106)
次に、計測解析部6は、上述のように分析した散乱光データがべき乗関数であるか否か、べき乗関数であれば、そのべき数αが所定の値と比較する。また、一次関数フィッティングの度合いを表す標準偏差、決定係数、及び相関係数等の各値から、散乱光データを解析する。
計測解析部6は、散乱光データの解析から得られたべき数α、標準偏差、決定係数、及び相関係数等の各値から、結晶化溶液31が結晶化に向かっているか否かを、各フィッティングパラメータが設定の基準値を超えたか否かにより判定する。この結晶化に向かっているか否かの基準値は、結晶化溶液31中に、密なフラクタル凝集体が形成されているか否か、即ち、例えばリゾチームタンパク質では、フラクタル次元に対応するαの値が指標である1.5を超えているか否か、更にまた、そのフィッティングの度合いを表す標準偏差、決定係数、及び相関係数が指標となる値を超えているか否か等の指標から設定可能である(例えば、非特許文献1参照)。
このように、計測解析部6は、散乱光データの解析から得られた各フィッティングパラメータが設定の基準値を超えた場合、Yesと判定する。計測解析部6は、それ以外の場合はNoと判定する。
Yesの場合、計測解析部6は、測定、分析処理を終了する。
Noの場合、計測解析部6は、処理をステップS107へ進める。

【0123】
(ステップS107)
ここで、計測解析部6は、ステップS106でNoの場合、このまま対象試料に対して散乱光の測定を継続するかどうか否かを判定する。計測解析部6は、試料溶液の調合からある特定の時間(以下、単に「特定時間」と呼ぶ。)が経過しておらず、結晶化溶液31の散乱光強度が極端に小さく、結晶化剤によるタンパク質の凝集が未だ進んでいない場合、測定を継続する必要があるため、ステップS107において、Yesと判定する。計測解析部6は、それ以外の場合、Noと判定する。特に、計測解析部6は、試料溶液の調合から十分な特定時間が経過しているにもかかわらず、タンパク質の凝集が未だ進んでいないと見られる場合は、Noと判定する。ここで、特定時間とは、光散乱測定において、結晶化溶液31に結晶化剤を添加後、タンパク質の凝集体形成が進行する指標となる時間を示し、測定対象とするタンパク質等に対応して設定可能である。たとえば、リゾチームの場合、光散乱測定から判断すると、約20分から約1時間程度の時間を設定することが可能である。
Yesの場合、計測解析部6は、処理をステップS102へ戻す。これにより、計測解析部6は、散乱光データから判定して、一連の処理、すなわちステップS102からS106までの散乱光測定、測定散乱光のデータ解析までを繰り返して行い続ける。
Noの場合、計測解析部6は、測定、分析処理を終了する。この際、計測解析部6は、新たな溶液条件下で結晶化溶液31を調製するよう指示するメッセージをディスプレイに表示してもよい。
以上により、本発明の実施の形態に係る測定、分析処理を終了する。

【0124】
なお、散乱光データの解析結果から、ステップS107で結晶化溶液31が結晶化に進んでいると判定された場合、測定試料部3の溶液セル30を取り外して、結晶化溶液31を回収する。
回収した結晶化溶液31を放置すると、タンパク質の結晶が成長する。成長したタンパク質結晶のうち、X線や中性子線回折による構造解析に適したサイズの質の良い結晶を回収できる。

【0125】
また、散乱光データの解析結果から、ステップS107で結晶化溶液31が結晶化に進んでいなかった場合、別な作製条件で結晶化溶液31が調合された後で、新たに一連の処理を行うことも可能である。上述の処理は、結晶化溶液31に対して、結晶化のスクリーニングに好適に用いることが可能である。

【0126】
また、ステップS104で蓄積された散乱光データと、ステップS105の解析結果から、結晶化溶液31に対して、タンパク質凝集体の形成から結晶核、微結晶の形成までの経時的な変化を観察し、タンパク質の結晶化過程(プロセス)を追跡することも可能である。

【0127】
なお、散乱光計測は、一度の測定回数が1回に限らず、連続スキャン測定、例えば10回~100回程度連続して散乱光測定を行い、取得した散乱光データを平均化したものを測定データとしてもよい。特に、結晶化溶液31の散乱光が極めて微弱であって、光検出器50の増幅率を向上させても十分な散乱光の強度シグナルが得られない場合には、散乱光計測において連続スキャン測定、及び取得データの平均化は大変有効である。しかしながら、連続スキャン測定の場合、散乱光の測定時間がかかる。このため、この連続スキャン測定、及び取得データの平均化の処理は、タンパク質結晶化過程の追跡等、実時間での計測以外に用いることが好適である。
【実施例】
【0128】
次に、図面に基づき本発明を実施例によりさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
本実施例では、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Zを用いて、タンパク質結晶化溶液の測定、分析処理を行った例について説明する。
【実施例】
【0129】
(結晶化溶液31の調整)
本実施例において、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zを用いて、結晶化の前段階で形成される凝集体を分析するために、タンパク質のニワトリ卵白リゾチームをモデル・タンパク質として使用した。ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL:以下、単に「リゾチーム」と呼ぶ。)は、従来から結晶化の諸条件がよく調査されている。実際に、リゾチームは、結晶化の諸条件の関係性を示した図、いわゆる「相図(phase diagram)」が作成されており、分析対象として最適なタンパク質である。
結晶化剤として、よく使用される電解質の塩化ナトリウム(NaCl)を用い、NaClを含んだリゾチーム結晶化溶液のpH値を、緩衝液(バッファー)である酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液を用いて調整した。
【実施例】
【0130】
具体的には、以下のように、分析する結晶化溶液31を調合した。
リゾチームは、高純度に精製された分子生物学用の原料(和光純薬工業製)を使用した。pH4.5で調整した50mMの酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液に、リゾチームを室温で溶かし、濃度90mg/ml(6.3mM)のリゾチーム溶液を作製した。また、上記と同じ酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液に結晶化剤のNaClを溶かし、濃度15%(wt/v)(2.56M)のNaCl溶液とした。これら各溶液は室温20℃で別々に調整された。また、各溶液は0.1μm径のフィルターを通して調整された。
各実験では、調整されたリゾチーム溶液、NaCl溶液、及び緩衝液を適宜の割合で混合させて、室温20℃で様々な濃度のリゾチーム結晶化溶液を調合した。たとえば、結晶化剤NaClの濃度5%(wt/v)、リゾチームの濃度30mg/mlのリゾチーム結晶化溶液を調合する場合、上記の準備した溶液の混合比を、NaCl溶液:リゾチーム溶液:緩衝液=1:1:1で混合させる。
【実施例】
【0131】
また、本実施例においては、溶液を混合してから3分以内に、結晶化分析装置Zで前方小角散乱測定を開始した。
ここで、タンパク質溶液に結晶化剤を混合させると、条件によっては、すぐに凝集体形成が開始され、すぐに結晶化が進行することもある。このため、結晶化分析装置Zを用いてタンパク質溶液中の凝集体生成や結晶核の形成を分析するには、対象溶液の調合、即ち、上述のような溶液の混合からの経過時間が重要なファクターとなる。したがって、例えば、タンパク質結晶化の初期過程を分析する場合、結晶化分析装置Zによる測定の直前に、対象溶液を混合して結晶化溶液31を調整する必要がある。よって、結晶化溶液31の調整から数分以内に、結晶化分析装置Zで測定することが好ましい。
【実施例】
【0132】
リゾチーム溶液、NaCl溶液、及び緩衝液の各溶液を適宜の割合で混合して、所定のリゾチーム濃度とNaCl濃度で調整された結晶化溶液31は、結晶化分析装置Zの測定試料部3の溶液セル30に注入された。
本実施例の溶液セル30は、図3に示すものと同様に、2枚の透明カバーガラスの平板状基板32a、32b(厚さ:c=d=約0.15mm)で、1個又は2個の孔(直径約6mm)が空いた、シリコンゴム製のスペーサー33(厚さt=約1mm)を挟んだ構造である。スペーサー33の円孔に、結晶化溶液31(約18μl)が注入された。
【実施例】
【0133】
(光源1と入射光ビーム)
光源1には、単一波長発振(シングルモード)の波長λ=473nm、出力25mWのDPSSレーザ光源を使用した。このDPSSレーザ光源から出射される光は、全広がり角1mrad以下の直径0.7mmの細い円形ビームであって、水平面に対して垂直に偏光した(TE(s)偏光の)光である。光源1から出射されたレーザ光は、結晶化溶液31の前方小角散乱光の測定が行えるように、入射光調整部2の光量調整素子2aとしてNDフィルターによって光量が調整された。より具体的には、入射光調整部2のNDフィルターによって、散乱光検出部5において、結晶化溶液31の前方小角散乱光の検出と計測が問題なく行えるように、測定試料部3の溶液セル30へ入射する光の光量が調整された。本実施例では、DPSSレーザ光源からの出射時の光量の1/100~1/10の範囲において、入射光調整部2のNDフィルターで入射光が減光され、光量調整されたレーザ光が測定試料部3の溶液セル30へ垂直に入射した。
【実施例】
【0134】
ここで、図3に示すような、入射光が通過する測定試料部3の溶液セル30の2つの透明基板の厚さ(本実施例では、厚さc=d=約0.15mm)は、入射光ビームの直径aよりも小さく、また、入射光ビームの広がり角が1mrad以下と十分に小さいために、結晶化溶液31から出射される前方小角散乱光は、測定試料部3の溶液セル30の出射側壁面での屈折角が十分に小さくなり、従って、結晶化溶液31からの前方小角散乱光の測定が、散乱角度の補正をする必要もなく行える。
上述のように使用したDPSSレーザ光源から出射される光は、全広がり角1mrad以下の直径0.7mmの細い円形ビームであるから、入射光ビームを整形する必要もなく、結晶化溶液31の前方小角散乱光の測定を十分行えるために、入射光調整部2においてスペイシャルフィルターを配置せず、DPSSレーザ光源からの出射光を結晶化溶液31への入射光として用いた。
【実施例】
【0135】
また、結晶化溶液31の前方小角散乱光は微弱である上に、図3に示すように本実施例においては、結晶化溶液31を通過する光路長を決めるスペーサー33の厚さ(t=約1mm)は、入射光ビームの直径(a<1mm)と同程度であるため、結晶化溶液31の中での多重光散乱の影響は無視できた。
【実施例】
【0136】
(測定散乱光変換部4の構成と配置)
測定散乱光変換部4のレンズ40としては、高さ25mm、横幅50mmの焦点距離f=100mmのシリンドリカルレンズ(円筒面平凸レンズ)を使用した。シリンドリカルレンズは、結晶化分析装置Zの配置されている光学系の水平方向に対しては、光の平行化や集光作用等のレンズ効果があるものの、その垂直高さ方向には、そのようなレンズ効果を持たない。つまり、例えば、円形状の入射ビームが測定試料部3の溶液セル30に照射され、測定試料部3からの散乱光が円錐形状に放射された場合、シリンドリカルレンズは、その水平方向においてのみ、前方小角散乱光を平行前方小角散乱光に変換する。
したがって、この場合、散乱光検出部5の光検出器50の受光部は、水平方向に長い(横幅が大きい)長方形の形状が最適である。本実施例では、散乱光検出部5には、水平方向に長い長方形型の受光部の光検出器50を使用したために、測定散乱光変換部4のレンズ40としては、シリンドリカルレンズを用いた。
測定散乱光変換部4のシリンドリカルレンズは、測定試料部3の結晶化溶液31を収容する溶液セル30から、シリンドリカルレンズの焦点距離f=100mmよりもやや短い距離である、距離A=90mm離れた散乱光検出部5側の位置に配置された。この配置位置において、測定試料部3の結晶化溶液31からの前方小角散乱光が測定散乱光変換部4のレンズ40によって集められ、そのレンズを通過した散乱光は少なくとも水平方向で平行光(コリメート光)となった。
【実施例】
【0137】
(透過光遮蔽部45の構成と配置)
測定試料部3の結晶化溶液31と測定散乱光変換部4のレンズ40との間に、透過光遮蔽部45を配置した。具体的には、透過光遮蔽部45として、入射光の波長に吸収帯をもった吸収フィルターの小片(最大サイズ5mm以下)を、測定散乱光変換部4のレンズの直前(レンズからの距離は約5mm)に設置して、結晶化溶液31を通過した透過光を減光させて、強い透過光が直接、散乱光検出部5の光検出器50の受光部への入射を防いだ。
なお、本実施例では使用しなかったものの、吸収フィルターを設置しても透過光のブロック効果が十分でない場合、つまり、透過光が散乱光検出部5における前方小角散乱光の測定に大きく影響を与える場合には、透過光遮蔽部45として、更に、小さなミラー(最大サイズ5mm以下)を吸収フィルター小片の前後に配置可能に構成した。
【実施例】
【0138】
(散乱光検出部5の構成)
散乱光検出部5の光検出器50としては、微弱光検出用の高感度マルチチャンネル検出器のCCDイメージセンサを使用した。このCCDイメージセンサは、有効受光サイズが、水平方向24.576mm、垂直方向2.928mmである。微小の最小受光素子単位であるピクセル(ピクセル)のサイズは、24μm×24μmであり、受光の有効ピクセル数は、1024(水平方向)×122(垂直方向)である。
上述のように、測定散乱光変換部4のレンズ40にシリンドリカルレンズを使用し、測定試料部3の結晶化溶液31からの前方小角散乱光を取り込んで得られた、平行前方小角散乱光は、水平方向の幅が大きな散乱光ビームであるために、上述のような水平方向に長く、縦幅の狭い受光面をもつCCDイメージセンサが、散乱光検出部5の光検出器50として好適に用いられた。
測定試料部3の結晶化溶液31の散乱光は、微弱であるために、光検出器50は、ダークノイズ(暗電流)等が低く高感度な状態で使用することが好ましい。使用したCCDイメージセンサには、ペルチェ電子冷却素子を内蔵されており、これにより、CCDイメージセンサを-10℃の低温状態で使用した。
【実施例】
【0139】
ここで、散乱光検出部5の光検出器50として使用したCCDイメージセンサの受光部のチャンネル(ピクセル)数Nは、N=1024、受光部サイズLは、L=24.576mmであるから、式(3)より、理論的な最小ユニット(1チャンネル(ピクセル)当たりの受光部サイズ)であるΔxは、Δx=2.40×10-2mmである。
【実施例】
【0140】
(前方小角散乱の計測)
結晶化分析装置Zによって、リゾチームの結晶化溶液31を分析する前に、散乱光測定のリファレンス(コントロール)として、ここでは、pH4.5で調整した50mMの酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液を使用した。リファレンス試料の散乱光には、リゾチームを含まない緩衝液(バッファー)による光散乱以外の散乱光、例えば、測定試料部3の溶液セル30、透過光遮蔽部45、測定散乱光変換部4のレンズ40等からの散乱光が含まれている。このため、リファレンス試料に対して測定した散乱光は、バックグランドの散乱光データとして、リゾチーム結晶化の分析に用いる。
なお、リファレンスの試料としては、リゾチームの結晶化溶液31の調合で使用した緩衝液の他にも、結晶化剤のNaClを含んだ緩衝液であってもよい。また、結晶化剤を含まず、リゾチーム凝集体が形成されていない溶液試料、例えば、測定しようとするリゾチームの結晶化溶液31の濃度と同じ濃度のリゾチーム溶液(ただし、結晶化剤を含まず)等をリファレンスとして用いることも可能である。この場合、バックグランドとなる散乱光には、溶液中に分散したリゾチームのモノマー(単量体)による散乱光が含まれることを考慮して分析を行う必要がある。
【実施例】
【0141】
ここでの実施例の散乱光測定において、CCDイメージセンサの露光時間は10ms~50msであり、一度の測定回数は1回で行った。
【実施例】
【0142】
(リゾチーム結晶化溶液の静的光散乱(SLS)分布)
次に、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zによって測定した、結晶化溶液31の前方小角散乱光の一実施例について記述する。測定対象のリゾチームの結晶化溶液31は、pH4.5の酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液(50mM)を使用して、リゾチーム濃度20mg/ml(1.4mM)、結晶化剤のNaCl濃度4%(wt/v)[0.683M]であった。リゾチーム溶液、NaCl溶液、及び酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液(50mM)の各溶液を混合させてから約20分後に、そのリゾチームの結晶化溶液31の前方小角散乱光を測定した。散乱光測定は、リゾチームの結晶化溶液31の調合と同じ温度、つまり、室温20℃で行った。
【実施例】
【0143】
このSLS分布の測定の結果を、図6A、図6B、及び図6Cに示す。
図6Aは、リゾチームを測定対象タンパク質として結晶化溶液31に用いた際の、光検出器50の受光部の受光チャンネル/ピクセル数に対する、測定された平行前方小角散乱光の強度関数を示すグラフである。図6Aでは、横軸に散乱光検出部5のCCDイメージセンサの受光チャンネル/ピクセル数xiを、縦軸に散乱光強度IS(光子のカウント数)を示した。
【実施例】
【0144】
図6Bは、リゾチームを測定対象として、結晶化溶液31に用いた際の、光検出器50の受光部の受光チャンネル/ピクセル数に対する、測定された平行前方小角散乱光の強度関数に関して、受光チャンネル/ピクセル数を散乱角度に変換して得られた、散乱角に対する前方小角散乱光の強度関数を示すグラフである。図6Bは、横軸に式(1)から求めた散乱角θsを、縦軸に同じく散乱光強度IS(光子のカウント数)を示した。
【実施例】
【0145】
図6Cは、リゾチームを測定対象として、結晶化溶液31に用いた際の、光検出器50の受光部のチャンネル/ピクセル数に対する、測定された平行前方小角散乱光の強度関数に関して、受光チャンネル/ピクセル数を散乱角度に変換し、さらに散乱ベクトルに変換して得られた、散乱ベクトルに対する前方小角散乱光の強度関数の両対数を示すグラフである。図6Cは、横軸に式(4)あるいは式(5)から算出した散乱光ベクトルqを、縦軸に同じく散乱光強度IS(光子のカウント数)を示した。ここでは、データ解析のために両対数で表示している。
【実施例】
【0146】
また、シリンドリカルレンズの焦点距離f=100mm、入射光の波長λ=473nmにおいて、式(1)、式(4)、及び式(5)により、散乱角θs、散乱光ベクトルqを算出した。
また、図6A、図6B、及び図6Cの各測定データは、受光チャンネル/ピクセル数の各xiにおいて、リファレンスとして測定した酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液(濃度50mM、pH4.5)の散乱光データのバックグランド散乱光を差し引いて得られたものである。
【実施例】
【0147】
〔SLS強度—チャンネルの表示〕
より詳細に説明すると、図6Aは、散乱光強度ISを受光チャンネル/ピクセル数xiの関数として示したグラフである。
iが0~130までは、透過光遮蔽部45によって散乱光が光検出器50の受光部への入射が阻止されている領域である。つまり、測定試料部3の溶液セル30からの散乱光に対して透過光遮蔽部45の影になるために、検出データとしてはゼロレベルである。したがって、この領域のデータは無視する。
また、xi=180付近で散乱光強度ISは最大となり、それ以降はxiが大きくなるにつれて、ISは減少している。散乱光強度ISが最大値を取るxiMaxとすると、xi<xiMaxの小さいxiの範囲では、透過光遮蔽部45の影響と判断して、正確な散乱光データとしては扱わなかった。つまり、散乱光の解析では、xi<xiMaxにおける散乱光データを無視する。
したがって、図6Aにおいては、180<xi<1024の受光チャンネル/ピクセル数に対する散乱光強度ISを、前方小角散乱光の測定データとして分析等に用いる。ここで、CCDイメージセンサの有効受光チャンネル/ピクセル数の最大位置は、xi=1024であるため、xi>1024のデータを無視する。
【実施例】
【0148】
ここで、図6Aによれば、ISは強度変化が顕著であり、すなわち揺らぎが見られた。このような散乱光の揺らぎは、試料溶液を調合した直後の散乱光には見られない。よって、結晶化剤の効果で形成されたリゾチーム凝集体による時間的揺らぎであると推定された。
なお、本実施例では実行しなかったものの、大きな揺らぎによって前方小角散乱光の放射パターン(プロファイル)が判定できない場合等では、散乱光測定データを平均化してもよい。これには、散乱光計測の際に、連続スキャンで測定を行い、取得したデータを平均化し、その平均化散乱光データを解析に用いる。
【実施例】
【0149】
〔SLS強度—散乱角度の表示〕
図6Bは、散乱光強度ISを、算出された散乱角θsの関数として表したグラフである。散乱角θs<1.8°では、上述のように透過光遮蔽部45の影響から、散乱光強度ISはゼロレベルとなり、従って、この散乱角範囲での散乱光を無視する。また、散乱光強度ISは、散乱角θs=2.5°で最大であり、θs<θsMax(=2.5°)の散乱角範囲で増加する散乱光も無視する。
したがって、図6Bにおいては、2.5°<θs<13.8°の散乱角度に対する散乱光強度ISを、前方小角散乱光の測定データとして分析等に用いる。ここで、CCDイメージセンサの有効受光チャンネル/ピクセル数以外の領域xi>1024に対応する散乱角θs>13.8°における散乱光のデータは無視する。
【実施例】
【0150】
〔SLS強度—散乱ベクトルの表示〕
図6Cは、散乱光強度ISを、算出された散乱光ベクトルqの関数として表し、それらの両対数で表示したグラフである。明らかに、散乱光ベクトルqの両端の領域を除くと、即ち、0.6μm-1<q<3.1μm-1の範囲で、散乱光強度ISは、負の傾きをもった直線になることが分かる。両対数の表示グラフで、直線的な依存性は、べき数の関数であることを示し、負の傾きの直線で表されることから、散乱光強度ISは、IS=I0(ここで、αは正のべき数、I0はq=0のときの散乱光強度)である。
散乱光ベクトルqの両端領域を除く、0.6μm-1<q<3.1μm-1の範囲において、べき関数(両対数では一次関数)による最小二乗法により、べき数αを求めると、α=1.74±0.03であった。
また、この範囲において、最小二乗法によるフィッティングの程度を表す決定係数R2は、R2=0.967であった。決定係数R2の値は、1に近い近ければ近いほど、対象データの最小二乗フィッティングが良好である。たとえば、R2=1の場合には、対象データは完全なフィッティングであると評価される。
【実施例】
【0151】
なお、図6Cに示すように、0.6μm-1<q<3.1μm-1以外の範囲である、q<0.5μm-1においては、散乱光強度ISは急激に低下していた。このISの低下は、図6Aと同様に、透過光遮蔽部45の影響を受けたものである。よって、散乱光データとしては無視できる。このため、べき関数(両対数では一次関数)のフィッティングによるデータ解析から除外した。
また、q>3.2μm-1の散乱光強度ISは、q<0.5μm-1と同様に、急に低下しており、両対数表示で直線から大きく外れる。この散乱ベクトルqの範囲は、散乱光検出部5の光検出器50であるCCDイメージセンサの端の部分に相当する。このため、この受光位置では、正確に散乱光が検出されていないと推定される。したがって、q>3.2μm-1においても、散乱光データとしては無視できるため、べき関数(両対数では一次関数)のフィッティングによるデータ解析から除外した。
【実施例】
【0152】
(散乱光データによるリゾチーム凝集、結晶化の解析)
非特許文献1を参照すると、散乱光データの最小二乗フィッティング解析から得られたべき数αは、リゾチームの場合、決定係数R2>0.9であれば、フラクタル凝集体のフラクタル次元Dfに等しいと判断された。すなわち、図6Cの散乱光データの解析から、Df=α=1.74±0.03が得られた。
ここで、フラクタル凝集体は、べき乗のスケール則に則った凝集体であり、タンパク質の結晶化前段階、つまり、少なくとも数百倍以上の高倍率の光学顕微鏡等で観測できるサイズの結晶核が形成される前のタンパク質凝集体で形成される。フラクタル凝集体が形成された後、高い確率で結晶核へ移行して、結晶が成長する。
【実施例】
【0153】
したがって、測定された前方小角散乱光データの解析結果を示す図6Cによれば、上述の溶液濃度条件下では、リゾチーム結晶化溶液中にフラクタル次元Df=1.74±0.03のフラクタル凝集体が形成されたと分析された。フラクタル次元Dfは、形成されたフラクタル凝集体の構造を示す一つの構造パラメータであって、Dfの値が大きいほど、フラクタル凝集体の構造が蜜であることを示している。
密な構造をもつフラクタル凝集体は、その形成後、結晶核に移行しやすいので、値の大きなフラクタル次元Dfを示す場合、その後、結晶化しやすい。非特許文献1によれば、リゾチームの場合、Df=1.5~1.8の範囲にあるフラクタル凝集体が形成されると、その後、リゾチームは結晶化する。
したがって、測定された前方小角散乱光データの解析結果である図6Cから算出されたDf=1.74±0.03であるので、このリゾチーム溶液は、結晶化に進行し、数日後にはリゾチーム結晶が成長すると判定される。非特許文献1に記載されているように、測定されたリゾチーム溶液(リゾチーム濃度20mg/ml、NaCl濃度4%(wt/v))は、結晶化する条件に位置している。
実際に、本実施例で測定したNaCl濃度4%(wt/v)のリゾチーム溶液を室温20℃で放置したところ、測定の2日後には、目視可能なリゾチーム結晶が形成された。
【実施例】
【0154】
また、図7は、リゾチームを測定対象として、結晶化溶液31に用いた際の、異なる2つの結晶化剤濃度について、測定された散乱ベクトルに対する前方小角散乱光の強度関数の両対数を示すグラフである。具体的には、図7は、リゾチーム濃度は20mg/mlと同じであるが、NaCl濃度が2%(wt/v)を、4%(wt/v)のリゾチーム溶液の散乱光データとを同時にプロットし、比較した一測定例である。図7は、散乱光強度ISを、算出された散乱光ベクトルqの関数として表し、それらの両対数で表示したグラフである。
【実施例】
【0155】
図7に示されたように、NaCl濃度が2%(wt/v)と低い溶液条件の場合、散乱光強度ISは、両対数表示で直線性を示していない。すなわち、散乱光強度ISは、べき関数を示さない。上述のように、散乱光ベクトルqの両端領域は、散乱光データの解析対象から明らかに除外すべき範囲である。その両端の領域を除いて、散乱光強度ISが直線性を示す領域は、0.45μm-1<q<1.2μm-1と4%(wt/v)NaCl濃度条件と比べて、狭くなっている。
散乱光強度ISが直線性を示す0.45μm-1<q<1.2μm-1の範囲において、べき関数(両対数では一次関数)による最小二乗法によるフィッティングを実行した結果、べき数αは、α=0.972±0.03で、決定係数R2は、R2=0.766であった。NaCl濃度が2%(wt/v)と低い溶液条件の場合、最小二乗法によるフィッティングの決定係数R2が、R2<0.9と小さい。その上に、最小二乗フィッティングから評価されたべき数αは、リゾチームが結晶化前に形成されるフラクタル凝集体のDfの最小値である1.5よりもかなり小さい値である。
【実施例】
【0156】
したがって、2%(wt/v)NaCl濃度の溶液においては、前方小角散乱光の測定データから評価されたべき数αの値は、フラクタル次元Dfを示してはおらず、つまり、結晶化前段階で成長するようなフラクタル凝集体ではないと判定できる。すなわち、前方小角散乱光の測定から、このリゾチーム溶液は、結晶化に進行しないと判定できる。
非特許文献1によれば、リゾチーム濃度20mg/mlで、2%(wt/v)NaCl濃度の溶液条件は、リゾチームは結晶化しないことが分かる。
実際に、散乱光測定後、約1週間、本実施例のNaCl濃度が2%(wt/v)で測定したリゾチーム溶液を室温20℃で静置したが、リゾチーム結晶の成長は観察されなかった。
【実施例】
【0157】
以上のように、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zによって測定した前方小角散乱光のデータを解析することによって、タンパク質溶液が結晶化に進行するか否かを比較的容易に判定することができる。
つまり、本実施例で示したように、測定された前方小角散乱光強度ISを散乱ベクトルqの関数として表し、それらがべき関数であるかどうかを解析し、べき数の値、及びべき関数とのフィッティングの度合いである決定係数R2の値等から、タンパク質溶液の結晶化を判定することができる。
【実施例】
【0158】
(散乱光データによるリゾチーム凝集、結晶化の解析)
最後に、図8により、本発明の実施の形態に係る結晶化分析装置Zを用いて、測定対象のリゾチーム結晶化溶液の光散乱強度が短時間で変動した際の解析の例について説明する。
図8に示す例では、測定対象のリゾチーム結晶化溶液は、pH4.5の酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液(50mM)、リゾチーム濃度30mg/ml、結晶化剤として塩化カリウム(KCl)濃度6%(wt/v)を使用して、結晶化を解析した。ここでは、リゾチームを短時間で凝集させる効果が高かったKClを添加塩として結晶化溶液31を作製した。結晶化溶液31の容量は約18μlである。測定条件は、室温20℃で、上述のCCD検出器の露光時間は、20msであった。図8に示す時間は、別々に用意したリゾチーム溶液、KCl溶液、及び酢酸—酢酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH4.5)の各溶液を混合させてからの経過時間、即ち、添加塩によってリゾチームが凝集し始めてからの経過時間である。この例では、散乱光の測定時間は、一瞬(0.1秒以下)で終了した。各データは、短時間で光散乱強度が変動した時間帯を一例として挙げた。
このように、結晶化分析装置Zは、結晶化溶液31の光散乱強度が短時間で変動した場合に、その変化を実時間で計測、解析することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、タンパク質溶液の結晶化状態の分析装置、及び分析方法を提供するため、産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0160】
1 光源
2 入射光調整部
2a 光量調整素子
2b 偏光素子
3 測定試料部
4 測定散乱光変換部
5 散乱光検出部
6 計測解析部
6a コントローラ
6b データ処理装置
20 入射光光路変更部
20a、20b 平面ミラー
21 絞り
30 溶液セル
31 結晶化溶液
32a、32b 平板状基板
33 スペーサー
40 レンズ
45 透過光遮蔽部
50 光検出器
51 増幅冷却部
Z 結晶化分析装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6A】
5
【図6B】
6
【図6C】
7
【図7】
8
【図8】
9