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明細書 :抗HCV活性を有する薬剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-160173 (P2017-160173A)
公開日 平成29年9月14日(2017.9.14)
発明の名称または考案の名称 抗HCV活性を有する薬剤
国際特許分類 A61K  31/165       (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P  31/14        (2006.01)
FI A61K 31/165
A61P 1/16
A61P 31/14
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2016-048508 (P2016-048508)
出願日 平成28年3月11日(2016.3.11)
発明者または考案者 【氏名】池田 正徳
【氏名】武田 緑
【氏名】加藤 宣之
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100188271、【弁理士】、【氏名又は名称】塚原 優子
審査請求 未請求
テーマコード 4C206
Fターム 4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA01
4C206NA14
4C206ZA75
4C206ZB33
要約 【課題】抗HCV剤の提供。
【解決手段】グアンファシン又はその塩を含む抗HCV剤、該抗HCV剤を用いてHCVの複製を抑制する方法、並びにグアンファシン若しくはその塩又は該抗HCV剤を含むC型肝炎の治療若しくは予防用組成物、及び該組成物を含むキット。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
グアンファシン又はその塩を含む、抗HCV剤。
【請求項2】
グアンファシンの塩が、グアンファシン塩酸塩である、請求項1に記載の抗HCV剤。
【請求項3】
HCVが、遺伝子型1bのHCVである、請求項1又は2に記載の抗HCV剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗HCV剤を単離された細胞又は組織に投与することを含む、HCVの複製をin vitroで抑制する方法。
【請求項5】
グアンファシン若しくはその塩、又は請求項1~3のいずれか一項に記載の抗HCV剤を含む、C型肝炎の治療又は予防用組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のC型肝炎の治療又は予防用組成物を含む、C型肝炎の治療又は予防用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗C型肝炎ウイルス(HCV)剤に関するものであり、より詳細にはグアンファシン又はその塩を含む抗HCV剤に関する。本発明はまた、該抗HCV剤を用いてHCVの複製を抑制する方法、並びにグアンファシン若しくはその塩又は該抗HCV剤を含むC型肝炎の治療若しくは予防用組成物、及び該組成物を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus; HCV)はフラビウイルス科へパシウイルス属に属する一本鎖のプラス鎖RNAウイルスである。ウイルスが細胞に侵入すると初めに、約3000アミノ酸残基からなるHCV前駆体タンパク質が産生される。次に、このHCV前駆体タンパク質から、宿主のタンパク質分解酵素とウイルスのタンパク質分解酵素によって10種類の成熟したウイルスタンパク質が産生される。10種類のタンパク質のうち、コア(Core)、E1、E2及びp7は、ウイルス粒子産生に必要な構造タンパク質であり、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A及びNS5Bは、ウイルスの複製に必要な非構造タンパク質である。
【0003】
HCV感染者は国内に約200万人、世界で約2億人と推定されている。HCVに感染すると、およそ70%の人がHCVが排除されることなく持続感染状態となり、多くの場合C型慢性肝炎を発症し、その後、10~20年でC型慢性肝炎は致死的な肝硬変や肝癌へと移行する。
【0004】
C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)単独療法は以前から実施されているが、有効でない場合がある。最近、ソホスブビル(Sofosbuvir; HCV NS5Bの阻害剤)とレジパスビル(Ledipasvir; HCV NS5Aの阻害剤)を組み合わせた治療薬が日本において承認され90%以上の高い有効性が報告されている。しかし、これらの薬剤は非常に高価であるという問題があり、多くのHCV感染者を有する発展途上国においても使用できる、より安価な抗HCV剤の開発が求められている。またソホスブビルに対する薬剤耐性ウイルスはすでに同定されており、さらなる薬剤耐性ウイルスの出現を防止するため抗HCV剤の選択肢を増やす必要がある。
【0005】
HCVには感染増殖が可能な動物モデルが一般に存在しないため、感染動物モデルを用いた抗HCV剤の評価は行われていない。そのため、抗HCV剤のスクリーニングのために、HCVの生活環(感染、翻訳、複製、粒子形成及び放出)を再現しながら、HCVの増殖が可能な培養細胞系の開発が望まれていた。しかし、このような培養細胞系の構築は困難であり、1999年にドイツのグループがHCVレプリコンシステム(非構造領域からなるHCVサブゲノム遺伝子が細胞内で自律的に増殖する培養細胞系)を開発して初めて、抗HCV剤のスクリーニングが可能となった(非特許文献1)。その後、本発明者らは、全長HCV RNAが自律的に複製する細胞を樹立し(非特許文献2)、さらに、レポーターによってHCVゲノムの複製レベルをモニタリングできる培養細胞系(OR6細胞)を開発した(特許文献1及び非特許文献3)。OR6細胞は、レポーター遺伝子としてレニラルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれたHCV全長ゲノムを発現するため、有利なことに、レニラルシフェラーゼ活性を測定するだけで、HCV RNAの複製レベルを定量的に簡便にモニターできる。本発明者らは、OR6細胞によるアッセイ系を用いて既存薬等のスクリーニングを行うことにより、スタチン系化合物(特許文献2)、5-HETE(特許文献3)、オンコスタチンM(特許文献4)などが抗HCV活性を有することを見出している。
【0006】
上述したようなHCVの増殖が可能な培養細胞系は、全て、ヒト肝癌細胞株HuH-7に由来している。しかし、1種類の細胞株のみを用いたスクリーニングでは、抗HCV活性を有する薬剤を見落としてしまう可能性がある。そこで本発明者らは、HuH-7以外の細胞株を用いた、HCVの増殖が可能な培養細胞系の開発に取り組み、ヒト肝癌細胞株Li23由来で、HCV RNAの複製レベルを、レニラルシフェラーゼ活性を測定することでモニターできる培養細胞系(ORL8及びORL11細胞)の開発に成功した(特許文献5及び非特許文献4)。そして本発明者らは、N-89及びN-251などのペルオキシド誘導体が、OR6、ORL8及びORL11細胞のいずれにおいても抗HCV活性を有することを見出している(特許文献6)。
【0007】
グアンファシンは、α2アドレナリン受容体作動薬であり、降圧剤として以前よく使用されていた。また、グアンファシンには、小児のADHD(注意欠陥・多動性障害)に対する改善効果があることが報告されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2006-325582号公報
【特許文献2】特開2007-63284号公報
【特許文献3】特開2010-59080号公報
【特許文献4】特開2010-59081号公報
【特許文献5】国際公開第WO2010/026965号
【特許文献6】特開2013-79204号公報
【0009】

【非特許文献1】Lohmann V et al., Science, 285: 110-113 (1999)
【非特許文献2】Ikeda et al., J. Virol., 76: 2997-3006 (2002)
【非特許文献3】Ikeda et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 329: 1350-1359 (2005)
【非特許文献4】Kato N et al., Virus Res., 146: 41-50 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、抗HCV剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、HCVゲノム核酸を導入したヒト肝癌細胞株Li23(ORL8細胞)を用いたアッセイ系により、グアンファシンが高い抗HCV活性を有することを見出し、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は以下を包含する。
[1]グアンファシン又はその塩を含む、抗HCV剤。
[2]グアンファシンの塩が、グアンファシン塩酸塩である、[1]に記載の抗HCV剤。
[3]HCVが、遺伝子型1bのHCVである、[1]又は[2]に記載の抗HCV剤。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の抗HCV剤を単離された細胞又は組織に投与することを含む、HCVの複製をin vitroで抑制する方法。
[5]グアンファシン若しくはその塩、又は[1]~[3]のいずれかに記載の抗HCV剤を含む、C型肝炎の治療又は予防用組成物。
[6][5]に記載のC型肝炎の治療又は予防用組成物を含む、C型肝炎の治療又は予防用キット。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、抗HCV剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】グアンファシン塩酸塩の抗HCV活性を調べた結果を示す図である。
【図2】グアンファシン塩酸塩のHCVコアタンパク質発現量への影響を調べたSDS-PAGEの結果を示す図である。図中、(-)は対照(グアンファシン塩酸塩添加無し)を示す。
【図3】グアンファシン塩酸塩の細胞生存率への影響を調べた結果を示す図である。図中、(-)は対照(グアンファシン塩酸塩添加無し)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
1. 抗HCV剤
本発明は、抗HCV活性を有する、抗HCV剤を提供する。一般に、抗HCV活性は、HCVの感染、複製、粒子形成、放出及び再感染のいずれかを抑制する活性を意味する。本明細書において「抗HCV活性」は、HCVの複製の抑制活性、特にHCV RNAの複製抑制活性及び/又はHCVタンパク質の発現抑制活性を含む。本明細書においてHCVに対する「抑制」とは、本発明に係る抗HCV剤を使用しない場合と比較して、HCVの複製量又はHCVタンパク質の発現量を低下させることを意味する。

【0016】
本発明は、より詳細には、グアンファシン又はその塩を含む、抗HCV剤を提供する。
「グアンファシン(guanfacine)」(N-アミジノ-2-(2,6-ジクロロフェニル)アセトアミド)は、以下の式で示される。

【0017】
【化1】
JP2017160173A_000003t.gif

【0018】
グアンファシンは、降圧剤として以前よく使用されていた薬物である。最近、グアンファシンは、小児のADHD(注意欠陥・多動性障害)に改善効果があることが知られ、米国ではグアンファシンを有効成分として含むADHD治療剤(インチュニブ(Intuniv))が販売されている。

【0019】
グアンファシンの塩としては、グアンファシンの製薬上許容される塩が好ましく、例えば、塩酸及び硫酸などの無機酸の塩、並びに酢酸及びマレイン酸などの有機酸の塩が挙げられるが、特に限定されない。好ましい実施形態では、グアンファシンの塩は、グアンファシン塩酸塩である。グアンファシン塩酸塩は、例えば東京化成工業株式会社(東京、日本)などの製造業者から入手できる。

【0020】
本発明に係る抗HCV剤は、グアンファシン又はその塩を有効成分として含み、かつ製薬上許容される又は試薬に使用可能な製剤補助剤などを含んでもよい。

【0021】
本発明に係る抗HCV剤、グアンファシン及びその塩は、HCVの複製を抑制するために使用することができる。本発明に係る抗HCV剤は、後述するように医薬として疾患の予防若しくは治療に使用してもよいし、又は研究用試薬として使用してもよい。なお、グアンファシン又はその塩を含む抗HCV剤に関する本明細書中の説明は、文脈上異なる場合を除き、グアンファシン及びその塩にも適用される。

【0022】
対象となるHCVの遺伝子型としては、例えば、1a、1b、1c、2a、2b、2c、3a、3b、4、5a、6a及び6bなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態では、対象となるHCVは、遺伝子型1bのHCVであってよい。

【0023】
本発明に係る抗HCV剤の抗HCV活性は、後述の実施例で記載するように、HuH-7細胞又はLi23細胞にレポーター遺伝子を含むHCVゲノム(全長HCV RNA)を導入した細胞(例えばOR6、ORL8又はORL11細胞)を抗HCV剤の存在下で培養し、細胞のレポーター活性を測定することによって判定してもよい。この場合、抗HCV剤の非存在下で培養した細胞におけるレポーター活性値と比較した、抗HCV剤の存在下で培養した細胞におけるレポーター活性値の低下は、抗HCV剤が抗HCV活性を有することを示す。あるいは、抗HCV活性は、抗HCV剤の存在下で当該細胞を培養し、得られた培養細胞又は培養培地についてHCV RNAを例えばRT-PCR法などのRNA検出法によって、又はHCVコアタンパク質などのHCVタンパク質を例えばウエスタンブロット法などのタンパク質検出法によって検出することによって判定してもよい。この場合、抗HCV剤の非存在下で培養した細胞におけるHCV RNA又はタンパク質の量と比較した、抗HCV剤の存在下で培養した細胞におけるHCV RNA又はタンパク質の量の低下は、抗HCV剤が抗HCV活性を有することを示す。

【0024】
本発明に係る抗HCV剤は、in vivo又はin vitroで使用してよい。本明細書において、「in vivo」とは、個体に対して使用することを指し、「in vitro」とは、個体から単離された組織又は細胞などに対して使用することを指す。

【0025】
本発明は、上述の本発明に係る抗HCV剤を用いて、HCVの複製を抑制する方法を提供する。本方法は、被験体に抗HCV剤を投与することを含む、HCVの複製をin vivoで抑制する方法であってもよいし、又は単離された細胞若しくは組織に抗HCV剤を投与することを含む、HCVの複製をin vitroで抑制する方法であってもよい。

【0026】
in vitro法において、細胞は、肝細胞、好ましくはHCVに感染した肝細胞、例えばC型肝炎、肝硬変若しくは肝臓癌の患者由来の肝細胞であってよい。細胞は、培養細胞であってもよく、好ましくは肝臓癌由来培養細胞、例えばHuH-7細胞、Li23細胞、又はそれらの派生物(例えばOR6、ORL8又はORL11細胞)であってよい(例えば、特開2006-325582号公報、国際公開第WO2010/026965号、Lohmann V et al., Science, 285: 110-113 (1999)、Ikeda et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 329: 1350-1359 (2005)を参照)。組織は、肝臓組織、例えばHCVに感染した肝臓組織、例えばC型肝炎、肝硬変若しくは肝臓癌の患者由来の肝臓組織であってよい。細胞又は組織は、哺乳動物、例えば霊長類(例えばヒト及びチンパンジー)に由来するものであってよく、好ましくはヒトに由来するものである。

【0027】
in vitroでの投与量は、当業者であれば適宜決定できるが、例えば、グアンファシン又はその塩が培地中で100nM~5000nM、200nM~3000nM、300nM~2000nM、400nM~1500nM、500nM~1000nM又は600nM~900nMの濃度になるように投与してもよい。
in vivoでの方法については、後述の「2. 組成物及び治療/予防方法」の項に記載する。

【0028】
2. 組成物及び治療/予防方法
本発明はまた、上述のグアンファシン若しくはその塩、又は本発明に係る抗HCV剤を含む、C型肝炎の治療又は予防用組成物を提供する。組成物は、医薬組成物であってもよい。C型肝炎は、例えば、C型急性肝炎、C型慢性肝炎及びC型劇症肝炎を含み得る。

【0029】
本明細書において、「治療」とは、C型肝炎に罹患している被験体において、HCVを排除する又は減少させることを意味する。「C型肝炎に罹患している被験体」とは、HCVに感染し急性肝炎などの肝炎を発症しているか又はHCVに持続感染している被験体を指す。HCVの持続感染とは、6ヶ月以上にわたってHCVの感染が続くことを指す。「予防」とは、HCVに感染していないか又は持続感染が確立していない被験体において、HCVの感染及び増殖を低減し、かつ持続感染を防ぐことを意味する。

【0030】
組成物は、製剤分野で通常使用される任意の製剤補助剤をさらに含んでもよい。本明細書において、製剤補助剤としては、製薬上許容される、担体(固体又は液体担体)、賦形剤、安定化剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、乳化剤、結合剤、抗酸化剤、充填剤、矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤、着色剤、矯味剤、保存剤、緩衝剤などの、様々な担体又は添加剤を用いることができる。具体的には、製剤補助剤としては、水、生理食塩水、他の水性溶媒、製薬上許容される有機溶媒、マンニトール、ラクトース、デンプン、微結晶セルロース、ブドウ糖、カルシウム、ポリビニルアルコール、コラーゲン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、アラビアゴム、ペクチン、キサンタンガム、カゼイン、ゼラチン、寒天、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ソルビトールなどが挙げられる。製剤補助剤は、製剤の剤形に応じて適宜又は組み合わせて選択され得る。

【0031】
本発明に係る組成物は、経口的に、又は静脈内など非経口的に被験体に投与され得る。本発明に係る組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、液剤などの経口剤、又は注射剤、点滴剤、塗布剤などの非経口剤の製剤としてよい。当業者は、慣用の方法でこれらの製剤を製造することができる。

【0032】
本発明に係る組成物の投与量は、個々の被験体に応じて、病気の進行度若しくは重症度、全身の健康状態、年齢、性別、体重及び治療に対する忍容性などに基づき、例えば医師の判断により決定される。例えば、本発明に係る組成物は、グアンファシン又はその塩が0.000001mg/体重kg/日~1000mg/体重kg/日、又は0.001mg/体重kg/日~1mg/体重kg/日、又は0.005mg/体重kg/日~0.5mg/体重kg/日、又は0.01mg/体重kg/日~0.1mg/体重kg/日となる量で投与してもよい。本発明に係る組成物は、単回投与又は複数回投与することができ、例えば一定の時間間隔、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月などの間隔で、被験体に対して、数回又は数十回投与してもよい。

【0033】
本発明に係る組成物は、他の抗HCV剤と併用してもよい。他の抗HCV剤としては、例えば、インターフェロン、リバビリン、シクロスポリン、フルバスタチン、テラプレビル、ピタバスタチン、シメプレビル、アスナプレビル、バニプレビル、ダクラタスビル、ソホスブビル、レジパスビル、パリタプレビル、オムビタスビル、リトナビルなどがあるが、これらに限定されない。併用する場合は、同時に投与するための配合剤として、あるいは独立して投与するための別個の製剤としてもよい。併用は、同時投与及び連続投与を含む。

【0034】
本発明の組成物を投与する被験体は、哺乳動物、例えば霊長類(例えばヒト及びチンパンジー)であってよく、好ましくはヒトである。

【0035】
治療される被験体は、C型肝炎に罹患している被験体、すなわちHCVに感染し急性肝炎などの肝炎を発症しているか又はHCVに持続感染している被験体であってよい。被験体は、任意の遺伝子型(例えば、1a、1b、1c、2a、2b、2c、3a、3b、4、5a、6a又は6b)のHCVに感染した被験体であってよく、例えば、遺伝子型1bのHCVに感染した被験体であってよい。一実施形態では、被験体は、C型肝炎に対するインターフェロン治療に感受性である。一実施形態では、被験体は、ORL8細胞と同様に、IL28B遺伝子の一塩基多型(SNP)rs8099917がTTであり、かつ、rs12979860がCCである被験体である(例えば、Tanaka et al., Nat. Genet., 41: 1105-1109 (2009); Suppiah et al., Nat. Genet., 41: 1100-1104 (2009); Ge et al., Nature, 461: 399-401 (2009)を参照)。別の実施形態では、被験体は、C型肝炎に対するインターフェロン治療に抵抗性であってもよい。

【0036】
予防される被験体は、HCVに感染しているが急性肝炎などの肝炎をまだ発症しておらずHCVの持続感染も確立していない被験体、HCVに感染したことが疑われる被験体、及びHCVに感染するリスクがある被験体(例えば医師などの医療従事者)を含み得る。

【0037】
本発明はまた、上述の本発明に係る抗HCV剤又は組成物を被験体に投与することを含む、C型肝炎の治療又は予防方法にも関する。

【0038】
3. キット
本発明はまた、上述の本発明に係るC型肝炎の治療又は予防用組成物を含む、C型肝炎の治療又は予防用キットを提供する。本発明に係るキットは、別の薬剤、例えば、上述したインターフェロンなどの他の抗HCV剤を含んでいてもよい。本発明に係るキットは、希釈剤、溶媒、洗浄液若しくはその他の試薬を含む容器、使用説明書、又はC型肝炎治療法若しくは予防法に適用するために必要な器具をさらに含んでいてもよい。キットに含まれる複数の成分は、それぞれ別の容器に入れられていてもよいし、混合して1つの容器に入れられていてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
抗HCV活性の評価
抗HCV活性は、本発明者らがヒト肝癌細胞株Li23から開発したORL8細胞を用いて評価した(国際公開第WO2010/026965号; Kato N, et al., Virus Res., 146(1-2): 41-50 (2009))。ORL8細胞は、平成20年7月31日(原寄託日)付で独立行政法人製品評価技術基盤機構、特許生物寄託センター(NITE-IPOD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM BP-11157でブダペスト条約に基づき国際寄託されている。なお、本寄託株は、平成21年7月30日に国内寄託(原寄託)からブダペスト条約に基づく国際寄託に移管された。ORL8細胞には、レポーター遺伝子としてレニラルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれた、遺伝子型1bのHCV(O株)のゲノム(全長HCV RNA)が導入されている。ORL8細胞に導入されているHCVゲノムは、約3000アミノ酸残基からなるHCV前駆体タンパク質のアミノ酸配列においてQ1112R、K1609E及びS2200R、又はQ1112R、P1115L及びS2200Rのアミノ酸置換を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む。ORL8細胞について検出されるレニラルシフェラーゼ活性は、細胞内のHCV RNA複製レベルと非常によく相関する。そのため、ORL8細胞のレニラルシフェラーゼ活性を測定することによって、HCV RNA複製レベルを簡便かつ正確に評価することができる。したがって、薬剤の抗HCV活性を、ORL8細胞のレニラルシフェラーゼ活性を指標として評価することができ、レニラルシフェラーゼ活性の低下はその薬剤が抗HCV活性を有することを示す。
【実施例】
【0041】
ORL8細胞を、24ウェルプレートにウェル1つあたり細胞1.5×104個になるように播種した。培養24時間後に、溶媒としてDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させたグアンファシン塩酸塩(製品コード:G0414、東京化成工業株式会社)を、培地中で78.5、156、313、625、1250、2500、5000又は10000nMの濃度になるように細胞に添加した。一方、対照として溶媒のみを細胞に添加した。3日間培養した後、細胞を回収し、Renilla Luciferase Assay System(Promega社、米国)を用いてレニラルシフェラーゼ活性を測定した。実験は独立した3ウェルで行った。得られたレニラルシフェラーゼ活性の、対照(グアンファシン塩酸塩添加無し)におけるレニラルシフェラーゼ活性の平均値に対する比率を算出し、相対的レニラルシフェラーゼ活性(%)を得た。グアンファシン塩酸塩の各濃度における相対的レニラルシフェラーゼ活性(%)の平均値及び標準偏差を算出した。
【実施例】
【0042】
結果を図1に示す。この結果から、相対的レニラルシフェラーゼ活性はグアンファシン塩酸塩の濃度に依存して低下することが示された。このことは、HCV RNA複製レベルがグアンファシン塩酸塩の濃度に依存して低下することを示し、したがって、グアンファシン塩酸塩が抗HCV活性を有することを示している。また、測定結果を基に、グアンファシン塩酸塩の50%有効濃度(EC50)は768nMと算出された。
【実施例】
【0043】
[実施例2]
HCVコアタンパク質発現量への影響の解析
ORL8細胞を、6ウェルプレートにウェル1つあたり細胞6×104個になるように播種した。培養24時間後に、溶媒としてDMSOに溶解させたグアンファシン塩酸塩を、培地中で625、1250、2500、5000又は10000nMの濃度になるように細胞に添加した。一方、対照として溶媒のみを細胞に添加した。3日間培養した後、細胞を回収し、ウエスタンブロット法にてコアタンパク質及びβ-アクチンタンパク質の発現量を解析した。ウエスタンブロット法は、サンプルをSDS-PAGE電気泳動に供し、常法に従って、抗HCVコアタンパク質抗体(株式会社特殊免疫研究所、東京、日本)及び抗β-アクチン抗体(Sigma-Aldrich社、米国)を用いて行った。
【実施例】
【0044】
グアンファシン塩酸塩のHCVコアタンパク質発現量への影響を調べたSDS-PAGEの結果を図2に示す。β-アクチン発現量(内部標準)は、グアンファシン塩酸塩を添加した場合に対照と同程度であるのに対し、HCVコアタンパク質発現量は、グアンファシン塩酸塩の濃度に依存して低下することが示された。したがって、グアンファシン塩酸塩がHCVタンパク質の発現を特異的に抑制することが示された。HCVコアタンパク質のレベルは試料中のHCVの存在及び量の指標として用いられていることから、グアンファシン塩酸塩は細胞におけるHCV産生量を低減させることができるといえる。
【実施例】
【0045】
[実施例3]
細胞毒性の評価
ORL8細胞を、24ウェルプレートにウェル1つあたり細胞2×104個になるように播種した。培養24時間後に、溶媒としてDMSOに溶解させたグアンファシン塩酸塩を、培地中で0.12、0.24、0.49、0.98、1.95、3.91、7.81、15.6、31.3、62.5、125、250又は500μMの濃度になるように細胞に添加した。一方、対照として溶媒のみを細胞に添加した。3日間培養した後、Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System (タカラバイオ株式会社、滋賀、日本) 10μlを培地に添加して、37℃で2時間培養後、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。実験は独立した3ウェルで行った。得られた吸光度の、対照(グアンファシン塩酸塩添加無し)における吸光度の平均値に対する比率を算出し、細胞生存率(%)を得た。グアンファシン塩酸塩の各濃度における細胞生存率(%)の平均値及び標準偏差を算出した。
【実施例】
【0046】
グアンファシン塩酸塩の細胞生存率への影響を調べた結果を図3に示す。広い濃度範囲で細胞生存率は高く、グアンファシン塩酸塩は広い濃度範囲で細胞毒性が無い又は低いことが示された。特に、実施例1で算出されたEC50値768nMを超える0.98μMにおいて、細胞生存率はおよそ100%であり、細胞毒性は無いことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る抗HCV剤の有効成分であるグアンファシンは、抗HCV剤のスクリーニングに世界中で広く用いられているHuH-7細胞株とは異なるLi23細胞株に由来するORL8細胞を用いてスクリーニングされたものである。そのため、グアンファシンは、これまでにスクリーニングされている抗HCV剤とは異なる作用機序を有し、これまで効果がなかったHCV遺伝子型にも効果が有る可能性が考えられる。また、グアンファシンは既存薬であるため、開発コストの削減や開発時間の短縮も期待できる。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
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