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明細書 :熱機関

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-155616 (P2017-155616A)
公開日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 熱機関
国際特許分類 F01C   1/10        (2006.01)
F01C  19/02        (2006.01)
F01L   7/02        (2006.01)
F02B  53/00        (2006.01)
FI F01C 1/10 E
F01C 19/02 Z
F01L 7/02 A
F02B 53/00 J
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-037579 (P2016-037579)
出願日 平成28年2月29日(2016.2.29)
発明者または考案者 【氏名】石野 洋二郎
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
要約 【課題】ローター式の回転式熱機関に関する。
【解決手段】出力軸まわりに偏心量eで偏心回転する偏心軸のまわりに、偏心軸の回転とは逆方向に同角度で自転する、偏心量eの単葉ペリトロコイド形状のローター8と、一対のウエスト・ポイント11、12を有するローター・ケーシング14とを備え、ローター8は、一対のウエスト・ポイント11、12に当接して回転し、ローター・ケーシング14とローター8の間に1乃至2室の作動空間を形成し、作動空間に通じる給排気バルブ19、20を有することを特徴とする熱機関100を提供する。
【選択図】 図5
特許請求の範囲 【請求項1】
出力軸まわりに偏心量eで偏心回転する偏心軸のまわりに、前記偏心軸の回転とは逆方向に同角度で自転する、偏心量eの単葉ペリトロコイド・二次元ローターと、一対のウエスト・ポイントにシール機能を有するローター・ケーシングとを備え、前記ローターは、前記一対のウエスト・ポイントに当接して回転し、前記ローター・ケーシングと前記ローターの間に1乃至2室の作動空間を形成し、前記作動空間に通じる給排気バルブを有することを特徴とする熱機関。
【請求項2】
出力軸まわりに偏心量eで偏心回転する偏心軸のまわりに、前記偏心軸の回転とは逆方向に同角度で自転する、偏心量eの単葉ペリトロコイド・三次元ローターと、一対のウエスト曲線にシール機能を有するローター・ケーシングとを備え、前記ローターは、前記一対のウエスト曲線に当接して回転し、前記ローター・ケーシングと前記ローターの間に1乃至2室の作動空間を形成し、前記作動空間に通じる給排気バルブを有することを特徴とする熱機関。
【請求項3】
前記ローターの自転角度を、前記ローターの中心軸に歯車軸が一致するように前記ローターに固定された基礎円直径2eの外歯位相歯車と、それに噛み合う不回転の基礎円直径4eの内歯位相歯車とにより制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱機関。
【請求項4】
前記ローターの自転角度を、前記ローターの中心軸に軸が一致するように前記ローター中心軸に設置されたローター位相歯車、前記出力軸と歯車軸が一致する不回転の固定位相歯車、および、前記出力軸を回転軸とし、前記出力軸と同一に偏心回転する伝達歯車軸周りに自由回転し、第一段歯車は前記ローター位相歯車と噛み合い、第二段歯車は前記固定位相歯車と噛み合う、二段伝達歯車により制御する、請求項1または請求項2に記載の熱機関。
【請求項5】
前記ローターの創成直線焦点の部位にピンを設置し、前記ピンに当接するレールを設け、前記ローターに掛かる荷重を受けると同時に、前記ローターの自転角度を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載する熱機関。
【請求項6】
前記2室の両方、あるいは前記2室の片方において、作動流体の吸気、圧縮、加熱、膨張、排気を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載する熱機関。
【請求項7】
一方の室は、作動流体の吸気、加熱、膨張、排気を行い、他方の室は、吸気、圧縮、加熱、膨張、排気を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載する熱機関。
【請求項8】
前記2室において、互いに異なった熱サイクルを実施することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載する熱機関。
【請求項9】
前記ウエスト・ポイントあるいは前記ウエスト曲線と、前記ローターとの当接部に設けるシール部品が交換できる構造であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の熱機関。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車(通常エンジン車,ハイブリッド車)、二輪車および船舶の動力発生機関,非常用発電機,携行発電機、熱電併給(コジェネレーション)用発電機、電気自動車の航続距離延長用車載発電機,チェーンソーなどの動力機関,液体ロケット用推進剤供給ポンプ、およびその他の広範な機器へ適用される。本発明の技術分野は、運輸分野、電機分野、航空宇宙分野およびその他の分野が技術分野として該当する。
【背景技術】
【0002】
回転式エンジンは、その低振動特性から、電気自動車用の航続距離延長用車載発電機や非常用発電機などの用途に適するため、将来的にも需要が期待される。
【0003】
本発明の発明者らの先行研究では,より高い低振動性を求め,純粋回転のみで作動する2ローター式の回転式エンジンが考案され,試作機による実機試験が行われた(特許文献1、非特許文献1)。
【0004】
本発明機関は、従来のWankel式ロータリーエンジン(非特許文献2)やピストン・エンジンと異なり、作動流体の漏洩防止のためのシール機構がケーシング上に固定することが可能であるため、より確実に作動流体のシールを行うことのできる、新考案の回転式熱機関である。
【0005】
ガソリン・エンジン(オットーエンジン)、ディーゼル・エンジン、ガスタービン・エンジンなどの内燃機関、あるいは、蒸気機関(ランキン・エンジン)、スターリング・エンジンなどの外燃機関といった熱機関は、熱エネルギーを力学的エネルギーに変換する機関として、重要な機関である。
【0006】
現在の主流の内燃機関の構造的形式は、自動車等のエンジンではピストン・シリンダー・クランク軸からなるピストン・エンジンであり,航空機エンジンでは,ガスタービン・エンジンである.
【0007】
ピストン・エンジンは,ピストンの往復運動やコネクティングロッドの変則運動,給排バルブの往復動を伴うため,無振動化が困難である(課題1とする).
【0008】
自動車用エンジンとしては,マツダ(東洋工業)が実用化した「ロータリーエンジン」をして知られる「Wankelエンジン」(非特許文献2)もあったが,内部作動流体のシールが困難であり(課題2とする)、
燃費が悪化すること、点火プラグ部などのケーシング凹部での圧縮漏れがあり(課題3とする)、
燃費が悪化すること、位相歯車機構が必要(課題4とする)
で、荷重や振動により位相歯車機構が破壊されやすいこと(課題5とする)、
などの欠点がある。
【0009】
最近、合衆国のDARPAの援助による開発をLiquid Piston社が発表した「X-engine」は、本発明とは異なる「2葉ペリトロコイド・ローターおよびローター包絡線ケーシング形状」を採用したエンジンである。
【0010】
このローターとケーシングの形状については、非特許文献3において、図示され、「invented by Cooly 1903」(Cooly氏による1903年の発明)と記載されている。
【0011】
前記「X-engine」は、このローター・ケーシング形状の採用により、前記の「課題1~3」を解決したが、あらたに「構造が複雑であること」(課題6とする)、
ローターの回転を司る「位相歯車機構」が必要(前記、課題4)で、
この位相歯車機構に爆発荷重が掛かり、歯車が破損する可能性がある(前記、課題5)、などの課題が生じている。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特願2008-8199号公報
【0013】

【非特許文献1】Ishino,Y., et al., "Development of an Novel Non-eccentric Rotational Engine "Ishino Engine" (Fundamental Configuration and Characteristics)", JSAE 20139084 / SAE 2013-32-9084, (2013)
【非特許文献2】Hege,J.B. ,The Wankel Rotary Engine. A History, (2002) 31.
【非特許文献3】F. Wankel, "Rotary Piston Machines", London Iliffe Books Ltd.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明では、従来熱機関における前記課題を解決し、提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明1は、 出力軸まわりに偏心量eで偏心回転する偏心軸のまわりに、偏心軸の回転とは逆方向に同角度で自転する、偏心量eの単葉ペリトロコイド・二次元ローターと、一対のウエスト・ポイントにシール機能を有するケーシングとを備え、ローターは、一対のウエスト・ポイントに当接して回転し、ケーシングとローターの間に1乃至2室の作動空間を形成し、作動空間に通じる給排気バルブを有することを特徴とする熱機関である。
発明2は、出力軸まわりに偏心量eで偏心回転する偏心軸のまわりに記偏心軸の回転とは逆方向に同角度で自転する、偏心量eの単葉ペリトロコイド・三次元ローターと、一対のウエスト曲線にシール機能を有するケーシングとを備え、ローターは、一対のウエスト曲線に当接して回転し、ケーシングとローターの間に1乃至2室の作動空間を形成し、作動空間に通じる給排気バルブを有することを特徴とする熱機関である。
発明3は、ローターの自転角度を、ローターの中心軸に歯車軸が一致するようにローターに固定された基礎円直径2eの外歯位相歯車と、それに噛み合う不回転の基礎円直径4eの内歯位相歯車とにより制御する、発明または2に記載の熱機関である。
発明4は、ローターの自転角度を、ローターの中心軸に軸が一致するようにローター中心軸に設置されたローター位相歯車、出力軸と歯車軸が一致する不回転の固定位相歯車、および記出力軸を回転軸とし、出力軸と同一に偏心回転する伝達歯車軸周りに自由回転し、第一段歯車はローター位相歯車と噛み合い、第二段歯車は固定位相歯車と噛み合う、二段伝達歯車により制御する、発明1または2に記載の熱機関である。
発明5は、ローターの創成直線焦点の部位にピンを設置し、ピンに当接するレールを設け、ローターに掛かる荷重を受けると同時に、ローターの自転角度を制御することを特徴とする、発明1乃至4のいずれか1つに記載する熱機関である。
発明6は、2室の両方、または2室の片方において、作動流体の吸気、圧縮、加熱、膨張、排気を行うことを特徴とする、発明1乃至5のいすれか1つに記載する熱機関である。
発明7は、一方の室は、作動流体の吸気、加熱、膨張、排気を行い、他方の室は、吸気、圧縮、加熱、膨張、排気を行うことを特徴とする発明1乃至5のいずれか1つに記載する熱機関である。
発明8は、2室において、互いに異なった熱サイクルを実施することを特徴とする発明1乃至5のいずれか1つに記載する熱機関である。
発明9は、ウエスト・ポイントまたはウエスト曲線と、ローターとの当接部に設けるシール部品が交換できる構造であることを特徴とする発明1乃至8のいずれか1つに記載するの熱機関である。
【発明の効果】
【0016】
出力軸まわりに偏心量eで偏心回転する偏心軸のまわりに、偏心軸の回転とは逆方向に同角度で自転する、偏心量eの単葉ペリトロコイド形状のローターと、一対のウエスト・ポイントを有するローター・ケーシングとを備え、ローターは、一対のウエスト・ポイントに当接して回転し、ローター・ケーシングとローターの間に1~2室の作動空間を形成し、作動空間に通じる給排気バルブを有することを特徴とする熱機関を提供する。上記の特徴において、以下のとおり課題が解決される。
【0017】
偏心回転する単葉ペリトロコイド・ローターと、ローター包絡線形状で規定され、ローターとウエスト部で接するケーシングとで機関を構成することにより、最も単純な構造を有する熱機関を提供することができ、これにより、前記課題6の解決を提供する。
【0018】
偏心回転する単葉ペリトロコイド・ローターと、ローター包絡線形状で規定され、ローターとウエスト部で接するケーシングとで機関を構成することにより、カウンター・ウエイトの配置によりローターの偏心回転による振動を完全に除去し、無振動熱機関を提供することができ、これにより、前記課題1の解決を提供する。
【0019】
偏心回転する単葉ペリトロコイド・ローターと、ローター包絡線形状で規定され、ローターとウエスト部で接するケーシングとで機関を構成することにより、作動流体のシールが容易で、シール性に優れる熱機関を提供すること、により、前記課題2の解決を提供する。
【0020】
偏心回転する単葉ペリトロコイド・ローターと、ローター包絡線形状で規定され、ローターとウエスト部で接するケーシングとで機関を構成することにより、ウエスト部以外のケーシング部位に凹部を形成しても、作動流体が漏洩しない構造を有する熱機関を提供すること、により、前記課題3の解決を提供する。
【0021】
作動空間に対する給排気制御のための給排バルブとして、単純回転するロータリー・バルブなどの無振動バルブを採用し、無振動熱機関を提供すること、により、前記課題1の解決を提供する。
【0022】
発見した、偏心回転する単葉ペリトロコイド・ローター上の創成直線焦点が直線状を往復する性質を利用し、単葉ペリトロコイド・ローターの創成直線焦点にピン体を設置し、ケーシングに設けたレール間でピン体を往復運動させることで、ローターに掛かる圧力荷重をケーシングで受け、位相歯車への荷重負担を低減できる熱機関を提供すること、により、前記課題5の解決を提供する。
【0023】
発見した、偏心回転する単葉ペリトロコイド・ローター上の創成直線焦点が直線状を往復する性質を利用し、単葉ペリトロコイド・ローターの創成直線焦点にピン体を設置し、ケーシングに設けたレール間でピン体を往復運動させることで、ローターの自転を制御する熱機関を提供すること、により、前記課題4の解決を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の熱機関のローター形状である単葉ペリトロコイド図形を示す。
【図2】ペリトロコイド係数R/eを変化させた場合の、種々の単葉ペリトロコイド図形を示す。
【図3】ローターの偏心運動、最小ケーシング形状の創成方法、および、ローターとケーシングとの関係を示す。
【図4】各ペリトロコイド係数R/eに対する最大圧縮比 e maxを示す。
【図5】第1実施形態の熱機関の構成を示す。
【図6】第1実施形態の熱機関の主な構成部品を示す。
【図7】本発明の熱機関の給排バルブの構成の例を示す。
【図8】本発明の熱機関の給排バルブの構成の例を示す。
【図9】作動空間数が1の場合の本発明の熱機関の例を示す。
【図10】第1実施形態の設計例を示す。(a)横断面、(b)断面A-A。
【図11】ローターとローターハウジングの構造を示す。
【図12】通常動作(両空間がミラー・サイクルの場合)の状態遷移を描画する図。
【図13】通常動作(両空間がミラー・サイクルの場合)の状態遷移を説明する図。
【図14】第2実施形態の状態遷移を描画する図。圧縮慣性力不要動作(左空間がミラー・サイクルで右空間がルノアール・サイクルの場合)。
【図15】第2実施形態 の状態遷移を説明する図。圧縮慣性力不要動作(左空間がミラー・サイクルで右空間がルノアール・サイクルの場合)。
【図16】第3実施形態 のローターの角部形状とウエスト曲線を示す。
【図17】第4実施形態 のローター上の創成直線焦点に軸、および位相歯車を設置する構造を示す。
【図18】第5実施形態 のローター上の創成直線焦点に軸を設置し、位相歯車を設置しない構造を示す。
【図19】第6実施形態 の伝達歯車を介した位相歯車機構(創成直線焦点軸を設置しない場合)を示す。
【図20】第7実施形態の伝達歯車を介した位相歯車機構(創成直線焦点軸を設置する場合)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0026】
(基本事項の説明)

【0027】
(基本構成)

【0028】
ローター形状1は単葉ペリトロコイド(Single Lobe Peritrochoid; SLP)図形である。

【0029】
図1は、本発明の熱機関のローター形状である単葉ペリトロコイド図形を示す。
このローター形状1は、図1(a)~(c)に示すように、原点(ローター中心2)に固定された固定歯車3(基礎円半径e = 偏心量)のまわりに、2倍の歯数を有する内歯描画歯車4を回転させたときに、内歯歯車4から創成半径Rだけ離れた描画点A5および描画点B6が描く閉曲線として定義される。

【0030】
創成線分AB(長さ2R )は、図1(c)のように、創成直線焦点7を常に通過する。

【0031】
図2に、ペリトロコイド係数R/eを変化させた場合の、種々の単葉ペリトロコイド図形を示す。

【0032】
ペリトロコイド係数R/eによりローター形状1は変化し、R/e > 4の場合に凸閉曲線となり、ローター形状1に適す。

【0033】
式(1)および(2)に形状を数式で示す。ただし、角度f は図2に示した。

【0034】
x= e sin(2f ) + R cos(f ), y = -ecos(2f ) + Rsin(f ) (1)

【0035】
あるいは、創成直線焦点7からの極座標表示により、次式(2)で表現される。

【0036】
x= {2e sin(f )+R} cos(f ), y = - e + {2e sin(f )+R} sin(f ) (2)

【0037】
単葉ペリトロコイド図形1は、ローター中心2に図心がないので、ローターの製作に際しては、ローター内部に空間部および高比重物質充填部を設け、ローター中心2に重心を一致させる。

【0038】
図3に、ローター8の偏心運動、最小ケーシング形状9の創成方法、および、ローター8とローター・ケーシング14との関係を示す。

【0039】
最小ケーシング形状9は,偏心量eのクランク腕10に,ローター中心2を回転接続し,偏心回転させたローター図形の包絡線により定義される。このとき、ローターは、クランク回転角θ2と同角度θ1で逆回転させる。

【0040】
最小ケーシング形状9とローター8は、( x, y) = (±R, 0 )のウエスト点11および12で常に接し、2つの作動空間をシールすることができる。

【0041】
ローター8の偏心回転にともない、ローター8が片方のケーシングに進入する面積は、最大Smax = { (2e 2+R 2) p + 8eR }/2から、最小Smin = { (2e 2+R 2) p - 8eR }/2まで、正弦的に変化するので、ケーシングの片方の作動空間あたりの排気面積は8eR と算出される。

【0042】
実際のケーシング形状は、ウエスト点以外は、最小ケーシング形状9より外側であればよい。

【0043】
ケーシングとローター8の間の作動空間において、最大圧縮比εmaxは、ケーシング形状が最小ケーシング形状9の場合に得られる。

【0044】
図4に、各ペリトロコイド係数R/eに対する最大圧縮比 e maxを示す。

【0045】
熱機関として十分高い圧縮比を得ることが可能である。

【0046】
(第1実施形態)

【0047】
図5に、第1実施形態の熱機関の構成を示す。また、図6に、第1実施形態の熱機関の主な構成部品を示す。

【0048】
第1実施形態は、ミラー・サイクルによる火花点火機関を想定し、説明するが、他のオットー・サイクル、ディーゼル・サイクル、のほか、スターリング・サイクルなどでも実現できる。

【0049】
作動流体への受熱は、ミラーサイクルおよびオットーサイクルの場合には、作動流体(予混合ガス、あるいは、燃料噴射された空気)への火花点火あるいはレーザー点火等で行い、ディーゼル・サイクルの場合には、作動流体(空気あるいは希薄予混合ガス)の圧縮による自着火にて行う。

【0050】
スターリング・サイクルの場合には、作動流体への受熱・吸熱は、2つの作動空間の間をつなぐ流路に設置された熱交換器により、実施する。

【0051】
第1実施形態について、はじめに、機関構成を図5および図6により説明する。

【0052】
図5および図6の機関は、偏心量eのクランク軸13,ローター8,ローター・ケーシング14,フロント・ハウジング15、リア・ハウジング16、固定位相歯車17、ローター位相歯車18、第1ロータリー・バルブ19、第2ロータリー・バルブ20、第1バルブ・タイミング・ギア21、第2バルブ・タイミング・ギア22、シャフト・タイミング・ギア23、から成る。

【0053】
ローター・ケーシング14の内部には、最小ケーシング形状9より大きな空間がケーシング内壁24が形成され、さらに燃焼空間となる第1燃焼リセス25および第2燃焼リセス26が穿設される。

【0054】
ケーシング内壁24のウエスト点の2か所には、シール機構31を設置する。

【0055】
シール機構31の設置・交換のために、ケーシング内壁24のウエスト点の2か所には、シール機構用受部32を設けても良い。

【0056】
ローター8の平面部と、フロント・ハウジング15およびリア・ハウジング16との間には、シール機構31によりシールを施す。

【0057】
図示されていないが、第1燃焼リセス25および第2燃焼リセス26には点火電極が設置される。

【0058】
第1燃焼リセス25および第2燃焼リセス26には、第1ロータリー・バルブ19および第2ロータリー・バルブ20が設置される。

【0059】
第1ロータリー・バルブ19および第2ロータリー・バルブ20は、クランク軸13に固定されたシャフト・バルブ・タイミング・ギアにより駆動される第1バルブ・タイミング・ギア21および第2バルブ・タイミング・ギア22により回転駆動され、ローター・ケーシング14に穿設される吸気流路の第1吸気部27および第2吸気部28ならびに排気流路の第1排気部29および第2排気部30を通して、適切な時期に作動流体の吸排気が実施される。

【0060】
第1ロータリー・バルブ19および第2ロータリー・バルブ20は、クランク軸13の1/2の回転数で回転する。

【0061】
ローター8の自転角度は、ローター中心2の軸に歯車軸が一致するようにローターに固定された基礎円直径2eのローター位相歯車18と、フロント・ハウジング15に固定された基礎円直径4eの固定位相歯車17との噛み合いにより制御され、ローター8は、クランク軸13の回転に対して同回転数で逆方向に回転する。

【0062】
図7に、本発明の熱機関の給排バルブの構成の例を示す。また、図8に、本発明の熱機関の給排バルブの構成の例を示す。
作動流体の吸排バルブ機構は、図7および図8に示すように、往復振動を伴うポペット・バルブ35(図7:第1実施形態B)およびスライド・バルブ36(図8:第1実施形態C)でも良い。また、無振動である回転板バルブ37(ロータリー・バルブと同機構)(図7:第1実施形態、図7:第1実施形態A 、図8:第1実施形態D)を採用することで、無振動化が実現できる。

【0063】
図9に、作動空間数が1の場合の本発明の熱機関の例を示す。
図9に示す、第1実施形態E~Gのように、ケーシングとローターとの間に形成される2室の作動空間のうち、1室のみを使用する形態でも、熱機関を実現することができる。

【0064】
図10に、第1実施形態の設計例を示す。図10(a)横断面、図10(b)断面A-Aを示す。

【0065】
図5~9には示さなかったが、図10に示すカウンター・ウエイト38を設置し、無振動化を図り、また、必要ならばフライホイールを設置し、圧縮慣性力を確保し、脈動の少ない回転動作を実現する。

【0066】
図11に、図10の設計図に基づき製作した、ローター8およびローター・ケーシング14を示す。

【0067】
ここで、図12および図13を用いて、第1実施形態の左側作動空間(左室)と右側作動空間(右室)のそれぞれについて、作動状況を説明する。
図12は、通常動作(両空間がミラー・サイクルの場合)の状態遷移を描画する図を示す。
図13は、通常動作(両空間がミラー・サイクルの場合)の状態遷移を説明する図を示す。

【0068】
図12および図13において、V1は左室用給排バルブ(第1ロータリー・バルブ19)の作動状態、C1は左側作動空間(左室)の作動状況、V2は右室用給排バルブ(第2ロータリー・バルブ20)の作動状態、C1は右側作動空間(右室)の作動状況、をそれぞれ示す。

【0069】
図12および図13において、図(1)から図(10)までによって1作動サイクルが表現されており、これが繰り返され実際の連続動作が表される。

【0070】
図12および図13において、左室に関しては、まず、図(1)では新気(予混合ガス)の吸気が開始し、図(3)では最大吸気状態に達する。

【0071】
高効率を得るため高膨張サイクル(ミラー・サイクル)とするために,図(4)まで吸気バルブを閉止せず、新気を吸気部に戻し、図(4)で吸気バルブを閉止し、新気の圧縮を開始する。

【0072】
最大圧縮に達する図(6)で火花点火を行い、図(9)まで作動流体を膨張させ軸出力を得る。

【0073】
図(9)からは排気行程が開始する。

【0074】
一方,右室では,図(3)から吸気が開始し,左室と同様の作動行程が1/4サイクルだけ異なった位相で実行される.

【0075】
(第2実施形態)

【0076】
図5および図6に示すように、本形式の熱機関では、最大で2室の作動空間が形成される。

【0077】
この2室において、異なった位相で、同種の熱サイクル(オットー・サイクル、ミラー・サイクル、ディーゼル・サイクル、ルノアール・サイクル、など)を実施することができるが、異なった熱サイクルを実施することも可能である。

【0078】
図14および図15に示す第2実施形態は、左側作動空間ではミラー・サイクルを実施し、右側作動空間では無圧縮サイクルであるルノアール・サイクルを実施する、実施形態である。
図14は、第2実施形態の状態遷移を描画する図である。圧縮慣性力不要動作(左空間がミラー・サイクルで右空間がルノアール・サイクルの場合)を示す。
図15は、第2実施形態 の状態遷移を説明する図である。圧縮慣性力不要動作(左空間がミラー・サイクルで右空間がルノアール・サイクルの場合)を示す。

【0079】
右側作動空間での無圧縮サイクル(ルノアール・サイクル)を、左側作動空間でのミラー・サイクルに先立ち実施することで、ミラー・サイクルにおける作動流体の圧縮仕事をルノアール・サイクルでの膨張仕事で賄い、圧縮仕事用の慣性力を供給するフライホイールの不要化あるいは小型化を実現することができる。

【0080】
ここで、図14および図15を用いて、第2実施形態の左側作動空間(左室)と右側作動空間(右室)のそれぞれについて、作動状況を説明する。

【0081】
図14および図15において、V1は左室用給排バルブ(第1ロータリー・バルブ19)の作動状態、C1は左側作動空間(左室)の作動状況、V2は右室用給排バルブ(第2ロータリー・バルブ20)の作動状態、C1は右側作動空間(右室)の作動状況、をそれぞれ示す。

【0082】
図14および図15において、図(1)から図(10)までによって1作動サイクルが表現されており、これが繰り返され実際の連続動作が表される。

【0083】
図14および図15において、図(4)までに左室および右室で吸気が完了し、図(4)で右室で点火が行われ、燃焼により右室が高圧となり、右室では膨張行程が開始する。

【0084】
このとき、左室では吸気バルブが閉止し、圧縮行程が開始する。

【0085】
図(6)では、左室の圧縮が完了し、点火が行われる。

【0086】
図(6)では、左室の圧縮が完了し、点火が行われ、右室では排気行程が始まる。

【0087】
図(9)では、左室の排気行程が開始し、右室では吸気行程が始まる。

【0088】
(第3実施形態)

【0089】
図6では、ローターの厚み方向に単一のペリトロコイド係数R/eを用いた「二次元ローター」を描画したが、二次元ローターではローター外周部の角部に直角が要求される。

【0090】
ローター外周部の直角角部に対応するシール機構31には、高度な製作精度が要求される。

【0091】
さらに、直角角部は摩耗しやすく、ローター外周部の直角角部が摩耗することで、シール性が悪化する可能性がある。

【0092】
本熱機関では、クランク軸13の偏心量eを一定とせざるを得ないが、図2で既に示したように、同じ偏心量eであっても、Rを変化させることで、異なる大きさのローター形状1を同時に利用することができる。

【0093】
この性質を利用すれば、厚み方向に任意のペリトロコイド係数をもつ「三次元ローター」を提供することができる。

【0094】
とくに、ローター外周部の角部の丸み39を持たせることで、耐久性が著しく向上する「三次元ローター」を提供することができる。図16に、第3実施形態 のローターの角部形状とウエスト曲線を示す。

【0095】
このローター外周部の角部の丸み39は、ローターの全外周部において厳密なアールとすることはできないが、近似的に全外周部に渡って同一のアールを持たせた「三次元ローター」を提供することができる。

【0096】
同一の偏心量ならば、ペリトロコイド係数が異なっても、創成直線焦点7の位置は同一である。

【0097】
一方、ペリトロコイド係数により、最小ケーシング形状9は変化するので、ウエスト点の位置も異なり、ウエスト点の集合は、曲線(ウエスト曲線41)となる。ここで、2点破線で示す最小ケーシング形状40は、最大ペリトロコイド係数に対する最小ケーシング形状を示す。

【0098】
ケーシングのウエスト部でのシール機構31は、滑らかなウエスト曲線41をシールする機構とすれば良いので、シールが容易である。

【0099】
(第4実施形態)

【0100】
図3に示されるように、ローター上の創成直線焦点7は、ローターの運動に際し、ウエスト点11および12を結んだウエスト直線上を往復運動する。

【0101】
一方、本発明の構成では、固定位相歯車車17およびローター位相歯車18の噛み合い部に、ローター8に印加される圧縮荷重や爆発荷重が掛かり、固定位相歯車17およびローター位相歯車18が破損する可能性がある。

【0102】
図17は、第4実施形態 のローター上の創成直線焦点に軸、および位相歯車を設置する構造を示す。図17に示すように、ローターに対して、創成直線焦点7の部位に創成直線焦点軸42を設置し、往復動する創成直線焦点軸42が当接するレール43を設けた構造とすることで、ローターに掛かる荷重をレール43で受け、固定位相歯車17およびローター位相歯車18の破損を防止することができる。

【0103】
(第5実施形態)

【0104】
図17に示すレール43を持つ構造において、創成直線焦点軸42とレール43とにより、ローターの自転角度を制御することもできる。

【0105】
したがって、図18のように、固定位相歯車17およびローター位相歯車18を必要としない構造の熱機関を提供することができる。図18は、第5実施形態 のローター上の創成直線焦点に軸を設置し、位相歯車を設置しない構造を示す。

【0106】
(第6実施形態)

【0107】
本発明の構成では、固定位相歯車17および18の噛み合い部に、ローター8に印加される圧縮荷重や爆発荷重が掛かり、固定位相歯車17およびローター位相歯車18が破損する可能性があることは、すでに述べた。

【0108】
とくに、本発明の構成では、偏心量eによって、固定位相歯車17の基礎円直径4eと、ローター位相歯車18の基礎円直径2eが一義的に決定される。

【0109】
このため、小さな偏心量eの機関では、強度の高い大きなモジュールを持つ位相歯車の選択が困難であり、位相歯車が破損の可能性が高まる。

【0110】
そこで、図19のように、クランク軸13に固定した伝達歯車支持腕45に自由回転接続した二段伝達歯車44を介して、固定位相歯車17とローター位相歯車18とを連動させる構造により、大直径の固定位相歯車17およびローター位相歯車18の選択が可能となり、歯車強度を高めることができる。図19は、第6実施形態 の伝達歯車を介した位相歯車機構(創成直線焦点軸を設置しない場合)を示す。

【0111】
さらに、大直径の固定位相歯車17およびローター位相歯車18の採用により、当該歯車の中心部の穴にクランク軸13を通過させる設計が可能となり、設計の自由度が高められる。

【0112】
また、製作が困難で、コストの高い、内歯歯車の使用を避けることもできる。

【0113】
二段伝達歯車44と伝達歯車腕45とを、クランク偏心軸に対して反対側に設置することで、カウンター・ウエイト38を小型化することができる。

【0114】
図19の下図には、偏心量e = 5 mmの場合の、歯車の選択例(Dは歯車の基礎円直径)を記した。

【0115】
(第7実施形態)

【0116】
図20に、第7実施形態の伝達歯車を介した位相歯車機構(創成直線焦点軸を設置する場合)を示す。

【0117】
第7実施形態は、図19に示した第6実施形態に、創成直線焦点軸42とレール43による、固定位相歯車17およびローター位相歯車18、ならびに二段伝達歯車44への荷重の低減を実現する実施形態である。

【0118】
図20にも、偏心量e = 5 mmの場合の、歯車の選択例(Dは歯車の基礎円直径)を記した。
【符号の説明】
【0119】
100 熱機関
1 ローター形状
2 ローター中心
3 固定歯車
4 描画歯車
5 描画点A
6 描画点B
7 創成直線焦点
8 ローター
9 最小ケーシング形状
10 クランク腕
11 ウエスト点
12 ウエスト点
13 クランク軸
14 ローター・ケーシング
15 フロント・ハウジング
16 リア・ハウジング
17 固定位相歯車
18 ローター位相歯車
19 第1ロータリー・バルブ
20 第2ロータリー・バルブ
21 第1バルブ・タイミング・ギア
22 第2バルブ・タイミング・ギア
23 シャフト・タイミング・ギア
24 ケーシング内壁
25 第1燃焼リセス
26 第2燃焼リセス
27 第1吸気部
28 第2吸気部
29 第1排気部
30 第2排気部
31 シール機構
32 シール機構用受部
33 点火プラグ
34 ロータリー・バルブ
35 ポペット・バルブ
36 スライド・バルブ
37 回転板バルブ
38 カウンター・ウエイト
39 角部の丸み(ローター外周部)
40 最大ペリトロコイド係数に対する最小ケーシング形状
41 ウエスト曲線
42 創成直線焦点軸
43 レール
44 二段伝達歯車
45 伝達歯車支持腕



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19