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明細書 :デザイン決定支援システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-157110 (P2017-157110A)
公開日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 デザイン決定支援システム
国際特許分類 G06T   7/60        (2017.01)
G06T   7/13        (2017.01)
G06T   3/00        (2006.01)
FI G06T 7/60 150S
G06T 7/60 250A
G06T 3/00 770
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-041594 (P2016-041594)
出願日 平成28年3月3日(2016.3.3)
発明者または考案者 【氏名】加藤 邦人
【氏名】寺田 和憲
【氏名】卷口 明弘
【氏名】高橋 和之
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100147038、【弁理士】、【氏名又は名称】神谷 英昭
審査請求 未請求
テーマコード 5B057
5L096
Fターム 5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CF05
5B057CH11
5B057CH16
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5B057DC09
5L096DA04
5L096EA05
5L096EA13
5L096EA15
5L096EA16
5L096EA43
5L096FA06
5L096FA09
5L096FA25
5L096FA64
5L096GA34
5L096GA59
要約 【課題】特定の物品に関して顧客が有するイメージ・嗜好を抽出し、該物品の形状等を新たな製品の仕様に反映させて、最終仕様を決定する支援システムであり、特に対象商品に対する類似品(或いは代替品)または擬似製品の最適デザインを決定する、デザイン決定支援システムを提案すること。
【解決手段】対象物の特徴点を検出して、対象物を表示するシステムであって、複数の対象物の画像を取得するステップ、前記各画像の特徴量を抽出するステップ、前記特徴量に対して主成分分析による次元圧縮を行い、得られる固有値のうち、上位から2個又は3個の固有値を選択するステップ、前記対象物を各固有値に対応する固有ベクトルと任意定数との関係式としてそれぞれの式に表すステップ、前記固有値が2個の場合には前記任意定数をそれぞれx軸、y軸として対象物の特徴を二次元上に表し、前記固有値が3個の場合には前記任意定数をそれぞれx軸、y軸、z軸として対象物の特徴を三次元上に表すことを特徴とするデザイン決定支援システム。
【選択図】図16
特許請求の範囲 【請求項1】
対象物の特徴点を検出して、対象物を表示するシステムであって、
複数の対象物の画像を取得するステップ、
前記各画像の特徴量を抽出するステップ、
前記特徴量に対して主成分分析による次元圧縮を行い、得られる固有値のうち、上位から2個又は3個の固有値を選択するステップ、
前記対象物を各固有値に対応する固有ベクトルと任意定数との関係式としてそれぞれの式に表すステップ、
前記固有値が2個の場合には前記任意定数をそれぞれx軸、y軸として対象物の特徴を二次元上に表し、
前記固有値が3個の場合には前記任意定数をそれぞれx軸、y軸、z軸として対象物の特徴を三次元上に表すこと、
を特徴とするデザイン決定支援システム。
【請求項2】
前記特徴量抽出ステップが、
各画像の輪郭線を抽出し、輪郭線の長さをt個に分割した点を特徴点とし、特徴点の座標系列を2t次元の特徴ベクトルとするステップであることを特徴とする請求項1に記載のデザイン決定支援システム。
【請求項3】
前記関係式として表すステップが、
前記固有値に対する固有ベクトルに任意定数を乗算し、前記各座標の平均ベクトルと加算することにより対象物の特定の形状をそれぞれの式として表すステップであることを特徴とする請求項2に記載のデザイン決定支援システム。
【請求項4】
さらに、前記複数の画像データの輪郭線を抽出し、各輪郭線の長さが平均になるように対象物の画像の大きさを調整すると共に、各画像の中で対象物の特定の部位が一定の位置関係になるように向きを揃えて正規化するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデザイン決定支援システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の既存品に関する顧客の嗜好を抽出し、該製品の形状・模様・色彩などを新たな製品仕様に反映させて、最終仕様を決定する支援システムであり、特に類似品(或いは代替品)または擬似製品の最適デザインを決定するデザイン決定支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造業においては次々と新たな製品を世の中に提供していかなければ、企業として存続し続けることは困難である。近年は特に製品寿命が短命化する傾向にあり、新製品の開発スピードが強く求められている。一方、顧客の要望は多様化しており、同等の機能・性能を有する製品群の中では、他社製品との差別化(いわゆる販売力)の点で、製品のデザインは極めて重要な地位を占めている。
【0003】
製品のデザイン決定プロセスとしては、例えば予め準備された多様なデザインを顧客に提示することで、顧客が自分の要望に適合する製品を選択し、その結果を元に製造業者側が製品デザインを決定するという方法がある。被服等商品では良く用いられる方法である。この方法では、製造業者側で適当にデザインの選択肢をコントロールすることによって迅速に対応することができる反面、顧客にとっては選択の幅が制限されるため、十分な満足感が得られるとは限らないという問題がある。
【0004】
また、製造業者が顧客の要望を聞き、それをもとに設計者が基本的な構造設計を行い、その結果をもとに、さらにデザイナーが複数のスケッチを描いて、再度顧客に提案し、最終的なデザインにする方法がある。量産品である場合に良く採用されるプロセスである。この方法では初期段階で顧客の要望が取り入れられているので、顧客満足度は高められるが、小ロットで製造販売される製品の場合には工数の点で必ずしも向いていない。
【0005】
具体的な提案としては、大空間構造物のデザイン形状を決定するに際して、初期設計時における大空間構造物の形状を容易に、且つ変更自在に形状解析して表示することができる大空間構造物のデザイン形状決定方法に係わるもの(特許文献1)がある。この発明によれば、表示装置に表示されるイメージしたデザイン形状の基礎となる初期形状に対して各種の解析パラメータを設定して形状解析し、デザイン形状を表示することができる。任意の初期形状を入力して解析パラメータを任意に変更自在に設定することにより、大空間構造物の種々のデザイン形状をリアルタイムで表示することができるので、自由度の大きい大空間構造のデザイン形状を容易に短時間で決定することができるというものである。
【0006】
前記大空間構造物として住宅建物における外装デザインの決定方法(特許文献2)などが提案されている。この方法によれば、住宅建物の外周面に、板壁材と外壁材とを設けることによって、異なった複数種類の外装デザインを設定することができる。そして、これらの複数種類の外装デザインの中から、顧客が外装デザインを選択できるようにしているので、住宅建物の形状、敷地環境、予算などに応じて、顧客のイメージに合った外装デザインを提供することができる。
【0007】
さらに、顧客の要求を満たすデザイン仕様を対話形式で多種多様なデザイン仕様のなかから、正確かつ迅速に選択・決定するデザイン仕様決定支援システム(特許文献3)も提案されている。この提案によれば、ディスプレイに順次表示されるイメージ画像の選択に基づいて顧客の要求を分析し、該分析結果にもとづいて前記分析結果に合致するデザイン画像をディスプレイに表示し、顧客の要求に最も合致するデザイン画像を決定することができるので、顧客の要求を満たすデザイン仕様を対話形式で多種多様なデザイン仕様のなかから、リアルタイムで正確かつ簡単な操作で選択・決定することができる。
【0008】
また、コンテンツを閲覧したユーザが想起する感情に応じたデザインを決定するという方法(特許文献4)がある。コンテンツの見出し表示などのデザインを、感情表現として利用すれば、ユーザは一見してコンテンツの内容がどのようなものであるかを判断することができるので、ユーザにとっての利便性が向上し、コンテンツ等を掲載したサイトを運営するサービス提供者側にとっても、ユーザを自らのサイトにより惹きつけ易くなるというメリットがある。
【0009】
さらには、フェイシャルマスクのカスタムデザインのためにサイジング情報を決定するシステム(特許文献5)がある。このシステムでは、人の顔とマスクとの接触点を幾つか含む像を人の顔に投影して、像の寸法・位置・向きなどを変化させ、マスクデザインを決定するものである。
【0010】
前記従来技術については、いずれも顧客の意見を製品デザインに反映させる点で共通する。ところで、一般の製品はそれが販売開始後にある程度の期間継続的に消費者に受け入れられることにより、一般消費者が「この商品の形状は?」と問われれば、特定の形状をイメージすることがある。このような形状を具体的に表現ないし提示することは、前記イメージがあくまで頭の中で想起する形状なので、非常に困難である。
【0011】
一方、模造品・代替品を製造する事業者(例えば、模型自動車、ぬいぐるみ、キャラクターグッズ、天然食品等の代替食品、食品玩具等の製造者)にとっては、「顧客の声」として或いは「製品デザイン決定の根拠」として、一般消費者の嗜好を具現化した前記形状(デザイン)に関する情報は貴重であるが、前記従来技術ではこれまで提案されていない。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開平8-137940号公報
【特許文献2】特開平11-50638号公報
【特許文献3】特開平8-30674号公報
【特許文献4】特開2014-142716号公報
【特許文献5】特表2015-509808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、特定の物品に関して顧客が有するイメージ・嗜好を抽出し、該物品の形状等を新たな製品の仕様に反映させて、最終仕様を決定する支援システムであり、特に対象商品に対する類似品(或いは代替品)または擬似製品の最適デザインを決定する、デザイン決定支援システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明に係るデザイン決定支援システムは、対象物の特徴点を検出して、対象物を表示するシステムであって、複数の対象物の画像を取得するステップ、前記各画像の特徴量を抽出するステップ、前記特徴量に対して主成分分析による次元圧縮を行い、得られる固有値のうち、上位から2個又は3個の固有値を選択するステップ、前記対象物を各固有値に対応する固有ベクトルと任意定数との関係式としてそれぞれの式に表すステップ、前記固有値が2個の場合には前記任意定数をそれぞれx軸、y軸として対象物の特徴を二次元上に表し、前記固有値が3個の場合には前記任意定数をそれぞれx軸、y軸、z軸として対象物の特徴を三次元上に表すことを特徴とする。
【0015】
主成分分析とは、多変量解析手法の1つで、多次元の情報をできる限り損なわないよう次元を圧縮し、新たな指標を作り出す方法であり、多くの変数に重みをつけて少数の合成変数(=主成分)を作ることをいう。重みのつけ方は、合成変数ができるだけ多くの元の変数の情報量を含むようにし、そのためデータの分散に着目する。分散=情報量といえるからである。
【0016】
主成分分析を行うと、各主成分(=合成変数)に対応した固有値が求められる。この固有値は主成分の分散に対応しており、その主成分がどの程度元のデータの情報を保持しているかを表している。最も大きな固有値(=分散が最大となる)に対応する固有ベクトルがx軸(=第一主成分軸)の方向となり、次に大きい固有値に対応する固有ベクトルがy軸(=第二主成分軸)の方向となる。対象物の特徴を2次元で表す際には、ここまでの処理となるが、3次元で表す際には、z軸(=第三主成分軸)の方向が3番目に大きい固有値に対応する固有ベクトルとなる。
【0017】
本発明では、対象物の特徴を2次元又は3次元で提示してデザイン決定に関するデータ収集を容易にし、対象物に関する一般人の有する概念や嗜好を具体的に把握することができる。
【0018】
本発明において前記の特徴量抽出ステップが、各画像の輪郭線を抽出し、輪郭線の長さをt個に分割した点を特徴点とし、特徴点の座標系列を2t次元の特徴ベクトルとするステップであることが好ましい。本発明における対象物は形状を有する物であるため、その形状の最も特徴的な要素である「輪郭線」を利用することが最も効果的と考えられる。
【0019】
本発明においては、前記関係式として表すステップが、前記固有値に対する固有ベクトルに任意定数を乗算し、前記各座標の平均ベクトルと加算することにより対象物の特定の形状をそれぞれの式として表すステップであることが好ましい。各座標の数値に計算式を適用することで扱うデータが画像データから数値データに変換されるので、対象物を2次元又は3次元で提示する際の演算処理が迅速に行えるからである。
【0020】
また、本発明では前記各ステップに加えて、前記複数の画像データの輪郭線を抽出し、各輪郭線の長さが平均になるように対象物の画像の大きさを調整すると共に、各画像の中で対象物の特定の部位が一定の位置関係になるように向きを揃えて正規化するステップを含むことが好ましい。取得した対象物の画像データが撮影手段、配置、大きさ等において統一されていない場合には、データ処理に際して対象物の画像データを正規化されている方が扱いやすい。特に、輪郭線を抽出してそれを分割した点を特徴点とし、座標系列として処理する場合には、必要となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のデザイン決定支援システムは、人が対象物の名称等を聞いたときに観念する対象物の形状等を、二次元又は三次元で具体的に提示して、各個人の観念を数値化することができるので、模造品・代替品を製造する事業者(例えば、模型自動車、ぬいぐるみ、キャラクターグッズ、天然食品等の代替食品、食品玩具、疑似餌等の製造者)にとっては、顧客の声を広く、また直接情報収集することもできる。本発明の支援システムにより収集された形状等の情報は、いわゆる最適化されたデザインとも言えるので、製品化プロセスにおけるデザイン決定の根拠として利用することができる。
【0022】
また、本発明のシステムは画像データを直接CPUに記憶処理して提示する必要はなく、座標等数値を演算処理して示すことができるので、スマーフォン・タブレット等の端末に簡単に表示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、取得画像から輪郭形状をトレースした状態を示す図である。
【図2】図2は、輪郭線の長さを取得するまでの例を示す図である。
【図3】図3は、対象画像の正規化を行う様子を示す図である。
【図4】図4は、模様の特徴量を抽出するために取得した対象画像の一例を示す図である。
【図5】図5は、アフィン変換による正方画像を生成した例を示す図である。
【図6】図6は、判別分析法を説明する図である。
【図7】図7は、グレースケールの画像と、判別分析法により2値化した画像を示す図である。
【図8】図8は、ノイズ除去としてクロージングまたはオープニング処理を行った例を説明する図である。
【図9】図9は、ラベリング処理の例を示す図である。
【図10】図10は、ラベリングによるノイズ除去の例を示す図である。
【図11】図11は、模様について輪郭線を分割し、特徴点を抽出した例を示す図である。
【図12】図12は、任意定数k、kの値をそれぞれ-300~300の範囲において、値を100単位で形状の変化を示した図である。
【図13】図13は、任意定数k、kの値をそれぞれ-40~30の範囲において、値を10単位で、模様のパターンの変化を示した図である。
【図14】図14は、模様のパターンを全体形状に投影した状態を示す図である。
【図15】図15は、全体形状の表現された模様の変化を示す図である。
【図16】図16は、本発明のデザイン決定支援システムの一例を被験者に提示する際の表示の一例を示す図である。
【図17】図17は、被験者が最もエビらしいと認識した形状と模様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係わるデザイン決定支援システムは、予め収集した任意の対象物に関する様々な画像データから抽出した特徴量を使用して、一般人(対象者)が特定の範囲内で変形可能な状態で提示し、当該対象者が当該対象物の名称等から想起する形状や模様等について具体的に指定したデータを収集・解析することにより、対象物のデザインを一般化することで、製品化プロセスにおけるデザイン決定の際の一根拠を提案するものである。

【0025】
例えば、対象者に対して「スイカ」を思い浮かべさせたとする。一般的には、球体に緑と黒の縦縞模様を有するものを想起すると思われるが、縦縞を形成する緑や黒の幅や色合い、各縞の外形、どの範囲でどの程度の縞模様が形成されているのか等は、必ずしも定説がある訳ではない。そして、スイカをデザインしたビーチボールを商品化したいとする事業者がいた場合に、事業者自らの判断でデザインを決定することも勿論可能であるが、より多くの顧客に商品を選択してもらうためには、顧客の持つ嗜好・観念を具体的な情報として引き出すことが望ましい。

【0026】
本発明では、このような製品化プロセスにおいて顧客の視点で客観的な情報を入手するツールとして役立つシステムを提案する。以下の説明では、天然物である「エビ」を対象物に選択した場合を例として本システムを詳述する。

【0027】
対象物の複数の画像を取得するステップでは、最終製品が「エビの代替食品」を提供することを前提として、茹でたエビであって殻を剥いた状態の尻尾の部分を写した画像に限定して、多様な撮影条件でインターネットにアップロードされた画像等を幅広く入手する。前記の前提条件は、目的とする製品によって当然異なる。同じエビであっても、製品が、エビの天ぷら、刺身、生きたエビに似せるようにした展示用の模造品、食玩用のエビ、飲食店向けの食品サンプル、疑似餌などによって、頭部から全体を表す画像が必要であったり、調理後の画像が必要になる等事情が異なるからである。

【0028】
次に取得した画像から対象物の特徴量を抽出する。ここでは、エビの輪郭線から形状に関する特徴点の取得方法について述べる。図1には、エビの画像に対して輪郭線を手動でトレースしている。このとき背景の色とエビの色との差異から自動で輪郭線を取得しても良い。このエビ画像について、尻尾の付け根部分を基準点x、尻尾の先端部分を基準点xとして、輪郭線を引き、図2に示すように、各基準点から上下に2つの輪郭線の長さl、lと、輪郭全体の長さLをそれぞれ取得する。輪郭線の長さは画素の縦・横方向の長さを1とし、斜め方向の長さを√2として計算した。

【0029】
ここで、端末による表示処理をし易くすることを考慮して画像データから数値データに変換し、輪郭線を任意の長さで分割して特徴点とし、この特徴点を線で結ぶことでエビの形状を表現することとした。当然、特徴点の数が少ないと形状が粗くなり、特徴点の数が多くなると次元数が多くなってしまうので、本発明では、次元数がサンプル数の半分以下になるように設定することを一応の規準としている。例えば、サンプル画像が200であれば、分割数40(=80次元)程度が好ましい。

【0030】
分割方法としては、例えば上下の輪郭線(l、l)の長さでそれぞれ別個に均等分割する方法や、輪郭全体(L)の長さを均等に分割する方法などが考えられる。後述のステップを通して最終的に二次元または三次元で対象物の特徴が表現されていれば、いずれの方法を用いても良い。

【0031】
前記のとおりインターネット等にアップロードされた画像を利用するような場合には、画像の撮影条件が各種バラバラであり、特徴点を抽出するにしても、各画像の大きさや配置等を正規化(平均化)しておくことが必要となる場合がある。正規化の一例としては、全体の長さの平均を求めて、各画像の輪郭の長さが平均値になるように大きさを正規化する。また配置に関しては、例えば、図3に示すように全ての座標(x,y)の平均が原点(0,0)になるように中心化を行った後、基準点x、xが水平になる角度θを求め、次式1のように回転移動を行う方法が考えられる。

【0032】
【数1】
JP2017157110A_000003t.gif

【0033】
次に模様に関する特徴量の取得方法について述べる。模様については、前記形状の輪郭を抽出するときと同様の手法以外に、以下の方法を用いることができる。

【0034】
エビの模様については、図4に示すような画像を利用すると、後の処理が行い易い。図4には、茹で上がりが真っ直ぐな状態にした剥きエビが横方向に並べられている。この図から判るようにエビの尻尾にある模様は、必ずしも同一ではないが所定の繰り返しパターンで形成されていると理解できる。そこで、繰り返し単位の模様を解析して、その単位の関係式を表すことにした。

【0035】
図5には、繰り返しパターンを抜き出すために、アフィン変換を用いて正方画像に変換する概要を示している。アフィン変換とは、画像の拡大縮小、回転、平行移動などをまとめて行列を使って変換するものである。アフィン変換を適用することで、256×266の正方画像を生成し、これを1つのサンプル画像とする。

【0036】
前記正方画像に対して、グレースケール化を行い、判別分析法を用いて2値化を行う。判別分析法とは、或るデータ群に対して、2つのクラスを定義し、定義した2つのクラスの分離度が最も大きくなるところを閾値として算出する技術であり、本発明のように画像処理分野において、画像の濃淡の2値化等に頻繁に利用されている技術である。

【0037】
クラス内分散とクラス間分散との比として表すことができる分離度が最大となる閾値を求めることで、閾値tを得ることができる。この様子を図6に示す。閾値tで2値化したとき、閾値よりも画素値が小さい方を黒画素クラスとし、その画素数をω、平均をm、分散をσとする。また、閾値よりも画素値が大きい方を白画素クラスとし、その画素数をω、平均をm、分散をσとする。画像全体の画素数をω、平均をm、分散をσとしたとき、クラス内分散は式(2)、クラス間分散は式(3)で表すことができる。全分散σは、式(4)として表すことができるため、クラス内分散とクラス間分散との比として表される分離度は式(5)のようになる。この分離度が最大となるtを求めることで、最もクラス分離の良い閾値を求めることができる。判別分析法により2値化し、図7のような結果を得た。

【0038】
【数2】
JP2017157110A_000004t.gif

【0039】
【数3】
JP2017157110A_000005t.gif

【0040】
【数4】
JP2017157110A_000006t.gif

【0041】
【数5】
JP2017157110A_000007t.gif

【0042】
次に、二値化処理の膨張・収縮処理等の画像ノイズ除去法によってノイズを除去する。膨張とは、2値化画像において注目画素近傍に黒画素がある場合に注目画素を黒画素にすることを言う。この処理を繰り返すと、穴は小さくなり、やがて消える。また、周りの画素と連結し、1つの領域となることもある。収縮とは、注目画素近傍に白画素がある場合に注目画素を白にすることを言う。この処理を繰り返すと、領域は小さくなり、小さなノイズは消え、1つの領域が分割されることもある。また、膨張してから収縮を行う方法をクロージング、収縮してから膨張を行う方法をオープニングという。必ず膨張と収縮は同じ回数を行わなければならない。クロージングは先に膨張することでノイズを連結し、吸収する。オープニングは先に収縮することでノイズを除去し、その後膨張してもそのノイズは復元されない。膨張と収縮を1回ずつ行ったクロージングとオープニングの例を図8に示す。ノイズなどを連結したい場合や、穴を除去したい場合はクロージングを行い、ノイズを除去して領域を分けたい場合はオープニングを行うと良い。

【0043】
次にラベリング処理を行う。ラベリング処理とは、画像情報を対象として、1行ずつ“1”の画素(黒画素)をサーチしてラベルを付加する処理である。また、上下・左右・斜めに連続している画素には同一のラベルを付け、同時に矩形をかたどって画素のグループ化を行う。ここでいうラベルとは連続した画素を区別する為のもので、ラベリング処理では、画素を例えばA,B,Cのような文字や文字列に置き換える。

【0044】
2値化画像に対して、ラスタスキャンとルックアップテーブルを用いたラベリングの手順について説明する。ラスタスキャンとは、画像の左上から右下まで水平に走査していく方法である。ルックアップテーブルとは、隣接するラベルの関係を記録しておく表のことである。ラスタスキャンで走査した画素が黒画素のとき、注目画素の左上、上、右上、左の4画素を参照し、ラベルがない場合は、ルックアップテーブルにラベル番号を1から順に追加する。ラベルが複数存在した場合は、最小の番号を注目画素に割り振り、参照画素のラベルが全て最小の番号となるようルックアップテーブルを更新する。これをラスタスキャンが終わるまで繰り返し、全ての黒画素にラベルを振る。最後に、ルックアップテーブルに従って、隣接画素との関係を更新することで、領域を同一のラベルにすることができる。この手順によるラベリングの例を図9に示す。

【0045】
図7に示すような2値化画像に対して、膨張・収縮、ラベリングによるノイズの除去を行う。256×256の正方2値画像に対して、初めに孤立点の除去を行う。全65536ピクセルに対して、200ピクセル以下を小さな孤立点とみなし、次に残った孤立点を連結させるため、クロージングを行う。最後に模様として連結された1つのラベルのみを残すため、ラベリングによって2500ピクセル以下の領域を除去する。この結果を図10に示す。

【0046】
図10に示すようなノイズ除去を行った2値化画像から、特徴点を得る方法について説明する。256×256の画像では模様の大きさとして大きいため、例えば、64×64に縮小した画像に対して輪郭線追跡を行うことができる。ここでは輪郭の角4点(図では○で囲った点)を選択し、左側と右側をそれぞれ均等に9分割した点(図では■で示されている点)を特徴点とし、計20点の特徴点を得た場合の例として図11に示す。このときの分割は、前記形状の輪郭の特徴点数と同様に、次元数がサンプル数の半分以下となる数を目安にすると良い。

【0047】
前記のようにして得られた特徴量(特徴点)に対して主成分分析による次元圧縮を行い、多くの変数に重みをつけて少数の合成変数(=主成分)を作る。重みのつけ方は、合成変数ができるだけ多くの元の変数の情報量を含むようにし、そのためデータの分散に着目する。分散=情報量といえるからである。主成分分析を行うと、各主成分(=合成変数)に対応した固有値が求められる。この固有値は主成分の分散に対応しており、その主成分がどの程度元のデータの情報を保持しているかを表している。最も大きな固有値(=分散が最大となる)に対応する固有ベクトルがx軸(=第一主成分軸)の方向となり、次に大きい固有値に対応する固有ベクトルがy軸(=第二主成分軸)の方向となることは、先に述べた通りである。

【0048】
先に形状に関して説明する。形状の特徴点の座標を並べることで、特徴ベクトルXを式(6)の様に表すことができる。特徴点の座標x、yが次元数となるので、次元数は特徴点tの2倍(2t次元)になる。

【0049】
【数6】
JP2017157110A_000008t.gif

【0050】
N個のサンプルに対して、主成分分析(分散共分散行列の固有値展開)を行うことで得られる固有値を高い順に並べ、それに対応する固有ベクトルνを、各座標の平均ベクトルmに足す。特定のエビの形状は、第i主成分の固有ベクトルνに対応する任意定数kを用いて、式(7)のように表現できる。輪郭全体(L)の長さを均等に分割する方法を用いて特徴点を得た場合の、寄与率(次元圧縮した際の各主成分が、元のデータの情報をどれだけ表しているかを示す割合)と累積寄与率(各主成分の寄与率の和)の結果を、表1に示す。

【0051】
【数7】
JP2017157110A_000009t.gif

【0052】
【表1】
JP2017157110A_000010t.gif

【0053】
2次元で表現する場合には、式(7)においてc=2とすれば良い。なお、一般には、累積寄与率が80%を超えることが主成分選択の基準とされることが多い。

【0054】
任意定数k、kの値から、式(7)から得られた形状特徴点を結ぶことで、第2主成分までの形状変化を2次元上に表すことができる。図12には、k、kの値をそれぞれ-300~300の範囲において、値を100刻みで表現したものである。軸の交点を(k、,k)=(0,0)とし、ここでは平均の形状を表している。k、kの値は任意に設定でき、例えば出力されるエビ画像の大きさを300×300の範囲にするため、-300~300の範囲に設定した。

【0055】
図12によれば、第1主成分の形状特徴は、エビの尻尾の付け根部分の曲がり方を示す結果となっている。正の方向は付け根部分が内側に曲がり、負の方向は外側に向けて曲がっている。また第2主成分の形状特徴は、尻尾の全体の曲がり具合を示している。正の方向は全体が外側に開き、負の方向は全体が内側に閉じている。そして、実際に被験者に提示される場合には、この限られた範囲内(本例で言えば-300~300)でのみ具体的な形状が提示されないように予め指定することで、特異な形状を選択する余地を排除して、形に関する人の嗜好・概念をより一般的に抽出・分析できるようにしている。

【0056】
次に繰り返しパターンとした模様に関して説明する。前記の全体形状の輪郭と同様に、各特徴点を結ぶことで第2主成分までの模様の形状変化を図13のように2次元上に表すことができる。図においては、k、kの値をそれぞれ-40~30の範囲で10刻み表現している。同様に軸の交点は(k、,k)=(0,0)とし、平均の模様が表示されていることになる。64×64の画像から特徴点を取得したため、前記の範囲とした。

【0057】
図13のように、模様のパターンだけでは、エビの模様と認識することが困難であるため、先の平均的なエビの形状の上に、5回の繰り返しパターンが形成されているとして、アフィン変換を利用して線形変換を行うことで図14に示すように模様を表現した。また、全体形状における模様の変化を図15に示している。

【0058】
図13および図15の模様に関するk軸、つまり第1主成分の特徴は、模様左側の窪み方を示す結果となっている。正の方向は中央部分が窪み、負の方向は窪みが無くなる。k軸、つまり第2主成分の特徴も、模様左側の窪み方を表す結果となった。正の方向は中央部分が深く窪み、負の方向は、中央部分の窪みが浅くなる。

【0059】
前記のとおり、形状、模様に関してそれぞれ主成分分析等を経て2次元上に示す例を説明したが、色についてもRGB成分の画素値を用いて分析することが可能である。

【0060】
以下では、前記例示したデザイン決定支援システムを具体的に被験者に対して提示した場合の、結果について一例を示す。

【0061】
(実施例1)
対象物として茹でたエビの剥き身について、一般人はどのような形状や模様であるときに、最もそれらしいと認識するのかを調べた。上記の例示によって説明したように形状に関しては、図16に示すような正方形の領域とその上にマウスのポイントを示す丸印が表示される。被験者は、マウスを操作して正方形の限られた領域内で動かし、ポインタが示す位置の形状が、リアルタイムで正方形の上方に表示される。被験者は、表示を見ながら自分が最もエビだと認識した位置でマウスの操作を停止する。この位置(k、,k)を多人数の被験者より集計することにより、人が最もエビらしいと認識する形状を特定した。
なお、被験者は25歳から50歳の男性13名、女性6名の計19名で行った。

【0062】
その結果、k、kの平均値は、それぞれ-49.42,-52.89となり、平均の形状(0,0)ではないことが判った。

【0063】
(実施例2)
実施例1と同様にして、エビの平均形状に模様を表現した。被験者は同一である。その結果k、kの平均値は、それぞれ-19.33,-15.61となり、形状と同様に平均の模様(0,0)ではないことが判った。参考までに、被験者が最もエビらしいと認識した形状と模様の平均画像を図17に示す。

【0064】
前記の通り、本発明のデザイン決定支援システムは、人の認識する嗜好・概念といったものを具体的に画像に表現することができるので、製品化プロセスにおけるデザイン決定の根拠として利用できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明のデザイン決定支援システムは形状や模様などの特徴を定量的に解析することができるので、模造品・代替品を製造する事業者(例えば、模型自動車、ぬいぐるみ、キャラクターグッズ、天然食品等の代替食品、食品玩具等の製造者)にとって、「顧客の声」として或いは「製品デザイン決定の根拠」として、一般消費者の嗜好を具現化した前記形状(デザイン)に関する情報を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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