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明細書 :脂肪酸エステル連続製造用の陰イオン交換樹脂触媒の再生処理法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-059833 (P2016-059833A)
公開日 平成28年4月25日(2016.4.25)
発明の名称または考案の名称 脂肪酸エステル連続製造用の陰イオン交換樹脂触媒の再生処理法
国際特許分類 B01J  49/00        (2006.01)
B01J  41/04        (2006.01)
B01J  38/52        (2006.01)
B01J  38/62        (2006.01)
B01J  38/64        (2006.01)
B01J  31/08        (2006.01)
FI B01J 49/00 162
B01J 41/04 110
B01J 38/52
B01J 38/62
B01J 38/64
B01J 31/08 Z
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2014-187188 (P2014-187188)
出願日 平成26年9月16日(2014.9.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 2014年3月18日 化学工学会第79年会(場所:岐阜大学柳戸キャンパス)にて発表
発明者または考案者 【氏名】北川 尚美
【氏名】米本 年邦
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100181、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 正博
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
Fターム 4G169AA10
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BA23A
4G169BA23B
4G169CB25
4G169CB75
4G169DA06
4G169GA10
4G169GA12
4G169GA15
要約 【課題】従来の油脂からの脂肪酸エステル製造用の陰イオン交換樹脂触媒の再生処理法における工程を簡略化し、再生処理工程からの排出液を再利用することにより、再生処理法に使用する溶液量及び再生処理に要するコストを大幅に削減すること。
【解決手段】エステル交換/吸着過程でカラム内に残存している未反応油脂原料や製品脂肪酸エステルを含む液を該陰イオン交換樹脂に再度供給する新たな工程を追加すること、従来の方法の工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度を高くすること、及び、従来の方法の工程(3)で使用する水酸化ナトリウムの水溶液に代えて、水とメタノールとの混合溶液を用いること、並びに、再生処理の各工程からの排出液を次回の再生処理で再利用すること等を特徴とする、陰イオン交換樹脂触媒の再生処理法、及び、該方法で再生した陰イオン交換樹脂を使用する、油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造において使用した陰イオン交換樹脂の再生処理法であって、以下の工程:
工程(1):メタノールを該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着しているグリセリンを溶出させて副生物として回収し;
工程(2):酢酸のメタノール溶液を該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着している脂肪酸残基を酢酸残基と交換させ;
工程(3):水酸化ナトリウムの水及びメタノール混合溶液を該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着した酢酸残基を水酸基と交換させて該樹脂を活性化し;
工程(5):メタノールを該陰イオン交換樹脂に供給し、遊離水酸基及び酢酸ナトリウムを溶出させるともに該陰イオン交換樹脂を膨潤させ;及び
工程(6):工程(1)の前半部分において排出された、エステル交換/吸着過程における未反応油脂を含む液を該陰イオン交換樹脂に再度供給し、工程(5)で供給されたメタノールを押し出す、
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
工程(1)の前半60~80%における排出液を工程(6)における未反応油脂を含む液として供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度が0.8~1.4 mol/Lである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度が1.3 mol/Lである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程(3)で使用する水及びメタノール混合溶液におけるメタノール含有量が80容量%以下である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(3)で使用する水及びメタノール混合溶液における水及びメタノールの容量比が2:8である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程(2)からの排出液を、次回の再生処理法の工程(1)におけるメタノールに代えて再利用する、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(5)からの排出液を次回の再生処理法の工程(3)における水酸化ナトリウム、メタノール及び水の混合溶液の一部として再利用する、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(5)からの排出液をナトリウム濃度と水濃度を微調整した後、工程(3)における水酸化ナトリウム、メタノール及び水の混合溶液として再利用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程(6)からの排出液を次回の再生処理法の工程(5)の一部として再利用する、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法で再生した陰イオン交換樹脂を不均相固体触媒として使用する、油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法。
【請求項12】
陰イオン交換樹脂を充填した反応器を用いてエステル交換反応及び/又は吸着を連続的に行う請求項11に記載の方法。
【請求項13】
直列に連結された少なくとも2塔の陰イオン交換樹脂を充填した反応器を用いてエステル交換反応及び/又は吸着を連続的に行い、前記少なくとも2塔のうちの最上流側の反応器に充填された陰イオン交換樹脂の触媒活性が消失した時点で、該陰イオン交換樹脂を請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法による再生処理に供すると共に、残りの反応器の最下流側に該方法で再生した陰イオン交換樹脂が充填された反応器を連結することによって、脂肪酸エステルの連続的製造法を継続することから成るサイクルを繰り返すことを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、油脂原料に含まれる遊離脂肪酸をエステル化するための陽イオン交換樹脂が充填された反応器、及び、その下流に連結された、油脂に含まれるトリグリセリドのエステル交換反応及び/又は吸着に用いる陰イオン交換樹脂が充填され直列に連結された少なくとも2塔の反応器、及び、再生処理される陰イオン交換樹脂が充填された反応器を含む、前記システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂からの脂肪酸エステル製造法に使用する陰イオン交換樹脂触媒の再生処理法、及び、該再生処理法により再生された陰イオン交換樹脂触媒を用いる該脂肪酸エステル製造法等に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂類とアルコールとのエステル交換反応によって合成される脂肪酸エステルは、バイオディーゼル燃料として注目されている。バイオディーゼル燃料は、従来の石油系ディーゼル燃料(軽油)に比べて、燃焼した際の排ガスがクリーンであること、一酸化炭素や炭化水素、粒子状物質等の排出量が減少すること、排出ガス中に硫黄酸化物や硫酸塩を含まないこと、潤滑性能が高いなど多くの特長を有している。また、環境汚染の一因となる廃食用油からも合成できるため、環境調和型の廃棄物処理技術としても期待されている。
【0003】
本発明者である北川らは、陰イオン樹脂を不均相固体触媒として用いる独自発想で、比較的低温(50℃)で油脂原料に含まれるトリグリセリドのエステル交換を行う脂肪酸エステル合成技術を世界に先駆け開発している(非特許文献2、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
バイオディーゼル燃料として脂肪酸エステルの製造に用いられたイオン交換樹脂は、その使用により脂肪酸残基の樹脂への吸着が生じるために触媒性能が劣化することは避けられない。そこで、本発明者は、更にこのような脂肪酸エステル連続合成に使用する陰イオン樹脂の触媒活性を弱酸溶液で洗浄することによって再生する方法も開発した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開 2006-104316号公報
【特許文献2】特開 2007-297611号公報
【特許文献3】特開 2007-14871号公報
【0006】

【非特許文献1】Biochem.Biophys.Res.Commun.,348,170(2006)
【非特許文献2】Bioresource Technol.98,416(2007)
【非特許文献3】Bioresource Technol.142,732(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3、非特許文献2及び非特許文献3に記載されたような、脂肪酸エステルの製造に用いられたイオン交換樹脂を再生するための従来の方法は、数種類の多量の溶液を段階的に供給する必要があり、経済的にも環境的にも負荷が大きいものであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として研究の結果、従来の油脂からの脂肪酸エステル製造用の陰イオン交換樹脂触媒の再生処理法における工程を簡略化し、且つ、再生処理工程からの排出液を再利用することによって、再生処理法に使用する溶液量及び再生処理に要するコストを大幅に削減することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、以下の各態様にかかるものである。
[態様1]油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造において使用した陰イオン交換樹脂の再生処理法であって、以下の工程:
工程(1):メタノールを該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着しているグリセリンを溶出させて副生物として回収し;
工程(2):酢酸のメタノール溶液を該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着している脂肪酸残基を酢酸残基と交換させ;
工程(3):水酸化ナトリウムの水及びメタノール混合溶液を該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着した酢酸残基を水酸基と交換させて該樹脂を活性化し;
工程(5):メタノールを該陰イオン交換樹脂に供給し、遊離水酸基及び酢酸ナトリウムを溶出させるともに該陰イオン交換樹脂を膨潤させ;及び
工程(6):工程(1)の前半部分において排出された、エステル交換/吸着過程における未反応油脂を含む液を該陰イオン交換樹脂に再度供給し、工程(5)で供給されたメタノールを押し出す、
ことを含む、前記方法。
[態様2]工程(1)の前半60~80%における排出液を工程(6)における未反応油脂を含む液として供給する、態様1記載の方法。
[態様3]工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度が0.8~1.4 mol/Lである、態様1又は2記載の方法。
[態様4]工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度が1.3 mol/Lである、態様3記載の方法。
[態様5]工程(3)で使用する水及びメタノール混合溶液におけるメタノール含有量が80容量%以下である、態様1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
[態様6]工程(3)で使用する水及びメタノール混合溶液における水及びメタノールの容量比が2:8である、態様5記載の方法。
[態様7]工程(2)からの排出液を、次回の再生処理法の工程(1)におけるメタノールに代えて再利用する、態様1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]工程(5)からの排出液を次回の再生処理法の工程(3)における水酸化ナトリウム、メタノール及び水の混合溶液の一部として再利用する、態様1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]工程(5)からの排出液をナトリウム濃度と水濃度を微調整した後、工程(3)における水酸化ナトリウム、メタノール及び水の混合溶液として再利用する、態様8記載の方法。
[態様10]工程(6)からの排出液を次回の再生処理法の工程(5)の一部として再利用する、態様1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
[態様11]態様1ないし10のいずれか一項に記載の方法で再生した陰イオン交換樹脂を不均相固体触媒として使用する、油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法。
[態様12]陰イオン交換樹脂を充填した反応器を用いてエステル交換反応及び/又は吸着を連続的に行う態様11に記載の方法。
[態様13]直列に連結された少なくとも2塔の陰イオン交換樹脂を充填した反応器を用いてエステル交換反応及び/又は吸着を連続的に行い、前記少なくとも2塔のうちの最上流側の反応器に充填された陰イオン交換樹脂の触媒活性が消失した時点で、該陰イオン交換樹脂を態様1ないし10のいずれか一項に記載の方法による再生処理に供すると共に、残りの反応器の最下流側に該方法で再生した陰イオン交換樹脂が充填された反応器を連結することによって、脂肪酸エステルの連続的製造法を継続することから成るサイクルを繰り返すことを特徴とする、態様11又は12に記載の方法。
[態様14]態様11ないし13のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、油脂原料に含まれる遊離脂肪酸をエステル化するための陽イオン交換樹脂が充填された反応器、及び、その下流に連結された、油脂に含まれるトリグリセリドのエステル交換反応及び/又は吸着に用いる陰イオン交換樹脂が充填され直列に連結された少なくとも2塔の反応器、及び、再生処理される陰イオン交換樹脂が充填された反応器を含む、前記システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の陰イオン交換樹脂触媒の再生処理法においては、再生処理工程を簡略化し、且つ、再生処理工程からの排出液を次回の再生処理で最大限に再利用すること等によって、再生処理法に使用する溶液量及び再生処理に要するコストを大幅に削減することが可能となり、環境負荷を減らすことも出来る。
【0011】
更に、本発明方法により再生処理された陰イオン交換樹脂触媒を油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造におけるエステル交換/吸着用樹脂として再使用することによって、製品燃料である脂肪酸エステルを実質的に連続して製造することが可能となり、油脂からの製品燃料の製造と陰イオン交換樹脂の再生を連続的に行う「メリーゴーラウンドシステム」の構築が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】イオン交換樹脂触媒による遊離脂肪酸(FFA)を含む油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法のプロセスフローを示す。
【図2】本発明の脂肪酸エステルの連続的製造法を実施するための「メリーゴーラウンドシステム」の一例を示す。陽イオン交換樹脂を充填したカラム1塔と陰イオン交換樹脂を充填したカラム3塔(2塔は燃料製造,1塔は樹脂再生)からなるシステムであり、上流の塔に充填した陰イオン交換樹脂の活性が完全に消失した時点で操作をモード1→2→3と切り替える。
【図3】油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法における燃料製造プロファイルの一例を示す。再生方法には表1の従来法を用い、陰イオン交換樹脂0.6kgを充填したカラム型反応器(内径5cm、長さ50cm)2塔を通過して流出する製品中の各成分濃度の変化挙動である。1つのモードで得られる脂肪酸エステル量は網掛け部分の積分から約2.7Lとなる。
【図4】従来の陰イオン交換樹脂の再生処理法における再生処理プロファイルの一例を示す。陰イオン交換樹脂0.6kgを充填したカラム型反応器(内径5cm、長さ50cm)1塔を通過して流出する溶液中の各成分濃度の変化挙動である。
【図5】実施例2(1)の結果を示す。
【図6】実施例2(2)の結果を示す。
【図7】排出液の再利用を実施した場合と実施しない場合で、再生処理プロファイルを比較した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
非特許文献2及び非特許文献3に記載されたような、油脂からの脂肪酸エステル製造法に使用する陰イオン交換樹脂触媒の再生処理のために用いられている、従来の方法(非特許文献2)の概要を表1に示す。この方法は、以下の工程からなる。
(1)メタノールを該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着しているグリセリンを溶出させて副生物として回収し;
(2)酢酸のメタノール溶液を該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着している脂肪酸残基を酢酸残基と交換させ;
(3)水酸化ナトリウムの水溶液を該陰イオン交換樹脂に供給し、該樹脂に吸着した酢酸残基を水酸基と交換させて樹脂を活性化し;
(4)脱イオン水を該陰イオン交換樹脂に供給し、遊離水酸基及び酢酸ナトリウムを除去し;
(5)メタノールを該陰イオン交換樹脂に供給し、該陰イオン交換樹脂を膨潤させる。

【0014】
【表1】
JP2016059833A_000003t.gif

【0015】
本発明による陰イオン交換樹脂の再生処理法の一態様の概略を表2に示す。上記の従来の方法と比較した主な特徴は以下の通りである。

【0016】
1.工程(1)の前半部分において排出された、エステル交換/吸着過程でカラム内に残存している未反応油脂原料や製品脂肪酸エステルを含む液を該陰イオン交換樹脂に再度供給し、工程(5)で供給されたメタノールを押し出す、新たな工程(6)を追加することによって、再生処理後の陰イオン交換樹脂をエステル交換/吸着に使用した場合に、図3で見られるような従来の油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法において、最初にメタノールのみが排出し脂肪酸エステル(製品燃料)が得られない運転時間をなくし、連続的に製品燃料を製造することを可能とした。

【0017】
ここで、油脂原料等を含むエステル交換/吸着過程における未反応油脂を含む液は、適当な間隔で工程(1)の排出液の成分をHPLC等の当業者に公知の任意の方法・手段で適宜、分析等することによって確認することができる。

【0018】
工程(1)の前半部分は再生処理工程・システムの諸条件及び原料油脂成分等により変動するが、例えば、工程(1)の前半約60~80%である。

【0019】
2.上記の従来の方法の工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度を0.8~1.4 mol/L、好ましくは1.3mol/Lとし、反応の効率化(製造コストの減少)を図った。

【0020】
3.上記の従来の方法の工程(3)で使用する水酸化ナトリウムの水溶液に代えて、工程(3)における活性化反応効率を維持することが可能な量の水を含むメタノールとの混合溶液、即ち、メタノールを約80容量%まで含有する水とメタノールとの混合溶液、好ましくは、水及びメタノールの容量比が2:8の混合溶液を水酸化ナトリウムの溶媒として使用することによって、上記の従来の方法の工程(3)における水の使用量を減らし、更に、水を供給する工程(4)を不要にした。

【0021】
【表2】
JP2016059833A_000004t.gif

【0022】
更に、本発明による陰イオン交換樹脂の再生処理法の別の態様においては、上記態様に示した工程(1)~(3)及び(5)を含む方法、好ましくは、これに更に工程(6)を含む方法において、以下に挙げるような、再生処理の各工程からの排出液を次回の再生処理で再利用する、という特徴を有する。

【0023】
即ち、工程(1)の後半部分において排出された排出液はもはや未反応油脂は実質的に含まず、60wt%以上のグリセリンを含むメタノール溶液であるので、化成品原料用途の高品質グリセリンとして製品化する。

【0024】
工程(1)の後半部分は再生処理工程・システムの諸条件及び原料油脂成分等により変動するが、例えば、工程(1)の後半約20~40%である。

【0025】
更に、工程(2)からの排出液は樹脂から遊離した微量の脂肪酸を含むメタノールであるので、これを次回の再生処理法の工程(1)におけるメタノールに代えて再利用する。

【0026】
又、工程(5)から排出された排出液は、メタノール、ナトリウムイオン及び水を含むので、適宜、ナトリウム濃度と水濃度を微調整した後、これを次回の再生処理法の工程(3)における水酸化ナトリウム、メタノール及び水の混合溶液として再利用する。

【0027】
更に、工程(6)からの排出液を次回の再生処理法の工程(5)の一部として再利用する。

【0028】
本発明は更に、以上の再生処理法で再生した陰イオン交換樹脂を不均相固体触媒として使用する、油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法にも係る。尚、油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法自体は、本明細書の先行技術文献に挙げた文献等に既に記載されている。そのプロセスフローを図1に示す。

【0029】
具体的には、陰イオン交換樹脂を充填した反応器を用いてエステル交換反応及び/又は吸着を連続的に行う方法が好ましい。

【0030】
陰イオン交換体(アニオン交換体)としては、特開2006-104316号公報及び特開2007-297611号公報等に記載された当業者に公知の任意のものを使用することが出来る。特に、強塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。陰イオン交換樹脂を架橋度又は多孔度から分類した場合、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型等が挙げられるが、ポーラス型、ハイポーラス型が好ましい。

【0031】
因みに、市販品としては、例えば、ダイヤイオンPA-306(三菱化学社製)、ダイヤイオンPA-306S(同)、ダイヤイオンPA-308(同)、ダイヤイオンHPA-25(同)ダウエックス1-X2(ダウケミカル社製)、アンバーライトIRA-45(オルガノ社製)、アンバーライトIRA-94(同)等を用いることができる。

【0032】
更に、pKa9.8以下を満足する陰イオン交換樹脂の市販品としては、例えば、ダイヤイオンSA20A(三菱化学社製)、ダイヤイオンSA21A(同)、並びに、多孔質型のII型強塩基陰イオン交換樹脂であるダイヤイオンPA408(同)、ダイヤイオンPA412(同)及びダイヤイオンPA418(同)等を用いることができる。ここで、II型強塩基陰イオン交換樹脂とは前記したジメチルエタノールアンモニウム基を有する陰イオン交換樹脂を指す。

【0033】
陰イオン交換樹脂の市販品は、購入時点ではCl型となっているためOH基に置換してから本発明に使用される。例えば、置換剤には0.5~2モル/LのNaOH水溶液が用いられ、置換剤の通液速度は、陰イオン交換樹脂1ml当たり、2~10ml-NaOH/分程度が好ましい。通液量は陰イオン交換樹脂1ml当たり5~20ml使用される。置換終了後、カラムから樹脂を取り出し、置換剤が残留しないように蒸留水で充分洗浄する。樹脂の洗浄液のpHを測定し、蒸留水と同じpHになったことを確認し、最後に所定のアルコールで洗浄して本発明に使用する。

【0034】
陰イオン交換樹脂の使用量は、樹脂1kg-wet当たりの油類の通液量は、通常0.1~1.0L、好ましくは0.3~0.5L程度が使用される。

【0035】
又、陰イオン樹脂には油中に含まれる遊離脂肪酸が吸着されるため、これを多量に含む油を直接処理する場合には、該油脂を陰イオン交換樹脂に接触させる前に、陽イオン交換樹脂により該油に含まれる遊離脂肪酸のエステル化反応を進行させ吸着不活性なエステル体とする必要がある。

【0036】
陽イオン交換樹脂としては、例えば、ダイヤイオンPK-208LH(三菱化学社製)のような当業者に公知の陽イオン樹脂を使用することが出来る。

【0037】
陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂による反応時間及び温度等の諸条件は、当業者が適宜設定することができる。例えば、反応時間5分~2時間、0℃~55℃、1~10気圧程度とすることができる。

【0038】
尚、本発明の再生処理法及び脂肪酸エステルの製造法における反応時間及び温度、処理液の流速等の供給条件等の諸条件は、例えば、本明細書及び添付図面等に記載されている値に準じて、当業者が適宜設定することができる。

【0039】
本発明方法の脂肪酸エステルの連続的製造法における原料として用いる油脂に特に制限はなく、天然油(原油)、合成油、又はこれらの混合物でも良い。更に、これらの油類の一部を酸化、還元等の処理をして変性した変性油、並びに、これらの油を主成分とする油加工品も原料とすることができる。

【0040】
例えば、従来法で原料として利用されている米糠油及びパーム油の精製工程で副生し有効利用されていない脂肪酸油や脱臭流出物(スカム油)等が利用可能である。尚、油脂以外の任意の異物成分が混入している油を使用することも可能である。これらの異物成分は、好ましくは沈降、濾過、分液など当業者に公知の適当な手段により除去した後に本発明方法に用いる。

【0041】
又、本発明方法において使用するメタノールに代えて、炭素数1~8、好ましくは炭素数1~5の、飽和の直鎖または分岐鎖の炭化水素骨格を有する他のアルコール類を使用することも可能である。例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどを挙げることができる。これらのアルコールは単独あるいは2種以上混合して使用することができる。アルコール類は、油類を加アルコール分解(エステル交換反応)する反応基質として作用するほか、油類の希釈や粘度を調節するための溶媒作用も併せ有するものである。

【0042】
本発明の脂肪酸エステルの連続的製造法において、直列に連結された少なくとも2塔の陰イオン交換樹脂を充填した反応器を用いてエステル交換反応及び/又は吸着を連続的に行い、前記少なくとも2塔のうちの最上流側の反応器に充填された陰イオン交換樹脂の触媒活性が消失した時点で、該陰イオン交換樹脂を本発明の再生処理方法に供すると共に、残りの反応器の最下流側に該方法で再生した陰イオン交換樹脂が充填された反応器を連結することによって、脂肪酸エステルの連続的製造法を継続することから成るサイクルを繰り返す、所謂「メリーゴーラウンドシステム(方式)」を構成することができる。この一例を図2に示す。

【0043】
従って、本発明は、このような油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法を実施するためのシステムにも係る。該システムは、例えば、油脂原料に含まれる遊離脂肪酸をエステル化するための陽イオン交換樹脂が充填された反応器、及び、その下流に連結された、油脂に含まれるトリグリセリドのエステル交換反応及び/又は吸着に用いる陰イオン交換樹脂が充填され直列に連結された少なくとも2塔の反応器、及び、再生処理される陰イオン交換樹脂が充填された反応器を含む。

【0044】
本発明のシステムにおいて、更に具体的には、所定のイオン交換体を充填した容器(反応器)の一方に反応基質の導入口を、他方に、生成物の回収口をそれぞれ有する反応装置が望ましい。前記容器は、単独に有していてもよいが、並列および/または直列に、複数個接続されてなる構造を有していてもよい。また、前記容器の形状は特に限定はないが、通常、カラムが用いられる。イオン交換樹脂をカラムに充填して使用する場合、樹脂が膨潤して破損することを防止するため、空隙率の高いエクスパンデットベットカラム充填層を用いる態様は好ましい。ここで、エクスパンデッドベッドカラムとは、粘度の高い流体や固形分を含んだ流体中から溶解している目的成分を吸着剤粒子に吸着させて回収する分離精製法に用いられ、カラム内を上向きに流体を流し、比重の大きい吸着剤粒子を静止状態で浮遊させ、空隙率を大きく保った状態でカラムクロマトグラフィー操作を行うもの等をいい、例えば、化学工学論文集第27巻第2号(2001)第145-148頁等に記載される公知の方法を用いることができる。アルコール類に対する油類のモル比が大きい範囲において、膨潤によるイオン交換樹脂の破損の問題が生じ易いので、反応器の設計に際して留意される。ただし、効率的な操作のため、油とアルコールの混合液を通液する反応/吸着操作の際には上昇流を、酸とアルコールの混合液を通液する樹脂再生操作の際には下降流を用いることが好ましい。

【0045】
以下、実施例に則して本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの記載によって何等制限されるものではない。尚、以下の実施例において特に断わりがない限り、当業者に公知の一般的な方法に従い実施した。
【実施例1】
【0046】
[本発明のイオン交換樹脂の再生処理法における工程(6)の効果]
本発明のイオン交換樹脂の再生処理法における工程(6)において、工程(1)において排出された、エステル交換/吸着過程でカラム内に残存している未反応油脂原料や製品脂肪酸エステルを含む液を該陰イオン交換樹脂に供給し、工程(5)で供給されたメタノールを押し出すことによる効果を、以下の条件で検証した。陽イオン交換樹脂Diaion PK208LHを1.4kg-wet充填したカラム(直径5cm×長さ100cm)1本と陰イオン交換樹脂DiaionPA306Sを0.6kg-wetずつ充填したカラム(直径5cm×長さ50cm)2本を直列に連結した反応システムを50℃に保持し、粗Jatropha油(遊離脂肪酸含有量30wt%)とメタノールを化学量論比で混合した原料溶液を100cm3/hで供給した。
【実施例1】
【0047】
図1に示したような油脂からの脂肪酸エステルの連続的製造法における燃料製造プロファイル(製造される脂肪酸メチルエステル(FAME)、トリグリセルド(TG)及び遊離脂肪酸(FFA)の量の経時変化)を図3に示した。
【実施例1】
【0048】
ここで、前述の工程(6)を実施しない場合には、メリーゴーラウンドシステムを用いて連続製造・再生を行っても、実際には図3のプロファイル(横軸0-3.8の部分、未反応TGが検出されない部分)全体が繰り返される。つまり、半回分操作となり、横軸0-0.8の部分はメタノールのみが流出し、製品が得られない。即ち、製造運転時間の21%においては製品が得られないことになる。
【実施例1】
【0049】
これに対して、工程(6)を加えることで、図3の破線から左の領域部分が再生工程に移行することとなり、製造工程は横軸0.8-3.8の部分の繰り返しとなり、実質的に連続して製品燃料を製造することが可能となる。
【実施例1】
【0050】
図2に示したようなメリーゴーラウンドシステムを用いる場合には、再生後のカラムはメリーゴーラウンドの製造用カラムの最下流側に連結される。上記工程(6)後のカラム内に残っている反応液は、本発明の再生処理法で工程(1)において排出された、エステル交換/吸着過程における未反応油脂原料と製品脂肪酸エステルを含む液であり、再生されたイオン交換樹脂によって少なくとも半分以上反応が進行したものである。従って、これを製造の最下流に連結される再生後のカラムに戻した場合、カラム1つしか通過しなくても反応率は100%となり、油脂からの製品燃料の製造と陰イオン交換樹脂の再生を連続的に行うメリーゴーラウンドシステムの構築が可能となる。
【実施例2】
【0051】
[本発明のイオン交換樹脂の再生処理法における工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度及び工程(3)で使用する水とメタノールとの混合溶液の効果]
従来の陰イオン交換樹脂の再生処理法(非特許文献2)における再生処理プロファイル(図4)に基づいて以下の検討を行った。
【実施例2】
【0052】
まず、工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度を変えることによる排出される遊離脂肪酸量の変動を測定し、反応の効率化(製造コストの減少)を検討した。その結果を図5に示す。
【実施例2】
【0053】
それによると、工程(2)で使用するメタノール溶液中の酢酸濃度の範囲を従来の0.43mol/Lに比べて高い範囲、例えば、約0.8~1.4 mol/L、好ましくは約1.3mol/Lとした場合に、溶出する遊離脂肪酸(”FH” 又は“FFA”と標記)濃度が速やかに上昇するために、使用した酢酸量全体は増加したが必要とされるメタノール溶液がより少量ですみ、その結果、工程(2)で使用する試薬全体のコストは減少し、反応の効率化を図ることができた。
【実施例2】
【0054】
次に、上記の従来の方法の工程(3)で使用する水溶液に代えて、水とメタノールとの混合溶液を使用することによる影響を検討した。その結果を図6に示す。
【実施例2】
【0055】
それによると、メタノールを約80%まで含有する水とメタノールとの混合溶液、特に、水及びメタノールの容量比が2:8の混合溶液中では、遊離水酸基濃度が水酸化ナトリウム水溶液中と同程度に維持されることが判明した。従って、工程(3)において、従来の水酸化ナトリウムの水溶液に代えて水酸化ナトリウムの水とメタノールとの混合溶液を使用することによって、水酸基による活性化反応効率を実質的に維持しつつ、工程(3)における水の使用量を減らし、工程(4)が不要となり、更には、工程(5)に要する時間を短縮することが可能となった。
【実施例2】
【0056】
従来の陰イオン交換樹脂の再生処理法に以上の改良点を加えた再生処理プロファイルを図7に示す(従来技術における工程(4)は削除されている)。これと図4に示された従来の陰イオン交換樹脂の再生処理法における再生処理プロファイルとの比較から明らかなように、従来技術と同程度の再生処理効率を維持しつつ、再生処理コストを従来の159.5円/L-FAME(脂肪酸エステル)から、上記改良によって125.7円/L-FAMEまで減少させるという顕著な効果が得られた(表3)。尚、いずれの処理法を用いた場合も、燃料製造の各モードで製造される脂肪酸エステル量は約2.7Lであり、この値から脂肪酸エステル1Lあたりのコストが求まる。
【実施例2】
【0057】
【表3】
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【実施例3】
【0058】
[再生処理の各工程からの排出液を次回の再生処理で再利用することによる効果]
実施例2に記載した、本発明による従来の陰イオン交換樹脂の再生処理法の改良技術において、更に、再生処理の各工程からの排出液を次回の再生処理で再利用することによる影響を検討した。
【実施例3】
【0059】
まず、本発明による陰イオン交換樹脂の再生処理法の改良技術(図7)の各再生処理工程からの排出液組成に基づき、次回の再生処理で再利用した場合の再利用率を検討した。その結果を表4に示す。
【実施例3】
【0060】
【表4】
JP2016059833A_000006t.gif
【実施例3】
【0061】
更に、表4に示された排出液の再利用を実施した場合と実施しない場合で、再生処理プロファイル及び再生処理コストを比較した(表5)。尚、燃料製造の各モードで製造される脂肪酸エステル量は約2.7Lで変わらず、この値から脂肪酸エステル1Lあたりのコストが求まる。その結果、両者で同様の再生処理プロファイルが得られ、排出液を再利用した場合でも、陰イオン交換樹脂の再生処理能力は実質的に低下しないことが確認された。一方で、排出液の再利用を実施することによって、再生処理法における溶液の使用総量が著しく減少し、更に、脂肪酸エステルの製造コストを68.5%も低減させることが可能となった。又、排出液を再利用することによって、環境負荷を減らすことが出来た。
【実施例3】
【0062】
【表5】
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【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によって、バイオディーゼル燃料用の脂肪酸エステル製造のコストを大幅に削減することができ、市販の軽油製造コストよりも安価に、且つ、より少ない環境負荷で製造することが可能となる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6