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明細書 :認知機能障害改善用細胞製剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-044152 (P2016-044152A)
公開日 平成28年4月4日(2016.4.4)
発明の名称または考案の名称 認知機能障害改善用細胞製剤
国際特許分類 A61K  35/28        (2015.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61K  35/12        (2015.01)
FI A61K 35/28
A61P 25/28
A61K 35/12
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-170861 (P2014-170861)
出願日 平成26年8月25日(2014.8.25)
発明者または考案者 【氏名】安宅 弘司
【氏名】乾 明夫
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
審査請求 未請求
テーマコード 4C087
Fターム 4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA15
要約 【課題】認知機能障害の改善に有用な細胞製剤を提供する。
【解決手段】(i)骨髄由来トリプシン耐性細胞又は(ii)表面抗原を指標としてフローサイトメーターで細胞を分画する方法で得られるCD105陽性、CD90陰性分画から得られる中胚葉前駆細胞を含む細胞群を含有する認知機能障害改善用細胞製剤;及びヒトから採取された骨髄細胞を培養後、10~30分間トリプシン処理を施し、当該処理により培養容器から剥離しない細胞を有効成分とすることを含む細胞製剤の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
(i)骨髄由来トリプシン耐性細胞又は(ii)表面抗原を指標としてフローサイトメーターで細胞を分画する方法で得られるCD105陽性、CD90陰性分画から得られる中胚葉前駆細胞を含む細胞群を含有する認知機能障害改善用細胞製剤。
【請求項2】
骨髄内、静脈内又は脳内に投与される請求項1記載の細胞製剤。
【請求項3】
骨髄由来トリプシン耐性細胞が、ヒトから採取された骨髄細胞を培養後、トリプシン処理を施し、当該処理により培養容器から剥離しない細胞である請求項1又は2記載の細胞製剤。
【請求項4】
ヒトから採取された骨髄細胞を培養後、10~30分間トリプシン処理を施し、当該処理により培養容器から剥離しない細胞を有効成分とすることを含む細胞製剤の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、骨髄由来細胞を用いた認知機能障害改善用細胞製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨髄内の幹細胞は、造血系幹細胞と間葉系幹細胞に分類される。造血系幹細胞は各種血球細胞に分化し、一方、間葉系幹細胞は骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞に分化する。
【0003】
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells, MSC)を使った再生をターゲットとした様々な研究(アルツハイマー病、脳梗塞、脊髄損傷、肝臓再生、糖尿病(β細胞再生)、腱再生など)が行われている。間葉系幹細胞は三胚葉に分化する。
【0004】
骨髄由来間葉系幹細胞は、各成長因子の分泌、抗炎症作用(免疫調整作用)、抗アポトーシス作用などで損傷部位の修復に関与することが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
骨髄由来細胞を使った認知機能障害改善についての研究は、骨髄由来間葉系幹細胞を直接脳内投与した報告がある(非特許文献2)。間葉系幹細胞は骨髄以外の組織にも存在しており、脂肪組織、胎盤及び臍帯由来の間葉系幹細胞によるアルツハイマー病における認知機能低下の改善については基礎研究ならびに臨床研究が報告されている(非特許文献3)。
【0006】
しかしながら、骨髄細胞を培養、トリプシン処理して得られた骨髄由来トリプシン耐性細胞を静脈内投与又は骨髄内投与することでの認知機能障害改善について報告はない。トリプシン処理は細胞に対してある種のストレスを与えると考えられるが、このようなストレス耐性の骨髄由来細胞にMuse(multilineage differentiating stress enduring)細胞がある(非特許文献4)。しかしながら、Muse細胞の分画分取方法(非特許文献5)では、トリプシン処理は5分間であり、また、トリプシン処理で剥離していることから、トリプシン耐性細胞(中胚葉前駆細胞)ではないと考えられる。
【0007】
近年、骨髄由来間葉系幹細胞のなかでもいくつかのサブポピュレーションがあり、いわゆる間葉系幹細胞(MSC)以外の幹細胞の存在について報告がされてきている。この中の一つに中胚葉前駆細胞(Mesodermal progenitor cells)がある。この中胚葉前駆細胞は間葉系幹細胞(MSC)の親細胞であると報告されている(非特許文献6)。
【0008】
また、骨髄由来細胞でトリプシン耐性の性質を有する細胞は中胚葉前駆細胞であることが報告されている(非特許文献7)。ヒト中胚葉前駆細胞の表面抗原についての報告があり、ヒト中胚葉前駆細胞はCD105陽性、CD90陰性とされている(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】M.B. Murphy et al., Mesenchymal stem cells: environmentally responsive therapeutics for regenerative medicine, Experimental & Molecular Medicine (2013) 45, e54.
【非特許文献2】J.W. Lee et al., Antibacterial effect of human mesenchymal stem cells is mediated in part from secretion of the antimicrobial peptide LL-37, Stem Cells. 2010 Dec;28(12):2229-2238.
【非特許文献3】P.L. Martinez-Morales et al., Progress in stem cell therapy for major human neurological disorders, Stem Cell Rev. 2013 Oct;9(5):685-699.
【非特許文献4】Y. Kuroda et al., Multilineage-differentiating stress-enduring (Muse) cells are a primary source of induced pluripotent stem cells in human fibroblasts, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 108 (24): 9875-9880.
【非特許文献5】東北大学大学院医学系研究科 細胞組織学分野・人体構造学分野、Muse細胞に関するProtocol http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/protocol/
【非特許文献6】R. Fazzi et al., Mesodermal Progenitor Cells (MPCs) Differentiate into Mesenchymal Stromal Cells (MSCs) by Activation of Wnt5/Calmodulin Signalling Pathway, PLoS ONE 2011 6(9): e25600.
【非特許文献7】M. Petrini et al., Identification and purification of mesodermal progenitor cells from human adult bone marrow, Stem Cells Dev. 2009 Jul-Aug;18(6):857-866.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、認知機能障害の改善に有用な細胞製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)(i)骨髄由来トリプシン耐性細胞又は(ii)表面抗原を指標としてフローサイトメーターで細胞を分画する方法で得られるCD105陽性、CD90陰性分画から得られる中胚葉前駆細胞を含む細胞群を含有する認知機能障害改善用細胞製剤。
(2)骨髄内、静脈内又は脳内に投与される前記(1)に記載の細胞製剤。
(3)骨髄由来トリプシン耐性細胞が、ヒトから採取された骨髄細胞を培養後、トリプシン処理を施し、当該処理により培養容器から剥離しない細胞である前記(1)又は(2)に記載の細胞製剤。
(4)ヒトから採取された骨髄細胞を培養後、10~30分間トリプシン処理を施し、当該処理により培養容器から剥離しない細胞を有効成分とすることを含む細胞製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、認知機能障害の改善に有用な細胞製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は10日後の接着培養細胞の状態(A)及びトリプシン処理後、培養容器に接着している細胞の状態(B)を示す。
【図2】図2は認知機能改善効果の評価法の概略を示す。
【図3】図3は認知機能改善効果の評価結果を示す。
【図4】図4は認知機能改善効果の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
骨髄液は、通常、ほぼ全ての患者から局所麻酔で安全かつ容易に採取することができる。採取された骨髄細胞は、増殖培養することができるため、これを用いる治療に必要な量まで予め増殖させておくことができる。

【0015】
本発明においては、有効成分として(i)骨髄由来トリプシン耐性細胞又は(ii)表面抗原を指標としてフローサイトメーターで細胞を分画する方法で得られるCD105陽性、CD90陰性分画から得られる中胚葉前駆細胞を含む細胞群を用いる。

【0016】
骨髄由来細胞でトリプシン耐性の性質を有する細胞は中胚葉前駆細胞であることが報告されている(非特許文献7)。

【0017】
したがって、ヒト等の対象動物から採取された骨髄細胞を培養後、トリプシン処理を施し、当該処理により培養容器から剥離しない細胞を、例えば、セルスクレーパーで物理的に剥離させることにより、骨髄由来トリプシン耐性細胞又は中胚葉前駆細胞を調製することができる。

【0018】
また、ヒト中胚葉前駆細胞はCD105陽性、CD90陰性とされているので、表面抗原を指標としてフローサイトメーターで細胞を分画する方法で得られるCD105陽性、CD90陰性分画から得られる中胚葉前駆細胞を含む細胞群をそのまま、又は中胚葉前駆細胞を単離又は濃縮して用いることができる。

【0019】
前記培養は、常法により行うことができ、例えば、骨髄穿刺などにより得られた骨髄溶液を10%の自己血清もしくはウシ胎児血清含有のダルベッコ変法イーグル培地(D-MEM )の入った培養容器に移し、37℃、5%CO/airにて3~5日間培養後、新しい培養液に交換し更に3日間培養し、新しい培養液に交換後、更に3日間培養することにより行うことができる。

【0020】
前記トリプシン処理は、通常5~60分間、好ましくは10~30分間行う。
得られた骨髄由来トリプシン耐性細胞又は中胚葉前駆細胞は、必要に応じて、凍結などの所定の方法により長期間保存しておくことができる。保存・解凍方法を以下に示す。

【0021】
まず、細胞凍結作業は以下のようにして行うことができる。最初にプログラムフリーザ、凍結バックF-100、液体窒素、チューブシーラー等の機材を準備する。また、DMSO、デキストラン自己血清、D-MEM等の試薬を調製し準備する。

【0022】
次いで、培養液を除去後、T/Eを添加し、付着培養細胞を回収し、等量の細胞洗浄液(2%自己血清含D-MEM)を加え、400gで5分遠心分離を行う。細胞洗浄液(2%自己血清含D-MEM)で細胞ペレットを攪拌し、400gで5分遠心分離を行う。次いで、細胞保存液(50%自己血清含D-MEM)41mlに細胞を攪拌する。この際、1mlシリンジを用いて0.5ml 2本の細胞溶液を分取し、細胞数をカウントする。攪拌した液体の細菌・ウイルス検査を実施し、細菌・ウイルスに汚染されていないことを確認する。次いで凍結保護液(DMSO(Cryoserv)5ml、10%デキストラン40 5ml)10mlを添加する。これを凍結バックに50mlずつ充填し、各バックに検体番号を記載する。バックをプログラムフリーザにて凍結開始し、凍結したバックは液体窒素タンクへ移動して保存する。

【0023】
細胞解凍洗浄作業は以下のようにして行うことができる。まず、温浴槽、クリーンベンチ、遠心分離機、分離バック、チューブシーラー等の機材を準備する。また、20%ヒト血清アルブミン(又は自己血清)、生理食塩水、10%デキストラン40等の試薬を調製し準備する。次いで、液体窒素タンクより細胞を保存した凍結バックを取り出し気相5分、室温2分に静置する。気相及び室温に静置する理由は液体窒素気化による破裂を防止するためである。バックを滅菌済みビニール袋に入れ、バックのピンホール等による内容物流出を阻止する。このビニール袋を温浴槽に入れ解凍する。解凍後、細胞溶液を血液バック(閉鎖系)又はチューブ(開放系)に全液量を回収する。回収した細胞溶液に洗浄液(20%ヒト血清アルブミン25ml、生理食塩水75ml、10%デキストラン40 100ml)を等量添加する。室温で5分間静置して平衡状態にし、細胞内のDMSOを抜く。続いて400gで5分遠心分離を行う。前記細胞洗浄液で細胞ペレットを攪拌する。このようにして得られた細胞溶液は患者の体内に投与され、また一方で、1mlシリンジを用いて0.5ml 2本細胞溶液を分取し、生存率検査及び細菌検査を実施する。

【0024】
更に本発明では、このようにして予め採取、培養、保存しておいた細胞は、必要時に直ちに解凍して活性状態に戻し、そのまま可及的速やかに投与し治療のために使用することができる。この際、ヘパリンは使用しない。また、投与される患者側にも特に制限される事項はない。

【0025】
本発明の細胞製剤は、当業者に公知の方法で製剤化することが可能である。例えば、必要に応じて水又はそれ以外の薬学的に許容される液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬学的に許容される担体又は媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁化剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビークル(vehicle)、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。また、注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなビークルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。

【0026】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムを含む等張液が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。

【0027】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。

【0028】
患者の体内への投与は、好ましくは骨髄内投与、静脈内投与又は脳内投与であり、1回の投与が基本であるが、複数回の投与でもよい。また、投与時間は短時間でも長時間持続投与でもよい。

【0029】
本発明の細胞製剤に含まれる細胞は、移植による拒絶反応の危険性を防止するために、免疫抑制などの特殊な操作を行わない限りは、患者由来の自家細胞であることが好ましい。これは、免疫抑制剤を併用しなければならない困難性がない点で好ましい。免疫抑制を行えば他家移植療法も可能であるが、自家移植療法の方が圧倒的に良好な治療効果が期待できる。

【0030】
自家移植療法が困難な場合には、他人又は他の医療用動物由来の細胞を利用することも可能である。細胞は冷凍保存したものであってもよい。

【0031】
また、本発明の細胞製剤の適用対象は必ずしもヒトに限定されず、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル等)にも適用することができる。

【0032】
また、本発明は、ヒトから採取された骨髄細胞を培養後、10~30分間トリプシン処理を施し、当該処理により培養容器から剥離しない細胞を有効成分とすることを含む細胞製剤の製造方法を提供するものでもある。

【0033】
これまで報告されている、骨髄細胞のトリプシン処理は、いずれも5分間以下であり、トリプシン処理により培養容器から剥離しない細胞を有効成分とすることは報告されていない。

【0034】
本発明の製造方法によれば、骨髄細胞における認知機能改善効果等の生理活性を向上させることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
[実施例1]細胞の調製
8週齢、オスC57BL/6マウスをエーテル麻酔下頚椎脱臼にて安楽死させ、大腿骨を摘出した。軟組織を除去した後、大腿骨の両端を切り落とし、25ゲージの注射針のついた注射筒を用いて血清を含まないα-MEM培地を骨髄中に注入し、骨髄細胞を採取した。
【実施例】
【0037】
細胞培養用プラスチックシャーレを用意し、骨髄細胞を均一にまいた。37℃、5%COインキュベータに入れて、ダルベッコ変法イーグル培地(10%ウシ胎児血清、100ユニット/mLペニシリン、100マイクログラム/mLストレプトマイシン添加)を用いて10日間接着培養させた。3日に1回培地を交換した。図1(A)に10日後の接着培養細胞の状態を示す。
【実施例】
【0038】
次いで、シャーレに0.25%トリプシン、0.05%EDTAを加えて、37℃、5%COインキュベータに入れて、20分間処理した。この操作で間葉系幹細胞(MSC)などの細胞は剥離する。この操作で剥離した細胞を集め、マウス骨髄由来細胞mP1とし、以下の実験に用いた。図1(B)にトリプシン処理後、培養器に接着している細胞の状態を示す。
【実施例】
【0039】
前記の操作で剥離しなかった細胞をセルスクレーパーで物理的に剥離させ、マウス骨髄由来トリプシン耐性細胞mT1とした。
【実施例】
【0040】
[実施例2]認知機能改善効果の評価
実施例1で得られたマウス骨髄由来トリプシン耐性細胞(mT1)及びトリプシン処理で培養容器から剥離した細胞(mP1)の認知機能改善効果を評価するため、動物モデルでの一般的な認知機能の評価として使われるモーリス水迷路試験(Richard G. M. Morris, Spatial Localization Does Not Require the Presence of Local Cues, Learning and Motivation 12, 239-260 (1981))を改変した水迷路試験を行った。
【実施例】
【0041】
骨髄由来トリプシン耐性細胞mT1又はトリプシン処理で培養容器から剥離した細胞mP1は、標準マウス(StD)(2か月齢(2M)、6か月齢(6M)、18か月齢(18M))及び高脂肪食長期給餌マウス(HFD)に静脈内投与(iv)(1×10個/g体重)、骨髄内投与(ibm)(5×10個/g体重)した。マウスの18か月齢はヒトでは50~60歳と想定される。
【実施例】
【0042】
図2に認知機能改善効果の評価法として用いたモーリス水迷路試験の概略を示す。
本装置は直径1.2mの白色のスチール製タンク内に24℃に保った水を、深さ30cmとなるように満たしたものから構成される。その空間の壁には視覚的手がかりが含まれ、これは実験の間を通じて同じ位置に保たれた。訓練試行時にはすべて、タンクの四分円のうち1つに、直径10cmの透明アクリル製円形プラットフォームを水面下1cmの深さに置いた。
【実施例】
【0043】
第1日(Visible training)には4回の訓練を行う。各マウスを4点(A,B,C,D)のうちの1点から水迷路に入れ90秒間泳がせる。プラットフォームには目印として赤色の旗を立てる。プラットフォームまでたどり着いた場合はプラットフォーム上に10秒間放置しホームケージに戻す。プラットフォームにたどり着かなかった場合は、プラットフォームまで誘導しプラットフォーム上で10秒間放置後、ホームケージに戻す。1時間のインターバルの後、1回目のトレーニングとは異なる点から水迷路に入れ同様に操作する。この第1日目で水迷路に慣れさせることとプラットフォームにたどり着ければ、泳がなくていいというルールをわからせる。
【実施例】
【0044】
訓練第2~5日(Acquisition phase)には、目印の旗を外したプラットフォームをトレーニングとは異なる場所に設置する(2~5日間はプラットフォームの位置は固定、図2では領域BC)。1日目の1回目、マウスを点Dから水迷路に入れ90秒間泳がせる。プラットフォームにたどり着いた場合はプラットフォーム上に10秒間放置し、ホームケージに戻す。プラットフォームにたどり着かなかった場合は、プラットフォームまで誘導しプラットフォーム上で10秒間放置後、ホームケージに戻す。1時間のインターバルの後、別の点から泳がせ同様に操作する。泳がせる点(A、ab、cd、D)の順序はランダムに設定する。1日に4回の訓練を行い、4日間連続で行う。
【実施例】
【0045】
訓練第6日(Probe trial)にプラットフォームをはずした状態で、各マウスを今まで経験のなかった点daから泳がせ(90秒)、プラットフォームのあったエリア(BC)の滞在時間を測定する。記憶しているとBCの滞在時間が長くなる。
【実施例】
【0046】
四分円の探索と泳速を、天井に装着したカメラで撮影し、カメラに接続したコンピュータ追跡画像解析システムで、マウスの泳ぐ軌跡、泳ぐスピード、各4分の1円領域(AB、BC、CD、DA)滞在時間の解析を行った。
【実施例】
【0047】
結果を図3、図4に示す。
加齢マウス(StD18M)では空間記憶は低下した(図3A)。骨髄由来トリプシン耐性細胞mT1は加齢による空間認知低下を改善し、その効果は加齢マウス由来の骨髄由来トリプシン耐性細胞mT1でも認められた(図3C)。一般的に加齢で幹細胞の機能低下が知られていることから、培養及びトリプシン処理での活性化によって効果が発揮された可能性がある。なお、これらのマウスでの泳ぐスピードには差がなかったことから水迷路の評価は活動量の影響ではないことを確認した(図3B,D)。この時のマウスの軌跡の代表例を図3Eに示す。また、骨髄由来トリプシン耐性細胞mT1は高脂肪食長期給餌誘発による2型糖尿病モデルマウスでの空間認知低下を改善した(図4A)。同様に泳ぐスピードに差がないことを確認した(図4B)。
【実施例】
【0048】
一方、トリプシン処理で培養容器から剥離した細胞mP1は効果がなかった(図3C、mP1はMSCを含むと考えられる)。
【実施例】
【0049】
加齢マウス及び2型糖尿病モデルマウスでの機能障害低下を改善したことから老齢での認知機能障害や3型糖尿病といわれるアルツハイマー病の治療薬として期待できる。
【実施例】
【0050】
患者自身の細胞を自家投与する場合と、正常な標準的な細胞を医薬品として製造し、他家投与する場合の2投与法を利用できる。
【実施例】
【0051】
本実施例において、骨髄内投与において、静脈内投与の1/20の投与量の骨髄内投与で同等の効果を発揮したことから、また、中胚葉前駆細胞は間葉系幹細胞(MSC)の親細胞であると報告されていることから(非特許文献6及び7)、骨髄内に移行することが作用機序である可能性が考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3