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明細書 :高架橋の倒壊防止構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-027239 (P2016-027239A)
公開日 平成28年2月18日(2016.2.18)
発明の名称または考案の名称 高架橋の倒壊防止構造
国際特許分類 E01D   1/00        (2006.01)
E01D  19/02        (2006.01)
E01D  19/04        (2006.01)
FI E01D 1/00 Z
E01D 19/02
E01D 19/04 101
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2015-132426 (P2015-132426)
出願日 平成27年7月1日(2015.7.1)
優先権出願番号 2014138360
優先日 平成26年7月4日(2014.7.4)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】後藤 芳顯
【氏名】山田 忠信
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 2D059
Fターム 2D059AA03
2D059GG29
2D059GG33
2D059GG40
2D059GG55
要約 【課題】構造は比較的単純で施工性がよく、橋脚の倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を防止することを目的とする。
【解決手段】橋脚横梁3の両側に設置したブラケット4に、弛みを持たせたケーブル5の一端を締結し、他端を適切な場所に固定することにより、常時や地震時には力がほとんど作用せず倒壊時のみにケーブル5が緊張することにより荷重を分担させ、橋脚2a,2b,2c,2dの倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を防止することを特徴とする。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
橋脚と横梁を有する高架橋において、
前記横梁の両端に、それぞれケーブルの一方を固定し、
前記ケーブルの他方を、前記横梁の同じ方向の外側に位置するアンカーに、
それぞれ弛ませて固定し、
前記橋脚の倒壊時のみに、
前記ケーブルが緊張することにより、
前記橋脚の倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を防止することを特徴とする高架橋の倒壊防止構造。
【請求項2】
前記横梁の両端部にそれぞれ2本のケーブルを取付け、
橋脚に対して橋軸方向の両側に設置したアンカーに、
2本のケーブルの他端を、
それぞれ弛ませて固定し、
橋脚の橋軸方向の倒壊を抑止することを特徴とする請求項1に記載する高架橋の倒壊防止構造。
【請求項3】
隣接する橋脚または橋台の、一方の橋脚の横梁の両端と、
他方の橋脚の横梁の両端または橋台の前記一方の橋脚の横張の両端に対応する両端とを、
ケーブルで弛みを持って、
対角方向に互い交差するように、
または、橋軸方向に平行に、結合することを特徴とする高架橋の倒壊防止構造。
【請求項4】
前記ケーブルの長さは、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出した値以上、倒壊点に発生している変位より算出した長さを超えない値であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の高架橋の倒壊防止構造。
【請求項5】
ケーブルの結合部にダンパーおよび/または弾性体を設置してケーブルに作用する衝撃力を低減することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の高架橋の倒壊防止構造。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚と横梁を有する高架橋の倒壊防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高架橋では上部構造(桁)が横梁上面に設置され支承で支持されている。この支承が東北太平洋沖地震クラスの極大地震動によって破壊した場合、上部構造が水平方向に大きく移動し下部構造である橋脚と横梁から落下する可能性がある。
【0003】
これを防止する目的で設置されるのが落橋防止装置である。落橋防止装置は橋脚が致命的な損傷に至っていない場合に有効に機能する。しかしながら、橋脚が倒壊した場合には無力であり高架橋全体の倒壊につながる。
【0004】
この種の落下防止装置として、上部構造端部と下部構造または隣接する上部構造端部同士をPCケーブルによって連結することにより、支承損壊後の上部構造の移動をPCケーブルによって制限し落橋を防止するもの(特許文献1参照)がある。
また、PCケーブル式と同様に、上部構造端部と下部構造を鋼製のチェーンによって連結し,上部構造の移動を制限することにより落橋を防止するもの(特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第3746486号公報
【特許文献2】特許第4669572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術は、上部構造が橋脚頂部から落下することを防止するものであり、したがって,橋脚が致命的な損傷に至っていない段階では機能する。しかし、想定を上まわる大地震によって橋脚が大きく損傷した場合には、本来の機能を発揮できない。
【0007】
通常、高架橋では、橋脚を極大地震時における損傷部位と想定し耐震設計がなされるので、極大地震時においては、損傷は必然的に上部構造ではなく、下部構造の橋脚の方に集中する。このため、設計の想定を上まわる大地震が発生すると橋脚が甚大な損傷を受け倒壊する恐れがあり、このような場合、橋梁全体の倒壊を抑止することは困難であった。
【0008】
本発明は、このような橋脚が倒壊した状況下においても高架橋の全体倒壊を防止する構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題を解決するための手段として以下の特徴を有する、
発明1は、橋脚と横梁を有する高架橋において、横梁の両端に、それぞれケーブルの一方を固定し、ケーブルの他方を、横梁の同じ方向の外側に位置するアンカーに、それぞれ弛ませて固定し、橋脚の倒壊時のみに、ケーブルが緊張することにより、橋脚の倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を防止することを特徴とする高架橋の倒壊防止構造である。
発明2は、横梁の両端部にそれぞれ2本のケーブルを取付け、橋脚に対して橋軸方向の両側に設置したアンカーに、2本のケーブルの他端を、それぞれ弛ませて固定し、橋脚の橋軸方向の倒壊を抑止することを特徴とする発明1に記載する高架橋の倒壊防止構造である。
発明3は、隣接する橋脚または橋台の、一方の橋脚の横梁の両端と、他方の橋脚の横梁の両端または橋台の一方の橋脚の横張の両端に対応する両端とを、ケーブルで弛みを持って、対角方向に互い交差するように、または、橋軸方向に平行に、結合することを特徴とする高架橋の倒壊防止構造である。
発明4は、ケーブルの長さは、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出した値以上、倒壊点に発生している変位より算出した長さを超えない値であることを特徴とする発明1乃至発明3の何れか1項に記載の高架橋の倒壊防止構造である。
発明5は、ケーブルの結合部にダンパーおよび/または弾性体を設置してケーブルに作用する衝撃力を低減することを特徴とする発明1乃至4の何れかに記載の高架橋の倒壊防止構造である。
以上、橋脚の横梁の両側に設置したブラケットに弛みを持たせたケーブル(PCケーブルなど)の一端を締結し,他端を適切なアンカーに定着することにより、橋脚が倒壊した場合、高架橋の全体倒壊を防止するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果がある。
発明1は、橋脚と横梁を有する高架橋において、横梁の両端に、それぞれケーブルの一方を固定し、ケーブルの他方を、横梁の同じ方向の外側に位置するアンカーに、それぞれ弛ませて固定する。よって、橋脚の倒壊した場合のみケーブルが緊張し、橋脚の倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を、ケーブルで支えることにより防止する高架橋の倒壊防止構造である。よって、高架橋の全体倒壊防止をする効果がある。
発明2は、横梁の両端部にそれぞれ2本のケーブルを取付け、橋脚に対して橋軸方向の両側に設置したアンカーに、2本のケーブルの他端を、それぞれ弛ませて固定する発明1に記載する高架橋の倒壊防止構造である。よって、橋脚の橋軸方向に倒壊した場合、ケーブルで支えることにより、橋脚の橋軸方向に倒壊を抑止する効果がある。
発明3は、隣接する橋脚の、一方の橋脚の横梁の両端と、他方の橋脚の横梁の両端または橋台の一方の橋脚の横張の両端に対応する両端とを、ケーブルで弛みを持って、対角方向に互い交差するように、または、橋軸方向に平行に、結合することを特徴とする高架橋の倒壊防止構造である。よって、橋脚の倒壊した場合のみケーブルが緊張し、橋脚の倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を、ケーブルで支えることにより防止する。よって、高架橋の全体倒壊防止をする効果がある。
発明4は、ケーブルの長さは、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出した値以上、倒壊点に発生している変位より算出した長さを超えない値である高架橋の倒壊防止構造である。よって、発明1乃至発明3の何れかに記載の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、この範囲のケーブル長さで橋脚の倒壊を防止する効果がある。
ここで、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出したケーブルが、強度を最も小さく設計できる。よって、ケーブルの質量も最小にできるので、地震時における動特性を変化させない効果がある。即ち、初期のケーブルの弛みは倒壊挙動が生じる直前までケーブルに地震力がなるべく作用しないようにすることができる。これは、倒壊前にケーブルに地震力が作用することで高架橋が複雑な挙動をするのを防ぐ目的と、地震力によりケーブルが損傷することを防ぐことができる。
発明5は、ケーブルの結合部にダンパーおよび/または弾性体を設置する高架橋の倒壊防止構造である。よって、発明1乃至発明4の何れかに記載の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、倒壊時の衝撃力を低減してケーブルに作用する衝撃力を低減する効果がある。
【0011】
以上、本発明に係る高架橋の倒壊防止構造によれば、橋脚が想定外の大地震により致命的な損傷を受け倒壊しようとする場合、橋脚の横梁の両側に設置したブラケットに弛みを持たせたケーブル(PCケーブルなど)の一端を締結し,他端を適切なアンカーに定着することにより、高架橋の全体倒壊を防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】高架橋の側面図を示す。
【図2】第1実施形態の高架橋の倒壊防止構造を、図1のIa方向からの模式図で示す。
【図3】図2のIb方向から見た側面図を示す。
【図4】ケーブルの横梁およびアンカーの締結部におけるダンパーおよび/または弾性体を設置した構造の実施例に示す。(a)は、ダンパーを設置した構造の例。(b)は、弾性体を設置した構造の実施例。(c)は、ダンパーおよび弾性体を設置した構造の実施例である。
【図5】第1実施形態の効果を模式的に示した図である。
【図6】第2実施形態の構造を模式的に示した図1のIa方向から見た図である。
【図7】第3実施形態の構造を模式的に示した図1の方向から見た図である。
【図8】第3実施形態の動作を模式的に示した図である。
【図9】第4実施形態の構造を模式的に示した斜視図である。
【図10】同、斜視図である。
【図11】同、斜視図である。
【図12】加振実験の供試体とシミュレーションで用いたモデルを示す。
【図13】第1実施形態の立体交差部への適用イメージ
【図14】第1実施形態の倒壊防止構造の解析モデル
【図15】第1実施形態の変形時の形状
【図16】ケーブルの長さの計算方法
【図17】第1実施形態の橋脚の倒壊モードと倒壊防止作用開始点を示す。(a)橋脚の倒壊モード、(b)倒壊モードの変位と荷重の関係における倒壊防止作用開始点を示す。
【図18】倒壊防止構造の諸元と倒壊防止時の状況
【図19】橋脚頂部の変位の動的解析結果
【図20】ケーブルの張力の動的解析結果
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0014】
図1は、高架橋の側面図である。
高架橋は上部構造1と下部構造の橋脚2a,2b,2c,2dによって構成されている。
本発明に係る高架橋の倒壊防止構造を、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態により、以下に説明する。

【0015】
(第1実施形態)
図2に、複数ある橋脚の中で橋脚2bが地震時に最も損傷を受けるとしたとき、橋脚2bに第1実施形態の倒壊防止構造を模式図に示す。図2は、図1のIa方向から見ている。上部構造1については、断面図に該当する。

【0016】
図3は、図2においてIb方向から見た側面図である。
第1実施形態では、図2に示すように、橋脚2bの横梁3の両側に設置したブラケット4にケーブル5を締結させ、それを左右に広がるように垂らし、ケーブル5のもう一方の端を地面に埋め込んだアンカー6の上端のブラケット7に定着させる。
アンカー6の位置は、ケーブル5を締結したブラケット4のある横梁3の同じ方向の外側に位置する。橋脚2bが、図2の左右のいずれかの方向に倒壊したとき、その反対側のケーブル5が緊張して橋脚2bを支える。これにより、倒壊した橋脚2bによる荷重を分担させ、橋脚2a,2b,2c,2dの倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を防止する。

【0017】
また、橋脚間の上部構造1、橋脚2bは、荷重が1000トン以上ある。
よって、ケーブル5は、PCケーブル(特許文献1参照)または鋼製のチェーン(特許文献2参照)など十分強度があり、弛みを持たせて施工できる物が良い。

【0018】
なお、必要に応じて衝撃力低減のために図4(a)のようにダンパー14または図4(b)のように弾性体70をケーブル5端とアンカー6側ブラケット7間あるいはケーブル5端と橋脚3側ブラケット4間に設置する。ダンパー14または弾性体70は倒壊時の衝撃力を低減してケーブルに作用する衝撃力を低減する効果がある。また、図4(c)のようにダンパー14と弾性体70は、合わせて設置しても良い。

【0019】
ケーブル5が高架橋の下部交通などの妨げにならないように、アンカー6は、ケーブル5を締結したブラケット4のある横梁3の同じ方向の外側に位置する歩道8などの道路幅方向の端部に設置される。ケーブル5には図2に示すように、弛みを持たせている。これは、常時や地震時において、ケーブル5に荷重が作用して、倒壊挙動が生じる以前に、高架橋の応答特性に変化やケーブル5の損傷が、生じないようにするためである。

【0020】
第1実施形態のケーブル5による倒壊防止構造は、耐震構造とは異なるものであり、本来の高架橋の耐震性能を変化さたり、倒壊挙動が生じる前に損傷することがあってはならない。
よって、橋脚間の上部構造1、橋脚2bは、荷重が1000トン以上あるが、動特性に影響がでないようにするため、ケーブル5の荷重を橋脚間の上部構造1と橋脚2b荷重に対して5%程度とすることができる。

【0021】
高架橋下の道路は車道9と歩道8などによって形成されるが、ケーブル5は高架橋下の車両空間10を侵さないように配慮する必要がある。
図2に示すように、アンカー6の上端のブラケット7に支柱11を立て、支柱11にてケーブル5を支え、ケーブル5の弛みを規制すれば、車道9の常時の車両空間10を確保することができる。

【0022】
この支柱11は、倒壊防止構造が機能する段階において、ケーブル5が正常に機能するようにしておく。よって、支柱11の強度はケーブル5の荷重を支える程度のもので良い。例えば、木製であっでも良いし、塩化ビニールなど樹脂製のパイプとして中空の内部にケーブル5を通す構造でも良い。よって、ケーブル5の支柱11は、ケーブル5が緊張により容易に壊れるので、ケーブル5を傷つけることが無い。

【0023】
前述したように、必要に応じて衝撃力低減のためのダンパー14および/または弾性体70をケーブル5の定着端とブラケット7間に設置する。

【0024】
図4に、ケーブル5の横梁3およびアンカー6の締結部におけるダンパー14および/または弾性体70を設置した構造の実施を示す。
図4(a)は、ダンパーのみを設置した構造の例である。倒壊時にケーブル5に作用する引張力12は、支圧板13を介してダンパー14に伝達される。ダンパー14は支圧板13が反力板15に接触して支持されるまでの変位に対してエネルギを吸収することにより、倒壊時の衝撃力を吸収する。反力板15は中央に孔が設けられており、ケーブルが貫通している。
図4(b)に、ケーブル5の横梁3およびアンカー6の締結部における弾性体70を設置した構造の実施例に示す。倒壊時にケーブル5に作用する引張力12によりケーブル端部と反力板15の間に設置された弾性体70に圧縮力が作用する.この圧縮力により弾性体70が縮むことで倒壊時の衝撃力を吸収する。
図4(c)に, ケーブル5の横梁3およびアンカー6の締結部におけるダンパー14および弾性体70を併用した実施例を示す。倒壊時にケーブル5に作用する引張力12は、ケーブル端部と支圧板13間に設置された弾性体70と支圧板13を介してダンパー14に伝達される。このときダンパー14での倒壊時の衝撃力の吸収とともに、弾性体70に圧縮力が作用し、この圧縮力により弾性体70が縮むことで倒壊時の衝撃力を吸収する。

【0025】
図5は、第1実施形態における効果を模式的に示した図である。想定外の大地震によって橋脚2bの基部が損傷し耐力が喪失した場合、橋脚2bはそのまま自重によって倒壊していく。図5に示すように、橋脚2bが右側に倒壊した場合、左側のケーブル5が緊張することによって、荷重を分担し、橋脚の倒壊挙動を抑止する。反対に、橋脚2bが左側に倒壊した場合、右側のケーブル5が緊張することによって、荷重を分担し、橋脚の倒壊挙動を抑止する。
よって、アンカー6の位置は、ケーブル5を取り付けた横梁3の端部に対して、橋脚2bの反対側にある。ケーブル5が緊張のより橋脚2bの倒壊を防止するからである。

【0026】
また、橋脚間の上部構造1、橋脚2bは、荷重が1000トン以上ある。従って、ブラケット4及び7は十分強度のある材料、構造を用いる。加えて、アンカー6は、地中に鉄筋やコンクリート等を用いて施工し、橋脚間の上部構造1、橋脚2bの倒壊により破損したり引き抜かれたりすることが無いようにする。
以上より、橋脚の倒壊を起点とした連鎖的な高架橋全体の倒壊を防止することができる。

【0027】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の構造を模式的に示した図である。図6は、図1のIa方向から見た断面図に該当する。

【0028】
橋脚2bの横梁3の両側と橋脚の左右に存在する建築構造物16のアンカー61に鋼製ブラケット17を設置して、その間にケーブル18を設置することにより、橋脚を固定することが第2実施形態の大きな特徴である。第2実施形態の場合,橋脚の倒壊を防止するために必要な力は小さくなるのでケーブル18の断面積やブラケット17とアンカー61の構造は第1実施形態よりも小さくすることが可能である。
即ち、第1実施形態は、図5で示すように橋脚2bの下部が壊れ、右側へ倒壊した場合、ゲーブル5、ブラケット4、アンカー6には、モーメントとして、右側へ倒壊する荷重に高さHを乗じた力が加わる。高さHは、アンカー6から横梁3のブラケット4までの鉛直高さである。一方、第2実施形態は、図6で示すように橋脚2bの下部が壊れ、右側へ倒壊した場合、ゲーブル18、ブラケット7、アンカー61には、右側へ倒壊する荷重のみの力が加わる。アンカー61を地上より高さHの位置に設置したことにより、横梁3のブラケット7の設置位置となって、モーメントが働かないからである。
よって、アンカー61の位置は、ケーブル5を締結したブラケット4のある横梁3の同じ方向の外側に位置する。ケーブル5が緊張により橋脚2bの倒壊を防止するからである。

【0029】
このとき、第1実施形態と同様に、常時や地震時における高架橋の応答特性に直接的影響を及ぼさないように、ケーブル18には弛みを持たせてある。
また、必要に応じて衝撃力低減のためのダンパーまたは/および弾性体をケーブル18端とブラケット17間に設置することができる。

【0030】
本例では第1実施形態のように、建設に手間がかかるアンカーの設置が、既存の建築構造物16のアンカー61が利用できるので、不要という利点がある。この際、アンカー61は、橋脚間の上部構造1、橋脚2bの倒壊により破損したり引き抜かれたりすることが無いように十分強度を要する。

【0031】
以上、第1実施形態および第2実施形態より、以下の作用および効果がある。
発明1は、橋脚2bと横梁3を有する高架橋において、横梁3の両端に、それぞれケーブル5またはケーブル18の一方を固定し、ケーブル5またはケーブル18の他方を、横梁3の同じ方向の外側に位置するアンカー6またはアンカー61に、それぞれ弛ませて固定する。よって、橋脚2bの倒壊した場合のみケーブル5またはケーブル18が緊張し、橋脚2bの倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を、ケーブル5またはケーブル18で支えることにより防止する。高架橋の全体倒壊防止をする効果がある。
発明4は、ケーブル5の長さは、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出した値以上、倒壊点に発生している変位より算出した長さを超えない値である高架橋の倒壊防止構造である。よって、発明1乃至発明3の何れかに記載の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、この範囲のケーブル長さで橋脚の倒壊を防止する効果がある。
ここで、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出したケーブルが、強度を最も小さく設計できる。よって、ケーブルの質量も最小にできるので、地震時における動特性を変化させない効果がある。即ち、初期のケーブルの弛みは倒壊挙動が生じる直前までケーブルに地震力がなるべく作用しないようにすることができる。これは、倒壊前にケーブルに地震力が作用することで高架橋が複雑な挙動をするのを防ぐ目的と、地震力によりケーブルが損傷することを防ぐことができる。
発明5は、ケーブル5またはケーブル18の結合部にダンパー14および/または弾性体70を設置する高架橋の倒壊防止構造である。発明1の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、倒壊時の衝撃力を低減してケーブル5またはケーブル18に作用する衝撃力を低減する効果がある。

【0032】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の構造を模式的に示した図である。図7は図2のIb方向から見た図に対応する。第3実施形態と第1実施形態の違いは、図3と対比するとよくわかるが、橋軸方向にもケーブル5を2本配置する点である。

【0033】
図8は第3実施形態における動作を模式的に示した図であるが、橋脚2bが右側に倒壊した場合、左側のケーブル5が緊張することで橋軸方向の橋脚の倒壊を抑止していることが確認できる。
よって、アンカー6は、前記横梁に対応する橋脚に対して橋軸方向の両側の位置に施工する。

【0034】
必要に応じて、衝撃力低減のためのダンパー14および/または弾性体70をケーブル5の端とブラケット4または7間に設置する。

【0035】
以上、第3実施形態より、以下の作用および効果がある。
発明2は、横梁3の両端部にそれぞれ2本のケーブル5を取付け、橋脚2bに対して橋軸方向の両側に設置したアンカー62に、2本のケーブル5の他端を、それぞれ弛ませて固定する発明1に記載する高架橋の倒壊防止構造である。よって、橋脚2bが橋軸方向に倒壊した場合、一方のケーブル5で支えることにより、橋脚の橋軸方向に倒壊を抑止する効果がある。
発明4は、ケーブル5の長さは、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出した値以上、倒壊点に発生している変位より算出した長さを超えない値である高架橋の倒壊防止構造である。よって、発明1乃至発明3の何れかに記載の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、この範囲のケーブル長さで橋脚の倒壊を防止する効果がある。
ここで、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出したケーブルが、強度を最も小さく設計できる。よって、ケーブルの質量も最小にできるので、地震時における動特性を変化させない効果がある。即ち、初期のケーブルの弛みは倒壊挙動が生じる直前までケーブルに地震力がなるべく作用しないようにすることができる。これは、倒壊前にケーブルに地震力が作用することで高架橋が複雑な挙動をするのを防ぐ目的と、地震力によりケーブルが損傷することを防ぐことができる。
発明5は、ケーブル5の結合部にダンパー14および/または弾性体70を設置する高架橋の倒壊防止構造である。発明2の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、倒壊時の衝撃力を低減してケーブル5に作用する衝撃力を低減する効果がある。

【0036】
(第4実施形態)
図9は、倒壊を防止する橋脚(当該橋脚19a)に隣接する十分強度の高い橋脚19bを利用した倒壊防止構造である。

【0037】
この倒壊防止構造では、当該橋脚19aの横梁20a両端と、隣接する橋脚19bの横梁20b両端に設置するブラケット21を介して、ケーブル22で対角方向に互いに交差するように、斜めに弛みを持って締結する。

【0038】
なお、必要に応じて衝撃力低減のためのダンパー14および/または弾性体70をケーブル22端とブラケット21間に設置する。

【0039】
本例では、図10のように、隣接する橋台23を利用することも可能である。この場合、倒壊を防止する橋脚19aの横梁20aに設置したブラケット21と橋台前面に設置したブラケット27の間にケーブル22を設置する。ここで橋台23は、具体的には河川にかけた橋の場合、両側の岸部に相当する。橋台23へのケーブル22を取り付けるブラケット27の位置は、隣接する橋脚19aの横梁20a両端に取り付けたケーブル22を取り付けるブラケット21の位置と対応する高さ、幅とするのが良い。
この倒壊防止構造は橋軸方向の倒壊を主に防止するものであるが、ケーブル22を斜めに張ることにより、橋軸直角方向の倒壊にも有効に機能する。

【0040】
橋軸方向のみの倒壊の防止であれば、図11のように、ケーブル28を橋軸方向に平行に配置する。

【0041】
発明3は、隣接する橋脚19aおよび橋脚19bの、一方の橋脚19aの横梁20aの両端と、他方の橋脚19bの横梁20bの両端または橋台23の一方の橋脚19aの横張20aの両端に対応する両端とを、ケーブル22で弛みを持って、対角方向に互い交差するように、または、ケーブル28で弛みを持って橋軸方向に平行に結合する高架橋の倒壊防止構造である。よって、橋脚19aの倒壊した場合のみケーブル22またはケーブル28が緊張し、橋脚19aの倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を、ケーブル22またはケーブル28で支えることにより防止する。よって、高架橋の全体倒壊防止をする効果がある。
発明4は、ケーブル5の長さは、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出した値以上、倒壊点に発生している変位より算出した長さを超えない値である高架橋の倒壊防止構造である。よって、発明1乃至発明3の何れかに記載の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、この範囲のケーブル長さで橋脚2bの倒壊を防止する効果がある。
ここで、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出したケーブルが、強度を最も小さく設計できる。よって、ケーブルの質量も最小にできるので、地震時における動特性を変化させない効果がある。即ち、初期のケーブルの弛みは倒壊挙動が生じる直前までケーブルに地震力がなるべく作用しないようにすることができる。これは、倒壊前にケーブルに地震力が作用することで高架橋が複雑な挙動をするのを防ぐ目的と、地震力によりケーブルが損傷することを防ぐことができる。
発明5は、ケーブル22またはケーブル28の結合部にダンパー14および/または弾性体70を設置する高架橋の倒壊防止構造である。発明3の高架橋の倒壊防止構造に適用した場合、倒壊時の衝撃力を低減してケーブル22またはケーブル28に作用する衝撃力を低減する効果がある。

【0042】
(FEM解析によるシミュレーション)
第1実施形態について、倒壊防止の効果についてシミュレーションを行った。発明者等は別途論文発表する予定である。論文において、地震振動の入力波として、兵庫県南部地震にてJJR鷹取駅で観測されたRT観測波(直下型)並びにH25年に内閣府から提示された南海トラフ巨大地震の工学基盤波(海溝型)に基づく愛知県東部の地上波を用いて、橋脚2bについてFEM解析によるシミュレーションを行なった。シミュレーションでは、橋脚2bを、三曲面モデルを導入したシェル要素でモデル化し、上部構造1を集中質量と回転慣性要素で表し橋脚2bに剛性をもたせて結合した。
また、ケーブル5無しでのシミュレーションの結果を、ケーブル無しの橋脚について1/8スケールの模型による振動台を用いた加振実験を行って検証した。図12は、加振実験の供試体とシミュレーションで用いたモデルを示す。
検証の結果、倒壊時における橋脚基部の座屈変形の進展など、シミュレーションと実験とは良く一致した(詳細割愛)。
図13は、立体交差部への第1実施形態の倒壊防止構造の適用イメージを示す。本発明の倒壊防止構造は、このような立体交差などの重要な箇所で橋脚の補強が困難な場所への設置が可能である。なお、ケーブル5は橋脚2bの両側に設置されている(片側のみ図示)。

【0043】
図14は、図2をベースにした倒壊防止構造の解析モデルを示す。橋脚2bは、鋼製橋脚であり、板厚36mmの鋼板で、直径2500mmの円形断面、高さ(h)16334mmである。上部構造1の荷重は、高さ17584mmに、質量Mが1093000kgとした。ケーブル5は、上端を横梁3の端部にブラケット4を介して固定し、下端をアンカー6に、ブラケット7を介して固定した。また、ケーブル5とブラケットの間には、弾性体70を追加、または弾性体70を追加した場合もシミュレーションした。尚、ダンパー14は考慮しなかった。
弾性体70は、ケーブル5をアンカー6に直接固定すると倒壊時の衝撃によりケーブル5に過大な張力が作用するので、衝撃吸収の手段として用いた。ケーブルは常時は弛んだ状態にある。

【0044】
図15は、倒壊防止構造の変形時の形状を示す。図5に相当する状態である。橋脚2bが損傷するレベルの大きな地震が発生すると、橋脚2bの橋脚基部には、上部構造1の揺れによる応力が集中して損傷する。損傷が起こると橋脚2bは一方へ倒壊するが、倒壊の反対方向のケーブル5が引っ張られ緊張することで倒壊が防止される。即ち、ケーブルは常時は弛んだ状態にあり、耐震設計の許容限界を超える地震が発生した場合、一定の変位(作用開始点,図-17(b)参照)に達するとケーブルが緊張し倒壊を防止する。この際、倒壊側の橋脚基部には、座屈変形が発生している。ここで、地震振動の入力波は、想定外の地震を考慮してJRT NS波の1.5倍増幅波とする。

【0045】
図16に、ケーブル5の長さの計算方法を示す。図16(a)は、橋脚2bに地震による変位uが発生していない場合を示す。ケーブル5の長さL1は、横梁の端部のケーブル5を取り付けるブラケットの位置4からアンカー6(弾性体70、ダンパー14は省略)までの長さで、式(1)である。
L1=(b+h0.5 (1)
図16(b)に、橋脚2bに地震による変位uが発生している場合を示す。この場合のケーブル5の長さL2は、式(2)である。
L2=((b+u)+h0.5 (2)
よって、ケーブルの弛み長さは、L2-L1となる。

【0046】
図17は、第1実施形態の橋脚の倒壊モードと倒壊防止作用開始点を示す。図15(a)は橋脚の倒壊モード、図15(b)は倒壊モードにおける変位と荷重の関係における倒壊防止作用開始点を示す。
図17(a)の橋脚2bの倒壊モードは、倒壊防止構造の設計の考え方を示す。倒壊モードは、鉛直に立てられた柱の上部に、鉛直上方から一定荷重Pかかかった状態にて、上部に水平方向の力HとそのHによる変位uの関係を示す。水平変位の限界値までは力Hは増加する。この領域では、変位uと力Hは比例関係にあり、力学的に安定している。力Huは、力Hの最大値であり水平復元力の限界値である。ここで、水平変位が限界値を超えると、いわゆる座屈現象が発生し、変位uが増加すると共に力Hが減少する。力Hがゼロになるとその変位uで橋脚2bは倒壊している。座屈現象が発生している領域は不安定である。この不安定な領域が、本発明の倒壊防止構造の対象とする範囲である。これは、倒壊防止構造の設計と橋脚の耐震設計とは明確に分離できることを意味している。
図17(b)に、FEM解析によるシミュレーションにより求めた、倒壊モードにおける変位uと荷重Hの関係における倒壊防止作用開始点を示す。縦軸は荷重H、横軸は変位uである。uは、初期水平降伏変位、即ち弾性限G(荷重Hをゼロにすると変位δもゼロになる弾性領域)での変位である。Hmaxは、耐震設計での許容限界の荷重であり、その時の変位は、3.94uである。橋脚2bの上部の横梁3の揺れ変移が、3.94u以下(弾制限Gの変位u以上)の場合、橋脚2bの橋脚基部に座屈は発生しない。但し、橋脚2bに生じた変位は地震が終了しても、小さくはなるが残留変位として残る。
ここで、荷重Hmax、3/4Hmax、1/2Hmaxを基準とすると、変位は、3.94u0、7.65u0、11.40u0となる。これを、ケーブル5が緊張する作用開始点として検討した。図15に示す不安定領域の荷重Hが、耐震設計での許容限界(Hmax)から倒壊点(H=0)に向けて減少しているが、これは橋脚2bが有している強度が減少していることを示している。即ち、倒壊時とは、耐震設計での許容限界での変位以上の変位が発生した場合を指す。ここでは、耐震設計での許容限界での変位は、3.94uである。弾制限Gでの変位uの約4倍である。
また、弾性体70はね剛性は、作用応力が許容値を満足しケーブル断面積が最小となるように決定した。

【0047】
以上の条件にて、円形断面鋼製橋脚の崩壊特性とFEシェルモデルの倒壊解析を行った結果を図18、図19、図20に示す。
図18に、倒壊防止構造の諸元と倒壊防止時の状況を示す。ケーブル5に張力が作用する作用開始点の変位が小さいほど、ケーブル5の断面積は小さくなるとともに,倒壊が防止された状態での橋脚2bの傾斜も小さい。逆に、ケーブル5に張力が作用する作用開始点の変位が大きいほど、ケーブル5の断面積は大きくなるとともに,倒壊が防止された状態での橋脚2bの傾斜も大きい。よって、橋脚2bの傾斜が大きい程、ケーブル5の断面積が大きく、許容荷重も大きくなる。これは,倒壊防止装置の作用開始点変位が小さいと橋脚の水平変位が小さく、死荷重による倒壊モーメントも小さくなるためである。これは、図16よりケーブル5の許容荷重は565.0~1493.6kNであるので、橋脚に作用する上部構造1の質量Mの1093000kgによる死荷重10711kNの5.3~13.9%に過ぎない小さい力で橋脚の倒壊の防止が可能になることを示している。この時の橋脚の傾きは0.063~0.132である。
ケーブル5が、死荷重の5.3~13.9%の張力Tで、橋脚2bの倒壊の防止ができる理由を図15の橋脚基部O周りに発生するモーメントで説明する。反時計周りには、死荷重に距離R1を乗じたモーメントが発生する。一方、時計周りには、ケーブル5の張力Tに距離R2を乗じたモーメントが発生する。この2つのモーメントは釣り合っているが、ケーブル5の張力Tによる距離R2が死荷重Mによる距離R1よりも大きくすることができるからである。距離R2が距離R1より大きく取れるのは、発明1が、橋脚2bと横梁3を有する高架橋において、横梁3の両端に、それぞれケーブル5の一方を固定し、ケーブル5の他方を、横梁3の同じ方向の外側に位置するアンカー6にそれぞれ弛ませて固定し、橋脚2bの倒壊時のみに、ケーブル5が緊張することにより、橋脚2bの倒壊および付随して生じる高架橋の全体倒壊を防止することを特徴とする高架橋の倒壊防止構造だからである。発明2においても同様である。
また、ケーブル5の長さは、23.36~24.14mである。弛みの無い基準長は図13より23.1mであるので、ケーブル5の弛み長さは、0.26~1.04mとなる。 この弛み長さが、ケーブル5を弛ませている。
ここで、橋脚2bの倒壊防止をするための、横梁3の変位uは、図17bの耐震設計でも許容限界の3.94以上、倒壊点の変位を超えない値であれば良い。したがって、ケーブル5の長さは、耐震設計での許容限界に発生している変位より算出した値以上、倒壊点に発生している変位より算出した長さを超えない値である。この範囲で橋脚2bの倒壊を防止する効果がある。
また、ケーブル5の強度は、耐震設計での許容限界で最小値、倒壊点の変位を超えない値で最大値をとる単調減少の関係になる。よって、ケーブル5は、耐震設計での許容限界を基準として、径年変化等を考慮して余裕をもたせて設計するのが良い。
加えて、ケーブルの質量を小さくすることで、地震時における動特性を変化させない効果がある。即ち、初期のケーブルの弛みは倒壊挙動が生じる直前までケーブルに地震力がなるべく作用しないようにすることができる。これは、倒壊前にケーブルに地震力が作用することで高架橋が複雑な挙動をするのを防ぐ目的と、地震力によりケーブルが損傷することを防ぐことができる。

【0048】
図19は、橋脚頂部の変位の動的解析結果を示す。作用開始点の変位は、7.65の場合である。横軸は時間(秒)、縦軸は変位である。パラメータは、(1)倒壊防止構造無し(ケーブル5および弾性体70無し)、(2)ケーブル5+弾性体70(バネ)、(3)ケーブル5のみの3つである。(1)倒壊防止構造無しにおいては、約10秒後に変位が大きくなり、耐震設計での許容限界を超えて、橋脚2bが倒壊する。一方、(2) ケーブル5+弾性体70、および(3)ケーブル5のみでは、変位が大きくなるが、約10秒後には耐震設計での許容限界以下で安定する。これはケーブル5により橋脚2bを支えていることを示している。また、(2)ケーブル5+弾性体70の変位は、弾性体70の変位により、(3)ケーブル5のみの変位より大きくなる。

【0049】
図20は、ケーブルの張力の動的解析結果を示す。作用開始点の変位は、7.65の場合である。横軸は時間(秒)、縦軸は張力である。パラメータは、(2)ケーブル5+弾性体70(バネ)、(3)ケーブル5のみの2つである。これによると、橋脚頂部変位が作用開始点に到達する5秒付近からケーブル5に張力が作用し始め,10秒すぎで張力がケーブル5の許容荷重にほぼ到達する。この時図17に示す変位の増大が止まっている。即ち、変位が耐震設計での許容限界以下、張力が許容荷重以下で安定するので、倒壊防止構造が適切に機能していることが確認できる。なお、弾性体70がない場合には、弾性体70の伸びがないために最大および残留変位は小さくなるものの、ケーブル5には許容荷重の約1.6倍の張力が一時的に作用しており、弾性体70が用いた方がより安全であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る高架橋の倒壊防止構造によれば、高架橋ばかりでなく、建築物にも転用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 上部構造
2a,2b,2c,2d,19a,19b, 橋脚
3,20a,20b 横梁
4,7,17,21,27 ブラケット
5,18,22,28 ケーブル
6,61,62 アンカー
8 歩道
9 車道
10 車両空間
11 支柱
12 引張力
13 支圧板
14 ダンパー
15 反力板
16 建築構造物
23 橋台
70 弾性体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
18
【図20】
19