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明細書 :炭素繊維強化プラスチック及びその製造方法並びに炭素繊維

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-155172 (P2017-155172A)
公開日 平成29年9月7日(2017.9.7)
発明の名称または考案の名称 炭素繊維強化プラスチック及びその製造方法並びに炭素繊維
国際特許分類 C08J   5/04        (2006.01)
B32B   5/02        (2006.01)
B32B  27/36        (2006.01)
FI C08J 5/04 CER
C08J 5/04 CEZ
B32B 5/02 B
B32B 27/36
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-041629 (P2016-041629)
出願日 平成28年3月3日(2016.3.3)
発明者または考案者 【氏名】村上 泰
【氏名】鮑 力民
【氏名】小林 正美
【氏名】奥野 直樹
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査請求 未請求
テーマコード 4F072
4F100
Fターム 4F072AA08
4F072AB10
4F072AC06
4F072AD37
4F072AL02
4F100AA37
4F100AA37A
4F100AB12
4F100AB12A
4F100AH08
4F100AH08A
4F100AK01B
4F100AK41B
4F100AK42
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG01A
4F100DH02A
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK07
4F100JL11
4F100JL16
要約 【課題】炭素繊維と熱可塑性樹脂との密着性を向上させた炭素繊維強化プラスチック、及びその製造方法並びに炭素繊維を提供する。
【解決手段】炭素繊維1と熱可塑性樹脂3とを有する炭素繊維強化プラスチック10であって、炭素繊維1は、チタン化合物層2で外周の一部又は全部が被覆されている。熱可塑性樹脂3としては、ポリエステル樹脂が好ましく、チタン化合物層2は、チタンアルコキシド溶液から形成されてなる酸化チタン膜である。その製造方法は、チタン化合物層2で外周の一部又は全部が被覆された炭素繊維1を準備し、準備された炭素繊維1と熱可塑性樹脂3とを複合させて炭素繊維強化プラスチック10を製造する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素繊維と熱可塑性樹脂とを有する炭素繊維強化プラスチックであって、前記炭素繊維は、チタン化合物層で外周の一部又は全部が被覆されていることを特徴とする炭素繊維強化プラスチック。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である、請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック。
【請求項3】
前記チタン化合物層が、チタンアルコキシド溶液から形成されてなる酸化チタン膜である、請求項1又は2に記載の炭素繊維強化プラスチック。
【請求項4】
チタン化合物層で外周の一部又は全部が被覆された炭素繊維を準備する工程と、準備された前記炭素繊維と熱可塑性樹脂とを複合させる工程とを有することを特徴とする炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項5】
前記チタン化合物層が、チタンアルコキシド溶液を脱水縮合して形成される、請求項4に記載の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂である、請求項4又は5に記載の炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項7】
チタン化合物層で外周の一部又は全部が被覆されていることを特徴とする炭素繊維。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂と炭素繊維との密着性に優れた炭素繊維強化プラスチック及びその製造方法並びに炭素繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)は、ガラス繊維等の繊維を母材樹脂中に入れて強度を向上させた複合材であり、軽量、高強度及び耐食性に優れていることから、金属の代替材料として航空機や車両の内外装等に使用されている。母材樹脂として熱硬化性樹脂を用いたFRPは、高強度であるが、成形時間がやや長く、リサイクル性も悪いという難点がある。一方、母材樹脂として熱可塑性樹脂を用いたFRPは、繊維強化熱可塑性プラスチック(Fiber Reinforced Thermoplastics:FRTP)と呼ばれ、加熱して溶融し易いので、成形時間が短く、リサイクル性もよいという利点があり、注目されている。
【0003】
これらFRPでは、繊維としてガラス繊維や炭素繊維が主に用いられており、特に炭素繊維と熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂とで構成された炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)は、炭素繊維が母材樹脂中に分散されていて、軽量である上、強度や剛性が高いため、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣竿等に幅広く利用され、また、大型航空機の翼や胴体等の主要構造部材にも使用されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-201589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)では、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を母材樹脂としている例が多いが、熱硬化性樹脂は上記した難点もあり、特にリサイクル性を考慮した場合は熱可塑性樹脂を母材樹脂とする傾向がある。しかしながら、熱可塑性樹脂の種類によっては、炭素繊維との密着性が十分でなく、使用できる樹脂も制限されてしまい、CFRPの機械的特性に大きく影響する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、炭素繊維と熱可塑性樹脂との密着性を向上させた炭素繊維強化プラスチック、及びその製造方法並びに炭素繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る炭素繊維強化プラスチックは、炭素繊維と熱可塑性樹脂とを有する炭素繊維強化プラスチックであって、前記炭素繊維は、チタン化合物層で外周の一部又は全部が被覆されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、炭素繊維はチタン化合物層で外周の一部又は全部が被覆されているので、そのチタン化合物層が中間層として介在することにより、炭素繊維と熱可塑性樹脂との密着性を高めることができる。
【0009】
本発明に係る炭素繊維強化プラスチックにおいて、前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂であることが好ましい。この発明によれば、熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂であるので、広い用途に適用可能であるとともに、加熱溶融がし易いので、使用後のリサイクル性も良い。
【0010】
本発明に係る炭素繊維強化プラスチックにおいて、前記チタン化合物層が、チタンアルコキシド溶液から形成されてなる酸化チタン膜である。この発明によれば、チタンアルコキシド溶液から形成されてなる酸化チタン膜は、炭素繊維の構造骨格に近いヘキサゴナルな構造骨格を有するので、炭素繊維の外周に密着良く被覆され、その結果、そうした炭素繊維は熱可塑性樹脂との間で良好な密着性を示す。
【0011】
(2)本発明に係る炭素繊維強化プラスチックの製造方法は、チタン化合物層で外周の一部又は全部が被覆された炭素繊維を準備する工程と、準備された炭素繊維と熱可塑性樹脂とを複合させる工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る炭素繊維強化プラスチックの製造方法において、前記チタン化合物層が、チタンアルコキシド溶液を脱水縮合して形成される。
【0013】
本発明に係る炭素繊維強化プラスチックの製造方法において、前記熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0014】
(3)本発明に係る炭素繊維は、チタン化合物層で外周の一部又は全部が被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炭素繊維と熱可塑性樹脂との密着性を向上させた炭素繊維強化プラスチック、及びその製造方法、並びに炭素繊維を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る炭素繊維強化プラスチックの一例を示す模式的な説明図である。
【図2】炭素繊維の表面に形成されるチタン化合物層の説明図である。
【図3】実施例1で得られた炭素繊維強化プラスチックの電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例1で得られた炭素繊維強化プラスチックの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る炭素繊維強化プラスチック及びその製造方法並びに炭素繊維について図面を参照しつつ説明する。本発明は、その要旨に範囲内であれば、以下の実施形態に限定されない。

【0018】
[炭素繊維強化プラスチック]
本発明に係る炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP」ともいう。)10は、図1及び図2に示すように、炭素繊維1と熱可塑性樹脂3とを有し、それらを複合させた炭素繊維強化材である。そして、炭素繊維1が、チタン化合物層2で外周の一部又は全部が被覆されていることに特徴がある。このCFRP10では、チタン化合物層2が中間層として介在することにより、炭素繊維1と熱可塑性樹脂3との密着性を高めることができる。

【0019】
以下、各構成要素を説明する。

【0020】
(炭素繊維)
炭素繊維1は、CFRP10の必須の構成要素であり、軽量で高強度な繊維素材である。炭素繊維1は特に限定されないが、CFRP10の炭素繊維として一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、PAN系炭素繊維や、ピッチ系炭素繊維を挙げることができる。なお、PAN系炭素繊維は、アクリル繊維を原料にして高温で炭化して作った繊維であり、ピッチ系炭素繊維は、ピッチ(石油、石炭、コールタール等の副生成物)を原料にして高温で炭化して作った繊維である。

【0021】
炭素繊維1のサイズも特に限定されず、CFRP10の炭素繊維として一般的に潮要されているサイズ(直径や長さ)のものを使用することができる。炭素繊維1の外周の一部又は全部には、後述するチタン化合物層2が被覆されている。

【0022】
(チタン化合物層)
チタン化合物層2は、炭素繊維1の外周の一部又は全部に被覆されている。チタン化合物層2は、炭素繊維1とチタンアルコキシド溶液とを接触させ、その状態でチタンアルコキシド溶液を脱水縮合して、炭素繊維1の外周に形成される。具体的には、酸化チタン膜であり、その酸化チタン膜は、熱可塑性樹脂3との間で親和性が良く、良好な密着性を示す。

【0023】
炭素繊維1の表面は、六方晶(ヘキザゴナル構造)の炭素繊維構造骨格であり、コーティングは従来難しかったが、本発明では、チタンアルコキシド溶液を用いた脱水縮合反応により、チタン化合物層を密着性よく形成することができる。その詳しい理由は現時点では明確ではないが、六方晶(ヘキザゴナル構造)の炭素繊維構造骨格と、ヘキサゴナルな構造骨格のアセチルアセトンとが構造的に近似していることにより、炭素繊維1の表面にチタン化合物層2が密着良く成膜されたものと考えられる。こうして成膜されたチタン化合物層2は、図2に示すようなアセチルアセトン骨格を備えているので、熱可塑性樹脂3とも加水分解して相溶性良くつながっているものと考えられる。なお、チタンに代えてケイ素とした場合、ケイ素にはヘキサゴナルな構造骨格のアセチルアセトンが配位しないので、ヘキサゴナル構造の炭素繊維1の表面への密着性も不十分になると考えられる。このように、本発明では、アセチルアセトンを配位させたチタンアルコキシドを原料に用い、脱水縮合した膜で炭素繊維1を被覆することで、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂3との界面の接合を改善している。

【0024】
ここで、「接触」とは、炭素繊維1の外周面でチタンアルコキシド溶液が脱水縮合できる程度に存在していればよく、例えば、チタンアルコキシド溶液に炭素繊維1を浸漬したり、炭素繊維1にチタンアルコキシド溶液のスプレーを吹き掛けたりすることを例示できる。「外周の一部又は全部」とは、チタン化合物層2は炭素繊維1の外周に被覆されるが、その被覆は炭素繊維1の外周に設けられて熱可塑性樹脂3との密着性に寄与する中間層として存在していればよく、全周に完全に被覆されていることが理想的で好ましいが、完全に被覆されていなくてもよいという意味であり、熱可塑性樹脂3との密着性を高めることができる程度に被覆されていればよい。

【0025】
チタンアルコキシド溶液は、炭素繊維1の表面にチタン化合物層2である酸化チタン膜を被覆するための表面処理溶液であって、アセチルアセトンを配位させたチタンアルコキシドを原材料とした溶液である。このチタンアルコキシド溶液は、酸化チタン前駆体ということもでき、酸化雰囲気(大気雰囲気)にて熱処理を行い、脱水縮合して炭素繊維1の表面に酸化チタン膜を被覆するための酸化チタン前駆体である、このチタンアルコキシド溶液を構成するチタン化合物としては、有機チタン化合物や無機チタン化合物を挙げることができる。

【0026】
有機チタン化合物としては、各種のものを挙げることができ、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナト)、ジノルマルブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、チタンステアレート、チタンイソプロポキシオクチレングリコレート、テトライソプロポキシチタン重合体、テトラノルマルブトキシチタン重合体、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)、トリノルマルブトキシチタンモノステアレート、ジイソプロポキシチタンジステアレート、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタンアンモニウム塩、及びテトラ-メトキシチタン等を挙げることができる。これらの有機チタン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。有機チタン化合物のうちでも、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナト)、テトラノルマルブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、ジノルマルブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、及びチタンイソプロポキシオクチレングリコレートの内から選ばれた1種又は2種以上からなるものは、保存安定性、溶剤の選択性、熱分解温度と結晶化温度の関係及び炭素繊維1の表面への付着性の点から好ましく用いられる。一方、無機チタン化合物としては、塩化チタン(TiCl)等を挙げることができる。なお、無機チタン化合物と有機チタン化合物とを混合して用いてもよい。

【0027】
チタンアルコキシド溶液は、アセチルアセトンを含んでいる。このアセチルアセトンは、チタンアルコキシドに配位しており、脱水縮合反応により、アセチルアセトン骨格を有するチタン化合物層2となる。チタンアルコキシド溶液中のアセチルアセトンの含有量は、こうした脱水縮合反応が起こってチタン化合物層を形成できるだけの量が含まれていればよく、特に限定されないが、チタン化合物1molに対して例えば、0.2mol~3molの範囲内とすることができる。より好ましい範囲は、0.5mol~2molである。

【0028】
また、脱水縮合反応の触媒として、ヒドラジン塩酸塩が含まれていることが好ましい。なお、同様に作用するものであれば、ヒドラジン塩酸塩に変わるものを用いてもよく、例えば、酢酸、ヒドロキシアミン塩酸塩等を挙げることできる。このヒドラジン塩酸塩の含有量も、こうした脱水縮合反応が起こってチタン化合物層を形成できるだけの量が含まれていればよく、特に限定されないが、チタン化合物1molに対して例えば0.001mol~1molの範囲内とすることができる。より好ましい範囲は、0.01mol~0.1molである。

【0029】
チタンアルコキシド溶液は、そのまま用いてもよいが、通常は、溶媒や分散媒を用いた溶液や分散液として用いられる。溶媒や分散媒としては、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、クロロベンゼン、塩化メチル、パークロロエチレン等を用いることができる。チタンアルコキシド溶液は、少量の水を含んでいてもよい。

【0030】
こうしたチタンアルコキシド溶液は、炭素繊維1に接触し易く、かつ作業性が良いことが好ましく、溶媒、分散媒、水等によって、揮発性を調整したり、粘性を調整したりすることもできる。なお、チタンアルコキシド溶液中のチタン化合物濃度は、炭素繊維1との接触し易さ、形成するチタン化合物層2の厚さ、成膜されたチタン化合物(酸化チタン)の結晶化状態等から適宜選択することができる。その濃度は、例えば、0.2mol/L~1mol/Lとすることができる。

【0031】
チタンアルコキシド溶液を炭素繊維1に接触させさた後、熱分解可能な温度に熱して脱水縮合させることにより、チタン化合物層2を炭素繊維1の表面に形成することができる。また、熱分解可能な温度としては、例えば、400℃~600℃の範囲内の温度であることが好ましく、チタンアルコキシドの分解性に応じて適宜選択できる。

【0032】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂3は、CFRP10の必須の構成要素であり、広い用途に適用可能であるとともに、加熱溶融がし易いので使用後のリサイクル性も良い。熱可塑性樹脂3としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルケトン(PEEK)、塩化ビニル(PVC)等を挙げることできる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等を挙げることができる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を挙げることができる。これらのうち、ポリエステル樹脂は、使用用途が広く、扱い易いので好ましく用いられる。

【0033】
(製造方法)
炭素繊維強化プラスチック10は、チタン化合物層2で外周の一部又は全部が被覆された炭素繊維1を準備する工程と、準備された炭素繊維1と熱可塑性樹脂と3を複合させる工程とを有する方法で製造される。この方法で製造された炭素繊維強化プラスチック10は、チタン化合物層2が中間層として介在することにより、炭素繊維1と熱可塑性樹脂3との密着性の高い炭素繊維強化プラスチックとなる。

【0034】
炭素繊維強化プラスチック10は、従来公知の各種の方法で製造することができ、特に限定されないが、例えば炭素繊維シートと樹脂シートとを重ねてホットプレスするような方法で製造することができる。

【0035】
製造条件としては、所定温度に加熱して熱可塑性樹脂3にお流動性をもたせ、炭素繊維1の隙間に付き回りよく充填させることが好ましい。その温度は、熱可塑性樹脂3の種類にもよるが、PET樹脂の場合には、約180℃~220℃の範囲内で行うことができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
炭素繊維1として、トレカクロス(登録商標)(商品名:CO6343、東レ株式会社製)を用い、熱可塑性樹脂3として結晶性ポリエステル樹脂(PET樹脂)であるバイロン(登録商標)(商品名:SI-173、東洋紡株式会社製)を用いた。
【実施例】
【0038】
チタンアルコキシド溶液は、先ず、Ti[O(CHCH(テトラ-n-ブトキシチタン、「TTnB」と略す。)34.032g(100mmol)、IPA(2-プロパノール)96.476g(123.53mmol)、及びアセチルアセトン10.012g(100mmol)を配合して撹拌した。そこに、ヒドラジン-塩酸塩0.274g(4mmmol)と水3,244g(180mmol)とエタノール41.771g(52.94mL)との混合液を少しずつ加えて反応させた。この反応は、IPAを溶媒としてアセチルアセトンとTTnBとを反応させたのちに重縮合反応させたものである。こうしてチタンアルコキシド溶液を作製した。
【実施例】
【0039】
得られたチタンアルコキシド溶液に炭素繊維を浸漬させ、その後に取り出して、大気雰囲気下で400℃まで昇温し、400℃の熱処理で脱水縮合させ、炭素繊維の表面にチタン化合物層である酸化チタン膜を形成した。この酸化チタン膜は、昇温の段階で、図2に示すようなアセチルアセトン骨格を備えているので、熱可塑性樹脂とも加水分解して相溶性良くつながり、酸化チタンになった際に炭素繊維と密着していると考えられる。
【実施例】
【0040】
得られた炭素繊維を熱可塑性樹脂と複合させて炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を作製した。図3は、実施例1の炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチックを破壊した後の電子顕微鏡写真である。炭素繊維に熱可塑性樹脂がより多く付着し、表面処理の効果があることが確認できた。また、破壊した後も炭素繊維の表面から樹脂が剥がれることなく残っていることが確認できた。
【実施例】
【0041】
[比較例1]
実施例1において、炭素繊維の表面にチタン化合物層の被覆処を行わなかった。それ以外は実施例1と同様にして、比較例1の炭素繊維を作製した。
【実施例】
【0042】
得られた炭素繊維を熱可塑性樹脂と複合させて炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を作製した。図4は、比較例1の炭素繊維を用いた炭素繊維強化プラスチックを破壊した後の電子顕微鏡写真である。実施例1の場合に比べ、炭素繊維に付着する熱可塑性樹脂の量は少なかった。また、破壊した後は、炭素繊維の表面から樹脂が剥がれていた箇所が見られた。
【実施例】
【0043】
[比較例2]
実施例1において、チタン化合物層の被覆処を行わず、その代わりにコロナ放電処理を行った。それ以外は実施例1と同様にして、比較例2の炭素繊維を作製した。なお、コロナ放電処理は、コロナ放電表面改質装置(コロナマスターPS-1M、信光電気計装株式会社製)を用い、12kVで10秒間の条件で行った。
【実施例】
【0044】
[フラグメンテーション試験]
炭素繊維1と熱可塑性樹脂3との接着性の評価は、フラグメンテーション試験を用いて行った。その手順は、先ず、1本の炭素繊維を金型内にテープで固定した後に、その金型に熱可塑性樹脂溶液(溶媒:NMP(N-メチル-2-ピロリドン))を流し込み、150℃で24時間かけてNMPを揮発させた。次に、真空乾燥機で熱可塑性樹脂を完全に固めた後、試験片を切り出した。その試験片を小型材料試験機(型名:IMC-90FD、株式会社井元製作所製)を用いて引張試験を行い、炭素繊維を熱可塑性樹脂の中で破断させた。その後、マイクロスコープで破断した繊維長さを測定した。その結果を基に、JIS K 7176を準拠し、界面せん断強度(τ=3Dσ/8L)を求めた。結果を表1に示す。なお、Lは炭素繊維の破断長さの平均であり、Dは炭素繊維の直径であり、σは炭素繊維1本の引張強度である。
【実施例】
【0045】
【表1】
JP2017155172A_000003t.gif
【実施例】
【0046】
表1の結果より、熱可塑性樹脂(PET樹脂)を用いた場合の界面せん断強度は、チタン化合物層を被覆した炭素繊維を用いた実施例1が最も高く、何も処理しない炭素繊維を用いた比較例1とコロナ放電処理した炭素繊維を用いた比較例2は、いずれもかなり小さい値を示した。
【実施例】
【0047】
[実施例2]
実施例1で得られた炭素繊維(酸化チタン膜が形成されたもの)に、PET樹脂溶液をハンドレイアップ法にて含浸させ、さらに真空乾燥機でPET樹脂の含浸と溶剤の揮発を行った。最後に、表面の凹凸を整えるため、ホットプレスを行い、1枚のプリプレグシートを作製した。このプリプレグシートを4枚作製し、金型に入れてホットプレスを用いて1枚の試験片を作製した。その後、試験片を長さ120mm、幅15mm、厚さ1mmに対して、タブを長さ30mm、幅15mm、厚さ1mmとして作製した。その際、試験片の中心にひずみゲージ(型番:KFG-5-120-C1-11L1M2R、株式会社共和電業)を両面に取り付けた。
【実施例】
【0048】
[比較例3]
実施例2において、表面にチタン化合物層の被覆処を行わない炭素繊維を用いた。それ以外は実施例2と同様にして、比較例3の炭素繊維を作製した。
【実施例】
【0049】
[引張特性の評価]
実施例2と比較例3の試験片の引張特性の評価は、精密万能試験機(型名:AUTO GRAPH AG-20KND、株式会社島津製作所)を用いて行い、引張強度と引張弾性率を測定した。
【実施例】
【0050】
【表2】
JP2017155172A_000004t.gif
【実施例】
【0051】
表2の結果より、熱可塑性樹脂(PET樹脂)を用いた場合の引張強度と引張弾性率は、チタン化合物層を被覆した炭素繊維を用いた実施例2が、何も処理しない炭素繊維を用いた比較例3よりも大きい値を示した。
【実施例】
【0052】
以上のように、界面せん断強度の結果、引張強度と引張弾性率の結果、及び図3、図4の結果より、チタン化合物層を被覆した炭素繊維を適用することにより、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接合強度を改善することができることがわかった。さらに、熱可塑性樹脂は加熱溶融することができるので、熱硬化性樹脂を用いた場合に比べて、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)をリサイクルする場合に圧倒的に有利である。
【符号の説明】
【0053】
1 炭素繊維
2 チタン化合物層
3 熱可塑性樹脂
10 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3