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明細書 :油の分解処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-176899 (P2017-176899A)
公開日 平成29年10月5日(2017.10.5)
発明の名称または考案の名称 油の分解処理方法
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
B09C   1/10        (2006.01)
B09C   1/02        (2006.01)
B09C   1/08        (2006.01)
C02F   1/72        (2006.01)
C02F   3/00        (2006.01)
C12N   1/00        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
FI B09B 3/00 304Z
B09B 3/00 ZABE
B09B 3/00 304K
C02F 1/72 101
C02F 3/00 C
C12N 1/00 ZNAR
C12N 1/20 F
C12N 1/20 D
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2016-063098 (P2016-063098)
出願日 平成28年3月28日(2016.3.28)
発明者または考案者 【氏名】伊原 正喜
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4D004
4D027
4D050
Fターム 4B065AA41X
4B065AC20
4B065BA22
4B065CA54
4B065CA56
4D004AA41
4D004AB02
4D004CA12
4D004CA18
4D004CA36
4D004CA43
4D004CC09
4D027AC02
4D050AA12
4D050AB01
4D050BB02
4D050BC04
4D050BC09
4D050CA16
4D050CA17
4D050CA20
要約 【課題】本発明は、随伴水や石油汚染土壌等に含まれる石油系油分について、環境を破壊することなく、かつ高効率、短時間で油分の分解・酸化を促進する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、脂肪族炭化水素と芳香族化合物の何れか一方または両方からなる油を分解処理する方法であって、油とクロロフィル類とを接触させた後、光を照射し、光触媒反応によって油を酸化することを特徴とする。また、本発明は、光触媒反応によって酸化された油とヒドロキシ基を持つ化合物を分解する微生物と接触させ、光触媒反応によって酸化された油を生物処理によってさらに酸化することを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
脂肪族炭化水素と芳香族化合物の何れか一方または両方からなる油を分解処理する方法であって、
前記油とクロロフィル類とを接触させた後、光を照射し、光触媒反応によって前記油を酸化することを特徴とする油の分解処理方法。
【請求項2】
前記光触媒反応によって酸化された油とヒドロキシ基を持つ化合物を分解する微生物とを接触させ、前記光触媒反応によって酸化された油を生物処理によってさらに酸化することを特徴とする請求項1記載の油の分解処理方法。
【請求項3】
前記クロロフィル類が、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルd、クロロフィルfのうちの何れか1つまたは2つ以上の組合せからなることを特徴とする請求項1または2記載の油の分解処理方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、油の分解処理方法に関する。特に、石油採掘工程で排水される随伴水や石油により汚染された土壌等を浄化するための油を分解処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油採掘工程では、石油の産出とともに地層から大量の石油含有水が排出される。このような石油含有水を随伴水という。随伴水には、水と分離している粒子の大きなものやエマルジョン状の微細なものまで多くの石油系油分が含まれている。随伴水は、油田への還流処分のほか環境放出がされるが、環境放出時には、随伴水に含まれる油分の環境汚染が問題となっている。また、石油の精製工場や備蓄基地などの敷地内や周辺部、またガソリンスタンド跡地では、石油成分により土壌が汚染され問題となっている。
【0003】
こうした環境汚染の対策として、特許文献1に記載されているように、石油分解菌を用いたバイオレメディエーション(bioremediation、生物による環境修復技術)が注目されている。バイオレメディエーションは、石油系油分を含む随伴水や石油汚染土壌に石油分解菌を添加して石油系油分を分解処理する方法である。バイオレメディエーションは、酸化剤や凝集剤などの薬剤を使用する処理方法に比べると、省資源であり、安価で環境負荷の少ない手法である。また難分解性として知られる石油を完全に分解することができる利点がある。
【0004】
しかし、特許文献1や非特許文献1に示されるように、石油分解菌による分解処理には、数週間という長い時間がかかる欠点がある。非特許文献2には、その原因として、石油に生物難分解性の有機化合物が含まれ、そのモノオキシゲナーゼ(酸素分子を基質として酸素1原子を化合物に導入する酵素)による酸化反応が律速段階となっていることが示されている。
【0005】
この律速段階を改善する方法として、例えば、特許文献2には、二酸化チタンを用いた光触媒を利用して石油系油分を部分酸化し、その後、微生物によって二酸化炭素まで分解することが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されている二酸化チタンによる光触媒では、二酸化チタンが被覆された物体の表面でのみ酸化反応が進行し、処理水の液全体で効率的に石油系油分を酸化させることが難しいという欠点がある。また、土壌に散布した場合、二酸化チタンは水などに溶解せずまた分解もしないため、環境破壊を誘引するおそれがある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2014-61489号公報
【特許文献2】特表平6-502340号公報<nplcit num="1"> <text>門倉ほか、「石油分解菌の安全性評価」、土木学会第67回年次学術講演会(平成24年9月),P.677-P.678</text></nplcit><nplcit num="2"> <text>Nilanjana Das and Preethy Chandran, "Microbial Degradation of Petroleum Hydrocarbon Contaminants: An Overview", SAGE-Hindawi Access to Research,Biotechnology Research International, Volume 2011, Article ID 941810, 13pages.</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、随伴水や石油汚染土壌等に含まれる油について、環境を破壊することなく、かつ高効率、短時間で分解・酸化を促進する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
随伴水や石油汚染土壌等に含まれる油には、生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物が含まれている。この生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物を高効率に酸化する方法として、クロロフィル類による光触媒反応を利用することが考えられる。クロロフィル類は、時間と共に微生物や光によって分解し、薬品等を使用しないで分解できるため、環境放出されても環境破壊のおそれが小さい。
【0010】
そこで、発明者は、脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を含む水や土壌にクロロフィル類を混入してこの油とクロロフィル類とを接触させ、その後光を照射することよって、光触媒反応により油の酸化を促進できることを見出した。
【0011】
また、発明者は、クロロフィル類の光触媒反応により部分分解された油を含む水等の液体に、アルコールを分解する分解菌を混入して油と分解菌とを接触させることで、光触媒反応により部分分解された油をさらに分解できることを見出した。
【0012】
これにより、発明者は、クロロフィル類の光触媒反応による部分酸化とアルコールを分解する分解菌との組み合わせ、生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を高効率かつ短時間に分解できるという知見を得た。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づき、検討を重ね完成されたものであり、次のような油を分解処理する方法を提供するものである。
【0014】
第1発明の油の分解処理方法は、脂肪族炭化水素と芳香族化合物の何れか一方または両方からなる油を分解処理する方法であって、油とクロロフィル類とを接触させた後、光を照射し、光触媒反応によって油を酸化することを特徴とする。
【0015】
第2発明の油の分解処理方法は、第1発明に係る油の分解処理方法において、光触媒反応によって酸化された油とヒドロキシ基を持つ化合物を分解する微生物とを接触させ、光触媒反応によって酸化された油を生物処理によってさらに酸化することを特徴とする。
【0016】
第3発明の油の分解処理方法は、第1発明または第2発明に係る油の分解処理方法において、クロロフィル類が、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルd、クロロフィルfのうちの何れか1つまたは2つ以上の組合せからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る油の分解処理方法によれば、石油含有水や石油土壌汚染に含まれる生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油について、クロロフィル類の光触媒反応を利用することによって、酸化を促進し分解できる。そして、これにより、またアルコール分解菌との組合せにより、環境破壊を生ぜず、高効率にかつ短時間に生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を分解でき、石油含有水や石油土壌汚染等の環境汚染の問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】クロロフィルaを溶解させたジクロロメタン液に光照射後FTIR分析した結果(図(a)中、点線)、n-ドデカンを溶解させたジクロロメタン液に光照射後FTIR分析した結果(図(a)中、実線)、クロロフィルa とn-ドデカンを溶解させたジクロロメタン液に光照射後FTIR分析し比較した結果である(図(b))。
【図2】クロロフィルa とn-ドデカンを溶解させたジクロロメタン液、クロロフィルaを溶解させたジクロロメタン液、n-ドデカンを溶解させたジクロロメタン液とに光照射後ガスクロマトグラフィー分析し比較した結果である。
【図3】フェナントレンについて、クロロフィルaを混合した場合としない場合で、光照射後FTIR分析した結果である。
【図4】ピレンについて、クロロフィルaを混合した場合としない場合で、光照射後FTIR分析した結果である。
【図5】希釈原油について、クロロフィルaを混合した場合としない場合で、光照射後FTIR分析した結果である。
【図6】クロロフィルa混合有無の希釈原油について光照射し、ガスクロマトグラフィー分析して比較した結果である。
【図7】希釈原油と藻類エタノール粗抽出物の混合液と希釈原油とエタノールの混合液にそれぞれ光照射し、ガスクロマトグラフィー分析して比較した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る油の分解処理方法の実施の形態について、説明する。

【0020】
<第1の実施の形態に係る油の分解処理方法>
本発明の第1の実施の形態に係る油の分解処理方法は、石油採掘工程において石油の産出と伴に排出される随伴水等に代表される液体、特に水に含まれる脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油の分解処理方法である。

【0021】
随伴水の場合、水に含まれる脂肪族炭化水素の油として、例えば、アルカン系やシクロアルカン系の炭化水素が挙げられ、芳香族化合物の石油系油分としては、ベンゼン、トルエン、キシレンといったベンゼン環を1つ化合物やナフタレン、フェナントレンのような多環芳香族炭化水素等が挙げられる。このような石油系油分は、生物難分解性を有している。

【0022】
そして、随伴水の場合は、砂や泥が混じっているため、光触媒により油を酸化する前に、これらを除去する油分分離を行う。砂や泥などが含まれていることにより生じる酸化処理の負荷を低減できるからである。油分分離の工程では、比重差を利用した物理的分離方法や遠心分離機等の機器を使った機械的な処理方法、沈殿剤による処理方法等の油分分離手段が用いられる。

【0023】
続いて、砂や泥などが除去された随伴水に、クロロフィル類またはクロロフィル類の含有物を添加し、随伴水に含まれる油とクロロフィル類を接触させ光を照射する。そして、クロロフィル類の光触媒反応により、随伴水に含まれる脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を、ヒドロキシ基を有するアルコールやフェノール類に部分酸化し、またはさらに酸化を促進させることができる。

【0024】
クロロフィル類は、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルd、クロロフィルfのうちの何れか1つまたは2つ以上の組合せからなることができる。

【0025】
また、効率的に光触媒反応を起こさせるため、光の波長は250 nm~700 nmの紫外線や可視光線であることが好適である。室外で分解処理する場合は太陽光を利用することできる。

【0026】
なお、光触媒反応による油の酸化は、光が照射されるクロロフィル類の表面で起きるため、効率的に油を酸化させるためには、クロロフィル類の添加後、随伴水を好気的条件で撹拌しクロロフィル類を混合しながら光を照射することが好適である。

【0027】
そして、随伴水に含まれていた油は、クロロフィル類の光触媒反応によって酸化され浄化されるが、酸化に要する時間は24時間以下であり、短時間で油を酸化することができる。

【0028】
以上、随伴水に含まれる石油系油分の分解処理方法について、主に説明したが、本発明の第1の実施の形態に係る油の分解処理方法は、随伴水に限定されるものではない。石油系油分を含み汚染された水についても、適用可能で油分を分解できることはあることは言うまでもない。

【0029】
上記の方法により、分解された油は、さらに、必要に応じて、酸化剤あるいはオゾン反応により化学的に、または微生物により生物的に、分解して、さらに水を浄化することができる。これは、前述したクロロフィル類の光触媒反応による酸化だけでは不十分な場合に追加的に行うものであるが、詳しくは後述する。

【0030】
浄化された水は、必要に応じて、河川、海域に放流されるか、または随伴水の場合は井戸に圧入されることができる。クロロフィル類も、必要に応じて河川等に放出してもよい。クロロフィル類は時間と伴に分解され、環境破壊のおそれが小さいからである。

【0031】
<第2の実施の形態に係る油の分解処理方法>
本発明の第2の実施の形態に係る油の分解処理方法は、脂肪族炭化水素や芳香族化合物からなる石油系油分によって汚染された土壌を被処理物として、汚染土壌を浄化するため、土壌に含まれる油を分解処理する方法である。

【0032】
本発明に係る石油汚染土壌としては、本発明の方法により浄化可能である土壌であれば特に限定されない。例えば、ガソリン、灯油,重油、潤滑剤、エンジンオイルなどで汚染された土壌があげられる。そのような土壌としては、工場跡地、工場敷地、ガソリンスタンド跡地、石油汚染事故現場等における土壌があげられる。

【0033】
本発明の第2の実施の形態に係る油の分解処理方法では、石油汚染土壌にクロロフィル類を散布して添加し、土壌に含まれる油とクロロフィル類を接触させ、光を照射する。そして、土壌に含まれる脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を、ヒドロキシ基を有するアルコールやフェノール類に部分酸化し、あるいはさらに酸化促進させることができる。

【0034】
クロロフィル類は、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィルc1、クロロフィルc2、クロロフィルd、クロロフィルfのうちの何れか1つまたは2つ以上の組合せからなることができる。

【0035】
また、効率的に光触媒反応を起こさせるため、光の波長は250 nm~700 nmの紫外線や可視光線であることが好適である。室外で分解処理する場合は太陽光を利用することできる。

【0036】
以上、第2の実施の形態について説明したが、さらに、後述するように、微生物により土壌に含まれる油を酸化して追加的に分解することができる。

【0037】
<第3の実施の形態に係る油の分解処理方法>
第1の実施の形態に係る油の分解処理方法または第2の実施の形態に係る油の分解処理方法で説明したように、生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を含んだ水や土壌に、クロロフィル類を添加し油とクロロフィル類を接触させて光を照射することにより、光触媒反応を利用して油を分解処理することができる。

【0038】
しかしながら、クロロフィル類の光触媒反応による酸化だけでは不十分な場合がある。そこで、このような場合は、追加的に微生物による酸化処理することができる。以下、その方法について説明する。

【0039】
本発明の第3の実施の形態に係る油の分解処理方法では、生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を含んだ水や土壌に、クロロフィル類を添加し油とクロロフィル類を接触させて光を照射して、光触媒反応により油を部分酸化する光触媒反応工程に、さらにこの部分酸化された油を含む水や土壌に微生物を添加して、油と微生物を接触させ、生物処理により油を分解・酸化処理する工程を追加するものである。

【0040】
微生物は、ヒドロキシ基を持つ化合物を分解する微生物が好適である。クロロフィル類の光触媒反応により、水や土壌に含まれていた油は、少なくともアルコールやフェノール類に分解されているからである。ヒドロキシ基を持つ化合物を分解する微生物としては、Pseudomonas属、Gordonia属等の菌が例示される。本発明の第3の実施の形態に係る油の分解処理方法では、何れの微生物を用いても、またこれらを組み合わせて用いてもよい。ヒドロキシ基を持つ化合物を分解する微生物は、メタノール資化菌用培地を用いるなどして培養することができる。

【0041】
光触媒反応によりヒドロキシ基を持つ化合物に部分酸化された油は、生物易分解性を有するので、上記微生物を用いることで容易にかつ短時間に分解・酸化できる。

【0042】
以上のように、クロロフィル類の光触媒反応と微生物による分解を組み合わせることによって、生物難分解性の脂肪族炭化水素や芳香族化合物の油を含んだ水や土壌を、2~3日で浄化することが可能となる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
<1.光触媒反応による油の分解>
(1)クロロフィル類の光触媒反応による脂肪族炭化水素の分解
クロロフィル類としてクロロフィルaを用い、油として脂肪族炭化水素のn-ドデカンを用いて実験を行った。
【実施例】
【0045】
すなわち、クロロフィルa(クロロフィル研究所製)約0.45 mgをジクロロメタン(ナカライテスク社製)の溶媒に溶かして5 mMのクロロフィルa溶液を作製し、このクロロフィルa溶液をn-ドデカン(ナカライテスク社製)の液10 μl(7.5 mg)に加え、撹拌してクロロフィルaとn-ドデカンを混合させた。その後、このクロロフィルaとn-ドデカンの混合液を25℃で24時間LED光(白色、450nmと570 nmにピークあり、約1000 μmol photon・m-2 ・s-1)を照射した。
【実施例】
【0046】
また、コントロール実験(対照実験)として、n-ドデカン10 μlに対してジクロロメタン100 μlを混合した溶液、およびn-ドデカンを添加しないクロロフィルa溶液5 mMを用いた。
【実施例】
【0047】
そして、上記のように光を照射した後、反応物をジクロロメタンに溶解させた。そして、フーリエ変換赤外分光光度計(本明細書において、「FTIR」という。)分析(装置:日本分光製、型式FTIR-4000)およびガスクロマトグラフィー分析(装置本体:島津GC-2014、カラム:Rxi-5ms (RESTEK)、検出:FID)によって、反応物を評価した。
【実施例】
【0048】
図1は、FTIR分析の結果である。(a)は光照射後のn-ドデカン(実線)と、光照射後のクロロフィルa(点線)、(b)はn-ドデカンとクロロフィルaの混合物に光照射後のスペクトルである。図2は、ガスクロマトグラフィー分析の結果である。(a)はジクロロメタン、(b)は光照射後のn-ドデカン、(c)は光照射後のクロロフィルa、(d)は光照射後のn-ドデカンとクロロフィルa を混合したn-ドデカンの結果である。光照射時間は、図1、図2において何れも24時間である。
【実施例】
【0049】
図1および図2の結果から、コントロール実験と比較すると、光照射後にn-ドデカンは完全に分解されているのが分かる。さらに、炭化水素系の分解物について確認することが出来なかった。恐らく、低分子化され揮発したと推測される。
【実施例】
【0050】
(2)クロロフィル類の光触媒反応による芳香族化合物の分解
クロロフィル類としてクロロフィルaを用い、油として芳香族化合物であるフェナントレン(ナカライテスク社製)およびピレン(ナカライテスク社製)を用いて実験を行った。
【実施例】
【0051】
すなわち、クロロフィルa(クロロフィル研究所製)約0.45 mgをジクロロメタン(ナカライテスク社製)の溶媒に溶かして5 mMのクロロフィルa溶液を作製し、これを終濃度にして5%(w/v) のフェナントレンが溶解したジクロロメタン溶液100 μlに加え混合させた。また前述の5 mMのクロロフィルa溶液を終濃度で5%(w/v) のピレンが溶解したジクロロメタン溶液100 μlに加え、撹拌して混合させた。その後、これらの混合液を25℃で24時間LED光(白色、450nmと570 nmにピークあり、約1000 μmol photon・m-2 ・s-1)を照射した。
【実施例】
【0052】
また、コントロール実験として、5%(w/v) フェナントレンもしくは5%(w/v) ピレンを含むジクロロメタン溶液100 μlを用いた。
【実施例】
【0053】
そして、上記のように光を照射した後、反応物をジクロロメタンに溶解させた。そして、FTIR分析(装置:日本分光製、型式FTIR-4000)によって、反応物を評価した。
【実施例】
【0054】
フェナントレンおよびピレンについてのFTIR分析の結果をそれぞれ図3および図4に示す。何れも、(a)はコントロール実験のFTIR分析の結果、(b)はクロロフィルaを混入し光照射してFTIR分析した結果である。(a)および(b)ともに、光照射時間は24時間である。
【実施例】
【0055】
図3および図4の結果から、クロロフィルaを混入し光照射した場合、フェナントレンおよびピレンが有意に分解されているのが分かる。
【実施例】
【0056】
(3)クロロフィル類の光触媒反応による原油の分解
クロロフィル類としてクロロフィルaを用い、油として、新潟県秋葉区から提供を受けた原油から静置により泥と水分を除き、さらにジクロロメタン(ナカライテスク社製)で3倍に希釈した原油(本明細書および図中において、この希釈した原油を「希釈原油」という。)を用いて実験を行った。
【実施例】
【0057】
すなわち、クロロフィルa(クロロフィル研究所製)約0.45 mgをジクロロメタンの溶媒に溶かして5 mMのクロロフィルa溶液を作製し、このクロロフィルa溶液を希釈原油30 μlに加え、撹拌してクロロフィルaと希釈原油を混合させた。その後、この混合液を25℃で24時間LED光(白色、450nmと570 nmにピークあり、約1000 μmol photon・m-2 ・s-1)を照射した。
【実施例】
【0058】
また、コントロール実験として、希釈原油10 μlに対してジクロロメタン100 μlを混合した溶液、および希釈原油を添加しないクロロフィルa溶液5 mMを用いた。
上記のように光を照射した後、反応物をジクロロメタンに溶解させた。そして、FTIR分析(装置:日本分光製、型式FTIR-4000)およびガスクロマトグラフィー分析(装置本体:島津GC-2014、カラム:Rxi-5ms (RESTEK)、検出:FID)によって、反応物を評価した。
【実施例】
【0059】
FTIR分析の結果を図5に、ガスクロマトグラフィー分析の結果を図6に示す。何れも、(a)はコントロール実験の希釈原油に対する結果、(b)はクロロフィルaと希釈原油の混合液の光照射後の結果である。図5および図6の結果から、希釈原油内の脂肪族炭化水素や芳香族化合物の石油成分の減少が確認できる。光照射時間は24時間である。
【実施例】
【0060】
(4)藻類エタノール粗抽出物を用いた光触媒反応による原油の分解
クロロフィル類として藻類エタノール粗抽出物を用い、油として希釈原油を用いて実験を行った。
【実施例】
【0061】
すなわち、シャーレ上に数滴の希釈原油を滴下し、その上から藻類エタノール粗抽出物を数滴滴下した。藻類エタノール粗抽出物は、約1 gのスピルリナ錠剤(ジャパンアルジェ社製)をエタノール約10 mlに懸濁し、不溶物を除去して得られた溶液である。藻類エタノール粗抽出物には、クロロフィル類が含まれている。コントロール実験では、藻類エタノール粗抽出物の代わりに、エタノールを滴下した。
【実施例】
【0062】
上記の希釈原油と藻類エタノール粗抽出物が滴下されたシャーレを太陽光下に約3時間放置した後、炭化水素成分をヘキサンに抽出し、ガスクロマトグラフィー(装置本体:島津GC-2014、カラム:Rxi-5ms (RESTEK)、検出:FID)により反応物を分析した。
【実施例】
【0063】
ガスクロマトグラフィー分析の結果を図7に示す。図7の結果から、藻類エタノール粗抽出物を用いた光触媒反応により、炭化水素成分が半減することが分かる。
【実施例】
【0064】
<2.光反応と生物処理による油の分解>
(1)微生物の単離
前述のようにクロロフィル類の光触媒反応によって部分分解された原油の部分分解物をさらに分解する菌を単離することを行った。具体的には、新潟市秋葉区の土壌から、脂肪族アルコール(高級アルコール)である1-オクタデカノール資化能を有する微生物を探索した。
【実施例】
【0065】
まず、M9(-)培地(500 ml 中に、1.28 g Na2HPO4、0.3 g KH2PO4、0.05 g NaCl、0.1 g NH4Cl、0.12 g MgSO4・7H2O、5.5 mg CaCl2、0.1 mg FeSO4・7H2O)で土壌サンプルを希釈し、1-オクタデカノール(ナカライテスク社製)を添加(終濃度0.1%)したM9寒天培地に播種した。30℃にてインキュベートし、得られた多数のコロニーからゲノムDNAを採取し、プライマー16SrRNA8F: 5’-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3’と16SrRNA1492R: 3’-GGTTACCTTGTTACGACTT-3’を用いて、16SリボソーマルRNA配列を増幅した。これらのプライマーの塩基配列をそれぞれ配列番号1と配列番号2に示す。
【実施例】
【0066】
その結果、単離できた微生物は2種存在し、それぞれ配列番号3と配列番号4に示す塩基配列を有していた。ホモロジー検索の結果、いずれもPsudomonas属に属する新種のバクテリアであり、それぞれ、ビスフェノール分解能を有するPsudomonas knackmussii B13、石油分解能を有するPsudomonas taeanensis MS-3と近種であることが明らかになった。
【実施例】
【0067】
(2)微生物によるアルコールの分解
(2-1)脂肪族アルコール(高級アルコール)
1-ドデカノール(ナカライテスク社製)や1-オクタデカノール(ナカライテスク社製)を添加(終濃度0.1%)したM9(-)培地に、配列番号3と配列番号4に示す塩基配列を有する微生物を植菌し、30℃で12時間インキュベートした結果、微生物の繁殖を示唆する白濁が観察され、上清をガスクロマトグラフィー分析(装置本体:島津GC-2014、カラム:Rxi-5ms (RESTEK)、検出:FID)した結果、1-ドデカノールや1-オクタデカノールは完全に消失した事が明らかとなった。
一方で、1-ドデカノールや1-オクタデカノールを添加しないコントロールやバクテリアを植菌していないコントロールでは、白濁は観察されなかった。また、n-ドデカンのみを添加したコントロールでも、白濁は観察されず、ガスクロマトグラフィー分析(装置本体:島津GC-2014、カラム:Rxi-5ms (RESTEK)、検出:FID)を行ったが、n-ドデカンの消失は確認できなかった。
【実施例】
【0068】
(2-2)芳香族アルコール(フェノール類)
芳香族アルコール(フェノール類)であるフェナントロール(ナカライテスク社製)を添加(終濃度0.1%)したM9(-)培地に、配列番号3と配列番号4に示す塩基配列を有する微生物を植菌し、30℃で12時間インキュベートした。フェナントロールは水に不溶であり、インキュベート前では、細かい凝集体として沈殿もしくは浮遊していたが、インキュベート後は、バクテリアの繁殖を示唆する白濁が観察され、フェナントロールの凝集体もほぼ消失した。
【実施例】
【0069】
一方で、水酸基を持たないフェナントレン(ナカライテスク社製)やピレン(ナカライテスク社製)を添加したコントロールでは、白濁は観察されず、フェナントレンやピレンの凝集体の明らかな減少も確認できなかった。
【実施例】
【0070】
以上のように、単離された微生物は、脂肪族アルコール(高級アルコール)および芳香族アルコール(フェノール類)の分解に対して有効で、これらを高速に分解することが分かる。
【実施例】
【0071】
(3)藻類エタノール粗抽出物を用いた光反応と生物処理による油の分解
藻類エタノール粗抽出物を用いた光反応と生物処理による2段階の原油分解実験は、以下の通り行った。
【実施例】
【0072】
新潟県秋葉区から提供を受けた原油を静置することで、泥を沈降させ、上清を採取した。原油上清には、油成分が0.1~1%程度含まれている他は、水分もしくは水溶性物質を含まれている。原油上清を10 ml透明ガラス容器に入れ、前述の藻類エタノール粗抽出物(約1 gのスピルリナ錠剤(ジャパンアルジェ社製)をエタノール約10 mlに懸濁し、不溶物を除去して得られた溶液)を1 ml添加し、太陽光下(約1000~2000 μmol photon・m-2 ・s-1)に2時間放置した。藻類エタノール粗抽出物の添加と太陽光照射を3~4回繰り返した結果、油成分がほぼ消失した事が目視で確認できた。この光照射処理済み原油上清は、石油分解物や藻類エタノール粗抽出物由来成分による不溶物や着色物のために濁度が高く透明度が低かった。
【実施例】
【0073】
しかし、さらに配列番号3と配列番号4に示す塩基配列を有する微生物を植菌して半日間放置した所、無色で透明度の高い上清と沈殿物に分離することができた。これにより、油成分を分解することができた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る油の分解処理方法は、主に石油や天然ガスを産出する際に同伴して取り出される随伴水や石油により汚染された土壌等を浄化処理する現場、技術分野で利用が可能である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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