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明細書 :ゲル繊維およびその不織布

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-137430 (P2015-137430A)
公開日 平成27年7月30日(2015.7.30)
発明の名称または考案の名称 ゲル繊維およびその不織布
国際特許分類 D01F   6/14        (2006.01)
D04H   1/42        (2012.01)
D04H   1/4382      (2012.01)
D04H   1/728       (2012.01)
C08G  65/333       (2006.01)
C08G  69/40        (2006.01)
A61L  15/44        (2006.01)
A61L  15/00        (2006.01)
FI D01F 6/14 Z
D04H 1/42
D04H 1/4382
D04H 1/728
C08G 65/333
C08G 69/40
A61L 15/03
A61L 15/00
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2014-008110 (P2014-008110)
出願日 平成26年1月20日(2014.1.20)
発明者または考案者 【氏名】浅井 華子
【氏名】小形 信男
【氏名】島田 直樹
【氏名】中根 幸治
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100122688、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 健二
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
審査請求 未請求
テーマコード 4C081
4J001
4J005
4L035
4L047
Fターム 4C081AA03
4C081AA12
4C081AA14
4C081BB02
4C081BB06
4C081CA181
4C081CE02
4C081DA04
4C081DA05
4C081DB01
4C081EA05
4J001DA02
4J001DB06
4J001DC05
4J001EB69
4J001EB74
4J001EC79
4J001EC83
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA13
4J001HA02
4J001JA10
4J001JA20
4J001JB21
4J001JC04
4J005AA04
4J005AA12
4J005BD05
4L035BB02
4L035BB07
4L035BB11
4L035DD13
4L035MC03
4L047AA18
4L047AB08
4L047BA08
4L047CB01
4L047CC03
4L047DA00
要約 【課題】物質透過性に優れたゲル材料を提供すること。
【解決手段】4本のポリエチレングリコール鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位を有するゲル繊維、およびそれから構成される不織布。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
4本のポリエチレングリコール鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位を有するゲル繊維。
【請求項2】
4本のポリエチレングリコール鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位が、
式(I):
【化1】
JP2015137430A_000010t.gif

(式中、
n11~n14は、それぞれ同一または異なって、25~250の数を示し、
11~R14は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-を示し、
15は、C1-7アルキレン基を示し、
16は、C1-3アルキレン基を示し、
17は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される構成単位、および
式(II):
【化2】
JP2015137430A_000011t.gif

(式中、
n21~n24は、それぞれ同一または異なって、20~250の数を示し、
21~R24は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示し、
25はC1-7アルキレン基を示し、
26は、C1-3アルキレン基を示し、
27は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される構成単位である請求項1に記載のゲル繊維。
【請求項3】
平均直径が100nm以上1000nm未満である請求項1または2に記載のゲル繊維。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のゲル繊維から構成される不織布。
【請求項5】
弾性率が1~30MPaである請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
平均細孔径が50nm以上2000nm未満である請求項4に記載の不織布。
【請求項7】
式(1):
【化3】
JP2015137430A_000012t.gif

(式中、
n11~n14は、それぞれ同一または異なって、25~250の数を示し、
11~R14は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-を示し、
15は、C1-7アルキレン基を示し、
16は、C1-3アルキレン基を示し、
17は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される化合物および第1のバッファーを含む第1の溶液と、
式(2):
【化4】
JP2015137430A_000013t.gif

(式中、
n21~n24は、それぞれ同一または異なって、20~250の数を示し、
21~R24は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示し、
25はC1-7アルキレン基を示し、
26は、C1-3アルキレン基を示し、
27は、C1-5アルキレン基を示し、
-COOR2a~-COOR2dは、それぞれ同一または異なって、活性エステル基を示す。)
で表される化合物および第2のバッファーを含む第2の溶液と
を、式(1)で表される化合物の量が式(2)で表される化合物の量よりも過剰となるように混合して、ゲル前駆体溶液を製造する工程、
得られたゲル前駆体溶液を静電紡糸することによって、ゲル前駆体繊維を製造する工程、および
得られたゲル前駆体繊維を、式(2)で表される化合物を含む処理液に浸漬させることによってゲル繊維を得る工程を含む、ゲル繊維の製造方法。
【請求項8】
ゲル前駆体溶液の製造において、式(1)で表される化合物の量が、式(2)で表される化合物1モルに対して3~6モルである請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
2a~R2dがスクシンイミジル基である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
式(1):
【化5】
JP2015137430A_000014t.gif

(式中、
n11~n14は、それぞれ同一または異なって、25~250の数を示し、
11~R14は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-を示し、
15は、C1-7アルキレン基を示し、
16は、C1-3アルキレン基を示し、
17は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される化合物および第1のバッファーを含む第1の溶液と、
式(2):
【化6】
JP2015137430A_000015t.gif

(式中、
n21~n24は、それぞれ同一または異なって、20~250の数を示し、
21~R24は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示し、
25はC1-7アルキレン基を示し、
26は、C1-3アルキレン基を示し、
27は、C1-5アルキレン基を示し、
-COOR2a~-COOR2dは、それぞれ同一または異なって、活性エステル基を示す。)
で表される化合物および第2のバッファーを含む第2の溶液と
を、式(1)で表される化合物の量が式(2)で表される化合物の量よりも過剰となるように混合して、ゲル前駆体溶液を製造する工程、
得られたゲル前駆体溶液を静電紡糸することによって、ゲル前駆体繊維の不織布を製造する工程、および
得られたゲル前駆体繊維の不織布を、式(2)で表される化合物を含む処理液に浸漬させることによってゲル繊維の不織布を得る工程を含む、不織布の製造方法。
【請求項11】
ゲル前駆体溶液の製造において、式(1)で表される化合物の量が、式(2)で表される化合物1モルに対して3~6モルである請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
2a~R2dがスクシンイミジル基である請求項10に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、4本のポリエチレングリコール鎖(以下「PEG鎖」と略称することがある)を有する四分岐化合物に由来する構成単位を有するゲルから構成される繊維(以下「ゲル繊維」と略称することがある)およびその不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
4本のPEG鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位を有するゲルは、水の存在下でも溶解せず安定に存在することができるハイドロゲルであり、人工軟骨等への応用が期待されている(特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
特許文献1および非特許文献1には、(a)2種の四分岐化合物の溶液を容器(型)中にキャストし、その中でゲルを形成するキャスト法、または(b)ゲルを形成したい部位に2種の四分岐化合物の溶液をシリンジで注入し、その場所でゲルを形成する方法が開示されている。しかし、これらの方法で製造されたゲルは、空隙をほとんど有さず、物質透過性や細胞浸潤性が低いといった問題があった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2010/070775号
【0005】

【非特許文献1】Sakai, T. et al., American Chemical Society, Macromolecules, 2008, 41, 5379-5384.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、物質透過性に優れたゲル材料を提供することにある。詳しくは、本発明の目的は、4本のポリエチレングリコール鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位を有するゲル繊維およびその不織布を提供することにある。このようなゲル繊維の不織布は、従来の製造方法で得られたゲルには無い空隙を有し、優れた物質透過性が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、従来のように2種の四分岐化合物を等量で混合していきなりゲルを形成するのではなく、まず、1種の四分岐化合物(例えば、下記式(1)で表される化合物)を、もう1種の四分岐化合物(例えば、下記式(2)で表される化合物))よりも過剰となるようにこれらの溶液を混合してゲル前駆体溶液を製造し、得られたゲル前駆体溶液から静電紡糸によってゲル前駆体繊維またはその不織布を製造し、得られたゲル前駆体繊維またはその不織布をもう1種の四分岐化合物(例えば、下記式(2)で表される化合物)で後処理(即ち、追加架橋)することによって、親水性でありながら、水に不溶であるゲル繊維およびその不織布を製造できることを見出した。この知見に基づく本発明は、以下の通りである。
【0008】
[1] 4本のポリエチレングリコール鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位を有するゲル繊維。
[2] 4本のポリエチレングリコール鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位が、
式(I):
【0009】
【化1】
JP2015137430A_000002t.gif

【0010】
(式中、
n11~n14は、それぞれ同一または異なって、25~250の数を示し、
11~R14は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-を示し、
15は、C1-7アルキレン基を示し、
16は、C1-3アルキレン基を示し、
17は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される構成単位、および
式(II):
【0011】
【化2】
JP2015137430A_000003t.gif

【0012】
(式中、
n21~n24は、それぞれ同一または異なって、20~250の数を示し、
21~R24は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示し、
25はC1-7アルキレン基を示し、
26は、C1-3アルキレン基を示し、
27は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される構成単位である前記[1]に記載のゲル繊維。
[3] 平均直径が100nm以上1000nm未満である前記[1]または[2]に記載のゲル繊維。
[4] 前記[1]~[3]のいずれか一つに記載のゲル繊維から構成される不織布。
[5] 弾性率が1~30MPaである前記[4]に記載の不織布。
[6] 平均細孔径が50nm以上2000nm未満である前記[4]に記載の不織布。
[7] 式(1):
【0013】
【化3】
JP2015137430A_000004t.gif

【0014】
(式中、
n11~n14は、それぞれ同一または異なって、25~250の数を示し、
11~R14は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-を示し、
15は、C1-7アルキレン基を示し、
16は、C1-3アルキレン基を示し、
17は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される化合物および第1のバッファーを含む第1の溶液と、
式(2):
【0015】
【化4】
JP2015137430A_000005t.gif

【0016】
(式中、
n21~n24は、それぞれ同一または異なって、20~250の数を示し、
21~R24は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示し、
25はC1-7アルキレン基を示し、
26は、C1-3アルキレン基を示し、
27は、C1-5アルキレン基を示し、
-COOR2a~-COOR2dは、それぞれ同一または異なって、活性エステル基を示す。)
で表される化合物および第2のバッファーを含む第2の溶液と
を、式(1)で表される化合物の量が式(2)で表される化合物の量よりも過剰となるように混合して、ゲル前駆体溶液を製造する工程、
得られたゲル前駆体溶液を静電紡糸することによって、ゲル前駆体繊維を製造する工程、および
得られたゲル前駆体繊維を、式(2)で表される化合物を含む処理液に浸漬させることによってゲル繊維を得る工程を含む、ゲル繊維の製造方法。
[8] ゲル前駆体溶液の製造において、式(1)で表される化合物の量が、式(2)で表される化合物1モルに対して3~6モルである前記[7]に記載の製造方法。
[9] R2a~R2dがスクシンイミジル基である前記[7]に記載の製造方法。
[10] 式(1):
【0017】
【化5】
JP2015137430A_000006t.gif

【0018】
(式中、
n11~n14は、それぞれ同一または異なって、25~250の数を示し、
11~R14は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-を示し、
15は、C1-7アルキレン基を示し、
16は、C1-3アルキレン基を示し、
17は、C1-5アルキレン基を示す。)
で表される化合物および第1のバッファーを含む第1の溶液と、
式(2):
【0019】
【化6】
JP2015137430A_000007t.gif

【0020】
(式中、
n21~n24は、それぞれ同一または異なって、20~250の数を示し、
21~R24は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示し、
25はC1-7アルキレン基を示し、
26は、C1-3アルキレン基を示し、
27は、C1-5アルキレン基を示し、
-COOR2a~-COOR2dは、それぞれ同一または異なって、活性エステル基を示す。)
で表される化合物および第2のバッファーを含む第2の溶液と
を、式(1)で表される化合物の量が式(2)で表される化合物の量よりも過剰となるように混合して、ゲル前駆体溶液を製造する工程、
得られたゲル前駆体溶液を静電紡糸することによって、ゲル前駆体繊維の不織布を製造する工程、および
得られたゲル前駆体繊維の不織布を、式(2)で表される化合物を含む処理液に浸漬させることによってゲル繊維の不織布を得る工程を含む、不織布の製造方法。
[11] ゲル前駆体溶液の製造において、式(1)で表される化合物の量が、式(2)で表される化合物1モルに対して3~6モルである前記[10]に記載の製造方法。
[12] R2a~R2dがスクシンイミジル基である前記[10]に記載の製造方法。
【0021】
以下では、式(1)または式(2)で表される化合物を、それぞれ化合物(1)または化合物(2)と略称し、式(I)または式(II)で表される構成単位を、それぞれ構成単位(I)または構成単位(II)と略称することがある。
また、前記式(1)等における「CO」とは、エチレンオキシ基(CHCHO)を示し、「Ca-b」とは、炭素数がa以上b以下であることを示す。
【発明の効果】
【0022】
本発明のゲル繊維は、親水性であるPEG鎖を分子中に有するにもかかわらず、四分岐化合物に由来する構成単位による架橋構造を有するため、水に不溶である。また、本発明のゲル繊維の不織布は、その空隙のために、優れた物質透過性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で得られた不織布の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた不織布を水で膨潤させ、その後に乾燥させて得られた不織布の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】キャスト法により製造したゲルを水で膨潤させ、その後に凍結乾燥させて得られたスポンジ状のゲルの走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1で得られた不織布の引張応力およびひずみのグラフである。
【図5】実施例2で得られた不織布の引張応力およびひずみのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[ゲル繊維またはその不織布]
本発明は、4本のPEG鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位を有するゲル繊維およびそれから構成される不織布を提供する。本発明のゲル繊維およびその不織布は、分子中にPEG鎖を有するため親水性でありながら、四分岐化合物に由来する構成単位による架橋構造を有するため水に不溶であるという特徴を有する。さらに、本発明のゲル繊維の不織布は、その空隙のために、従来のキャスト法等で製造されたゲルに比べて、優れた物質透過性を有する。

【0025】
4本のPEG鎖を有する四分岐化合物に由来する構成単位としては、例えば、化合物(1)に由来する構成単位(I)および化合物(2)に由来する構成単位(II)が挙げられる。式(I)中の基等の定義および好ましい説明は、後述する式(1)のものと同じである。また、式(II)中の基等の定義および好ましい説明は、後述する式(2)のものと同じである。

【0026】
本発明のゲル繊維および本発明の不織布に含まれるゲル繊維の平均直径は、好ましくは100nm以上1000nm未満、より好ましくは200~400nmである。なお、ゲル繊維は、水に膨潤させた後に乾燥すると、形状等が変わるため(図1および2参照)、上述の平均直径は、製造後、水に膨潤させていないゲル繊維の値である。このゲル繊維の平均直径の測定法は後述の実施例に記載する。

【0027】
本発明の不織布の弾性率は、好ましくは1~30MPa、より好ましくは7~30MPaであり、その平均細孔径は、好ましくは50nm以上2000nm未満、より好ましくは100~1000nmであり、その単位体積あたりの質量は、好ましくは0.2~0.7g/cm、より好ましくは0.3~0.6g/cmである。なお、上述の弾性率および平均細孔径の値は、製造後、水に膨潤させていない不織布の値である。これら不織布の弾性率、平均細孔径および単位体積あたりの質量の測定法は後述の実施例に記載する。

【0028】
[ゲル繊維またはその不織布の製造方法]
[化合物(1)]
本発明の製造方法に関して、まず、化合物(1)から説明する。式(1)中、n11~n14は、それぞれ同一または異なって、25~250の数を示す。n11~n14は、それぞれ同一であることが好ましい。なお以下では、n11~n14等が同一である場合は「それぞれ同一」との記載を省略する。即ち、n11~n14は、好ましくは25~250の数である。また、n11~n14は、より好ましくは50~250、さらに好ましくは100~250の数、特に好ましくは150~250の数である。n11~n14は、後述する実施例に記載の方法で測定した化合物(1)の数平均分子量から算出することができる。

【0029】
式(1)中、R11~R14は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-を示す。R11~R14は、それぞれ同一であることが好ましい。即ち、R11~R14は、好ましくはC1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-である。前記式中、R15は、C1-7アルキレン基を示し、R16は、C1-3アルキレン基を示し、R17は、C1-5アルキレン基を示す。

【0030】
本明細書中、アルキレン基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。C1-7アルキレン基としては、例えば、-CH-、-(CH-、-CH(CH)-、-(CH-、-(CH-、-(CH(CH))-、-(CH-CH(CH)-、-(CH-CH(CH)-、-(CH-CH(C)-、-(CH-、-(CH-C(C-、-(CH-および-(CHC(CHCH-等が挙げられる。C1-5アルキレン基の例示としては、C1-7アルキレン基の例示の中で炭素数が1~5のものが挙げられる。C1-3アルキレン基の例示としては、C1-7アルキレン基の例示の中で炭素数が1~3のものが挙げられる。

【0031】
本明細書中、アルケニレン基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。また、アルケニレン基は、二重結合を1個のみ有するものでもよく、二重結合を2個以上有するものでもよい。C2-7アルケニレン基としては、例えば、上述のC1-7アルキレン基の例示の中で水素原子を除いて形成される二重結合を有する2価の炭化水素基であって、炭素数が2~7個のものが挙げられる。

【0032】
11~R14は、より好ましくはC1-7アルキレン基であり、さらに好ましくは-CH-、-(CH-、-(CH-または-(CH-であり、特に好ましくは-(CH-、-(CH-または-(CH-である。

【0033】
好ましい化合物(1)では、n11~n14が25~250の数であり、R11~R14がC1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R15-、-CO-R15-、-R16-O-R17-、-R16-NH-R17-、-R16-COO-R17-、-R16-COO-NH-R17-、-R16-CO-R17-または-R16-CO-NH-R17-である。より好ましい化合物(1)では、n11~n14が50~250であり、R11~R14がC1-7アルキレン基である。さらに好ましい化合物(1)では、n11~n14が100~250の数であり、R11~R14が-CH-、-(CH-、-(CH-または-(CH-である。特に好ましい化合物(1)では、n11~n14が150~250の数であり、R11~R14が-(CH-、-(CH-または-(CH-である。

【0034】
化合物(1)は、公知の有機合成法によって製造することができる。例えば、特許文献1または非特許文献1に記載されているように、ペンタエリトリトールにエチレンオキシドを付加させてPEG鎖を形成し、このPEG鎖の末端のヒドロキシ基に化合物を反応させて、末端にアミノ基を形成することができる。また、化合物(1)は、有機合成の委託会社(例えば、日油株式会社等)から入手することができる。

【0035】
[化合物(2)]
次に、本発明の製造方法で使用する化合物(2)を説明する。式(2)中、n21~n24は、それぞれ同一または異なって、20~250の数を示す。n21~n24は、それぞれ同一であることが好ましい。即ち、n21~n24は、好ましくは20~250の数である。また、n21~n24は、より好ましくは50~250の数、さらに好ましくは100~250の数、特に好ましくは150~250の数である。n21~n24は、後述する実施例に記載の方法で測定した化合物(2)の数平均分子量から算出することができる。

【0036】
式(2)中、R21~R24は、それぞれ同一または異なって、C1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示す。R21~R24は、それぞれ同一であることが好ましい。即ち、R21~R24は、好ましくはC1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-を示す。前記式中、R25はC1-7アルキレン基を示し、R26は、C1-3アルキレン基を示し、R27は、C1-5アルキレン基を示す。アルキレン基およびアルケニレン基の説明は、上述した通りである。

【0037】
21~R24は、より好ましくは-CO-R25-(前記式中、R25はC1-7アルキレン基を示す)であり、さらに好ましくは-CO-R25-(前記式中、R25はC1-5アルキレン基を示す)である。

【0038】
式(2)中、-COOR2a~-COOR2dは、それぞれ同一または異なって、活性エステル基を示す。-COOR2a~-COOR2dは、それぞれ同一の活性エステル基であることが好ましい。活性エステル基としては、有機合成(例えばエステル合成、ペプチド合成等)で公知のものを使用することができる。

【0039】
活性エステル基を構成するR2a~R2dとしては、例えばスクシンイミジル基、スルホスクシンイミジル基(例:3-スルホスクシンイミジル基)、1-マレイミジル基、フタルイミジル基、1-イミダゾリル基、ニトロフェニル基(例:4-ニトロフェニル基)等が挙げられる。R2a~R2dは、好ましくはスクシンイミジル基、スルホスクシンイミジル基、1-マレイミジル基、フタルイミジル基、1-イミダゾリル基またはニトロフェニル基であり、より好ましくはスクシンイミジル基である。

【0040】
好ましい化合物(2)では、n21~n24が20~250の数であり、R21~R24がC1-7アルキレン基、C2-7アルケニレン基、-NH-R25-、-CO-R25-、-R26-O-R27-、-R26-NH-R27-、-R26-COO-R27-、-R26-COO-NH-R27-、-R26-CO-R27-または-R26-CO-NH-R27-(前記式中、R25はC1-7アルキレン基を示し、R26は、C1-3アルキレン基を示し、R27は、C1-5アルキレン基を示す)であり、R2a~R2dがスクシンイミジル基、スルホスクシンイミジル基、1-マレイミジル基、フタルイミジル基、1-イミダゾリル基またはニトロフェニル基である。より好ましい化合物(2)では、n21~n24が50~250の数であり、R21~R24が-CO-R25-(前記式中、R25はC1-7アルキレン基を示す)であり、R2a~R2dがスクシンイミジル基である。さらに好ましい化合物(2)では、n21~n24が100~250の数であり、R21~R24が-CO-R25-(前記式中、R25はC1-5アルキレン基を示す)であり、R2a~R2dがスクシンイミジル基である。特に好ましい化合物(2)では、n21~n24が150~250の数であり、R21~R24が-CO-R25-(前記式中、R25はC1-5アルキレン基を示す)であり、R2a~R2dがスクシンイミジル基である。

【0041】
化合物(2)は、公知の有機合成法によって製造することができる。例えば、特許文献1または非特許文献1に記載されているように、ペンタエリトリトールにエチレンオキシドを付加させてPEG鎖を形成し、このPEG鎖の末端のヒドロキシ基に化合物を反応させて、末端に活性エステル基を形成することができる。また、化合物(2)は、有機合成の委託会社(例えば、日油株式会社等)から入手することができる

【0042】
[ゲル前駆体溶液の製造]
本発明の製造方法は、化合物(1)および第1のバッファーを含む第1の溶液と、化合物(2)および第2のバッファーを含む第2の溶液とを、化合物(1)の量が化合物(2)の量よりも過剰となるように混合して、ゲル前駆体溶液を製造する工程を含む。化合物(1)および(2)はいずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

【0043】
本明細書においてバッファーとは、酸または塩基を加えてもpHがあまり変化しない水溶液を意味する。バッファーとしては、例えば、生化学の分野で公知のものを使用することができる。バッファーのpHは、好ましくは5~9、より好ましくは5~8である。バッファーとしては、例えば、クエン酸バッファー(pH:3.0~6.2)、酢酸バッファー(pH:3.6~5.6)、クエン酸-リン酸バッファー(pH:2.6~7.0)、リン酸バッファー(pH:5.8~8.0)、トリス-塩酸バッファー(pH:7.2~9.0)、グリシン-水酸化ナトリウムバッファー(pH:8.6~10.6)、リン酸緩衝食塩水(PBSバッファー、pH:7.4)、トリス緩衝食塩水(TBS、pH:7.4)等が挙げられる。バッファーとしては、リン酸バッファー、クエン酸-リン酸バッファーが好ましい。バッファー中の緩衝化剤の合計濃度(例えば、リン酸バッファーであれば、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムの合計濃度)は、好ましくは25~100mM、より好ましくは50~100mMである。

【0044】
第1の溶液のpHは、好ましくは5~8であり、第2の溶液のpHは、好ましくは5~6.5である。

【0045】
第1の溶液中の化合物(1)の濃度は、好ましくは4.5~15重量%、より好ましくは8~14重量%である。第2の溶液中の化合物(2)の濃度は、好ましくは1.5~6重量%、より好ましくは1.6~5重量%である。

【0046】
ゲル前駆体溶液の製造における化合物(1)の量は、化合物(2)1モルに対して、好ましくは3~6モル、より好ましくは5~6モル、さらに好ましくは5~5.6モルである。このように、化合物(2)に対して過剰の化合物(1)を使用することによって、静電紡糸に用いることができるゲル前駆体溶液を製造することができる。

【0047】
第1の溶液と第2の溶液とを混合させる温度は、好ましくは10~30℃、より好ましくは10~25℃であり、その混合時間は、好ましくは1~3時間、より好ましくは1~2時間である。

【0048】
得られるゲル前駆体溶液中の化合物(1)の濃度は、好ましくは4.5~15重量%、より好ましくは8~14重量%である。一方、化合物(2)の濃度は、上述の化合物(2)1モルに対する化合物(1)の量が上述の好ましい範囲となるように調整することが好ましい。

【0049】
静電紡糸をより一層容易に行うために、ゲル前駆体溶液に直鎖ポリエチレングリコール(以下「直鎖PEG」と略称することがある)を含有させてもよい。直鎖PEGの粘度平均分子量は、好ましくは30万~60万、より好ましくは30万~50万である。

【0050】
ゲル前駆体溶液中の直鎖PEGの濃度は、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1.5~2重量%である。また、化合物(1)100重量部に対する直鎖PEGの量は、好ましくは10~90重量部、より好ましくは18~20重量部である。

【0051】
直鎖PEGの添加方法に特に限定は無く、第1の溶液と第2の溶液とを混合させて得られたゲル前駆体溶液に直鎖PEGを添加してもよく、あらかじめ直鎖PEGを含有させた第1の溶液または第2の溶液を調製し、その後に第1の溶液と第2の溶液とを混合させて直鎖PEGを含有するゲル前駆体溶液を調製してもよい。ゲル前駆体溶液のゲル化の防止等の観点から、あらかじめ直鎖PEGを含有させた第1の溶液を調製し、これと第2の溶液とを混合して、直鎖PEGを含有するゲル前駆体溶液を調製することが好ましい。

【0052】
[ゲル前駆体繊維の製造]
本発明のゲル繊維の製造方法は、得られたゲル前駆体溶液を静電紡糸することによってゲル前駆体繊維を製造する工程を含む。静電紡糸は、公知の方法によって行えばよい。静電紡糸のための印加電圧は、好ましくは10~25kV、より好ましくは15~20kVであり、ノズル-コレクター間距離は、好ましくは10~25cm、より好ましくは20~23cmであり、ゲル前駆体溶液の流速は、好ましくは0.25~1mL/時間、より好ましくは0.5~0.75mL/時間である。

【0053】
[ゲル前駆体繊維の不織布の製造]
本発明の不織布の製造方法では、得られたゲル前駆体溶液を静電紡糸することによって、ゲル前駆体繊維の不織布を製造する工程を含む。例えば、得られたゲル前駆体溶液を静電紡糸して、ゲル前駆体繊維を静電紡糸装置のコレクター上に堆積させることによって、得られたゲル前駆体溶液から、直接、ゲル前駆体繊維の不織布を製造する工程を含む。静電紡糸は、公知の方法によって行えばよい。静電紡糸のための好ましい条件は、上述した通りである。

【0054】
[後処理(追加架橋)によるゲル繊維またはその不織布の製造]
本発明の製造方法は、得られたゲル前駆体繊維またはその不織布を、化合物(2)を含む処理液(以下「処理液1」と略称することがある)に浸漬させることによって、ゲル前駆体繊維の追加架橋を行い、ゲル繊維またはその不織布を得る工程を含む。処理液1のための化合物(2)としては、ゲル前駆体溶液の製造と同じものを使用してもよく、異なるものを使用してもよい。処理液1には、ゲル前駆体溶液の製造と同じ化合物(2)を使用することが好ましい。

【0055】
処理液1は、分散媒中に化合物(2)および水が分散した分散液であることが好ましい。分散媒としては、直鎖PEGと水を溶解しない溶媒が挙げられる。直鎖PEGと水を溶解しない溶媒は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。直鎖PEGと水を溶解しない溶媒としては、例えば、炭素数6以上の脂肪族アルコール(即ち、高級アルコール)等が挙げられる。脂肪族アルコールは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。脂肪族アルコールの炭素数は、好ましくは6~10、より好ましくは8~10である。処理液1の分散媒は1-オクタノールであることがさらに好ましい。

【0056】
追加架橋を良好に行うために、処理液1中の化合物(2)の量は、好ましくはゲル前駆体繊維またはその不織布中に計算上含まれる化合物(1)の量の1~4重量倍、より好ましくは2~3重量倍である。なお、ゲル前駆体繊維またはその不織布中に計算上含まれる化合物(1)の量は、後述する実施例に記載するように、ゲル前駆体繊維またはその不織布の成分合計(即ち、直鎖PEGを使用しない場合は、化合物(1)および化合物(2)の合計。直鎖PEGを使用する場合は、化合物(1)、化合物(2)および直鎖PEGの合計)中の化合物(1)の割合と、得られたゲル前駆体繊維またはその不織布の量との積として算出することができる。この化合物(2)の量が1重量倍未満であると、追加架橋が十分に進行しない場合があり、4重量倍以上では得られるゲル繊維またはその不織布の物性に違いが見られなくなる。

【0057】
処理液1中の水の濃度は、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1.2~1.6重量%である。この水の濃度が1重量%未満であると、化合物(2)を処理液1中に分散できなくなる場合があり、逆に4重量%を超えると、水と分散媒が分離してしまい、均一な処理液を得ることができなくなる。

【0058】
処理液1は、あらかじめ調製した化合物(2)の水溶液と分散媒とを混合し、得られた混合物を、例えば高速撹拌または超音波処理することによって製造することができる。

【0059】
追加架橋を良好に行うために、処理液1中へのゲル前駆体繊維またはその不織布の浸漬時間は、好ましくは30分~10時間、より好ましくは1~3時間であり、その浸漬温度は、好ましくは10~30℃、より好ましくは20~25℃である。良好な操作性のために、網に固定したゲル前駆体繊維またはその不織布を、処理液1に浸漬させることが好ましい。固定のための網としては、例えば、ポリプロピレン網等のプラスチック製の網が挙げられる。

【0060】
処理液1中への浸漬後、得られたゲル繊維またはその不織布を処理液1から取り出し、ふき取り等によって余分な処理液1を除去した後、化合物(2)を含有しない処理液(以下「処理液2」と略称することがある)中にゲル繊維またはその不織布を浸漬させて、ゲル繊維またはその不織布から未反応成分を除去することが好ましい。

【0061】
処理液2は、分散媒中に水が分散した分散液であることが好ましい。また、処理液2の分散媒は、処理液1の分散媒と同じでもよく、異なっていてもよい。処理液2の分散媒としては、直鎖PEGと水を溶解しない溶媒が挙げられる。直鎖PEGと水を溶解しない溶媒は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。直鎖PEGと水を溶解しない溶媒としては、例えば、炭素数6以上の脂肪族アルコール(即ち、高級アルコール)等が挙げられる。脂肪族アルコールは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。脂肪族アルコールの炭素数は、好ましくは6~10、より好ましくは8~10である。処理液2の分散媒は1-オクタノールであることがさらに好ましい。

【0062】
処理液2中の水の濃度は、好ましくは3~4重量%、より好ましくは3.2~3.4重量%である。処理液2は、水と分散媒とを混合し、得られた混合物を、例えば高速撹拌または超音波処理することによって製造することができる。

【0063】
未反応成分を良好に除去するために、処理液2中へのゲル繊維またはその不織布の浸漬時間は、好ましくは30分~3時間、より好ましくは1~2時間であり、その浸漬温度は、好ましくは10~30℃、より好ましくは10~25℃である。良好な操作性のために、網に固定したゲル繊維またはその不織布を、処理液2に浸漬させることが好ましい。固定のための網としては、例えば、ポリプロピレン網等のプラスチック製の網が挙げられる。

【0064】
処理液2中への浸漬後、ゲル繊維またはその不織布を処理液2から取り出し、ふき取り等によって余分な処理液2を除去した後、ゲル繊維またはその不織布を乾燥させることが好ましい。乾燥は、常圧でおこなってもよく、減圧で行ってもよい。乾燥温度は、好ましくは10~30℃、より好ましくは10~20℃であり、乾燥時間は、好ましくは3~24時間、より好ましくは5~10時間である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
[実施例1:ゲル繊維の不織布の製造]
(1)ゲル前駆体溶液の製造
化合物(1)として、式(1a):
【実施例】
【0067】
【化7】
JP2015137430A_000008t.gif
【実施例】
【0068】
で表される化合物(以下「化合物(1a)」と略称する)を使用した。化合物(1a)の数平均分子量は4万であり、式(1a)中のn(即ち、式(1)中のn11~n14)は227(平均値)である。なお化合物(1a)は、式(1)中のR11~R14がトリメチレン(-(CH-)である化合物である。なお、化合物(1a)は、日油株式会社から入手した。
また、化合物(1a)の数平均分子量は、以下の装置および条件で測定した。
装置:Gel permeation chromatography (TOSOH HLC-8220) system
TSK gel column (G4000HHR、G3000HHR)
標準物質:ポリスチレン
溶剤:THF
【実施例】
【0069】
化合物(2)として、式(2a):
【実施例】
【0070】
【化8】
JP2015137430A_000009t.gif
【実施例】
【0071】
で表される化合物(以下「化合物(2a)」と略称する)を使用した。化合物(2a)の数平均分子量は4万であり、式(2a)中のm(式(2)中のn21~n24)は227(平均値)である。なお化合物(2a)は、式(2)中のR21~R24が-CO-(CH-であり、R2a~R2d(即ち、式(2a)中のR)がスクシンイミジル基である化合物である。なお、化合物(2a)は、日油株式会社から入手した。
また、化合物(2a)の数平均分子量は、以下の装置および条件で測定した。
装置: Gel permeation chromatography (TOSOH HLC-8220) system
TSK gel column (G4000HHR、G3000HHR)
標準物質:ポリスチレン
溶剤:THF
【実施例】
【0072】
化合物(1a)0.14gをリン酸バッファー0.25g(緩衝化剤:リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウム、pH:7.4、緩衝化剤の合計濃度:200mM)および水0.45gに溶解させて水溶液を調製し、得られた水溶液に直鎖PEG(和光純薬工業社製のポリエチレングリコール、製品番号:160-18521、粘度平均分子量:500,000)の水溶液0.3g(直鎖PEG濃度:9重量%)を混合して、化合物(1a)の水溶液を調製した(化合物(1a)濃度:12.3重量%)。なお、得られた化合物(1a)の水溶液のpHは、使用したリン酸バッファーのpHからほとんど変化していないと考えられる。
【実施例】
【0073】
別途、化合物(2a)0.025gをクエン酸-リン酸バッファー0.5g(緩衝化剤:クエン酸およびリン酸水素二ナトリウム、pH:5.8、緩衝化剤の合計濃度:50mM)に溶解させて、化合物(2a)の水溶液を調製した(化合物(2a)濃度:4.8重量%)。なお、得られた化合物(2a)の水溶液のpHは、使用したクエン酸-リン酸バッファーのpHからほとんど変化していないと考えられる。
【実施例】
【0074】
得られた化合物(1a)の水溶液および化合物(2a)の水溶液のそれぞれ全量を混合し、25℃で1時間撹拌して、ゲル前駆体溶液を製造した(化合物(1a)濃度:8.4重量%、化合物(2a)1モルに対する化合物(1a)の量:5.6モル、直鎖PEG濃度:0.76重量%、化合物(1a)100重量部に対する直鎖PEG量:9.0重量部)。
【実施例】
【0075】
(2)ゲル前駆体繊維の不織布の製造
得られたゲル前駆体溶液を以下の条件で静電紡糸して、ゲル前駆体繊維の不織布を製造した。なお、紡糸装置は自作のものを使用した。
印加電圧:20kV
ノズル-コレクター間距離:23cm
流速:0.75mL/時間
【実施例】
【0076】
(3)後処理(追加架橋)によるゲル繊維の不織布の製造
化合物(2a)0.03gを水0.05gに溶解させて化合物(2a)の水溶液を調製した。得られた化合物(2a)の水溶液の全量を、1-オクタノール3gと混合し、得られた混合物を20℃で5分間超音波にかけることで1-オクタノール中に化合物(2a)の水溶液が分散した処理液1を調製した。処理液1中の化合物(2a)の量は、ゲル前駆体繊維の不織布中に計算上含まれる化合物(1a)の量の1.2重量倍であり、処理液1中の水の濃度は1.6重量%であった。なお、ゲル前駆体繊維の不織布中に計算上含まれる化合物(1a)の量は、ゲル前駆体繊維の不織布の成分合計(即ち、化合物(1a)、化合物(2a)および直鎖PEGの合計)中の化合物(1a)の割合と、得られたゲル前駆体繊維の不織布の量との積として算出した。
【実施例】
【0077】
上述のゲル前駆体繊維の不織布(0.035g)をポリプロピレン網に固定し、これらを処理液1に25℃で1時間浸漬させて、後処理(追加架橋)を行った。1時間の浸漬後に、ポリプロピレン網に固定した不織布を処理液1から取り出し、余分な処理液1をふき取った。
【実施例】
【0078】
次いで、水0.1gを1-オクタノール3gと混合し、得られた混合物を20℃で5分間超音波にかけることで1-オクタノール中に水が分散した処理液2を調製した(処理液2中の水の濃度:3.2重量%)。上述のポリプロピレン網に固定した不織布を処理液2に25℃で1時間浸漬させて、未反応成分を取り除いた。1時間の浸漬後に、ポリプロピレン網に固定した不織布を処理液2から取り出し、余分な処理液2をふき取り、ポリプロピレン網に固定した不織布を真空乾燥器内で25℃および5時間乾燥した後、ポリプロピレン網から取り外して、ゲル繊維の不織布を製造した。得られたゲル繊維の不織布の単位体積あたりの質量は0.37g/cmであった。ゲル繊維の不織布の単位体積あたりの質量は、直方体に切り取った試料片の各辺の長さ(縦、横、厚さ)を測定し、これらから算出した体積で、試料片の重量を除して求めた。測定は六つの試料片に対して行い、これらの平均値としてゲル繊維の不織布の単位体積あたりの質量を算出した。
【実施例】
【0079】
[走査型電子顕微鏡写真の撮影]
実施例1で得られた不織布の走査型電子顕微鏡写真を以下の条件にて撮影した。得られた走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
走査型電子顕微鏡:Keyence社製VE-9800
試料に金を蒸着後、倍率:5000倍、加速電圧:5kVで観察した。
【実施例】
【0080】
得られた走査型電子顕微鏡写真1枚から無作為に20~30本、合計100本の繊維を選び、Adobe Photoshop CS3を用いて繊維の直径を計測し、それらを平均することによって算出したゲル繊維の平均直径は、410±80nmであった。
【実施例】
【0081】
以下の条件で測定した不織布の平均細孔径は335nmであった。
細孔径測定装置:Porous Materials社製 Cappilary Flow Porometer CFP-1200-AEXLTC
なお、試料(不織布)を標準試液(Galwick、表面張力15.9dyn/cm)に含浸させた状態で、その平均細孔径を測定した。
【実施例】
【0082】
[耐水性の評価]
実施例1で得られた乾燥後のポリプロピレン網に固定した不織布を25℃で12時間水に浸漬させて、該不織布を膨潤させた。この膨潤させた不織布を、収縮しないようにポリプロピレン網に固定した状態で風乾後、真空乾燥器内で25℃および5時間乾燥し、乾燥後の不織布の走査型電子顕微鏡写真を上述の条件で撮影し、画像解析を行った。得られた顕微鏡写真を図2に示す。従来のPEG繊維の不織布は水に容易に溶解するが、図2から明らかなように、本発明のゲル繊維およびその不織布は、水に浸漬させてもその形状を保持することが分かった。
【実施例】
【0083】
[比較例1:キャスト法によるゲルの製造]
化合物(1a)0.1gをリン酸バッファー1g(pH:7.4、緩衝化剤の合計濃度:50mM)に溶解させて、化合物(1a)の水溶液を調製した。
【実施例】
【0084】
別途、化合物(2a)0.1gをクエン酸-リン酸バッファー1g(pH:5.8、緩衝化剤の合計濃度:50mM)に溶解させて、化合物(2a)の水溶液を調製した。
【実施例】
【0085】
得られた化合物(1a)の水溶液および化合物(2a)の水溶液のそれぞれ全量をすばやく混合した後、混合物を直ちに円筒形状のガラスシャーレにキャストして、ゲルを製造した。
【実施例】
【0086】
得られたゲルを、25℃で12時間水に浸漬させて膨潤させた後、-50℃および20Paで凍結乾燥させて、スポンジ状のゲルを製造した。このスポンジ状のゲルの走査型電子顕微鏡写真を上述の条件で撮影した。得られた走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。図3で示されるように、キャスト法により製造されたゲルは、膨潤および凍結乾燥によりスポンジ状にした場合であっても、貫通孔がなく、その平均細孔径を測定できなかった。
【実施例】
【0087】
[引張物性の評価]
実施例1で得られた不織布を、30mm×10mmの短冊形に切り取り、引張速度10mm/minおよび室温の条件下で引張試験を行った。得られた引張応力およびひずみのグラフを図4に示す。この不織布の弾性率は3.8MPa、破断ひずみは0.4、破断強度は約1.3MPaであった。また、弾性率および破断強度の算出に使用した不織布の断面積は、厚さ計で測定した試料の厚みと試料の横幅との積として算出した。このようにして算出した不織布の断面積には空隙も含まれているが、一般的な不織布の引張試験と同様に、断面積から空隙を較正せず、空隙を含んだ不織布全体の見かけの弾性率、破断ひずみおよび破断強度を測定した。
【実施例】
【0088】
[実施例2:後処理に用いる化合物(2a)量の変更]
処理液1中の化合物(2a)の量を、ゲル前駆体繊維中に計算上含まれる化合物(1a)の量の1.2重量倍から、1重量倍、2重量倍または3重量倍に変更させたこと以外は実施例1と同様にして、ゲル繊維の不織布を製造し、上述の方法と同様にしてゲル繊維の不織布の引張試験を行った。なお、ゲル前駆体繊維の不織布中に計算上含まれる化合物(1a)の量は、ゲル前駆体繊維の不織布の成分合計(即ち、化合物(1a)、化合物(2a)および直鎖PEGの合計)中の化合物(1a)の割合と、得られたゲル前駆体繊維の不織布の量との積として算出した。処理液1中の化合物(2a)の量が、前駆体ゲル繊維の不織布中に計算上含まれる化合物(1a)の量に対して1重量倍、2重量倍または3重量倍である処理液1を用いて得られたゲル繊維の不織布の引張応力およびひずみのグラフを図5に示す。図5から明らかなように、処理液1中の化合物(2a)の量を変更させることによって、得られるゲル繊維の不織布の強度を変化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のゲル繊維およびその不織布は、親水性でありながら、水に不溶であるため、医療用材料として有用である。特に本発明の不織布は、空隙による優れた物質透過性を有するため、医療用膜材料(例えば、生体組織の癒着防止材料)として有用である。さらに、本発明のゲル繊維およびその不織布は、構成単位(I)および(II)による架橋構造(網目構造)を有するため、ゲル繊維の網目内に薬剤などを内包させることが期待される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4