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明細書 :断層構造の観測方法、観測装置、及びコンピュータプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-078632 (P2017-078632A)
公開日 平成29年4月27日(2017.4.27)
発明の名称または考案の名称 断層構造の観測方法、観測装置、及びコンピュータプログラム
国際特許分類 G01N  21/17        (2006.01)
G01B  11/06        (2006.01)
G01B  11/24        (2006.01)
H01L  21/66        (2006.01)
FI G01N 21/17 630
G01B 11/06 G
G01B 11/24 D
H01L 21/66 N
H01L 21/66 P
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2015-206611 (P2015-206611)
出願日 平成27年10月20日(2015.10.20)
発明者または考案者 【氏名】尾崎 信彦
【氏名】西 剛史
【氏名】杉本 喜正
【氏名】池田 直樹
出願人 【識別番号】504145283
【氏名又は名称】国立大学法人 和歌山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2F065
2G059
4M106
Fターム 2F065AA30
2F065BB02
2F065BB17
2F065CC19
2F065CC31
2F065DD04
2F065FF52
2F065GG02
2F065LL04
2F065LL12
2F065LL46
2F065LL68
2F065QQ23
2F065QQ25
2F065RR10
2F065UU05
2G059AA05
2G059BB10
2G059BB16
2G059EE02
2G059EE09
2G059EE12
2G059FF02
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059HH06
2G059JJ02
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059JJ22
2G059LL01
2G059MM01
2G059MM10
4M106AA01
4M106BA04
4M106CA38
4M106CA48
4M106CA51
4M106DJ17
4M106DJ18
4M106DJ19
4M106DJ20
要約 【課題】光吸収層を有する断層構造を光コヒーレンストモグラフィによって観測する。
【解決手段】観測対象である断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する。観測対象30である断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する。断層構造に、光源から測定光を照射する。測定光が断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、断層構造の反射光プロファイルを生成する。反射光プロファイルと、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、を比較する。反射光プロファイルに最も合致する光伝搬シミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった模擬光吸収層の層厚を、観測対象30である断層構造が有する光吸収層の層厚として決定する。
【選択図】図3
特許請求の範囲 【請求項1】
観測対象である断層構造を光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、
光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する前記断層構造に、光源から測定光を照射するステップと、

前記測定光が前記断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、前記断層構造の反射光プロファイルを生成するステップと、
前記反射光プロファイルと、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、を比較するステップと、
前記反射光プロファイルに最も合致する光伝搬シミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった前記模擬光吸収層の層厚を、前記観測対象である前記断層構造が有する前記光吸収層の層厚として決定するステップと、
を含む観測方法。
【請求項2】
前記反射光プロファイルは、前記観測対象である前記断層構造の深さ方向における反射光強度分布を示す観測パターンを含み、
前記光伝搬シミュレーション結果は、前記模擬断層構造の深さ方向における反射光強度分布を示す予測パターンを含み、
前記比較するステップは、前記観測パターンと前記予測パターンとを比較することを含む
請求項1記載の観測方法。
【請求項3】
前記反射光プロファイルは、前記観測対象である前記断層構造が有する前記光吸収層の両界面間の観測光路長を含み、
前記光伝搬シミュレーション結果は、前記模擬光吸収層の両界面間の予測光路長を含み、
前記比較するステップは、前記観測光路長と前記予測光路長とを比較することを含む
請求項1又は2記載の観測方法。
【請求項4】
光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、
前記断層構造に光を照射する光源と、
前記断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号を処理する処理部と、
を備え、
前記断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、

前記処理部は、
前記検出信号に基づいて、前記断層構造の反射光プロファイルを生成すること、
前記反射光プロファイルと、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、を比較すること、
前記反射光プロファイルに最も合致する光伝搬シミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった前記模擬光吸収層の層厚を、前記観測対象である前記断層構造が有する前記光吸収層の層厚として決定すること、
を含む処理を実行するよう構成されている
観測装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項4記載の処理部として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項6】
少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、
観測対象である前記断層構造に、前記光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に含まない測定光を照射するステップと、
前記測定光が前記断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、前記断層構造が有する前記光吸収層の光路長を求めるステップと、
前記光路長と、前記光吸収層の屈折率と、に基づいて、前記光吸収層の層厚を決定するステップと、
を含む観測方法。
【請求項7】
光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、
前記断層構造に光を照射する光源と、
前記断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号を処理する処理部と、
を備え、
前記断層構造は、少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、
前記光源は、前記光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に含まない測定光を出力するよう構成され、
前記処理部は、
前記検出信号に基づいて、前記断層構造が有する前記光吸収層の光路長を求めること、
前記光路長と、前記光吸収層の屈折率と、に基づいて、前記光吸収層の層厚を決定すること、
を含む処理を実行するよう構成されている
観測装置。
【請求項8】
光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、
観測対象である前記断層構造に、前記光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を光源から照射するステップと、
前記測定光が前記断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、前記光吸収層の断層構造イメージを取得するステップと、
を含む観測方法。
【請求項9】
光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、
観測対象である前記断層構造に、光源から測定光を照射するステップと、
前記測定光が前記断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、前記光吸収層の断層構造イメージを取得するステップと、
を含み、
前記光吸収層の断層構造イメージを取得するステップは、前記光吸収層の両界面間の光路長に基づいて前記光吸収層の層厚を求め、前記断層構造イメージにおける前記光吸収層の膜厚を、求めた膜厚にすることを含む
観測方法。
【請求項10】
光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、
前記断層構造に光を照射する光源と、
前記断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号を処理する処理部と、
を備え、
前記断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、
前記光源は、前記光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を出力するよう構成され、
前記処理部は、前記検出信号に基づいて、前記光吸収層の断層構造イメージを取得すること、を含む処理を実行するよう構成されている
観測装置。
【請求項11】
光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、
前記断層構造に光を照射する光源と、
前記断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号を処理する処理部と、
を備え、
前記断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、
前記処理部は、前記検出信号に基づいて、前記光吸収層の断層構造イメージを取得すること、を含む処理を実行するよう構成され、
前記光吸収層の断層構造イメージを取得することは、前記光吸収層の両界面間の光路長に基づいて前記光吸収層の層厚を求め、前記断層構造イメージにおける前記光吸収層の膜厚を、求めた膜厚にすることを含む
観測装置。
【請求項12】
コンピュータを、請求項10又は請求項11の処理部として機能させるためのコンピュータプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、断層構造の観測方法、観測装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、可視光源を用いた光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence. Tomography;OCT)によって、半導体基板表面に塗布された透明レジスト薄膜の層厚測定及び断層イメージングを取得することを開示している。OCTを用いることで、透明レジスト薄膜を非破壊・非接触で観測することができる。
【0003】
OCTでは、層厚は光路長として得られる。光路長とは、実際の層厚に、層の材質における屈折率を乗じたものに相当する。したがって、レジスト薄膜の実際の層厚を求めるには、OCTで得られた透明レジスト薄膜の両界面間の光路長を、レジスト薄膜の屈折率で除すればよい。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】西剛史,尾崎信彦,大里啓孝,渡辺英一郎,池田直樹,杉本 喜正、「可視光広帯域光源を用いたμm-OCTの半導体微細加工プロセスへの応用」、第62回応用物理学会春季学術講演会、公益社団法人応用物理学会、2015年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の透明レジスト薄膜の下にある半導体基板は、不透明であり、半導体基板内部の断層構造の観測には、OCTは不適であると考えられていた。しかし、本発明者らは、OCTは、半導体基板表面に塗布された透明レジスト薄膜だけでなく、透明レジスト薄膜の下にある不透明な半導体層の観測も可能であることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の観点からみた本発明は、断層構造を光コヒーレンストモグラフィ(OCT)により観測する観測方法である。観測対象である断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する。かかる断層構造に光源から測定光が照射される。光源スペクトルは広帯域であるのが好ましい。光吸収物質内では、照射された光の少なくとも一部の波長の光が吸収されるため、照射された光が光吸収物質中を進行するにつれて光のスペクトルが変化する。光のスペクトルが変化すると、光吸収物質の分散特性によりその光に対する屈折率も変化する。また、光の吸収量は、物質内の光の進行距離に応じて大きくなるため、屈折率変化も光の進行距離に応じて変化することになる。この結果、光吸収物質からなる光吸収層の層厚は、光路長を単一の屈折率で除して求めることが困難になり、何らかの方法で屈折率変化を考慮した光吸収層内の光路長と実際の膜厚との関係を導く必要がある。
【0007】
そこで、本発明での観測方法は、測定光が断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、断層構造の反射光プロファイルを生成するステップと、反射光プロファイルと、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、を比較するステップと、反射光プロファイルに最も合致する光伝搬シミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった模擬光吸収層の層厚を、観測対象である断層構造が有する光吸収層の層厚として決定するステップと、を含むことにより、断層構造の反射光プロファイルと、模擬断層構造における光伝搬シミュレーション結果と、の比較によって、容易に光吸収層の層厚を決定できる。上記の観測方法は、光吸収層において測定光の吸収が生じていても生じていなくても適用可能である。
【0008】
なお、測定光は、光吸収物質により吸収されない波長の光を含むのが好ましいが、光吸収層が薄いために吸収される波長においても吸収されずに残って反射光が得られる場合には、測定光は、光吸収物質により吸収される波長の光だけであってもよい。例えば、光吸収物質が可視光を吸収する場合において、光吸収層が十分に薄ければ、測定光は可視光であってもよい。
【0009】
他の観点からみた本発明は、光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置である。観測装置は、断層構造に光を照射する光源と、断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、検出信号を処理する処理部と、を備える。断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する。
【0010】
処理部は、前記検出信号に基づいて、前記断層構造の反射光プロファイルを生成すること、前記反射光プロファイルと、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、を比較すること、前記反射光プロファイルに最も合致する光伝搬シミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった前記模擬光吸収層の層厚を、前記観測対象である前記断層構造が有する前記光吸収層の層厚として決定すること、を含む処理を実行するよう構成されている。
【0011】
さらに他の観点からみた本発明は、コンピュータを上記の処理部として機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0012】
さらに他の観点からみた本発明は、観測対象である断層構造に、光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に含まない測定光を照射するものである。断層構造が光吸収層を有していても、測定光は吸収されないため、光のスペクトルの変化を防止できる。したがって、光吸収層の層厚の計算に、光吸収層の一定の屈折率を用いることができる。ここでの光吸収物質は、少なくとも一部の波長の光を吸収するものであり、例えば、可視光スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収するものである。光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に含まない測定光とは、光吸収物質により吸収される波長の光を全く含まないか、光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に無視できる程度しか含まないことをいう。光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に無視できる程度とは、例えば、光吸収物質により吸収される波長の光の強度が、測定光のピーク強度の10%以下であることをいう。また、一定の屈折率とは、光が伝搬する距離に依存して変化しない一定の屈折率の意である。光吸収層において測定光の吸収が生じると、一定の屈折率では光吸収層の層厚を計算できないが、光吸収層において測定光の吸収が生じないと、光吸収物質の材質に応じた一定の屈折率を用いて層厚を計算できる。
【0013】
さらに他の観点からみた本発明は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、観測対象である断層構造に、光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を光源から照射するステップと、測定光が断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得するステップと、を含む観測方法である。
【0014】
さらに他の観点からみた本発明は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、観測対象である断層構造に、光源から測定光を照射するステップと、測定光が断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得するステップと、を含み、光吸収層の断層構造イメージを取得するステップは、光吸収層の両界面間の光路長に基づいて光吸収層の層厚を求め、断層構造イメージにおける光吸収層の膜厚を、求めた膜厚にすることを含む観測方法である。
【0015】
さらに他の観点からみた本発明は、光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、断層構造に光を照射する光源と、断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、検出信号を処理する処理部と、を備え、断層構造は、少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、光源は、光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を出力するよう構成され、処理部は、検出信号に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得することを、を含む処理を実行するよう構成されている観測装置である。
【0016】
さらに他の観点からみた本発明は、光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、断層構造に光を照射する光源と、断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、検出信号を処理する処理部と、を備え、断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、処理部は、検出信号に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得すること、を含む処理を実行するよう構成され、光吸収層の断層構造イメージを取得することは、前記光吸収層の両界面間の光路長に基づいて前記光吸収層の層厚を求め、前記断層構造イメージにおける前記光吸収層の膜厚を、求めた膜厚にすることを含む観測装置である。
【0017】
さらに他の観点からみた本発明は、コンピュータを上記の処理部として機能させるためのコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】観測装置のブロック図である。
【図2】観測対象の断層構造と断層構造中を進行する光の説明図である。
【図3】観測手順を示すフローチャートである。
【図4】反射光強度分布図の観測パターンの例を示す図である。
【図5】シミュレーション結果テーブルの説明図である。
【図6】観察対象の2次元断層イメージである。
【図7】観測対象の光伝搬シミュレーション結果である。
【図8】観測対象の光伝搬シミュレーション結果である。
【図9】観測対象の光伝搬シミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1.実施形態の概要]

【0020】
(1)実施形態に係る観測方法は、観測対象である断層構造を光コヒーレンストモグラフィ(OCT)により観測する方法である。OCTは、例えば、Spectral Domain(SD)-OCT,Time Domain(TD)-OCT,Swept Source(SS)-OCTのいずれでもよい。

【0021】
観測対象である断層構造は、例えば、半導体デバイスの断層構造である。観測対象となる半導体デバイスは完成品であってもよいし、製造プロセス中の未完成品であってもよい。半導体デバイスは、例えば、発光デバイスとして用いられる半導体デバイスである。断層構造は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。断層構造は、光吸収層を有する。断層構造に含まれる光吸収層は、一つでもよいし、複数でもよい。断層構造は、光を吸収しない層を有していても良い。断層構造に含まれる層(光吸収層及び/又は光を吸収しない層を含む)は、物質定数(誘電率・透磁率)が一様であり、屈折率が一様な物質からなるのが好ましく、結晶物質、アモルファス物質、又は高分子物質などからなるものが好ましい。

【0022】
光吸収層は、少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる。光吸収物質は、例えば、半導体である。ここでの光は、可視光を含むほか、紫外線及び赤外線を含んでも良い。光吸収層が光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる場合には、光吸収層において測定光の吸収が生じる。光吸収物質は、例えば、可視光スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する物質であってもよい。また、光吸収物質は、例えば、可視光の少なくとも一部の波長の光を吸収するバンドギャップエネルギーを有する物質であってもよい。半導体はバンドギャップを有するため、多くの半導体は、可視光の少なくとも一部の波長の光を吸収する。


【0023】
「バンドギャップエネルギー」とは、半導体などの結晶構造体における、価電子帯から伝導帯までのエネルギー差である。「光を吸収するバンドギャップエネルギー」とは、光のエネルギー以下のバンドギャップエネルギーである。「可視光の少なくとも一部の波長の光を吸収する」とは、可視光の波長域における全ての光を吸収すること、又は、可視光の波長域における一部の波長の光を吸収することである。

【0024】
可視光の波長域に相当する光のエネルギーは、約1.7[eV]~約3[eV]である。したがって、バンドギャップエネルギーが約3[eV]よりも小さい物質は、可視光の少なくとも一部の波長の光を吸収し、バンドギャップエネルギーが約1.7[eV]よりも小さい物質は、可視光の波長域における全ての光を吸収する。多くの半導体は、バンドギャップエネルギーが約3[eV]よりも小さく、可視光の少なくとも一部を吸収する。例えば、室温におけるガリウムヒ素(GaAs)のバンドギャップエネルギーは、1.42[eV]であり、室温におけるガリウムヒ素(GaAs)は、可視光の波長域における全ての光を吸収し、可視光が透過しない。

【0025】
実施形態に係る観測方法は、観測対象である断層構造に、光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を照射することを含んでも良い。測定光は、光吸収物質により吸収される波長の光を含んでもよい。可視光の一部を吸収する物質に対しては、広帯域な可視光を照射すれば、可視光における一部の波長の光は吸収されるが、残りの波長の光は吸収されない。可視光の波長域における全ての光を吸収するが赤外線を吸収しない物質に対しては、赤外線を含む可視光を照射すれば、可視光は吸収されても、赤外線は吸収されずに透過できる。

【0026】
測定光を広帯域な可視光にすると、OCTの光軸分解能を高くすることができる。OCTの光軸方向分解能をΔzとした場合、測定光は、Δzが1μmよりも小さい高分解能が得られるような、中心波長λ及び帯域幅Δλを有するのが好ましい。OCTの光軸方向分解能Δzは、Δz=0.44λ/Δλの式によって決まる。なお、この式において、帯域幅Δλは、半値全幅(FWHM)である。

【0027】
測定光のうち、光吸収物質により吸収されない波長の光は、断層構造中の光吸収層を透過し、光吸収層の界面において反射し、反射光となる。反射光と参照光との干渉光に基づいて、光吸収層の界面を含む断層構造の反射光プロファイルが生成される。また、測定光のうち、光吸収物質により吸収される波長の光も、光吸収により強度が減衰するものの、光吸収層が薄ければ、完全に吸収されず、反射光となることがある。

【0028】
実施形態に係る観測方法は、反射光プロファイルと、複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、を比較するステップを含む。光伝搬シミュレーションの対象となる複数の模擬断層構造は、それぞれ、観測対象の断層構造を模擬したものであり、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する。

【0029】
反射光プロファイルに最も合致する光伝搬シミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった模擬断層構造は、観察対象の断層構造に最も合致することになる。したがって、最も合致するシミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった模擬光吸収層の層厚を、観測対象である断層構造が有する光吸収層の層厚として決定することができる。

【0030】
(2)反射光プロファイルと、複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、の比較は、例えば、パターンの比較で行える。この場合、反射光プロファイルは、例えば、観測対象である断層構造の深さ方向における反射光強度分布を示す観測パターンを含み、光伝搬シミュレーション結果は、例えば、模擬断層構造の深さ方向における反射光強度分布を示す予測パターンを含むものとする。

【0031】
反射光強度分布の観測パターンと、光伝搬シミュレーションで予測した反射光強度分布を示す予測パターンと、をパターンマッチングなどの手法で比較することで、複数の予測パターンの中から、観測パターンに最も合致する予測パターンを抽出することができる。観測パターンに最も合致する予測パターンを得るためのシミュレーションの対象となった模擬断層構造における模擬光吸収層の層厚が、観測対象である断層構造が有する光吸収層の層厚として決定される。

【0032】
(3)反射光プロファイルと、複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果との比較は、パターンの比較に代えて又は加えて、光路長の比較を含んでも良い。この場合、反射光プロファイルは、観測対象である断層構造が有する光吸収層の両界面間の観測光路長を含み、光伝搬シミュレーション結果は、模擬光吸収層の両界面間の予測光路長を含むものとする。

【0033】
観測光路長と予測光路長とを比較することで、複数の予測光路長の中から、観測光路長に最も合致する予測光路長を抽出することができる。観測光路長に最も合致する予測光路長を得るためのシミュレーションの対象となった模擬断層構造における模擬光吸収層の層厚が、観測対象である断層構造が有する光吸収層の層厚として決定される。

【0034】
(4)実施形態に係る観測装置は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)により観測対象の断層構造を観測するためのものである。観測装置は、断層構造に光を照射する光源と、断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、検出信号を処理する処理部と、を備える。

【0035】
観測対象である断層構造は、光源スペクトル少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する。光源は、光吸収物質により吸収される波長の光及び光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を出力するよう構成されているのが好ましい。光源は、例えば、ハロゲンランプ、LED光源、又はSLD光源を有して構成される。

【0036】
処理部は、検出信号に基づいて、前記断層構造の反射光プロファイルを生成する。処理部は、反射光プロファイルと、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する複数の模擬断層構造における複数の光伝搬シミュレーション結果と、を比較する。処理部は、反射光プロファイルに最も合致する光伝搬シミュレーション結果を得るためのシミュレーションの対象となった模擬断層構造が有する模擬光吸収層の層厚を、観測対象である断層構造が有する光吸収層の層厚として決定する。

【0037】
(5)処理部は、例えば、CPU及びメモリを備えたコンピュータを有して構成される。コンピュータは、メモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、処理部としての機能を発揮することができる。コンピュータを処理部として機能させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができる。

【0038】
(6)他の実施形態に係る観測方法は、観測対象である断層構造に、前記光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に含まない測定光を照射することを含む。測定光が断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、断層構造が有する前記光吸収層の光路長を求め、光路長と光吸収層の屈折率とに基づいて、光吸収層の層厚を決定することができる。

【0039】
(7)他の実施形態に係る観測装置の光源は、前記光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に含まない測定光を出力するよう構成されている。処理部は、光吸収層の光路長を求める処理を実行する。処理部は、求めた光路長と光吸収層の屈折率とに基づいて、光吸収層の層厚を決定する処理を実行する。光源は、光吸収物質により吸収される波長の光を実質的に含まない光だけを出力する発光デバイスによって構成されていてもよいし、光吸収物質により吸収される波長の光を含む光を出力する発光デバイスと、発光デバイスから出力された光のうち光吸収物質により吸収される波長の光をカットするフィルタと、を有して構成されていてもよい。

【0040】
(8)実施形態に観測方法は、光源スペクトル少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、観測対象である断層構造に、光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を光源から照射するステップと、測定光が断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得するステップと、を含む観測方法であってもよい。断層構造イメージは、2次元イメージでもよいし、3次元イメージでもよい。

【0041】
(9)実施形態に係る観測方法は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有する断層構造を、光コヒーレンストモグラフィにより観測する方法であって、観測対象である断層構造に、光源から測定光を照射するステップと、測定光が断層構造から反射した反射光と参照光との干渉光に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得するステップと、を含み、光吸収層の断層構造イメージを取得するステップは、光吸収層の両界面間の光路長に基づいて光吸収層の層厚を求め、断層構造イメージにおける光吸収層の膜厚を、求めた膜厚にすることを含む観測方法であってもよい。この場合、膜厚をより正確に示す断層構造イメージが得られる。

【0042】
(10)実施形態に係る観測装置は、光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、断層構造に光を照射する光源と、断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、検出信号を処理する処理部と、を備え、断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、光源は、光吸収物質により吸収されない波長の光を含む測定光を出力するよう構成され、処理部は、検出信号に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得すること、を含む処理を実行するよう構成されている観測装置であってもよい。

【0043】
(11)実施形態に係る観測装置は、光コヒーレンストモグラフィにより観測対象の断層構造を観測する観測装置であって、断層構造に光を照射する光源と、断層構造からの反射光と参照光との干渉光を検出して検出信号を出力する検出部と、検出信号を処理する処理部と、を備え、断層構造は、光源スペクトルの少なくとも一部の波長の光を吸収する光吸収物質からなる光吸収層を有し、処理部は、検出信号に基づいて、光吸収層の断層構造イメージを取得すること、を含む処理を実行するよう構成され、光吸収層の断層構造イメージを取得することは、光吸収層の両界面間の光路長に基づいて光吸収層の層厚を求め、断層構造イメージにおける前記光吸収層の膜厚を、求めた膜厚にすることを含む観測装置であってもよい。

【0044】
(12)処理部は、前述のように、例えば、CPU及びメモリを備えたコンピュータを有して構成される。コンピュータは、メモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、処理部としての機能を発揮することができる。コンピュータを処理部として機能させるためのコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができる。

【0045】
[2.実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、実施形態の詳細に説明する。

【0046】
[2.1 第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る観測装置100を示している。観測装置100は、例えば、半導体デバイスの製造プロセス中、又は製造プロセス後において、観測対象30である半導体デバイスの断層構造を、非破壊・非接触で観測するために用いられる。観測対象30となる半導体デバイスは、例えば、光集積回路などの光デバイスである。

【0047】
図2(a)は、観測対象30とした光学デバイス用半導体基板の断面構造を示している。この観測対象30は、フォトレジストを塗布したAl0.35Ga0.65AS/GaAs基板である。Al0.35Ga0.65AS/GaAs基板は、フォトレジスト層31直下の層として、Al0.35Ga0.65AS層32を有し、さらにその下の層としてGaAs層33を有する。観測対象30の断層構造において、フォトレジスト層31の層厚はおよそ2μmであり、Al0.35Ga0.65AS層32の層厚はおよそ0.5μmである。観測装置30では、フォトレジスト層31及びAl0.35Ga0.65AS層33の層厚測定及び観測対象30の断層構造イメージングを行う。

【0048】
観測装置100は、SD-OCTとして構成されており、図1に示すように、光干渉計測部10と、処理部20と、を備えている。光干渉計測部10は、光源11と、レンズ12,13と、スプリッタ14と、参照ミラー15と、レンズ16と、検出部17と、を備えている。光源11は、ハロゲンランプによって構成されている。ハロゲンランプは、可視光広帯域の光を出力できる。ハロゲンランプは、中心波長λ:625nm、帯域幅Δλ(FWHM):260nm)の広帯域な可視光を出力するものを用いた。光源11が広帯域可視光を出力するため観測対象30の高分解観察が可能である。

【0049】
光干渉計測部10において、光源11から出力された光は、スプリッタ14によって、測定光と参照光とに分けられる。測定光は、観測対象30へ照射され、観測対象30からの反射光となる。参照光は、参照ミラー15によって反射され、反射光と合流する。反射光と参照光との合流によって、干渉光が生じる。干渉光(干渉信号)は、検出部17によって検出される。検出部17は、干渉光に対応する電気信号を検出信号として出力する。検出信号は、処理部20に与えられる。実施形態の検出部17は、スペクトロメータとして構成されており、干渉光スペクトルを検出信号として出力する。

【0050】
処理部20は、コンピュータを有して構成される、コンピュータは、処理部20としての機能をコンピュータに発揮させるためのコンピュータプログラムを実行することにより、処理部20としての機能を発揮する。処理部20は、検出信号に基づいて、観測対象の層厚測定及び断層イメージングの処理を行う。

【0051】
図3は、観測装置100を用いた観測手順を示している。まず、ステップS1において、光干渉計測部10によって、可視光広帯域光による光干渉計測が行われ、干渉光スペクトルが得られる。ステップS1において、光源11は、観察対象である半導体デバイスの断層構造へ測定光を照射する。検出部17は、干渉光に基づく検出信号(干渉光スペクトル)を出力し、処理部20に与える。

【0052】
ステップS2において、処理部20は、検出信号が示す干渉光スペクトルを波数領域に換算し、フーリエ変換を行うことで、観測対象30である断層構造の反射光プロファイルを生成する。反射光プロファイルは、例えば、光軸深さ方向の反射光強度プロファイルである。図4は、観測対象30の光軸深さ方向の反射光強度プロファイルを示している。このプロファイルは、横軸が深さを示し、縦軸が反射光の強度を示す反射光強度分布パターンである。以下、図4のパターンを、「観測パターン」という。なお、反射光プロファイルは、反射光に関する分析結果であれば足りる。

【0053】
図2(a)に示すように、観察対象30からの反射光は、観察対象30の第1界面30a、第2界面30b、及び第3界面30cにおいて生じる。すなわち、各界面30a,30b,30cが反射面となっている。なお、第1界面30aは、フォトレジスト層33の表面であり、第2界面30bは、フォトレジスト層31とAl0.35Ga0.65AS層32との界面であり、第3界面30cは、Al0.35Ga0.65AS層32とGaAs層33との界面である。なお、以下では、第1界面30aからの反射光を第1反射光といい、第2界面30bからの反射光を第2反射光といい、第3界面30bからの反射光を第3反射光という。

【0054】
図4に示す観測パターンでは、各界面30a,30b,30cに対応する深さ位置において反射光強度のピークが現れる。処理部20は、観測パターンにおける反射光強度のピークを検出することで、各界面30a,30b,30cの位置を検出することができる。

【0055】
図4の観測パターンでは、深さ約19μmの位置において第1ピークが生じており、これは第1界面30aからの第1反射光に相当する。同様に、深さ約23μmの位置において、第2ピークが生じており、これは第2界面30bからの第2反射光に相当する。同様に、深さ25μmから26μmの間の位置において、第3ピークが生じており、これは第3界面30cからの第3反射光に相当する。

【0056】
処理部20は、フォトレジスト層31の層厚を求めるため、図4の観測パターンに基づいて、第1ピークと第2ピークとの間隔を求める。図4の観測パターンでは、第1ピークと第2ピークとの距離は、3.77μmである。図4の観測パターンから求まる第1ピークと第2ピークとの距離は、フォトレジスト層31の光路長(第1界面30aから第2界面30bまでの光路長)であるため、この光路長をフォトレジスト層31の実際の層厚に換算する必要がある。

【0057】
フォトレジスト層31は、透明であり、光の吸収が生じないため、光路長から実際の層厚を求めるには、フォトレジスト層31の屈折率を用いればよい。具体的には、処理部20は、フォトレジスト層31の光路長3.77μmを、フォトレジスト層31の屈折率1.62で除算し、フォトレジスト層31の層厚は約2.33μmであると決定する。なお、フォトレジスト層31の屈折率1.62は、中心波長λ=625nmの光である場合の値である。

【0058】
処理部20は、第2ピークと第3ピークとの距離から、Al0.35Ga0.65AS層32の光路長(第2界面30bから第3界面30cまでの光路長)を求めることができる。図4の観測パターンでは、Al0.35Ga0.65AS層32の光路長は、2.54μmである。ただし、Al0.35Ga0.65AS層32は、可視光の大部分を吸収してしまう光吸収層であるため、単に屈折率を用いても、Al0.35Ga0.65AS層32の正確な層厚は得られない。

【0059】
ここで、Al0.35Ga0.65ASのバンドギャップエネルギーは、1.86[eV]であり、このバンドギャップエネルギー=1.86[eV]に相当する波長(光学吸収端)は667nmである。Al0.35Ga0.65ASは、667nm以下の光を吸収し、それ以上の光を吸収せず透過させる。このように、Al0.35Ga0.65ASは、可視光の波長域における大部分の光を吸収する不透明物質であり、Al0.35Ga0.65AS層32は、光吸収層である。

【0060】
Al0.35Ga0.65ASは、可視光の大部分を吸収するが、実施形態に係る光源11から出力される測定光は、広帯域の光であるため、図2(b)に示すように、Al0.35Ga0.65ASの光学吸収端である667nmよりも大きい波長の光も含んでいる。667nmよりも大きい波長の測定光は、Al0.35Ga0.65AS層32にて吸収されることなく、第3界面30cにて反射し、第3反射光となる。

【0061】
一方、667nmよりも小さい波長の測定光は、Al0.35Ga0.65AS層32にて吸収される。したがって、図2(c)に示すように、Al0.35Ga0.65AS層32中を進行中の測定光のスペクトルは、667nmよりも小さい波長域において光強度が減衰したものとなる。測定光の吸収は、Al0.35Ga0.65AS層32の通過中において徐々に生じるため、図2(c)に示すような光強度の減衰は、光の進行に応じて大きくなり、測定光のスペクトル(特に、光のピーク波長)は、Al0.35Ga0.65AS層32の通過中において変化する。この結果、層厚が未知である状態でAl0.35Ga0.65AS層32の屈折率を求めるのは困難である。

【0062】
なお、第2界面30bの位置xから第3界面30cの位置xまでの光路長Tは、以下の式によって表すことができる。
【数1】
JP2017078632A_000003t.gif
ここで、n(x)は、位置xから位置xまでの任意の位置における群屈折率であり、xは光軸深さ方向の位置である。層厚が未知である状態でAl0.35Ga0.65AS層32の屈折率を求めるのが困難であるのは、上記式からも明らかである。

【0063】
以上のように、Al0.35Ga0.65AS層32の層厚は、フォトレジスト層31の層厚と同様には求められない。そこで、本実施形態の処理部20は、Al0.35Ga0.65AS層32の層厚を求めるため、ステップS3において、反射光プロファイルと、光伝搬シミュレーション結果と、の比較を行う。

【0064】
光伝搬シミュレーションは、観測対象30の断層構造を模擬した模擬断層構造中の光の伝搬を予測するものである。この光伝搬シミュレーションでは、光源11から出力される計測光と同じ光(中心波長λ:625nm、帯域幅Δλ(FWHM):260nm)が、模擬断層構造に照射される。模擬断層構造は、観測対象30の断層構造と同様に、フォトレジスト層31を模擬した層、Al0.35Ga0.65AS層32を模擬した層、及び、GaAs層33を模擬した層を有する。光吸収層であるAl0.35Ga0.65AS層32を模擬した層は、模擬光吸収層である。

【0065】
光伝搬シミュレーションの際には、各模擬層の層厚は、所定の値に設定される。例えば、フォトレジスト層31を模擬した層の層厚は、2μmに設定され、Al0.35Ga0.65AS層32を模擬した層の層厚は、500nmに設定される。光伝搬シミュレーションは、Al0.35Ga0.65AS層32を模擬した模擬光吸収層の層厚を変えて、複数回行われる。すなわち、光伝搬シミュレーションの対象となる模擬断層構造は、複数であり、複数の模擬断層構造は、それぞれが異なる層厚の模擬光吸収層を有する。複数回の光伝搬シミュレーションの際には、模擬光吸収層の層厚は、例えば、10nmずつ変えて行われる。

【0066】
光伝搬シミュレーションは、例えば、時間領域差分法(FDTD法)を用いた電磁場解析により行われる。複数の模擬断層構造それぞれに対する光伝搬シミュレーションにより、複数の模擬断層構造それぞれについての複数の光伝搬シミュレーション結果が得られる。

【0067】
光伝搬シミュレーションによって、模擬断層構造の深さ方向における反射光強度分布を示す予測パターンを光伝搬シミュレーション結果として得ることができる。予測パターンは、既知の層厚の光吸収層を有する断層構造をOCTによって観測した場合に得られる反射光強度分布(観測パターン)の予測である。各界面30a,30b,30cからの反射光強度は、各層31,32,33の材質及び層厚によって決まるため、各界面30a,30b,20cからの反射光強度は、界面30a,30b,30c毎に異なる。このため、反射光強度分布は、各層の層厚に応じた特有のパターンとなる。したがって、層厚が既知である光吸収層を有する断層構造について、光伝搬シミュレーションを行って、断層構造深さ方向における反射光強度分布の予測パターンを得ると、その予測パターンから、各界面からの反射光が、反射光強度分布のどの深さ位置においてどの程度の強度で生じるかを予測できる。したがって、実際に観測した反射光強度分布(観測パターン)と予測パターンとを対比することで、各界面(特に第3界面30c)からの反射光による強度ピークの特定が容易となる。

【0068】
処理部20は、処理部20が有するメモリに、図5に示すシミュレーション結果テーブル21を記憶している。図5のテーブル21では、複数の光伝搬シミュレーション結果としての複数の予測パターンと、各予測パターンを得るための光伝搬シミュレーションの対象となった模擬断層構造におけるAl0.35Ga0.65AS層(模擬光吸収層)の層厚と、が対応付けられている。

【0069】
処理部20は、テーブル21に格納された複数の予測パターンそれぞれと、観測パターンと、の比較を、例えばパターンマッチングによって行い、複数の予測パターンの中から、観測パターンに最も合致する予測パターンを抽出する(図3のステップS3)。なお、テーブル21に格納される予測パターンは、観測パターンとの比較に必要な情報を有していればよく、反射光強度分布のイメージデータであっても良いし、反射光強度分布の特徴量を示す情報であってもよい。

【0070】
処理部20は、観測パターンに最も合致する予測パターンを得るためのシミュレーションの対象となった模擬断層構造におけるAl0.35Ga0.65AS層(模擬光吸収層)の層厚を、テーブル21を参照することで得る。処理部20は、テーブル21の参照で得られた層厚を、観測対象30である断層構造が有するAl0.35Ga0.65AS層32の層厚として決定する(図3のステップS4)。

【0071】
処理部20は、以上のようにして決定したAl0.35Ga0.65AS層32及びフォトレジスト層31の層厚を出力する。層厚は、数値で出力してもよいし、決定した層厚を有する2次元又は3次元の断層構造イメージを出力してもよい。図6は、観測対象30の面方向に測定光を走査して得られた観測対象30の断層構造2次元イメージを示している。この断層構造2次元イメージでは、3つの界面30a,30b,30cが3本の白線でイメージ化されており、各白線間が各層の層厚を示している。なお、図6の断層構造2次元イメージは、深さ方向が光路長で示されているため、実際の層厚とは異なるが、以上のようにして決定した層厚を用いて、断層構造イメージ中における各層厚(界面30a,30b,30cを示す白線の深さ方向位置)を補正することで、実際の層厚を示す断層構造をイメージ化することができる。深さ方向が光路長で示された断層構造イメージでも、各層の均一性の確認などの定性的な断層構造検証は行えるが、実際の層厚を示す断層構造イメージであれば定量的な断層構造検証も行える。

【0072】
[2.2 第1実施形態の変形例]
図5のシミュレーション結果テーブル21は、反射光強度分布の予測パターンを、光伝搬シミュレーション結果として有していたが、予測パターンに代えて又は加えて、模擬光吸収層の光路長の予測値(予測光路長)を光伝搬シミュレーション結果として有していても良い。この場合、テーブル21では、複数の光伝搬シミュレーション結果としての予測光路長と、予測光路長を得るための光伝搬シミュレーションの対象となった模擬光吸収層の層厚と、が対応付けられていることになる。なお、模擬光吸収層の光路長は、前述の光路長Tの式に従った演算で予測できる。

【0073】
処理部20は、テーブル21に格納された複数の予測光路長それぞれと、観測パターンから求めた光吸収層(Al0.35Ga0.65AS層32)の光路長(観測光路長=2.54μm)と、の比較を行い、複数の予測光路長の中から、観測光路長さに最も合致する予測光路長を抽出する。

【0074】
処理部20は、観測光路長に最も合致する予測光路長を得るためのシミュレーションの対象となったAl0.35Ga0.65AS層(模擬光吸収層)の層厚を、テーブル21を参照することで得る。処理部20は、テーブル21の参照で得られた層厚を、観測対象30である断層構造が有するAl0.35Ga0.65AS層32の層厚として決定する。

【0075】
[2.3 フォトレジスト層における多重反射光についての考察]
図4の観測パターンには、第3ピークよりも長波長側へ0.69μm離れた位置に、ピーク(第4ピーク)が認められる。第4ピークは、図2(a)に示すように、第2反射光がフォトレジスト層31において二重反射したことによるピークである。第2ピークから第4ピークまでの距離は3.23μmであり、第1ピークから第2ピークまでの距離3.77μmとほぼ一致することから、第4ピークは、第2反射光の二重反射によるピークであることがわかる。

【0076】
第2反射光がフォトレジスト層31において二重反射したことによるピークが観測されることは、図7~図9に示す光伝搬シミュレーション結果において、フォトレジスト層における二重反射光が生じていることからも明らかである。

【0077】
図7~図9は、模擬断層構造に対するシミュレーション結果であり、模擬断層構造は、前述のように、フォトレジスト層31を模擬した層、Al0.35Ga0.65AS層32を模擬した層、及び、GaAs層33を模擬した層を有する。図7はAl0.35Ga0.65AS層32を模擬した層の層厚を500nmとした場合、図8はAl0.35Ga0.65AS層32を模擬した層の層厚を1000nmとした場合、図9はAl0.35Ga0.65AS層32を模擬した層の層厚を1500nmとした場合のシミュレーション結果を示す。いずれの模擬断層構造においても、フォトレジスト層31を模擬した層の層厚は2μmで統一した。

【0078】
図7~図9において、横軸は光伝搬長であり、縦軸は光信号強度である。なお、図7~9は、界面からの反射光ではなく、光伝搬路の各位置における光信号強度(伝搬中の減衰光の強度)を示している。図7~図9に示すように、Al0.35Ga0.65AS層32を模擬した層の層厚の違いに応じて、第2界面における光と第3界面における光の間隔が変化するのに対して、フォトレジスト層における二重反射光は、常に同じ位置に生じている。

【0079】
図9のように、第3界面の光の伝搬長と、フォトレジスト層における二重反射光の伝搬長と、が大きく異なる場合、反射光を観測した場合においては、第3界面30cからの第3反射光とフォトレジスト層における二重反射光とは異なる深さ位置において観測される。一方、図8のように、第3界面の光の伝搬長と、フォトレジスト層における二重反射光の伝搬長と、がほぼ一致している場合や、図7のように、第3界面の光の伝搬長と、フォトレジスト層における二重反射光の伝搬長と、の差が小さい場合には、図4に示すように、反射光を観測した場合においては、第3界面30cからの第3反射光(第3ピーク)とフォトレジスト層における二重反射光(第2反射光の二重反射によるピーク)とは異なる深さ位置において重なって観測される。この場合、第2反射光の二重反射によるピークによる影響で、第3ピークの深さ位置を精度良く求めることが困難な場合がある。

【0080】
第3ピークの深さ位置を精度よく求めることが困難であると、第2ピークから第3ピークまでの観測光路長を精度良く求めることができず、「2.2 第1実施形態の変形例」のように、観測パターンから観測光路長を求める手法の場合、Al0.35Ga0.65AS層32の層厚の精度が低下する。

【0081】
これに対して、図5に示すように、観測パターンと予測パターンとを比較する手法の場合、予測パターンは、多重反射光が考慮された光伝搬シミュレーションによって生成したものとなるため、多重反射光を含む観測パターンと多重反射光を含む予測パターンとの比較により、光路長を求めることなく、多重反射光があっても精度良く膜厚を決定することができる。なお、多重反射光の影響が少ない場合には、「2.2 第1実施形態の変形例」のように、光路長からでも膜厚を精度良く決定することができる。また、観測パターンでは、各界面からの反射光によるピークだけでなく、上記のような多重反射光によるピークやノイズによるピークが生じることがあり、多重反射光によるピークやノイズによるピークから区別した上で、各界面からの反射光によるピークを決定することが必要な場合が生じる。この点に関し、予測パターンでは、各界面30a,30b,30c(特に第3界面30c)からの反射光の深さ位置及び強度が得られているため、観測パターンにおいて、各界面からの反射光のピークの予測位置(予測深さ位置及び予測強度)に最も近いピークを各界面からの反射光によるピークとして、容易に決定することができる。

【0082】
[2.4 第2実施形態]
第2実施形態に係る観測装置100は、光源11及び処理部20の処理内容を除くほか第1実施形態の観測装置100と同じものが用いられる。光源11が出力する測定光は、Al0.35Ga0.65AS層32により吸収される波長の光を実質的に含まない。Al0.35Ga0.65ASの光学吸収端は667nmであるため、測定光は、667nm以下の波長の光を実質的に含まず、667nmよりも大きい波長の光である。光源11は、例えば、赤外線を出力するものであり、より具体的には、中心波長λ=900nmであり、帯域幅Δλ=500nmとすることができる。この場合、光源11から出力される照射光は、667nmよりも小さい波長の光を含むものの、ごくわずかであり、その光がAl0.35Ga0.65AS層32で吸収されても、照射光のスペクトルはほとんど変化しない。

【0083】
したがって、処理部20は、観測パターンからAl0.35Ga0.65AS層32の光路長を求め、求めた光路長を測定光のAl0.35Ga0.65AS層32における屈折率で除算して、Al0.35Ga0.65AS層32を膜厚を決定することができる。

【0084】
なお、Al0.35Ga0.65AS層32により吸収される波長の光を実質的に含まない測定光を出力する光源11を用いる場合にも、観測パターンと予測パターンとの比較で膜厚を決定してもよい。

【0085】
[3.付言]
本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 光干渉計測部
11 光源
17 検出部
20 処理部
30 観測対象
100 観測装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図6】
8