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明細書 :プローブ修飾ナノ粒子を用いた有害微生物の高感度バイオセンシングシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-226093 (P2014-226093A)
公開日 平成26年12月8日(2014.12.8)
発明の名称または考案の名称 プローブ修飾ナノ粒子を用いた有害微生物の高感度バイオセンシングシステム
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
C12Q   1/32        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/569       (2006.01)
G01N  33/483       (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
C12Q 1/04
C12Q 1/32
G01N 33/53 M
G01N 33/543 541A
G01N 33/569 E
G01N 33/569 F
G01N 33/483 F
G01N 27/46 336M
請求項の数または発明の数 16
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2013-108792 (P2013-108792)
出願日 平成25年5月23日(2013.5.23)
発明者または考案者 【氏名】末 信一朗
【氏名】里村 武範
【氏名】坂元 博昭
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100122688、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 健二
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B024
4B063
Fターム 2G045AA25
2G045DA13
2G045FB05
2G045GC20
4B024AA11
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA11
4B024CA20
4B024HA11
4B024HA12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR04
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS16
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX04
要約 【課題】従来法に比して迅速かつ簡便な有害微生物の高感度バイオセンシング技術を提供すること。
【解決手段】第1のプローブが表面に担持されておりかつ磁性を有する第1の粒子と、第2のプローブおよび電気化学的活性物質が表面に担持されている金属ナノ粒子からなる第2の粒子とを使用し、標的微生物のDNAを該2つのプローブとハイブリダイズさせて、該DNAを介して第1の粒子および第2の粒子が連結された複合体を形成させる。複合体を磁気的相互作用を利用して回収し、回収した複合体を電気化学測定に供して電気化学的活性物質を検出する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
検査試料中の標的微生物を検出するための方法であって、
(1)検査試料からDNAを抽出し、かつ抽出したDNAを一本鎖DNAに解離させる工程、
(2)得られた一本鎖DNAと、標的微生物のDNAの一鎖中の第1の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第1のプローブが表面に担持されておりかつ磁性を有する少なくとも1つの第1の粒子と、該一鎖中の第1の領域とは重複しない第2の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第2のプローブおよび電気化学的活性物質が表面に担持されている非磁性金属ナノ粒子からなる少なくとも1つの第2の粒子とを、該一本鎖DNA中にある第1の領域と第1のプローブとの間、および、該一本鎖DNA中にある第2の領域と第2のプローブとの間のハイブリダイゼーションを許容する条件下において接触させ、それにより該一本鎖DNAを介して第1の粒子と第2の粒子とが連結された複合体を形成させる工程、
(3)磁気的相互作用を介して該複合体を回収する工程、
(4)回収した複合体を電気化学測定に供し、それにより該電気化学的活性物質を検出する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
第1の粒子の平均粒径が100~500nmであり、かつ、第2の粒子の平均粒径が10~100nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非磁性金属ナノ粒子が金ナノ粒子である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
電気化学的活性物質がフェロセンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第1のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドであり、かつ、第2のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記(4)の工程が、回収した複合体の存在下、該電気化学的活性物質の酸化電位において酸化酵素による基質の酸化反応を生じさせるか、または、該電気化学的活性物質の還元電位において還元酵素による基質の還元反応を生じさせ、それにより発生した電流を測定することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
基質がL-プロリンであり、かつ、酸化酵素がL-プロリン脱水素酵素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
標的微生物が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌、ビブリオ属菌、レジオネラ属菌およびセレウス菌からなる群から選択される1以上の微生物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(1)標的微生物のDNAの一鎖中の第1の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第1のプローブが表面に担持されておりかつ磁性を有する少なくとも1つの第1の粒子と、(2)該一鎖中の第1の領域とは重複しない第2の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第2のプローブおよび電気化学的活性物質が表面に担持されている非磁性金属ナノ粒子からなる少なくとも1つの第2の粒子とを組み合わせてなる、検査試料中の標的微生物の検出用試薬キット。
【請求項10】
第1の粒子の平均粒径が100~500nmであり、かつ、第2の粒子の平均粒径が10~100nmである、請求項9に記載の試薬キット。
【請求項11】
非磁性金属ナノ粒子が金ナノ粒子である、請求項9または10に記載の試薬キット。
【請求項12】
電気化学的活性物質がフェロセンである、請求項9~11のいずれか1項に記載の試薬キット。
【請求項13】
第1のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドであり、かつ、第2のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドである、請求項9~12のいずれか1項に記載の試薬キット。
【請求項14】
酸化酵素および基質、または、還元酵素および基質を更に含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の試薬キット。
【請求項15】
基質がL-プロリンであり、かつ、酸化酵素がL-プロリン脱水素酵素である、請求項14に記載の試薬キット。
【請求項16】
標的微生物が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌、ビブリオ属菌、レジオネラ属菌およびセレウス菌からなる群から選択される1以上の微生物である、請求項9~15のいずれか1項に記載の試薬キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生検査のための有害微生物の検出技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有害微生物による食中毒や感染症は深刻な社会問題となっている。例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染が依然として発生している他に、カンピロバクターやサルモネラ属菌による問題がある。そのため、適切な防疫処置を実施するための有害微生物の迅速な検出手段が求められている。
【0003】
従来の有害微生物に対する検出方法には、培養法、免疫学的手法、遺伝子工学的手法(リアルタイムPCR法等)等がある。いずれの方法も感度は高いものの、長期間の培養や煩雑な操作を必要とするため、迅速な検知は不可能であった。また、リアルタイムPCR法ではコストが高いという問題がある。さらに、検出には大型の装置が必要であるため、携帯性に乏しく「その場」分析も困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野における上述の現状に鑑み、従来法に比して迅速かつ簡便な有害微生物の高感度バイオセンシング技術が求められている。本発明はそのような技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、簡便、安価、検出装置が小型である等の利点を有する電気化学的検出法に着目した。本発明者らは、更に鋭意検討を行い、検出の目的とする微生物のDNAの一鎖にハイブリダイズできるプローブが表面に担持された磁性粒子、ならびに、該一鎖の異なる領域にハイブリダイズできるプローブおよび電気化学的活性物質が表面に担持された非磁性金属ナノ粒子を利用するシステムに想到した。当該システムを用いた検出では、検査試料中の一本鎖化された標的DNAを上記2種類の粒子上の各プローブとハイブリダイズさせ、2種類の粒子が標的DNAを介して連結された複合体を形成させる。磁気的相互作用を利用して回収した複合体を電気化学測定に供して、電気化学活性物質の存在を検出することで、検査試料中の標的微生物の存在の有無を決定できる。また、電気化学測定において、電気化学的活性物質の酸化電位または還元電位において電極上で酸化還元酵素-基質反応を生じさせ、それにより起こる電子の移動を電気化学的活性物質のそれぞれ還元または酸化に連結させることで、電極に流れる電流を増幅することもできる。本発明者らは、以上の方法論をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出に用いたところ、7fmolの感度でMRSAのDNAを検出できることを確認した。また、当該方法論を用いた検出は、測定対象以外の菌に対して応答を示さず、高い選択性を有していた。本発明者らは、これらの知見に基づいて更に検討を行い、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は即ち、以下の通りである。
[1]検査試料中の標的微生物を検出するための方法であって、
(1)検査試料からDNAを抽出し、かつ抽出したDNAを一本鎖DNAに解離させる工程、
(2)得られた一本鎖DNAと、標的微生物のDNAの一鎖中の第1の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第1のプローブが表面に担持されておりかつ磁性を有する少なくとも1つの第1の粒子と、該一鎖中の第1の領域とは重複しない第2の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第2のプローブおよび電気化学的活性物質が表面に担持されている非磁性金属ナノ粒子からなる少なくとも1つの第2の粒子とを、該一本鎖DNA中にある第1の領域と第1のプローブとの間、および、該一本鎖DNA中にある第2の領域と第2のプローブとの間のハイブリダイゼーションを許容する条件下において接触させ、それにより該一本鎖DNAを介して第1の粒子と第2の粒子とが連結された複合体を形成させる工程、
(3)磁気的相互作用を介して該複合体を回収する工程、
(4)回収した複合体を電気化学測定に供し、それにより該電気化学的活性物質を検出する工程
を含む、前記方法。
[2]第1の粒子の平均粒径が100~500nmであり、かつ、第2の粒子の平均粒径が10~100nmである、上記[1]に記載の方法。
[3]非磁性金属ナノ粒子が金ナノ粒子である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]電気化学的活性物質がフェロセンである、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5]第1のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドであり、かつ、第2のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドである、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6]前記(4)の工程が、回収した複合体の存在下、該電気化学的活性物質の酸化電位において酸化酵素による基質の酸化反応を生じさせるか、または、該電気化学的活性物質の還元電位において還元酵素による基質の還元反応を生じさせ、それにより発生した電流を測定することを含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の方法。
[7]基質がL-プロリンであり、かつ、酸化酵素がL-プロリン脱水素酵素である、上記[6]に記載の方法。
[8]標的微生物が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌、ビブリオ属菌、レジオネラ属菌およびセレウス菌からなる群から選択される1以上の微生物である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9](1)標的微生物のDNAの一鎖中の第1の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第1のプローブが表面に担持されておりかつ磁性を有する少なくとも1つの第1の粒子と、(2)該一鎖中の第1の領域とは重複しない第2の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第2のプローブおよび電気化学的活性物質が表面に担持されている非磁性金属ナノ粒子からなる少なくとも1つの第2の粒子とを組み合わせてなる、検査試料中の標的微生物の検出用試薬キット。
[10]第1の粒子の平均粒径が100~500nmであり、かつ、第2の粒子の平均粒径が10~100nmである、上記[9]に記載の試薬キット。
[11]非磁性金属ナノ粒子が金ナノ粒子である、上記[9]または[10]に記載の試薬キット。
[12]電気化学的活性物質がフェロセンである、上記[9]~[11]のいずれか1つに記載の試薬キット。
[13]第1のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドであり、かつ、第2のプローブが20~100塩基のオリゴヌクレオチドである、上記[9]~[12]のいずれか1つに記載の試薬キット。
[14]酸化酵素および基質、または、還元酵素および基質を更に含む、上記[9]~[13]のいずれか1つに記載の試薬キット。
[15]基質がL-プロリンであり、かつ、酸化酵素がL-プロリン脱水素酵素である、上記[14]に記載の試薬キット。
[16]標的微生物が、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、カンピロバクター属菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌、ビブリオ属菌、レジオネラ属菌およびセレウス菌からなる群から選択される1以上の微生物である、上記[9]~[15]のいずれか1つに記載の試薬キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法により、高い感度での有害微生物の検出を迅速、簡便かつ安価に行うことができる。本発明の方法は、プローブの選択により、あらゆる種類の微生物の検出を可能とする。電極上での酵素-基質反応を利用する実施形態により、更に高い感度の有害微生物の検出が可能となる。本発明はまた、そのような方法を行うための試薬キットも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ハイブリダイゼーションの確認のためのPCRの結果を示す電気泳動写真である。
【図2】酵素および基質あり(破線)、または酵素および基質なし(実線)のときに測定された電流を電位に対して示したサイクリックボルタモグラムを示す。
【図3】MRSAのゲノムDNAの量(横軸;単位:fmol)に対して電流測定値(縦軸;単位:pA)をプロットした図である。
【図4】MRSAまたはE.coli由来のDNAに対する電流応答を示す図である。実線はMRSA由来DNA、破線は大腸菌由来DNA、一点鎖線は対照に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0010】
(検出方法)

【0011】
本発明の方法に供され得る検査試料は、標的微生物の検出を所望される任意の試料であってよい。本発明の方法は、典型的には、食品や飼料等の衛生検査のために利用され得るため、検査試料としては、例えば、牛乳、水、緑茶、酸性飲料等の飲料や、食肉、チルド食品、生鮮食品(肉、野菜、魚)、弁当・惣菜等の幅広い食品や飼料等が挙げられる。また、検査試料の性状は固体、液体および気体のいずれであってもよい。検査試料は、前記のような製品または生体試料そのものを希釈もしくは濃縮したもの、または前処理(例:酸素処理、磁性ビーズ処理、カラム処理、加熱処理、ろ過、または遠心分離等)をしたものであってもよい。

【0012】
本発明の方法により検出の対象とされる微生物(即ち、「標的微生物」)は、検出が所望される任意の種類の微生物であってよく、細菌、放線菌、真菌類等が挙げられる。標的微生物は、例えば、食中毒または感染症の原因菌であり得る。具体的には、例えば、ブドウ球菌属菌(例:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の黄色ブドウ球菌等)、カンピロバクター属菌(例:カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フェタス、カンピロバクター・スプトルム等)、サルモネラ属菌(例:サルモネラ・チフィ、サルモネラ・パラチフィA、サルモネラ・エンテリチジス、サルモネラ・チフィムリウム、サルモネラ・コレラスイス、サルモネラ・ダブリン等)、エシェリヒア属菌(例:腸管出血性大腸菌(O111、O157等)等)、ビブリオ属菌(例:コレラ菌、腸炎ビブリオ等)、レジオネラ属菌(例:レジオネラ・ニューモフィラ等)、シゲラ属菌(例:シゲラ・ソンネイ、シゲラ・ディゼンテリエ、シゲラ・フレキシネリー、シゲラ・ボイデイ等)、クロストリジウム属菌(例:ボツリヌス菌等)、リステリア属菌(例:リステリア・モノサイトゲネス等)、マイコバクテリウム属菌(例:マイコバクテリウム・ツベルクロシス等)、クリプトスポリジウム属菌(例:クリプトスポリジウム・パルバム等)、コクシエラ属菌(例:コクシエラ・バーネッティイ等)、フランシセラ属菌(例:フランシセラ・ツラレンシス等)、バチルス属菌(例:セレウス菌(例:バチルス・セレウス)、バシラス・アントラシス等)、エルシニア属菌(例:エルシニア属ペスティス等)等が挙げられる。特に、食品の衛生検査の目的のために好ましい標的微生物として、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、カンピロバクター属菌(例:カンピロバクター・ジェジュニ、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フェタス、カンピロバクター・スプトルム等)、サルモネラ属菌(例:サルモネラ・チフィ、サルモネラ・パラチフィA、サルモネラ・エンテリチジス、サルモネラ・チフィムリウム、サルモネラ・コレラスイス、サルモネラ・ダブリン等)、腸管出血性大腸菌(O111、O157等)、ビブリオ属菌(例:コレラ菌、腸炎ビブリオ等)、レジオネラ属菌(例:レジオネラニューモフィラ等)、セレウス菌(例:バチルス・セレウス)等が挙げられる。標的微生物は、検出のために使用するナノ粒子や、それに担持されるプローブに応じて、1種または2種以上であり得る。

【0013】
以下、本発明の方法の各工程について説明する。

【0014】
[工程(1)]
検査試料からのDNAの抽出は、自体公知の方法に従って行うことができ、例えばフェノール抽出法、フェノール・クロロホルム抽出法、アルカリ溶解法、ボイル法等を用いることができる。また、市販のDNA抽出キットや核酸自動抽出装置を用いてDNAを抽出する方法が挙げられる。

【0015】
抽出したDNAの一本鎖DNAへの解離は、後述するプローブ修飾粒子とDNAとを混合する前に行ってもよいし、混合後に行ってもよいが、一本鎖DNAとプローブとのハイブリダイゼーションを効率よく行うために、通常、混合後に行われる。一本鎖DNAへの解離は、熱変性(例:95℃、10分間)により行うことができる。

【0016】
[工程(2)]
工程(2)では、得られた一本鎖DNAと、上記の第1のプローブが表面に担持されておりかつ磁性を有する少なくとも1つの第1の粒子と、上記の第2のプローブおよび電気化学的活性物質が表面に担持されている非磁性金属ナノ粒子からなる少なくとも1つの第2の粒子とを適切な溶液中で接触させ、該一本鎖DNAを介して第1の粒子と第2の粒子とが連結された複合体を形成させる。

【0017】
第1の粒子を構成する粒子は、それ自体が磁性粒子であってもよいし、磁性物質を被覆した粒子であってもよい。磁性粒子の材料は特に限定はされないが、通常、金属または金属酸化物の粒子であり、例えば、Ni粒子や金属鉄、Fe、γ-Fe、Co-γ-Fe、(NiCuZn)O・(CuZn)O・Fe、(MnZn)O・Fe、(NiZn)O・Fe、SrO・6Fe、BaO・6Fe、SiOで被覆したFe[Emzyme Microb. Technol., vol. 2, p. 2-10 (1980)参照]等の各種フェライト粒子、およびそれらと各種の高分子材料(例:ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリスチレン等)との複合粒子であってよい。第1の粒子の平均粒径は、通常、10nm~100μmであり、好ましくは50nm~5μmであり、より好ましくは100~500nmである。平均粒径は、一般的な動的光散乱測定装置を用いて測定することができる。

【0018】
第1の粒子の表面には、標的微生物のDNAの一鎖中の第1の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第1のプローブが担持されている。第1の領域は、標的微生物のDNAにおいて既知の塩基配列を有する領域から選択される。単一の標的微生物についての特異的検出が所望される場合、該微生物に特有の塩基配列を有する領域が第1の領域として選択される。あるいは、複数の標的微生物についての一括的検出が所望される場合、それらの微生物の間で相同性が高い塩基配列を有する領域が第1の領域として選択される。

【0019】
第1のプローブは、DNA、RNAまたは人工合成核酸(PNA、LNA、BNA等)であり得るが、通常、DNAである。プローブの塩基長としては、通常20~100塩基であり、好ましくは25~50塩基であり、より好ましくは25~30塩基である。

【0020】
上記のストリンジェントな条件としては、(1) 洗浄に低イオン強度および高温、例えば、50℃で0.015 M 塩化ナトリウム/0.0015 M クエン酸ナトリウム/0.1% 硫酸ドデシルナトリウムを使用し、(2) ホルムアミドのような変性剤、例えば、0.1% ウシ血清アルブミン/0.1% フィコール/0.1% ポリビニルピロリドン/750 mM 塩化ナトリウム、75 mM クエン酸ナトリウムを含む50 mM リン酸ナトリウム緩衝液 (pH 6.5) とともに、50% (v/v) ホルムアミドを42℃で使用することを特徴とする反応条件が例示される。あるいは、ストリンジェントな条件は、50% ホルムアミド、5xSSC (0.75 M NaCl、0.075 M クエン酸ナトリウム)、50 mM リン酸ナトリウム (pH 6.8)、0.1% ピロ燐酸ナトリウム、5xデンハート溶液、超音波処理鮭精子DNA (50 mg/ml)、0.1% SDS、及び10% 硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2xSSC及び50% ホルムアルデヒドで55℃で洗浄し、続いて55℃でEDTAを含有する0.1xSSCからなる高ストリンジェント洗浄を行うものであってもよい。当業者は、プローブ長等のファクターに応じて、ハイブリダイゼーション反応および/または洗浄時の温度、緩衝液のイオン強度等を適宜調節することにより、容易に所望のストリンジェンシーを実現することができる。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning, 2nd ed. (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
第1の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するプローブとしては、例えば、第1の領域の塩基配列に相補的な塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更により好ましくは約95%以上、特に好ましくは約97%以上、最も好ましくは100%の相同性を有する塩基配列を含有する核酸などが挙げられる。本明細書における核酸配列の相同性は、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST (National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool) を用い、以下の条件 (期待値=10; ギャップを許す; フィルタリング=ON; マッチスコア=1; ミスマッチスコア=-3) にて計算することができる。

【0021】
磁性粒子と第1のプローブとの結合様式としては、物理吸着、イオン結合、共有結合等が挙げられるが、不可逆的な結合を実現するために共有結合が望ましい。両者の共有結合は、核酸プローブの一つの末端に第一の官能基を導入し、該官能基と結合できる第二の官能基を磁性粒子に導入し、両者を結合することにより得ることができる。第一の官能基として、イソシアネート基、エポキシ基、ホルミル基、メルカプト基等が挙げられ、第二の官能基として、アミノ基が挙げられる。第一の官能基および第二の官能基の組み合わせを前記と逆のものとしてもよい。更に、第一の官能基として、マレイミジル基、α,β-不飽和カルボニル基、α-ハロカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、アジリジン基およびジスルフィド基等が挙げられ、第二の官能基としては、チオール基が挙げられる。第一の官能基および第二の官能基の組み合わせを前記と逆のものとしてもよい。官能基が導入された磁性粒子として、市販のものを利用することもできる。あるいは、後述の実施例に示されるように、磁性粒子にアミノ基を導入し、該アミノ基とSulfo-SMCCのN-ヒドロキシコハク酸活性化エステルとを反応させた後、更に反応生成物中のSulfo-SMCCに由来するマレイミド基と、末端にチオール基を導入した第1のプローブとを結合させてもよい。

【0022】
第2の粒子は、非磁性金属ナノ粒子から構成される。非磁性金属ナノ粒子としては、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム等のナノ粒子が挙げられる。安定性およびチオール基との親和性の観点から、金ナノ粒子が好ましい。第2の粒子の平均粒径は、通常、10~500nmであり、好ましくは10~100nmである。平均粒径は、一般的な動的光散乱測定装置を用いて測定することができる。

【0023】
第2の粒子の表面には、標的微生物のDNAの第1のプローブに関して述べたものと同じ一鎖中の、第1の領域とは重複しない第2の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する第2のプローブ、および、電気化学的活性物質が担持されている。第2の領域についても、第1の領域とは重複しないという条件の下で、第1の領域と同様の基準に従って選択することができる。該2つの領域は、通常、50~20000塩基、好ましくは100~300塩基だけ離れた位置に対応する。両領域が近過ぎる場合、一方のプローブと標的DNAとのハイブリダイゼーションが他方のプローブと標的DNAとのハイブリダイゼーションを妨害する可能性があり、一方、両領域が離れ過ぎている場合、ステムやヘアピンを形成する可能性がある。

【0024】
第2のプローブについても、DNA、RNAまたは人工合成核酸(PNA、LNA、BNA等)であり得るが、通常、DNAである。プローブの塩基長としては、通常20~100塩基であり、好ましくは25~50塩基であり、より好ましくは25~30塩基である。

【0025】
ストリンジェントな条件についても、第1のプローブで説明したものが適用される。
第2の領域の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するプローブとしては、例えば、第2の領域の塩基配列に相補的な塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更により好ましくは約95%以上、特に好ましくは約97%以上、最も好ましくは約100%の相同性を有する塩基配列を含有する核酸などが挙げられる。核酸配列の相同性は、上記と同様にして計算することができる。

【0026】
電気化学的活性物質は、電気化学的に検出可能な物質であって、かつ金属ナノ粒子に連結可能なものであれば特に制限されない。電気化学的活性物質は、例えば、可逆な酸化還元反応時に生じる酸化還元電流を測定することで物質の検出が可能な、酸化還元性を有する化合物を挙げることができる。具体的には、例えば、フェロセン、フェロセン誘導体(例:ヒドロキシメチルフェロセン、N,N,N-トリメチルアミノメチルフェロセン等)、p-アミノフェノール、フェロシアン化カリウム、ビピリジニウム誘導体等が挙げられる。

【0027】
第2のプローブおよび電気化学活性物質の金属ナノ粒子との結合様式は、互いに同じ種類のものであってもよいし、互いに異なる種類のものであってもよく、例えば、物理吸着、イオン結合、共有結合等が挙げられる。例えば、金属ナノ粒子とチオール基との親和性を利用して、チオール化した第2のプローブおよび電気化学活性物質を金属ナノ粒子と室温で混合し、自己組織化により第2のプローブおよび電気化学活性物質を金属ナノ粒子の表面に担持させることができる。

【0028】
上述の一本鎖DNA、第1の粒子および第2の粒子を接触させ、一本鎖DNA中の第1の領域と第1のプローブとの間、および、一本鎖DNA中の第2の領域と第2のプローブとの間でハイブリダイズさせることにより、一本鎖DNAを介して第1の粒子と第2の粒子とが連結された複合体を形成させる。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning, 2nd ed. (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、通常、室温~70℃(例:45℃)にて0.5~20時間(例:2時間)かけて行われる。

【0029】
[工程(3)]
工程(3)では、磁気的相互作用を介して複合体が回収される。回収は、例えば以下の通りに行うことができる。ハイブリダイゼーション後の反応液を含むマイクロチューブ等の容器の外側からマグネットを近付けて、第1の粒子との磁気的引力を生じさせ、それにより複合体を容器の壁面に吸着させる。その状態で溶液を廃棄する。不純物を排除するために、溶液廃棄後の容器内にリン酸カリウム緩衝液等の洗浄液を加えた後、上記と同様の磁気的分離を再度行うことが好ましい。

【0030】
[工程(4)]
工程(4)では、回収した複合体を電気化学測定に供し、それにより電気化学的活性物質を検出する。電気化学測定法は、電気化学的活性物質の検出が可能である限り、特に制限されない。作用極および対極からなる2電極方式を用いてもよいし、作用極、参照極および対極からなる3電極方式を用いてもよい。測定の信頼性を高めるために、3電極方式が好ましい。好ましい電極材料としては、例えば、作用極のためには白金、金、炭素、参照極のためには銀/塩化銀、対極のためには白金、金、炭素が挙げられる。また、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、フラーレン、デンドリマーおよびそれらの誘導体等のカーボン材料を用いることもできる。これらのカーボン材料は、それらの独特の特性(構造、導電性等)から電極材料に適しており、電極感度の増大をもたらし得る。所定の期間、所定の電位をスクリーンプリント電極にかけてバックグラウンドを安定化させてから測定を行うことが好ましい。バックグラウンドの安定後、適当な緩衝液(例:50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5))中に懸濁させたハイブリダイゼーション産物を電極に滴下し、電流を測定することができる。ハイブリダイゼーション産物の代わりに緩衝液のみを滴下して同様に電流を測定した時の電流値をバックグラウンドとし、サンプルにおいて観測された電流からバックグラウンドを差し引くことが好ましい。

【0031】
電流を増幅するために、電極上での酵素-基質反応を利用することも好ましい。この方法は、ハイブリダイゼーション産物と同様に酵素および基質を電極に滴下し、電極上で酵素反応を生じさせることにより行うことができる(ドロップ法)。ドロップ法は簡便であり、かつ高感度の測定を可能とする。一方、更に高感度の測定が所望される場合、酵素を電極上に多層に固定する方法を採用することもできる(レイヤー・バイ・レイヤー法)。電流測定のために電気化学的活性物質の酸化電位が印加される場合、電流を増幅するために、酸化酵素(オキシダーゼ)およびその基質が利用される。任意の酸化酵素と基質の組み合わせを利用できるが、例えば、L-プロリン脱水素酵素とL-プロリン、グルコースオキシダーゼとグルコース、グルタミン酸オキシダーゼとグルタミン酸、ピルビン酸オキシダーゼとピルビン酸、アルコールオキシダーゼとエタノール、乳酸オキシダーゼと乳酸、尿酸オキシダーゼと尿酸等が挙げられる。一方、電流測定のために電気化学的活性物質の還元電位が印加される場合、電流を増幅するために、還元酵素(レダクターゼ)およびその基質が利用される。任意の還元酵素と基質の組み合わせを利用できるが、例えば、アルドースレダクターゼとアルドース、硝酸レダクターゼと硝酸、ジヒドロ葉酸レダクターゼとジヒドロ葉酸、グルタチオンレダクターゼとグルタチオン等が挙げられる。酵素-基質反応のための適切な補因子もあわせて滴下することが好ましい。

【0032】
電気化学測定の結果として電気化学的活性物質が検出された場合、検査試料中には標的微生物が存在したことが決定される。

【0033】
(試薬キット)

【0034】
本発明はまた、上述の本発明の方法を実施するための試薬キットを提供する。該試薬キットは、上記の少なくとも1つの第1の粒子と上記の少なくとも1つの第2の粒子を組み合わせてなる。第1の粒子と第2の粒子は、別個の容器内に存在する形態であってもよいし、単一の容器内に混合された形態であってもよい。複数種類の第1の粒子および/または第2の粒子が試薬キット中に含まれてもよい。また、該試薬キットは、電気化学測定において電流を増幅するための上述の酵素および基質を含んでもよい。各用語の定義および好ましい態様は、本発明の方法において上述した通りである。

【0035】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0036】
1. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出
【実施例】
【0037】
本発明の方法を用いて、MRSAの検出試験を行った。
【実施例】
【0038】
[材料の調製]
MRSA
試験用のMRSAとしては、ATCC-70060 (ATCCTM)(関東化学より購入)を用いた。

プローブ
プローブの設計は、DNA Data Bank of Japan (DDBJ)等のゲノムDNAデータベースに登録されたMRSA DNAの配列情報に基づいて行った。MRSAのmecA領域の一部分と完全に相補的な塩基配列を有する以下の2種類のプローブを合成した。
DNAプローブ1:5’-TCTGGAACTTGTTGAGCAGAGGTTC-3’ (配列番号:1)
DNAプローブ2:5’-GCTTTGGTCTTTCTGCATTCCTGG-3’ (配列番号:2)

磁性ナノ粒子(MNP)-DNAプローブ1コンジュゲート
MNPの表面にDNAプローブ1が担持されたMNP-DNAプローブ1コンジュゲートを以下の通りに作製した。
MNPとしては、Therma-Max LAm Amine (Wako)を用いた。MNP (1mg)とSulfo-SMCC(300μg; Thermo Scientific)とを100mM リン酸緩衝液(pH 7.2)中、室温で2時間静置することにより、MNPのアミノ基とSulfo-SMCCのN-ヒドロキシコハク酸活性化エステルとを縮合させた。洗浄後、チオール化したDNAプローブ1 (5nmol)を加え、室温で8時間静置することにより、縮合物中のSulfo-SMCCに由来するマレイミド基をDNAプローブ1のチオール基と反応させ、MNP-DNAプローブ1コンジュゲートを得た。

金ナノ粒子(AuNP)-DNAプローブ2-フェロセンコンジュゲート
AuNPの表面にDNAプローブ2およびフェロセンが担持されたAuNP-DNAプローブ2-フェロセンコンジュゲートを以下の通りに作製した。
AuNPとしては、Gold colloid (15nm)(British BioCell International)を用いた。AuNP (500μg)と、チオール化したDNAプローブ2 (4nmol)と、11-フェロセニル-1-ウンデカンチオール (400nmol)とを水:エタノール中、室温で48時間撹拌し、チオールの金に対する自己組織化によりAuNP-DNAプローブ2-フェロセンコンジュゲートを得た。
【実施例】
【0039】
[ハイブリダイゼーションおよび磁気分離]
MRSAを溶菌し、フェノール・クロロホルム等により2本鎖ゲノムDNAを抽出した。抽出した2本鎖DNA (100μl)にMNP-DNAプローブ1コンジュゲートおよびAuNP-DNAプローブ2-フェロセンコンジュゲート(各3μl)を加えた後、熱処理(95℃, 10分)により2本鎖DNAを変性させ、1本鎖DNAにした。その後、45℃で2時間ハイブリダイゼーションさせた。42℃において、ハイブリダイゼーション産物を磁気分離した状態で溶液を除去した後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)で洗浄を行い、再び磁気分離を行い、ハイブリダイゼーション産物を回収した。
【実施例】
【0040】
[ハイブリダイゼーションの確認]
ハイブリダイゼーションを確認するために、PCRを行った。PCRは以下の手順で行った。
回収したハイブリダイゼーション産物を超純水にて3回洗浄したものをPCRのために用いた。PCR用の反応混合液の組成は以下の通りである。
【実施例】
【0041】
【表1】
JP2014226093A_000002t.gif
【実施例】
【0042】
PCRの条件は、94℃で5分の後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で9秒を30サイクル行い、72℃で7分の後、4℃で保存した。
PCR後のサンプルをアガロースゲルで電気泳動し、増幅されたDNA断片を確認した。電気泳動の結果を図1に示す。図1中、Mのレーンはマーカーに対応し、1および2のレーンはそれぞれ40.2μgおよび26.7μgのゲノムDNAと修飾ナノ粒子とをハイブリダイゼーションさせたものに対応し、3のレーンは24.6μgのゲノムDNA、4のレーンは修飾ナノ粒子のみで同様にハイブリダイゼーションの操作を行ったものに対応する。結果は、ハイブリダイゼーションさせたレーン1、2は146塩基対の位置にバンドが現れ、ハイブリダイゼーションさせていない3、4はバンドが現れなかったことを示している。これにより、本研究で合成したプローブ修飾ナノ粒子を用いることで、ハイブリダイゼーションが生じることや、ハイブリダイゼーション産物を分離、抽出できたことが確認された。
【実施例】
【0043】
[電気化学測定]
電気化学測定は、対極、参照極および作用極を有するスクリーンプリント電極(アズバイオ社)(電位制御装置:BAS社 Model 800B)を使用する3電極方式で行った。本研究では、フェロセンを酸化させ、この時の電子移動を電極で検知するというシステムを採用した。また、この電流を増幅するためにL-プロリンとL-プロリン脱水素酵素を電極上へドロップするドロップ法を使用した。基質と酵素の触媒反応により生じる電子が酸化体のフェロセンと反応することで、還元体のフェロセンを増やすことができる。そのため、フェロセンの酸化電位を印加することで、より多くの電子を電極に流すことが可能となる。図2には、基質および酵素を使用した場合と使用していない場合のサイクリックボルタンメトリーを示している。この図は、基質と酵素を用いることで、電流値を増幅できることを示している。
【実施例】
【0044】
電気化学測定は具体的には以下の通りに行った。
スクリーンプリント電極に+0.25Vの印加電位(vs. Ag/AgCl)を40分かけてバックグラウンドを安定させた。電極上に、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH 6.5) 10μlへ懸濁させたハイブリダイゼーション産物を滴下し、電流が安定した後に、100mM L-プロリン2μlおよび342pM L-プロリン脱水素酵素2μlを混合したものを滴下し、フェロセンの酸化による電流応答を測定した。電流応答は、基質および酵素の滴下前と滴下から100秒後の電流値の差をΔiとし、また、ハイブリダイゼーション産物の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH 6.5)を滴下し、その後同様に測定した時の電流値をバックグラウンドとし、サンプルにおいて観測されたΔiから差し引くことでサンプルの電流応答とした。電流応答の結果を下記表2および図3に示す。
【実施例】
【0045】
【表2】
JP2014226093A_000003t.gif
【実施例】
【0046】
結果が示すように、約7fmolのMRSA由来のゲノムDNAについて約100pAの電流応答が観測され、7fmolから17fmolの間である程度の直線性が得られた。
【実施例】
【0047】
更に、このセンシングシステムの選択性を確認するために、MRSAおよび大腸菌のDNAを用い、上記と同様の条件で測定を行った。結果を図4に示す。結果は、MRSAのDNAでは電流値の増幅が見られた一方、大腸菌のDNAでは電流値が増幅されていないことを示している。20.0fmolの大腸菌DNAに対して観測された電流応答は-30.5pAであった。以上のことから、本システムは標的DNAに対する高い選択性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の方法により、高い感度での有害微生物の検出を迅速、簡便かつ安価に行うことができる。本発明の方法は、プローブの選択により、あらゆる種類の微生物の検出を可能とする。電極上での酵素-基質反応を利用する実施形態により、更に高い感度の有害微生物の検出が可能となる。本発明はまた、そのような方法を行うための試薬キットも提供する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3