TOP > 国内特許検索 > (E)-ブロモヨードアルケン及びその製造方法 > 明細書

明細書 :(E)-ブロモヨードアルケン及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-030731 (P2016-030731A)
公開日 平成28年3月7日(2016.3.7)
発明の名称または考案の名称 (E)-ブロモヨードアルケン及びその製造方法
国際特許分類 C07C  22/04        (2006.01)
C07B  39/00        (2006.01)
C07C  17/02        (2006.01)
C07C  41/22        (2006.01)
C07C  43/225       (2006.01)
C07C 253/30        (2006.01)
C07C 255/50        (2006.01)
C07C 201/12        (2006.01)
C07C 205/11        (2006.01)
C07C  67/307       (2006.01)
C07C  69/635       (2006.01)
FI C07C 22/04
C07B 39/00 Z
C07C 17/02 CSP
C07C 41/22
C07C 43/225 A
C07C 253/30
C07C 255/50
C07C 201/12
C07C 205/11
C07C 67/307
C07C 69/635
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 30
出願番号 特願2014-153644 (P2014-153644)
出願日 平成26年7月29日(2014.7.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り European Journal of Organic Chemistry, Volume 2014,Issue 15, pages 3262-3267, WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim
発明者または考案者 【氏名】岩澤 哲郎
【氏名】井手 将貴
出願人 【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000914、【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
Fターム 4H006AA02
4H006AC30
4H006BB11
4H006BE53
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM73
4H006BM74
4H006EA21
4H006EA23
4H006GP03
4H006GP20
4H006KA31
4H006QN30
要約 【課題】 高い立体選択性を伴って得られたブロモヨードアルケンを提供する。
【解決手段】下記化学式(I)で表される(E)-ブロモヨードアルケン。
[化1]
JP2016030731A_000021t.gif
上記化学式(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基であり、Bは、脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
下記化学式(I)で表される(E)-ブロモヨードアルケン。
【化1】
JP2016030731A_000018t.gif
前記化学式(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基であり、Bは、脂肪族炭化水素基であり、前記芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。
【請求項2】
前記化学式(I)中、Xが臭素原子であり、Xがヨウ素原子である請求項1に記載の(E)-ブロモヨードアルケン。
【請求項3】
前記化学式(I)中、Aが置換基を有していないか、電子供与性の置換基を有している請求項1又は2に記載の(E)-ブロモヨードアルケン。
【請求項4】
前記化学式(I)中、Aが置換基を有していないか、電子供与性の置換基を有しているフェニル基である請求項3に記載の(E)-ブロモヨードアルケン。
【請求項5】
前記化学式(I)中、Bは置換基を有していない脂肪族炭化水素基である請求項1~4のいずれかに記載の(E)-ブロモヨードアルケン。
【請求項6】
下記化学式(II)で表されるアルキンに、ブロモトリメチルシランを加え、続けてN-ヨードスクシンイミドを加えることにより系中発生させた臭化ヨウ素と、下記化学式(II)で表されるアルキンとを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-ブロモヨードアルケンを製造する方法。
【化2】
JP2016030731A_000019t.gif
【化3】
JP2016030731A_000020t.gif
前記化学式(II)及び(I)中、Aは、芳香族炭化水素基であり、Bは、脂肪族炭化水素基であり、前記芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、(E)-ブロモヨードアルケン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルケン骨格は、有機合成化学における基本的な骨格のひとつである。
とくに、異なる四つの炭素原子に結合した炭素-炭素二重結合を有するアルケンは有機合成において高い価値を持つ。
なぜならば、このような結合をもつ分子は薬理・生理活性物質や医薬品リード化合物として用いられる可能性が高いからである。またこの種のアルケンは材料科学分野において重宝され、特に分子スイッチや光学材料や超分子構造体としての応用が期待される。
さらに、面選択的な付加反応を通して、ビシナル位に不斉炭素原子を持つ構造単位の構築に向けた出発原料としても高い価値を持つ。しかしながら、このような異種四置換オレフィンの潜在的な可能性にもかかわらず、その合成は困難な課題として知られている。
【0003】
現在、エンド型環状オレフィンの立体制御は、いくつかの報告例によって幾分可能になっている。例えば、カルボニルオレフィン化、選択的脱離反応、オレフィンメタセシス、環状付加反応などがそれに該当する。しかしながら、非環状オレフィン型の立体制御された四置換炭素-炭素二重結合の構築は、収率が低かったり、立体制御が難しかったりと、深刻な問題を抱えたままである。現代有機合成において多置換オレフィンの合成に最も有効な手段であるカルボメタル化でさえ、原料として非対称内部アルキンを用いると、ほとんど無力である。そのため、カルボメタル化をうまく行おうとすると、配向型官能基が必須となる場合が多い。
【0004】
こういった現状を踏まえ、「四置換オレフィンのテンプレート合成法」が最も有効な方法論ではないかというアイデアが出てきており、非特許文献1では、2段階反応で、四置換型アルケンであるα-シリル-β-ハロエノン体を合成することを開示している。
しかし、最も単純な合成テンプレートである内部アルキンのヨード臭素化体の安定的合成は未だに報告がされておらず、下記反応式(1)に示すように内部アルキンのヨード臭素化は4種類の異性体を与える可能性があるが、このうちの一つだけを作ることは容易ではなく、ひどい異性体のまじりとなることが一般的である。
【0005】
【化1】
JP2016030731A_000003t.gif

【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Nicholas T. Barczak, Douglas A. Rooke, Zachary A. Menard, and Eric M. Ferreira, Angewandte Chemie International Edition, 2013, 52, 7579-7582.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載された方法は、高い位置選択的反応であるが、ヒロドキシプロパルギル体でのみ反応が進行しており、基質の適用範囲が狭く、内部アルキンのヨード臭素化体を得るための反応として適用することは難しい。
【0008】
ここで、上記反応式(1)に示すように、臭化ヨウ素(IBr)をアルキンの三重結合に付加させると、4種類の異性体が生成する可能性があり、その立体選択性は低い。また、臭化ヨウ素をアルキンに付加させてアルキンのヨード臭素化体を得る方法は、一見可能であるように思えるが、吸湿性を持ち危険な臭化ヨウ素を直接反応に用いることは大変不便であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、高い立体選択性を伴って得られたブロモヨードアルケンを提供すること、及び、アルキンから1段階で臭素とヨウ素を付加させ、かつ、立体選択的な制御を行ってブロモヨードアルケンを提供する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の(E)-ブロモヨードアルケンは、下記化学式(I)で表される(E)-ブロモヨードアルケンである。
【化2】
JP2016030731A_000004t.gif
上記化学式(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基であり、Bは、脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。
【0011】
本発明の(E)-ブロモヨードアルケンを製造する方法は、
下記化学式(II)で表されるアルキンに、ブロモトリメチルシランを加え、続けてN-ヨードスクシンイミドを加えることにより系中発生させた臭化ヨウ素と、下記化学式(II)で表されるアルキンとを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-ブロモヨードアルケンを製造する方法である。
【化3】
JP2016030731A_000005t.gif
【化4】
JP2016030731A_000006t.gif
上記化学式(II)及び(I)中、Aは、芳香族炭化水素基であり、Bは、脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、立体選択的な制御を行って得られた(E)-ブロモヨードアルケンが提供され、かつ、立体選択的な制御を行って(E)-ブロモヨードアルケンを提供する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図2】図2は、化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図3】図3は、化学式(2)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図4】図4は、化学式(2)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図5】図5は、化学式(3)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図6】図6は、化学式(3)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図7】図7は、化学式(4)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図8】図8は、化学式(4)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図9】図9は、化学式(5)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図10】図10は、化学式(5)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図11】図11は、化学式(6)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図12】図12は、化学式(6)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図13】図13は、化学式(7)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図14】図4は、化学式(7)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図15】図15は、化学式(8)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図16】図16は、化学式(8)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図17】図17は、化学式(9)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図18】図18は、化学式(9)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図19】図19は、化学式(10)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図20】図20は、化学式(10)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【図21】図21は、化学式(11)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャートである。
【図22】図22は、化学式(11)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の13C NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明に限定されない。

【0015】
[(E)-ブロモヨードアルケン]
本発明の(E)-ブロモヨードアルケンは、前述のとおり、下記化学式(I)で表される(E)-ブロモヨードアルケンである。
【化5】
JP2016030731A_000007t.gif
上記化学式(I)中、
Aは、芳香族炭化水素基であり、Bは、脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。

【0016】
上記化学式(I)中のAは、芳香族炭化水素基である。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基またはピリジル基であることが好ましく、これらの基は、さらに、置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよい。上記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、メルカプトアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン、シアノ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、本発明において、芳香族炭化水素基という場合は、特に断らない限り、ヘテロアリール基も含む。

【0017】
化学式(I)中のAである芳香族炭化水素基は、置換基を有していないか、電子供与性の置換基を有していることが好ましい。とくに、化学式(I)中のAである芳香族炭化水素基は、置換基を有していないか、電子供与性の置換基を有しているフェニル基であることが望ましい。

【0018】
電子供与性の置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。

【0019】
上記化学式(I)中のBは、脂肪族炭化水素基である。
脂肪族炭化水素基としては、鎖状脂肪族炭化水素基又は環状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
化学式(I)中のBが鎖状脂肪族炭化水素基である場合、鎖状脂肪族炭化水素基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~32、1~24、1~18、1~12、1~6、または1~2であってもよい。鎖状脂肪族炭化水素基から誘導される基(例えば、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、ペルフルオロアルキル基等)においても同様とする。ただし、上記鎖状脂肪族炭化水素基が置換基を含む場合、上記炭素数には、上記置換基の炭素数は含まないものとする。
鎖状脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。アルキル基から誘導される基またはアルキル基を構造中に含む基(例えば、ハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルカノイル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ペルフルオロアルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基、トリアルキルシリル基等)においても同様である。
鎖状脂肪族炭化水素基としては、アシル基であってもよく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)も挙げられる。
また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。

【0020】
化学式(I)中のBが環状脂肪族炭化水素基である場合は、非芳香族性の環状脂肪族炭化水素基をいう。
上記環状脂肪族炭化水素基では、例えば、その環を構成する炭素原子の少なくとも一つが、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)等のヘテロ原子で置き換わっていてもよいし、置き換わっていなくてもよい。
環状脂肪族炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロプロピル基等が挙げられる。

【0021】
本発明において、化学式(I)中のBである脂肪族炭化水素基は、置換基を有していないことが好ましい。
また、環状脂肪族炭化水素基がさらに置換基を有する場合、その置換基は、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、メルカプトアルキル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン、シアノ基、メルカプト基、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。

【0022】
なお、本発明において、鎖状脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基等の鎖状の基)は、特に限定しない限り、直鎖状でも分枝状でもよい。また、本発明において、置換基、官能基等に異性体が存在する場合は、特に限定しない限り、どの異性体でもよい。例えば、単に「プロピル基」という場合はn-プロピル基およびイソプロピル基のどちらでもよい。単に「ブチル基」という場合は、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基のいずれでもよい。単に「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基および2-ナフチル基のいずれでもよい。

【0023】
上記化学式(I)中のX及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。
これは、臭素原子とヨウ素原子が常にトランス(E)位に位置していることを意味している。
後述するように、アルキンの3重結合に対して系内発生した臭化ヨウ素がアンチ付加を行うことにより、臭素原子とヨウ素原子が(E)位に位置した(E)-ブロモヨードアルケンとなる。

【0024】
また、上記化学式(I)中、Xが臭素原子であり、Xがヨウ素原子であることが好ましい。
後述するようにアルキンの3重結合に対して系内発生した臭化ヨウ素がアンチ付加を行う際に、芳香族炭化水素基Aが結合した炭素原子には臭素原子が、脂肪族炭化水素基Bが結合した炭素原子にはヨウ素原子が付加しやすいため、化学式(I)中、Xが臭素原子であり、Xがヨウ素原子である(E)-ブロモヨードアルケンが選択的に得られやすい。

【0025】
本発明の(E)-ブロモヨードアルケンとしては、例えば、下記化学式(1)~(11)のいずれかで表される、(E)-ブロモヨードアルケンが挙げられるが、これらに限定されない。
【化6】
JP2016030731A_000008t.gif

【0026】
なお、本発明の(E)-ブロモヨードアルケンに互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体も、本発明の(E)-ブロモヨードアルケンに含まれる。
なお、上記幾何異性体とは、臭素及びヨウ素が付加している2重結合以外の2重結合の存在によって生じる幾何異性体を意味する。
また、本発明の(E)-ブロモヨードアルケンが塩を形成可能である場合は、その塩も、本発明の(E)-ブロモヨードアルケンに含まれる。上記塩は、酸付加塩でも塩基付加塩でもよい。さらに、上記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でもよく、上記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でもよい。上記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等が挙げられる。上記有機酸も特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、ヒドロキシカルボン酸、プロピオン酸、マロン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。上記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。上記有機塩基も特に限定されないが、例えば、アルコールアミン、トリアルキルアミン、テトラアルキルアンモニウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等が挙げられる。上記アルコールアミンとしては、例えば、エタノールアミン等が挙げられる。上記トリアルキルアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。上記テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム等が挙げられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、上記(E)-ブロモヨードアルケンに、上記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。

【0027】
[(E)-ブロモヨードアルケンの製造方法]
本発明の(E)-ブロモヨードアルケンの製造方法は、
下記化学式(II)で表されるアルキンに、ブロモトリメチルシランを加え、続けてN-ヨードスクシンイミドを加えることにより系中発生させた臭化ヨウ素と、下記化学式(II)で表されるアルキンとを反応させて、下記化学式(I)で表される(E)-ブロモヨードアルケンを製造する方法である。
【化7】
JP2016030731A_000009t.gif
【化8】
JP2016030731A_000010t.gif
上記化学式(II)及び(I)中、Aは、芳香族炭化水素基であり、Bは、脂肪族炭化水素基であり、上記芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよく、上記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていてもよく、
及びXはそのいずれか一方が臭素原子であり、他方がヨウ素原子である。

【0028】
スキーム1は、本発明の(E)-ブロモヨードアルケンの製造方法をスキームの形で示した例であり、上記化学式(II)で表されるアルキンに、ブロモトリメチルシランを加え、続けてN-ヨードスクシンイミドを加えることにより系中発生させた臭化ヨウ素と、上記化学式(II)で表されるアルキンとを反応させる反応である。
【化9】
JP2016030731A_000011t.gif
(スキーム1中、NISはN-ヨードスクシンイミドを示す)

【0029】
スキーム1では、アルキンを溶媒に溶解させ、ブロモトリメチルシランを溶媒に溶解させた溶液を滴下等の方法により混合し、その後、所定温度(エイジング温度)において保持する。上記保持温度(エイジング温度)は、特に限定されず、例えば、-20℃以下であり、好ましくは-45℃以下であり、より好ましくは-78℃以下である。上記温度の下限は、特に限定されないが、例えば、-100℃以上である。上記保持時間は、特に限定されず、例えば、1~30分の範囲、好ましくは1~10分の範囲である。

【0030】
次に、N-ヨードスクシンイミドを溶媒に溶解させた溶液を加える。その後、室温程度まで温度を上昇させて保持しながら所定時間撹拌することが望ましい。
昇温時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~60分の範囲である。
また、室温程度まで温度上昇させた後の保持時間は、特に限定されず、例えば、10~180分の範囲、好ましくは20~120分の範囲、より好ましくは、30~90分の範囲である。

【0031】
上記スキーム1の反応は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず、上記化学式(II)で表されるアルキンを、溶媒に溶解する。上記溶解は、予め脱気および不活性ガス置換を行った反応系(反応容器)内で行うことが好ましい。上記不活性ガスは、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。上記溶媒は、例えば、非極性溶媒でもよいし、極性溶媒でもよいし、上記非極性溶媒と上記極性溶媒との混合溶媒でもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサン等のアルカン、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、水等が挙げられる。これらの溶媒は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、ジクロロメタン、トルエン、ヘキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、及び、水からなる群から選択された少なくとも1種を用いることが好ましい。
スキーム1ではトルエンを溶媒として示している。

【0032】
上記アルキンとブロモトリメチルシラン及びN-ヨードスクシンイミドの混合割合は、特に限定されないが、上記混合割合は、上記アルキンに対する臭化ヨウ素の割合が、1当量以上であることが好ましく、1.5当量以上であることがより好ましく、2.0当量以上であることがさらに好ましい。臭化ヨウ素が1.5当量以上であると、(E)-ブロモヨードアルケンへの反応が完結しやすく収率を高くすることができる。また、上記アルキンに対する上記臭化ヨウ素の割合が7当量以下であることが好ましく、5当量以下であることがより好ましく、3当量以下であることがさらに好ましい。

【0033】
スキーム1において、ブロモトリメチルシランは、溶媒に溶解させた状態で準備する。溶媒としては、アルキンを溶解する溶媒として例示した溶媒を使用することができる。アルキンを溶解する溶媒とブロモトリメチルシランを溶解する溶媒とは、同一でも、異なってもよいが、同一であることが好ましい。

【0034】
合成した(E)-ブロモヨードアルケンの精製または単離方法も、特に限定されず、定法にしたがって行うことができる。具体的には、例えば、後述の実施例のような方法でもよいし、それに限定されず、他の任意の方法でもよい。
また、反応の進行状況は、例えば、TLC(薄層クロマトグラフィー)等により追跡してもよい。

【0035】
ここで、アルキンの3重結合に臭化ヨウ素が付加する場合、下記(E-1)、(E-2)、(Z-1)、(Z-2)の4種類の異性体が生じる可能性が考えられる。
【化10】
JP2016030731A_000012t.gif

【0036】
しかし、本発明の製造方法によると、臭化ヨウ素の付加は常にアンチ付加となり、IとBrがトランス(E)位に位置する、(E-1)又は(E-2)で示される(E)-ブロモヨードアルケンのみを選択的に得ることができる。
さらに、本発明の製造方法によると、グラムスケールで(E)-ブロモヨードアルケンを選択的に得ることができる。
また、化学式(I)中のAである芳香族炭化水素基が置換基を有していないか、電子供与性の置換基を有していると、反応の選択性がより高まり、(E-2)で示される、化学式(I)中、Xが臭素原子であり、Xがヨウ素原子である(E)-ブロモヨードアルケンがより高い選択性で得られる。
また、化学式(I)中のBである脂肪族炭化水素基が環状脂肪族炭化水素基であると、化学式(I)中のBである脂肪族炭化水素基が鎖状脂肪族炭化水素基である場合と比較して反応の選択性がより高まり、化学式(I)中、Xが臭素原子であり、Xがヨウ素原子である(E)-ブロモヨードアルケンがより高い選択性で得られる。

【0037】
本発明によれば、例えば、下記(1)~(2)のような効果を得ることも可能である。ただし、これらの効果は、例示であって、本発明を何ら限定しない。
(1)本発明の(E)-ブロモヨードアルケンは、高い立体選択性を伴って得られるので、四置換オレフィンのテンプレート合成を可能にするテンプレート分子となり得る。
(2)本発明の(E)-ブロモヨードアルケンの製造方法では、系中発生させた臭化ヨウ素をアルキンに付加させることによって、位置及び立体選択的な制御を行って(E)-ブロモヨードアルケンを与えることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0039】
<機器>
H及び13CNMRスペクトルは、BRUKER-SPECTROSPIN-400(商品名)および5mmQNPプローブを用い、それぞれ400MHzおよび100MHzで記録した。ケミカルシフト値は、微量のモノプロトン溶媒の共鳴を内部標準とし、外部のテトラメチルシラン(TMS)を間接的に参照して百万分率(ppm)で記録した。略号sは、一重線(シングレット)を表し、dは、二重線(ダブレット)を表し、tは、三重線(トリプレット)を表し、qは、四重線(カルテット)を表し、mは、多重線(マルチプレット)を表す。元素分析はア・ラビット・サイエンス社(http://www.rabit-sc.jp/)にて実施した。
なお、特に断らない限り、「Anal.」は元素分析値を表し、元素分析値について、「Calcd. For」は計算値を表し、「Found」は実測値を表す。
マススペクトルは、JEOL GC-mate II(商品名)を用いてEIモードで、及び、Finnigan LCQ DECA(商品名)を用いてESIモードで測定した。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(関東化学株式会社、商品名Silica Gel 60N)を用いて行った。薄層クロマトグラフィー分析は、Merck silica gel 60 F254(商品名)を用いて行った。反応は、特に断らない限り、アルゴン雰囲気下で行った。
【実施例】
【0040】
<試薬>
試薬は、関東化学株式会社、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社から購入した。全ての試薬は、さらなる精製をせずに使用した。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
下記化学式(12)で表されるアルキン(II)から、下記スキーム2に従って、下記化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)を合成した。
【化11】
JP2016030731A_000013t.gif
【実施例】
【0042】
<TMSBr(ブロモトリメチルシラン)の1M塩化メチレン溶液の調製>
チューブに封入されたTMSBr(25mL)を東京化成工業株式会社から購入した。TMSBr3mLを乾燥塩化メチレン(20mL)へ加えて、実験に用いる無色のTMSBrの1M塩化メチレン溶液を得た。保存溶液については、わずかに黄変していたものの、少なくとも3週間は安定していた。
【実施例】
【0043】
<化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の合成>
アルゴン雰囲気下、化学式(12)で表されるアルキン(II)(366mg、1.0mmol)の無水トルエン(4mL)溶液(-78℃)に、TMSBrの1M塩化メチレン溶液(1.5mL)を5分間滴下混合し、混合物を5分間撹拌した。
次に、N-ヨードスクシンイミド(NIS:337mg、1.5mmol)のアセトニトリル溶液(1.5mL)を5分間かけて加え、冷却バスを外して室温まで加温した。
原料のアルキン(II)はヨードスクシンイミドの添加直後に消失し、TLC上でワンスポットとなった。
さらに1時間撹拌後、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて0℃で反応を停止させ、更に10分撹拌して、室温まで加温した。
トルエン(15mL×3)を加えて水層を抽出し、有機層を食塩水(30mL)で洗浄した後、NaSOで脱水し、濃縮して粗生成物(589mg)を得た。
粗成生物はH NMRスペクトル上で94:6の異性体比であることが確認された。
異性体比は、化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)が94に対し、BrとIの位置が逆になっている(E)-ブロモヨードアルケン(I)が6であった。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液はヘキサン)で精製し、215mg(収率77%)の黄白色固体として、化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)を得た。
異性体比は精製前と変わらず94:6であった。
2重結合周りの構造は、得られた生成物の単結晶のX線結晶構造解析により行い、(E)-1-ブロモ-2-ヨードビニル化合物であることが判明した。
【実施例】
【0044】
化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の機器分析値は以下のとおりである。
また、図1及び図2には、化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャート及び13C NMRチャートをそれぞれ示した。
化学式(1)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 8.34 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 8.21 (d, J =9.2 Hz, 1H), 8.12-8.07 (m, 3H), 7.86 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 7.72 (s, 1H), 3.41-3.26 (m,4H), 3.14 (dq, J = 7.3, 7.3 Hz, 1H), 3.02 (dq, J = 7.3, 7.3 Hz, 1H), 1.85 (tt, J = 7.6, 7.6 Hz, 2H), 1.84 (tt, J = 7.6, 7.6 Hz, 2H), 1.56-1.46 (m, 4H), 1.37 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.01(t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.00 (t, J = 7.3 Hz, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl) 138.1, 137.7, 137.3, 129.9 (two peaks are overlapped), 129.1, 128.3, 128.1, 127.9, 126.1, 126.0, 125.9, 125.4, 124.2, 123.9, 122.7, 116.8, 107.1, 39.3, 34.4, 34.0, 33.8, 33.7, 23.3, 23.1, 14.4, 14.3, 13.6 ppm;
MS (FAB) m/z: 572 (M);
IR (neat): 3044, 2948, 2925, 2852, 1603, 1499, 1463, 1368 cm-1
Anal. Calcd for C2830BrI: C, 58.66; H, 5.27. Found: C, 58.53; H, 5.40.
【実施例】
【0045】
[実施例2及び比較例1~3]
実施例2及び比較例1~3では、市販の非対称形アルキンである1-フェニル-1-ブチンに対してヨードブロモ化の試験を行った。
実施例2では、実施例1と同様の方法により、1-フェニル-1-ブチンに対してヨードブロモ化を行い、目的物である、化学式(2)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)を2.45g(収率77%)の淡赤油状物として得た。異性体比は精製前と変わらず98:2であった。
また、未反応の1-フェニル-1-ブチンは残っていなかった。
実施例2では、グラムスケールで(E)-ブロモヨードアルケン(I)を得ることができた。
【実施例】
【0046】
比較例1では、市販の臭化ヨウ素をそのまま用いて1-フェニル-1-ブチンに対してヨードブロモ化を行った。NMR分析の結果、3つの異性体と思われるピークが観測され、その比率は74:21:5であった。また、未反応物が8%残った。
【実施例】
【0047】
比較例2では、市販の臭化ヨウ素をジエチルエーテルに溶解させて1-フェニル-1-ブチンに対してヨードブロモ化を行った。NMR分析の結果、2つの異性体と思われるピークが観測され、その比率は92:8であったが、未反応物が18%と多く残った。
【実施例】
【0048】
比較例3では、比較例2と同様に市販の臭化ヨウ素をジエチルエーテルに溶解させた溶液を用いて、室温下で1-フェニル-1-ブチンに対してヨードブロモ化を行った。NMR分析の結果、2つの異性体と思われるピークが観測され、その比率は90:10であった。未反応物が32%と多く残った。
実施例2、比較例1~3の反応のスキームを下記に示す。
【化12】
JP2016030731A_000014t.gif
【実施例】
【0049】
実施例2では、異性体比が高く、ほぼ単一組成の(E)-ブロモヨードアルケン(I)が選択的に得られた。また、未反応物が残っていなかった。
一方、比較例1~3では、未反応物が残っており、この未反応物は目的物である(E)-ブロモヨードアルケンとRf値が極めて近いためにTLCでの分離が難しく、比較例1~3では精製が困難であった。
このことから、臭化ヨウ素を系中発生させて反応させる実施例2の方法が市販の臭化ヨウ素を用いる方法に比べて優れていることが示された。
【実施例】
【0050】
化学式(2)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の機器分析値は以下のとおりである。
また、図3及び図4には、化学式(2)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャート及び13C NMRチャートをそれぞれ示した。
化学式(2)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.39-7.29 (m, 5H), 2.87 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.19 (t, J= 7.4 Hz, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) 144.1, 129.4, 128.9, 128.6, 117.1,103.9, 39.6, 13.3 ppm;
MS (EI) m/z: 336 (M), 257 ([M-Br]);
IR (neat): 3054, 2969,2930, 2871, 1593, 1487, 1455, 1441 cm-1
Anal. Calcd for C1010BrI: C, 35.64; H, 2.99.
Found: C, 35.66; H, 2.79;
HRMS (DI) calcd for C1010BrI: 335.9011, found 335.9029.
【実施例】
【0051】
[実施例3~11]
【化13】
JP2016030731A_000015t.gif
実施例3~11では、出発原料であるアルキンを変更して、上記スキーム1に従い、下記式(3)~(11)に示す(E)-ブロモヨードアルケン(I)を合成した。
各化合物の収率および異性体比と合わせて表1及び表2に示す。
【表1】
JP2016030731A_000016t.gif
【表2】
JP2016030731A_000017t.gif
【実施例】
【0052】
実施例3は芳香族炭化水素基Aが電子供与基であるメチル基を有するフェニル基である例であり、実施例4は実施例3からメチル基の位置を変更して立体的に込み入った構造にした例である。実施例5は芳香族炭化水素基Aがアントニル基であって立体的に込み入った構造にした例である。実施例6は芳香族炭化水素基Aが電子供与基であるメトキシ基を有するフェニル基である例である。
実施例3~6に示す例では、収率が高く未反応のアルキンが残っていなかった。
また、異性体比も高く、選択的に化学式(3)~(6)に示す構造の(E)-ブロモヨードアルケン(I)が得られた。
【実施例】
【0053】
実施例7は芳香族炭化水素基Aが電子求引基であるシアノ基を有するフェニル基である例であり、実施例8は実施例7から脂肪族炭化水素基Bをシクロヘキシル基に変更した例である。
実施例9は芳香族炭化水素基Aが電子求引基であるニトロ基を有するフェニル基である例であり、実施例10は実施例9から脂肪族炭化水素基Bをシクロヘキシル基に変更した例である。
実施例11は原料のアルキン(II)として3-フェニルプロピオル酸メチルを用いた例であり、脂肪族炭化水素基Bがエステル基を有する例である。
これらの例では、実施例3~6に比べると収率が低く未反応のアルキンが残っていたが、カラム精製により未反応のアルキンを分離することが可能であり、化学式(7)~(11)に示す構造の(E)-ブロモヨードアルケン(I)が得られた。
また、芳香族炭化水素基Aが同じ電子求引性の置換基を有する場合、脂肪族炭化水素基Bがシクロヘキシル基である場合に異性体比が向上することが分かった。このことから、ブロモアニオンがシクロヘキシル基とノルマルヘキシル基の置換基の大きさを認識したうえで求核攻撃をベンジル位炭素に行っていると考えられる。
【実施例】
【0054】
実施例3~11で合成した(E)-ブロモヨードアルケン(I)の機器分析値は以下のとおりである。なお、各物質の性状(色、形態等)と各実施例で得られた物質の収量も合わせて示した。
また、図5~図22には、化学式(3)~(11)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)のH NMRチャート及び13C NMRチャートをそれぞれ示した。
【実施例】
【0055】
化学式(3)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(淡黄色油状物質:収量200mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.22 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.17 (d, J= 8.6 Hz, 2H), 2.83 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.36 (s, 3H), 1.65 (tt, J = 7.4, 7.4 Hz, 2H), 1.44-1.34 (m, 6H), 0.92 (t, J = 7.4 Hz, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl) 141.5, 138.8,129.34, 129.30, 117.9, 102.5, 45.6, 32.0, 28.6, 28.4, 21.7, 14.4 ppm;
MS (EI) m/z: 406(M);
IR (neat): 2923, 1606, 1505, 1454, 1180, 1110 cm-1
HRMS (DI) calcd for C1520BrI: 405.9793, found 405.9779.
【実施例】
【0056】
化学式(4)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(無色油状物質:収量395mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.28-7.20 (m, 3H), 7.11 (d, J = 7.7Hz, 1H), 2.89 (dt, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 2.76 (dt, J = 7.5, 7.5 Hz, 1H), 2.27 (s, 3H), 1.67(tt, J = 7.5, 7.5 Hz, 2H), 1.45-1.35 (m, 6H), 0.93 (t, J = 10.9 Hz, 3H) ppm;
13C NMR(100 MHz, CDCl) 143.8, 135.6, 130.7, 129.2, 129.1, 126.5, 117.8, 104.4, 44.5, 32.0,
28.7, 28.4, 23.0, 19.6, 14.5 ppm;
MS (FAB) m/z: 406 (M);
IR (neat): 3065, 3023, 1952, 2924, 2855, 1599, 1455, 1377 cm-1
Anal. Calcd for C1520BrI: C, 44.25; H, 4.95.Found: C, 44.49; H, 4.76.
【実施例】
【0057】
化学式(5)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(黄色針状結晶:収量346mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 8.55 (s, 1H), 8.06-8.04 (m, 2H), 7.62-7.48(m, 4H), 3.11 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.91-1.84 (m, 2H), 1.65-1.41 (m, 6H), 1.00 (t, J = 7.0Hz, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) 136.9, 132.0, 129.1, 128.6, 128.1, 127.0, 126.0, 125.5, 115.5, 108.3, 44.9, 32.0, 29.1, 28.8, 23.0, 14.5 ppm;
IR (neat): 3057, 2925, 2854, 1621, 1519, 1466, 1440 cm-1
MS (FAB) m/z: 493 (M);
Anal. Calcd for C2222BrI: C, 53.57; H, 4.50. Found: C, 53.41; H, 4.31.
【実施例】
【0058】
化学式(6)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(黄色油状物質:収量420mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.24 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.88 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 3.83 (s, 3H), 2.82 (t, J = 7.4 Hz, 2H), (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.65 (tt, J =7.4, 7.4 Hz, 2H), 1.44-1.33 (m, 6H), 0.92 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz,CDCl) 159.8, 136.7, 130.9, 117.9, 113.9, 102.6, 55.5, 45.6, 31.9, 28.6, 28.4, 22.9, 14.4 ppm;
MS (FAB) m/z: 422 (MH);
IR (neat): 2952, 2924, 2854, 1602, 1505, 1462, 1291, 1247 cm-1
Anal. Calcd for C1520BrIO: C, 42.58; H, 4.76. Found: C, 42.68; H, 4.60.
【実施例】
【0059】
化学式(7)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(黄色油状物質:収量216mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.67 (d, J = 8.5 Hz, 2 H), 7.40 (d, J = 8.5 Hz,2H), 2.84 (t, J = 7.6 Hz, 2 H), 1.65 (tt, J = 7.6, 7.6 Hz, 2H), 1.44-1.35 (m, 6H), 0.92 (t, J= 7.1 Hz, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl) 148.3, 132.5, 130.3, 118.5, 114.9,112.6, 104.4, 45.3, 31.8, 28.5, 28.3, 22.8, 14.4 ppm;
MS (FAB) m/z: 418 ([MH]);
IR(neat): 2925, 2854, 2228, 1601, 1496, 1455, 1402, 1107, 831 cm-1
Anal. Calcd for C1517BrIN: C, 43.09; H, 4.10; N, 3.35. Found: C, 43.11; H, 4.15; N, 3.28.
【実施例】
【0060】
化学式(8)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(白色固体:収量78mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.67 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.36 (d, J =8.6 Hz, 2H), 2.53-2.47 (m, 1H), 1.87-1.67 (m, 5H), 1.52 -1.39 (m, 4H), 1.27-1.18 (m,1H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl3) 148.7, 132.7, 130.5, 118.7, 115.1, 112.6, 112.5, 48.4, 33.1, 25.8, 25.8 ppm;
MS (FAB) m/z: 416 ([MH]);
IR (neat): 2924, 2849, 2230, 1598, 1496, 1448, 1268, 1207 cm-1
Anal. Calcd for C1515BrIN: C, 43.30; H, 3.63; N,3.37. Found: C, 43.23; H, 3.58; N, 3.36.
【実施例】
【0061】
化学式(9)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(黄色油状物質:収量245mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 8.24 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.46 (d, J = 8.8Hz, 2H), 2.85 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.5, 7.5 Hz, 2H), 1.45-1.34 (m, 6H), 0.93(t, J = 7.0 Hz, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl) 150.2, 147.7, 130.7, 124.3, 114.5, 104.8, 45.3, 31.9, 28.6, 28.4, 22.9, 14.4 ppm;
MS (FAB) m/z: 437 (M);
IR (neat): 3108, 3077, 2925, 2854, 1601, 1519, 1488, 1456, 1342 cm-1
Anal. Calcd for C1417BrINO: C, 38.38; H, 3.91; N, 3.20. Found: C, 38.26; H, 3.91; N, 3.20.
【実施例】
【0062】
化学式(10)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(黄白色針状結晶:収量161mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 8.22 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 2.54-2.48 (m, 1H), 1.86-1.83 (m, 2H), 1.75-1.68 (m, 3H),
1.54-1.39 (m, 4H), 1.27-1.20 (m, 1H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl) 150.5, 147.6, 130.8, 124.2, 115.3, 112.1, 48.4, 33.1, 25.8, 25.7 ppm;
MS (FAB) m/z : 435 (M);
IR(neat) 2925, 2850, 1600, 1517, 1442, 1341 cm-1
Anal. Calcd for C1415BrINO: C,38.56; H, 3.47; N, 3.21. Found: C, 38.64; H, 3.34; N, 3.14.
【実施例】
【0063】
化学式(11)で表される(E)-ブロモヨードアルケン(I)(黄油状物質:収量234mg)の機器分析値:
H NMR (400 MHz, CDCl) 7.44-7.38 (m, 5H), 3.96 (s, 3H) ppm;
13C NMR (100 MHz, CDCl) 166.4, 140.8, 130.0, 128.9, 128.8, 123.4, 81.9, 53.7 ppm;
MS (EI) m/z: 366 ([MH]), 287 ([MH-Br]);
IR (neat): 2950, 1725, 1590, 1442, 1432, 1240, 1204 cm-1
HRMS (DI) calcd for C10BrIO: 365.8752, found 365.8779.
【実施例】
【0064】
[比較例4、5]
比較例4では、アルキンの3重結合を構成する炭素原子の両方に芳香族炭化水素基が結合したアルキンである、1,2-ジ(p-トリル)アセチレンに対してヨードブロモ化の試験を行った。
また、比較例5では、比較例4と同様にアルキンの3重結合を構成する炭素原子の両方に芳香族炭化水素基が結合したアルキンである、1,2-ジフェニルアセチレンに対してヨードブロモ化の試験を行った。
これらの例では反応がうまく進行せず、(E)-ブロモヨードアルケンが得られなかった。
このことから、アルキンの3重結合を構成する炭素原子の両方に芳香族炭化水素基が結合したアルキンに対してはヨードブロモ化を行うことが難しく、位置選択的なヨードブロモ化を行うためには一方の炭素原子には芳香族炭化水素基、もう一方の炭素原子には脂肪族炭化水素基が結合していることが好ましいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のとおり、本発明によればアルキンに対して、系中発生型臭化ヨウ素を付加させて、立体選択的な制御を行って(E)-ブロモヨードアルケンを、簡便に、高純度で得ることができる。また、グラムスケールで(E)-ブロモヨードアルケンを得ることができる。
また、本発明の(E)-ブロモヨードアルケンは、四置換オレフィンのテンプレート合成法に用いられる基質として有望である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21