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明細書 :つまずき予測検知システム及びつまずき防止システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-164477 (P2015-164477A)
公開日 平成27年9月17日(2015.9.17)
発明の名称または考案の名称 つまずき予測検知システム及びつまずき防止システム
国際特許分類 A61H   3/00        (2006.01)
FI A61H 3/00 B
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-040006 (P2014-040006)
出願日 平成26年3月2日(2014.3.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人 日本機械学会、日本機械学会2013年度年次大会 DVD-ROM,J241031,平成25年9月7日
発明者または考案者 【氏名】藤江 正克
【氏名】小林 洋
【氏名】中山 正之
【氏名】中島 康貴
【氏名】松本 侑也
【氏名】安藤 健
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114524、【弁理士】、【氏名又は名称】榎本 英俊
審査請求 未請求
要約 【課題】実際の歩行時における使用者のつまずきの発生を事前に予測し、つまずきによる使用者の転倒防止に有用となるシステムを提供すること。
【解決手段】つまずき予測検知システム11は、歩行時における使用者の脚部の動きに関する脚データを取得する脚データ取得手段14と、脚データ取得手段14で取得された脚データから、使用者の進行方向先に位置する段差での当該使用者のつまずきの発生可能性を判別するつまずき発生判別手段15とを備えている。脚データ取得手段14では、脚データとして、使用者の膝関節高さ及び大腿部を振り上げる際の当該大腿部の角速度である大腿部振り上げ角速度が計測される。つまずき発生判別手段15では、段差から手前の所定の離間距離に位置する判別位置での前記脚データと、前記段差に関する段差情報とから、当該段差でのつまずきの発生を推定する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
使用者の歩行中に、将来的なつまずきの発生を予測検知するつまずき予測検知システムにおいて、
歩行時における前記使用者の脚部の動きに関する脚データを取得する脚データ取得手段と、前記脚データ取得手段で取得された前記脚データから、前記使用者の進行方向先に位置する段差での当該使用者のつまずきの発生可能性を判別するつまずき発生判別手段とを備え、
前記脚データ取得手段では、前記脚データとして、前記使用者の膝関節高さ及び大腿部を振り上げる際の当該大腿部の角速度である大腿部振り上げ角速度が計測され、
前記つまずき発生判別手段では、前記段差から手前の所定の離間距離に位置する判別位置での前記脚データと、前記段差に関する段差情報とから、当該段差でのつまずきの発生を推定することを特徴とするつまずき予測検知システム。
【請求項2】
前記つまずき発生判別手段は、前記使用者の歩行動作に基づいて事前に取得した種々の事前取得データが記憶された記憶部と、前記段差情報を検出する段差検出用センサと、前記記憶部に記憶された前記事前取得データ、前記段差検出用センサで検出された前記段差情報、及び前記脚データ取得手段で取得した前記判別位置での前記脚データに基づいて、前記段差でのつまずきの発生可能性の有無を判定する判定部とを備えたことを特徴とする請求項1記載のつまずき予測検知システム。
【請求項3】
前記判定部では、前記段差検出用センサで検出した前記段差の高さに基づく前記事前取得データを比較対象データとして前記記憶部から抽出し、前記使用者の歩行時に、前記判別位置で取得した前記脚データと、前記離間距離に対応する前記比較対象データとを対比して、前記つまずきの発生可能性の有無を判定することを特徴とする請求項2記載のつまずき予測検知システム。
【請求項4】
前記判定部では、前記脚データ取得手段で取得された前記大腿部振り上げ角速度の検出値に拘らず、前記判別位置で取得した前記膝関節高さ及び前記大腿部振り上げ角速度の少なくとも何れか一方が、前記比較対象データを下回っているときに、前記つまずきの発生可能性が有ると判定されることを特徴とする請求項3記載のつまずき予測検知システム。
【請求項5】
前記記憶部には、前記使用者が事前に様々な高さのブロックを昇段したときに、当該ブロックの高さ毎に得られた時系列の前記脚データと、どの高さのブロックの当該脚データかの判別が可能になる前記ブロックの手前の距離に相当する前記離間距離とが記憶されていることを特徴とする請求項2、3又は4記載のつまずき予測検知システム。
【請求項6】
請求項1記載のつまずき予測検知システムと、当該つまずき予測検知システムの予測検知に基づいて、歩行時における使用者のつまずきの発生を回避させるつまずき回避動作支援システムを備えたつまずき防止システムであって、
前記つまずき回避動作支援システムは、前記使用者に装着され、当該使用者の脚部の動作支援を可能に動作する下肢装具と、つまずきの発生が予測検知されたときに、当該つまずきの発生を回避するように前記下肢装具の動作を制御する制御装置とを備えたことを特徴とするつまずき防止システム。
【請求項7】
前記下肢装具は、前記制御装置からの指令によって動作するアクチュエータを所定の素材に埋め込んでなる服型に設けられ、
前記アクチュエータは、前記素材に対して並列に複数埋め込まれた線状の形状記憶合金からなり、前記制御装置からの通電による長さ方向への収縮によって前記素材を変形させ、当該素材の変形に伴って発生する力を利用して、前記使用者の脚部の動作支援を行うことを特徴とする請求項6記載のつまずき防止システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、つまずき予測検知システム及びつまずき防止システムに係り、更に詳しくは、使用者の歩行時において、その進行方向の先に存在位置する段差での使用者のつまずきの発生を予測し、当該つまずきによる使用者の転倒を防止することに寄与するつまずき予測検知システム及びつまずき防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自立歩行可能な高齢者、脳卒中患者等の歩行中における転倒が大きな問題となっている。すなわち、これらの者は、思いがけないつまずきへの対応能力が低下しているために、通常の者であれば転倒を招来しないような段差であっても、当該段差の通過時における転倒発生のリスクが高くなる。このような高齢者等の転倒は、以降の日常生活に支障を及ぼすような重度の骨折、脱臼、打撲等の外傷を引き起こすことが多い。このため、高齢者や脳卒中患者が増加している近時においては、このようなつまずきへの対応能力が低下した者の歩行時の転倒を防止する効果的なシステムが一層求められている。
【0003】
ところで、特許文献1には、使用者の脚部に装着して当該脚部に運動補助力を付加する歩行補助装置が開示されている。この歩行補助装置は、歩行時につまずいて歩行姿勢が不安定になり始めたときの使用者の筋肉の反応を検出し、当該検出結果に基づき、転倒を回避するための補助力を使用者の脚部に付与するようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、使用者の歩行動作におけるつまずきリスクを評価する装置が開示されている。このつまずきリスク評価装置では、使用者の歩行動作時の床反力を床反力計により計測し、当該床反力の計測値から、使用者の歩行時のつま先クリアランスを推定し、当該つま先クリアランスに基づいてつまずきリスクを評価するようになっている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-61460号公報
【特許文献2】特開2013-138783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の歩行補助装置にあっては、大掛かりなロボット下肢装具として構成されており、使用者一人で装着し難いという不都合がある。また、当該歩行補助装置は、使用者がつまずいてからパワーアシストを行うため、つまずきの状況によって多様となる使用者の姿勢変化や重心変化に対し、全ての転倒回避を効果的に行うことは困難であり、使用者の歩行時における転倒回避を必ずしも十分に行えるとは言えない。また、前記特許文献2のつまずきリスク評価装置にあっては、使用者の床反力を計測しなければならず、歩行面に床反力計を設置する必要があるため、ある限られた範囲内での使用者の歩行に限られ、屋内外での実際の使用者の自由歩行に対応できない。つまり、当該つまずきリスク評価装置では、使用者が、床反力計が存在する一定の歩行範囲で行った歩行によって、すべての歩行動作のつまずきのリスクを評価するものであり、現在行っている使用者の歩行状況が加味されないため、実際の歩行時のつまずき発生の可能性を正確に予測することができない。また、前記つまずきリスク評価装置は、使用者に対して、自己の歩行動作の態様から、つまずきのリスクを教示するに過ぎず、実際の歩行時でのつまずきの発生を回避するように支援するものではない。
【0007】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、実際の歩行時における使用者のつまずきの発生を事前に予測し、つまずきによる使用者の転倒防止に有用となるつまずき予測検知システム及びつまずき防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、使用者の歩行中に、将来的なつまずきの発生を予測検知するつまずき予測検知システムにおいて、
歩行時における前記使用者の脚部の動きに関する脚データを取得する脚データ取得手段と、前記脚データ取得手段で取得された前記脚データから、前記使用者の進行方向先に位置する段差での当該使用者のつまずきの発生可能性を判別するつまずき発生判別手段とを備え、前記脚データ取得手段では、前記脚データとして、前記使用者の膝関節高さ及び大腿部を振り上げる際の当該大腿部の角速度である大腿部振り上げ角速度が計測され、前記つまずき発生判別手段では、前記段差から手前の所定の離間距離に位置する判別位置での前記脚データと、前記段差に関する段差情報とから、当該段差でのつまずきの発生を推定する、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明よれば、比較的コンパクトな構成により、使用者の歩行時において、進行方向先に位置する段差の手前の判別位置で、このままの歩行動作であれば当該段差につまずく可能性が有るか否かを推定することができる。そして、当該推定に基づき、使用者に自己の歩行動作の状態を認知させ、段差手前で、脚部の動作改善を使用者に促すことができ、自らの前記段差でのつまずきによる転倒回避に有用となる。また、アクチュエータを含む下肢装具と併用することにより、進行方向先の段差による将来的な使用者のつまずきの発生がつまずき予測検知システムで検知された場合に、下肢装具で使用者の脚部の動作をアシストすることにより、前記段差での使用者のつまずきを回避することができ、当該つまずきによる使用者の転倒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係るつまずき防止システムの構成を示すブロック図。
【図2】つまずき発生判別手段でのつまずきの発生可能性の有無を判定する手順を示すフローチャート。
【図3】下肢装具の概略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0012】
図1は、本実施形態に係るつまずき防止システムの構成を示すブロック図である。この図において、前記つまずき防止システム10は、使用者の歩行中に、将来的なつまずきの発生を予測検知するつまずき予測検知システム11と、つまずき予測検知システム11によりつまずきの発生が予測検知されたときに、当該つまずきを回避可能に使用者の歩行動作を支援するつまずき回避動作支援システム12とにより構成される。

【0013】
前記予測検知システム11は、歩行時における使用者の脚部の動きに関する脚データを左右それぞれで取得する脚データ取得手段14と、脚データ取得手段14で取得した脚データから、使用者の歩行時におけるつまずきの発生可能性を判別するつまずき発生判別手段15とを備えている。

【0014】
前記脚データ取得手段14は、使用者の膝関節高さを計測するための膝関節高さ検出用センサ17と、当該膝関節高さの単位時間当たりの変化に対応する大腿部の振り上げ角速度を計測するための大腿部角速度検出用センサ18とにより構成される。

【0015】
膝関節高さ検出用センサ17としては、使用者の左右両膝付近に装着される位置姿勢センサからなり、使用者の左右両側の膝関節の高さをそれぞれ一定時間毎に計測可能となっている。また、大腿部角速度検出用センサ18としては、使用者の腰部の左右両側や左右大腿部等に装着される角度センサの計測値に基づいて、使用者の左右両側の大腿部振り上げ角度をそれぞれ一定時間毎に計測可能となっている。以上の各センサ17,18は、公知のものが用いられ、本発明では、特に限定されるものではなく、使用者の膝関節高さ、大腿部振り上げ角速度を検出できる限り、種々のセンサを用いることができ、また、使用者に直接装着するものに限定されない。

【0016】
前記つまずき発生判別手段15は、事前に取得した使用者の歩行動作に関する種々の事前取得データが記憶された記憶部20と、使用者の歩行時に、その進行方向の先に位置する歩行面で突出する段差に関する段差情報を検出する段差検出用センサ21と、記憶部20に記憶されたデータ、段差検出用センサ21で検出された段差情報、及び脚データ取得手段14で取得した使用者の現在の歩行動作における脚データに基づいて、進行方向先の段差でのつまずきの発生可能性の有無を判定する判定部22とを備えている。

【0017】
前記記憶部20では、当該使用者に、次のような歩行動作を事前に行って貰い、そのときの事前取得データがデータベースとして予め記憶される。すなわち、使用者には、前記段差を想定して歩行面に設置されたブロックに対して、その手前側から歩行を開始して昇段する歩行動作を行って貰う。この歩行動作は、高さの異なる複数のブロックそれぞれについて複数回ずつ行って貰う。そして、各歩行動作中の各時刻において、膝関節高さと大腿部振り上げ角速度とが、膝関節高さ検出用センサ17及び大腿部角速度検出用センサ18により計測され、当該時系列の脚データがブロックの高さ毎に記憶部20に記憶される。すなわち、ここでは、予め設定或いは計測された使用者の歩行速度に基づき、ブロックの手前側の領域において、ブロックからの距離が相違する複数位置でそれぞれ得られた膝関節高さ及び大腿部振り上げ角速度が、得られた各位置に対応させた状態で、ブロックの高さ毎に記憶部20に記憶される。そして、各ブロックの高さそれぞれについて複数得られた時系列の脚データについて、統計学上の有意差検定(t検定)が行われ、当該脚データがどの高さのブロックにおけるデータかを判別可能となるブロック手前の距離に相当する離間距離が求められ、当該離間距離が記憶部20に記憶される。この離間距離は、前記有意差検定の結果、左右の脚部それぞれについて、また、膝関節高さ及び大腿部振り上げ角速度それぞれについて、一部若しくは全部が同一となる値、又は全てが異なると値として設定される。以上、記憶部20では、予め取得した使用者の各ブロックの高さそれぞれについて得られた時系列の脚データと、前記離間距離とが記憶される。

【0018】
前記段差検出用センサ21は、使用者に装着され、使用者の前方一定範囲の段差の存在、当該段差の位置、及び当該段差の歩行面からの高さ等の段差情報を検出可能に設けられており、超音波、画像処理、或いは光学的な手段によって前記段差情報を検出可能な公知のセンサが用いられる。なお、本発明にあっては、使用者の歩行時において前方に存在する前記段差情報を検出できる限り、種々のセンサを用いることができ、また、使用者に直接装着するものに限定されない。

【0019】
前記判定部22では、使用者の歩行時に、段差検出用センサ21で段差が検出されると、当該段差の進行方向手前側に位置する歩行面の領域のうち、記憶部20に記憶された離間距離を用いて、段差からの当該離間距離の地点を当該段差でのつまずきの発生可能性を判別するための判別位置とし、当該判別位置に使用者が達した際の膝関節高さ及び大腿部振り上げ角速度と、段差の高さとから、当該段差でのつまずきの発生を推定するようになっている。

【0020】
すなわち、前記判定部22では、図2のフローチャートに示される手順により、段差でのつまずきの発生可能性について判定される。先ず、段差検出用センサ21によって、段差情報が取得される(ステップS101)。すなわち、ここでは、使用者の進行方向先に段差の存在が検出されると、当該段差の位置及び高さに関する情報が得られる。なお、ここでの段差の検出タイミングは、前記判別位置よりも手前で行われる。次に、段差検出用センサ21で得られた段差の高さに基づき、記憶部20から最適となる事前取得データが抽出される(ステップS102)。すなわち、ここでは、記憶部20に記憶されている前記各ブロックの脚データのうち、膝関節高さの最大値が当該段差の高さに最も近いブロックの脚データが選択され、且つ、当該脚データの中で、ブロックから前記離間距離分手前となる位置における膝関節高さの値及び大腿部振り上げ角速度の値が、前記段差でのつまずき判定を行うための比較対象データとされる。

【0021】
そして、以下の判定が左右両脚それぞれについて行われる。先ず、使用者の歩行時に膝関節高さ検出用センサ17により逐次検出される膝関節高さのうち、段差手前の前記判別位置における値と、膝関節高さに関する前記比較対象データの値とについて対比され、実際の歩行時の前記判別位置での膝関節高さが適正か否かの判定が行われる(ステップS103)。その結果、前記判別位置での膝関節高さの値が前記比較対象データの値よりも下回っているときは、現時点での使用者の歩行動作は、段差を乗り越えられず適正でないと判断され、つまずきの発生可能性が有ると判定される。一方、前記判別位置での膝関節高さの値が前記比較対象データの値以上のときは、次に、前記判別位置での大腿部振り上げ角速度に基づく判定が行われる。すなわち、前記判別位置における大腿部振り上げ角速度の値と、大腿部振り上げ角速度に関する前記比較対象データの値とについて対比され、実際の歩行時の前記判別位置での大腿部振り上げ角速度が適正か否かの判定が行われる(ステップS104)。その結果、前記判別位置での大腿部振り上げ角速度の値が前記比較対象データの値よりも下回っているときは、現時点での使用者の歩行動作は、段差を乗り越えられず適正でないと判断され、つまずきの発生可能性が有ると判定される。一方、前記判別位置での大腿部振り上げ角速度の値が前記比較対象データの値以上のときは、段差でのつまずきの発生の可能性が無いと判定される。つまり、前記判別位置での歩行時の膝関節高さ及び大腿部振り上げ角速度の値が、何れも前記比較対象データの値以上になっているときに、段差でのつまずきの発生可能性が無いと判定される。

【0022】
前記つまずき回避動作支援システム12は、使用者の下半身に装着されて当該使用者の脚部の動作支援を可能に動作する下肢装具24と、つまずきの発生が予測検知されたときに、つまずきの発生を回避するように下肢装具24の動作を制御する制御装置25とを備えている。

【0023】
前記下肢装具24は、図3に示されるように、使用者の下半身を覆う二股の外衣状(服型)に設けられ、特に、本実施形態では、使用者が履くことにより、使用者の腰部から膝上までを覆うスパッツ状をなしている。この下肢装具24は、シリコーンを含む所定の素材26に、制御装置25からの指令によって動作するアクチュエータ27が埋め込まれており、アクチュエータ27の動作によって素材26を変形させ、当該素材26の変形に伴って発生する力を利用して、使用者の脚部の動作支援を行えるようになっている。

【0024】
前記アクチュエータ27は、素材26に並列に埋め込まれた多数の線状の形状記憶合金(SMA)からなり、ここでの形状記憶合金は、制御装置25からの通電による加熱によって長さが短くなる方向に収縮する一方で、前記通電が停止すると、元の長さに自然に復帰するようになっている。なお、素材26のシリコーンによって、形状記憶合金が外部に対して電気的に絶縁され、且つ、形状記憶合金の発生熱を使用者に伝導させ難くなっている。

【0025】
このアクチュエータ27は、素材26の上端のウエスト開口部分に沿って周方向に配置された第1部分29と、素材26の下端における左右両側の脚開口部分に沿ってそれぞれ周方向に配置された第2部分30と、素材26の前面側に左右双方に配置された第3部分31とからなる。

【0026】
前記第3部分31は、複数本の形状記憶合金が上下方向に延びて相互にほぼ平行に配置された中央領域31Aと、複数本の形状記憶合金が中央領域31Aを横切るように配置されるとともに、中央領域31Aに対して左右対称となるように配置された一対のクロス領域31B,31Bとからなる。各クロス領域31Bでは、複数本の形状記憶合金が、素材26の上端の一箇所から下方に向かって次第に相互の間隔を拡げながら延びるように配置されている。

【0027】
なお、前記下肢装具24では、形状記憶合金を挟む素材26の表裏両側の弾性を相違させると良い。これにより、形状記憶合金の少ない収縮量で、所望とする素材26の変形量を得ることができ、アクチュエータ27をより効率良く動作させることができる。その他、形状記憶合金の配置については、前述と同様の作用を奏する限りにおいて、種々の態様を採用することができる。

【0028】
また、下肢装具24は、スパッツ型に限らず、スボン型、レギンス型、パンツ型等、使用者の下半身に装着可能な種々の服型形状を採用できる他、前述と同様の作用を奏する限りにおいて、他のアクチュエータやロボット等からなる別構造のものを採用することもできる。

【0029】
前記制御装置25は、アクチュエータ27を構成する各形状記憶合金について、それぞれ独立して、又は、一定の領域毎に独立して通電制御を行えるようになっている。この制御装置25では、つまずき予測検知システム11により、使用者の歩行時に先の段差でつまずきの発生可能性が検知されたときに、当該検知された左右何れか一方若しくは双方の脚部をアシストするアクチュエータ27への通電がなされる。これによって、第1部分29と第2部分30が収縮して下肢装具24を使用者の脚部に密着させ、当該脚部を持ち上げる方向に第3部分31が収縮する。その結果、下肢装具24により、使用者の膝関節高さが上昇するように脚部が僅かに持ち上げられ、段差に到達したときの使用者のつまずきの発生が回避されることになる。一方、つまずき予測検知システム11にて、先の段差でつまずき発生の可能性が検知されないときは、アクチュエータ27への通電がなされず、下肢装具24による使用者への脚部の動作支援は行われない。なお、例えば、各アクチュエータ27に供給される電流の大きさは、つまずき予測検知システム11での予測検知の結果に基づいて、段差に到達した際の目標となる膝関節高さの更なる増加分を求め、当該増加分に応じて決定されるようにしても良い。

【0030】
従って、このような実施形態によれば、例えば、段差の手前300mmから200mm程度離れた手前の判別位置で取得した使用者の歩行時の脚データから、その先の段差でのつまずきの発生を予測することができ、しかも、当該予測に応じて下肢装具24で使用者の歩行動作を支援することで、使用者の段差でのつまずきを効果的に防止することができる。

【0031】
なお、前記つまずき発生判別手段15及び前記制御装置25での各種処理は、コンピュータで行うが、当該コンピュータを使用者に携行させる態様にすることを例示できる。その他、当該各種処理を、使用者から離れた場所に固定的に設置された図示しないサーバで行うこともできる。この場合、例えば、脚データ取得手段14で得られた脚データが、有線、無線、若しくはインターネット等の通信手段を介して逐次前記サーバに送信され、当該サーバで、つまずき発生判別手段15での前述の判定処理が行われる。また、この場合、前記サーバで、下肢装具24の動作の遠隔制御も可能になる。

【0032】
また、つまずき防止システム10を老人ホーム等の限られた空間に適用することもできる。この場合、使用者に、自己の位置及び速度を検出するセンサを装着して貰うことで、前記空間内での使用者の位置が判明し、また、前記空間内に存在する段差等の障害物の位置やサイズは、施設の見取り図等から既知であるため、段差等の障害物の位置やサイズを記憶部20に記憶しておけば、段差検出用センサ21を用いることなく、前述と同様、使用者のつまずき予測と、空間内での使用者へのつまずきによる転倒防止のための歩行動作支援が可能となる。

【0033】
更に、使用者が歩行動作において様々な段差を通過する度に、脚データ取得手段14で取得されたこの際の一連の脚データについて、記憶部20に追加して記憶させ、事前取得データを逐次更新可能にしても良い。このようにすると、使用者の使用回数が増える程、つまずき発生の予測検知の精度を向上させることができる。

【0034】
また、つまずき予測検知システム11は、本実施形態のようにつまずき回避動作支援システム12と併用せずに、つまずきの発生可能性を予測検知した場合に、その旨を音声や振動等によって使用者に段差手前で伝達する構成にすることもできる。この場合は、段差の手前で使用者に注意喚起がなされ、使用者自らの能力で、歩行時の膝関節を高くし、或いは、一層注意深く歩行する等の様々な対処を使用者自身で事前に行うことができ、この構成においても、段差での使用者のつまずきの発生による転倒防止に寄与できる。

【0035】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 つまずき防止システム
11 つまずき予測検知システム
12 つまずき回避動作支援システム
14 脚データ取得手段
15 つまずき発生判別手段
20 記憶部
21 段差検出用センサ
22 判定部
24 下肢装具
25 制御装置
26 素材
27 アクチュエータ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2