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明細書 :高分子アクチュエーターの制御方法、高分子アクチュエーター及びこの高分子アクチュエーターを利用した微少流体送出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-032405 (P2016-032405A)
公開日 平成28年3月7日(2016.3.7)
発明の名称または考案の名称 高分子アクチュエーターの制御方法、高分子アクチュエーター及びこの高分子アクチュエーターを利用した微少流体送出装置
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
F04B  43/04        (2006.01)
FI H02N 11/00
F04B 43/04 Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-154925 (P2014-154925)
出願日 平成26年7月30日(2014.7.30)
発明者または考案者 【氏名】庄司 英一
【氏名】畑下 昌範
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
【識別番号】397022885
【氏名又は名称】公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター
個別代理人の代理人 【識別番号】100110814、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 敏郎
審査請求 未請求
テーマコード 3H077
Fターム 3H077AA01
3H077AA11
3H077BB10
3H077CC02
3H077CC09
3H077EE15
3H077FF02
3H077FF08
3H077FF09
3H077FF12
3H077FF31
要約 【課題】 変形時の形や変形量の制御が可能な高分子アクチュエーターの制御方法を提供する。
【解決手段】 電圧を印加することで変形する高分子膜11aを有するアクチュエーター素子11と、このアクチュエーター素子11の少なくとも一方の面に配置されるとともにアクチュエーター素子11に対して相対的に抵抗値が小さく、アクチュエーター素子11と通電可能に接触する導電部材22とを準備し、導電部材22とアクチュエーター素子11との通電接触長を変えることで、アクチュエーター素子11の変形を制御する。導電部材22を複数に分割し、分割した導電部材22の各々を、スイッチを介して接続し、前記スイッチを切り替えることによって導電部材22とアクチュエーター素子11との接触長さを変化させるようにしてもよい。
【選択図】 図3
特許請求の範囲 【請求項1】
電圧を印加することで変形する高分子膜を有するアクチュエーター素子と、このアクチュエーター素子の少なくとも一方の面に配置されるとともに前記アクチュエーター素子に対して相対的に抵抗値が小さく、前記アクチュエーター素子と通電可能に接触する導電部材とを準備し、
前記導電部材と前記アクチュエーター素子との通電接触長を変えることで、前記アクチュエーター素子の変形を制御すること、
を特徴とする高分子アクチュエーターの制御方法。
【請求項2】
前記導電部材を複数に分割し、分割した前記導電部材の各々をスイッチを介して接続し、前記スイッチを切り替えることによって前記導電部材と前記アクチュエーター素子との前記通電接触長を変化させることを特徴とする請求項1に記載の高分子アクチュエーターの変形調整方法。
【請求項3】
前記導電部材と前記アクチュエーター素子との前記通電接触長を、前記アクチュエーター素子の表裏で異ならせたことを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子アクチュエーターの変形調整方法。
【請求項4】
電圧を印加することで変形する高分子膜を有するアクチュエーター素子と、
このアクチュエーター素子の少なくとも一方の面に配置されるとともに前記アクチュエーター素子に対して相対的に抵抗値が小さく、前記アクチュエーター素子と通電可能に接触する導電部材と、
を有することを特徴とする高分子アクチュエーター。
【請求項5】
前記導電部材を複数に分割し、分割した前記導電部材の各々をスイッチを介して接続し、前記スイッチを切り替えることによって前記導電部材と前記アクチュエーター素子との通電接触長を変化させることを特徴とする請求項4に記載の高分子アクチュエーター。
【請求項6】
前記導電部材を複数に分割するとともに導電性を有する支持体に支持させ、この支持体に対して前記導電部材を着脱自在としたことを特徴とする請求項4又は5に記載の高分子アクチュエーター。
【請求項7】
前記導電部材と前記アクチュエーター素子との前記通電接触長を、前記アクチュエーター素子の表裏で異ならせたことを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載の高分子アクチュエーター。
【請求項8】
請求項4~7のいずれかに記載の高分子アクチュエーターを利用した微少流体送出装置において、
容積変化により流体の流入と送出を行うチャンバーを備えた装置本体と、
前記チャンバーに設けられ、電圧を印加することで変形する高分子膜を有するアクチュエーター素子を備えた前記高分子アクチュエーターと、
前記高分子アクチュエーターの周縁を前記装置本体に固定する固定手段と、
前記装置本体に設けられ、前記チャンバーに流体を流入させる流入口及び流体を送出する送出口と、
を有することを特徴とする微少流体送出装置。
【請求項9】
前記導電部材が前記固定手段であることを特徴とする請求項8に記載の微少流体送出装置。
【請求項10】
前記チャンバー内に設けられ、前記流体から気体を発生させるための気体発生部と、この気体発生部から発生した気体を貯留する貯留部とを備え、この貯留部に前記気体を送出する送出口を設けたことを特徴とする請求項8又は9に記載の微少流体送出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子アクチュエーターの変形の形や変形量(これらを「変形」と総称する)の制御を可能にする制御方法、この制御方法を利用した高分子アクチュエーター及びこの高分子アクチュエーターを利用した微少流体送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン伝導性高分子膜の両面を導電性材料で被覆した複合体の一側に電圧を印加することで、イオン伝導性高分子膜の内部でイオンが移動して、イオン伝導性高分子膜が変形する高分子アクチュエーターが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
また、高分子アクチュエーター素子メーカーであるイーメックス株式会社のホームページには、各種の高分子アクチュエーターが紹介されている(非特許文献1参照)。
上記した高分子アクチュエーターは、人工筋肉やロボット等への適用が可能である他、膜状のものはダイヤフラムとして、化学的分析用、DNA解析用、試薬ディスペンサー用、血液検査用チップなどに用いられる微小流体ポンプとしても適用が可能である(特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2011-172383号公報
【特許文献2】特開2013-245649号公報
【特許文献3】特開2004-282992号公報
【特許文献4】特開2006-299842号公報
【0004】

【非特許文献1】イーメックス株式会社のホームページ(http://www.eamex.co.jp/features/koubunshi/ion/)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば上記したような高分子アクチュエーターを利用した従来の微少流体ポンプにおいて、用途に応じて流体の送出量を調整するには、大きさの異なる高分子アクチュエーターに交換するか、高分子アクチュエーターに印加する電圧を変化させる必要があった。
【0006】
しかし、高分子アクチュエーターの大きさを変えると、ケーシングなどポンプを構成する他の部材を専用に設計、製造しなければならず、多種多様な用途に応じた微少流体ポンプを提供するには製造コストが高くなるという問題がある。また、高分子アクチュエーターに印加する電圧を変化させるには、別体の電圧コントローラが必要となり、微少流体ポンプを含む装置が複雑化、大型化するうえ価格も高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたもので、第一に、高分子アクチュエーターが変形する時の形や変形量の制御が可能な高分子アクチュエーターの制御方法及びこの方法を用いた高分子アクチュエーターを提供すること、第二に、この高分子アクチュエーターを用いることで印加電圧や装置構成を変更することなく多種多様な用途に応じて送出量の調整が容易な微少流体送出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明の高分子アクチュエーターの制御方法は、電圧を印加することで変形する高分子膜を有するアクチュエーター素子と、このアクチュエーター素子の少なくとも一方の面に配置されるとともに前記アクチュエーター素子に対して相対的に抵抗値が小さく、前記アクチュエーター素子と通電可能に接触する導電部材とを準備し、前記導電部材と前記アクチュエーター素子とが通電可能に接触する部分の長さ(通電接触長)を長短変えることで、前記アクチュエーター素子の変形を制御する方法としてある。
ここで、「相対的に」の意味は、前記アクチュエーター素子を変形させるために高分子膜の表面に形成された電極や導電性を有する高分子膜に対して、導電部材の抵抗値を小さくする場合のほか、導電部材に対して前記電極や前記導電性を有する高分子膜の抵抗値を大きくする場合も含む趣旨である。
【0009】
本発明の方法によれば、前記導電部材から前記アクチュエーター素子に電圧が印加されることになる。そのため、前記導電部材と前記アクチュエーター素子との通電接触長を変えることで、前記アクチュエーター素子の変形の形や変形量を種々に変化させることが可能になる。
前記導電部材を複数に分割し、分割した前記導電部材の各々を、スイッチを介して接続し、前記スイッチを切り替えることによって前記導電部材と前記アクチュエーター素子との前記通電接触長を変化させるようにすることも可能である。
前記導電部材は前記アクチュエーター素子の表裏のうちいずれか一方の面に設けられていればよく、前記導電部材を前記アクチュエーター素子の表裏両面に設ける場合は、前記通電接触長は前記アクチュエーター素子の表裏で異ならせてもよい。
【0010】
上記の方法を利用した本発明の高分子アクチュエーターは、電圧を印加することで変形する高分子膜を有するアクチュエーター素子と、このアクチュエーター素子の少なくとも一方の面に配置されるとともに前記アクチュエーター素子に対して相対的に抵抗値が小さく、前記アクチュエーター素子と通電可能に接触する導電部材とを有する構成としてある。
このように構成すれば、前記導電部材と前記アクチュエーター素子との通電接触長を変えることで、前記アクチュエーター素子の変形を制御することができる。
前記導電部材を複数に分割し、分割した前記導電部材の各々を、スイッチを介して接続し、前記スイッチを切り替えることによって前記導電部材と前記アクチュエーター素子との通電接触長を変化させるように構成してもよい。また、前記導電部材を複数に分割するとともに導電性を有する支持体に支持させ、この支持体に対して前記導電部材を着脱自在としてもよい。
前記導電部材は前記アクチュエーター素子の表裏のうちいずれか一方の面に設けられていればよく、前記導電部材を前記アクチュエーター素子の表裏両面に設ける場合は、前記通電接触長は前記アクチュエーター素子の表裏で異ならせてもよい。
【0011】
上記構成の高分子アクチュエーターを用いた微少流体送出装置は、容積変化により流体の流入と送出を行うチャンバーを備えた装置本体と、前記チャンバーに設けられ、電圧を印加することで変形する高分子膜を有するアクチュエーター素子を備えた前記高分子アクチュエーターと、前記高分子アクチュエーターの周縁を前記装置本体に固定する固定手段と、前記装置本体に設けられ、前記チャンバーに流体を流入させる流入口及び流体を送出する送出口とを有する構成としてある。
この場合、前記固定手段を前記導電部材として利用してもよい。
なお、本発明の微少流体送出装置で送出できる流体は液体のほかに気体も含まれ、例えば前記チャンバー内に設けられ、前記流体から気体を発生させるための気体発生部と、この気体発生部から発生した気体を貯留する貯留部とを備え、この貯留部に前記気体を送出する送出口を設けた構成とすることで、前記気体を送出して集めることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高分子アクチュエーターの制御方法及び高分子アクチュエーターによれば、高分子アクチュエーターの大きさや形を変えることなく、導電部材との通電接触長さを変えるだけで高分子アクチュエーターの変形を制御することが可能になる。そのため、電圧を調整する必要がなく、用途に応じて専用に高分子アクチュエーターを設計する必要も無くなる。
また、スイッチにより導電部材とアクチュエーター素子との通電接触長を切り替えることができるようにすれば、高分子アクチュエーターの変形を段階的に制御することも可能である。
【0013】
本発明の高分子アクチュエーターを微少流体送出装置に用いれば、用途に応じた送出量の微少流体送出装置に対して導電部材とアクチュエーター素子との通電接触長のみが異なる高分子アクチュエーターを共通に用いることが可能になる。また、スイッチにより導電部材とアクチュエーター素子との通電接触長を切り替えることができるようにすれば、用途に応じて送出量を段階的に切り替えることが可能になる。
本発明の微少流体送出装置は液体に限らず気体にも適用が可能で、前記流体から気体を発生させるための気体発生部と、この気体発生部から発生した気体を貯留する貯留部とを備え、この貯留部に前記気体を送出する送出口を設けることで、例えば電気分解により得られた水素と酸素をそれぞれ回収して貯蔵することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の高分子アクチュエーターの第一の実施形態にかかり、(a)はその構成を説明する分解斜視図、(b)は高分子アクチュエーターの組立斜視図、図2(a)は図1の高分子アクチュエーターの平面図、(b)は(a)の高分子アクチュエーターに電圧を印加したときの変形を示す断面側面図である。
【0015】
[アクチュエーター素子]
本発明においてアクチュエーター素子11の形状は特に限定されない。この実施形態においてアクチュエーター素子11は、図示するように円板状の高分子膜11aを主な構成要素とする。高分子膜11aは、電圧の印加によって変形する性質を有するものであれば、導電性高分子膜、強誘電性高分子膜、導電性エストラマー膜など、公知のものを用いることができる。
【0016】
導電性高分子膜としては、アニオン駆動導電性高分子膜、カチオン駆動導電性高分子膜が知られているが、電解溶液等の溶液中に導電性高分子膜を浸漬しなくてもよい点でイオン伝導性高分子膜が有利である。
[イオン伝導性高分子膜]
イオン伝導性高分子膜としては公知のものを用いることができ、例えばポリフッ化ビニリデンのような誘電性材料から形成されたものやポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン等の導電性高分子から形成されたものなどを挙げることができる。また、ゾル・ゲル法などで得られる高分子構造をもつ、例えば、マンガン、ニッケル、コバルト、五酸化バナジウム系の金属酸化物などの金属酸化物も用いることができ、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、カーボンチューブ、グラファイト等のカーボン粉末をバインダー(好ましくはイオン伝導性高分子膜と相溶性高い材料)と混ぜたり、単独使用で接合した電極材料も用いることができる。
例えば、高疎水性のパーフルオロエチレン構造(疎水場)と高親水性のスルホン酸基構造(親水性ドメイン構造)とを併せ持つ高分子電解質であるパーフルオロカーボンスルホン酸あるいはパーフルオロカーボンスルホン酸膜を挙げることができる。
市販のものとしては、例えば、高疎水性のパーフルオロエチレン構造(疎水場)と高親水性のスルホン酸基構造(親水性ドメイン構造)とを併せ持つ高分子電解質であるデュポン社製のナフィオン(「NAFION」は登録商標)117や旭化成社製のアシプレックス(「Aciplex」は登録商標)、旭硝子社製のフレミオン(「FLEMION」は登録商標)を用いることができる。
【0017】
[強誘電性高分子膜]
強誘電性高分子膜としては、例えば特開2003-080593号公報に記載されたフッ化ビニリデン・トリフルオロエチレン共重合体からなるもの、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン又はテトラフルオロレチレンとの共重合体を含むものから形成されたものを挙げることができる。
【0018】
[電極]
電極11bは、強誘電性高分子膜では必須の構成要件だが、導電性高分子膜及び導電性エストラマー膜では任意の構成要件である。もちろん、応答性や変形性を高めるために、導電性高分子膜及び導電性エストラマー膜に電極を設けてもよい。
電極11bの材料としては、白金,金その他の貴金属さらに卑金属や半導体を用いることができる。高分子膜11aの両面への電極11bの形成には、メッキ法(無電解メッキ法)や蒸着法、スパッタリング法の他、金属箔や導電性布帛,シートメタル等で形成された導電体を接着剤や加熱プレス法で接着する方法等、公知の手段を用いることができる。なお、電極11bの形態はシート状に限らずメッシュ状やストライプ状、渦巻き状など、その形態は不問である。
【0019】
高分子膜11aに施す電極11bの肉厚は、薄すぎると電極11bに穴あき部分ができてイオン伝導性高分子膜11a内で均一なイオン移動が生じなくなり、厚すぎると、電極11bの剛性が高くなってアクチュエーター素子11が変形しにくくなることから、このような問題が生じない範囲内で適切な肉厚を選択する。
例えば、肉厚200~250μm程度、直径22mmm程度のイオン伝導性高分子膜11aに対して、白金で電極11bを形成する場合は、電極11bの肉厚は片側で1μm~20μm程度とするとよい。
このようなアクチュエーター素子11は、高分子膜(電極を設ける場合は高分子膜の両面に電極を形成した)シートから、アクチュエーター素子11を打ち抜くことで量産が可能である。
【0020】
[導電部材]
この実施形態では、アクチュエーター素子11の表裏両面に導電部材21を設けている。導電部材21は電極11bとほぼ同径のリング状に形成され、電極11bの周縁で電極11bに接触している。導電部材21は、リング状に形成したものを電極11bに接触させた状態でアクチュエーター素子11に取り付けるようにしてもよいし、メッキや蒸着等によって電極11bの上に導電部材21からなる導電層を形成するようにしてもよい。
【0021】
導電部材11は電極11bよりも相対的に電気抵抗値が小さくなるように形成されていて、電極11bの周縁に接続された導電(表側の導線を符号31aで、裏側の導線を符号31bで示す)を介して図示しない電源から電極11bに電圧を印加すると、電流は電気抵抗値の小さい導電部材11から電極11bに流れるようになっている。電極11bが白金や金で形成されている場合には、これより電気抵抗値の小さいステンレス等で導電部材11を形成するとよい。
このようにすることで、リング状の導電部材11により電極11bの全周囲から電極11bに電圧が印加されることになる。
そのため、この実施形態のように円形のアクチュエーター素子11にリング状の導電部材11を設けた高分子アクチュエーターでは、図2(b)に示すように、中央に頂部を有する対称形にアクチュエーター素子11が変形する。
なお、アクチュエーター素子11が水などの溶液と接触する場合には、少なくとも導電部材11を形成した部分又は前記溶液と接触するアクチュエーター素子11の全面に、アクチュエーター素子11の変形を妨げない範囲で、絶縁性のコーティングを施すのが好ましい。
【0022】
[導電部材の他の実施形態]
図3は、本発明の第二の実施形態にかかり、(a)は導電性の部分22aと樹脂等の非導電性の部分22bとで構成したリング状の導電部材22の平面図、(b)は(a)の高分子アクチュエーターの電極に電圧を印加したときの変形を示す断面側面図である。
この実施形態では図示しない電源に接続された導線31は馬蹄形の導電性の部分22aのほぼ中央に接続されている。そして、導線31に電圧を印加すると、電流は馬蹄形の導電性の部分22aに流れ、馬蹄形に沿った周縁から電極11bに電圧が印加される。
そのため、この実施形態の高分子アクチュエーターの変形の形は、図3(b)に示すように頂部が中央から導線31寄りに位置する非対称形となり、導電性の部分22aと電極11bとの通電接触長が先の実施形態の高分子アクチュエーターに比して短いことから、全体の変形量も図1の高分子アクチュエーターよりも小さくなる。
【0023】
[導電部材の第三の実施形態]
図4は、本発明の第三の実施形態にかかり、(a)は導電性の部分23aと樹脂等の非導電性の部分23bとで構成したリング状の導電部材23を有する高分子アクチュエーターの平面図、(b)は(a)と同様の効果を奏するアクチュエーター素子の他の実施形態にかかり、その平面図、図5は図4(a)の高分子アクチュエーターに用いられる導電部材23の斜視図である。
この実施形態では、リング状の導電部材23を六つの区域に分割し、導電性の部分23aと非導電性の部分23bとを交互に配置している。
図5に示すように、導電性を有するリングの一部を切り欠いて当該切欠き部分に樹脂等を嵌め込み、非導電性の部分23bを形成するようにしてもよい。
【0024】
この実施形態の高分子アクチュエーターでは、導電性の部分23aが電極11bの周縁に均等間隔で配置されることから、アクチュエーター素子11は中央に頂部を有する対称形に変形するものの、導電性の部分23aと電極11bとの通電接触長が第一の実施形態の高分子アクチュエーターに比して短いことから、その変形量は小さくなる。
なお、導電部材21(図1,2参照)と電極11bとの通電接触長を変化させるには、図4(b)に示すように、イオン伝導性高分子膜11aに形成する電極11bの一部に切欠き11cを形成するようにしてもよい。また、特に図示はしないが、電極11bの一部(図4(b)の切欠き11cに対応する部分)に絶縁被膜を形成したり絶縁塗料を塗布したりしてもよい。
【0025】
[導電部材の第四の実施形態]
図6は、本発明の第四の実施形態にかかり、導電性の部分24aと樹脂等の非導電性の部分24bとで構成したリング状の導電部材23を有する高分子アクチュエーターの平面図である。
この実施形態では、第三の実施形態と同様に、リング状の導電部材24を六つの区域に分割し、導電性の部分24aと非導電性の部分24bとを交互に配置している。そして、隣り合う導電性の部分24a,24aをスイッチング回路44で接続し、スイッチング回路44をON/OFF切り替えることで、導電部材24と電極11bとの通電接触長を切り替えることができるようにしている。
そのため、三つのスイッチング回路44のON/OFF切り替えを組み合わせることで、アクチュエーター素子11の変形の形及び変形量を数段階に切り替えることが可能になる。
【0026】
[微少流体送出装置の実施形態]
図7及び図8に本発明の高分子アクチュエーターを用いた微少流体送出装置の実施形態を示す。図7は微少流体送出装置の分解斜視図、図8は図7の微少流体送出装置の断面図である。
微少流体送出装置100(以下「送出装置100」と記載する)の「装置本体」であるケーシング111には、その中央に円形状の孔111aが形成されている。この孔111aの内周面にはその途中部位に段部111bが形成され、孔111aに嵌挿されたパッキン112,スペーサ114,アクチュエーター素子11,スペーサ114及びパッキン112がこの順で段部111bの上に積層される。そして、最後にカバー116が被せられてボルト116aでケーシング111に固定される。
アクチュエーター素子11の表裏両面には、流体とアクチュエーター素子11とが接触しないように絶縁性のコーティングを施すとよい。また、流体がアクチュエータ素子11とスペーサ114との間のすき間から漏れ出さないように、前記隙間にコーティング剤を塗布してもよい。上記目的で使用されるコーティング剤の種類や材質は不問である。
【0027】
アクチュエーター素子11,スペーサ114,のパッキン112及びカバー116で囲まれた空間がチャンバー110として構成される。カバー116にはこのチャンバー110に連通する貫通孔が二カ所に形成されている。この貫通孔の一方は流体をチャンバー110に流入させる流入口117aであり、他方が流体をチャンバー110から送出する送出口117bである。流入口117a及び送出口117bには、流体が逆流しないようにするための逆止弁118a,118bが設けられている。
なお、パッキン112,アクチュエーター素子11,スペーサ114及びパッキン112の各部材の肉厚は、カバー116をボルト116aでケーシング111に固定したときに、各部材が互いに圧接されてチャンバー110が水密に保たれるとともに、チャンバー110が予め設定された容積になる寸法である。
【0028】
[スペーサ]
スペーサ114は、アクチュエーター素子11の周縁部の全周に亘って接触するように環状に形成され、アクチュエーター素子11と同じ外形、同じ大きさに形成される。例えば、図示するような円形状のアクチュエーター素子11においては、スペーサ114は円環状に形成される。
この実施形態においてスペーサ114は銅やステンレス等の導電性の金属で形成されていて、アクチュエーター素子11の周縁部を段部111bに押し付けることで、アクチュエーター素子11をケーシング111に固定している。また、スペーサ114はアクチュエーター素子11の電極11bよりも電気抵抗が小さくなるように形成されていて、図示しない外部電源からの電圧がスペーサ114から電極11bに印加されるようになっている。従って、この実施形態では、スペーサ14が「固定手段」及び「導電部材」を構成する。
【0029】
アクチュエーター素子11の周縁はスペーサ114によって拘束されているが、環状のスペーサ114の内側ではアクチュエーター素子11は変形が可能である。そのため、電極11bに電圧を印加すると、スペーサ114によって電極11bにはその周囲からほぼ均一に電圧が印加される。これによりアクチュエーター素子11は変形する。アクチュエーター素子11の変形によって、チャンバー110の容積が変化し、印加電圧をプラス/マイナスに切り換えることでチャンバー110への流体の流入と送出を繰り返すことができる。
【0030】
本発明の微少流体送出装置100によれば、印加電圧:0.5V程度の印加電圧で駆動が可能で、例えば4~8秒間隔で印加電圧をプラス/マイナスに切り換えることで、アクチュエーター素子11の形状が図8中の符号Iで示す形状と符号IIで示す形状との間で変化する。アクチュエーター素子11の形状が符号Iで示す形状に変化するときにチャンバー110から送出口117bに流体が送り出され、符号IIで示す形状に変化するときに流入口117aからチャンバー110に流体が供給される。本発明の微少流体送出装置100では、例えば100μL/min以下の流量を得ることが可能である。
スペーサ114を先の実施形態の導電部材21~24とすることで、アクチュエーター素子11の変形の形状及び変形量を変えることができ、送出口117bから送り出される流体の量を調整することが可能である。
【0031】
[微少流体送出装置の他の実施形態]
上記構成の微少流体送出装置は、液体の送出に限らず気体の送出にも適用が可能である。
図9は、気体を生成して送出する微少流体送出装置の断面図である。
微少流体送出装置100′の基本構成は、図7,8に示した先の実施形態の微少流体送出装置100と同じであり、同一部材、同一部位には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
この実施形態の微少流体送出装置100′では、チャンバー110の内部に流体から気体を生成する気体発生部121a,121bと、チャンバー110の天井部分に形成され気体発生部121a,121bから発生した気体を受け止めて貯留する貯留部120a,120bとを有している。また、貯留部120a,120bの各々には、アクチュエーター素子11の形状が図9中の符号Iで示す形状に変化するときに、貯留部120a,120bから貯留された気体を送出する送出口117bが形成されている。
【0032】
また、チャンバー110には、アクチュエーター素子11の形状が図9中の符号IIで示す形状に変化するときに、チャンバー110に流体を供給する流体供給口117cが形成されている。なお、特に図示はしないが、流体供給口117cには流体が逆流しないようにするための逆止弁が設けられている。
【0033】
上記構成の微少流体送出装置100′では、例えば気体発生部121a,121bを電極として正極と負極に接続するとともに流体として水を用いることで、電気分解によって水素と酸素を得ることが可能である。
気体発生部121a,121bである電極で生成された水素と酸素は、それぞれ貯留部120a,120bに貯留され、アクチュエーター素子11の形状が図9中の符号IIで示す形状から符号Iで示す形状に変化するときに、送出口117bから排気される。排気された水素と酸素は回収容器等に回収することが可能である。このように、上記構成の微少流体送出装置100′は、微少流体送出装置としてだけではなく、気泡発生装置としても利用することが可能である。
【0034】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明には限定されない。
例えば、高分子アクチュエーター素子11,14は円形状として説明したが、矩形状、多角形状、楕円形状又は不定形状とすることができ、電極11bについても必ずしも高分子膜11aの形状に合わせて形成する必要はない。
また、上記の説明では、電極11bを白金,金その他の貴金属さらに卑金属や半導体で形成し、導電部材21,22,23をステンレス等の金属で形成するものとして説明したが、相対的に電極11bが導電部材21,22,23よりも電気抵抗値が高ければよく、このような条件を満たすのであれば電極11b及び導電部材21,22,23の材質は特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の高分子アクチュエーターは特に微少流体ポンプ用のダイヤフラムとして好適に適用が可能で、化学的分析用、DNA解析用、試薬ディスペンサー用に使用される微少流体ポンプの他、血液検査用チップなど医療目的で使用される微少流体ポンプに好適に適用が可能である。また、流体の種類も気体、液体は問わず、気体ポンプ、気泡発生装置(水の電気分解によるガス発生を利用)としても利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の高分子アクチュエーターの第一の実施形態にかかり、(a)はその構成を説明する分解斜視図、(b)は高分子アクチュエーターの斜視図である。
【図2】(a)は図1の高分子アクチュエーターの平面図、(b)は(a)の高分子アクチュエーターの電極に電圧を印加したときの変形を示す断面側面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態にかかり、(a)は導電性の部分22aと樹脂等の非導電性の部分22bとで構成したリング状の導電部材22の平面図、(b)は(a)の高分子アクチュエーターの電極に電圧を印加したときの変形を示す断面側面図である。
【図4】本発明の第三の実施形態にかかり、(a)は導電性の部分23aと樹脂等の非導電性の部分23bとで構成したリング状の導電部材23を有する高分子アクチュエーターの平面図、(b)は(a)と同様の効果を奏するアクチュエーター素子の他の実施形態にかかり、その平面図である。
【図5】図4(a)の高分子アクチュエーターに用いられる導電部材23の斜視図である。
【図6】本発明の第四の実施形態にかかり、導電性の部分24aと樹脂等の非導電性の部分24bとで構成したリング状の導電部材23を有する高分子アクチュエーターの平面図である。
【図7】本発明の高分子アクチュエーターを用いた微少流体送出装置の実施形態にかかり、その分解斜視図である。
【図8】図7の微少流体送出装置の断面図である。
【図9】他の実施形態にかかる微少流体送出装置の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
11:アクチュエーター素子
11a:高分子膜
11b:電極
100:微少流体送出装置
111:ケーシング(装置本体)
111a:孔
112:パッキン
113:高分子アクチュエーター
114:スペーサ (導電部材)
115:パッキン
116:カバー
116a:ボルト
117a:流入口
117b:送出口
118a,118b:逆止弁
120a,120b:貯留部
121a,121b:気体発生部(電極)
21~24:導電部材
31:導線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8