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明細書 :人工脳システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-024637 (P2016-024637A)
公開日 平成28年2月8日(2016.2.8)
発明の名称または考案の名称 人工脳システム
国際特許分類 G06N   3/04        (2006.01)
G06N   3/10        (2006.01)
FI G06N 3/04 E
G06N 3/10
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2014-148370 (P2014-148370)
出願日 平成26年7月19日(2014.7.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り [刊行物名] Proceedings of the ARTIFICIAL LIFE AND ROBOTICS 2014(AROB 19th 2014) [発行所] 一般社団法人「人工生命とロボット国際学会」 [発行日] 平成26年1月22日
発明者または考案者 【氏名】内藤 健
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100121153、【弁理士】、【氏名又は名称】守屋 嘉高
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100133639、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 卓哉
審査請求 未請求
要約 【課題】より自然で、創造性のある情報処理の実現を可能にした人工脳システムを提供する。
【解決手段】6つのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23を、シナプスS~Sで互いに接続した基本神経回路10を備える。基本神経回路10は、ニューロンx11,x21,x22間の結び付きがトポロジカルに非対称なネットワークパターン1と、ニューロンx12,x13,x21,x22,x23間の結び付きがトポロジカルに対称なネットワークパターン2,3が融合して構成され、ニューロンx23は、基本神経回路10を流れる電気信号の強度を抑制する抑制ニューロンとなる。ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の全てに対し、外部からの入力信号をそれぞれ取り込ませる信号入力手段20と、外部へ出力信号をそれぞれ出力させる信号出力手段24とを備える。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
3つ以上の複数のニューロンと、前記複数のニューロンのうち少なくとも3つのニューロンを常に接続する回路内シナプスとからなる基本神経回路を備え、
前記基本神経回路は、前記回路内シナプスによる前記ニューロン間の結び付きがトポロジカルに非対称なネットワークパターンと、前記ニューロン間の結び付きがトポロジカルに対称なネットワークパターンが融合して構成され、
前記複数のニューロンのうち少なくとも1つのニューロンは、前記基本神経回路を流れる電気信号の強度を抑制する抑制ニューロンとして構成され、
前記電気信号の強度にランダム或いはランダムに近い計時変化が含まれるように前記回路内シナプスが構成され、
前記複数のニューロンのすべてまたは一部に外部からの入力信号をそれぞれ取り込ませる信号入力手段と、
前記複数のニューロンのすべてまたは一部に外部へ出力信号をそれぞれ出力させる信号出力手段と、を備えていることを特徴とする人工脳システム。
【請求項2】
前記ニューロンが時刻Nに発する電気信号の強度をxNij(但し、i,jは前記ニューロンを識別する添え字であり、i=1~2,j=1~3とする。)とし、
前記ニューロン同士の結合強度を特徴付けるパラメータをαijとし、
電気信号の強度を抑制する程度を制御するためのパラメータをξijとし、
前記ニューロンに入力する電気信号の強度の消費速度を特徴つけるパラメータをεijとし、
電気信号の強度の散逸を表すパラメータをφとし、
ヘビサイド関数をδで表し、
次の数1に示す○の中に×がついた記号(以下、×で表す)が2つの小さな方の値を表す場合には、q>1であり、記号×が積として定義される場合には、q>2であり、前記パラメータαij,ξij,εij,φは定数だけでなく、時間変化をしない定数を含む決定論的時間変化の項αij,ξij,εij,φと、ランダム或はランダムに近い確率論的時間変化の項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’との和であり、
前記項αij,ξij,εij,φや前記項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’は、それらのそれぞれの内3つまでは0であることも可能としたときに、
前記ニューロンから発する電気信号の時間変化が、次の数1によって定まることを特徴とする請求項1記載の人工脳システム。
【数1】
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【請求項3】
前記複数のニューロンの少なくとも1つがニューロン群であり、前記ニューロン群は複数のニューロンを互いにニューロン内シナプスで接続して構成されることを特徴とする請求項1または2記載の人工脳システム。
【請求項4】
前記基本神経回路を複数接続した複合神経回路を備え、前記基本神経回路を互いに接続する回路間シナプスのうち、少なくとも1対の前記回路間シナプスがトポロジカルに交差して構成されることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の人工脳システム。
【請求項5】
前記ニューロンが発散若しくはダウンしないように、前記回路内シナプス、前記ニューロン内シナプス、または前記回路間シナプスの結合強度をそれまでよりも弱くするか、弱くする時間帯を設ける構成としたことを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の人工脳システム。
【請求項6】
前記ニューロン群が前記基本神経回路で構成されることを特徴とする請求項3記載の人工脳システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命のない創造発展的な人工脳システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工ニューラルネットワークを含む人工脳システムに関して、様々なモデルが提唱されている。例えば非特許文献1に記述されているように、G.Edelmanらの研究グループは、Neural Darwinismによる学習を取り入れた人工脳システムを創出した。その他にも、例えば非特許文献2,3に示すような人工頭脳コンピュータが多く存在する。
【0003】
しかし、既存の人工脳システムとして、例えばカオス型や再帰型の人工ニューラルネットワークは、基本的に答の存在する問題に対して、高速の計算をさせるものでしかなかった。
【0004】
また近年は、ニューロンパターンの繋がりを解明する試みがなされている(非特許文献4を参照)。しかし、ネットワークの複雑さのために、標準パターンは見つかっていない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Edelman G.、Newral Darwinism.、Basic Books、New York、1987
【非特許文献2】"IBM Archives: 1990s"、[online]、[平成26年7月8日検索]、インターネット〈URL:http://www-03.ibm.com/ibm/history/history/year_1997.html〉
【非特許文献3】"SOINN:Self-Organizing Incremental Neural Network(自己増殖型ニューラルネットワーク)"、[online]、[平成26年7月8日検索]、インターネット〈URL:http://haselab.info/soinn.html〉
【非特許文献4】Ito M, Masuda N, Shinomiya K, Endo K, Ito K.、"Systematic Analysis of Neural Projections Reveals Clonal Composition of the Drosophila Brain."、Current Biology 23 : 1-12、April 22, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、本発明によって明らかにされる生分子ネットワークの標準パターンを応用することで、より自然で、創造性のある情報処理の実現を可能にした人工脳システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の人工脳システムは、3つ以上の複数のニューロンと、前記複数のニューロンのうち少なくとも3つのニューロンを常に接続する回路内シナプスとからなる基本神経回路を備え、前記基本神経回路は、前記回路内シナプスによる前記ニューロン間の結び付きがトポロジカルに非対称なネットワークパターンと、前記ニューロン間の結び付きがトポロジカルに対称なネットワークパターンが融合して構成され、前記複数のニューロンのうち少なくとも1つのニューロンは、前記基本神経回路を流れる電気信号の強度を抑制する抑制ニューロンとして構成され、前記電気信号の強度にランダム或いはランダムに近い計時変化が含まれるように前記回路内シナプスが構成され、前記複数のニューロンのすべてまたは一部に外部からの入力信号を取り込ませる信号入力手段と、前記複数のニューロンのすべてまたは一部に外部へ出力信号を出力させる信号出力手段と、を備えている。
【0008】
本発明の請求項2は、前記ニューロンが時刻Nに発する電気信号の強度をxNij(但し、i,jは前記ニューロンを識別する添え字であり、i=1~2,j=1~3とする。)とし、前記ニューロン同士の結合強度を特徴付けるパラメータをαijとし、電気信号の強度を抑制する程度を制御するためのパラメータをξijとし、前記ニューロンに入力する電気信号の強度の消費速度を特徴つけるパラメータをεijとし、電気信号の強度の散逸を表すパラメータをφとし、ヘビサイド関数をδで表し、次の数1に示す○の中に×がついた記号(以下、×で表す)が2つの小さな方の値を表す場合には、q>1であり、記号×が積として定義される場合には、q>2であり、前記パラメータαij,ξij,εij,φは定数だけでなく、時間変化をしない定数を含む決定論的時間変化の項αij,ξij,εij,φと、ランダム或いはランダムに近い確率論的時間変化の項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’との和であり、前記項αij,ξij,εij,φや前記項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’は、それらのそれぞれの内3つまでは0であることも可能としたときに、前記ニューロンから発する電気信号の時間変化が、次の数1によって定まることを特徴とする人工脳システムである。
【数1】
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【0009】
本発明の請求項3は、前記複数のニューロンの少なくとも1つがニューロン群であり、前記ニューロン群は複数のニューロンを互いにニューロン内シナプスで接続して構成されることを特徴とする人工脳システムである。
【0010】
本発明の請求項4は、前記基本神経回路を複数接続した複合神経回路を備え、前記基本神経回路を互いに接続する回路間シナプスのうち、少なくとも1対の前記回路間シナプスがトポロジカルに交差して構成されることを特徴とする人工脳システムである。
【0011】
本発明の請求項5は、前記ニューロンが発散若しくはダウンしないように、前記回路内シナプス、前記ニューロン内シナプス、または前記回路間シナプスの結合強度をそれまでよりも弱くするか、弱くする時間帯を設ける構成としたことを特徴とする人工脳システムである。
【0012】
本発明の請求項6は、前記ニューロン群が前記基本神経回路で構成されることを特徴とする人工脳システムである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、本物の生体に近い基本神経回路を、生分子ネットワークの標準パターンとして応用することが可能になるため、基本神経回路を構成する3つ以上の複数のニューロンのうち少なくとも一つのニューロンに電気的な入力信号を与えて、そこから電気的な出力信号を得ることで、本発明の人工脳システムを、生体における脳神経科学の様々な解明に利用することができる。したがって、より自然で、創造性のある情報処理の実現を可能にした人工脳システムを提供できる。
【0014】
請求項2によれば、パラメータを正しく設定することで、各ニューロンの信号強度の変化を望ましい値に制御することができる。また、項αij,ξij,εij,φや項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’は、それらの内3つまでを0とすることも可能である。さらに、非線形の項α’ij,ξ’ij,ε’ijは、線形な項φ’とは異なる重要な効果があり、これによって創造的な情報処理が実現される。
【0015】
請求項3によれば、様々な形態のニューロン群を、本物の生体に近い基本神経回路に組み入れることが可能になる。
【0016】
請求項4によれば、複合神経回路を構成する複数の基本神経回路が、トポロジカルに交差する回路間シナプスによって多様的に相互作用することで、人工脳システムとして、ここちよさ(大和比1:1や、2:3付近の黄金比・白銀比を含む超魔法数の周波数)を基準として、さらに創造的な情報処理を行なうことが可能となる。
【0017】
請求項5によれば、個々のニューロンが発散したり停止したりせず、人工脳システムが興奮しすぎて破たんしないように工夫することができる。つまり当該構成が、基本神経回路や複合神経回路の冷却材としての機能を備えることができる。
【0018】
請求項6によれば、ニューロン群を基本神経回路によるフラクタル的な入れ子階層構造とすることで、より直観的な判断を人工脳システムとして下すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を理解するために、単細胞生物における自己組織化・自己増殖の過程を4気筒エンジンに例えた説明図である。
【図2】同上、多細胞生物における自己組織化・自己増殖の過程を6気筒エンジンに例えた説明図である。
【図3】本発明の一実施例における人工脳システムの概略図である。
【図4】Edelmanらの提唱する生体神経回路(A)と、本発明の人工神経回路の一部(B)との比較図である。
【図5】同上、基本神経回路を示す構成図である。
【図6】同上、2つの基本神経回路を通常接続して得られる複合神経回路の構成図である。
【図7】同上、2つの基本神経回路をひねり接続して得られる複合神経回路の構成図である。
【図8】同上、2つの基本神経回路を通常接続し、さらにその間に基本神経回路のニューロンとは異なるニューロンを介在させて得られる複合神経回路の構成図である。
【図9】同上、2つの基本神経回路をひねり接続して得られる複合神経回路の構成図である。
【図10】同上、2つの基本神経回路を通常接続し、別な2つの基本神経回路をひねり接続して得られる複合神経回路の構成図である。
【図11】同上、2つの基本神経回路を通常接続し、別な2つの基本神経回路をひねり接続し、さらに別な2つの基本神経回路をひねり接続して得られる複合神経回路の構成図である。
【図12】同上、図7に示すひねり接続のパターンで、上側の基本神経回路から下側の基本神経回路への信号強度の比を時間経過で示したグラフの例である。
【図13】同上、図7に示すひねり接続のパターンで、下側の基本神経回路からの出力となる信号強度の比を時間経過で示したグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づき、本発明の人工脳システムの好ましい実施例を詳しく説明する。

【0021】
先ず、本発明の実施例を説明する前に、本発明の着想の元となる生分子ネットワークについて説明する。図1は、生命体における自己組織化・自己増殖の過程を4気筒エンジンに例えたものである。図中の四角型は、以下の生分子群の各要素を表す。

【0022】
21: DNA複製のための酵素群
22: 酵素複製のための酵素群
11: DNA複製のための酵素群をコードしているDNA群
12: 酵素複製のための酵素群をコードしているDNA群

【0023】
DNA複製のための酵素群x21には、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、プライマーゼなどが含まれる。また、酵素複製のための酵素群x22には、rRNAやリボソームタンパク質を備えるリボソーム、RNAポリメラーゼ、mRNA、tRNAが含まれる。x11とx12は、それぞれx21とx22をコードするDNA群を表す。x12およびx22は、反応を活性化させるために必要である。また、各マクロ生分子群x21,x22,x11,x12に介在している大小4つの円は、これら4つの生分子群の反応のつながりを表したものである。

【0024】
図1に示す反応ネットワークは、非対称のネットワークパターン1(同図左側に認められる、大小の円のペア)と、対称のネットワークパターン2(同図右側に認められる、同サイズの円のペア)から構成されている。そして非対称のネットワークパターン1と対称のネットワークパターン2が図示のように融合することによって、生命体の自己組織化・自己増殖が可能になる。一方、対称のネットワークパターン2だけでは、自己組織化は形成されない。バクテリアや古細菌などの単細胞システムは、繁殖システムとして図1のような4気筒システムが採用されていると思われるが、これは連続培養系でエネルギーが供給され続けた場合、細胞の数が増え続けるからである。つまり、対称ネットワークと非対称ネットワークが混在する4つの生分子群が、生命の最低必要条件といえる。

【0025】
図2は、多細胞生物の自己組織化・自己増殖の過程を図示したものである。単細胞生物と異なり、ここでは増え続ける遺伝子の産生を抑えるために、例えばOct-4やSOX-2のような抑制型の酵素が含まれていなければならない。よって、多細胞生物のシステムでは、形態形成を実現するために以下の生分子群の各要素から構成される。

【0026】
21: DNA複製のための酵素群
22: 酵素複製のための酵素群
11: DNA複製のための酵素群をコードするDNA群
12: 酵素複製のための酵素群をコードするDNA群
23: 遺伝子の産生を抑える抑制型の酵素
13: 抑制型の酵素x23をコードする遺伝子群

【0027】
つまり、多細胞生物システムは、単細胞生物に対応する生分子群x11,x12,x21,x22のコアサイクルとしての4気筒エンジンに、遺伝子の産生を抑える抑制型の酵素x23と、抑制型の酵素x23をコードする遺伝子群x13が組み込まれている構成となり、これは6気筒のエンジンに例えることができる。抑制型の酵素x23が4気筒エンジンに作用すると、遺伝子群としての抑制タンパク質群x23が自動的に4気筒エンジンの分子群の増加を抑制するが、それは同時にx23の増加をも抑制する。従って、図2に図示している6気筒バイオエンジンが、様々な目的での標準時計として機能する。この6気筒エンジンの各要素の濃度をxij(i=1~2,j=1~3)とすると、当該濃度の時間(世代)変化は、以下の数2に従うものとなる。

【0028】
【数2】
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【0029】
数2において、上から一段目と二段目は微分方程式の形式で表わされており、上から三段目と四段目はコンピュータが演算処理しやすいように差分方程式の形式で表されている。ここでは、「or」で区切られた4つの式の何れかを採用すればよい。

【0030】
ここでxij(N)は、Nを時刻(世代)としたときのマクロ群の各カテゴリー量である濃度を表す。xij(N)において、第1番目の添え字iは生分子の型を表し、i=1は遺伝子群(情報生分子群)を、i=2は酵素システム(機能生分子群)を示す。また、xij(N)における第2番目の添え字jは機能を表し、j=1は遺伝子群(情報)の生成を、j=2は加速のための酵素システムの生成(機能の生成)を、j=3はシステム抑制を表す。数1において、○の中に×がついた記号(以下、×で表す)は、例えば数式xij(N)×yij(N)において、xij(N)とyij(N)との小さい方の値をとるものとして定義される。また記号δは、例えば関数δ(x)の引数xが正であれば1を出力し、負であれば0を出力する関数、つまりヘビサイドの階段関数である。

【0031】
αijとξijの記号は任意の反応定数を表し、εijの記号は入力エネルギーの消費速度を表すパラメータであり、φ(≧0)の記号はエネルギー散逸のパラメータであり、p,p’は任意の実数パラメータである。但し、ここでのパラメータαij、ξij、εij、φは定数だけではなく、時間の関数も可能で、しかも、若干のランダムなゆらぎ(疑似乱数、または数値誤差から生成された乱数に近いもの)があるものでもよい。つまり、定数で時間変化しない場合も含む決定論的時間変化の項αij,ξij,εij,φとし、ランダムな確率論的時間変化の項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’としたときに、パラメータはαij+α’ij、ξij+ξ’ij、εij+ε’ij、φ+φ’の形で表せる。数2において、αij,ξijは微分(差分)方程式の非線形項に対応するパラメータであり、εijは微分方程式の線形に近い項に対応するパラメータであり、φは微分方程式の線形項に対応するパラメータであるが、これらのパラメータのうち、確率論的に時間変化する非線形な項α’ij,ξ’ij,ε’ijは、線形な項φ’とは異なる重要な効果がある。項αij,ξij,εij,φや項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’は、それらのそれぞれの内の3つまでは0であることも可能であるが、非線形のゆらぎとなる項α’ij,ξ’ijは、0ではない。また、記号×が2つの小さな方の値を表す場合には、q>1であり、記号×が積として定義される場合には、q>2がインプットされる。

【0032】
一段目の微分方程式と三段目の差分方程式は、いずれも関数δの括弧内にx1jが存在することから、これは図2に示す酵素x23から生分子群x11,x12,への抑制に作用する。また、二段目の微分方程式と四段目の差分方程式は、いずれも関数δの括弧内にx2iが存在することから、これは図2に示す酵素x23から生分子群x21,x22への抑制に作用する。こうして、数2に基づく解析によって、周期的な体調変化や老化過程、寿命が明らかとなる。ここでは、カタストロフィ(破滅的)な過程として2つの基本パターン、つまり仮死状態からの回復と死が存在することが重要である。

【0033】
例えばαijのある条件範囲で数2を数値的に解くと振動する解が得られ、そのリズムはおおよそ基本振動の7倍振動となっている。これは、胚や臓器がほぼ7回の細胞分裂の周期で発生するという事実に対応している。以上が、本発明の着想の元となる生分子ネットワークの説明である。

【0034】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例は、上で説明した生命起源と多細胞生物のモデルを、人工脳システムのニューロネットワークに応用したものである。24~25時間のサイクルをもつ脳内の概日時計に注目すると、脳内の視交叉上核(suprachiasmatic nuclei:SCN)が除去された場合、脳内時計は約3~4時間のサイクルを示すことが知られている。これはつまり、図2に示した生分子群の6気筒エンジンに基づく7倍の周期のサイクルが脳内にも存在することを示している。さらに強調するならば、経済や社会システムにみられる景気の波もおおよそ7倍の周期であり、これは経済システムが人間の脳によって生成されていることによる。このように、人類の経済ネットワーク活動は、人間の脳システムにあるニューラルネットワークに深く起因するものである点に注意されたい。また脳内には興奮性のニューロンと抑制性のニューロンがあり、それぞれ図1に示す4気筒エンジンの増幅器としてのネットワークパターン1,2と、図2に追加された2グループの負の制御装置としてのネットワークパターン3にそれぞれ対応する。これを踏まえると、図1や図2での数2に見られる3~6気筒エンジン(または図2を拡張した6気筒以上のエンジン)は、皮質神経回路(ネットワーク)、脳機能の統合メカニズム、筋肉制御の神経システム、およびニューロン内部での化学反応ネットワークの標準トポロジーをうまく表現しているものと考えられる。

【0035】
従って、人工脳システム内におけるニューラルネットワークの基本トポロジーパターンも、図2と同様のネットワークを有していると考えられる。ゆえに本実施例の人工脳システムに組み込まれる基本神経回路は、図2に図示した生命の6気筒エンジンと、そのトポロジーが基本的に同じものである。

【0036】
図3は、このような基本神経回路10を組み込んだ人工脳システム100の一例を示したものである。同図において、人工脳システム100は、外部からの入力信号を取り込む信号入力手段20と、基本神経回路10を含む例えばコンピュータなどの処理手段22と、基本神経回路10からの出力信号を外部に出力する信号出力手段24とにより構成される。基本神経回路10は、図2で示したものと同様に、増幅器としてのネットワークパターン1,2と、負の制御装置としてのネットワークパターン3とを備える。本実施例では、処理手段22に信号処理用のプログラムがインストールされており、これにより処理手段22が人工脳システム100の基本神経回路10として機能する構成となっている。

【0037】
図4は、Edelmanらによって提唱された生体神経回路(A)と、本発明における人工神経回路の中核部(B)をそれぞれ示したものである。同図において、実線で囲んだ部分はニューロン(群)であり、矢印付きの線はシナプスを意味する。

【0038】
本発明における人工神経回路の中核部(B)は、Edelmanらの生体神経回路(A)に記述されたネットワークパターンbに対して、線L1を加え、本願発明のx21に対応する2つの部分を、巨視的に1つのニューロン(群)とみなした仮想のネットワークパターンcであり、それに負の抑制装置を加えた図2のパターンを、前述の処理手段22に基本神経回路10として形成したものである。Edelmanの提唱したネットワークパターンbは、生体神経回路を表すモデルとしては不完全なものであったが、本発明は、完全な生体神経回路のモデルを図4に示す人工神経回路(B)として提唱し、当該人工神経回路(B)に基づく人工脳システム100を提供する。この人工神経回路(B)は、図1に示す反応ネットワークと一致する。

【0039】
具体的には、図2に四角型で表されているマクロ生分子群をすべてニューロンに置き換え、円で示されている部分をすべてシナプスに置き換えれば、生体における脳内ネットワークにより近い人工脳システム100を実現することができる。図5は、本発明の人工脳システム100で適用される基本神経回路10をより詳しく示したものである。当該基本神経回路10は、以下の要素から構成される。

【0040】
21: DNA複製のための酵素群に対応するニューロン(群)
22: 酵素複製のための酵素群に対応するニューロン(群)
11: DNA複製のための酵素群をコードするDNA群に対応するニューロン(群)
12: 酵素複製のための酵素群をコードするDNA群に対応するニューロン(群)
23: 遺伝子の産生を抑える抑制型の酵素に対応するニューロン(群)
13: x23をコードする遺伝子群に対応するニューロン(群)
~S: 各ニューロン(群)を結び付けるシナプス(群)

【0041】
記号xij(i=1~2,j=1~3)は全てニューロンを表し、xijはそれぞれ1つのニューロン単体でもよいし、複数のニューロンおよびシナプスからなるニューロン群であってもよい。外部からの電気信号は、信号入力手段20を通して6つのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23へと入力され、そこで所望の情報処理を実行するために基本神経回路10を一通り巡った後、再び6つのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23より信号出力手段24を通して外部に出力される。つまり、6つある各ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23は、信号の入力と出力の両方の機能を備える。

【0042】
特に本実施例では、6つの全てのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23が、それぞれ信号入力手段20を通して、外部から入力信号を取り込むよう構成となっており、またそれぞれ信号出力手段24を通して、外部に出力信号を送出する構成となっている点が注目される。ここでの基本神経回路10のネットワークにおける入力,出力,内部の各信号は、パルス信号もしくは連続的な増減のある信号とする。また、ニューロン同士の結合強度は、接続するニューロンに応じて様々である。以下、基本神経回路10で信号が伝わる経路を説明する。

【0043】
円で示したニューロン同士を繋げるシナプスS~Sは、何れも再帰的である点が重要である。つまり、外部から基本神経回路10に入力される信号は、当該基本神経回路10のネットワークを一方通行に流れるものに限られず、互いに相互作用しながら再帰的に戻ってくるものが含まれる。

【0044】
具体的には、外部から信号入力手段20を通してニューロンx11,x12,x13へと入力された信号は、各々がシナプスS,S,Sを通してニューロンx21へと伝わり、当該ニューロンx21はシナプスS,S,Sを通してニューロンx11,x12,x13を再帰的に活性化する。また、ここでのネットワークの信号経路は、再帰的なものだけでなく、一方通行のものも存在する。例えば、外部から信号入力手段20を通してニューロンx22へと入力された信号は、シナプスSを通してニューロンx11へと伝わり、当該ニューロンx11はアクセルとしてシナプスSを通してニューロンx21を活性化する。外部から信号入力手段20を通してニューロンx22へと入力された信号は、シナプスSを通してニューロンx13へと伝わり、ニューロンx13はシナプスSを通して抑制ニューロンとしてのニューロンx23を作動させる。

【0045】
ij(i=1~2,j=1~3)を各ニューロンの活性レベル(電気信号の強度や周波数や波数)として再定義すると、その時間変化は以下の数3に従う。

【0046】
【数3】
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【0047】
数3において、上から一段目と二段目は微分方程式の形式で表わされており、上から三段目と四段目はコンピュータが演算処理しやすいように差分方程式の形式で表されている。ここでも、「or」で区切られた4つの式の何れかを採用すればよい。

【0048】
ここでxij(N)は、Nを離散的な時間としたときのニューロンの信号強度等を表す。またαijはニューロン同士の結合強度を表し、ξijは信号強度の抑制の程度を制御するための任意パラメータである。当該結合強度αijは、ニューロン間で異なる。εijとφ(>0)はそれぞれ、入力信号の消費速度を表すパラメータと、信号強度の散逸を表すパラメータであり、p,p’は任意の実数パラメータである。但し、ここでのパラメータαij、ξij、εij、φは定数だけではなく、時間の関数も可能で、しかも、若干のランダムなゆらぎ(疑似乱数、または数値誤差から生成された乱数に近いもの)がある。つまり、定数で時間変化しない場合も含む決定論的時間変化の項αij,ξij,εij,φとし、ランダムな確率論的時間変化の項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’としたときに、パラメータはαij+α’ij、ξij+ξ’ij、εij+ε’ij、φ+φ’の形で表せる。これにより、基本神経回路10を流れる電気信号の強度に、ランダム或いはランダムに近い計時変化が含まれるようなシナプスS~Sを構築できる。数3において、αij,ξijは微分(差分)方程式の非線形項に対応するパラメータであり、εijは微分方程式の線形に近い項に対応するパラメータであり、φは微分方程式の線形項に対応するパラメータであるが、これらのパラメータのうち、確率論的に時間変化する非線形な項α’ij,ξ’ij,ε’ijは、線形な項φ’とは異なる重要な効果がある。項αij,ξij,εij,φや項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’は、それらのそれぞれの内の3つまでは0であることも可能であるが、非線形のゆらぎとなる項α’ij,ξ’ijは、0ではない。また、記号×が2つの小さな方の値を表す場合には、q>1であり、記号×が積として定義される場合には、q>2がインプットである。

【0049】
一段目の微分方程式と三段目の差分方程式は、いずれも関数δの括弧内にx1jが存在することから、これは図5に示すニューロンx23からニューロンx11,x12への抑制に作用する。また、二段目の微分方程式と四段目の差分方程式は、いずれも関数δの括弧内にx2iが存在することから、これは図5に示すニューロンx23からニューロンx21,x22への抑制に作用する。

【0050】
数3の差分方程式を数値的に解くと、当該ニューロンつまりxijの値は、特定の振動パターンを示す。振動パターンは特に、基本周期のほぼ7倍振動の振動周期を示すことが多い。つまり、本実施例で提案する人工脳システム100は、各ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23が、平均では約7倍振動の振動周期を繰り返しながら、基本神経回路10における結合状態が変化していくことで、学習や記憶や連想や判断を行なう。特に、当該基本神経回路10の固有振動に近い振動数の入力信号が入力されると、基本神経回路10で同期や共振が起こりやすくなり、このときネットワークとしての結合強度が増加する。これによって、例えば基本神経回路10における学習能率を高くすることができる。なお、ここでいう基本周期とは、例えば時刻Nの1つのステップである。

【0051】
ここで、上記数3とは無関係ではあるが、原子核内部システムや、生体システムや、メガスコピックシステムや、宇宙システムでの様々な粒子質量の必然性(inevitability)を説明するために、別の物理的モデルを取り入れる。

【0052】
準安定性原理と一般化された不確定性原理に基づく統計流体力学は、1:1の対称サイズ比の必然性や、黄金比や白銀比などの非対称サイズ比の必然性を明らかにしており、これは自然界における様々な対をなす柔軟な粒子に現れるものである。このような対称性と非対称性との融合は、生命システムおよび非生命システムにおいて、ピコからペタのスケールに渡る様々な段階にも現れるが、その理由は各システムが共通して、変形した柔軟な粒子の分割から派生していることによる。生物細胞内部で、生物的な塩基対におけるプリン(purines)やピリミジン(pyrimidine)や生物細胞のサイズについて考察すると、これらは1:1の対称性と、ほぼ1:1.5の非対称性とが融合している。これらの比率は芸術の分野で、約1:1.5の黄金比や、1:1の折り紙比に現れ、心地よさや同情的な感情を引き起すが、これは心地よさに関わる脳のニューロンやニューロン群の一部にも、ほぼ1:1.5や1:1のサイズ比があることによる。さらなる解析では、クオーク、レプトン、バリオン、メソン、原子核、生物分子、細胞、臓器、水滴、星などの生態や、自然システムにおける種々の柔軟な粒子ペアにおいて、1:1の対称比の他に、ほぼ1.27:1,1.35:1,1.39:1,1.4:1,1.41:1,1.42:1,1.43:1,1.44:1,1.71:1,1.78:1,2.1:1,2.5:1,3.6:1,および4.54:1のような非対称比を含む超魔法数の必然性を明らかにしている。

【0053】
心地よく、同情を引き起こす周波数比は、音楽[2:3(ほぼ1.44)の五音音階や、3:4(ほぼ1.35)などの音階や、5:7(ほぼ1.41)の俳句]にも現れるが、これは内耳の粒子(耳小骨)対が1:1と1:2のサイズ比を有していることに由来する。また、母音は約1.26,1.41,1.47,2.2,2.8,3.8,および4.8の周波数比を有するキーフォルマント(key formant)の組み合わせによって構成されることもよく知られている。これらの比率は、上で得られた心地良い魔法数にも近い。これは、魔法数の比率を有するニューラルネットワークが人間の脳内システムに存在し、脳外の自然界にある粒子の当該比率と共鳴することを意味する。よって心地良さとは、脳外の自然比と、脳内のニューラルネットワークとの共鳴に由来するものであることがわかる。さらに、この共鳴の心地良さが、人工脳の判断に使われる。

【0054】
次に、上記実施例に関連する人工脳システム100の変形例について説明する。本発明は、6つの基本ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23と、これらを相互に結び付けるシナプスS~Sと、による上記の基本神経回路10を、複数組み合わせて用いることも可能である。このような基本神経回路10の組み合わせを、複合神経回路と呼ぶことにする。図6および図7は、図5に示す基本神経回路10を2つ接続して得られる複合神経回路を表している。これらの各図において、図面上側の基本神経回路を第1の基本神経回路10aとし、図面下側の基本神経回路を第2の基本神経回路10bとすると、図6や図7に示す処理手段22に組み込まれた複合神経回路は、第1の基本神経回路10aの出力と第2の基本神経回路10bの入力との間を、上述したシナプスS~Sとは別な3本のシナプスS~Sで接続することにより実現される。

【0055】
基本神経回路10a,10bの接続方法は、通常接続(図6に対応)と、ひねり接続(図7に対応)の二種類が考えられる。通常接続は、基本神経回路10a,10bのなかで機能、つまり基本ネットワークにおけるトポロジーが同じニューロン同士を接続させる構成である。例えば、図6に示す通常接続では、第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx21が、シナプスSを通して第2の基本神経回路10bにおける同じトポロジーのニューロンX21と接続し、第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx22が、シナプスSを通して第2の基本神経回路10bにおける同じトポロジーのニューロンX22と接続し、第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx23が、シナプスSを通して第2の基本神経回路10bにおける同じトポロジーのニューロンX23と接続する。通常接続は、外部からの情報を記憶するのに有利な接続方法である。

【0056】
一方、図7はひねり接続を表している。ひねり接続とは、2つの基本神経回路10a,10bを結ぶシナプスの数が最低2本であって、このうち少なくとも1対(2本)のシナプスがトポロジカルに交差している接続のことである。例えば、図7に示すひねり接続では、第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx21が、シナプスSを通して第2の基本神経回路10bにおける同じトポロジーのニューロンX21と接続しているが、第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx22は、シナプスSを通して第2の基本神経回路10bにおける別なトポロジーのニューロンX23と接続し、さらに第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx23は、シナプスSを通して第2の基本神経回路10bにおける別なトポロジーのニューロンX22と接続している。すなわち第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx22と第2の基本神経回路10bにおけるニューロンX23を結ぶシナプスSと、第1の基本神経回路10aにおけるニューロンx23と第2の基本神経回路10bにおけるニューロンX22を結ぶシナプスSとが互いに交差した接続となっている。これは、心地良さを用いて連想や判断を行なうのに適している。

【0057】
このように、2つの基本神経回路10a,10bを結ぶシナプスS~Sの接続にひねりを加えることによって、基本神経回路10a,10bを多様的に相互作用させ、創造的な情報処理を行うことができる。

【0058】
以上、2つの基本神経回路10a,10bから構成される複合神経回路について、本実施例に基づく変形例の説明を行なったが、複合神経回路は3つまたはそれ以上の基本神経回路10a,10b,…から構成されていてもよい。また、複合神経回路における各基本神経回路10a,10b,…同士の接続は、すべて通常接続であるか、すべてひねり接続であるか、または通常接続とひねり接続との適当な組み合わせとすることができる。

【0059】
特に、外部からの情報を記憶するのに有利な通常接続と、創造的な情報処理を実行する上で有利なひねり接続を組み合わせることによって、記憶力と創造性を融合させ、さらに高度な情報処理をすることもできる。

【0060】
具体的には、例えば図8は、2つの基本神経回路10a,10bを通常接続した複合神経回路を示しており、基本神経回路10a,10b間で、各ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の添え字i,jが入れ替わらずに結合される。図9は、2つの基本神経回路10a,10bをひねり接続した複合神経回路を示しており、基本神経回路10a,10b間で、各ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の添え字i,jが一部入れ替わって結合される。これらの各図は、前述の図6や図7に対応するもので、基本神経回路10a,10bを構成する各ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の入力信号と出力信号がすべて図示されている。

【0061】
特に図8に着目すると、ここでは基本神経回路10aのニューロンx22と基本神経回路10bのニューロンx22とを電気的に結合するシナプスSの途中に、ニューロンNが配設され、また基本神経回路10aのニューロンx23と基本神経回路10bのニューロンx23とを電気的に結合するシナプスSの途中に、ニューロンNが配設される。このように、基本神経回路10a,10b同士をシナプスS~Sで直接接続しなくとも、当該基本神経回路10a,10bの間に、ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23とは異なる別なニューロンN,N,…を一乃至複数個介在させてもよい。これは図8に示す通常接続に限らず、図9に示すひねり接続でも同様に適用可能である。

【0062】
図10は、2つの基本神経回路10a,10bを通常接続し、別な2つの基本神経回路10c,10dをひねり接続した4つの基本神経回路10a,10b,10c,10dによる複合神経回路を示している。また図11は、2つの基本神経回路10a,10bを通常接続し、別な2つの基本神経回路10c,10dをひねり接続し、さらに別な2つの基本神経回路10e,10fをひねり接続した6つの基本神経回路10a,10b,10c,10dを備えた複合神経回路を示している。このように、処理手段22に組み込まれる基本神経回路10a,10b,…の数や接続形態は、種々変更が可能である。なお、図6~図11には図示していないが、これらの各図に示す基本神経回路10a,10b,10c,10d,10e,10fも、ニューロンx23からニューロンx12への抑制だけでなく、ニューロンx23から他のニューロンx11,x21,x22への抑制を行なう構成が組み込まれている。

【0063】
その他、基本神経回路10における6つの各ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の何れか若しくは全てを、単独の基本神経回路10あるいは複数の基本神経回路10a,10b,…の組み合わせによる複合神経回路に置き換えたニューロン群とし、入れ子状の脳内神経回路に構成することもできる。各ニューロン群がそれぞれ構成する神経回路(下位の神経回路)は、もとの神経回路、つまり上位階層の基本神経回路10と同じトポロジーを持つ神経回路を用いてもよいし、もとの神経回路とは異なるトポロジーを持つ神経回路であってもよい。例えば、上位階層の神経回路は高周波の電気信号を出力するものとし、一方下位の神経回路は低周波の電気信号を出力することもできる。このように、ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23をニューロン単体ではなくニューロン群とすることで、基本神経回路10を階層的にして、より直観的な判断を下すことができる。また、図8に示すニューロンN,Nについても、ニューロン単体若しくはニューロン群で構成することができる。

【0064】
基本神経回路10a,10b,…同士を接続するシナプスの一部は、学習の初期段階にどのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23とも接続しないシナプスであってもよい。最初にどのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23とも接続していないシナプスの最適な接続状態を、処理手段22が既に知られた遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて探索していくことができる。つまり、本実施例におけるシナプスの一部は、はじめどのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23とも接続していないものとし、遺伝的アルゴリズムによる遺伝組み換えと突然変異の効果によって、そのシナプスの接続状態を確率的に変異させていくこともできる。そのGAの適合度には、前述した共鳴度合いを用いた「心地良さ」を使用する。

【0065】
また、6つのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23から出力される濃度(信号強度)の比がある一定の値を超えると、単独の基本神経回路10や基本神経回路10a,10b,…を組み合わせた複合神経回路が、オーバーヒートしたりクラッシュしたりすることが考えられる。このような場合を想定して、本実施例の処理手段22は、上記数3で算出される濃度の比を取った値を用いて、各ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23が発散やダウンする直前に、シナプスS~Sの結合強度のパラメータαijについて、その全体あるいは一部をそれまでよりも下げ、基本神経回路10や複合神経回路による各種神経回路を冷却させるように構成することができる。具体的にはシナプスS~Sの全体、あるいは一部に結合強度αijがほぼゼロになる時間を設け、人工脳システム100が興奮しすぎて破たんしないように工夫する。またこれは、ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23が、前述のようなニューロン群である場合にも同様に適用される。つまりこうした処理手段22の構成は、各種神経回路の冷却材としての機能を備えることを可能にする。

【0066】
本発明で提案する上記実施例の人工脳システム100には寿命が存在しない。つまり、本発明の神経回路を実現しているハードウェア(処理手段22)が故障したとしても、新しいハードウェアに故障前の人工脳の状態をインストールすれば、神経回路を半永久的に維持することができる。したがって、例えば人工脳システム100に学習を繰り返させ、脳内のネットワークを改善し続ければ、本発明の人工脳システム100を半永久的に成長させ続けることができる。

【0067】
以上のように、上記実施例では、コンピュータによる人工天才頭脳を、次の構成要素を備えた人工脳システム100として提示している。

【0068】
・基本神経回路10によるニューラルネットワークの標準パターン。このネットワークは、3~6つの人工細胞としてのニューロン単体若しくはニューロン群からなるニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23を含む(図1,図2,図5を参照)。それぞれのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23は、そこに入る入力信号と、そこから出る出力信号との関係が、信号強度の濃度の比として数3で規定される。

【0069】
・基本神経回路10によるネットワーク全体に入る入力信号と、そこから出る出力信号(図2および図5を参照)。これは信号入力手段20と、信号出力手段24と、シナプスS~Sと、ニューロンxijにより構成される。

【0070】
・基本神経回路10a,10b,…によるネットワークが複数結合したコンポジットサイクルの複合神経回路(図6~図11を参照)。例えば、図6や図7に示す複合神経回路では、基本神経回路10a,10bによる標準ネットワークを二重化したものを示しており、この二重標準ネットワークの入力側ニューロンをxijとし、出力側ニューロンをXijとしたときに、入力側ニューロンxijから出力側ニューロンXijへの入力は、出力の最終合計としてxij+βijij、或いはβijij×Xij(ここでの×は、○の中に×がついた記号)となる。ここでβijは、結合強度を制御するための任意定数である。また、それぞれの基本神経回路10a,10bについて、一方の基本神経回路10aを構成するニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23と、他方の基本神経回路10bを構成するニューロンX11,X12,X13,X21,X22,X23との結合が、トポロジー的に平行した状態で繋がっていない部分が存在するようにする。なお、2つの基本神経回路10a,10b間のニューロンが全て結合していなくてもよい。

【0071】
・基本神経回路10a,10b,…の入力信号や、出力信号や、内部信号は、パルス若しくは連続的に増減するものとし、結合強度βijは基本神経回路10a,10b,…間で異なるものがある。

【0072】
・上記神経回路のシステムの中には、より大きなネットワークを構築するのに、その一部がさらに別な階層化された集合群となるものがある。それらは、参考文献1~3における4モード(quadri-modal)の人工直観方程式に対応する。

【0073】
・ニューロン同士の結合強度αijは、時間的に変化するが、ランダムに変化する部分が存在する(参考文献2,4,5を参照)。これは、遺伝的アルゴリズム(GA:非特許文献1を参照)でいう交叉・突然変異にも相当する。

【0074】
・上記神経回路のシステムには、上述した数3の右辺において、供給される単位時間当たりのエネルギー量の制約と散逸が、それぞれパラメータεijとパラメータφとして考慮される。

【0075】
・上記神経回路のシステムは、特定の周波数の振動(1:1や約2:3を含む超魔法数の比に近いもの)を生成する確率が高い。そのため、これらの周波数を有する信号が入力すると、システムが動機や共振を起こしやすく、この時にネットワークとしての結合強度も増加させる。これは脳が興奮状態、或いは心地良く感じている状態であり、この共振の強さを適合度と呼ぶ(GA中の自己複製に相当する)。この値と人工直感方程式の予測値とを用いて、GAの交叉・突然変異、複製の量を調節する。

【0076】
・各ニューロンX11,X12,X13,X21,X22,X23において、信号が出力として送出されるか否かを決定する閾値は、各結合の強さ(数3中のパラメータや結合強度βij)によって生み出される時間遅れが無限大になるか否かで決まる。

【0077】
・上記神経回路のシステム全体、或いはシステムの一部は、上述した結合強度αijや結合強度βijがそれまでよりも弱く、ほぼゼロになる時間を設ける。これは、人工脳システム100が興奮しすぎて破たんしないために必要であり、生命DNAのイントロンに相当する(参考文献3を参照)。

【0078】
・各結合パターン(結合定数)とその結合強度の初期条件や境界条件は、本能や暗黙知に相当する。

【0079】
・上記神経回路のシステムには、自律神経系(求心性と遠心性、交感神経と副交感神経)に相当する直鎖ネットワーク部分が存在する。

【0080】
参考文献1:Naitoh, K.、Spatiotemporal structure: common to subatomic systems, biological processes, and economic cycles.、J. of Physics, Conf.、Ser. 344.、(2012).
参考文献2:Naitoh K.、Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics Vol.15、No.1、pp.87-133.、(1998).
参考文献3:Naitoh, K.、Introns for Accelerating Quasimacroevolution、JSME International Journal、Series C、Vol.41、No.3: 398-405.、(1998).
参考文献4:Naitoh, K.、Onto-neurology. Proc. of JSST2011、Int. Conf. Modeling and Simulation Technology、Tokyo、322-327.、(2011).
参考文献5:Naitoh, K.、Onto-biology: A Design Diagram of Life、Rather Than Its Birthplace in the Cosmos. J. of Cosmology、5、999-1008.、(2010).

【0081】
図6および図7に示す二種類の複合神経回路について、試験を行なった。図12は、図7に示すひねり接続のパターンで、上側の基本神経回路10aから下側の基本神経回路10bへの信号強度(濃度)の比を時間経過で示し、図13は、同じく図7に示すひねり接続のパターンで、下側の基本神経回路10bからの出力となる信号強度(濃度)の比を時間経過で示している。

【0082】
ここで重要なのは、βij=0.3としたときに、図7に示す2つの基本神経回路10a,10bをひねり接続した複合神経回路において、数3で得られる濃度の比に関する数値計算の結果が、様々な波長(周波数)の離散比を表している振動を含んでいる、という点にある。図13では、2番目のネットワークである基本神経回路10bの最終出力端に、魔法数に含まれるほぼ1.44:1,1.78:1,2.5:1,および3.6:1の比が現れる一方で、図12では、第1のネットワークである基本神経回路10aから周期的な振動が現れる。なお、この試験では、α11=1.0,α12=1.0,α13=1.0,α21=1.0,α22=1.0,α23=1.5,ξ11=0,ξ12=1,ξ13=0,ξ21=0,ξ22=0,ξ23=0,βij=0.3として、各パラメータを設定している。

【0083】
図示しないが、βij=0.5にパラメータを変更した試験では、ほぼ1.24と1.44の魔法数を有する最終出力となる。魔法数は、粒子モデルと数3で算出される濃度の比の両方に現れるが、これは何れも数学的に類似しているためである。また、図6に示した通常接続での基本神経回路10bから最終出力は、図7に示したひねり接続よりも魔法数が少なくなることが試験で判った。

【0084】
したがって、図7に示したひねり接続によるネットワークの繋げ方は、順次記憶素子(シリアルメモリ)として利用することが基本的に可能であって、当該素子は高速で多様性のある学習や判断を可能にする。これが可能となる理由は、自然界の離散粒子のサイズ比と、脳内のニューラルネットワークのサイズ比との相互作用によって共鳴が起こりやすくなる一方、この共鳴によって心地よさが生まれ、つまり生命体の適合度の値が高くなるからである。コンピュータは1と0の信号だけを用いて、自然界のあらゆる粒子サイズを記述することができるので、学習や思考をするには長い時間が必要である。前述の魔法数は、パラメータβijの限られた範囲に対して現れる一方、パラメータβijが他の範囲にある場合は、躁欝状態や死のように、魔法数での振動が頻繁に停止することになる。

【0085】
以上のように、本実施例における人工脳システム100は、図5に示すように、3つ以上で好ましくは6つの複数のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23と、そのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23のうち少なくとも3つのニューロンを常に接続する回路内シナプスとしてのシナプスS~Sからなる基本神経回路10を備えている。基本神経回路10は、シナプスS,Sによるニューロンx11,x21,x22間の結び付きがトポロジカルに非対称なネットワークパターン1と、シナプスS,S3,,Sによるニューロンx12,x13,x21,x22,x23間の結び付きがトポロジカルに対称なネットワークパターン2,3が融合して構成され、6つのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23のうち少なくとも1つの例えばニューロンx23は、基本神経回路10を流れる電気信号の強度を抑制する抑制ニューロンとして構成され、その電気信号の強度にランダム或いはランダムに近い計時変化が含まれるように、各々のシナプスS~Sが構成される。そして、前記6つのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の全てまたは一部に対して、外部からの入力信号をそれぞれ取り込ませる信号入力手段20と、6つのニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の全てまたは一部に対して、外部へ出力信号をそれぞれ出力させる信号出力手段24とを備えて構成される。

【0086】
この場合、本物の生体に近い構成の基本神経回路10を、生分子ネットワークの標準パターンとして応用することが可能になるため、基本神経回路10を構成する3つ以上の複数のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23のうち少なくとも一つのニューロンに電気的な入力信号を与えて、そこから電気的な出力信号を得ることで、本発明の人工脳システム100を、生体における脳神経科学の様々な解明に利用することができる。したがって、より自然で、創造性のある情報処理の実現を可能にした人工脳システム100を提供できる。

【0087】
また、ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の個数を6つにすることで、より生体に近い神経回路が実現され、脳神経科学の様々な解明をより精度よく実現することができる。

【0088】
さらに、複数のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23はすべて互いにシナプスS~Sによって接続され、信号入力手段20は複数のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の全てに対して、外部からの入力信号をそれぞれ取り込ませ、信号出力手段24は前記複数のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の全てに対して、外部へ出力信号をそれぞれ出力させる構成とするのが好ましい。

【0089】
複数のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の全てに対して、信号の出入力をさせることによってニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23とシナプスS~Sとによるネットワークをフルに活用し、情報処理を効率よく行うことができる。

【0090】
また本実施例では、ニューロンxijが時刻Nに発する電気信号の強度をxNij(但し、i,jは前記ニューロンを識別する添え字であり、i=1~2,j=1~3とする。)として、ニューロンxij同士の結合強度を特徴付けるパラメータをαijとし、ニューロンxijから供給される電気信号の強度を抑制する程度を制御するためのパラメータをξijとし、ニューロンxijに入力する電気信号の強度の消費速度を特徴つけるパラメータをεijとし、ニューロンxijから供給される電気信号の強度の散逸を表すパラメータをφとし、上記数3に示す記号×が2つの小さな方の値を表す場合には、q>1であり、記号×が積として定義される場合には、q>2であり、前記パラメータαij,ξij,εij,φは定数だけでなく、時間変化をしない定数を含む決定論的時間変化の項αij,ξij,εij,φと、ランダム或はランダムに近い確率論的時間変化の項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’との和であり、前記項αij,ξij,εij,φや前記項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’は、それらのそれぞれの内3つまでは0であることも可能としたときに、ニューロンxijから発する電気信号の時間変化が上記数3によって定まるように、基本神経回路10を構成している。

【0091】
この場合、数3における各種のパラメータを正しく設定することで、各ニューロンxijの信号強度の変化を望ましい値に制御することが可能となる。また、項αij,ξij,εij,φや項α’ij,ξ’ij,ε’ij,φ’は、それらの内3つまでを0とすることも可能である。さらに、非線形の項α’ij,ξ’ij,ε’ijは、線形な項φ’とは異なる重要な効果があり、これによって創造的な情報処理が実現される。

【0092】
また、ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の少なくとも一つは、単体のニューロンとしてではなく、複数のニューロンを互いにニューロン内シナプスで接続するニューロン群で構成することも可能である。

【0093】
この場合、様々な形態のニューロン群を、本物の生体に近い基本神経回路10に組み入れることが可能になる。

【0094】
特に、ニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23の少なくとも一つをニューロン群とした構成では、そのニューロン群が基本神経回路10で構成されるようにしてもよい。

【0095】
つまり、ニューロン群を基本神経回路10によるフラクタル的な入れ子階層構造とすることで、より直観的な判断を人工脳システム100として下すことが可能となる。

【0096】
また本実施例では、特に図6~図11に示すように、基本神経回路10a,10b,…を複数接続した複合神経回路を備え、基本神経回路10a,10b,…を互いに接続する回路間シナプスとしてのシナプスS~Sのうち、少なくとも1対の例えばシナプスS,Sがトポロジカルに交差して構成される。

【0097】
このように、複合神経回路を構成する複数の基本神経回路10a,10b,…が、トポロジカルに交差するシナプスS,Sによって多様的に相互作用することで、人工脳システム100として、ここちよさ(大和比1:1や、2:3付近の黄金比・白銀比を含む超魔法数の周波数)を基準として、さらに創造的な情報処理を行なうことが可能となる。

【0098】
また、上記実施例の人工脳システム100は、個々のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23が発散若しくはダウンしないように、回路内シナプスであるシナプスS~Sや、ニューロン内シナプス、或いは回路間シナプスであるシナプスS~Sの結合強度に関するパラメータαij若しくはパラメータβijを、それまでの値よりも弱くするか、弱くする時間帯を設けるように構成されている。

【0099】
この場合、パラメータαijやパラメータβijを適切に調整することで、個々のニューロンx11,x12,x13,x21,x22,x23が発散したり停止したりせず、人工脳システム100が興奮しすぎて破たんしないように工夫することができる。つまり当該構成は、基本神経回路10や複合神経回路の冷却材としての機能を備えることができる。

【0100】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施しすることが可能である。例えば、上述した基本回路10の全ての機能をコンピュータに組み込むのではなく、一部を電子回路で構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の人工脳システムで生成される機能として、(1)学習と記憶、(2)心地良さや恐怖感の程度の測定、(3)環境認知、(4)直観的な判断、などに利用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 非対称なネットワークパターン
2,3 対称なネットワークパターン
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f 基本神経回路(複合神経回路)
20 信号入力手段
24 信号出力手段
11,X11 ニューロン
12,X12 ニューロン
13,X13 ニューロン
21,X21 ニューロン
22,X22 ニューロン
23,X23 ニューロン
~S シナプス(回路内シナプス、ニューロン内シナプス)
~S シナプス(回路間シナプス)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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