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明細書 :コンポジット型可溶化ナノリポソーム及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-163851 (P2016-163851A)
公開日 平成28年9月8日(2016.9.8)
発明の名称または考案の名称 コンポジット型可溶化ナノリポソーム及びその製造方法
国際特許分類 B01J  13/06        (2006.01)
A61K   9/127       (2006.01)
A61K   8/14        (2006.01)
A61K  47/24        (2006.01)
A61K  47/34        (2006.01)
A61K  47/28        (2006.01)
A61K   8/55        (2006.01)
A23L   5/00        (2016.01)
FI B01J 13/06
A61K 9/127
A61K 8/14
A61K 47/24
A61K 47/34
A61K 47/28
A61K 8/55
A23L 1/00 C
請求項の数または発明の数 18
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2015-044176 (P2015-044176)
出願日 平成27年3月6日(2015.3.6)
発明者または考案者 【氏名】鬼頭 清司
【氏名】中根 幸治
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査請求 未請求
テーマコード 4B035
4C076
4C083
4G005
Fターム 4B035LC16
4B035LE07
4B035LG13
4B035LK13
4B035LP01
4B035LP21
4C076AA19
4C076DD09F
4C076DD63
4C076FF16
4C083AD571
4C083DD35
4C083DD45
4C083EE01
4C083FF04
4C083FF05
4G005AA07
4G005AB03
4G005AB14
4G005AB17
4G005BA05
4G005BB01
4G005BB06
4G005BB08
4G005BB09
4G005BB13
4G005BB22
4G005DC15W
4G005DC17X
4G005DC56Y
4G005DC56Z
4G005DD05W
4G005DD07W
4G005DD24W
4G005DD56W
4G005DD58W
4G005DE01X
4G005DE02X
4G005EA01
4G005EA03
要約 【課題】安全性や安定性の高い、平均粒子径が18~25nmのリポソームを提供し、さらには当該リポソームの容易かつ簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】第1工程で、リン脂質の可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製し、第2工程で油溶性成分の可溶化ナノエマルション(B)を調製し、第3工程で(A)と(B)を混合して均質化する工程を含む製造方法による。本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの製造方法は、有機溶媒を使用する必要がなく、特別な乳化装置や整粒装置も要さず、コスト的・工業的に優れた汎用的な製造技術方法である。特に有機溶媒を使用しない点から、安全性に優れたリポソームということができる。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程を含む、コンポジット型可溶化ナノリポソームの製造方法:
(1)リン脂質及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製する工程;
(2)油溶性成分及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノエマルション(B)を調製する工程;
(3)前記O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)を混合して均質化し、混合可溶化ナノエマルションを調製する工程;
(4)前記工程(3)で得られた混合可溶化ナノエマルションを曇点以上に加熱して加熱乳化する工程。
【請求項2】
前記工程(1)が、相転移温度0~75℃のリン脂質を、非イオン界面活性剤を含む溶液に溶解均一混合し、転相温度乳化法で乳化分散する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)のリン脂質が、アシル基の炭素数が12~22であるホスファチジルコリンであるリン脂質である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(1)に記載のO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)において、リン脂質を0.5~5質量 %含む、請求項1~3のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)において、等張化剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(1)において、エタノールをさらに含む、請求項1~5のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(2)が、油溶性成分を非イオン界面活性剤に溶解均一混合し、転相温度乳化法で乳化分散する工程からなる、請求項1~6のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程(2)の油溶性成分が、少なくともコレステロールを含む、請求項1~7のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程(1)及び(2)で使用する非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル若しくはそのイソ体、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであって、その親和性(HLB値)が10.7~18.0の界面活性剤から選択されるいずれか1種又は複数種の非イオン界面活性剤を、各々独立して又は共通して含む、請求項1~8のいずれか1に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1に記載の製造方法により製造されたコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
【請求項11】
リポソームの粒子径分布が10~80 nmである、請求項10に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
【請求項12】
平均粒子径が18~25 nmのリポソームであって、内水相に親水性物質を含み、二分子膜内部には油溶性成分が封入されてなるコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
【請求項13】
コンポジット型可溶化ナノリポソームが、リン脂質、油溶性成分及び非イオン界面活性剤を少なくとも含み、重量比でリン脂質を1とした場合に、油溶性成分が、0.01~0.6 %含まれている、請求項10~12ずれか1に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
【請求項14】
コンポジット型可溶化ナノリポソームが、リン脂質、油溶性成分及び非イオン界面活性剤を少なくとも含み、各構成成分の重量比が、リン脂質:油溶性成分:非イオン界面活性剤とした場合に、2:0.02~1.2:0.78~4.0である、請求項13に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
【請求項15】
前記リポソームに含有される油溶性成分が、少なくともコレステロールを含み、さらに機能性付与油溶性成分を含む、請求項13又は14に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
【請求項16】
請求項10~15のいずれかに記載のコンポジット型可溶化ナノリポソームを含む、可溶化リポソームエマルション。
【請求項17】
前記可溶化リポソームエマルションに含まれるリポソームの粒子径分布が10~80 nmである、請求項16に記載の可溶化リポソームエマルション。
【請求項18】
前記可溶化リポソームエマルションに含まれるリポソームの粒子径ピーク分布が、1ピークからなる、請求項16又は17に記載の可溶化リポソームエマルション。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱安定性や長期保存安定の高いコンポジット型可溶化ナノリポソーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、内水相に親水性物質また二分子膜内部には疎水性成分を封入することができる脂質二分子膜の閉鎖小胞体である。そのため、医薬分野では特にDDSの薬物運搬体として治療薬、診断薬などに注目されている。その他化粧品ではナノカプセル、食品では酵素、抗酸化剤、香料等を封入して利用されている。
【0003】
従来、リポソームの製造方法としては、(1) Bangham法、(2) 超音波処理法、(3) 有機抽出法、(4) 界面活性剤除去法、(5) 凍結融解法、及び(6) 逆相蒸発法等が知られている。(1) Bangham法は、容器内でリン脂質をクロロホルムに溶解し、次いでクロロホルムを蒸発させ容器内面上に脂質薄膜を作成した後、容器内に水を加えて水和し、さらに容器を震蕩させてMLV(multilamellar vesicle)形状のリポソームを得る方法である。(2) 超音波処理法は、Bangham法で作製したMLV 形状のリポソームに超音波処理を施すことで、SUV(small unilamellar vesicle)形状のリポソームを得る方法である。(3) 有機溶媒抽出法は、有機溶媒に溶かしたリン脂質を水溶液に注入して、SUV又はLUV(large unilamellar vesicle)形状のリポソームを得る方法である。(4) 界面活性剤除去方法は、容器内でリン脂質をクロロホルムに溶解し、次いでクロロホルムを蒸発させて容器面上に脂質薄膜を形成した後、界面活性剤を含む水を加えて膨潤させ、さらに容器を激しく震蕩してミセルを形成した後、界面活性剤を透析して除去する方法である。(5) 凍結融解法は、有機溶媒に溶解したリン脂質薄膜を水に溶解分散後激しく震蕩し、その後リン脂質薄膜を液体窒素で凍結し、室温放置して解凍してLUV形状のリポソームを得る方法である。(6) 逆相蒸発法は、有機溶媒にリン脂質膜を溶解し、次いでそのリン脂質薄膜を水に溶解後激しく震蕩した後、有機溶媒を減圧除去して、LUV形状のリポソームを得る方法である。またこれらの製造工程後のリポソームは、粒子径を小さく均一化するため、特別な乳化装置(例えばマイクロフルイダイザー・薄膜旋回高速ホモミキサー)や整粒装置(例えばエクストルーダー(extruder))も必要とされ、コスト的・工業的に優れた汎用的な製造技術方法は提案されていない。
【0004】
また上述した(1)~(6)の製造方法は、いずれも製造工程でリン脂質をクロロホルムやヘキサンなどの非水溶性有機溶媒に溶解しているため、リポソーム調製後に非水溶性溶媒を除去する工程が必要である。また非水溶性有機溶剤を完全に除去することが困難である。これら非水溶性有機溶媒の除去や粒子径を整粒するのに必要とされる、加熱・減圧又は加圧工程等は、リポソーム膜の劣化や破壊要因であり、経時安定性にも悪影響となり、凝集・沈殿の要因となる上、製造工程が煩雑であり乳化分散工程も含め価格上昇につながるという問題もある。
【0005】
炭化水素有機溶媒を使用する製造方法は、特許文献1(特開2010-248171号公報)及び2(特開2013-22482号公報)に開示されている。リン脂質成分を揮発性の炭化系水素有機溶媒に溶解又は分散した油相液と、内包対象薬剤を水溶性溶媒に溶解して得られる水溶液とを混合乳化してW/Oエマルションを調製する一次乳化工程と、上記工程で得られたW/Oエマルションと非結晶性の脂質成分を添加した水相液とを混合乳化してW/O/Wエマルションを調製する二次乳化工程を含む。またこのW/O/Wエマルションから炭化系水素有機溶媒を除去したリポソーム分散液を調製する溶媒除去工程、及びさらに上記リポソーム分散液より非結晶性の脂質成分を添加した水相液を除去し、水相液を添加してリポソーム製剤を調製する水相置換工程を含み、平均粒子径が50 nm以上200 nm以下の単胞リポソームを製造する方法である(特許請求の範囲)。
【0006】
これに対し、有機溶媒を使用しないリポソームの製造方法が特許文献3(特開昭60-7934号公報)及び4(特開2000-290170号公報)に開示されている。特許文献3に開示の方法は、リポソーム膜成分物質を水溶液と膜成分物質の相転移温度(Tc)以上にて練合して水和させ、次に必要量の水溶液を加えてTc以上で攪拌する方法である(特許請求の範囲)。特許文献4には、リン脂質と非糖ミセル系界面活性剤、さらに糖ミセル系界面活性剤を含有するリポソームであることを特徴とする癌治療用ハイブリッド型リポソーム製剤(請求項1)が開示される。さらに、特許文献5(特開2006-298839号公報)に開示の方法は、リポソーム膜構成成分として40~70℃に融点を持つPEG-リン脂質を用い、特定の第1~第4工程によってリポソーム含有製剤を製造する方法である(請求項10)。しかしながら、特許文献3~5に開示する製造方法では、経時安定性に問題があり、さらに平均粒子径が25 nm以下の可溶化リポソームを得ることが難しい。また特許文献1及び2に開示する方法では脂質溶解剤として用いた非水溶性炭化水素系有機溶媒の減圧除去による残留溶剤も考えられ、安定性や安全性が高い平均粒子径が25 nm以下の可溶化リポソームを得ることが出来ないという問題がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2010-248171号公報
【特許文献2】特開2013-22482号公報
【特許文献3】特開昭60-7934号公報
【特許文献4】特開2000-290170号公報
【特許文献5】特開2006-298839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、安全性や安定性の高い平均粒子径が18~25 nmのリポソームを提供することを課題とし、さらには当該リポソームの容易かつ簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、第1工程で、リン脂質の可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製し、第2工程で油溶性成分の可溶化ナノエマルション(B)を調製し、第3工程で(A)と(B)を混合して均質化する工程、及び第4工程で前記第3で得られた混合可溶化ナノエマルションを曇点以上に加熱して加熱乳化する工程を含む製造方法によれば、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.以下の工程を含む、コンポジット型可溶化ナノリポソームの製造方法:
(1)リン脂質及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製する工程;
(2)油溶性成分及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノエマルション(B)を調製する工程;
(3)前記O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)を混合して均質化し、混合可溶化ナノエマルションを調製する工程;
(4)前記工程(3)で得られた混合可溶化ナノエマルションを曇点以上に加熱して加熱乳化する工程。
2.前記工程(1)が、相転移温度0~75℃のリン脂質を、非イオン界面活性剤を含む溶液に溶解均一混合し、転相温度乳化法で乳化分散する工程である、前項1に記載の製造方法。
3.前記工程(1)のリン脂質が、アシル基の炭素数が12~22であるホスファチジルコリンであるリン脂質である、前項1又は2に記載の製造方法。
4.前記工程(1)に記載のO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)において、リン脂質を0.5~5質量 %含む、前項1~3のいずれか1に記載の製造方法。
5.前記工程(1)において、等張化剤をさらに含む、前項1~4のいずれか1に記載の製造方法。
6.前記工程(1)において、エタノールをさらに含む、前項1~5のいずれか1に記載の製造方法。
7.前記工程(2)が、油溶性成分を非イオン界面活性剤に溶解均一混合し、転相温度乳化法で乳化分散する工程からなる、前項1~6のいずれか1に記載の製造方法。
8.前記工程(2)の油溶性成分が、少なくともコレステロールを含む、前項1~7のいずれか1に記載の製造方法。
9.前記工程(1)及び(2)で使用する非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル若しくはそのイソ体、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであって、その親和性(HLB値)が10.7~18.0の界面活性剤から選択されるいずれか1種又は複数種の非イオン界面活性剤を、各々独立して又は共通して含む、前項1~8のいずれか1に記載の製造方法。
10.前項1~9のいずれか1に記載の製造方法により製造されたコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
11.リポソームの粒子径分布が10~80 nmである、前項10に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
12.平均粒子径が18~25 nmのリポソームであって、内水相に親水性物質を含み、二分子膜内部には油溶性成分が封入されてなるコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
13.コンポジット型可溶化ナノリポソームが、リン脂質、油溶性成分及び非イオン界面活性剤を少なくとも含み、重量比でリン脂質を1とした場合に、油溶性成分が、0.01~0.6 %含まれている、前項10~12ずれか1に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
14.コンポジット型可溶化ナノリポソームが、リン脂質、油溶性成分及び非イオン界面活性剤を少なくとも含み、各構成成分の重量比が、リン脂質:油溶性成分:非イオン界面活性剤とした場合に、2:0.02~1.2:0.78~4.0である、前項13に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
15.前記リポソームに含有される油溶性成分が、少なくともコレステロールを含み、さらに機能性付与油溶性成分を含む、前項13又は14に記載のコンポジット型可溶化ナノリポソーム。
16.前項10~15のいずれかに記載のコンポジット型可溶化ナノリポソームを含む、可溶化リポソームエマルション。
17.前記可溶化リポソームエマルションに含まれるリポソームの粒子径分布が10~80 nmである、前項16に記載の可溶化リポソームエマルション。
18.前記可溶化リポソームエマルションに含まれるリポソームの粒子径ピーク分布が、1ピークからなる、前項16又は17に記載の可溶化リポソームエマルション。
【発明の効果】
【0011】
非イオン界面活性剤、リン脂質、疎水性物質を含む構造からなる本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームは、平均粒子径が18~25 nmのSUVリポソームであり、安定性に優れている。本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの製造方法によれば、有機溶媒を使用する必要がなく、特別な乳化装置や整粒装置も要さず、コスト的・工業的に優れた汎用的な製造技術方法であり、有機溶媒を使用しない点から、安全性に優れたリポソームが得られる。
【0012】
本発明のリポソームは、製造工程において、設備面、材料面から経済的に優れている。さらに、本発明のリポソームや、リポソームを含むエマルションは、医薬品、食品、化粧品を始め、多くの分野で利用することができ、係る点からも効果も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの構造を示す図である。
【図2】本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの製造工程の概念を示す図である。
【図3】工程(1)で調製された各O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)の粒子分布を示す図である。(実施例)
【図4】工程(2)で調製された各O/W型可溶化ナノエマルション(B)の粒子分布を示す図である。(実施例)
【図5】本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームを用いたときの薬剤徐放性に及ぼす効果を確認した結果を示す図である。(実験例1)
【図6】本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの継時安定性を確認した結果を示す図である。(実験例2)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、耐熱安定性や長期保存安定の高いコンポジット型可溶化ナノリポソーム及びその製造方法に関する。本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの構造は、図1(I)に示す構造を有しており、平均粒子径が18~25 nmであり、少なくともリン脂質、非イオン界面活性剤、油溶性成分(疎水性物質)を含む構造からなる。リン脂質の二分子膜内部に、油溶性成分が含まれる。さらに、本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームには、リン脂質の二分子膜内部で形成された内側の内水層に図1(II)に示す如くの親水性物質を含むことができる。

【0015】
まず本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの製造方法を説明し、本発明のリポソームの構造についてもさらに詳細に説明する。

【0016】
本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームは、以下の工程を含む方法により製造することができる。以下の工程(1)及び工程(2)のO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)は、図2を参照することができる。

【0017】
(1)リン脂質及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製する工程;
(2)油溶性成分及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノエマルション(B)を調製する工程;
(3)前記O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)を混合して均質化し、混合可溶化ナノエマルションを調製する工程;
(4)前記工程(3)で得られた混合可溶化ナノエマルションを曇点以上に加熱して加熱乳化する工程。

【0018】
工程(1)について
上記工程(1)のリン脂質及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製する工程において使用されるリン脂質は、アシル基の炭素数が12~22、好ましくは14~22、より好ましくは16~22からなる選択されるいずれかのホスファチジルコリンを含む疎水性リン脂質である。かかるリン脂質の相転移温度は0~75℃であり、好ましくは23~75℃、より好ましくは41~75℃である。具体的には、疎水性が高い水素添加物のジステアリルホスファチジルコリン(HSPC)でホスファチジルコリン含有量が90 %以上に精製したものを用いるのが好適である。また合成されたL-3-ジステアリルホスファチジルコリンを用いてもよい。また、市販のホスファチジルコリンを用いることができる。たとえばCOATSOME NC 21(日油製PC純度90 %以上)、NIKKOLレシノール S 10EX(日光ケミカルズ製PC純度98 %以上)などが好適に例示される。また脂質二分子膜を形成するリン脂質としては、COATSOME NC 21(水素添加大豆リン脂質(HSPC))を使用することができる。

【0019】
上記工程(1)で使用される非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル若しくはそのイソ体、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであって、その親和性(HLB値)が10.7~18.0の界面活性剤から選択される1種又は複数種である。本明細書における特定の非イオン界面活性剤は、疎水基にコレステロールと親和性を有するポリオキシエチレンステロールエーテルや医薬品添加物規格1998記載の非イオン界面活性剤が挙げられる。例えば疎水基がリン脂質の脂質基と親和性を有するポリオキシエチレンステアリルエーテル(St0(EO)pH・p=10~25)及びそのイソ体や同じエーテルタイプのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(CeO(PO)m(EO)nH・m=4, n=10, 20)が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、市販品の非イオン界面活性剤を用いることもできる。例えばNIKKOL DHC 30 HLB17.0(日光ケミカルズ製)、NIKKOL BS 20 HLB18.0(日光ケミカルズ製)、ユニオックスCS 800 HLB10.7(日油製)、EMALEX CS 30 HLB14.0(日本エマルジョン製)、EMALEX 620 HLB13.0(日本エマルジョン製)、EMALEX 1825 HLB13.0(日本エマルジョン製)、NIKKOL PBC 34 HLB16.5(日光ケミカルズ製)等を用いることができる。

【0020】
上記工程(1)で、O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)において、リン脂質を0.5~5質量 %を含ませることができ、また安定なリポソームを調製する為には、1~2質量 %含ませるのが特に好ましい。

【0021】
O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)には、等張化剤を含ませるのが好適である。等張化剤として、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコール、マルチトール、ベンジルアルコール等から選択されるいずれかを用いることができる。特に純度98 %以上の日本薬局方基準の濃グリセリンが好適であり、またその添加量は、リン脂質1に対し1~3重量倍程度の使用が好ましい。

【0022】
上記工程(1)では、リン脂質と非イオン界面活性剤を、溶媒を用いて混合溶解する。ここで溶媒として、水溶性媒体や水溶性アルコール溶媒を使用することができる。係る溶媒としては、自体公知の一般的なものを用いることができる。 水溶性アルコール溶媒としては、水よりも沸点が低いエタノールを使用することが好ましい。水溶性媒体としては、例えば蒸留水、精製水、純水が挙げられる。溶媒の使用量は、リン脂質と非イオン界面活性剤を完全に溶解する量であれば特に制限はなく使用することができる。一般には、リン脂質混合物1 gあたり、1~2 g程度の使用量とするのが適当である。

【0023】
上記工程(1)において、リン脂質の嵩比重が大きく、乳化分散剤として使用する非イオン界面活性剤やグリセリンの添加量が少ない場合は、均一溶融混合が難しい。また均一溶融混合のための長時間加熱による脂質の変質や炭化も危惧される。そこで、この問題の解決方法として、均一溶解溶媒である水溶性低級アルコールを添加して徐々に昇温しながら均一溶解するのが好適である。ここで使用される水溶性低級アルコールとしては、エタノールが好適である。均一溶融混合した後に、エタノールの沸点(約80℃)以上に加温することで、95 %以上のエタノールを蒸発させることができ、透明皮膜を作製することができる。そこに別浴で80℃以上に加温した精製水を添加して転相温度乳化法で乳化分散させることができる。リン脂質混合物を溶解する温度としては、特に制限はないが、好ましくは40℃以上であり、さらに均一溶解を促進するために50~60℃の加温下で攪拌又は震蕩するのが好ましい。これらの方法により、上記工程(1)のO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製することができる。

【0024】
本工程での乳化方法としては、特別な乳化装置である加圧タイプのマイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)又は薄膜旋回型高速ホモミキサー(プライミックス社製)等を使用することなく、プロペラ又はパドル(棒)等の攪拌装置を用い、常圧で転相温度乳化法にて乳化分散することができる。

【0025】
工程(2)について
上記工程(2)の油溶性成分及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノエマルション(B)を調製する工程において使用される油溶性成分は、膜安定化剤としての油溶性成分と、本発明のリポソームに封入される機能性付与油溶性成分が挙げられる。

【0026】
上記工程(2)の油溶性成分の内、膜安定化剤としての油溶性成分はリポソームにおいて使用可能な成分、例えばステロール類、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、コレスタロール、ラノステロール、1-O-ステロールグルコシド、1-0-ステロールガラクトシドなどを挙げることができ(特開平5-245357号公報)、特にコレステロールが好適である。具体的には市販のステロールを用いることができる。例えばコレステロールJSCI(日本精化株製・コレステロール)、GENEROL 122N(コグニスジャパン株製・フィトステロール)等を用いることができる。またその他抗酸化作用のあるトコフェロールや機能性付与剤であるアスコルビン酸・オレイン酸等を併用してもよい。

【0027】
上記工程(2)の油溶性成分の内、機能性付与油溶性成分の油溶性成分は、リポソームに封入される油溶性成分であればよく、特に限定されないが、例えばスクワラン、ハトムギ油、ホホバオイル、オリーブオイル、ジメチルシリコン、パラメトキシケイヒ酸オクチル、パラアミノジメチル安息香酸オクチル、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等(特開平09-143031号公報)や、水難溶性及び水不溶性例えばドキソルビシン、シスプラチン、パクリタクセル、マイトマイシンC、イリノテカン等(特開2012-55885号公報)などの抗癌剤などが例示される。これらの成分は、例えば食品、化粧品、医薬品等の用途に適用可能である。

【0028】
上記工程(2)の膜安定化剤としての油溶性成分と機能性付与油溶性成分を併せた油溶性成分の濃度(質量/質量)は、リン脂質との濃度比でリン脂質を1としたときに0.05~0.3が好ましい。特にリン脂質1に対して、コレステロールの濃度比が0.05未満あるいは0.3を超えるとリポソームの安定性があまり良くない。

【0029】
上記工程(2)のO/W型可溶化ナノエマルション(B)を作製するための乳化分散剤としての非イオン界面活性剤は、工程(1)と同様に、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル若しくはそのイソ体、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであって、その親和性(HLB値)が10.7~18.0の界面活性剤から選択される1種又は複数種である。本明細書における特定の非イオン界面活性剤は、疎水基にコレステロールと親和性を有するポリオキシエチレンステロールエーテルや医薬品添加物規格1998記載の非イオン界面活性剤が挙げられる。例えば疎水基がリン脂質の脂質基と親和性を有するポリオキシエチレンステアリルエーテル(St0(EO)pH・p=10~25)及びそのイソ体や同じエーテルタイプのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(CeO(PO)m(EO)nH・m=4, n=10, 20)が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、市販品の非イオン界面活性剤を用いることもできる。例えばNIKKOL DHC 30 HLB17.0(日光ケミカルズ製)、NIKKOL BS 20 HLB18.0(日光ケミカルズ製)、ユニオックスCS 800 HLB10.7(日油製)、EMALEX CS 30 HLB14.0(日本エマルジョン製)、EMALEX 620 HLB13.0(日本エマルジョン製)、EMALEX 1825 HLB14.0(日本エマルジョン製)、NIKKOL PBC 34 HLB16.5(日光ケミカルズ製)等を用いることができる。

【0030】
上記工程(2)において、油溶性成分を非イオン界面活性剤に混合し、転相温度乳化法で乳化分散させ、O/W型可溶化ナノエマルション(B)を調製することができる。本工程においても、特別な乳化装置である加圧タイプのマイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)又は薄膜旋回型高速ホモミキサー(プライミックス社製)等を使用することなく、プロペラ又はパドル(棒)等の攪拌装置を用い、常圧で転相温度乳化法にて乳化分散することができる。

【0031】
工程(3)について
上記工程(3)では、前記作製したO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)を混合して均質化し、混合可溶化ナノエマルションを調製する。混合可溶化ナノエマルションにおけるリン脂質と油溶性成分及び非イオン界面活性剤の各重量比は、リン脂質:油溶性成分:非イオン界面活性剤とした場合に、2:0.02~1.2:0.78~4.0、好ましくは2:0.1~1.1:0.78~3.1である。

【0032】
工程(4)について
上記工程(4)では、前記工程(3)で得られた混合可溶化ナノエマルションを曇点以上に加熱して加熱乳化する。エマルションを曇点以上に昇温し、混合攪拌してO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)がコンポジットされた均一に再乳化分散液を調製することができる。ここで、曇点は、透明又は半透明な液体で温度変化によって相分離が起き、その結果不透明になる温度のことをいう。例えば、非イオン系界面活性剤の水溶液を加温した際に、非イオン界面活性剤のポリエーテル鎖と水との水素結合が切れ、水への溶解度が低下して分離し始め、水溶液が濁りだす温度をいう。曇点以上として、例えば68℃以上、好ましくは75℃以上が挙げられる。例えば80℃以上で30~60秒間混合攪拌し、再乳化分散液を調製することができる。その後室温まで急冷して、乳化分散液を安定化させ、油溶性成分が可溶化ナノベシクルエマルションの疎水性部分に内包された、コンポジット型可溶化ナノリポソームを得ることができる。

【0033】
上記製造方法により製造されたコンポジット型可溶化ナノリポソームの粒子径は、動的光散乱方装置で測定すると、平均粒子径が18~25 nmである。当該得られたリポソームは、内水相に親水性物質を含み、二分子膜内部には疎水性物質を含むことができる。本発明は、当該リポソームにも及ぶ。二分子膜内部に含まれる疎水性物質として、本発明の油溶性成分が挙げられ、さらにはコレステロールなど膜安定化剤としての油溶性成分や、機能性付与油溶性成分が挙げられる。

【0034】
本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームを含むエマルションを、本発明の可溶化リポソームエマルションということができる。本発明によれば、粒子径頻度分布グラフのピーク数1つであり、均一なコンポジット型可溶化リポソームを含む可溶化リポソームエマルションを得ることができる。本発明の可溶化リポソームエマルションに含まれるリポソームの粒子径分布は10~80 nmであり、好適には15~80 nmである。

【0035】
本発明のリポソームは、医薬品分野、化粧品分野、食品分野等、種々の分野で利用することが可能である。
【実施例】
【0036】
本発明の理解を深めるために、図面に記載の内容を参照しつつ、本発明の内容を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことは明らかである。
【実施例】
【0037】
(実施例1~6)コンポジット型可溶化ナノリポソームの作製
本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームは、以下の(1)~(4)の工程を経て作製される。以下の実施例1~6では、リン脂質、非イオン界面活性剤及び油溶性成分、その他の成分の配合比を各種変更した場合に作製されるコンポジット型可溶化ナノリポソームについて具体的に示した。
【実施例】
【0038】
(1)リン脂質及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製する工程;
(2)油溶性成分及び非イオン界面活性剤を含むO/W型可溶化ナノエマルション(B)を調製する工程;
(3)前記O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)を混合して均質化し、混合可溶化ナノエマルションを調製する工程;
(4)前記工程(3)で得られた混合可溶化ナノエマルションを曇点以上に加熱して加熱乳化する工程。
【実施例】
【0039】
(1)O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)の調製
まずO/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)として(A)-37及び(A)-35を調製した。リン脂質として、疎水性リン脂質粉末コートソームNC 21(日油株製・HSPC)、非イオン界面活性剤として、NIKKOL DHC 30(日光ケミカルズ株製・ポリオキシエチレンコレステリルエーテル)、ユニオックスCS 800(日油株製・ポリオキシエチレンコレステリルエーテル)及びエマレックス1825(日本エマルション株製・ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル)、等張化剤として濃グリセリン、溶解剤としてエタノール(日本純薬製試薬)を用いた。これらの配合量を表1に示した。
【実施例】
【0040】
【表1】
JP2016163851A_000003t.gif
【実施例】
【0041】
上記のリン脂質(コートソームNC 21)、非イオン界面活性剤(NIKKOL DHC 30、ユニオックスCS 800、エマレックス1825)等張化剤(濃グリセリン)及び溶解剤(エタノール)を各々加えて60℃で混合攪拌均一溶解した。溶解後さらに80℃に加熱し、エタノールを95 %以上蒸発させて微黄色透明フィルムを作製した。そこに別浴で80℃以上に加熱した精製水(45.52 g)を徐々に添加して、棒攪拌させながら転相温度乳化したのち室温まで急冷し、O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)を調製した。
【実施例】
【0042】
その結果、(A)-37は、キュムラント平均粒子径が101.6 nm、粒子径分布が10~30 nmと70~1000 nmのピーク数2つであり、外観が微白色の半可溶化ベシクルエマルションであった。(A)-35は、キュムラント平均粒子径が20.4 nm、粒子径分布が10~65 nmのピーク数1つであり、外観が透明な可溶化ナノベシクルエマルションであった(図3参照)。
【実施例】
【0043】
(2)O/W型可溶化ナノエマルション(B)の調製
次に、O/W型可溶化ナノエマルション(B)として、(B)-3、(B)-4、(B)-5及び(B)-6を調製した。膜安定化剤としての油溶性成分として、コレステロールJSCI(日本精化株製)、非イオン界面活性剤として及びNIKKOL DHC 30(日光ケミカルズ株製・エポリオキシチレンコレステリルエーテル)、ユニオックスCS 800(日油株製・エポリオキシチレンコレステリルエーテル)を用いた。O/W型可溶化ナノエマルション(B)を調製するための各物質の混合割合を表2に示した。
【実施例】
【0044】
【表2】
JP2016163851A_000004t.gif
【実施例】
【0045】
上記の安定化剤としての油溶性成分(コレステロールJSCI)、非イオン界面活性剤(NIKKOL DHC 30、ユニオックスCS 800、NIKKOL BS 20、NIKKOL PBC 34)を表2に示す割合でコレステロールの融点以上で均一溶解した。そこに別浴で80℃以上に加熱した精製水を、徐々に添加攪拌させながら加え、転相移温度乳化させたのち室温まで急冷した。
【実施例】
【0046】
その結果、(B)-3は、キュムラント平均粒子径が15.0 nm、粒子径分布が10~40 nmのピーク数1つであり、外観が透明な可溶化ナノエマルションであった。(B)-4は、キュムラント平均粒子径が25.6 nm、粒子径分布が15~70 nmのピーク数1つであり、外観が透明な可溶化ナノエマルションであった。(B)-5は、キュムラント平均粒子径が84.6 nm、粒子径分布が35~85 nmと85~400 nmのピーク数2つであり、外観がやや白色半可溶化ナノエマルションであった。(B)-6は、キュムラント平均粒子径が12.0 nm、粒子径分布が5~24 nmのピーク数1つであり、外観が透明な可溶化ナノエマルションであった(図4参照)。
【実施例】
【0047】
(3)O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)の混合による混合可溶化ナノエマルションの調製
実施例1~6について、表1及び表2に示す各エマルジョンを表3に示す組み合わせで混合した。混合の詳細は後述する。
【実施例】
【0048】
【表3】
JP2016163851A_000005t.gif
【実施例】
【0049】
(実施例1)コンポジット型可溶化ナノリポソームエマルション1の作製
表1及び2に示す(A)-37及び(B)-5の各エマルションを用いて、実施例1のコンポジット型可溶化ナノリポソームを作製した。
【実施例】
【0050】
まず、(A)-37(50 g)及び(B)-5(12.5 g)で得られた各エマルションと精製水(37.5 g)を、全体が100 gになるように重量比4:1:3の割合で、室温で均一混合した。その結果、キュムラント平均粒子径が79.2 nm、粒子径分布が15~55 nmと55~700 nmのピーク数2つの、外観が微白色の混合可溶化ナノエマルションが得られた。
【実施例】
【0051】
得られた混合可溶化ナノエマルションを、エマルションの曇点以上(80~85℃)に昇温し30秒間エージングして、(A)-37と(B)-5が均一化された透明な可溶化乳化分散液が得られた。その後、このエマルションを室温まで急冷してコンポジット型可溶化ナノリポソームを調製した。その結果、キュムラント平均粒子径が31.3 nm、粒子径分布が14~55 nmのピーク数1つのコンポジット型可溶化ナノリポソームが得られた。
【実施例】
【0052】
上記得られたコンポジット型可溶化ナノリポソームを、エマルションの曇点以上(80~85℃)まで昇温し30秒間エージングし、その後室温まで急冷する工程を再度繰り返すことにより、リポソームの最少粒子径となるキュムラント平均粒子径が20.3 nm、粒子径分布が10~58 nmのピーク数1つであるコンポジット型可溶化ナノリポソームエマルションが得られた。
【実施例】
【0053】
(実施例2)コンポジット型可溶化ナノリポソームエマルション2の作製
表1及び2に示す(A)-37及び(B)-4の各エマルションを用いて、実施例2のコンポジット型可溶化ナノリポソームを作製した。
【実施例】
【0054】
まず、(A)-37(50 g)及び(B)-4(12.5 g)で得られた各エマルションと精製水(37.5 g)を、全体が100 gになるように重量比4:1:3の割合で、室温で均一混合した。その結果、キュムラント平均粒子径が29.6 nm、粒子径分布が15~80 nmのピーク数1つの混合可溶化ナノエマルションが得られた。
【実施例】
【0055】
得られた混合可溶化ナノエマルションを、実施例1と同様にエマルションの曇点以上(80~85℃)に昇温し30秒間エージングし、その後室温まで急冷した。その結果、キュムラント平均粒子径が22.0 nm、粒子径分布が15~70 nmのピーク数1つであるコンポジット型可溶化ナノリポソームエマルションが得られた。
【実施例】
【0056】
実施例1の(B)-5と比較し、(B)-4は、非イオン活性剤量を0.1 g増量することで混合時の外観が半可溶化から可溶化となり、平均粒子径が微細となった。本実施例では、再加熱を繰り返すことなく粒子径分布の揃った安定なリポソームが得られた。また加熱回数削減により、工程の短縮化と熱劣化の危惧への改善ともなり得る。
【実施例】
【0057】
(実施例3)コンポジット型可溶化ナノリポソームエマルション3の作製
表1及び2に示す(A)-37及び(B)-3の各エマルションを用いて、実施例3のコンポジット型可溶化ナノリポソームを作製した。
【実施例】
【0058】
まず、(A)-37(50 g)及び(B)-3(12.5 g)で得られた各エマルションと精製水(37.5 g)を、全体が100 gになるように重量比4:1:3の割合で、室温で均一混合した。その結果、キュムラント平均粒子径が21.9 nm、粒子径分布が10~80 nmのピーク数1つの混合可溶化ナノエマルションが得られた。
【実施例】
【0059】
得られた混合可溶化ナノエマルションを、実施例1と同様にエマルションの曇点以上(80~85℃)に昇温し30秒間エージングし、その後室温まで急冷した。その結果、キュムラント平均粒子径が19.5 nm、粒子径分布が10~60 nmのピーク数1つであるコンポジット型可溶化ナノリポソームエマルションが得られた。
【実施例】
【0060】
実施例1の(B)-5と比較し、(B)-3は、非イオン活性剤量を0.2 g増量した。これにより、実施例1及び2で得られたリポソームよりはさらに平均粒子径が小さく、外観の透明性が高い、安定なリポソームが得られた。
【実施例】
【0061】
(実施例4)コンポジット型可溶化ナノリポソームエマルション4の作製
表1及び2に示す(A)-37及び(B)-6の各エマルションを用いて、実施例4のコンポジット型可溶化ナノリポソームを作製した。(B)-6のエマルションには、油溶性成分としてコレステロールの他、さらに機能性付与油溶性成分が含まれる。
【実施例】
【0062】
まず、(A)-37(50 g)及び(B)-6(25 g)で得られた各エマルションと精製水(25 g)を、全体が100 gになるように重量比2:1:1の割合で、室温で均一混合した。その結果、キュムラント平均粒子径が75.1 nm、粒子径分布が18~65 nmと65~600 nmのピーク数2つの外観が微白色可溶化の混合可溶化ナノエマルションが得られた。
【実施例】
【0063】
得られた混合可溶化ナノエマルションを、実施例1と同様にエマルションの曇点以上(80~85℃)に昇温し30秒間エージングし、その後室温まで急冷した。その結果、キュムラント平均粒子径が23.8 nm、粒子径分布が15~70 nmのピーク数1つであるコンポジット型可溶化ナノリポソームエマルションが得られた。本実施例の配合比では非イオン活性剤が多く必要ではあるが、機能性付与可溶化ナノリポソームエマルションが得られた。
【実施例】
【0064】
(実施例5)コンポジット型可溶化ナノリポソームエマルション5の作製
表1及び2に示す(A)-35及び(B)-3の各エマルションを用いて、実施例5のコンポジット型可溶化ナノリポソームを作製した。
【実施例】
【0065】
まず、(A)-35(50 g)及び(B)-3(12.5 g)で得られた各エマルションと精製水(37.5 g)を、全体が100 gになるように重量比4:1:3の割合で、室温で均一混合した。その結果、キュムラント平均粒子径が18.9 nm、粒子径分布が10~50 nmのピーク数1つの混合可溶化ナノエマルションが得られた。
【実施例】
【0066】
得られた混合可溶化ナノエマルションを、実施例1と同様にエマルションの曇点以上(80~85℃)に昇温し30秒間エージングし、その後室温まで急冷した。その結果、キュムラント平均粒子径が20.1 nm、粒子径分布が10~55 nmのピーク数1つであるコンポジット型可溶化ナノリポソームエマルションが得られた。
【実施例】
【0067】
(実施例6)コンポジット型可溶化ナノリポソームエマルション6の作製
表1及び2に示す(A)-35及び(B)-6の各エマルションを用いて、実施例6のコンポジット型可溶化ナノリポソームを作製した。
【実施例】
【0068】
まず、(A)-35(50 g)及び(B)-6(25 g)で得られた各エマルションと精製水(25 g)を、全体が100 gになるように重量比2:1:1の割合で、室温で均一混合した。その結果、キュムラント平均粒子径が24.9 nm、粒子径分布が14~60 nmのピーク数1つの混合可溶化ナノエマルションが得られた。
【実施例】
【0069】
得られた混合可溶化ナノエマルションを、実施例1と同様にエマルションの曇点以上(80~85℃)に昇温し30秒間エージングし、その後室温まで急冷した。その結果、キュムラント平均粒子径が23.5 nm、粒子径分布が15~80 nmのピーク数1つであるコンポジット型可溶化ナノリポソームエマルションが得られた。本実施例の配合比では非イオン活性剤が多く必要ではあるが機能性付与可溶化ナノエマルションで、リポソームの平均粒子径が更に小さくなった。
【実施例】
【0070】
(比較例)
本発明の乳化工程で使用した特定な非イオン界面活性剤を併用せず。疎水性リン脂質粉末コートソームNC 21(日油株製・HSPC)単独2gを、リン脂質の溶解温度(約75℃)以上で溶解した。その中に80℃以上の精製水48 gを徐々に添加、攪拌させながら転相温度乳化をした。しかし凝集沈殿及び浮遊したリン脂質で概観が白濁して、リン脂質が均一に水溶液に乳化分散できず、リポソーム化ができなかった。
【実施例】
【0071】
(実験例1)徐放性の確認
水溶性酵素のα-アミラーゼ(ノボザイムズジャパン社製)を用いて、本発明のリポソームを用いた場合の徐放性を確認した。
試料(a)酵素を精製水で希釈した酵素単独1 %水溶液希釈液を調製した。
試料(b)上記実施例の(A)-37の可溶化ベシクルエマルションによるリポソーム50 gに、上記酵素1 gを精製水49 gで希釈した酵素希釈液水溶液50 gを加え、全量を100 g(重量比=1:1)とした混合液を調製した。前記混合液をリモートローディング法にて酵素の至最温度で60秒間エージングし、該酵素をトラップした酵素内包リポソームを調製し、その後室温まで急冷した。
試料(c)実施例6の(A)-35と(B)-6(重量比=2:1)とのリポソーム75 gに、酵素1 gを精製水24 gに希釈した酵素希釈水溶液25 gを加え、全量を100 gとした混合液を調製した。試料(b)と同条件でリモートローディング法にて酵素をトラップした酵素内包リポソームを調製し、その後室温まで急冷した。
試料(d)実施例5の(A)-35と(B)-3(重量比=4:1)とのリポソーム62.5 gに、酵素1 gを精製水36.5 gに希釈した酵素希釈水溶液37.5 gを加え、全量を100 gとした混合液を調製した。試料(b)、(c)と同条件でリモートローディング法にて酵素をトラップした酵素内包リポソームを調製し、その後室温まで急冷した。
【実施例】
【0072】
上記調製した試料(a)~(d)について、酵素のデンプン分解による粘度低下を経過時間により測定し、本発明のリポソームの徐放効果を確認した。なお、O/W型可溶化ナノエマルション(B)単独では水溶性の酵素は内包できなかった。試料(b)~(d)について、酵素内包リポソームは、クエン酸、クエン酸2ナトリウムの緩衝液及びL-アルギニンでpH6.5~7.0に調整した水溶液とした。
【実施例】
【0073】
試料(a)~(d)の酵素活性を、酵素のデンプン分解による粘性により測定した。市販馬鈴薯デンプン(イオン社製)2 gに精製水98 gを加えてデンプン懸濁液を調製し、80~90℃で加熱攪拌して糊化させ、その後室温まで冷却し、デンプン2 %水溶液を調製し、当該調製したデンプン2 %水溶液5 gに、上記試料(a)~(d)の酵素溶液を各々0.02 gを常温で添加して、経過時間(分)と共にデンプン分解による粘性低下の度合いを判定した。粘性低下測定は、デンプン2 %水溶液の100 %から10 %刻みの粘度サンプル標準液を作製し、各試料を添加したデンプン溶液の粘性低下度合いを目視判定し、図5に示した。その結果、酵素をトラップさせた試料(b)、試料(c)及び試料(d)は、酵酵素単独希釈液試料(a)と比較してデンプン水溶液の粘性低下は緩慢であり徐放性効果が認められた。なお実施例5及び実施例6で作製したコンポジット型可溶化ナノリポソームの試料(c)及び試料(d)は、O/W型可溶化ナノベシクルエマルションの試料(b)と比較して、さらに粘性低下時間が長くなった。
【実施例】
【0074】
(実験例2)経時間安定性テスト1
実施例1、2、及び3で作製した各コンポジット型可溶化ナノリポソームマルションについて、5℃で6ヶ月間経過後のリポソーム平均粒子径及び外観の変化を観察し、安定性を確認した。その結果、平均粒子径の変化はほとんど認められなかった(表4)。
【実施例】
【0075】
【表4】
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【実施例】
【0076】
(実験例3)経時間安定性テスト2
実施例2及び5で作製した各コンポジット型可溶化ナノリポソームエマルションについて、加熱80℃その後急冷室温の繰返し耐熱性試験を行い、安定性を確認した。加熱条件は以下のとおりである。
加熱1回:O/W型可溶化ナノベシクルエマルション(A)及びO/W型可溶化ナノエマルション(B)を混合し、80℃で30秒加熱し、その後25℃に急速冷却した。
加熱2回:上記加熱1回目の加熱及び急速冷却を再度同条件にて繰り返した。
加熱3回:上記加熱2回目の加熱及び急速冷却を再度同条件にて繰り返した。
【実施例】
【0077】
その結果、リポソームの平均粒子径及び粒子径分布にほとんど差を認めなかった(表5)。
【表5】
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【産業上の利用可能性】
【0078】
以上詳述したように、非イオン界面活性剤、リン脂質、疎水性物質を含む構造からなる本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームは、平均粒子径が18~25 nmのSUVリポソームであり、安定性に優れている。本発明のコンポジット型可溶化ナノリポソームの製造方法によれば、有機溶媒を使用する必要がなく、特別な乳化装置や整粒装置も要さず、コスト的・工業的に優れた汎用的な製造技術方法であり、有機溶媒を使用しない点から、安全性に優れたリポソームということができる。
【0079】
本発明のリポソームは、製造工程において、設備面、材料面から経済的に優れている。さらに、本発明のリポソームや、リポソームを含むエマルションは、医薬品、食品、化粧品を始め、多くの分野で利用することができ、係る点からも効果も大きい。
図面
【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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