TOP > 国内特許検索 > 抗PROK1抗体及び抗VEGF抗体併用による大腸癌の治療 > 明細書

明細書 :抗PROK1抗体及び抗VEGF抗体併用による大腸癌の治療

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-127308 (P2015-127308A)
公開日 平成27年7月9日(2015.7.9)
発明の名称または考案の名称 抗PROK1抗体及び抗VEGF抗体併用による大腸癌の治療
国際特許分類 A61K  39/395       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  31/4745      (2006.01)
A61K  31/513       (2006.01)
A61K  31/282       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 39/395 E
A61K 39/395 T
A61P 35/00
A61K 31/4745
A61K 39/395 N
A61K 31/513
A61K 31/282
A61P 43/00 121
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-273140 (P2013-273140)
出願日 平成25年12月27日(2013.12.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼平成25年7月5日 第79回大腸癌研究会 プログラム・抄録集、第42頁にて発表 ▲2▼平成25年7月5日 第79回大腸癌研究会において文書(スライド)をもって発表 ▲3▼平成25年7月17日 第68回日本消化器外科学会総会抄録集にて発表 (演題「大腸癌における新規血管新生増殖因子:PROK1の個別化治療への可能性について」) ▲4▼平成25年7月17日 第68回日本消化器外科学会総会において文書(スライド)をもって発表 (演題「大腸癌における新規血管新生増殖因子:PROK1の個別化治療への可能性について」) ▲5▼平成25年7月17日 第68回日本消化器外科学会総会抄録集にて発表 (演題「抗Prokineticin1抗体による大腸癌の血管新生阻害効果の検討」) ▲6▼平成25年7月19日 第68回日本消化器外科学会総会において文書(スライド)をもって発表 (演題「抗Prokineticin1抗体による大腸癌の血管新生阻害効果の検討」) ▲7▼平成25年7月17日 第68回日本消化器外科学会総会抄録集にて発表 (演題「大腸癌細胞においてPROK1/EG-VEGF因子の発現はautocrine機構を介して浸潤能を亢進する」) ▲8▼平成25年7月19日 第68回日本消化器外科学会総会において文書(スライド)をもって発表 (演題「大腸癌細胞においてPROK1/EG-VEGF因子の発現はautocrine機構を介して浸潤能を亢進する」) ▲9▼平成25年9月30日 日本大腸肛門病学会雑誌、第739頁 第66巻第9号(2013年9月発行)(年間10号)にて発表 ▲10▼平成25年11月15日 第68回日本大腸肛門病学会学術集会において文書(スライド)をもって発表
発明者または考案者 【氏名】山口 明夫
【氏名】五井 孝憲
【氏名】中澤 俊之
【氏名】呉林 秀崇
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100122688、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 健二
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 4C085
4C086
4C206
Fターム 4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
要約 【課題】切除不能な進行再発大腸癌の新規治療手段を提供する。
【解決手段】抗PROK1抗体と抗VEGF抗体とを組み合わせてなる、大腸癌の治療剤。イリノテカン、セツキシマブ、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン及びパニツムマブから選択される少なくとも1種の抗癌剤を、さらに組み合わせてなる、該治療剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
抗PROK1抗体と抗VEGF抗体とを組み合わせてなる、大腸癌の治療剤。
【請求項2】
イリノテカン、セツキシマブ、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン及びパニツムマブから選択される少なくとも1種の抗癌剤を、さらに組み合わせてなる、請求項1に記載の治療剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗PROK1抗体と抗VEGF抗体とを組み合わせた大腸癌の治療等に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の欧米化等に伴い、日本での大腸癌の死亡数は男女共に増加傾向にあり、今後も増えることが予想されている。大腸癌は、癌が粘膜内あるいは粘膜下層に留まっている早期段階で発見される場合、内視鏡切除等によりほぼ100%の完治が可能である。しかし、癌が粘膜下層を越え、腸壁の固有筋層にまで浸潤している進行癌となると、腸の切除等が必要となる場合がある。しかも、ステージがさらに進行し、合併切除による侵襲、術後合併症や機能障害が予後改善度に見合わないと判断される症例等では切除不能と判断される。
【0003】
切除不能な進行再発大腸癌の治療薬として、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)ヒト化モノクローナル抗体製剤であるベバシズマブ(Bevacizumab)、抗EGFRヒト・マウスキメラ化モノクローナル抗体製剤であるセツキシマブ(Cetuximab)が使用されている。これらの使用により、切除不能な進行再発大腸癌であっても、生存期間が2年を超えるにまで至っている。しかし、癌の根治までには至っておらず、新規治療剤や治療方法等の開発が望まれている。
【0004】
近年、VEGFとは異なる新しい血管新生増殖因子として、内分泌腺の内皮細胞に対して選択的な内分泌腺由来血管成長因子Endocrine gland vascular endothelial growth factor(EG-VEGF;別名PROK1)が報告された(非特許文献1)。さらに、EG-VEGFが正常な大腸では発現が見られないのに対し、大腸癌において発現していること等が報告された(非特許文献2)。また、甲状腺癌や膵癌においても、EG-VEGFが発現していることが報告された(非特許文献3、4)。しかし、EG-VEGFに対する抗体(以下、抗PROK1抗体という)を、大腸癌等の癌の治療及び/又は予防に使用した例はない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Nature, 2001, 412(6850):877-884
【非特許文献2】Cancer Res., 2004, 64(6):1906-1910
【非特許文献3】Thyroid, 2011, 21(4):391-399
【非特許文献4】Pancreatology, 2009, 9(1-2):165-172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、切除不能な進行再発大腸癌の新規治療手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、抗PROK1抗体投与により、マウスに移植された大腸癌細胞近傍での血管新生が抑制され、また腫瘤形成率が低下することを見出した。抗VEGF抗体との併用により、これらの効果は、それぞれの単独投与と比較して顕著に増大した。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]抗PROK1抗体と抗VEGF抗体とを組み合わせてなる、大腸癌の治療剤、
[2]癌転移を抑制する、[1]に記載の治療剤、並びに
[3]イリノテカン、セツキシマブ、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン及びパニツムマブから選択される少なくとも1種の抗癌剤を、さらに組み合わせてなる、[1]又は[2]に記載の治療剤、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗PROK1抗体及び抗VEGF抗体の併用投与により、各抗体単独投与よりも、大腸癌周辺での血管新生がさらに抑制され、大腸癌の増殖、浸潤、転移をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】マウス皮下に移植された大腸癌細胞株(DLD1, HCT116, LoVo)の培養液近傍の皮膚組織における血管新生に及ぼす抗PROK1抗体、抗VEGF抗体及び両抗体併用の作用を示す図である。上段は、抗CD31抗体を用いた該皮膚組織の免疫組織化学染色像(HCT116)を示す。下段は、免疫組織化学染色の結果から微小血管密度を求め、大腸癌細胞株ごとに各投与群の血管新生抑制効果を比較した結果を示す。
【図2】マウス皮下に移植した大腸癌細胞(DLD1, HCT116, LoVo)の増殖に及ぼす抗PROK1抗体、抗VEGF抗体及び両抗体併用の作用を示す図である。上段は腫瘍体積、下段は腫瘍重量を示す。上段の横軸は大腸癌細胞移植後の日数を示す。
【図3】マウス皮下に移植された大腸癌細胞(DLD1, HCT116, LoVo)近傍の皮膚組織における血管新生に及ぼす抗PROK1抗体、抗VEGF抗体及び両抗体併用の作用を示す図である。上段は、抗CD31抗体を用いた該皮膚組織の免疫組織化学染色像(HCT116)を示す。下段は、免疫組織化学染色の結果から微小血管密度を求め、大腸癌細胞株ごとに各投与群の血管新生抑制効果を比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。

【0012】
本発明の抗体
本発明の大腸癌治療剤に用いられる抗PROK1抗体及び抗VEGF抗体(以下、「本発明の抗体」ともいう)は、それぞれPROK1又はその部分ペプチド及びVEGF又はその部分ペプチドと特異的に結合して、それらの機能(例えば、各々の受容体を介したMAPK、PIP3K-Akt経路の活性化等)を阻害する抗体であれば、いかなるものであってもよい。
本発明の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体の何れであってもよい。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgD又はIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体を包含する。好ましくは、IgGである。
また、本発明の抗体は、標的抗原を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab'、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv-Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。

【0013】
本発明において、抗PROK1抗体及び抗VEGF抗体を作製するためのPROK1抗原及びVEGF抗原は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、イヌ、ブタ、サル又はヒトを含む霊長類の哺乳動物を由来とすることができる。好ましくは、ヒト由来である。これらの配列は周知であり、例えば、ヒト由来のPROK1としては、塩基配列がGenBankアクセッション番号NM_032414(2013年4月17日更新)、それに基づくアミノ酸配列がGenBankアクセッション番号NP_115790(2013年4月17日更新)である。一方、ヒト由来のVEGFとしては、VEGFファミリー(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-D、VEGF-E、胎盤増殖因子(PlGF)-1、PlGF-2)に属するいずれのメンバーも抗原として利用することができ、例えば、ヒトVEGF-A(isoform 1)の塩基配列は、GenBankアクセッション番号NM_001025366(2013年12月15日更新)、それに基づくアミノ酸配列はGenBankアクセッション番号NP_001020537(2013年12月15日更新)としてNCBIデータベースに登録されている。

【0014】
他の哺乳動物におけるPROK1及びVEGFの塩基配列及びアミノ酸配列もGenBankに登録されており、これらを利用することができる。あるいは、前記周知の塩基配列をクエリーにして、ヒト以外の哺乳動物のゲノム及び/又はcDNAのデータベースに対してBLASTやFASTAを用いて検索を行う等により、所望の種由来の塩基配列を取得することができる。

【0015】
本発明の抗体の作製法
抗体の作製法は自体公知であり、当業者は周知の方法に従って抗体を製造することができる。例えば、モノクローナル抗体を作製する方法として、ポリエチレングリコールを用いた細胞融合法や電気的融合法等の融合方法、センダイウイルスやエプシュタイン-バール(Epstein-Barr)ウイルス等を用いた方法、遺伝子組み換えによる組み換え体や発癌プロモーター等による形質転換体を用いた方法等によっても調製することができる(Koehler,G.,Milstein,C.:Nature 256,495(1975))。

【0016】
具体的な抗原は、組換えヒトPROK1(又はVEGF)タンパク質を、大腸菌等を利用して作製・精製し、該タンパク質を必要に応じてアジュバント等と混合することにより調製することができる。該調製した抗原を免疫動物に免疫する。免疫動物としては、マウスやラットを用いるのが好ましいが、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ等も使用することができる。免疫動物への免疫方法としては、一般的には、皮下注射、筋肉注射、腹腔内注射等の注射によって行う。抗原の投与量は、所望の抗体価が得られ、かつ免疫動物に対して悪影響を与えない量であれば、適宜選択して決定することができる。免疫に際しては、免疫応答を促進するために、免疫原を必要に応じて、例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウム等のアジュバントと併用することもできる。合成ペプチドを免疫原として使用する場合には、BSA(Bovine Serum Albumin)、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanine)等のキャリアタンパク質と架橋剤で結合したものを使用することもできる。

【0017】
さらに、上記した抗原を免疫動物に免疫した後、抗体価の上昇を確認し、該免疫動物から脾臓を取り出して脾細胞を得、この脾細胞を免疫に用いた同種動物由来の継代培養した骨髄種細胞と、融合促進剤の存在下において緩衝液中で融合させてハイブリドーマを作製する。細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、例えば、マウス由来ミエローマP3/X63-AG8.653(653;ATCC No.CRL1580)、P3/NSI/1-Ag4-1(NS-1)、P3/X63-Ag8.U1(P3U1)、SP2/0-Ag14(Sp2/0、Sp2)、PAI、F0又はBW5147、ラット由来ミエローマ210RCY3-Ag.2.3.、ヒト由来ミエローマU-266AR1、GM1500-6TG-A1-2、UC729-6、CEM-AGR、D1R11又はCEM-T15が挙げられる。

【0018】
融合促進剤としては、ポリエチレングリコールや、センダイウイルス(HVJ)等を使用することができる。また、融合効率を向上させるために、培地には、ジメチルスルホキシド等の補助剤を必要に応じて添加することもできる。

【0019】
脾細胞と骨髄種細胞との細胞融合は、電気融合法等の常法に従って行うことができる。通常、両細胞を、細胞融合剤を添加した動物細胞用培地または平衡塩類溶液を、例えば、37℃で約2分間攪拌しながら培養する等の方法によって行うことができる。使用する動物細胞用培地としては、例えば、RPMI-1640培地、ハンクスMEM培地(Hanks′Minimum Essential Medium)、イーグルMEM培地(Eagle′s Minimum Essential Medium)等が挙げられ、平衡塩類溶液としては、例えば、ハンクス液(Hanks′ balanced salts solution)、アール液(Earle′s balanced salts solution)等が挙げられる。

【0020】
上記のようにして得られた細胞混合物から、PROK1(又はVEGF)タンパク質に特異性を有する抗PROK1(又はVEGF)モノクローナル抗体を産生する能力を有するハイブリドーマを選別する。具体的には、ハイブリドーマを、HAT培地(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン混合培地)等の選別用培地で培養することによって、目的とするハイブリドーマを選択的に増殖させる。HAT培地中での細胞混合物の濃度は、通常、約1×106~1×107個/mLの範囲となるように調整するのがよい。このHAT培地の培養は、通常、COを約5~8%含む空気中において約37℃で約1~4週間静置下にて行う。

【0021】
そして、例えば、RIA法、ELISA法、プラーク法、凝集反応法等により、前記能力の有無を確認する。さらに、選別されたハイブリドーマを、例えば、限界希釈法によってクローニングすることにより、PROK1(又はVEGF)に特異性を有する抗PROK1(又はVEGF)モノクローナル抗体を産生する能力を有する増殖可能なハイブリドーマ株を作製することができる。

【0022】
上記した方法で得られた抗PROK1(又はVEGF)モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、ヒトPROK1(又はVEGF)タンパク質を認識することができる。該ハイブリドーマは、通常の培地で継代培養することが可能であり、かつ、液体窒素中で長時間保存することもできる。

【0023】
さらに、上記のようにして得た免疫動物の抗血清、ハイブリドーマの培養上清や腹水より得られた抗体を、例えば、硫安塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の当該分野で通常行われている既知の精製方法により、抗PROK1(又はVEGF)モノクローナル抗体の精製を行うことができる。

【0024】
好ましい一実施態様において、本発明の抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用されることから、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体、具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス-ヒトキメラ抗体などであり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、後述する方法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、ヒト-ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定に且つ低コストで提供するためには、ヒト抗体産生動物(例:マウス)またはファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。

【0025】
キメラ抗体の作製
本明細書において「キメラ抗体」とは、重鎖及び軽鎖の可変領域(VH及びVL)の配列が非ヒト動物種に由来し、定常領域(CH及びCL)の配列がヒトに由来する抗体を意味する。可変領域の配列は、例えばマウス、ラット、ウサギ等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種由来であることが好ましく、定常領域の配列は投与対象となる動物種由来であることが好ましい。

【0026】
キメラ抗体の作製法としては、例えば米国特許第6,331,415号明細書に記載される方法あるいはそれを一部改変した方法などが挙げられる。

【0027】

得られたキメラ重鎖及びキメラ軽鎖発現ベクターで宿主細胞を形質転換する。有用な宿主細胞としては、動物細胞、例えば上記したマウス骨髄腫細胞の他、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル由来のCOS-7細胞、Vero細胞、ラット由来のGHS細胞などが挙げられる。遺伝子導入は動物細胞に適用可能ないかなる方法を用いてもよいが、好ましくはエレクトロポレーション法又はカチオン性脂質を用いた方法などが挙げられる。宿主細胞に適した培地中で一定期間培養後、培養上清を回収して抗体タンパク質を常法により精製することにより、本発明の抗体を単離することができる。あるいは、宿主細胞としてウシ、ヤギ、ニワトリ等のトランスジェニック技術が確立し、且つ家畜(家禽)として大量繁殖のノウハウが蓄積されている動物の生殖系列細胞を用い、常法によってトランスジェニック動物を作製することにより、得られる動物の乳汁もしくは卵から容易に且つ大量に本発明の抗体を得ることもできる。さらに、トウモロコシ、イネ、コムギ、ダイズ、タバコなどのトランスジェニック技術が確立し、且つ主要作物として大量に栽培されている植物細胞を宿主細胞として、プロトプラストへのマイクロインジェクションやエレクトロポレーション、無傷細胞へのパーティクルガン法やTiベクター法などを用いてトランスジェニック植物を作製し、得られる種子や葉などから大量に本発明の抗体を得ることも可能である。

【0028】
ヒト化抗体
本明細書において「ヒト化抗体」とは、可変領域に存在する相補性決定領域(CDR)以外のすべての領域(即ち、定常領域及び可変領域中のフレームワーク領域(FR))の配列がヒト由来であり、CDRの配列のみが他の哺乳動物種由来である抗体を意味する。他の哺乳動物種としては、例えばマウス、ラット、ウサギ等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種が好ましい。

【0029】
ヒト化抗体の作製法としては、例えば米国特許第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、欧州特許出願公開第239400号、国際公開第92/19759号に記載される方法あるいはそれらを一部改変した方法などが挙げられる。具体的には、上記キメラ抗体の場合と同様にして、ヒト以外の哺乳動物種(例、マウス)由来のVH及びVLをコードするDNAを単離した後、常法により自動DNAシークエンサー(例、Applied Biosystems社製等)を用いてシークエンスを行い、得られる塩基配列もしくはそこから推定されるアミノ酸配列を公知の抗体配列データベース[例えば、Kabat database (Kabatら,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,US Department of Health and Human Services, Public Health Service, NIH編, 第5版, 1991参照) 等]を用いて解析し、両鎖のCDR及びFRを決定する。決定されたFR配列に類似したFR配列を有するヒト抗体の軽鎖及び重鎖をコードする塩基配列のCDRコード領域を、決定された異種CDRをコードする塩基配列で置換した塩基配列を設計し、該塩基配列を20~40塩基程度のフラグメントに区分し、さらに該塩基配列に相補的な配列を、前記フラグメントと交互にオーバーラップするように20~40塩基程度のフラグメントに区分する。各フラグメントをDNAシンセサイザーを用いて合成し、常法に従ってこれらをハイブリダイズ及びライゲートさせることにより、ヒト由来のFRと他の哺乳動物種由来のCDRを有するVH及びVLをコードするDNAを構築することができる。より迅速かつ効率的に他の哺乳動物種由来CDRをヒト由来VH及びVLに移植するには、PCRによる部位特異的変異誘発を用いることが好ましい。そのような方法としては、例えば特開平5-227970号公報に記載の逐次CDR移植法等が挙げられる。
例えば、ヒト化抗ヒトVEGF抗体として、ベバシズマブ(Bevacizumab; 商品名: アバスチン (Avastin))が、ロシュ社及びジェネンテック社から販売されている。

【0030】
なお、上記のような方法によるヒト化抗体の作製において、CDRのアミノ酸配列のみを鋳型のヒト抗体FRに移植しただけでは、オリジナルの非ヒト抗体よりも抗原結合活性が低下することがある。このような場合、CDRの周辺のFRアミノ酸のいくつかを併せて移植することが効果的である。移植される非ヒト抗体FRアミノ酸としては、各CDRの立体構造を維持するのに重要なアミノ酸残基が挙げられ、そのようなアミノ酸残基はコンピュータを用いた立体構造予測により推定することができる。

【0031】
このようにして得られるVH及びVLをコードするDNAを、ヒト由来のCH及びCLをコードするDNAとそれぞれ連結して適当な宿主細胞に導入することにより、ヒト化抗体を産生する細胞あるいはトランスジェニック動植物を得ることができる。

【0032】
マウスCDRをヒト抗体の可変領域に移植するCDRグラフティングを用いずにヒト化抗体を作製する代替的方法として、例えば、抗体間での保存された構造-機能相関に基づいて、非ヒト可変領域内のどのアミノ酸残基が置換し得る候補であるかを決定する方法が挙げられる。この方法は、例えば欧州特許第0571613号、米国特許第5,766,886号、米国特許第5,770,196号、米国特許5,821,123号、米国特許第5,869,619号等の記載に従って実施することができる。また、当該方法を用いたヒト化抗体作製は、もととなる非ヒト抗体のVH及びVLの各アミノ酸配列情報が得られれば、例えば、Xoma社が提供する受託抗体作製サービスを利用することにより容易に行うことができる。

【0033】
ヒト化抗体もキメラ抗体と同様に遺伝子工学的手法を用いてscFv、scFv-Fc、minibody、dsFv、Fvなどに改変することができ、適当なプロモーターを用いることで大腸菌や酵母などの微生物でも生産させることができる。

【0034】
大腸癌治療剤
本発明は、抗PROK1抗体と抗VEGF抗体とを組み合わせてなる大腸癌治療剤(以下、「本発明の抗癌剤」ともいう)を提供する。本明細書において「組み合わせてなる」とは、抗PROK1抗体と抗VEGF抗体との併用により、それぞれの単独投与に比べて有意に大腸癌に対する治療効果が増大する限り、いかなる投与形態での併用をも包含する意味で用いられる。例えば、両抗体を合剤として、単一の製剤に製剤化することもできるし、あるいは各抗体を別個に製剤化して、同時に同一もしくは異なる投与経路で投与したり、順次、同一もしくは異なる投与経路で投与したりすることもできる。順次投与する場合はその順序は特に制限されない。

【0035】
本発明の抗癌剤は、医薬として許容される担体、希釈剤及び/又は添加剤と混合することができる。これらの物質は、抗体又はその断片の物理的、化学的、生物的構造を安定化するために添加される。

【0036】
本発明の抗癌剤に含まれる添加剤としては、賦形剤、安定剤、保存剤、希釈剤、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤等が挙げられるが、抗体又はその断片を安定に保つものであればよい。剤形としては、注射剤等の溶液剤が挙げられるが、これらに限定されない。

【0037】
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、緩衝剤、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)等と併用してもよい。緩衝剤としては、例えばクエン酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸塩緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、乳酸緩衝剤等が挙げられる。加えて、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、及びトリメチルアミン塩(例えばTris等)を使用することができる。
調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。

【0038】
本発明の抗癌剤は、さらに他の薬剤と併用することができる。
他の薬剤としては、抗癌剤、抗菌剤などが含まれる。

【0039】
抗癌剤としては、分子標的薬、アルキル化薬、白金化合物、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管阻害薬等が挙げられる。より具体的には、イリノテカン(CPT-11)、セツキシマブ、5-フルオロウラシル(5-FU)、オキサリプラチン(L-OHP)及びパニツムマブから選択される少なくとも1種の抗癌剤が挙げられる(但し、ベバシズマブとセツキシマブとの併用は無再発生生存期間と全生存期間中央値を有意に短縮するとの報告があるので、本発明の抗癌剤とセツキシマブとの併用には注意を要する)。

【0040】
抗菌剤としては、抗生物質;β-ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリペプチド系、グリコペプチド系、テトラサイクリン系が挙げられる。また、合成抗菌薬;ピリドンカルボン酸(キノロン)系、ニューキノロン系、オキサゾリジノン系、サルファ剤系から選択される少なくとも1種の抗菌剤が挙げられる。

【0041】
あるいは、抗癌剤による副作用(例えば、下痢、嘔吐、好中球減少、血小板減少、食欲不振等)を抑えるために、他の薬剤と併用してもよい。

【0042】
投与
本発明の抗PROK1抗体(及び/又は抗VEGF抗体)を含む抗癌剤は、医薬として許容される担体、賦形剤、希釈剤等と混合して、抗体医薬で一般に使用されている投与方法により、個体に投与することができる。例えば、静脈内投与、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、又は経口投与等が挙げられる。好ましくは、静脈内投与、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射であり、より好ましくは、静脈内投与である。ボーラス投与又は点滴による持続的な投与のいずれであってもよい。上述のように、抗PROK1抗体と抗VEGF抗体とをそれぞれ別個に製剤化して用いる場合、両製剤の投与経路は同一であっても異なっていてもよい。また、投与時期も、同時であっても異なっていてもよい。

【0043】
本発明の抗癌剤の投与量は、1又は複数回の独立した投与、又は連続的点滴で、各抗体量として約1 mg/kgから15 mg/kgであり得る。典型的な1回用量は、約5 mg/kgから約10 mg/kgの範囲である。
投与回数は、例えば1~2週間に1回の頻度で数回の投与又は2~3週間に1回の投与で約2ヶ月間である。

【0044】
本発明の抗癌剤は他の薬剤と、同時に、連続的に、又は別々に投与することができる。連続的投与は、1、2、3、4、5、6、7、又は8時間離して行ってもよい。あるいは、本発明の抗癌剤と、他の薬剤とが異なる日に患者に投与される場合、例えば、1日、2日、又は3日、1週間、2週間、又は1ヶ月間隔で投与してもよい。

【0045】
本発明の抗体は、さらに、FOLFOX療法、CapeOX療法、FOLFIRI療法、5-FU+LV療法、UFT+LV療法、から選択される少なくとも1種の療法と組み合わせて行うことができる。

【0046】
さらに、本発明は、再発したPROK1陽性癌に罹患した個体を治療するために、上記抗癌剤を使用することも含むことができる。

【0047】
別の態様として、本発明は、PROK1陽性癌に罹患した個体において、癌の転移を予防又は低減するために、上記抗癌剤を使用することも含むことができる。転移としては、肝転移、肺転移、腹膜播種、脳転移、骨転移等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1
3種類の大腸癌細胞株(DLD1, HCT116, LoVo)を3日間細胞培養した培養液、ならびに抗PROK1抗体、抗VEGF抗体を、以下(A群:大腸癌細胞株の培養液、B群:大腸癌細胞株の培養液+抗VEGF抗体、C群:大腸癌細胞株の培養液+抗PROK1抗体、D群:大腸癌細胞株の培養液+抗PROK1抗体+抗VEGF抗体)のようにメンブレンチャンバーに混入して、SHO-ヌードマウスの皮下に挿入した。1週間後、チャンバーに接した皮膚の血管状態を肉眼的に観察した。さらに、その皮膚組織から凍結切片を作製後、抗CD31抗体を用いた免疫組織化学染色法にて、微小血管密度を測定した。結果を図1に示す。いずれの大腸癌細胞株(DLD1, HCT116, LoVo)においても、マウス皮下組織の血管数が、抗PROK1抗体又は抗VEGF抗体の投与により有意に抑制されていた。さらに両抗体を併用すると、各抗体の単独投与の場合と比較して、血管新生の抑制効果が有意に増大した。
【実施例】
【0050】
実施例2
1×106個の大腸癌細胞株(DLD1, HCT116, LoVo) ならびに抗PROK1抗体、抗VEGF抗体を以下(A群:大腸癌細胞、B群:大腸癌細胞+抗VEGF抗体、C群:大腸癌細胞+抗PROK1抗体、D群:大腸癌細胞+抗PROK1抗体+抗VEGF抗体)のようにマトリゲル(100 μl)に混ぜ合わせた後、SHO-ヌードマウスの皮下に移植し、経時的に腫瘍の大きさを測定した。また、移植後3週間経過した時点で腫瘍を摘出し、重量の測定を行い、さらに、凍結切片の作製後に抗CD31抗体を用いた免疫組織化学染色法にて微小血管密度を測定した。結果を図2、3に示す。いずれの大腸癌細胞株(DLD1, HCT116, LoVo)においても、マウス皮下組織の血管数、腫瘍の大きさ、重量いずれも、抗PROK1抗体又は抗VEGF抗体の投与により有意に抑制されていた。さらに両抗体を併用すると、各抗体の単独投与の場合と比較して、血管新生の抑制効果及び腫瘍増殖抑制効果が有意に増大した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
抗PROK1抗体及び抗VEGF抗体の併用投与は、大腸癌、特に切除不能な進行再発大腸癌に対する新規かつ有効な治療手段となり得る点で有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2