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明細書 :植物組織透明化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-108684 (P2017-108684A)
公開日 平成29年6月22日(2017.6.22)
発明の名称または考案の名称 植物組織透明化剤
国際特許分類 C12Q   1/04        (2006.01)
G01N   1/30        (2006.01)
G01N   1/28        (2006.01)
C12N   5/04        (2006.01)
FI C12Q 1/04
G01N 1/30
G01N 1/28 J
C12N 5/04
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2015-245977 (P2015-245977)
出願日 平成27年12月17日(2015.12.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1) 掲載年月日 2015年9月2日 掲載アドレス http://bsj.or.jp/bsj79/ebook_download.html (2) 集会名 日本植物学会 第79回大会 開催日 2015年9月6日から2015年9月8日 (3) 掲載年月日 2015年10月22日 掲載アドレス http://dev.biologists.org/content/early/2015/10/22/dev.127613 (4) 掲載年月日 2016年10月28日 掲載アドレス http://www.nagoya-u.ac.jp/ http:/www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20151028_SCI_Itbm.pdf (5) 掲載年月日 2016年10月28日 掲載アドレス http://news.yahoo.co.jp/pickup/6179025 (6) 掲載年月日 2015年10月28日 掲載アドレス http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1510/28/news148.html (7) 放送日 2015年10月29日 放送番組 NHK東海ニュース (8) 刊行物名 読売新聞 2015年10月29日朝刊 発行日 2015年10月29日 (9) 掲載年月日 2015年10月29日 掲載アドレス http://pat.intellectual-info.com/bio-mori/news/20220/ (10) 刊行物名 読売新聞 2015年10月30日朝刊 発行日 2015年10月30日 (11) 掲載年月日 2015年10月30日 掲載アドレス http://optronics-media.com/news/20151030/36629/ (12) 掲載年月日 2015年11月2日 掲載アドレス http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/1/11302.html (13) 放送日 2015年11月9日 放送番組 CBCラジオ 多田しげおの気分爽快!!朝からP・O・N (14) 掲載年月日 2015年11月18日 掲載アドレス http://f1000.com/prime/7
発明者または考案者 【氏名】栗原 大輔
出願人 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G052
4B063
4B065
Fターム 2G052AA37
2G052FA08
2G052GA32
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4B063QA18
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4B065BD27
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4B065BD50
4B065CA46
要約 【課題】より迅速に、且つより簡便に植物組織を透明化することができる植物組織透明化剤を提供すること、及び蛍光タンパク質の蛍光特性をより安定に保持しつつ植物組織を透明化できる植物組織透明化剤を提供すること。
【解決手段】アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の多価アルコール、並びにイオン性界面活性剤を含有する、植物組織透明化剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の多価アルコール、並びにイオン性界面活性剤を含有する、植物組織透明化剤。
【請求項2】
前記イオン性界面活性剤が親水基として-C(=O)-O、-C(=O)-OH、又は-C(=O)-OM(式中、Mはナトリウム原子又はカリウム原子、好ましくはナトリウム原子を示す。)を有する陰イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の植物組織透明化剤。
【請求項3】
前記イオン性界面活性剤が部分構造としてステロイド骨格を含む陰イオン性界面活性剤である、請求項1又は2に記載の植物組織透明化剤。
【請求項4】
前記糖アルコールがペンチトールである、請求項1~3のいずれかに記載の植物組織透明化剤。
【請求項5】
前記アルコールアミンが一般式(1):
【化1】
JP2017108684A_000011t.gif
[一般式(1)中:R及びRは、同一又は異なってヒドロキシアルキル基を示す。Rはヒドロキシアルキル基、又は一般式(2):
【化2】
JP2017108684A_000012t.gif
(一般式(2)中:R及びRは、同一又は異なってヒドロキシアルキル基を示す。nは1~4の整数を示す。)で表される基を示す。]
で表されるアルコールアミンである、請求項1~4のいずれかに記載の植物組織透明化剤。
【請求項6】
前記Rが一般式(2)で表される基である、請求項5に記載の植物組織透明化剤。
【請求項7】
前記Rがヒドロキシアルキル基である、請求項5に記載の植物組織透明化剤。
【請求項8】
さらに尿素及び尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の植物組織透明化剤。
【請求項9】
アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の多価アルコール、並びにイオン性界面活性剤を含有する、蛍光タンパク質含有植物組織の透明化剤。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の植物組織透明化剤を植物組織と接触させることを含む、透明化植物組織の製造方法。
【請求項11】
前記植物組織が蛍光タンパク質を含有する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の製造方法で得られた、透明化植物組織。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物組織透明化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の個々の細胞及び組織の役割、さらには植物体全体の成り立ち等を明らかにするためには、植物の内部構造を詳細に観察する必要がある。現代では、目的の細胞や構造を蛍光タンパク質等の蛍光物質で選択的に標識し、細胞や組織を詳細に観察することが可能となっている。
【0003】
しかし、植物は、クロロフィル等の色素を含み、光を逃さないために光を散乱させる構造(例えば、形状の異なる細胞や空気層の存在)を有し、さらには特にめしべ等においては複雑な組織構造を有しているので、通常、透明度が極めて低い。このため、上記蛍光物質による標識技術を用いても、外から観察できるのは植物の表面及びそれに近い部分のみであり、植物の内部構造を観察するには、器官の解剖や組織切片の作製等の煩雑で熟練を要する操作が必要であった。
【0004】
植物を透明化すること自体は古くから行われており、代表的な植物透明化試薬としては抱水クロラール溶液が知られている。しかし、抱水クロラール溶液は、植物を透明化することはできるものの、蛍光タンパク質の蛍光特性を損ねてしまう。
【0005】
このような状況の中、近年、動物研究においては、脳を透明化して蛍光観察する手法が、日本を始め国内外の多くの研究グループによって開発されている(特許文献1~4)。一方、この動物透明化技術を利用した、新たな植物透明化技術の開発も進められている(非特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2014-005231号公報
【特許文献2】特表2013-522590号公報
【特許文献3】再表2012/161143号
【特許文献4】再表2012/147965号
【0007】

【非特許文献1】Warner, C. A., Biedrzycki, M. L., Jacobs, S. S., Wisser, R. J., Caplan, J. L. and Sherrier, D. J. (2014). An optical clearing technique for plant tissues allowing deep imaging and compatible with fluorescence microscopy. Plant Physiol., 166: 1684-1687.
【非特許文献2】Palmer, W. M., Martin, A. P., Flynn, J. R., Reed, S. L., White, R. G., Furbank, R. T. and Grof, P. L. (2015). PEA-CLARITY: 3D molecular imaging of whole plant organs. Scientific Reports, 5: 13492.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの新たな植物透明化技術には、透明化の迅速性、簡便性等の観点から改善の余地がある。例えば、非特許文献1の植物透明化技術は、シロイヌナズナの葉の透明化に3週間も要してしまうし、非特許文献2の植物透明化技術は、シロイヌナズナの葉の透明化に4~6週間も要し、さらに毎日透明化試薬を交換するという煩雑な作業までをも要してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、より迅速に、且つより簡便に植物組織を透明化することができる植物組織透明化剤を提供することを課題とする。さらには、蛍光タンパク質の蛍光特性をより安定に保持しつつ植物組織を透明化できる植物組織透明化剤を提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記課題に鑑みて鋭意研究を行った結果、アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の多価アルコール、並びにイオン性界面活性剤を含有する、植物組織透明化剤(本明細書において、「本発明の植物組織透明化剤」と示すこともある。)であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、完成されたものである。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0011】
項1. アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の多価アルコール、並びにイオン性界面活性剤を含有する、植物組織透明化剤.
項2. 前記イオン性界面活性剤が親水基として-C(=O)-O、-C(=O)-OH、又は-C(=O)-OM(式中、Mはナトリウム原子又はカリウム原子、好ましくはナトリウム原子を示す。)を有する陰イオン性界面活性剤である、項1に記載の植物組織透明化剤.
項3. 前記イオン性界面活性剤が部分構造としてステロイド骨格を含む陰イオン性界面活性剤である、項1又は2に記載の植物組織透明化剤.
項4. 前記糖アルコールがペンチトールである、項1~3のいずれかに記載の植物組織透明化剤.
項5. 前記アルコールアミンが一般式(1):
【0012】
【化1】
JP2017108684A_000002t.gif

【0013】
[一般式(1)中:R及びRは、同一又は異なってヒドロキシアルキル基を示す。Rはヒドロキシアルキル基、又は一般式(2):
【0014】
【化2】
JP2017108684A_000003t.gif

【0015】
(一般式(2)中:R及びRは、同一又は異なってヒドロキシアルキル基を示す。nは1~4の整数を示す。)で表される基を示す。]で表されるアルコールアミンである、項1~4のいずれかに記載の植物組織透明化剤.
項6. 前記Rが一般式(2)で表される基である、項5に記載の植物組織透明化剤.
項7. 前記Rがヒドロキシアルキル基である、項5に記載の植物組織透明化剤.
項8. さらに尿素及び尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1~7のいずれかに記載の植物組織透明化剤.
項9. アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の多価アルコール、並びにイオン性界面活性剤を含有する、蛍光タンパク質含有植物組織の透明化剤.
項10. 項1~9のいずれかに記載の植物組織透明化剤を植物組織と接触させることを含む、透明化植物組織の製造方法.
項11. 前記植物組織が蛍光タンパク質を含有する、項10に記載の製造方法。
【0016】
項12. 項10又は11に記載の製造方法で得られた、透明化植物組織.
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、植物組織透明化剤を提供することができる。本発明の植物組織透明化剤によれば、植物組織をより迅速に、特に好適な態様において葉や根等であれば3~4日間程度で、且つ簡便に、透明化することが可能である。さらに、本発明の植物組織透明化剤によれば、蛍光タンパク質の蛍光特性をより安定に保持しつつ植物組織を透明化でき、これにより、透明化に伴う自家蛍光の減少と相まって、蛍光タンパク質由来の蛍光をより明瞭に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】試験例2の結果を示す。
【図2】試験例3の結果を示す。
【図3】試験例4の結果を示す。
【図4】試験例5の結果を示す。
【図5】試験例6の結果を示す。
【図6】試験例7の結果を示す。
【図7】試験例8の結果を示す。
【図8】試験例9の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中において、「含有」なる表現については、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。

【0020】
1.植物組織透明化剤
本発明は、アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の多価アルコール、並びにイオン性界面活性剤を含有する、植物組織透明化剤に関する。以下、これについて説明する。

【0021】
多価アルコールは、アルコールアミン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種である。

【0022】
アルコールアミンは、アミンの少なくとも2つの炭化水素基の水素原子がヒドロキシ基に置換してなる化合物であれば特に限定されない。

【0023】
アミンとしては、例えばモノアミン、ジアミン、トリアミン等、好ましくはモノアミン、ジアミン等が挙げられる。また、蛍光タンパク質の蛍光特性をより安定に保持できるという観点から、アミンは、窒素原子に結合する3つの原子がいずれも水素ではないこと、例えばモノアミンの場合は第3級アミンが好ましい。

【0024】
アミンが有する炭化水素基としては、特に制限されず、例えば直鎖状又は分枝鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~8、好ましくは1~6、より好ましくは1~4の鎖状炭化水素基が挙げられる。また、別の観点から、該炭化水素基としては、例えば飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基等が挙げられ、好ましくはアルキル基が挙げられる。該アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、n-へキシル基、イソへキシル基等が挙げられる。

【0025】
アミンがジアミンやトリアミンの場合、窒素原子間は、アルキレン基で連結されていることが好ましい。該アルキレン基としては、特に制限されず、例えば直鎖状又は分枝鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~6、好ましくは1~4、より好ましくは1~2のアルキレン基が挙げられる。該アルキレン基としては、例えばエチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ヘキシレン基等が挙げられる。

【0026】
アルコールアミンにおけるヒドロキシ基の数は、2以上である限り特に制限されず、例えば2~6、好ましくは2~5、より好ましくは2~4、さらに好ましくは3~4である。

【0027】
アルコールアミンとして、好ましくは、一般式(1):

【0028】
【化3】
JP2017108684A_000004t.gif

【0029】
[一般式(1)中:R及びRは、同一又は異なってヒドロキシアルキル基を示す。Rはヒドロキシアルキル基、又は一般式(2):

【0030】
【化4】
JP2017108684A_000005t.gif

【0031】
(一般式(2)中:R及びRは、同一又は異なってヒドロキシアルキル基を示す。nは1~4の整数を示す。)で表される基を示す。]
で表されるアルコールアミンが挙げられる。

【0032】
、R、R、R、又はRで表されるヒドロキシアルキル基は、特に制限されず、例えば直鎖状又は分枝鎖状(好ましくは直鎖状)の炭素数1~8、好ましくは1~6、より好ましくは1~4のヒドロキシアルキル基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。

【0033】
nは、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1又は2である。

【0034】
は、本発明の植物組織透明化剤に後述の尿素又はその誘導体が含まれない場合であれば、透明化能、蛍光タンパク質の蛍光特性の保持能等の観点から、好ましくは一般式(2)で表される基である。一方、Rは、本発明の植物組織透明化剤に後述の尿素又はその誘導体が含まれる場合であれば、透明化能、蛍光タンパク質の蛍光特性の保持能等の観点から、好ましくはヒドロキシアルキル基である。

【0035】
アルコールアミンの具体例としては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(1-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(1-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(3-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(ヒドロキシブチル)エチレンジアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。

【0036】
アルコールアミンは、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。

【0037】
糖アルコールは、アルドースの還元によって生じるもの(アルジトール、好ましくはD-アルジトール)であれば特に制限されない。糖アルコールとしては、例えばグリセリンなどのトリトール(C(OH)); エリトリトール、D-トレイトール、L-トレイトール等のテトリトール(C(OH)); D-アラビニトール、L-アラビニトール、キシリトール、リビトール等のペンチトール(C(OH)); アリトール、D-イジトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール等のヘキシトール(C(OH)); ボレミトール、ペルセイトール等のヘプチトール(C(OH))等が挙げられる。これらの中でも、透明化能、自家蛍光消失化能、蛍光タンパク質の蛍光特性の保持能等の観点から、好ましくはペンチトール、ヘキシトール(好ましくはソルビトール)等が挙げられれ、より好ましくはペンチトールが挙げられ、さらに好ましくはペンチトールの中でもキシリトールが挙げられる。

【0038】
糖アルコールは、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。

【0039】
多価アルコールは、後述の尿素類と(好ましくは、さらに後述のステロイド骨格を含むイオン性界面活性剤と)組み合わせることにより、より高い自家蛍光消失化能を発揮できるという観点から、好ましくは糖アルコールである。

【0040】
多価アルコールの含有量は、特に制限されない。該含有量は、本発明の効果をより確実に発揮させるという観点から、本発明の植物組織透明化剤の総量に対して、例えば1~60w/v%、好ましくは2~50w/v%、より好ましくは5~35w/v%、さらに好ましくは8~30w/v%である。

【0041】
イオン性界面活性剤は、特に制限されず、例えば陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。

【0042】
これらの中でも、透明化能、自家蛍光消失化能、蛍光タンパク質の蛍光特性の保持能等の観点から、好ましくは陰イオン性界面活性剤が挙げられ、より好ましくは陰イオン性基として-C(=O)-O、-C(=O)-OH、又は-C(=O)-OM(式中、Mはナトリウム原子又はカリウム原子、好ましくはナトリウム原子を示す。)を有する陰イオン性界面活性剤が挙げられる。

【0043】
同様の観点から、イオン性界面活性剤としては、好ましくは部分構造としてステロイド骨格を含むイオン性界面活性剤が挙げられる。なお、ステロイド骨格とは、以下の式(a)で表される。

【0044】
【化5】
JP2017108684A_000006t.gif

【0045】
該ステロイド骨格を含むイオン性界面活性剤として、好ましくは一般式(3):

【0046】
【化6】
JP2017108684A_000007t.gif

【0047】
[一般式(3)中:R、R、R、及びRは、同一又は異なってヒドロキシ基又は水素原子を示す(但し、R、R、R、及びRの内少なくとも1つ以上はヒドロキシ基を示す。)。]
で表される化合物又はその塩が挙げられる。

【0048】
、R、R、及びRの内、好ましくは2~3つ、より好ましくは2つがヒドロキシ基を示し、その他は水素原子を示す。また、Rは好ましくは水素である。

【0049】
一般式(3)で表される化合物の塩は、カルボキシル基と塩を形成できるものであれば特に制限されない。該塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等、好ましくはナトリウム塩が挙げられる。

【0050】
イオン性界面活性剤がステロイド骨格を含まない場合、疎水性部分として長鎖炭化水素鎖(好ましくは長鎖アルキル鎖)を有することが好ましい。該長鎖炭化水素鎖の主鎖上の炭素原子数は特に制限されず、例えば7~30、好ましくは8~20、より好ましくは9~15である。

【0051】
長鎖アルキル鎖を有するイオン性界面活性剤として、好ましくは一般式(4):

【0052】
【化7】
JP2017108684A_000008t.gif

【0053】
[一般式(4)中:R10は、単結合、又は一般式(5):

【0054】
【化8】
JP2017108684A_000009t.gif

【0055】
(一般式(5)中:R11は、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を示す。)で表される2価の基を示す。mは、6~29の整数を示す。]
で表される化合物又はその塩が挙げられる。

【0056】
10は、好ましくは一般式(5)で表される2価の基である。

【0057】
mは、好ましくは7~19の整数、より好ましくは8~14の整数である。

【0058】
11は、好ましくは炭素原子数1~4(より好ましくは1~2、さらに好ましくは1)のアルキル基を示す。該アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。

【0059】
一般式(4)で表される化合物の塩は、カルボキシル基と塩を形成できるものであれば特に制限されない。該塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等、好ましくはナトリウム塩が挙げられる。

【0060】
イオン性界面活性剤の具体例としては、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、コール酸、ヒオコール酸、リトコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、5α-シプリノール、CHAPS、BIGCHAP、deoxy-BIGCHAP等のステロイド骨格を含む化合物又はこれらの塩(例えばカリウム塩、ナトリウム塩等、好ましくはナトリウム塩); オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、N-ラウロイルサルコシン等の長鎖炭化水素鎖を有する化合物又はこれらの塩(例えばカリウム塩、ナトリウム塩等、好ましくはナトリウム塩)等が挙げられる。

【0061】
イオン性界面活性剤は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。

【0062】
イオン性界面活性剤の含有量は、特に制限されない。該含有量は、本発明の効果をより確実に発揮させるという観点から、本発明の植物組織透明化剤の総量に対して、例えば1~30w/v%、好ましくは2~25w/v%、より好ましくは5~25w/v%、さらに好ましくは10~20w/v%である。

【0063】
本発明の植物組織透明化剤は、さらに尿素及び尿素誘導体からなる群より選択される少なくとも1種(本明細書において、「尿素類」と示すこともある。)を含有することが好ましい。尿素類を組み合わせることにより、透明化能、自家蛍光消失化能、蛍光タンパク質の蛍光特性の保持能等をより高めることができる。

【0064】
尿素誘導体としては、特に制限されず、公知の尿素誘導体、例えば特許文献2に記載の尿素誘導体を使用することができる。尿素誘導体として、好ましくはウレインが挙げられる。

【0065】
尿素類としては、好ましくは尿素が挙げられる。

【0066】
尿素類は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。

【0067】
尿素類の含有量は、特に制限されない。該含有量は、本発明の効果をより確実に発揮させるという観点から、本発明の植物組織透明化剤の総量に対して、例えば5~60w/v%、好ましくは10~50w/v%、より好ましくは15~40w/v%、さらに好ましくは20~30w/v%である。

【0068】
本発明の植物組織透明化剤は、通常、さらに溶媒を含有する。溶媒は、植物組織内の蛍光タンパク質の蛍光特性をより安定に保持するという観点から、水であることが好ましい。

【0069】
溶媒の含有量は、特に制限されない。該含有量は、本発明の植物組織透明化剤の総量に対して、例えば5~95w/v%、好ましくは15~85w/v%、より好ましくは30~75w/v%、さらに好ましくは40~70w/v%、よりさらに好ましくは45~65w/v%である。

【0070】
本発明の植物組織透明化剤は、上記した成分のみからなるものであってもよい。また、本発明の効果を著しく損ねない限りにおいて、上記した成分以外の他の成分を含んでいてもよい
他の成分としては、例えば緩衝剤、浸透圧調整剤等が挙げられる。

【0071】
なお、本明細書において、「透明化」とは、植物組織が完全に透明になることのみを意味するものではなく、透明化処理前に比べてより透明度が高くなることを意味する。

【0072】
本発明の植物組織透明化剤の透明化対象である植物組織は、特に制限されない。ただ、より効率的に透明化可能であるという観点から、透明化剤の浸透が容易な植物組織が好ましい。該植物組織としては、例えば根、葉、茎、頂芽、側芽、花弁、がく、めしべ、おしべ等の植物体の一部分、及び植物体の全部が挙げられる。

【0073】
また、本願試験例においては、コケ植物から被子植物に至るまで種々の植物の植物組織を透明化できたことが実証されている。このように、透明化対象である植物組織の由来種は、特に制限されず、例えばコケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物等のあらゆる種を広く挙げることができる。

【0074】
前述したように、本発明の植物組織透明化剤は、蛍光タンパク質の蛍光特性をより安定に保持しつつ植物組織を透明化することができる。このため、本発明の植物組織透明化剤は、蛍光タンパク質を含有する植物組織に対して、好適に用いられる。なお、蛍光タンパク質は、特定波長の励起光に対して蛍光を発することができるタンパク質である限り特に制限されず、公知の蛍光タンパク質(例えば、mClover、mTFP、sGFP、Venus、mApple、mRFP、GFP、AmCyan、ZsGreen、ZsYellow、AsRed、RCFP、DsRed、AcGFP1、HcRed1、CopGFP、PhiYFP、PhiYFP-m、EYFP、KFP-Red等)に加えて、該蛍光タンパク質と他の非蛍光タンパク質との融合タンパク質も包含する。

【0075】
2.透明化植物組織の製造方法
本発明は、本発明の植物組織透明化剤を植物組織と接触させることを含む、透明化植物組織の製造方法(本明細書において、「本発明の製造方法」と示すこともある。)に関する。

【0076】
植物組織は、本発明の植物組織透明化剤との接触前に、固定処理されていることが好ましい。固定処理は、植物組織を、固定液に浸漬することによって行うことができる。

【0077】
固定液は、植物組織を固定できる限り特に限定されず、公知の固定液、例えばパラホルムアルデヒドを含有する水性溶媒系の固定液や、エタノール及び酢酸を含有する有機溶媒系の固定液を挙げることができる。透明化対象の植物組織が蛍光タンパク質を含んでいる場合、該蛍光タンパク質の蛍光特性をできる限り損ねないという観点から、固定液としては、パラホルムアルデヒドを含有する水性溶媒系の固定液(例えば4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝生理食塩水溶液)が好ましい。 固定処理の時間は、特に限定されず、固定処理対象の植物組織に応じて、適宜設定することができる。該固定処理の時間は、実生であれば例えば20~40分間、葉の場合は例えば90~150分間、めしべの場合は例えば40~80分間である。

【0078】
固定処理後は、必要に応じて、水や緩衝液で植物組織を洗浄することが好ましい。

【0079】
本発明の植物組織透明化剤を植物組織と接触させる態様は、本発明の植物組織透明化剤が植物組織に浸透し得る態様であれば特に限定されない。例えば、本発明の植物組織透明化剤に植物組織を浸漬することにより、両者を接触させることができる。

【0080】
接触時間は、植物組織の透明化が起こる程度の時間である限り特に限定されず、固定処理対象の植物組織に応じて、適宜設定することができる。該接触時間は、葉、根及びコケ植物の場合は例えば2~7日間であり、実生の場合は例えば5~10日間であり、めしべの場合は例えば1~3週間であり、茎の場合は例えば2~6週間である。

【0081】
接触後は、必要に応じて、公知の方法に従って、例えば核や細胞壁を化学染色してもよい。

【0082】
このようにして得られた透明化植物組織は、観察(例えば目視観察、光学顕微鏡観察、蛍光顕微鏡観察等)することによって、植物内部構造や植物内部での生命現象等の解析に用いることができる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
試験例1.植物組織透明化剤の調製、及びその評価
<試験例1-1.植物組織透明化剤の調製>
表1に示す配合に従って植物組織透明化剤(実施例1~14)を調製した。
【実施例】
【0085】
【表1】
JP2017108684A_000010t.gif
【実施例】
【0086】
<試験例1-2.評価試験用植物組織片の調製>
シロイヌナズナUBQ10遺伝子(At4g05320)の5’側に隣接する634 bpのUBQ10プロモーター領域、mCloverコード領域が(SGGGG)2リンカーを介して融合したH2B遺伝子(At1g07790)全長コード領域、及びNOSターミネーター領域を、バイナリーベクターpPZP211(Hajdukiewicz et al., (1994), Plant Mol. Biol. 25, 989-994.)にクローニングした。得られたバイナリーベクターを、アグロバクテリウム(Agrobacterium tumefaciens)EHA105株に導入した。得られたアグロバクテリウムを用いて、定法に従って、mClover融合H2Bタンパク質を発現するシロイヌナズナ形質転換体を得た。該形質転換体から葉を採取し、この葉を、4 w/v% PFA(パラホルムアルデヒド)/PBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液を用いて、室温脱気下で120分間、固定処理した。得られた葉を、PBSで洗浄(1分間×2回)し、評価試験用植物組織片を得た。
【実施例】
【0087】
<試験例1-3.植物組織透明化剤の評価>
評価試験用植物組織片を植物組織透明化剤(実施例1~14)に浸漬し、室温下で3日間インキュベーションして、評価用植物組織片を得た。一方で、植物組織透明化剤に代えてPBSを用いる以外は同様にインキュベーションして、コントロール植物組織片を得た。
【実施例】
【0088】
<試験例1-3-1.葉細胞における蛍光タンパク質輝度の評価>
評価用植物組織片及びコントロール植物組織片中のmClover融合H2Bタンパク質の蛍光像を、蛍光ミラーユニットU-FBNA(オリンパス社製、励起フィルター:470-495 nm、吸収フィルター:510-550 nm)をセットしたシステム生物顕微鏡BX53(オリンパス社製)で観察し、Image Jで蛍光強度を測定した。測定した蛍光強度に基づいて、蛍光タンパク質輝度を4段階(+++:蛍光強度が高い、++:蛍光強度が中程度、+:蛍光強度が低い、-:蛍光が確認できない)で評価した。評価結果を上記表1に示す。
【実施例】
【0089】
<試験例1-3-2.残存自家蛍光の評価>
評価用植物組織片及びコントロール植物組織片の、クロロフィル由来の自家蛍光を、蛍光ミラーユニットU-FGW(オリンパス社製、励起フィルター:530-550 nm、吸収フィルター:> 575 nm)をセットしたシステム生物顕微鏡BX53(オリンパス社製)で観察した。観察結果に基づいて、残存自家蛍光を3段階(++:自家蛍光が確認できない、+:自家蛍光がコントロールより弱い、-:自家蛍光がコントロールと同程度)で評価した。評価結果を上記表1に示す。
【実施例】
【0090】
<試験例1-3-3.透明度の評価>
評価用植物組織片及びコントロール植物組織片の透明度をシステム生物顕微鏡BX53(オリンパス社製)を用いて目視で観察した。観察結果に基づいて、透明度を4段階(+++:透明度が高い、++:透明度が中程度、+:透明度が低い、-:コントロールと同じ)で評価した。評価結果を上記表1に示す。
【実施例】
【0091】
試験例2.既存の植物透明化試薬との比較
既存の植物透明化試薬として、Warner et al.(2014)(Plant Physiol. 166, 1684-1687.)で報告された透明化試薬(6M 尿素、30 % (v/v) グリセロール、0.1 % (v/v) Triton X-100、残部は水)、及び抱水クロラールを含む透明化試薬(抱水クロラール、グリセロール及び水が、8:1:3(抱水クロラール:グリセロール:水)で配合された溶液)が知られている。これらの既存の植物透明化試薬と本発明の植物組織透明化剤との間で、透明化能等を比較した。
【実施例】
【0092】
試験例1-2で得た評価試験用植物組織片を、PBS、上記した既存の植物透明化試薬、又は実施例の植物組織透明化剤に浸漬し、室温下で4日間インキュベーションした。得られた植物組織片を目視又は顕微鏡で観察した。縦横のグリッド線が引かれたシート状に載せた植物組織片の目視観察像を図1の最上段に示し、植物組織片の顕微鏡明視野像を図1の中段に示し、試験例1-3-1と同様の方法で得られた、植物組織片中のmClover融合H2Bタンパク質の蛍光像を図1の最下段に示す。なお、図1中、「発明した透明化試薬」は実施例13の植物組織透明化剤を示す。
【実施例】
【0093】
図1に示されるように、本発明の植物組織透明化剤で処理した植物組織片は、4日間という非常に短い期間の処理にも関わらず、完全に透明化されており(図1の最上段)、且つ蛍光タンパク質の蛍光を確認することもできた(図1の最下段)。これに対して、既存の透明化試薬で処理した植物組織片は、蛍光タンパク質の蛍光はわずかに確認できるものの、全く透明化されていない(図1の右から2つ目の列)、或いは透明化されてはいるものの、蛍光タンパク質の蛍光が確認できなかった(図1の最右列)。
【実施例】
【0094】
試験例3.多光子励起顕微鏡による植物組織深部の蛍光観察
試験例1-2で得た評価試験用植物組織片を、PBS又は実施例の植物組織透明化剤に浸漬し、室温下で4日間インキュベーションした。得られた植物組織片の蛍光3D画像を、高速多光子共焦点レーザー顕微鏡システム(A1R MP、ニコン社製)の多光子モードを用いて得た。具体的には、波長950 nmの励起光によってmClover融合H2Bタンパク質の蛍光を励起させ、葉の厚み方向1.0μm毎の100枚のzスタックから蛍光3D画像を得た。得られた蛍光3D画像(上下が葉の厚み方向である)を図2に示す。なお、図2中、「発明した透明化試薬」は実施例13の植物組織透明化剤を示し、右側のカラーバーは葉の表面からの深さを示す。
【実施例】
【0095】
図2に示されるように、本発明の植物組織透明化剤で処理した植物組織片の蛍光3D画像においては、葉の裏面(厚み方向で葉の表面から約100μm)まで、mClover融合H2Bタンパク質由来の蛍光が観察された。
【実施例】
【0096】
試験例4.共焦点顕微鏡による植物組織深部の蛍光観察
高速多光子共焦点レーザー顕微鏡システムの共焦点モード(励起光の波長は488 nm)を用いる以外は、試験例3と同様に行った。なお、図3中、「発明した透明化試薬」は実施例13の植物組織透明化剤を示し、右側のカラーバーは葉の表面からの深さを示す。
【実施例】
【0097】
図3に示されるように、本発明の植物組織透明化剤で処理した植物組織片の3D画像においては、葉の裏面(厚み方向で葉の表面から約100μm弱)まで、mClover融合H2Bタンパク質由来の蛍光が観察された。
【実施例】
【0098】
試験例5.めしべの蛍光観察
葉の代わりにめしべを用い、且つ固定処理時間を60分間とする以外は、試験例1-2と同様にしてめしべ観察用組織片を得た。この組織片を、PBS又は実施例13の植物組織透明化剤に浸漬し、6日間インキュベーションした。得られた組織片の蛍光3D画像を、試験例3と同様にして、めしべの先端から基部方向1.0μm毎の401枚のzスタックから得た。得られた蛍光3D画像の縦断面図及び横断面図を図4に示す。
【実施例】
【0099】
通常、めしべは内部に複雑な構造を有しているので、その内部、更には内部で起こる現象を観察することは困難である。しかし、図4に示されるように、本発明の植物組織透明化剤で処理しためしべの3D画像においては、内部構造まで明瞭に観察することができた。このように、本発明の植物組織透明化剤を用いれば、めしべのような複雑な内部構造を有する植物組織でも、切片を作製することなく、内部を観察することができ、ひいては内部で起こる現象を観察することも可能であることが示された。
【実施例】
【0100】
試験例6.花粉管の蛍光観察
<試験例6-1.花粉管観察用組織片の調製>
LAT52プロモーター制御下で蛍光タンパク質(mTFP1、sGFP、Venus、又はmApple)を発現するシロイヌナズナ形質転換体を、先行文献A(Mizuta et al., (2015), Protoplasma 252, 1231-1240.)に記載の方法に従って得た。該形質転換体の花粉を野生型シロイヌナズナのめしべに受粉させ、受粉から6時間後に、めしべを4 w/v% PFA/PBS溶液を用いて、室温脱気下で60分間、固定処理した。得られためしべを、PBSで洗浄(1分間×2回)し、花粉管観察用組織片を得た。
【実施例】
【0101】
<試験例6-2.花粉管の蛍光観察>
花粉管観察用組織片を、デオキシコール酸ナトリウム濃度を7.5%(w/v)とする以外は実施例13と同様にして得られた植物組織透明化剤に浸漬し、室温下で5ヵ月間インキュベーションした。得られた組織片(透明化処理あり)、及び透明化処理なしのコントロール組織片の蛍光3D画像を、励起光波長を990 nmとする以外は試験例5と同様にして、めしべの先端から基部方向3.0μm毎のzスタックから得た。得られた蛍光3D画像の縦断面図を図5に示す。
【実施例】
【0102】
図5に示されるように、透明化処理ありの方では、花粉由来の花粉管がめしべ柱頭から伸びている様子が観察できた。さらに、4種の蛍光タンパク質(mTFP1、sGFP、Venus、及びmApple)それぞれを発現する花粉管同士を区別することもできた。また、5カ月間もの長期間の透明化処理にも関わらず、蛍光タンパク質由来の蛍光を明瞭に観察することができた。このことから、植物組織透明化剤は、蛍光タンパク質を含有する植物組織を、その蛍光タンパク質の蛍光能を損なうことなく、長期間保存できることが示された。
【実施例】
【0103】
試験例7.ヒメツリガネゴケ茎葉体の蛍光観察
<試験例7-1.茎葉体観察用組織片の調製>
ヒメツリガネゴケGransden 2004野生株(Rensing, et al., (2008), Science 319, 64-69.)のH2B遺伝子領域にmRFPタンパク質コード領域を挿入し、mRFP融合H2Bタンパク質を発現するヒメツリガネゴケ形質転換体を得た。該形質転換体の茎葉体組織片を、4 w/v% PFA/PBS溶液を用いて、室温脱気下で60分間、固定処理した。得られた組織片を、PBSで洗浄(1分間×2回)し、茎葉体観察用組織片を得た。
【実施例】
【0104】
<試験例7-2.茎葉体の蛍光観察>
茎葉体観察用組織片を実施例13の植物組織透明化剤に浸漬し、室温で4日間インキュベーションした。得られた組織片(透明化処理あり)、及び上記固定処理前の茎葉体組織片の蛍光3D画像を、共焦点レーザースキャン顕微鏡(LSM 780、カールツァイス社製)を用いて得た。具体的には、波長561 nmの励起光によって、波長570-668 nmの蛍光(mRFP融合H2Bタンパク質由来の蛍光)及び672-701 nmの蛍光(自家蛍光)それぞれを別々に得て、1.0μm毎の325枚のzスタックから蛍光3D画像を得た。得られた蛍光3D画像を図6に示す。なお、図6中、「蛍光タンパク質」がmRFP融合H2Bタンパク質由来の蛍光像を示し、「クロロフィル蛍光」が自家蛍光像を示し、「重ね合わせ像」はこれら2つの像を重ね合わせた像を示す。
【実施例】
【0105】
ヒメツリガネゴケ等のコケ植物の原糸体は単一層構造であるが故に観察に適しているが、茎葉体は、複雑な構造及び自家蛍光によって、通常は観察が困難である。実際、図6上段に示されるように、透明化処理なしの場合では、強い自家蛍光が観察され、また先端部においてはmRFP融合H2Bタンパク質由来の蛍光はほとんど確認できなかった。しかし、図6下段に示されるように、透明化処理ありの場合では、自家蛍光が弱く、また先端部におけるmRFP融合H2Bタンパク質由来の蛍光を明瞭に確認することができた。
【実施例】
【0106】
試験例8.種々の植物の透明化処理
トレニア、ペチュニア等の園芸植物、及びタバコ、トマト、キュウリ等の作物の葉を、4 w/v% PFA/PBS溶液を用いて、室温脱気下で60分間、固定処理した。得られためしべを、PBSで洗浄(1分間×2回)した。得られた葉を、実施例13の植物組織透明化剤に浸漬し、室温下で6日間インキュベーションした。得られた組織片(透明化処理あり)、及び透明化処理なしのコントロール組織片の写真を、図7に示す。図7中、各植物の2枚の写真の内、左側の写真がコントロール組織片の写真を示し、右側の写真が透明化処理された組織片の写真を示す。
【実施例】
【0107】
図7より、本発明の植物組織透明化剤は、種を問わず植物組織を透明化できることが示された。
【実施例】
【0108】
試験例9.透明化処理済み組織片の化学染色
試験例1-2で得た評価試験用植物組織片の細胞核をヘキスト33342を用いて定法に従って染色し、染色後の組織片の蛍光3D画像を、励起波長を800 nmとする以外は試験例3と同様にして得た。一方で、試験例1-2で得た評価試験用植物組織片の細胞壁をカルフロールを用いて定法に従って染色し、染色後の組織片の蛍光3D画像を試験例3と同様にして得た。得られた蛍光3D画像(上下が葉の厚み方向である)を図8に示す。
【実施例】
【0109】
図8より、本発明の植物組織透明化剤で処理した植物組織は、化学染色可能であることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7