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明細書 :繊維の画像解析方法及び画像解析システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-045141 (P2016-045141A)
公開日 平成28年4月4日(2016.4.4)
発明の名称または考案の名称 繊維の画像解析方法及び画像解析システム
国際特許分類 G01N  33/36        (2006.01)
G01N  21/17        (2006.01)
FI G01N 33/36 B
G01N 21/17 A
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-171057 (P2014-171057)
出願日 平成26年8月26日(2014.8.26)
発明者または考案者 【氏名】西川 幸宏
【氏名】八木 俊憲
出願人 【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA05
2G059BB08
2G059FF01
2G059KK04
要約 【課題】繊維が絡まり合った製品を画像解析する方法及びシステムを提供する。
【解決手段】複数の湾曲した繊維を含む製品の二次元又は三次元画像を取得する工程、画像中の繊維部分に仮想的な粒子を詰め込む工程を含み、繊維を粒子の集合体として解析することを特徴とする、複数の湾曲した繊維を含む製品の画像解析方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の湾曲した繊維を含む製品の二次元又は三次元画像を取得する工程、画像中の繊維部分に仮想的な粒子を詰め込む工程を含み、繊維を粒子の集合体として解析することを特徴とする、複数の湾曲した繊維を含む製品の画像解析方法。
【請求項2】
繊維部分への仮想的な粒子の詰め込みにおいて、粒子径が最大化する探索アルゴリズムを加えた、請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項3】
繊維部分への仮想的な粒子の詰め込みにおいて、粒子を振動させ最大数の粒子を詰め込む探索アルゴリズムを加えた、請求項1又は2に記載の画像解析方法。
【請求項4】
繊維部分に詰め込んだ仮想粒子の解析において、1つの仮想粒子に隣接する別の仮想粒子の数が3個以上のグループと2個以下のグループに分け、隣接する仮想粒子が3個以上のグループ全体が繊維の接点と見なして解析する、請求項1~3のいずれかに記載の画像解析方法。
【請求項5】
繊維の長さ、繊維の太さ、繊維間の接点、接点間の繊維長からなる群から選ばれる構造情報を解析する、請求項1~4のいずれかに記載の画像解析方法。
【請求項6】
複数の湾曲した繊維を含む製品の二次元又は三次元画像を取得する画像取得手段、画像中の繊維部分に仮想的な粒子を詰め込んで繊維を粒子の集合体として解析する手段を備えた複数の湾曲した繊維を含む製品の画像解析システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は繊維の画像解析方法及び画像解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙、不織布、フェルトなどの繊維製品は、太さ、長さなどが異なる複数の繊維が絡まった構造を有している。これらの繊維製品を改良するには、太さ、長さなどの繊維そのものの解析と共に繊維の存在形態である絡まり具合を評価する必要がある。
【0003】
繊維の画像解析は、繊維を細い線で表現(細線化)して、数値化を行う、あるいは、繊維を直線として抽出するのが一般的である。この方法は繊維が線状であり、かつ、鮮明な画像が得られれば十分に機能するが、繊維が大きく湾曲していたり、複雑に交差していると繊維の端や交点の判定が難しく、解析が破たんする。
【0004】
特許文献1は、毛髪繊維の2次元画像の形状解析システムを開示している。1本の毛髪の解析にはこのシステムで十分であるが、複雑に絡まった繊維製品の解析は難しい。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-241256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、繊維が絡まり合った製品の繊維の状況を画像解析する方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、繊維の画像に仮想的な微粒子を詰め込み、微粒子の集合体として繊維を表現することで、繊維の太さ、長さ、繊維の接点の数、接点間の繊維長などの構造情報を解析できることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の画像解析方法及び画像解析システムを提供するものである。
項1. 複数の湾曲した繊維を含む製品の二次元又は三次元画像を取得する工程、画像中の繊維部分に仮想的な粒子を詰め込む工程を含み、繊維を粒子の集合体として解析することを特徴とする、複数の湾曲した繊維を含む製品の画像解析方法。
項2. 繊維部分への仮想的な粒子の詰め込みにおいて、粒子径が最大化する探索アルゴリズムを加えた、項1に記載の画像解析方法。
項3. 繊維部分への仮想的な粒子の詰め込みにおいて、粒子を振動させ最大数の粒子を詰め込む探索アルゴリズムを加えた、項2に記載の画像解析方法。
項4. 繊維部分に詰め込んだ仮想粒子の解析において、1つの仮想粒子に隣接する別の仮想粒子の数が3個以上のグループと2個以下のグループに分け、隣接する仮想粒子が3個以上のグループ全体が繊維の接点と見なして解析する、項1~3のいずれかに記載の画像解析方法。
項5. 繊維の長さ、繊維の太さ、繊維間の接点、接点間の繊維長からなる群から選ばれる構造情報を解析する、項1~4のいずれかに記載の画像解析方法。
項6. 複数の湾曲した繊維を含む製品の二次元又は三次元画像を取得する画像取得手段、画像中の繊維部分に仮想的な粒子を詰め込んで繊維を粒子の集合体として解析する手段を備えた複数の湾曲した繊維を含む製品の画像解析システム。
【発明の効果】
【0009】
従来の細線化法は二次元画像の解析に適しているが、三次元画像の処理は難しいという問題点があり、繊維の接点部分が細線化しにくい、余計な「端」が発生する、という問題がある。また、細線化は必ず2値化プロセスを伴い、2値化プロセスはノイズに弱いという欠点があった。これに対し本発明の方法では、二次元画像であっても三次元画像であっても、全く同じ原理で解析することができる。また、接点の取り出し及び端の処理が容易である、画像をポテンシャルとして扱えるので処理が面倒な2値化が必要ないなどの利点を有する。
【0010】
本発明を用いれば、大きく湾曲し、複雑に交差するような繊維においても、繊維と繊維状態を破たんなく解析できる。本発明は二次元画像にも適用できるが、特に三次元画像への適用を念頭に研究および開発しており、繊維複合材料や不織布の構造に対して、画期的な解析法および解析システムを提供することができる。
【0011】
本発明の方法によれば、繊維複合材料では繊維の長さや湾曲、紡績糸では繊維のトラッキング、不織布・フェルトでは繊維の接点、接点間距離などが解析できる。これらの構造情報に基づき、各種の繊維製品の評価が可能になり、よりよい繊維製品の提供のための解析が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のRB法(Rosary Beads Method; 数珠つなぎ法)を繊維に適用した画像を示す。
【図2】接点数の画像解析方法
【図3】接点間の繊維に詰め込まれた仮想的な粒子の粒径分布
【図4】RB法のメリット
【図5】接点の解析方法
【図6】仮想粒子の粒子径が最大化する探索アルゴリズムを加える方法(風船ふくらまし法)
【図7】仮想粒子の粒子径が最大化する探索アルゴリズムを加える方法(風船ふくらまし法)の改良
【図8】仮想的な粒子を振動させ最大数の粒子を詰め込む探索アルゴリズムを加える方法(Jam-Packed Train法)を用いた粒子詰め込みアルゴリズム
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で構造解析の対象となる繊維製品は、複数の湾曲した繊維を含む製品であり、例えば不織布、フェルト、抄紙、これらの積層体、立体不織布などが挙げられる。また、それらを樹脂で包埋した複合材料も繊維製品に含まれる。

【0014】
本発明では、これらの繊維製品について二次元又は三次元の画像を利用する。取得する手段としては、二次元の画像であればカメラを用いて取得してもよく、三次元の画像であればX線CTなどを利用することができる。

【0015】
得られた画像中の各繊維について仮想的な粒子を当てはめる。具体的には、図1に示すように不織布の画像において、繊維に対応して仮想的な粒子をぎっしり詰め、繊維を粒子のつながりで表現する。次いで粒子のつながりを解析することにより繊維の形態についての詳細なデータを得ることができる。本発明の方法は、繊維をネックレスのビーズのように表現することから、本明細書ではRosary Beads法(RB法、数珠つなぎ法)と呼ぶことがある。繊維は、2つの別の粒子と隣接する粒子の集合体として表されることになる。

【0016】
RB法において、繊維間の接点数は、詰め込んだ粒子の近接粒子を数え上げることにより行う(図2)。近接粒子とは注目している粒子に隣接している他の粒子のことである。1本の繊維が独立して存在し、他の繊維との接点がない場合、粒子は繊維の中に1列に詰め込まれる(図2Aでは5個の粒子で表現されている)。1本の独立した繊維内の近接粒子は、繊維の中央部(非末端)では2個であり、末端では1個である(図2A)。一方、2本の繊維に交点(接点)が存在する場合、図2Bのような分岐の場合と図2Cのような交差の場合がある。繊維が分岐しているか、他の繊維の末端で接点を構成する場合、近接粒子の数は3個になる。本発明では分岐点を接点と見なす。2本の繊維が交差している場合、近接粒子の数は4個になる。

【0017】
図1の不織布の3次元画像をRB法で解析したときの接点間の繊維に詰め込まれた仮想粒子の粒径分布を図3に示す。接点間の粒子はばらつきが少ない分布となっている。一番大きいピークである30μm付近が、この不織布の平均の繊維径であると考えられる。

【0018】
RB法の特長について説明する。図4に示すように2本の繊維が平行にくっついている場合、従来の細線化方法では1本の繊維として処理されるので、細線化方法はそのような場合に正確な解析ができず適していない。一方、本発明のRB法では2本の繊維が平行にくっついている場合、粒子が2列になって繊維に詰め込まれるので、2本の繊維として正確に解析可能である。

【0019】
図5Aに示すように、近接粒子が3個以上のグループと2個以下のグループに分けることができる。接点では近接粒子が3個以上になるので、近接粒子が3個以上のグループは接点の集合と見なして解析することができる。近接粒子が2個又は1個の粒子は接点以外の繊維部分を表す。

【0020】
図5Bに示すように、2本の繊維が広い範囲でくっついている場合には、全体を一つの接点として解析することができる。

【0021】
本発明において、画像の繊維に粒子を充填する方法として、仮想粒子の径を最大化するような傾向を付与した風船ふくらまし法によって、より現実的な粒子の充填を得ることができる。図6に風船ふくらまし法のアルゴリズムをフローチャートで示す。風船ふくらまし法では、先ず初期設定した粒径の粒子が描ける座標を探し、選んだ座標で粒子を限界まで膨らます。さらに大きい粒子が描ける座標を探査し、その位置に粒子を移動させて限界まで膨らませる。粒子が詰め込める間はこの操作を繰り返し、これ以上粒子を詰め込むことができなくなった時点で粒子の詰め込みを終了することで、繊維の中に粒子を詰め込むことができる。この風船ふくらまし法で限界近くまで粒子を繊維に詰め込むことができるが、図7Aに示すように近接粒子間に比較的大きな隙間(特に粒子1個分に近い隙間)が存在する場合、近接粒子数の解析を間違える可能性がある。この問題をなくすためには、仮想粒子を振動させ、粒子数を最大化するような傾向を付与したJam-Packed Train法によって、さらに密な粒子の充填状態を得ることができる。

【0022】
Jam-Packed Train法は、図8に示すように乱数で座標を選び、選んだ座標に粒子が存在していない場合には仮想的な球(粒子)を描く。選んだ座標で球(粒子)を描いた場合に球(粒子)が繊維の領域からはみ出す場合には再度乱数で座標を選ぶ。乱数で選んだ座標位置に既に球(粒子)が存在する場合には、先に描いている球を一旦消した後、座標を少し移動し、そこで球(粒子)が描ければそのままとし、粒子が描けなければいったん消した球(粒子)を元に戻し、さらに乱数で座標を選ぶ操作を繰り返す。これ以上球(粒子)が描けなくなった時点で球(粒子)の詰め込みを終了する。

【0023】
以上説明したように、風船ふくらまし法とJam-Packed Train法は組み合わせて使用することができる。

【0024】
ある不織布の三次元画像において風船ふくらまし法のみで仮想粒子を詰め込んだ場合と比較して、風船ふくらまし法+Jam-Packed Train法で仮想粒子を詰め込んだ場合、約1%仮想粒子の数が増大した。このようにJam-Packed Train法を用いれば解析の精度を上げることができるが、画像によっては風船ふくらまし法のみでも十分に解析を行うことができる。

【0025】
また、別の画像において近接粒子数が2以下の粒子の連なりのみを抽出し、そのグループを構成する粒子の粒径の合計を接点間の繊維長として算出したところ、接点間繊維長は129μmであり、この値は現物の繊維を極めて精度よく解析できていることが実証された。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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