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明細書 :有機相転移材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-043755 (P2017-043755A)
公開日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 有機相転移材料
国際特許分類 C09K   5/06        (2006.01)
C09K   5/14        (2006.01)
FI C09K 5/06 L
C09K 5/06 Z
C09K 5/14 102E
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-036994 (P2016-036994)
出願日 平成28年2月29日(2016.2.29)
優先権出願番号 2015166398
優先日 平成27年8月26日(2015.8.26)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】酒井 俊郎
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
要約 【課題】 相転移温度を挟んで加熱-冷却したときに非流動性を保持することができる潜熱蓄熱材を提供する。
【解決手段】 本発明に係る潜熱蓄熱材は、炭化水素系の油からなる相転移材料を用いた潜熱蓄熱材であって、水素結合性部位と炭化水素系部位とを備えるゲル化剤によりゲルネットワークが構築されてゲル化されていることを特徴とする。
前記ゲルネットワークは、ゲル化剤の水素結合性部位が集まって形成された針状の会合体が互いに交錯して形成された3次元構造体として構築され、前記3次元構造体の空隙に油が保持されてゲル化されていることを特徴とする。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
水素結合性部位と炭化水素系部位とを備えるゲル化剤によりゲルネットワークが構築されてゲル化されていることを特徴とする有機相転移材料。
【請求項2】
前記ゲルネットワークは、前記ゲル化剤の水素結合性部位が集まって形成された針状の会合体が互いに交錯した形態となる3次元構造体として構築され、
前記3次元構造体の空隙に油が保持されてゲル化されていることを特徴とする請求項1記載の有機相転移材料。
【請求項3】
有機相転移材料が、パラフィン系または脂肪酸エステル系の油であることを特徴とする請求項1または2記載の有機相転移材料。
【請求項4】
前記ゲル化剤が、LGBAまたはEGBAであることを特徴とする請求項3記載の潜熱蓄熱材。
【請求項5】
親水性部位と疎水性部位とを備える添加剤がさらに添加されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の有機相転移材料。
【請求項6】
疎水性部位からなる添加剤がさらに添加されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の有機相転移材料。








発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は相転移温度以上の温度域においても非流動性を保持し、相転移温度を挟んで冷却-加熱操作を繰り返しても安定的に非流動性を保持することができる有機相転移材料に関する。
【背景技術】
【0002】
潜熱蓄熱材は物質の相変化に伴う潜熱を利用して蓄熱する有機相転移材料である。潜熱蓄熱材は、いわゆる顕熱を利用する蓄熱材と比較して大きな熱エネルギーを蓄えることができるという特徴がある。また、相変化が一定の温度で起きることを利用して、定温での保冷材、保温材として利用されている。
一般に、物質は相変化により固相(非流動状態)と液相(流動状態)との間を転移する。本発明者は、相変化しても非流動状態を保持することができるもの、または、相変化しても流動状態を保持することができるもの、すなわち固-液相転移に依存しない相状態を保持することができる潜熱蓄熱材について研究してきた。
【0003】
潜熱蓄熱材が全温度域で非流動性を保持することができれば、例えばブロックや壁材などに潜熱蓄熱材を塗布したり混合したりすることによって利用することができる。また、潜熱蓄熱材が全温度域で流動性を保持することができれば、相変化に関わらずに配管などを通して潜熱蓄熱材を輸送するといったことが可能となり、潜熱蓄熱材の用途を拡げることが可能となる。
【0004】
潜熱蓄熱材を全温度域において非流動性を保持するようにする場合に問題となるのが、相転移を繰り返したときに潜熱材が漏出して非流動性が損なわれてしまうという問題である。相転移により潜熱材が漏出することを防止する方法として、袋に収納する、多孔質体に浸み込ませる、マイクロカプセルを使用するといった方法がある。
【0005】
相転移温度を挟んで冷却-加熱操作を繰り返しても安定的な非流動性状態を保持する蓄熱材組成物として、ノルマルパラフィンに脂肪酸金属塩からなる固定化剤と固定化促進剤を用いるものが提案されている(特許文献1)。また、有機潜熱蓄熱材を用いるものとして、ポリイソシアネートと特定のポリオールとを反応させた熱硬化性ポリウレタン樹脂を含有するもの(特許文献2)、有機処理された層状粘度鉱物を含むもの(特許文献3)がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2009-120734号公報
【特許文献2】特開2015-81297号公報
【特許文献3】特開2011-208121号公報
【0007】

【非特許文献1】Liu, X. Y., Sawant, P. D., Tan, W. B., Noor, I. B. M.,Pramesti, C., Chen, B. H., *Creating new supramolecular materials byarchitecture of three-dimensional nanocrystal fiber networks.* Journal ofthe American Chemical Society, 124(50) (2002) 15055-15063.
【非特許文献2】Li, J. L., Liu, X. Y., *Microengineering of Soft FunctionalMaterials by Controlling the Fiber Network Formation.* Journal of Physical Chemistry B, 113(47) (2009) 15467-15472.
【非特許文献3】Li, J. L., Yuan, B., Liu, X. Y., Xu, H. Y., *Microengineeringof Supramolecular Soft Materials by Design of the Crystalline FiberNetworks.* Crystal Growth & Design, 10(6) (2010) 2699-2706.
【非特許文献4】Li, J. L., Liu, X. Y., *Architecture of Supramolecular Soft Functional Materials: From Understanding to Micro-/Nanoscale Engineering.*Advanced Functional Materials, 20(19) (2010) 3196-3216.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
全温度域において非流動性を保持するために多孔質体やマイクロカプセルといった支持体を使用するものは製造工程が複雑でコストがかかるという問題があり、多孔質体やマイクロカプセルといった支持体を使用しないものでは、相転移を繰り返した際に安定的に非流動性を保持するという目的では必ずしも満足できないという問題がある。
本発明は、多孔質体やマイクロカプセルを使用することなく相転移温度を挟んで加熱-冷却したときに非流動性を確実に保持することができる有機相転移材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る有機相転移材料は、水素結合性部位と炭化水素系部位とを備えるゲル化剤によりゲルネットワークが構築されてゲル化されていることを特徴とする。
水素結合性部位と炭化水素系部位とを備えるゲル化剤は、油中ではゲル化剤の水素結合性部位が集まって針状の会合体となり、多数個の針状の会合体が交錯した構造体からなるゲルネットワークが構築される。各々の針状の会合体からは炭化水素系部位が外側に延び、針状の会合体が相互に絡み合った形態のゲルネットワークとなる。
油のゲル化は、このゲルネットワークの空隙部分に油が捉えられることによってなされる。すなわち、ゲルネットワークは、ゲル化剤の水素結合性部位が集まって形成された針状の会合体が互いに交錯した形態となる3次元構造体として構築され、ゲルネットワークの3次元構造体の空隙に油が保持されることにより有機相転移材料がゲル化される。
【0010】
本発明に係る有機相転移材料としては炭化水素系の相転移材料を使用することができる。炭化水素系の相転移材料としては、パラフィン系または脂肪酸エステル系の油を使用することができる。これらの油は相転移温度を適宜調節できるという利点がある。
なお、有機相転移材料としては炭化水素系の相転移材料に限らず、適宜有機相転移材料を使用することができる。有機相転移材料には、炭化水素系の相転移材料の他に、水に不溶な炭化水素、アルコール、脂肪酸、エステル、エーテル、シリコーンオイル、炭化フッ素、及びこれらの混合物が例示される。
ゲル化剤にも適宜ゲル化剤を使用することが可能であるが、ゲル化を安定化させる上で、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-α-、γ-ジブチルアミド(LGBA)とジブチルエチルヘキサノイルグルタミド(EGBA)が有効に利用できる。
【0011】
本発明に係る有機相転移材料は、水素結合性部位と炭化水素系部位とを備えるゲル化剤によりゲルネットワークが構築されてゲル化されている。ゲル化された有機相転移材料を相転移温度を挟んで加熱-冷却する操作を繰り返すと、徐々にゲルが崩壊して、相転移以上の温度に加熱するとゲルから油分が漏出する現象が生じる。このようなゲルが崩壊する現象を抑制するには、ゲルネットワークで確実に相転移材料(油)を保持する必要がある。
前述したように、ゲルネットワークは針状の会合体が交錯した3次元構造体として形成され、油は針状の会合体の空隙部分に保持される。したがって、ゲルネットワークに確実に油が保持されるようにするには、針状の会合体の間の空隙を狭くして、狭い空隙内に油が保持されるようにすることが望ましいと考えられる。
【0012】
水素結合性部位と炭化水素系部位とを備えるゲル化剤は、水素結合性部位から構成される針状の会合体が交錯した形態の3次元構造体のゲルネットワークを構築するが、このゲルネットワークは針状の会合体から外側に炭化水素系部位が延びた形態となってゲルネットワークとなる。したがって、3次元構造体を構築する際に、針状の会合体から延びる炭化水素系部位の長さによって針状の会合体の間隔が左右されると考えられる。すなわち、炭化水素系部位の長さが長いと針状の会合体の間隔が広くなり、逆に、炭化水素系部位の長さが短くなると針状の会合体の間隔が狭くなる。
この結果、炭化水素系部位の長さが短いゲル化剤の方が、炭化水素系部位が長いゲル化剤と比較して、油の保持性が良好となると考えられる。後述する実験結果は、ゲルネットワークの構成がゲルの崩壊性(耐久性)に関与する可能性を示しており、ゲルネットワークを的確に設計することにより、全温度域において非流動性を確保することができる潜熱蓄熱材を得ることが可能であることを示唆する。
【0013】
ゲル化剤を用いてゲル化した有機相転移材料の熱的安定性を向上させる方法として、ゲル化剤にさらに添加剤を加える方法が有効である。添加剤としては界面活性剤のような親水性部位と疎水性部位とを備える添加剤が好適に利用できる。親水性部位と疎水性部位を備える界面活性剤を添加剤として使用する場合、親水性部位の鎖長を比較したときに親水性部位の鎖長が短いもの、言い換えれば疎水性部位の鎖長を比較したときに疎水性部位の鎖長が長い添加剤の方が、ゲルの熱的安定性を向上させる上で有効である。したがって、界面活性剤のかわりに、疎水性部位のみを有する備えるポリプロピレングリコール等の添加剤を用いることも有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る有機相転移材料は、相転移温度を挟んで加熱-冷却したときの相転移材料の非流動性を向上させることができ、多用途への利用を可能とする有機相転移材料として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヘキサデカンゲルの調製方法を示す説明図である。
【図2】ヘキサデカン(a)とヘキサデカンゲル(b)が相転移温度よりも低温にある状態と高温にある状態の写真である。
【図3】ヘキサデカンaとヘキサデカンゲルbの温度履歴を示すグラフである。
【図4】ヘキサデカンゲルを相転移させる操作を繰り返し行ったときの温度履歴を示すグラフである。
【図5】冷却-加熱操作の各サイクルでの固-液相転移温度(Tm)と固-液相転移時間(tm)を示すグラフである。
【図6】ヘキサデカンゲルに冷却-加熱操作のサイクルにおける容器に収納したヘキサデカンゲルの写真である。
【図7】遠心分離機の回転数がラウリン酸メチルゲルの油浮きにどのように作用するかを示すグラフである。
【図8】ラウリン酸メチルゲルの油浮きとゲル化剤との濃度との関係を示すグラフである。
【図9】ゲル化剤LGBAとEGBAとを混合したときの油浮きを調べた結果を示すグラフである。
【図10】冷却-加熱操作を複数回繰り返したときの各サイクルごとの油浮き量を示すグラフである。
【図11】ラウリン酸メチルとラウリン酸メチルゲルの温度履歴を示すグラフである。
【図12】非イオン系界面活性剤とPPGの添加量と油浮きとの関係を示すグラフである。
【図13】添加剤の分子量と油浮きとの関係(a)、PPO鎖長と油浮きとの関係(b)、PEO鎖長と油浮きとの関係(c)を示すグラフである。
【図14】添加剤を添加して作製したゲルを、相転移温度を超えて冷却-加熱操作を行ったときのサンプルの状態を示す写真である。
【図15】非イオン系界面活性剤を加えて調製したゲルの熱的安定性と界面活性剤のPEO鎖の鎖長との関係を示すグラフである。
【図16】添加剤として陰イオン系界面活性剤と陽イオン系界面活性剤を使用した例を含む油浮きについての測定結果を示すグラフである。
【図17】非イオン系界面活性剤と、陰イオン系と陽イオン系の界面活性剤を添加剤としてゲル化したときの油浮き量と炭化水素鎖の鎖長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る有機相転移材料は、パラフィン系または脂肪酸エステル系等の有機材料からなる油に、水素結合性部位と炭化水素系部位とを備えるゲル化剤を用いてゲル化したものである。ゲル化剤を油に加えると、ゲル化剤の水素結合性部位が細長い針状の会合体となり、針状の会合体から炭化水素系部位が外側に伸びる形態となって、3次元構造体であるゲルネットワークが構築される。
以下では、相転移材料(油)にゲル化剤を加えない場合、相転移材料にゲル化剤を加えてゲル化したものについて、相転移に伴う温度履歴、相転移温度を挟んで加熱-冷却したときのゲル状態の観察を行った結果について説明する。

【0017】
[ヘキサデカンゲル]
パラフィン系材料としてヘキサデカン(C16H34)を用いて、ゲル化剤を加えない場合と、ゲル化剤を加えてゲル化したものについて、相転移特性について測定した結果について説明する。
パラフィンは炭素数によって融点が異なる。表1に、炭素数が14、16、18のパラフィンの融点、潜熱等の熱特性を示す。パラフィンの潜熱は水と比較して劣るが、融点が0℃以上であること、パラフィンの種類や複数種のパラフィンを複合することにより室温の範囲で適宜融点を設定することができるという利点がある。また化学的に安定であり相転移を繰り返しても劣化しないという特徴がある。
【表1】
JP2017043755A_000003t.gif
S.D.Sharma,K.Sagara,International Journal of Green Energy 2:1-56,2005
(社)化学工学会“蓄熱技術-理論とその応用-第II編-”,2001.

【0018】

図1にヘキサデカンゲルの調製方法を示す。
実験ではゲル化剤としてN-ラウロイル-L-グルタミン酸-α-、γ-ジブチルアミド(LGBA:味の素株式会社)を使用した。
まず、ヘキサデカンと、ゲル化抑制剤であるエタノールと、ゲル化剤(LGBA)とを容器に入れ、マグネチックスターラーを用いて加熱攪拌する。ヘキサデカンの分量はエタノールの分量に対して30vol%、LGBAの添加量は全体量の3wt%である。加熱攪拌時の加熱温度は60℃、攪拌時間は120分である。
加熱攪拌により、ヘキサデカンとエタノールとゲル化剤とが混じり合った状態になる。この状態からエタノールを揮発させるとヘキサデカンゲルが得られる。実験では、加熱攪拌後、60℃で12時間加熱保持してエタノールを除去し、ヘキサデカンゲル(HDG)を調製した。

【0019】
図2は、ヘキサデカン単体の場合と上記方法によって調製したヘキサデカンゲルが相転移するときの状態変化を示す。
図2(a)はヘキサデカン(HD)単体の場合で、ヘキサデカンの相転移温度以下の-1℃では固相状態にあり、相転移温度以上の40℃になると液相状態にある。
図2(b)はヘキサデカンゲル(HDG)の場合であり、-1℃では固相状態にあり、ヘキサデカンの融点(18℃)を超えた40℃においてもゲル状態(非流動状態)にある。ヘキサデカンゲルがヘキサデカンの融点を超えても非流動状態を維持しているのは、ゲルネットワークの作用によってゲル状態が保持されているためである。

【0020】
図3は、ヘキサデカンとヘキサデカンゲルについて、相転移温度と相転移時間を測定した結果を示す。この測定は、サンプルを-1℃の低温槽に24時間静置して冷却した後、40℃の高温槽に移してヘキサデカンとヘキサデカンゲルの温度履歴を測定する方法で行った。
グラフaがヘキサデカン、グラフbがヘキサデカンゲルの温度履歴を示す。いずれも低温域から徐々に温度が上昇しはじめ、固-液相転移温度(Tm)で温度が停滞し、一定時間経過後に40℃まで温度上昇した。

【0021】
図3から、ヘキサデカンもヘキサデカンゲルも、固-液相転移温度(Tm)すなわち相転移に起因する温度停滞が始まる温度はほとんど変化せず、ヘキサデカンをゲル化したことにともなう相転移についての変化はない。
一方、固-液相転移時間(tm)すなわち温度が停滞している時間(この実験では試料の温度が21℃に達するまでの時間を固-液相転移時間(tm)とした)についてはヘキサデカンゲルとしたものの方がヘキサデカン単体のtの1.82倍長くなった。この実験結果は、ゲル化により構築されたゲルネットワークの作用がヘキサデカンの固-液相転移を抑制するように作用することを示す。言い換えれば、ゲル化した方がヘキサデカン単体のものと比較して相転移における温度の停滞時間が長くなり、相転移温度を保持する作用が増大する。

【0022】
図4、5は、ヘキサデカンゲルについて相転移操作を繰り返し行い、そのときの熱履歴を測定した結果を示す。測定は図3に示す測定と同様に、-1℃の低温槽に24時間静置した後、40℃の高温室に移して試料の温度を測定する操作を繰り返す方法で行った。
図4はサイクル操作を4回行ったときの試料の温度履歴を示す。図5は、各サイクルでの固-液相転移温度(Tm)と固-液相転移時間(tm)を示す。各サイクルでの固-液相転移温度(Tm)は19℃近傍であり、固-液相転移時間(tm)はサイクルを繰り返すことにより60分弱から55分程度にまで若干短くはなっているが、全体としては大きな変動はない。
この実験結果は、-1℃と40℃の温度範囲においてヘキサデカンゲルが化学的に安定であることを示す。

【0023】
(ヘキサデカンゲルに及ぼす冷却-加熱操作の影響)
図6は、ヘキサデカンゲルに対し相転移させる冷却-加熱操作を繰り返したときの、容器内のヘキサデカンゲルの様子を示す写真である。
冷却-加熱操作は、ヘキサデカンゲルを容器に収容して40℃の状態から-1℃の低温槽に移して24時間静置し、次いで低温槽から40℃の高温槽に移して2時間静置するという操作を4回繰り返して行った。図6で、上側の写真が、それぞれのサイクルにおいて40℃に2時間保持した後の状態、下側の写真が-1℃に24時間保持した後の状態を示す。
図6から、冷却-加熱操作が進むとともに、ヘキサデカンゲルの構造が徐々に崩壊し、高温時に油浮きが生じる現象が見られる。これは、冷却-加熱操作でヘキサデカンゲルが熱膨張と熱収縮を繰り返すことにより、ゲルネットワークから油分が徐々に漏出したためと考えられる。

【0024】
上記実験結果から、ヘキサデカンゲルの特性を以下のようにまとめることができる。
i)相転移温度を超えて冷却-加熱操作を行っても非流動状態が維持できる。
ii)固-液相転移温度(Tm)は、ヘキサデカン単体の場合と変わらない。
iii)固-液相転移時間(tm)は、ヘキサデカン単体の場合に比べて長くなる。
ただし、ヘキサデカンゲルは相転移温度を挟んで冷却-加熱操作を繰り返し行うと徐々に油分が漏出する。

【0025】
[ラウリン酸メチルゲル]
上述したように、ヘキサデカンゲルは相転移温度を挟んで冷却-加熱操作を繰り返すと、油分が漏出するという現象が生じる。ゲル化した相転移材料について冷却-加熱操作を繰り返したときの耐久性を検討するため、ゲル化した相転移材料の油浮きの現象についてさらに実験した。
この実験では、油剤として脂肪酸エステル系のラウリン酸メチル(パステルM-12 ライオンケミカル株式会社製:融点5℃、比重0.853、分子量214.35)を使用し、ゲル化剤として、ジブチルラウロイルグルタミド(LGBA:融点159℃、分子量439.68)と、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド(EGBA:融点183-196℃鵜、分子量383.58)を使用して実験した。
以下にゲル化剤のLGBA(化1)とEGBA(化2)の化学式を示す。
【化1】
JP2017043755A_000004t.gif
【化2】
JP2017043755A_000005t.gif

【0026】
ラウリンメチルゲルは、ラウリン酸メチル(30mL)とゲル化剤であるLGBAまたはEGBAを容器に入れ、マグネチックスターラーを用いて120℃で30分、加熱攪拌し、ゲル化剤を完全に溶解し、次いで、溶解した液を遠沈管に移し替え、室温で10分間静置する方法により調製した。溶解液を遠沈管に移し替えてゲル化させた理由は、遠心分離機を用いて油浮きの状態を観察するためである。
ラウリン酸メチルゲルについての油浮きの評価は、-17℃の低温槽に2時間、40℃の高温槽に2時間収容する操作を交互に繰り返し、高温槽から取り出したときの遠沈管に収容したラウリン酸メチルゲルの表面に浮いた油の重さを測定する方法で行った。遠心分離条件は2000-10000rpm、5分間である。

【0027】
(油浮きとゲル化剤の濃度との関係)
図7は遠心分離機の回転数とゲル化剤の濃度が、ラウリン酸メチルゲルの油浮きにどのように作用するかを調べた結果を示す。ゲル化剤のLGBAの濃度を1wt%、3wt%、5wt%としたそれぞれのサンプルを、低温槽(-17℃)で2時間、高温槽(40℃)で2時間経過させる冷却-加熱操作を1回行い、遠心分離機にかけて油浮きを測定した。
いずれのサンプルについても、遠心分離機の回転数を増大させると油浮きの量が増加する。また、ゲル化剤(LGBA)の濃度が低い方が油浮きの量が多くなっている。この実験結果は、油浮きの量を減らすには、ゲル化剤の分量を多くする方が有効であることを示唆する。

【0028】
図8は、ラウリン酸メチルゲルの油浮きとゲル化剤LGBA、EGBAとの関係を調べた結果である。ゲル化剤LGBA、EGBAについて、濃度を1wt%~10wt%まで段階的に変えたサンプルを調製し油浮きの量を測定した。冷却-加熱操作は1回、遠心分離機の回転数は8000rpmに固定した。
ゲル化剤としてLGBAを使った場合も、EGBAを使った場合も、ともにゲル化剤の濃度が増加するとともに油浮き量が減少している。また、図8から、ゲル化剤LGBAとEGBAとを比較すると、EGBAの方がLGBAに比べて油浮きを抑制する作用が強く、EGBAの濃度を9wt%、10wt%としたものでは、遠心分離をかけた状態でほとんど油浮きが生じていない。

【0029】
(油浮きに対するゲル化剤を混合したことによる影響)
図9は、ゲル化剤LGBAとEGBAとを混合したときの油浮きを調べた結果を示す。図9の横軸で、EGBA/(LGBA+EGBA)が0.0はゲル化剤がLGBA単体の場合、1.0はEGBA単体の場合、0.5はLGBAとEGBAとが等量ずつ混合されている場合である。ゲル化剤の全体としての濃度は3wt%であり、遠心分離機の回転数8000rpm、冷却-加熱操作は1回である。

【0030】
ゲル化剤LGBAとEGBAとを比較すると、EGBAの方が油浮きの抑制作用が大きいことから、LGBAとEGBAとを混合して使用すると、EGBAの混合比率が増加するにしたがって油浮きが減少していくように想定される。しかしながら、実験結果は、EGBAの混合比率が増加しても徐々に油浮きが減少するという傾向にはならず、EGBAの混合比率が90wt%以上付近から急激に油浮きが減少する傾向を示す。この実験結果はラウリン酸メチルゲルのゲル構造は、EGBAによるゲルネットワークが支配的になってはじめて強固なものになることを示唆する。また、図9に示す実験結果は、LGBAにEGBAを加えることにより、EGBAがLGBAによる油浮きの作用を向上させるようには作用せず、LGBAとEGBAとを組み合わせて使用する方法は、油浮きを抑制する方法として有効ではないことを示す。

【0031】
(油浮きに対する冷却-加熱操作による影響)
図10は、ゲル化剤としてLGBAとEGBAを使用したラウリン酸メチルゲルに、冷却-加熱操作を複数回繰り返したときの各サイクルごとの油浮きを測定した結果を示す。冷却-加熱操作は、サンプルを低温槽(-17℃)に2時間、高温槽(40℃)に2時間、交互に入れ替えて行った。遠心分離機の回転数は8000rpmである。

【0032】
図10は冷却-加熱操作を行う前と、1回、2回、3回と冷却-加熱操作を繰り返し、サイクルごとに測定した結果を示す。
ゲル化剤としてLGBAを使用したものでは、サイクル回数が増えるとともに油浮き量が増加し、油浮き量はLGBAの濃度が高いサンプルの方が抑制されている。EGBAについても、冷却-加熱操作を繰り返すことにより油浮き量が増えるが、LGBAと比較して油浮き量はかなり抑制されている。冷却-加熱操作を繰り返したときの油浮きについてはEGBAを用いるものの方がLGBAよりも有効であると言える。

【0033】
(ラウリン酸メチルとラウリン酸メチルゲルの温度履歴)
図11はラウリン酸メチルとラウリン酸メチルゲルの蓄熱特性を調べるため、ラウリン酸メチルと、ゲル化剤としてLGBAとEGBAを用いたラウリン酸メチルゲルの温度履歴を測定した結果を示す。
ラウリン酸メチルは融点が5℃である。図11は、ゲル化剤LGBA及びEGBAを用いたラウリル酸メチルゲルが、ともにラウリン酸メチルと同様な温度停滞が生じることを示す。ゲル化による固-液相転移時間(tm)についてはラウリン酸メチル単体と顕著な差は認められないが、停滞温度についてみると、ゲル化したものの方がラウリン酸メチル単体のものと比べて温度停滞時の温度が若干低くなっている。

【0034】
上述した実験結果は、LGBAとEGBAがラウリン酸メチルゲルの非流動性を保持するゲル化剤として有効に利用できることを示す。
なお、相転移温度を挟んで冷却-加熱操作を繰り返したときのラウリン酸メチルゲルの安定性がEGBAをゲル化剤とした場合の方が優れている理由は、ゲル化剤によって構築されるゲルネットワークの相違によって説明することができる。
LGBA(化1)とEGBA(化2)の炭化水素系部位の長さを見ると、EGBAの炭化水素鎖の方がLGBAよりも短い。したがって、ゲル化剤によって構築されるゲルネットワークの針状の会合体間の間隔がEGBAの方がLGBAよりも狭くなり、EGBAの場合はLBGAにくらべて、針状の会合体間の狭い空間内に油が保持され、ゲルネットワークによって油分がより堅固に保持され、油が漏出しにくくなると考えられる。

【0035】
有機相転移材料はゲル化剤を用いてゲル化することにより、相転移温度を超えた温度領域においても非流動性を保持することができる。この非流動性を安定的に保持する作用には、ゲル化剤によって構築されるゲルネットワークの構造が重要な作用をなす。ゲル化剤を選択する際には、ゲルネットワークの構成を的確に設計すること、いいかえれば対象とする油剤に対して的確なゲルネットワークを構築することができるゲル化剤を用いることにより、安定した非流動状態を維持することができる有機相転移材料を構成することが可能である。

【0036】
[添加剤を加えたゲル]
ヘキサデカンゲル、ラウリル酸メチルゲルについて見たように、有機相転移材料をゲル化することにより、相転移温度を超えた温度領域においても有機相転移材料の非流動性を保持することが可能である。以下では、ゲル化剤に加えて界面活性剤等の添加剤を加えてゲル化した有機相転移材料の熱的安定性について実験した結果について説明する。

【0037】
実験では、ゲル化する油剤としてラウリル酸メチル(融点5℃)を使用し、ゲル化剤としてLGBA(化1)を使用した。添加剤としてLGBAを使用したのはEGBAよりもLGBAの場合の方が添加剤によるゲルの熱的安定性を評価しやすいからである。添加剤としては、非イオン系の界面活性剤とポリプロピレングリコールを使用した。界面活性剤には非イオン系界面活性剤に限らず陰イオン系、陽イオン系の界面活性剤を使用することができる。非イオン系界面活性剤は親水基と疎水基の組み合わせで多種の製品があり界面活性剤の作用を調べやすい。ポリプロピレングリコールは疎水基のみで親水基を有しない例として使用した。

【0038】
(高分子量の添加剤)
表2は添加剤として使用した7種の非イオン系界面活性剤とポリプロピレングリコール(PPG)の分子量と分子式を示す。なお、表2では、添加剤の作用を検討する上で参考としたPEO鎖のwt%、PPO鎖とPEO鎖の分子量をあわせて示した。ポリプロピレングリコールはPEO鎖を有しないためPEO鎖の分子量は0である(商品名Pluronicは登録商標)。
【表2】
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【0039】
ゲルの調製は、ラウリン酸メチル(30ml)と、ゲル化剤のLGBA(3wt%)と、添加剤とを容器に入れ、マグネチックスターラーを用いて120℃で30分、加熱攪拌し、ゲル化剤を完全に溶解した後、遠沈管に移し替え、25℃で60分間静置する方法で行った。
熱的安定性の評価は、遠沈管に収納したゲルを-17℃の冷凍庫に2時間、40℃の恒温槽に2時間静置した後、40℃の恒温槽から遠沈管を取り出し、遠心分離してゲルから漏出する油分を測定する方法で行った。遠心分離は8000rpm、5分である。この熱的安定性の評価方法は、ゲル化剤にLGBA、EGBAを使用してゲルの油浮きを評価した方法(図8)と同一である。

【0040】
図12(a)は、非イオン系界面活性剤とポリプロピレングリコールの添加量と油浮きとの関係を調べた結果を示す。図12(b)は、各々の添加剤について、添加剤の添加量が10wt%のときの油浮き量を、添加剤を添加しない場合を1.0として示したグラフである。
図12(a)のグラフで油漏出量15g付近に示した破線は、LBGAの添加量が3wt%で添加剤を添加しないときの油浮き量を示す。図12(a)に示す実験結果は、添加剤の濃度を増加させると熱的安定性が向上すること、添加剤を加えることにより、単にLBGAを用いてゲル化した場合(図8)と比較して熱的安定性を向上することを示す。

【0041】
図12(b)に示すように、添加剤により熱的安定性を向上させる作用に差異があり、7種の添加剤のうちL64、L127、P123、PPG2000、PPG3500が有効であることがわかる。添加剤によって熱的安定性に対する作用効果が異なる理由として、添加剤の分子量、添加剤を構成するPPO鎖、PEO鎖の鎖長を想定して解析を試みた。
図13(a)は添加剤の分子量(MW)、図13(b)はPPO鎖長、図13(c)はPEO鎖長と油浮きとの関係をグラフに示したものである。
図13(a)では、横軸を分子量として油浮きの量を示す。図13(a)のグラフで示しているL44、L64、P104は、いずれもPEO鎖が40wt%の添加剤であり(表2)、これらの添加剤はPEO鎖による影響が共通とみなされるから、分子量による影響があるとすればその差が表れるものと考えられる。図13(a)からは分子量と油浮きとの相関関係はみられない。

【0042】
図13(b)は、PPO基の数を横軸としたものである。図13(b)のグラフに示したL44、P103、P123は、PEO鎖による影響を排除してPPO鎖による関連を確かめるために、添加剤のうちPEO鎖の分子量が比較的近いもの880、1485、1725を示した。この図13(b)からは、PPO鎖の長さが長くなるにしたがって油浮きが減る傾向にあることが示唆される。
図13(c)は、PEO基の数を横軸としたものである。図13(c)のグラフに示したP103、P104、L121、P123、F127、PPG3500は、いずれもPPO鎖の分子量が類似する添加剤であり、PPO鎖による作用を共通にするものである。図13(c)に示す解析結果は、PEO鎖の長さが短くなると油浮きが減る関係にあることを示す。

【0043】
図13に示した油浮きと添加剤との関係は、添加剤の分子量は油浮きには大きく影響を与えないこと、添加剤のPPO鎖長が長くPEO鎖の鎖長が短いほど油浮きを抑えることができることを示す。
なお、図13は添加剤の分量を10wt%としたときの解析結果であるが、添加剤の分量を3wt%としたときについて解析した結果も、油浮き量には添加剤の分子量は影響せず、PPO鎖長が長くPEO鎖の鎖長が短いほど油浮きを抑えることができる関係が得られた。

【0044】
(冷却-加熱操作に対する熱的安定性)
図14は、ラウリン酸メチル(油剤)、LGBA(ゲル化剤:3wt%)、添加剤としてPPG3500、PluronicL121、PluronicF127(いずれも10wt%)を添加して調製したゲルについて、相転移温度を超えて冷却-加熱操作を繰り返し、油の漏出を調べた例を示す。冷却-加熱操作は、-1℃の低温槽において容器を24時間静置し、次いで40℃の高温槽に移して2時間静置するという操作を4回繰り返して行った。図14は40℃の高温槽で2時間経過した後の状態である。

【0045】
添加剤PPG3500を添加したものでは、4サイクル経過後においもまったく油の漏出はみられない。添加剤PluronicL121を添加したものも、4サイクル時間経過後において油の漏出は見られない。一方、添加剤PluronicF127を用いたものは、2サイクル経過後で油の漏出がはじまり、4サイクル経過後にはかなりの油の漏出が見られる。

【0046】
添加剤PPG3500は疎水基のみからなるものであり、PluronicL121はPEO鎖の分子量比が10wt%であり疎水基が大きな分子量比を占めること、PluronicF127はPEO鎖の分子量比が70wt%であり親水基の分子量比が大きく疎水基の分子量比が小さいことを考えると、図14に示す実験結果は、添加剤における親水基の鎖長が短いもの、言い換えれば疎水基の鎖長が長いものの方が熱的安定性に優れることを裏付けている。
添加剤のうち熱的安定性の向上にL64、L127、P123、PPG2000、PPG3500が有効であることから、PEO鎖の分子量比が0wt%を含む40wt%以下の範囲の添加剤が、有機相転移材料の熱的安定性を向上させる上で有効である。

【0047】
(低分子量の添加剤)
前述した実験において使用した添加剤は分子量が2000以上の高分子量の添加剤である。以下では、低分子量の添加剤を用いたときの実験結果について説明する。
低分子量の添加剤として表3に示す8種類の非イオン系界面活性剤を使用した。表3では、添加剤の分子量及び分子式と、油剤をラウリル酸メチル、ゲル化剤をLGBAとして、添加剤(3wt%、10wt%)を添加して調製したゲルについて油浮きを測定した結果を示す(商品名Brijは登録商標)。
【表3】
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添加剤を添加してゲルを調製する方法は、前述した高分子の非イオン系界面活性剤を用いた場合と同一である。また、油浮きの測定方法も、前述した高分子の界面活性剤を使用した場合と同様に遠沈管を利用して遠心分離する方法と同一である。

【0048】
表3に示すように、いずれの界面活性剤を使用した場合も、添加剤を加えずに調製したゲルの油漏出量(図8)と比較して、添加剤を加えたゲルは油漏出量が低減している。この実験結果から、低分子量の非イオン系界面活性剤を使った場合でも、高分子量の非イオン系界面活性剤を使用した場合と同様に、ゲルの熱的安定性を向上させることができることがわかる。

【0049】
図15は表3に示した非イオン系界面活性剤を添加剤として加えて調製したゲルの熱的安定性(油浮き量)と界面活性剤を構成するPEO鎖の鎖長との関係を示すグラフである。油浮きの評価方法は前述した方法と同様である。
図15は、PEO鎖長が短いものほどゲルの熱的安定性が向上することを示す。図15では、炭化水素鎖を共通にするもの(C12、C16、C18)をグループ化して示している。
PEO鎖の鎖長が短いほどゲルの熱的安定性が向上するという作用は、前述した高分子量の添加剤を使用したときと同様である。すなわち、低分子量の添加剤を使用する場合も、ゲル化の際に添加する添加剤のPEO鎖の鎖長が短い(親水性部位の鎖長が短い)ほど、言い換えれば疎水性部位の鎖長が長いほど有機相転材料(ゲル)の熱的安定性が向上する。

【0050】
(陰イオン系、陽イオン系界面活性剤)
図16は油剤をゲル化する際に添加する添加剤として、陰イオン系界面活性剤(SDS)と陽イオン系界面活性剤(C16TAB)を使用して油浮きを測定した結果を示すグラフである。添加剤の添加濃度は10wt%、添加剤を加えない場合の油浮き量を1.0として示す。
図16は前述した非イオン系界面活性剤とPPGについても併せて示す。図16から、陰イオン系界面活性剤であるSDSも、陽イオン系界面活性剤であるC16TABも油浮きの抑制に効果的であることがわかる。

【0051】
(炭素鎖の鎖長と油浮き量との関係)
有機相転移材料からなるゲルに界面活性剤等の添加剤を添加する方法がゲルの熱的安定性を向上させる上で有効である。前述したように、ゲルの熱的安定性には添加剤を構成する親水性部位と疎水性部位の鎖長が相関すると考えられる。
図17(a)、(b)に、非イオン系界面活性剤と、陰イオン系と陽イオン系の界面活性剤を添加剤としてゲル化したときの油浮き量を測定した結果と炭化水素鎖の鎖長との関係を示す。それぞれの添加剤の添加量は10wt%である。
表4に、実験で使用した陰イオン系(SDS)と陽イオン系の界面活性剤の分子式と分子量を示す。
【表4】
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【0052】
図17(a)に示すように、非イオン系界面活性剤については、炭化水素鎖の鎖長の相異による大きな変化は見られないが、鎖長が長くなると油浮き量が減少する傾向が見られる。図17(b)に示す、陰イオン系、陽イオン系の界面活性剤については、炭化水素の鎖長が長くなるにしたがって油浮き量が減少している。
これらの実験結果は、界面活性剤を添加剤として有機相転移材料のゲルの熱的安定化を向上させるには、添加剤の疎水性部位の鎖長が長いものを使用することが有効であることを示す。PPGのように疎水性部位のみからなる添加剤がゲルの安定化に寄与する理由も、疎水性部位の長い界面活性剤が有効であることと作用が共通する。





図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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