TOP > 国内特許検索 > 液晶分子配向制御方法および液晶デバイス > 明細書

明細書 :液晶分子配向制御方法および液晶デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-083577 (P2017-083577A)
公開日 平成29年5月18日(2017.5.18)
発明の名称または考案の名称 液晶分子配向制御方法および液晶デバイス
国際特許分類 G02F   1/1337      (2006.01)
FI G02F 1/1337
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-210025 (P2015-210025)
出願日 平成27年10月26日(2015.10.26)
発明者または考案者 【氏名】小山 大介
【氏名】谷口 聡紀
【氏名】清水 裕貴
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2H290
Fターム 2H290AA33
2H290BF70
2H290BF81
要約 【課題】電界によらず液晶分子の配向を変化させることが可能な液晶分子配向制御方法および液晶デバイスを提供する。
【解決手段】液晶分子103aの配向を制御する液晶分子配向制御方法であって、配向膜104で挟まれた液晶材料103に、圧電材料102で発生させた超音波を伝搬させて当該超音波に応じた静圧を発生させることで、静圧の大きさに応じて液晶材料103を構成する液晶分子103aの配向を変化させる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
液晶分子の配向を制御する液晶分子配向制御方法であって、
配向膜で挟まれた液晶材料に、圧電材料で発生させた超音波を伝搬させて当該超音波に応じた静圧を発生させることで、前記静圧の大きさに応じて前記液晶材料を構成する液晶分子の配向を変化させる
ことを特徴とする液晶分子配向制御方法。
【請求項2】
前記液晶材料は、透明電極を介することなく上下一対の第1透明基板および第2透明基板に挟まれており、
前記圧電材料は、前記第1透明基板または前記第2透明基板の一方の基板に設けられており、
前記液晶材料、前記第1透明基板および前記第2透明基板の全体の共振周波数で前記圧電材料を電気的に駆動させて、前記共振周波数に応じた前記超音波を発生させ、当該超音波を前記液晶材料、前記第1透明基板および前記第2透明基板に伝搬させる
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶分子配向制御方法。
【請求項3】
前記圧電材料は、前記一方の基板の一方側に設けられた第1圧電材料と、前記一方の基板の他方側に設けられた第2圧電材料と、を含み、
前記第1圧電材料と前記第2圧電材料とで位相の異なる前記超音波を発生させる
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶分子配向制御方法。
【請求項4】
前記圧電材料は、表面に電極が形成された圧電基板であり、
前記液晶材料は、前記圧電基板の前記表面に設けられており、
前記電極の共振周波数で前記圧電基板を電気的に駆動させて、前記共振周波数に応じた前記超音波を発生させ、当該超音波を前記液晶材料に伝搬させる
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶分子配向制御方法。
【請求項5】
配向膜で挟まれた液晶材料と、
交流電圧が印加されると超音波を発生させ、前記超音波を前記液晶材料に伝搬させる圧電材料と、を備え、
前記液晶材料は、前記超音波が伝搬された状態において当該超音波に応じた静圧が生じ、前記超音波が伝搬された状態と前記超音波が伝搬されていない状態とで、液晶分子の配向が異なる
ことを特徴とする液晶デバイス。
【請求項6】
前記液晶材料を挟んで対向配置された第1透明基板および第2透明基板を備え、
前記液晶材料に電圧を印加するための透明電極を備えておらず、
前記圧電材料は、前記第1透明基板または前記第2透明基板の一方の基板に設けられており、前記超音波を前記液晶材料、前記第1透明基板および前記第2透明基板に伝搬させる
ことを特徴とする請求項5に記載の液晶デバイス。
【請求項7】
前記圧電材料は、表面に電極が形成された圧電基板であり、
前記液晶材料は、前記圧電基板の前記表面に設けられており、
前記圧電基板は、前記電極に交流電圧が印加されると前記超音波を発生させ、当該超音波を前記液晶材料に伝搬させる
ことを特徴とする請求項5に記載の液晶デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶分子配向制御方法および液晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶ディスプレイ等の液晶デバイスは、液晶材料(液晶層)を一対の配向膜、ガラス基板および透明電極で挟み込んだ構造になっている(例えば、特許文献1参照)。このような構造の液晶デバイスでは、外部から電界をかけることにより液晶材料を構成する液晶分子の配向を変化させて、液晶材料の透過光量を調節している。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2001-11452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の液晶デバイスでは、上記のとおり電界による配向制御を行っているので、配向変化の応答速度が液晶材料の物性(例えば、粘性)に依存する。このため、特許文献1に記載の液晶デバイスは、液晶材料の物性によっては応答速度の高速化が困難であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、電界によらず液晶分子の配向を変化させることが可能な液晶分子配向制御方法および液晶デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶分子配向制御方法は、
液晶分子の配向を制御する液晶分子配向制御方法であって、
配向膜で挟まれた液晶材料に、圧電材料で発生させた超音波を伝搬させて当該超音波に応じた静圧を発生させることで、前記静圧の大きさに応じて前記液晶材料を構成する液晶分子の配向を変化させることを特徴とする。
【0007】
上記液晶分子配向制御方法では、
前記液晶材料は、透明電極を介することなく上下一対の第1透明基板および第2透明基板に挟まれており、
前記圧電材料は、前記第1透明基板または前記第2透明基板の一方の基板に設けられており、
前記液晶材料、前記第1透明基板および前記第2透明基板の全体の共振周波数で前記圧電材料を電気的に駆動させて、前記共振周波数に応じた前記超音波を発生させ、当該超音波を前記液晶材料、前記第1透明基板および前記第2透明基板に伝搬させる。
【0008】
上記液晶分子配向制御方法では、
前記圧電材料は、前記一方の基板の一方側に設けられた第1圧電材料と、前記一方の基板の他方側に設けられた第2圧電材料と、を含み、
前記第1圧電材料と前記第2圧電材料とで位相の異なる前記超音波を発生させてもよい。
【0009】
上記液晶分子配向制御方法では、
前記圧電材料は、表面に電極が形成された圧電基板であり、
前記液晶材料は、前記圧電基板の前記表面に設けられており、
前記電極の共振周波数で前記圧電基板を電気的に駆動させて、前記共振周波数に応じた前記超音波を発生させ、当該超音波を前記液晶材料に伝搬させる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る液晶デバイスは、
配向膜で挟まれた液晶材料と、
交流電圧が印加されると超音波を発生させ、前記超音波を前記液晶材料に伝搬させる圧電材料と、を備え、
前記液晶材料は、前記超音波が伝搬された状態において当該超音波に応じた静圧が生じ、前記超音波が伝搬された状態と前記超音波が伝搬されていない状態とで、液晶分子の配向が異なることを特徴とする。
【0011】
上記液晶デバイスは、
前記液晶材料を挟んで対向配置された第1透明基板および第2透明基板を備え、
前記液晶材料に電圧を印加するための透明電極を備えておらず、
前記圧電材料は、前記第1透明基板または前記第2透明基板の一方の基板に設けられており、前記超音波を前記液晶材料、前記第1透明基板および前記第2透明基板に伝搬させるよう構成されている。
【0012】
上記液晶デバイスでは、
前記圧電材料は、表面に電極が形成された圧電基板であり、
前記液晶材料は、前記圧電基板の前記表面に設けられており、
前記圧電基板は、前記電極に交流電圧が印加されると前記超音波を発生させ、当該超音波を前記液晶材料に伝搬させるよう構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電界によらず液晶分子の配向を変化させることが可能な液晶分子配向制御方法および液晶デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は、本発明の第1実施形態に係る液晶デバイスを示す図である。(B)は、(A)のB枠内における拡大図である。
【図2】本発明における透過光分布の測定系を示す図である。
【図3】本発明における振動分布と透過光分布を示す図である。
【図4】本発明における交流電圧信号変化時の透過光分布を示す図である。
【図5】本発明における透過光の時間応答を示す図である。
【図6】(A)は、本発明の第2実施形態に係る液晶デバイスを示す図である。(B)は、(A)のB枠内における拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る液晶分子配向制御方法および液晶デバイスの実施形態について説明する。なお、第1実施形態では、図1のX軸方向を長さ方向とし、Y軸方向を幅方向とし、Z軸方向を厚み方向とする。第2実施形態では、図6のX軸方向を長さ方向とし、Y軸方向を幅方向とし、Z軸方向を厚み方向とする。

【0016】
[第1実施形態]
(液晶デバイス)
図1(A)および(B)に、本発明の第1実施形態に係る液晶デバイス100を示す。図1(A)に示すように、液晶デバイス100は、液晶セル101と、2つの圧電材料102とを備える。

【0017】
図1(B)に示すように、液晶セル101は、本発明の「液晶材料」相当する液晶層103と、上下1対の配向膜104と、第1透明基板105aと、第2透明基板105bとを備える。

【0018】
液晶層103は、液晶分子103aで構成されており、具体的には、誘電率異方性が負のネマティック液晶の液晶分子で構成されている。液晶層103は、厚みが5[μm]となるように上下1対の配向膜104で挟まれており、周囲がシール材(図示略)で封止されている。

【0019】
上下1対の配向膜104は、液晶分子103aのプレチルト角が90度となる垂直配向膜である。配向膜104は、ポリイミド系材料で構成されている。上下1対の配向膜104で液晶層103を挟み込むことにより、液晶層103の液晶分子103aは、デフォルト状態において、配向膜104に対して垂直に立ち上がった状態になる。

【0020】
第1透明基板105aおよび第2透明基板105bは、透明電極を介することなく、液晶層103および上下1対の配向膜104を挟み込んでいる。第1透明基板105aおよび第2透明基板105bは、ともに光を透過する透明なガラス基板で構成されている。第1透明基板105aは、長さが50[mm]、幅が10[mm]、厚みが1[mm]である。第2透明基板105bは、長さが30[mm]、幅が10[mm]、厚みが1[mm]である。液晶層103および上下1対の配向膜104は、長さが30[mm]以下である。第1透明基板105aの両端部(両端からの長さが10[mm]の部分)を除く中央部(長さが30[mm]の部分)に、液晶層103、上下1対の配向膜104および第2透明基板105bが設けられている。

【0021】
第1透明基板105aの両端部には、長さ方向において液晶層103および上下1対の配向膜104を挟むように、各1つの圧電材料102が設けられている。圧電材料102は、エポキシ樹脂により第1透明基板105aに固着されている。圧電材料102は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で構成された超音波振動子であり、長さが10[mm]、幅が10[mm]、厚みが1[mm]である。圧電材料102は、ある周波数の交流電圧信号が印加されると、その周波数に応じた超音波を発生させる。

【0022】
本実施形態では、圧電材料102に、液晶セル101全体の共振周波数をもった交流電圧信号を印加し、当該共振周波数に応じた超音波を発生させる。上記のとおり圧電材料102が第1透明基板105aに設けられているので、圧電材料102で発生した超音波は、第1透明基板105aを介して液晶層103に伝搬する。このとき、液晶セル101では、その長さ方向において超音波に応じた曲げ振動が発生する。液晶層103では、曲げ振動に応じた音響定在波が発生し、液晶層103の境界面に音響放射力(静圧)が働く。音響定在波の腹の部分、すなわち音響放射力の大きい部分は、液晶分子103aに働く力も大きくなるので、当該部分に存在する液晶分子103aの配向が変化する。

【0023】
結局、本実施形態に係る液晶デバイス100では、電界により液晶分子103aの配向を変化させるのではなく、超音波に応じた音響放射力(静圧)により、液晶分子103aの配向を強制的に変化させる。このため、本実施形態に係る液晶デバイス100によれば、電界による配向制御を行う液晶デバイスと比較して、配向変化に関する応答速度の高速化を実現できる可能性を持つ。

【0024】
さらに、本実施形態に係る液晶デバイス100では、上記のとおり電界による配向制御を行わないので、一般的な液晶デバイスで使用される透明電極が不要となる。透明電極にはレアメタルが使用されることが多いため、価格変動による高コスト化や資源枯渇による供給不足等の問題が生じるおそれがあるが、透明電極を備えていない本実施形態に係る液晶デバイス100では、上記の問題は生じない。

【0025】
(液晶分子配向制御方法)
次に、本発明の第1実施形態に係る液晶分子配向制御方法について説明する。

【0026】
本実施形態に係る液晶分子配向制御方法は、配向膜で挟まれた液晶材料に、圧電材料で発生させた超音波を伝搬させて当該超音波に応じた音響放射力(静圧)を発生させることで、液晶材料を構成する液晶分子の配向を変化させるものである。

【0027】
具体的には、まず、圧電材料で発生させた超音波を液晶材料に伝搬させるために、同一基板上に圧電材料と液晶材料を設けた液晶デバイスを作製するか、そのように作製された液晶デバイスを用意する。すなわち、液晶デバイス100を作製または用意する。

【0028】
次いで、圧電材料に所定の周波数の交流電圧信号を印加して、圧電材料で超音波を発生させる。上記周波数は、液晶材料に超音波に応じた静圧を発生させることが可能な周波数であれば良いが、液晶材料を含む液晶セル全体の共振周波数とすることが好ましい。すなわち、液晶デバイス100の場合、配向膜104で挟まれた液晶層103、第1透明基板105aおよび第2透明基板105bのそれぞれの共振周波数を合成した周波数の交流電圧信号を圧電材料102に印加し、圧電材料102で当該超音波を発生させることが好ましい。

【0029】
そして、必要に応じて、上記交流電圧信号を制御する。具体的には、交流電圧信号のピーク間電圧値Vppや周波数を変化させることで、音響放射力(静圧)を変化させることができ、その結果、液晶分子の配向を変化させることができる。

【0030】
液晶デバイス100を例に挙げると、圧電材料102に印加する交流電圧信号と、液晶層103で発生する音響定在波すなわち音響放射力(静圧)とは一定の関連性を有する。交流電圧信号のピーク間電圧値Vppが大きくなると、音響放射力(静圧)が大きくなり、液晶分子103aの配向変化が大きくなる。一方、交流電圧信号のピーク間電圧値Vppが小さくなると、音響放射力(静圧)が小さくなり、液晶分子103aの配向変化が小さくなる。

【0031】
液晶層103では、交流電圧信号の周波数に応じた音響定在波が発生し、音響定在波の腹の部分において音響放射力(静圧)が最大となり、音響定在波の節の部分において音響放射力(静圧)が最小となる。このため、交流電圧信号の周波数を変化させると、音響定在波の腹および節の位置がシフトして、音響放射力(静圧)の強度分布が変化する。その結果、液晶分子103aの配向も変化する。また、交流電圧信号の周波数を変化させる代わりに、一方の圧電材料102に印加する交流電圧信号の位相を、他方の圧電材料102に印加する交流電圧信号の位相に対してシフトさせても、音響定在波の腹および節の位置をシフトさせることができる。

【0032】
(評価実験)
次に、液晶デバイス100を用いた液晶分子配向制御方法の評価実験(第1~第3の評価実験)について説明する。各評価実験において共通する部分は、その説明を一部省略する。

【0033】
まず、第1の評価実験として、液晶セル101の透過光強度を測定し、その透過光分布と液晶セル101の振動分布との比較を行った。図2に、透過光強度を測定するための測定系を示す。

【0034】
同図に示すように、クロスニコルに配置した2枚の偏光板10a、10bで液晶セル101を挟み、圧電材料102に交流電圧信号を印加した状態で(交流電圧信号により圧電材料102を電気的に駆動させた状態で)、偏光板10a側に配置したレーザ光源20から液晶セル101の厚み方向(偏光板10aから偏光板10bに向かう方向)にレーザ光を照射し、偏光板10b側に配置した光検出器30で偏光板10a、10bおよび液晶セル101を透過したレーザ光(透過光)を検出した。レーザ光源20としては、波長が632.8[nm]のレーザ光を照射するHe-Neレーザを用いた。交流電圧信号としては、ピーク間電圧値Vppが10[V]、周波数が214[kHz]の信号(交流電圧)を印加した。また、一方の圧電材料102に印加する交流電圧信号の位相と、他方の圧電材料102に印加する交流電圧信号の位相とを、一致させた。

【0035】
図3に、振動分布と透過光分布との比較結果を示す。図3において、実線で示したものが透過光分布であり、破線で示したものが振動分布である。また、縦軸は振動(曲げ振動)および透過光の強度を示し、横軸は液晶セル101の長さ方向における距離を示している。なお、液晶セル101の中心を距離0[mm]としている。

【0036】
振動分布をみると、距離が0[mm]、5[mm]、10[mm]、15[mm]の近傍で振動強度が大きくなっており、距離が2.5[mm]、7.5[mm]、12.5[mm]の近傍で振動強度が小さくなっている。液晶層103では曲げ振動に応じた音響定在波が発生することから、距離が0[mm]、5[mm]、10[mm]、15[mm]の近傍では、音響放射力(静圧)が大きくなっており、距離が2.5[mm]、7.5[mm]、12.5[mm]の近傍では、音響放射力(静圧)が小さくなっていると考えることができる。

【0037】
透過光分布をみると、若干のズレはあるものの、透過光強度の増減に関して振動分布と同じ傾向がみられる。このことから、液晶分子103aの配向変化の度合いは、振動強度すなわち音響放射力(静圧)の大きさに関連していると考えることができる。具体的には、音響放射力(静圧)が大きくなるにつれて液晶分子103aの配向変化が大きくなり、透過光強度が大きくなる一方、音響放射力(静圧)が小さくなるにつれて液晶分子103aの配向変化が小さくなり、透過光強度が小さくなると考えることができる。

【0038】
なお、図示はしていないが、交流電圧信号を印加していない場合の透過光分布には、小さな振幅が現れていた。これは、液晶分子103aの配向が完全な垂直にはなっておらず、このために偏光板10a、10bによりカットオフされていない成分が存在していると考えられる。

【0039】
次いで、第2の評価実験として、図2の測定系において交流電圧信号の電圧値のみを変化させ、液晶セル101の透過光強度を測定した。具体的には、交流電圧信号のピーク間電圧値Vppが0[V]、5[V]、10[V]のときの透過光強度を測定した。その結果を図4に示す。図4において、縦軸は透過光強度を示し、横軸は液晶セル101の長さ方向における所定位置からの距離を示している。

【0040】
図4をみると、透過光強度の最大値は、交流電圧信号のピーク間電圧値Vppが大きい程、大きくなっている。例えば、距離が4[mm]の近傍では、交流電圧信号のピーク間電圧値Vppが10[V]のときの透過光強度は、ピーク間電圧値Vppが0[V]のときの透過光強度に対して、約720%増加している。このことから、交流電圧信号のピーク間電圧値Vppが大きくなると、液晶分子103aの配向変化も大きくなると考えることができる。

【0041】
最後に、第3の評価実験として、図2の測定系において透過光の時間応答の測定を行った。図5にその結果を示す。図5において、縦軸は透過光強度を示し、横軸は交流電圧信号が入力されてから経過した時間を示している。交流電圧信号としては、ピーク間電圧値Vppが10[V]、周波数が214[kHz]の信号(交流電圧)を印加した。

【0042】
図5に示すように、同図の時間応答曲線の時定数τは、16[ms]であった。また、応答時間(透過光強度が安定するまでの時間)は約60[ms]であった。

【0043】
[第2実施形態]
(液晶デバイス)
図6(A)および(B)に、本発明の第2実施形態に係る液晶デバイス200を示す。図6(A)に示すように、液晶デバイス200は、液晶セル201と、本発明の「圧電材料」に相当する圧電基板202とを備える。本実施形態では、液晶セル201が圧電基板202の上面に設けられている。

【0044】
図6(B)に示すように、液晶セル201は、本発明の「液晶材料」相当する液晶層203と、上下1対の配向膜204と、透明基板205とを備える。液晶セル201は、第1実施形態の液晶セル101と比較すると、大幅に小型化されている。液晶層203、配向膜204および透明基板205の各構成は、それぞれ第1実施形態の液晶層103、配向膜104および第2透明基板105bと同様である。例えば、液晶層203を構成する液晶分子203aは、誘電率異方性が負のネマティック液晶の液晶分子であり、デフォルト状態において配向膜204に対して垂直に立ち上がった状態になる。

【0045】
圧電基板202は、例えば弾性表面波(SAW)フィルタで構成されており、上面に櫛形電極(IDT)202a、202bが形成されている。圧電基板202は、少なくとも液晶セル201が設けられている部分が、光を透過させるべく透明になっている。圧電基板202では、櫛形電極202a、202bに、ある周波数(好ましくは、櫛形電極202a、202bの共振周波数)の交流電圧信号を印加すると、その周波数に応じた超音波が発生して櫛形電極202a、202b間を伝搬する。

【0046】
本実施形態では、圧電基板202の上面に液晶セル201が設けられているので、圧電基板202で発生した超音波は液晶セル201に伝搬する。このとき、液晶セル201では、その長さ方向において超音波に応じた曲げ振動が発生する。液晶層203では、曲げ振動に応じた音響定在波が発生し、液晶層203の境界面に音響放射力(静圧)が働く。音響定在波の腹の部分、すなわち音響放射力の大きい部分は、液晶分子203aに働く力も大きくなるので、当該部分に存在する液晶分子203aの配向が変化する。

【0047】
結局、本実施形態に係る液晶デバイス200では、電界により液晶分子203aの配向を変化させるのではなく、超音波に応じた音響放射力(静圧)により液晶分子203aの配向を強制的に変化させる。このため、本実施形態に係る液晶デバイス200によれば、配向変化に関する応答速度の高速化を実現できる可能性を持ち、しかも、一般的な液晶デバイスで使用される透明電極を不要とすることができる。

【0048】
さらに、本実施形態に係る液晶デバイス200では、圧電基板202の上面に液晶セル201を設けた構成を採用しているので、第1実施形態の液晶デバイス100と比較して、大幅な小型化を実現することができる。

【0049】
(液晶分子配向制御方法)
次に、本発明の第2実施形態に係る液晶分子配向制御方法について説明する。

【0050】
本実施形態に係る液晶分子配向制御方法は、第1実施形態と同様、配向膜で挟まれた液晶材料に、圧電材料で発生させた超音波を伝搬させて当該超音波に応じた音響放射力(静圧)を発生させることで、液晶材料を構成する液晶分子の配向を変化させるものである。

【0051】
具体的には、まず、圧電基板202で発生させた超音波を液晶層203に伝搬させるために、圧電基板202上に液晶層203を設けた液晶デバイス200を作製するか、そのように作製された液晶デバイス200を用意する。

【0052】
次いで、圧電基板202に所定の周波数(好ましくは、櫛形電極202a、202bの共振周波数)の交流電圧信号を印加して、圧電基板202で超音波を発生させる。そして、必要に応じて、上記交流電圧信号を制御する。具体的には、交流電圧信号のピーク間電圧値Vppや周波数を変化させることで、音響放射力(静圧)を変化させることができ、その結果、液晶分子203aの配向を変化させることができる。なお、超音波により液晶分子203aの配向が変化するメカニズムは、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。

【0053】
以上、本発明に係る液晶デバイスおよび液晶分子配向制御方法の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。

【0054】
[変形例]
第1実施形態において、液晶層103、配向膜104、第1透明基板105aおよび第2透明基板105bの構造、形状、寸法、材料等は、液晶層103に超音波に応じた音響放射力(静圧)を発生させることができるのであれば、適宜変更することができる。第2実施形態においても同様とする。例えば、液晶層103、203は、誘電率異方性が負のネマティック液晶以外の液晶分子で構成することができ、配向膜104、204は、垂直配向膜以外の配向膜で構成することができる。

【0055】
第1実施形態の圧電材料102は、その構造、形状、寸法、材料、数量、配置場所等を適宜変更することができる。第2実施形態の圧電基板202は、その構造、形状、寸法、材料、櫛形電極202a、202bの数量およびその配置等を適宜変更することができる。例えば、第1実施形態では、圧電材料102が1つであってもよいし、第2実施形態では、櫛形電極202aまたは櫛形電極202bのいずれか一方のみが設けられていてもよい。

【0056】
圧電材料102または圧電基板202に印加する交流電圧信号は、適宜変更することができる。例えば、高周波の交流電圧信号を印加することで、緻密な配向制御が可能となる。

【0057】
本発明に係る液晶デバイスは、可変焦点レンズや光スキャナ等の光デバイスも含む。
【符号の説明】
【0058】
100、200 液晶デバイス
101、201 液晶セル
102、202 圧電材料(圧電基板)
103、203 液晶層
103a、203a 液晶分子
104、204 配向膜
105a 第1透明基板
105b 第2透明基板
205 透明基板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5