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明細書 :顕微鏡等のフォーカス安定性機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4205321号 (P4205321)
公開番号 特開2003-043373 (P2003-043373A)
登録日 平成20年10月24日(2008.10.24)
発行日 平成21年1月7日(2009.1.7)
公開日 平成15年2月13日(2003.2.13)
発明の名称または考案の名称 顕微鏡等のフォーカス安定性機構
国際特許分類 G02B  21/26        (2006.01)
G02B   7/02        (2006.01)
FI G02B 21/26
G02B 7/02 F
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2001-225306 (P2001-225306)
出願日 平成13年7月26日(2001.7.26)
審査請求日 平成16年12月7日(2004.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】木下 一彦
【氏名】塩 育
個別代理人の代理人 【識別番号】100099265、【弁理士】、【氏名又は名称】長瀬 成城
審査官 【審査官】森内 正明
参考文献・文献 特開2001-305432(JP,A)
特開2001-066515(JP,A)
特開平09-120030(JP,A)
特開平07-055512(JP,A)
特開平11-237556(JP,A)
特開2002-328309(JP,A)
調査した分野 G02B21/00-21/36
特許請求の範囲 【請求項1】
固定基盤上に補正筒を固定し、さらに前記補正筒に対物レンズを固定して構成した光学系部と、前記固定基盤上に前記光学系部を取り囲むように配置され、かつ光軸に重量、形状ともに対称に構成されたX、Y軸ステージおよびZ軸微動ステージとを有している顕微鏡であって、前記光学系部と、前記X、Y、Z軸ステージは、それぞれの温度依存性の総和が等しく、かつ釣り合い長さを等しく構成したことを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構。
【請求項2】
前記光学系部と、前記X、Y、Z軸ステージのそれぞれの部材が、線膨張係数が3×10-6以下である材質を組み合わせて構成したことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡のフォーカス安定性機構。
【請求項3】
固定基盤上に配置されたZ軸微動ステージに補正筒を固定し、さらに前記補正筒に対物レンズを固定して構成した光学系部と、前記固定基盤上に補正柱を介して前記光学系部を取り囲むように配置され、かつ光軸に重量、形状ともに対称に構成されたX、Y軸ステージとを有している顕微鏡であって、前記Z軸微動ステージおよび前記光学系部と、前記補正柱およびX、Y軸ステージとは、それぞれの温度依存性の総和が等しく、かつ釣り合い長さを等しく構成したことを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構。
【請求項4】
前記X、Y軸ステージは、前記補正柱に取り付けたステージ固定板上に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の顕微鏡のフォーカス安定性機構。
【請求項5】
前記Z軸微動ステージおよび前記光学系部と、前記補正柱およびX、Y軸ステージのそれぞれの部材が、線膨張係数が3×10-6以下である材質を組み合わせて構成したことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の顕微鏡のフォーカス安定性機構。
【請求項6】
前記光学系部と、前記ステージの、何れかのコンポーネントには線膨張係数が3×10-6以下であるインバーを使用することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の顕微鏡のフォーカス安定性機構。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学機器、光学測定機、光学顕微鏡等のフォーカス安定性機構に関するものである。特に光学顕微鏡等ではピントがずれたり、周囲の温度等の影響で光学顕微鏡が微小に変位し物点(対象物)がずれたりする(いわゆるドリフト現象)ことがあるが、本発明はこうしたピントのズレやドリフト現象によって物点が移動することなく、常に安定して試料を観察できる顕微鏡等のフォーカス安定性機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
公知の顕微鏡は、一般に、複数の異なる対物レンズを受容する対物レンズ回転交換器(レボルバ)を装備している。回転交換器の回転によって、所望の対物レンズを顕微鏡の光路内へ旋回する。対物レンズのフォーカシングは、顕微鏡対物レンズの光軸に沿ってステージを移動することによって行う。このような顕微鏡本体は周囲の環境温度が上昇することにより膨張するということが、実際上良く知られている。この膨張により、顕微鏡の極めて小さい焦点深度範囲(μの範囲)に基づいて、プレパラートを含むステージと顕微鏡対物レンズとの間の距離の変化が起こり、例えば常温時に一度調整した合焦位置(状態)が失われるという望ましくない効果が生ずる。
【0003】
例えば、従来の光学測定機、光学顕微鏡の心臓部である対物レンズには約1μm/°Cの温度依存性があり、またこの保持部金物も光軸に対して非対称で温度依存性があった。試料位置決め装置のステージ部も重量的、形状においても光軸に対して非対称性が著しくバランスを欠いており温度変化に対して焦点が不安定となり、また物点(対象物)の移動(ドリフト)を起こしていた。
このため室内の温度を制御しても0.1°Cの温度変化は避けられず、対物レンズ温度依存性を仮に1.0μm/1°Cとすると0.1°Cの変化で100nmの移動量となり、この結果焦点がボケで分子位置の計測や分子運動量の計測等に応えられないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、光学顕微鏡等の熱膨張に起因するZ方向の焦点外れを補償することにより、観測中に試料が焦点ボケを生じたり、物点(対象物)の移動(ドリフト)をナノメートル単位の精度で起こさない安定性の高い光学顕微鏡を実現することを目的とする。本発明は、対物レンズ、試料位置決めステージ、焦点合わせ機構部の心臓部を光軸中心に重量、形状とも均等に直接固定し、これらを温度依存性の極めて少ないコンポーネントに製作し、組み立てるか、構成部分の温度依存性の総和が等しく、かつ釣合い長さを等しく構成することにより顕微鏡のフォーカス安定性を強化する。本発明におけるフォーカス安定性とは対物レンズ焦点位置と物点との相対位置をXYZ三方向すべてに関し周囲の環境による影響に左右されず安定させることをいう。
【0005】
温度依存性の極めて少ないコンポーネントとはインバー(鉄、炭素、クロームの特定構成比を持つ鋼材)をもって製作されたステージ部とか、顕微鏡対物レンズで例えれば温度依存性の極めて少ないガラス等と金属で製作する。
また、このような材料を使用した場合、光学機械が非常に高価なもとのなるので、製造コストを安価にするために特別な補正機構で温度依存性を解消する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した課題解決手段は、
固定基盤上に補正筒を固定し、さらに前記補正筒に対物レンズを固定して構成した光学系部と、前記固定基盤上に前記光学系部を取り囲むように配置され、かつ光軸に重量、形状ともに対称に構成されたX、Y軸ステージおよびZ軸微動ステージとを有している顕微鏡であって、前記光学系部と、前記X、Y、Z軸ステージは、それぞれの温度依存性の総和が等しく、かつ釣り合い長さを等しく構成したことを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構である。
また、前記光学系部と、前記X、Y、Z軸ステージのそれぞれの部材が、線膨張係数が3×10-6以下である材質を組み合わせて構成したことを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構である。
また、固定基盤上に配置されたZ軸微動ステージに補正筒を固定し、さらに前記補正筒に対物レンズを固定して構成した光学系部と、前記固定基盤上に補正柱を介して前記光学系部を取り囲むように配置され、かつ光軸に重量、形状ともに対称に構成されたX、Y軸ステージとを有している顕微鏡であって、前記Z軸微動ステージおよび前記光学系部と、前記補正柱およびX、Y軸ステージとは、それぞれの温度依存性の総和が等しく、かつ釣り合い長さを等しく構成したことを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構である。
また、前記X、Y軸ステージは、前記補正柱に取り付けたステージ固定板上に取り付けられていることを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構である。
また、前記Z軸微動ステージおよび前記光学系部と、前記補正柱およびX、Y軸ステージのそれぞれの部材が、線膨張係数が3×10-6以下である材質を組み合わせて構成したことを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構である。
また、前記光学系部と、前記ステージの、何れかのコンポーネントには線膨張係数が3×10-6以下であるインバーを使用することを特徴とする顕微鏡のフォーカス安定性機構である。
【0007】
【実施の形態】
以下本発明の係る実施形態を図面を参照して説明すると、図1は温度依存性の少ない顕微鏡の安定性機構の側断面図、図2は図1中のX-X断面図である。
図1、図2において、3は顕微鏡の基盤であり、この基盤3上には補正筒7の一端が積み上げられネジ等の固定手段によって固定され、さらに補正筒7の先端には対物レンズ11が積み上げられネジ等の固定手段で固定されており、これらを光学系部とする。
【0008】
一方、補正筒7、対物レンズ11の周辺にはX軸・Y軸駆動ステージ8、10が積み上げられて、さらにX軸・Y軸駆動ステージ上にはZ軸微動ステージ5が積み上げられており、これらを周辺部とする。
【0009】
上記構成からなる顕微鏡では、対物レンズ、試料位置決めステージ、焦点合わせ機構部の心臓部等の全てのコンポーネントを光軸中心に重量、形状とも均等に直接固定し、さらに、これらを温度依存性の極めて少ない材料で構成する。温度依存性の極めて少ないコンポーネントとはインバー(鉄、炭素、クロームの特定構成比を持つ鋼材)をもって製作されたステージ部とか、顕微鏡対物レンズで例えれば温度依存性の極めて少ないガラス等と金属で製作する。インバーには線膨張係数3×10-6以下のものが存在し、10mm変化しても無視できるものがある。
このように構成することで、顕微鏡のコンポーネントの全てにおいて、温度依存性を排除することができ、常に安定した顕微鏡測定が実現できる。
なお、本発明におけるフォーカス安定性機構とは対物レンズ焦点位置と物点との相対位置をXYZ三軸方向すべてに関し周囲の環境による影響に左右されず安定した状態で試料の観測ができる状態をいい、そのための機構をフォーカス安定性機構とする。
【0010】
ところで、上記のように顕微鏡を構成するコンポーネントの全てを、温度依存性の極めて小さい材料(たとえばインバー等)で構成すると、顕微鏡自体が極めて高価となり、実用的でないという不都合が生じる。
そこで、図1と同じ構成でありながら、光学系部、周辺部において構成部分の温度依存性の総和が等しく、かつ釣合い長さを等しく構成した顕微鏡を実現する。
【0011】
具体的には、計測時、温度上昇によって対物レンズの焦点位置が対物レンズの先端レンズ方向に移動する顕微鏡の場合には、光学系部を構成する補正筒材質には温度依存性の大きな材料を使用し、補正筒はこれを補償する量の長さ(温度上昇により伸びた量=焦点移動量)に設計する。また、周辺部にはインバー等の温度依存性の極めて低い材料を使用する。
【0012】
これとは逆に、温度上昇によって対物レンズの焦点(物点)位置が対物レンズ先端レンズとは逆方向に移動する顕微鏡の場合には、前述とは逆に、周辺部を構成するステージ材質を温度依存性の大きな材質にし、さらにステージはこれを補償する高さ(温度上昇により伸びた量=焦点移動量)として設計する。また、光学系部を構成する補正筒は温度依存性の極めて低い材料を使用する。
【0013】
このように、光学系部および周辺部のいずれか一方に温度依存性の極めて低い材料を使用し、他方に温度依存性の大きな材料を使用して対物レンズの焦点位置の移動を吸収(補正する)するように設計することで、即ち、顕微鏡の構成部分の温度依存性の総和が等しく、かつ釣合い長さを等しく構成することで顕微鏡の安定性を強化することができる。
【0014】
つづいて、温度変化に伴う対物レンズの焦点移動量を消去するために光学系をもって補正する方法の具体例を説明する。図3は同顕微鏡の側断面図、図4は同顕微鏡の平面図である。
図3、図4において、1はステージ固定板、2は補正支柱、3は基盤、4はZ軸微動固定リング、5はZ軸微動ステージ(中空筒ピエゾステージ)、6は固定ネジ、7は補正筒、8はY軸ステージ板、9は直進案内機構、10はX軸ステージ板、11は対物レンズであり、これらによって顕微鏡が構成されている。
【0015】
前記基盤3にはZ軸微動ステージ(中空型ピエゾステージ)5がねじこまれ、Z軸微動固定リング4によってロックナット状態で固定されている。また、Z軸微動ステージ5には補正筒7がネジこまれて固定さており、さらに補正筒7には対物レンズ11が固定されている。そしてこれらを以下中央ブロックと呼ぶ。
【0016】
一方基盤3には固定ネジ6によって補正支柱2が立設されており、補正支柱2を介してステージ固定板1がネジによって固定されている。そしてステージ固定板上にはY軸ステージ板8が取付けられ、さらにY軸ステージ板8上にX軸ステージ板10が取付けられ、これらによってY軸駆動ステージおよびX軸駆動ステージを構成する。そしてこれらを周辺ブロックと呼ぶ。
【0017】
顕微鏡対物レンズに定められた(設計値)位置(物点)に物体を置いたとしても僅かな室温の変化等によって対物レンズの焦点距離が変化し、焦点面(物点)が移動する。しかし、温度変化があっても次の式が成立すれば、ピンぼけをおこすことなく、安定した顕微鏡測定が可能となる。
【0018】
Z軸微動ステージ(ピエゾステージ)伸縮量 ΔP
補正筒伸縮量 ΔX
対物レンズ焦点(物点)移動量 ΔO
補正柱の伸縮量 ΔH
ステージ固定板の伸縮量 ΔC
X・Yステージ部伸縮量 ΔS
ΔP+ΔX+ΔO=ΔH+ΔC+ΔS
これまでの測定では対物レンズ焦点(物点)の移動量ΔOは-値である。
従って、補正筒7の伸縮量はΔX=ΔH+ΔC+ΔS-(ΔP+ΔO)である。
【0019】
それぞれの値は、実測が望ましいが計算で補えるものもある。
具体例を上げると次の通りである。
Z軸微動ステージ(ピエゾステージ)伸縮量 ΔP= 0.3μm
対物レンズ焦点(物点)移動量 ΔO=-0.5μm
補正柱の伸縮量 ΔH= 0.06μm
ステージ固定板の伸縮量 ΔC= 0.15μm
X・Yステージ部伸縮量 ΔS= 0.20μm
JP0004205321B2_000002t.gif上記の場合、補正筒7にアルミニウム合金を使用すると線膨張係数は23×10-6である。
そこで補正筒長=0.61/23×10-623×10-6=26.5mmとなる。
補正筒長はこのような計算から定めているので中央ブロックと周辺ブロックの高さを合わせる必要があり、この長さ調整は補正支柱2の丈決めを行う。
【0020】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は対象となる光学機械は顕微鏡に限定されず、温度によってコンポーネントが膨張することでフォーカスが不安定になる光学測定機等を含む広い概念の光学機械に広く採用することができる。また、光学機械を構成するコンポーネントのうち、どのコンポーネントに温度依存性の小さい材料を使用し、それに対応した補正方法を設計するか等は設計者によって自由に選択することができる。またステージ形状も正方形のステージに限定することなく、多角形、円形、楕円形等種々の形状のステージとすることができる。
【0021】
さらに、本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、極めて安定性の高い光学顕微鏡が実現し分子生物学、生物物理学等における分子間の距離計測や分子運動量計測がナノメートルオーダーで容易に可能となる。対物レンズ、試料位置決めステージ、焦点合わせ機構部の心臓部を光軸中心に重量、形状とも均等に直接固定し、これらを温度依存性の極めて少ないコンポーネントに製作し、組み立てるか、構成部分の温度依存性の総和が等しく、かつ釣合い長さを等しく構成することにより光学機械のフォーカス安定性(ピントのズレ防止、物点の移動防止)を強化できる、等々の優れた効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】温度依存性の少ない顕微鏡の安定性機構の側断面図である。
【図2】図1中のX-X断面図である。
【図3】レンズの焦点移動量を消去するために光学系をもって補正する方法の顕微鏡の側断面図である。
【図4】図3のステージ固定板から上を除いた平面図である。
【符号の説明】
1 ステージ固定板
2 補正支柱
3 基盤
4 Z軸微動固定リング
5 Z軸微動ステージ(中空筒ピエゾステージ)
6 固定ネジ
7 補正筒
8 Y軸ステージ板
9 直進案内機構
10 Z軸ステージ板
11 対物レンズ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3