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明細書 :ローラバニシング加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-177252 (P2017-177252A)
公開日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 ローラバニシング加工方法
国際特許分類 B24B  39/04        (2006.01)
FI B24B 39/04 Z
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-065093 (P2016-065093)
出願日 平成28年3月29日(2016.3.29)
発明者または考案者 【氏名】岡田 将人
【氏名】大津 雅亮
【氏名】宮越 侑輝
出願人 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100111855、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 好昭
審査請求 未請求
テーマコード 3C158
Fターム 3C158AA09
3C158AA12
3C158AA16
3C158CA04
3C158CB03
3C158DA13
要約 【課題】本発明は、被加工物の対象面にローラを押し当てた状態で能動的に回転させることでローラによる摺動作用の方向を対象面の性状に合わせて制御することができるローラバニシング加工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明では、被加工物である棒状体Wの対象面と当接する加工位置における周速度Vwの方向に対して加工ローラRの周速度Vrの方向が傾斜角度θで傾斜するように両者の回転中心軸を設定し、周速度Vwに対して周速度Vrが速度差を有するように加工ローラRを回転制御して棒状体Wと加工ローラRとの間に生じる摺動作用の方向を制御することで表面処理を行うようにしている。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
回転する被加工物の対象面に加工ローラを押し当てて表面処理を行うローラバニシング加工方法において、前記対象面と当接する加工位置における前記被加工物の周速度の方向に対して前記加工ローラの周速度の方向が傾斜するように設定し、前記加工位置における前記被加工物の周速度に対して前記加工ローラの周速度が速度差を有するように前記加工ローラを回転制御して前記被加工物と前記加工ローラとの間に生じる摺動作用の方向を制御することで表面処理を行うローラバニシング加工方法。
【請求項2】
前記被加工物の周速度及び前記加工ローラの周速度の相対速度の方向と前記被加工物の周速度の方向との間の相対角度に基づいて摺動作用の方向を制御する請求項1に記載のローラバニシング加工方法。
【請求項3】
前記相対速度の相対角度α、前記加工位置における前記被加工物の周速度Vwの方向に対する前記加工ローラの周速度Vrの方向の傾斜角度θ、周速度Vrの周速度Vwと同じ方向の速度成分Vr・cosθ及び周速度Vwと直交方向の速度成分Vr・sinθに関して以下の関係式が成立するように設定して摺動作用の方向を制御する請求項2に記載のローラバニシング加工方法。
tanα=Vr・sinθ/(Vr・cosθ-Vw) (0°<α<90°)
Vr・cosθ=Vw (α=90°)
【請求項4】
前記加工ローラの加工面には、硬質膜がコーティングされている請求項1から3のいずれかに記載のローラバニシング加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の対象表面の仕上げ加工を行うローラバニシング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物の仕上げ加工方法として、自由回転するローラを対象表面に押し当てて転動させるローラバニシング加工方法が用いられており、ローラバニシング加工方法により対象表面の微小凹凸を塑性変形させて良好な表面性状及び高い耐摩耗性と疲労強度を有する表面層を形成することができる。ローラバニシング加工方法は、研磨加工に比べて加工効率が高く、加工工具をコンパクト化できるため切削加工機に加工工具を取り付けて加工を行うことができるといったメリットがある。
【0003】
本発明者である岡田は、自由回転するローラの回転中心軸を被加工物の回転中心軸に対して傾斜させた状態でローラを被加工物の対象表面に押し当てる傾斜ローラバニシング加工方法を提案している(特許文献1、非特許文献1参照)。ローラを傾斜させて押し当てることで、ローラと被加工物との間に、対象表面の接触点において被加工物の周方向及び軸方向に速度差が生じるようになり、対象表面に対してローラの転動作用とともに摺動作用が加わるようになる。そのため、ローラの転動作用のみの場合に比べて摺動作用による押し均しの効果が得られ、同一の押圧力を加えた場合でも良好な表面性状の仕上げ加工を行うことができるようになる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2015-33742号公報
【0005】

【非特許文献1】岡田 将人 外2名、「転動と摺動作用を組み合せたローラバニシング加工法-傾斜ローラバニシング加工法の提案と基礎的な加工特性-」、塑性と加工(日本塑性加工学会誌)、第55巻、第642号(2014-7)、638頁-642頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
傾斜ローラバニシング加工方法では、ローラの転動作用に加えて摺動作用により対象表面の仕上げ加工ができることから、良好な表面性状が得られるものの、摺動作用の方向はローラの傾斜角度のみにより設定されるため、対象表面の性状に合せた設定が難しい。例えば、外周面を丸棒状に加工する場合には、通常、旋削加工で加工されるが、旋削加工では、外周面に周方向に螺旋状の凹凸が形成されるようになる。こうした周方向の螺旋状の凹凸を押し均すようにするためには、ローラの軸方向への摺動作用が望ましいが、傾斜ローラバニシング加工方法では、ローラの傾斜角度により摺動作用の方向が制約を受けるため、対象表面の性状に合せた加工が困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、被加工物の対象面にローラを押し当てた状態で被加工物に加えローラも能動的に回転させることでローラによる摺動作用の方向を対象面の性状に合わせて制御することができるローラバニシング加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るローラバニシング加工方法は、回転する被加工物の対象面に加工ローラを押し当てて表面処理を行うローラバニシング加工方法において、前記対象面と当接する加工位置における前記被加工物の周速度の方向に対して前記加工ローラの周速度の方向が傾斜するように設定し、前記加工位置における前記被加工物の周速度に対して前記加工ローラの周速度が速度差を有するように前記加工ローラを回転制御して前記被加工物と前記加工ローラとの間に生じる摺動作用の方向を制御することで表面処理を行う。さらに、前記被加工物の周速度及び前記加工ローラの周速度の相対速度の方向と前記被加工物の周速度の方向との間の相対角度に基づいて摺動作用の方向を制御する。さらに、前記相対速度の相対角度α、前記加工位置における前記被加工物の周速度Vwの方向に対する前記加工ローラの周速度Vrの方向の傾斜角度θ、周速度Vrの周速度Vwと同じ方向の速度成分Vr・cosθ及び周速度Vwと直交方向の速度成分Vr・sinθに関して以下の関係式が成立するように設定して摺動作用の方向を制御する。
tanα=Vr・sinθ/(Vr・cosθ-Vw) (0°<α<90°)
Vr・cosθ=Vw (α=90°)
さらに、前記加工ローラの加工面には、硬質膜がコーティングされている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ローラを能動的に回転させながら対象面に押し当てることで、対象面の性状に合わせてローラの摺動作用の方向を制御することが可能となり、ローラによる押し均し作用を効率的に行うことができる。そのため、ローラに加える押圧力を小さく設定することができ、低強度の被加工物に対しても仕上げ加工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るローラバニシング加工方法の加工原理を示す説明図である。
【図2】加工ローラの正面図及び側面図である。
【図3】加工ローラに関する回転駆動機構の一例を示す構成図である。
【図4】加工した仕上げ表面を顕微鏡で観察した撮影画像である。
【図5】加工した仕上げ表面の断面曲線を示すグラフである。
【図6】加工した仕上げ表面の表面粗さを測定した結果を示すグラフである。
【図7】従来の加工方法及び実施例に関する加工した仕上げ表面の断面曲線を示すグラフである。
【図8】コーティング加工ローラ及びコーティングしていない加工ローラの仕上げ表面の表面粗さを測定した結果を示すグラフである。
【図9】コーティング加工ローラ及びコーティングしていない加工ローラの仕上げ表面の断面曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。図1は、本発明に係るローラバニシング加工方法の加工原理を示す説明図である。この例では、被加工物として丸棒形状の金属製棒状体Wを用いており、軸方向の中心軸と一致する回転中心軸Tを中心に回転駆動されるように設定されている。バニシング加工を行う加工ローラRは、被加工物よりも硬い金属材料からなる金属製の円盤状体で、外周縁に加工面RBが形成されている。加工面RBの形状は、周方向に沿って加工ローラRの最大径となる円形状に形成されている。図2は、加工ローラRの正面図(図2(a))及び側面図(図2(b))である。この例では、加工ローラRの外周縁の形状は、加工面RBを円周とする円の半径方向の断面形状が半円形状となるように形成されており、加工面RBは、断面形状が半円形状の外周縁の中心部分に設定されている。そして、加工ローラRは、加工面RBを円周とする円の中心を通る回転中心軸Sを中心に回転駆動されるように設定されている。

【0012】
加工ローラRの加工面RBには、DLC(Diamond-Liked Carbon)膜等の硬質膜を形成しておくこともでき、硬質膜により加工面RBの加工時の歪を小さくして加工特性を向上させることが可能となる。

【0013】
加工ローラRは、棒状体Wの外周面に加工面RBが当接するように配置されており、加工面RBが当接する加工位置において設定される棒状体Wの外周面の接平面に対して回転中心軸Sが平行となるように配置されている。そして、加工ローラRは、棒状体Wの回転中心軸Tに対して回転中心軸Sが傾斜するように設定されている。傾斜角度θは、加工位置の接平面に回転中心軸T及び回転中心軸Sをそれぞれ投影させた直線の交差角度で設定する。

【0014】
棒状体Wを回転中心軸Tと一致する方向に移動させることで、加工ローラRに対して棒状体Wの外周面を移動させながら加工位置でバニシング加工処理を行い、棒状体Wの外周面全体をバニシング加工することができる。この場合、加工ローラRを回転中心軸Tと一致する方向に移動させてバニシング加工することもできる。

【0015】
棒状体W及び加工ローラRは、加工位置において同じ向き又は反対向きに回転するように互いの回転方向が設定されており、加工位置における互いの周速度に速度差がある場合に、互いに転動しながら滑るように摺動するようになる。また、棒状体Wの周速度の方向に対して加工ローラRの周速度の方向が傾斜しているため、摺動作用が生じるようになる。したがって、加工ローラRを回転駆動して能動的に回転させることで、棒状体Wの周速度との間の速度差を調整して摺動作用を制御することが可能となる。

【0016】
図1では、加工位置における棒状体Wの周速度Vw及び加工ローラRの周速度Vrをベクトル表示している。そして、加工ローラRが棒状体Wに対して傾斜角度θで傾斜して回転しているため、周速度Vwの方向に対して周速度Vrの方向は傾斜角度θと同じ角度で傾斜するように設定される。そして、周速度Vw及びVrの間の速度差により生じる摺動作用の方向は、周速度Vw及びVrの相対速度Vwrのベクトル表示された方向に一致するようになる。そのため、周速度Vwの方向と相対速度Vwrの方向との間の相対角度αにより摺動作用の方向を設定することができる。

【0017】
図1に示すように、加工ローラRの周速度Vrの周速度Vwと同じ方向の速度成分Vr・cosθ及び周速度Vwと直交方向の速度成分Vr・sinθに基づいて、相対角度αは、周速度Vw及びVrとの間で以下の関係式が成立する。
tanα=Vr・sinθ/(Vr・cosθ-Vw) (0°<α<90°)
Vr・cosθ=Vw (α=90°)
したがって、摺動作用の方向を所望の方向に設定する場合、上記関係式を満たすように傾斜角度θ並びに周速度Vw及びVrを設定すればよい。

【0018】
このように、加工ローラを能動的に回転制御することで、加工ローラによる摺動作用を任意の方向に設定することができる。例えば、上述したような丸棒状の外周面は、旋削加工により仕上げられる場合が多いが、外周面に加工により形成される微小凹凸は、周方向に螺旋状に形成されるようになる。こうした凹凸形状を押し均すためには、周方向ではなく軸方向に加工ローラを摺動させたほうが良好な表面性状に形成することができる。そのため、加工ローラの摺動作用の方向を軸方向に近づけるように制御すれば、効率的に加工処理することが可能となる。そして、従来の加工方法に比べて効率的に加工できるため、加工ローラに印加する押圧力を小さくすることが可能となり、機械的強度の低い被加工物(例;細い丸棒体)でも変形等のダメージを与えることなく良好な表面性状に仕上げることができる。

【0019】
図3は、加工ローラRに関する回転駆動機構の一例を示す構成図である。この例では、加工ローラRは、中心部に軸部材が固定されて一対の軸支部材10により両側から軸部材を軸支することで回転可能に支持されている。軸支部材10は、上面が支持部材11の下面に取付固定されている。支持部材11の下面には、取付部材12を介して駆動モータ13が取付固定されており、駆動モータ13の駆動軸13aが連結部材14を介して加工ローラRの軸部材と連結されている。そのため、駆動モータ13を回転駆動することで、加工ローラRが回転するようになっている。

【0020】
支持部材11は、両端部に一対のスライダ部材15が取り付けられており、スライダ部材15は、支持部材11の両側に設けられたガイド部材16の上下方向に形成されたガイドレール16aに上下動可能に嵌合している。そして、ガイド部材16は、支持部材11の上方に配設された支持フレーム17の両側に取り付けられているので、支持部材11は、支持フレーム17に対して上下動可能に支持されている。支持フレーム17と支持部材11との間には、バネ部材18が取り付けられており、支持部材11を下方向に移動するように付勢している。そのため、バネ部材18の付勢力により支持部材11が押し下げられることで、加工ローラRが棒状体Wの外周面に押し当てられた状態に設定されるようになる。

【0021】
支持フレーム17は、図示せぬ揺動機構を介して公知の旋削加工機本体(図示せず)に取り付けられており、棒状体Wに対して支持フレーム17を水平方向に揺動させて加工ローラRの回転中心軸と棒状体Wの回転中心軸との間の傾斜角度を調整することができるようになっている。また、棒状体Wは、旋削加工機本体に軸支されて回転駆動機構により回転するようになっており、駆動モータ13及び回転駆動機構の回転駆動速度を調整することで、棒状体W及び加工ローラRの加工位置における周速度を所望の値に設定することができる。

【0022】
このように、加工ローラの回動駆動機構を低コストでコンパクトに構成することができるので、公知の加工機本体に容易に取り付けてバニシング加工を行うことが可能となる。

【0023】
上述した例では、1個の加工ローラを回転駆動してバニシング加工を行っているが、複数個の加工ローラを並列配置して行うことで加工効率の向上を図ることもできる。また、丸棒形状以外の形状の被加工物の仕上げ加工にも用いることが可能で、例えば、円筒状の被加工物の外周面加工や内周面加工にも使用でき、丸棒状の形状に限定されることはない。そして、対象面が平面形状や円筒状以外の曲面形状の場合でも、加工ローラを回転駆動しながら対象表面上を相対移動させることで、バニシング加工による表面処理を行うこともでき、様々な形状の被加工物に対して対応可能である。
【実施例】
【0024】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
<被加工物について>
被加工物として、寸法が直径26mm、長さ100mmのアルミニウム合金JIS A2017からなる丸棒を用いた。なお、前加工として汎用旋盤(TSL-550、株式会社滝澤鉄工所 )により、外径旋削で直径を25mmにすることで、外周面上に周方向の凹凸を形成した。前加工の条件は、以下のとおりに設定した。
周速度;46m/分、切込み量;0.25mm、送り量;0.35mm/rev、工具;13R-2
表面粗さは、触針式粗さ計(SJ-301、株式会社ミツトヨ)を用いて丸棒の軸方向に測定し、概ねRa=3.5μmであった。
【実施例】
【0026】
<加工ローラについて>
加工ローラとして、直径50mm、厚さ8mmのステンレスSUS304からなる円盤を用い、外周縁にR4の曲面に形成した加工面を形成した。被加工物と同様に旋削加工により成形加工した。微小硬度計(HMV-1、株式会社島津製作所)を用いて加工面の硬さを測定したところ、HV341であった。また、加工面の表面粗さを被加工物と同様に測定したところ、軸方向が概ねRa=0.2μmで、周方向が概ね0.02μmであった。
【実施例】
【0027】
<加工装置について>
加工機には卓上旋盤(FL350E、寿貿易株式会社)を用い、チャックに被加工物を固定し、刃物台に図3に示す加工ローラを取り付けた回転駆動機構を固定した。加工ローラを回転させる駆動モータとしてDCモータ(RZ-735VA、マブチモータ株式会社)を用いた。加工ローラに加える押圧力は、バネ(バネ定数;4.9N/mm)の縮み量に応じて設定した。
【実施例】
【0028】
<加工条件について>
被加工物の外周面における周速度Vw=81.6m/分、送り量0.1mm/revに設定し、一定となるように制御した。加工ローラの回転中心軸と被加工物の回転中心軸との間の傾斜角度θは、30°及び45°に設定し、加工ローラの周速度Vrは、速度値を56.5~223.1m/分の範囲で変化させ、目標となる相対角度αに合わせて速度の方向を被加工物の回転方向と同じ向き又は反対向きに設定した。加工ローラに加える押圧力Fは、30N及び60Nに設定した。なお、周速度は、回転計(RM-2000、株式会社カスタム)を用いて制御した。
【実施例】
【0029】
<加工後の仕上げ表面の外観評価について>
加工後の仕上げ表面を正立金属顕微鏡(BX51M、オリンパス株式会社)で観察して、摺動作用の方向制御を評価した。また、被加工物の表面粗さの測定に使用した触針式粗さ計を用いて、加工後の仕上げ表面の表面粗さを被加工物の軸方向に沿う測定ラインで測定し、表面の断面曲線を描いて表面性状を評価した。
【実施例】
【0030】
摺動作用の方向を示す相対角度αを15°、45°、60°、90°とするために、以下の通り加工条件(a)~(d)に設定した。なお、加工ローラの周速度Vrは、被加工物の周速度Vwと回転方向が同じ向きの場合にはプラスで反対向きの場合にはマイナスに設定している。
(a)α=15°
θ=30°、Vw=81.6m/分、Vr=-83.3m/分、F=30N
(b)α=45°
θ=30°、Vw=81.6m/分、Vr=223.1m/分、F=30N
(c)α=60°
θ=30°、Vw=81.6m/分、Vr=141.4m/分、F=30N
(d)α=90°
θ=30°、Vw=81.6m/分、Vr=94.2m/分、F=30N
【実施例】
【0031】
図4は、加工条件(a)~(d)により加工した後の仕上げ表面を顕微鏡で観察した撮影画像である。写真では、被加工物の外周面の周方向が上下方向に設定されており、写真中の実際の摺動痕の上下方向に対する傾きαexを、顕微鏡デジタルカメラ(DP22、オリンパス株式会社)の計算機能を用いて測定した。測定結果によれば、いずれの加工条件でも設定された相対角度αに近似した傾きαexの摺動痕が得られた。したがって、被加工物及び加工ローラの周速度の速度差に基づいて摺動作用の方向を制御可能であることが確認できた。
【実施例】
【0032】
図5は、加工条件(a)~(d)により加工した後の仕上げ表面の断面曲線を示すグラフである。縦軸に凹凸形状の高さをとり、横軸に測定ラインの距離をとっている。上側から加工前の表面、加工条件(a)~(d)のそれぞれの断面曲線を配列している。これらの断面曲線を比較すると、相対角度αを大きく設定して加工前の周方向に形成された微小凹凸と直交する方向に近づくにしたがい表面性状が平滑化していることがわかる。したがって、傾斜角度θ及び押圧力Fが同一の場合でも、摺動作用の方向を制御することで、良好な表面性状とすることができる。
【実施例】
【0033】
<加工後の仕上げ表面の表面粗さについて>
加工条件(a)~(b)による加工後の仕上げ表面について、被加工物の表面粗さの測定に使用した触針式粗さ計を用いて、5点平均により表面粗さを測定した。測定結果を図6に示す。図6では、縦軸に表面粗さRaをとり、横軸に相対角度αをとっている。測定結果をみると、摺動作用の方向を示す相対角度αが大きくなるにしたがい、表面粗さが小さくなっており、摺動作用の方向が加工後の表面性状に大きく影響を及ぼしていることがわかる。したがって、摺動作用の方向を制御することは、効率的な表面性状の改善に有用であることが確認できた。
【実施例】
【0034】
<従来の加工方法との比較について>
上述した実施例と加工ローラを回転駆動しない従来の受動型の加工方法とを比較した。実施例では、被加工物の送り量及び周速度は上述した条件と同様とし、傾斜角度θ=45°で押圧力F=60Nに設定して相対角度α=90°となるように加工条件を設定した。受動型の加工方法では、上述した実施例で用いた被加工物、加工ローラ及び加工装置と同じものを使用し、傾斜角度θ=45°で押圧力F=60Nとした。そして、加工ローラは回転駆動することなく、自由回転可能な状態に設定し、被加工物の送り量及び周速度は、上述した実施例と同じ値となるように回転駆動した。被加工物の回転駆動により追従して回転する加工ローラの周速度は56.5m/分となった。
【実施例】
【0035】
加工後の仕上げ表面について、被加工物の表面粗さの測定に使用した触針式粗さ計を用いて、5点平均により表面粗さを測定したところ、受動型の加工方法では、Ra=1.09μmであったのに対し、実施例では、Ra=0.72μmであった。図7は、軸方向の測定ラインで表面粗さを測定した断面曲線を示すグラフである。実施例では、受動型の加工方法に比較して表面粗さが小さくなっており、加工ローラを能動的に回転駆動することで、より良好な表面性状が形成されていることが確認できた。
【実施例】
【0036】
[実施例2]
実施例1と同様の加工ローラの表面全体にDLC膜をコーティングしたものを用いた。Dコーティング処理は、株式会社北熱に依頼して行った。コーティング加工ローラは、DLC膜の膜厚1.0μm~2.0μm、加工面の摩擦係数0.1、加工面の硬さHV=2000~2200、耐熱温度400℃であった。
【実施例】
【0037】
被加工物及び加工装置は実施例1と同様のものを用い、被加工物は実施例1と同様に回転制御した。加工ローラは、コーティング加工ローラ(以下、処理済ローラという)とコーティングしていない加工ローラ(以下、未処理ローラという)を用い、傾斜角度θ=30°で周速度Vr=94.2m/分の加工条件で行った。加工ローラに加える押圧力Fは、20N、40N、60N及び80Nに変化させてそれぞれ加工処理した。
【実施例】
【0038】
<加工後の仕上げ表面の表面粗さについて>
加工後の仕上げ表面について、被加工物の表面粗さの測定に使用した触針式粗さ計を用いて、5点平均により表面粗さを測定した。測定結果を図8に示す。図8では、点線で未処理ローラの推移を示し、実線で処理済みローラの推移を示しており、縦軸に表面粗さRaをとり、横軸に押圧力をとっている。測定結果をみると、処理済ローラ及び未処理ローラはいずれも押圧力が大きくなるにしたがい、表面粗さが小さくなっているが、処理済ローラの方が大幅に低下しており、DLC膜のコーティングにより加工後の表面性状が大きく改善したことがわかる。
【実施例】
【0039】
図9は、各押圧力について軸方向の測定ラインで表面粗さを測定した断面曲線を示すグラフである。図9(a)が20N、図9(b)が40N、図9(c)が60N、図9(d)が80Nの場合をそれぞれ示しており、いずれも左側のグラフが未処理ローラの断面曲線で、右側のグラフが処理済ローラの断面曲線である。押圧力が小さい段階では両者に大きな差異はみられないが、押圧力が大きくなるにしたがい、処理済ローラの方がより良好な表面性状に仕上げられていることが確認できた。
【符号の説明】
【0040】
R・・・加工ローラ、W・・・棒状体(被加工物)、10・・・軸支部材、11・・・支持部材、12・・・取付部材、13・・・駆動モータ、14・・・連結部材、15・・・スライダ部材、16・・・ガイド部材、17・・・支持フレーム、18・・・バネ部材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8