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明細書 :動物の遠隔診断システム及び動物の遠隔診断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-034265 (P2016-034265A)
公開日 平成28年3月17日(2016.3.17)
発明の名称または考案の名称 動物の遠隔診断システム及び動物の遠隔診断方法
国際特許分類 A01K  67/00        (2006.01)
A01K  11/00        (2006.01)
A01K  13/00        (2006.01)
FI A01K 67/00 D
A01K 11/00 Z
A01K 13/00 Z
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2014-159132 (P2014-159132)
出願日 平成26年8月5日(2014.8.5)
発明者または考案者 【氏名】川口 博明
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
審査請求 未請求
要約 【課題】 動物の体調の変化を迅速かつ正確に知ることができ、動物の超早期の診断・治療が可能になる遠隔診断システムを提供する。
【解決手段】 動物の体内に埋め込まれ動物の体温を測定してその体温データを外部に無線送信する半導体チップ1と、無線送信された前記体温データを受信してインターネット3を介して外部に送信する中継器2と、インターネット3を介して受信した体温データを解析し獣医学的診断を行い、その結果を外部の端末装置5にインターネットを介して送信するデータ処理手段4とを備えたことにより、動物の体調の変化を迅速かつ正確に知ることができ、動物の超早期の治療が可能になる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
動物の体内に埋め込まれ動物の体温を測定してその体温データを外部に無線送信する半導体チップと、前記半導体チップから無線送信された前記体温データを受信してインターネットを介して外部に送信する中継器と、前記インターネットを介して受信した前記体温データを解析し外部の端末にその解析データを送信するデータ処理手段とを備えたことを特徴とする動物の遠隔診断システム。
【請求項2】
前記半導体チップは動物の耳根部の皮下又は尾根部の皮下のいずれか一方又は双方に埋め込まれたことを特徴とする請求項1記載の動物の遠隔診断システム。
【請求項3】
前記データ処理手段は前記半導体チップから送信された動物の体温データをリアルタイムで処理し、獣医学的診断を行うとともに異常と認められる場合は前記外部の端末に動物の診療を促す指示を送信することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の動物の遠隔診断システム。
【請求項4】
前記獣医学的診断は、動物の体温が予め定められた範囲から逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断することを特徴とする請求項3記載の動物の遠隔診断システム。
【請求項5】
前記獣医学的診断は、動物の体温変化が予め定められた基準変動値より大きい場合は動物の健康に異常が認められると診断することを特徴とする請求項3記載の動物の遠隔診断システム。
【請求項6】
前記獣医学的診断は、特定の時間における動物の体温が予め定められた範囲から逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断することを特徴とする請求項3記載の動物の遠隔診断システム。
【請求項7】
前記半導体チップは内部に温度センサと無線送信回路を含み、表面が動物の体内で反応を起こさず、かつ動物の体液が内部に浸透し難い材料で被覆されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の動物の遠隔診断システム。
【請求項8】
動物の体内に埋め込まれたセンサにより動物の体温を測定するステップと、前記体温データを中継器に無線送信するステップと、前記送信された体温データを前記中継器がインターネットを介して外部のデータ処理手段に送信するステップと、前記データ処理手段が送信されたデータを解析し動物の健康状態を診断するステップと、インターネットを介して外部の端末に前記診断結果を送信するステップとを備えたことを特徴とする動物の遠隔診断方法。
【請求項9】
前記動物の健康状態を診断するステップは、送信された動物の体温データをリアルタイムで処理し、獣医学的な診断を行うとともに、異常と認められる場合は動物の診療を促す診断を行うことを特徴とする請求項8記載の動物の遠隔診断方法。
【請求項10】
前記獣医学的な診断は、動物の体温が予め定められた範囲から逸脱している場合は動物の健康に異常が認められると診断することを特徴とする請求項9記載の動物の遠隔診断方法。
【請求項11】
前記獣医学的な診断は、動物の体温変化が予め定められた基準変動値より大きい場合は動物の健康に異常が認められると診断することを特徴とする請求項9記載の動物の遠隔診断方法。
【請求項12】
前記獣医学的診断は、特定の時間における動物の体温が予め定められた範囲から逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断することを特徴とする請求項9記載の動物の遠隔診断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はIT技術を利用した動物の遠隔診断についてのシステム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業において生産効率および品質を向上させることは、グローバルな競争環境にさらされるわが国畜産業の社会的急務である。そのためには、牛等の産業動物の病気・病死を未然に防ぐことが重要である。
【0003】
畜産業において、動物の健康状態を超早期的かつ正確に把握し、必要な場合は獣医師に連絡して対処する必要がある。従来、畜産農家における牛などの産業動物の健康状態の管理は、人手により行われていた。例えば、牛の日常的な健康状態を把握するのに、農家の従事者が一頭ごとに目視により行動を観察し、食欲や糞尿の状態を確認していた。 また動物の健康状態を把握するための重要事項の一つである動物の体温の測定についても、一頭ごとに直腸に体温計を挿入するなどして測定しており、高齢化が進むわが国畜産農家の従事者にとって大きな負担となっていた。一方では、農場の大規模化が進み、従事者1人当たりの管理頭数が増えることに起因する従事者の負担の増大も生じている。
【0004】
他方、IT技術を利用した遠隔操作による動物の管理方法としては、牛の首輪につけた加速度センサ及び下顎の体温センサにより計測されたデータを無線送信し、そのデータを解析することにより、健康状態、発情や分娩のタイミングを把握する方法が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、1頭あるいは2頭以上の動物に物理センサ(加速度、傾斜、温度など)を装着し、データを無線送信し、そのデータを解析することにより、動物の健康管理を行うシステムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-228573
【特許文献2】特開2007-306804
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の遠隔操作による動物の管理システムまたはその方法は、いずれもセンサを動物の首輪など動物の体外に装着するものであり、動物の超早期の健康管理に必要な微細な体温測定ができなかった。また、従来のシステム及び方法では取得したデータは必要に応じて端末などに送信されるものの、動物の超早期治療に必要な獣医学的診断を行うものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段に係る動物の遠隔診断システムは、動物の体内に埋め込まれ動物の体温を測定してその体温データを外部に無線送信する半導体チップと、無線送信された前記体温データを受信してインターネットを介して外部に送信する中継器と、インターネットを介して受信した体温データを解析し外部の端末にその解析データをインターネットを介して送信するデータ処理手段とを備えたものである。
【0009】
また、第2の解決手段は、半導体チップは動物の耳根部~頚部(以下、耳根部とする)の皮下又は尾根部の皮下のいずれか一方又は双方に埋め込まれるようにしたものである。
【0010】
また、第3の解決手段は、データ処理手段は半導体チップから送信された動物の体温データをリアルタイムで処理し、獣医学的診断を行うとともに、異常と認められる場合は外部の端末に動物の診療を促す指示を送信するようにしたものである。
【0011】
また、第4の解決手段は、獣医学的診断は、動物の体温が予め定められた範囲から逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するようにしたものである。
【0012】
また、第5の解決手段は、獣医学的診断は、動物の体温変化が予め定められた基準変動値より大きい場合は動物の健康に異常が認められると診断するようにしたものである。
【0013】
また、第6の解決手段は、獣医学的診断は、特定の時間における動物の体温が予め定められた範囲から逸脱している場合は動物の健康に異常が認められると診断するようにしたものである。
【0014】
また、第7の解決手段は、動物の体内に埋め込まれる半導体チップは内部に温度センサと無線送信回路を含み、表面が動物の体内で反応を起こさず、かつ動物の体液が内部に浸透し難い材料で被覆されているようにしたものである。
【0015】
また、第8の解決手段は、動物の体内に埋め込まれたセンサにより動物の体温を測定するステップと、その体温データを中継器に無線送信するステップと、送信された体温データを中継器がインターネットを介して外部のデータ処理手段に送信するステップと、データ処理手段が送信されたデータを解析し動物の健康状態を診断するステップと、そのデータ処理手段がインターネットを介して外部の端末に診断結果を送信するステップとを備えたものである。
【0016】
また、第9の解決手段は、送信された動物の体温データをリアルタイムで処理し、獣医学的診断を行うとともに、異常と認められる場合は外部の端末に動物の診療を促す指示を送信するステップを含むようにしたものである。
【0017】
また、第10の解決手段は、獣医学的な診断は、動物の体温が予め定められた範囲から逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するステップを含むようにしたものである。
【0018】
また、第11の解決手段は、獣医学的な診断は、動物の体温変化が予め定められた基準変動値より大きい場合は動物の健康に異常が認められると診断するステップを含むようにしたものである。
【0019】
また、第12の解決手段は、特定の時間における動物の体温が予め定められた範囲から逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するステップを含むようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明の第1の解決手段に係る動物の遠隔診断システムは、動物の体内に埋め込まれた半導体チップが動物の体温を正確に測定し、その体温データをインターネット等を介して獣医師等の端末装置に送信するので、動物の体調の変化を迅速かつ正確に知ることができ、動物の超早期の診断・治療が可能になる。
【0021】
また、第2の解決手段では、半導体チップは動物の耳根部の皮下又は尾根部の皮下のいずれか一方又は双方に埋め込まれるようにしたので、動物の体温の変化を正確に把握できるとともに半導体チップを容易に動物に埋め込むことができる。また、動物の耳根部の皮下と尾根部の皮下の双方に半導体チップを埋め込んだ場合は、動物の二か所の部位の体温を測定できるので、より正確に体温の変化を測定できる。また、双方の体温データの変化を比較することにより、動物の病状の診断に活用できる。
【0022】
また、第3の解決手段は、半導体チップから送信された動物の体温データをデータ処理手段がリアルタイムで処理し、獣医学的診断を行うことにより、動物が異常と認められる場合は、獣医師等の外部の端末装置に動物の診療を促す指示を送信し、超早期の診療が可能となる。
【0023】
また、第4の解決手段は、獣医学的診断は、動物の体温が予め定められた範囲より逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するようにしたので、適切な診断が迅速にできる。
【0024】
また、第5の解決手段は、獣医学的診断は、動物の体温変化が予め定められた基準変動値より大きい場合は動物の健康に異常が認められると診断するようにしたので、適切な診断が迅速にできる。
【0025】
また、第6の解決手段は、獣医学的診断は、特定の時間における動物の体温が予め定められた範囲から逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するようにしたので、適切な診断が迅速にできる。
【0026】
また、第7の解決手段は、動物の体内に埋め込まれる半導体チップは内部に温度センサと無線送信回路を含み、表面が動物の体内で反応を起こさず、かつ動物の体液が内部に浸透し難い材料で被覆されているようにしたので、動物の体液の浸透による故障を回避できるとともに動物の健康を損なわない。
【0027】
また、第8の解決手段は、動物の体内に埋め込まれたセンサにより動物の体温を測定するステップと、体温データを中継器に無線送信するステップと、送信された体温データを中継器がインターネットを介して外部のデータ処理手段に送信するステップと、データ処理手段が送信されたデータを解析し動物の健康状態を診断するステップと、データ処理手段がインターネットを介して外部の端末装置に診断結果を送信するステップとを含むので、動物の体調の変化を迅速かつ正確に知ることができ、動物の超早期の診断・治療が可能になる。
【0028】
また、第9の解決手段は、送信された動物の体温データをリアルタイムで処理し、獣医学的診断を行うとともに、異常と認められる場合は外部の端末装置に動物の診療を促す指示を送信するステップを含むようにしたので、動物の超早期の診断・治療が可能となる。
【0029】
また、第10の解決手段は、獣医学的な診断は、動物の体温が予め定められた範囲を逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するステップを含むようにしたので、動物の迅速な診断が可能となる。
【0030】
また、第11の解決手段は、獣医学的な診断は、動物の体温変化が予め定められた基準変動値より大きい場合は動物の健康に異常が認められると診断するステップを含むようにしたので、動物の病状に関して迅速な診断が可能となる。
【0031】
また、第12の解決手段は、特定の時間における動物の体温が予め定められた範囲を逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するステップを含むようにしたので、動物の病状に関して迅速な診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係る動物の遠隔診断システムを示す構成図である。
【図2】仔牛の耳根部の皮下に実際に半導体チップを埋め込んだ例を示す写真である。
【図3】仔牛の尾根部の皮下に実際に半導体チップを埋め込んだ例を示す写真である。
【図4】半導体チップの内部構造を模式的に表した断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る半導体チップを実際に牛の耳根部および尾根部の皮下に埋め込んで測定した、牛の1日の体温変化を示す実測データである。
【図6】図1に記載の動物の遠隔診断システム等により、動物の遠隔診断を行う際の診断方法の手順を示したフロー図である。
【図7】獣医学的診断を行うためのデータ解析の一例を示すフロー図である。
【図8】実施の形態2におけるデータ解析の一例を示すフロー図である。
【図9】実施の形態3におけるデータ解析の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の実施の形態1である動物の遠隔診断システムを示す構成図である。図1において、1は牛などの動物の体内に埋め込まれた半導体チップ(以下、チップという)である。このチップ1には、動物の体温を測定する体温センサと、この体温センサからのデータを取得し、その体温データや測定時刻などその他のデータを外部に無線送信する送信部が含まれている。2は畜産農家などに設置された中継器、3はインターネット回線である。4はインターネット回線3を介して送信されたデータを受信し、獣医学的診断を行うデータ処理装置である。5は獣医師などが持つ端末装置である。

【0034】
このチップ1は動物の体内に獣医師等の施術により埋め込まれる。チップ1を埋め込む動物の部位としては、例えば、動物の耳根部の皮下や尾根部の皮下などの部位に、筋肉に触れる程度の深さ、例えば皮下数mm程度の深さに埋め込むことにより、体温の微細な変化を測定できるとともに、動物の体内へ埋め込む際の動物への負担と埋め込み作業を行う獣医師等の作業者への負担を減少させることができる。

【0035】
また、チップ1を埋め込む位置は、耳根部又は尾根部の皮下のいずれか一か所としてもよいし、二か所以上としてもよく、動物の診断の目的によって、チップ1を埋め込む位置あるいは個数を選択できる。また、チップ1の内部には体温センサ以外のセンサ、例えば、動物の血圧や血糖値を測定するセンサを備えるようにすることもできる。また、チップ1にタイマー機能を備えるようにして、各種センサで測定した体温データと測定時間とを関係付けて外部に送信できるようにしてもよい。

【0036】
中継器2は、チップ1から送信された動物の体温データなどを受信し、そのデータをインターネット回線3など介して、データ処理装置4に転送する。中継器2はチップ1からの無線により送信されたデータ信号を受信するアンテナを備えた受信部(図示せず)と、受信したデータ信号を増幅する増幅部(図示せず)と、増幅された信号をインターネットを介して外部に送信できる送信部(図示せず)を備えている。なお、中継器2にはチップ1から送信されたデータを格納するデータ蓄積部(図示せず)を設けることができる。また、チップ1から送信された動物の体温データ等に受信時間やチップ1の固体番号等のデータを付加できる機能を設けてもよい。

【0037】
データ処理装置4は、転送されたデータを解析して獣医学的診断を行うとともに、診断結果をインターネット回路3等を介して、獣医師などが持つ端末装置5に送信する機能を併せ持っている。なお、データ処理装置4は、個別のデータ処理センターのような場所に設置した専用の装置としてもよいし、クラウドコンピューティング等を活用してもよい。

【0038】
図2は、仔牛の耳根部の皮下に実際にチップ1を埋め込んだ例を示す写真である。また、図3は仔牛の尾根部の皮下に実際にチップ1を埋め込んだ例を示す写真である。図2及び図3において、実際のチップ1は皮下に埋め込まれているため当該写真からは視認できないが、チップ1を埋め込んだ際の縫合糸を確認することができる。なお、図2、図3において、チップ1はそれぞれ耳根部又は尾根部に埋め込む例を説明したが、チップ1は耳根部及び尾根部の双方に埋め込むようにしてもよい。また、耳根部や尾根部以外の場所の動物の皮下に1個又は複数個埋め込むようにしてもよいことはもちろんである。

【0039】
図4は、チップ1の内部構造を模式的に表した断面図である。図4において、11はチップ1の本体パッケージを示し、通常は樹脂などでモールドされている。12はチップ1の内部に格納される温度センサであり、13は送信回路である。また、チップ1の本体パッケージ11は、動物の体内に埋め込んだ際に動物の体液が浸透せず、かつ動物に生理的な悪影響を与えない被覆材14、例えばシリコーン樹脂で被覆されている。なお、被覆材14はシリコーン樹脂に替えて、カテーテルや心臓ペースメーカなどの被覆材としても用いられ動物に生理的な影響を与えないポリウレタンやポリアミドなども利用できる。

【0040】
図5は、本実施の形態におけるチップ1を実際に牛の耳根部および尾根部の皮下に埋め込んで測定した、牛の1日の体温変化を示す実測データである。図から、耳根部と尾根部とでは体温が異なり、また1日のうちでも、時間帯により体温が上昇または下降することがわかる。例えば、朝8時と夕方5時(17時)は給餌の時間帯にあたり、牛の体温変化が大きくなる。

【0041】
図6は、例えば、図1に記載の動物の遠隔診断システム等により、動物の遠隔診断を行う際の診断方法の手順を示したフロー図である。まず、ステップS1で、家畜等の動物の皮下に埋め込まれたチップ1内のセンサにより家畜の体温を取得する。次に、ステップS2で、取得した体温データをチップ1内の無線送信機により中継器2に送信する。次いで、ステップS3において、中継器2によりインターネット回線3を介して、体温データをデータ処理装置3に送信する。ステップS4では、データ処理装置3において、体温データを解析して、その動物が治療を要する状態にあるかについて獣医学的観点から診断を行い、その診断結果を再びインターネット回線3を介して獣医師等が持つ端末装置5、例えばスマートホン等に送信する。そして、ステップS5において、解析結果に基づいて獣医師等が動物の診療を行うようにしたものである。

【0042】
図7は、上記ステップS4で、獣医学的な診断を行うためのデータ解析の一例を示すフロー図である。まず、ステップS11で家畜など動物の体温データを取得し、ステップS12で、取得した体温データが予め規定された基準範囲内にあるか否かを判断する。例えば、体温を測定した動物が牛であれば、基準値:成牛37.8~39.2℃、仔牛38.5~39.5℃の温度範囲が通常の体温として予め設定され、測定された体温がその設定された温度範囲を逸脱していれば、その情報がステップS13に送られる。ステップS13では、獣医学的観点から送られた体温データを分析し、獣医師への指示情報を作成する。そして、ステップS14で、上記指示情報を獣医師の端末等へ送信することにより、動物の診療を指示する。

【0043】
以上説明したように、この実施の形態1によれば、動物の体内に埋め込まれ動物の体温を測定してその体温データを外部に無線送信するチップと、無線送信された前記体温データを受信してインターネットを介して外部に送信する中継器と、インターネットを介して受信した体温データを獣医学的観点から解析し、外部の端末装置にその解析データをインターネットを介して送信するデータ処理手段とを備えるようにしたので、動物の体調の変化を迅速かつ正確に知ることができ、動物の超早期の治療が可能になる。

【0044】
さらに、この実施の形態1では、チップから送信された動物の体温データをデータ処理手段がリアルタイムで処理し、獣医学的診断を行うことにより、動物の健康状態が異常と認められる場合は、獣医師等の外部の端末に動物の診療を促す指示を送信し、超早期の治療が可能となる。

【0045】
また、上記の獣医学的な診断は、動物の体温が予め定められた範囲(基準範囲)より逸脱した場合は動物の健康に異常が認められると診断するようにしたので、動物を治療するための適切な診断が迅速にできる。

【0046】
さらに、この実施の形態では、上記チップは動物の耳根部の皮下又は尾根部の皮下のいずれか一方又は双方に埋め込まれるようにしたので、動物の体温の変化を正確に把握できるとともにチップを容易に動物に埋め込むことができる。

【0047】
また、動物の体内に埋め込まれるチップは、表面が動物の体内で反応を起こさず、かつ動物の体液が内部に浸透し難い材料で被覆されるようにしたので、動物の体液の浸透による故障を回避できるとともに動物の健康を損なわないようにすることができる。

【0048】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。図8は、上記実施の形態1における図5のステップS4におけるデータ解析の別の実施の形態を示すフロー図である。図8において、まず、ステップS21で家畜など動物の体温データを取得するとともに、その体温が取得された時間についても併せて測定し、体温データとともにメモリデバイス等(図示せず)に格納しておく。次いで、ステップS22で取得した体温データの単位時間当たりの変化を算出する。例えば、1時間当たりの体温変化率(℃/hr)を算出する。

【0049】
次に、ステップS23において、前ステップで算出された動物の単位時間当たりの体温変化、すなわち体温変化率が予め設定しておいた規定値(基準変動値)より大きいか否かを判断する。そして、当該体温変化率が規定値よりも大きい場合は、ステップS24に進み、獣医学的診断を行う。例えば、測定した動物の体温変化率が規定値である1.0℃/hrを越えており、かつその体温が上昇している場合は、その動物は急激な発熱を起こしており、風邪や伝染病などの発熱性の疾病を罹患したと推定する獣医学的診断が行われる。

【0050】
また、測定した動物の体温変化率が例えば規定値1.0℃/hrを越えており、かつその体温が下降している場合は、その動物の体温は急激に失われていることから、何らかの原因で仮死状態に陥っている等の獣医学的診断が行われる。

【0051】
なお、上記の実施の形態の説明では、単位時間として1時間(hr)当たりの体温変化率を測定したが、他の単位時間、例えば1分当たりの体温変化率を測定してもよい。測定する時間単位を短くすることにより、一層きめ細かい体温の変化を把握し迅速な獣医学的診断と診療が可能となる。一方、測定する単位時間を長く、例えば1日当たりの体温変化率を測定するようにすれば、測定の精度は低下するものの、データを蓄積するメモリの容量を節約できるなどの効果を生む。このため、本システムを運用する者は目的と設備の状況に応じて、測定の時間単位を選択することができる。

【0052】
以上説明したように、本実施の形態によれば、動物の体温変化をリアルタイムに把握し、かつその単位時間当たりの変化率を算出、規定値と比較して、獣医学的診断を行うようにしたので、動物の体調の変化をよりきめ細かく、かつ迅速に把握することができ、獣医学的診断と獣医師への診療の指示を効果的に行うことができる。

【0053】
一方、ステップS23の判断において、体温変化率が規定値に達しなければ、再びステップS21に戻り、ステップS23までの工程を繰り返す。

【0054】
体温が上昇した場合、あるいは下降した場合のいずれにおいても、動物の体温が急激に変化していれば迅速な対応が必要になり、ステップS25において、そのような獣医学的診断を受けて、獣医師に診療を指示する工程を行う。

【0055】
なお、上記の実施の形態2の説明では、体温の変化率を判断する基準として、体温が上昇した場合も下降した場合も、同一の規定値としたが、体温が上昇した場合と下降した場合とで、規定値を異なるものとしてもよい。例えば、体温が上昇した場合は規定値を1.0℃/hrとし、体温が下降した場合は規定値を0.5℃/hrとすることができる。つまり、体温が急激に下降した場合は、体温が上昇した場合よりも、動物が仮死状態に陥った等、より重篤な状況が想定されるため、獣医師への診療指示を迅速に行う必要があることに対応したものである。

【0056】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。図9は、上記実施の形態1における図5のステップS4におけるデータ解析のさらに別の実施の形態を示すフロー図である。図9において、まず、ステップS31で家畜など動物の体温データを取得するとともに、その体温が取得された時間についても併せて測定し、体温データとともにメモリデバイス等(図示せず)に格納しておく。次いで、ステップS32で、特定の時間における体温データを抽出する。特定の時間として、例えば朝8時や夕方5時等、動物の生活リズムに合わせた一つまたは複数の時刻を選ぶことができる。

【0057】
例えば、図5で示したとおり、朝8時と夕方5時(17時)は給餌の時間帯にあたり、牛の体温変化が大きくなる。従って、このような時間帯における牛の体温を測定することにより、牛の体調の変化をより鮮明に捉えることができる。

【0058】
次に、ステップS33において、前ステップで抽出された動物の特定の時刻の体温データが予め規定された範囲(基準範囲内)にあるか否かを判断する。例えば、体温を測定した動物が牛であれば、朝8時では比較的体温が低いので低めの温度範囲:成牛;37.3~38.7℃、仔牛38.0~39.0℃が基準範囲として予め設定される。また、夕方5時であれば比較的体温が高いので、高めの温度範囲:成牛;37.8~39.2℃、仔牛38.5~39.5℃が基準範囲として設定される。

【0059】
そして、各時刻において測定された体温が、その時刻に対応して設定された温度範囲を逸脱していれば、その情報がステップS34に送られる。ステップS34では、獣医学的観点から送られた体温データを分析し、獣医師への指示情報を作成する。そして、ステップS35で、上記指示情報を獣医師の端末等へ送信することにより、動物の診療を指示する。

【0060】
本実施の形態3では、特定時刻における動物の体温を測定し、予め定められた同時刻における基準温度範囲と比較して、動物の健康状態を診断できるので、動物の体調や行動の変化を効率よく把握し、必要に応じて獣医師による診断・治療を指示することができる。また、同時刻における体温の測定を繰り返すことにより、定点観測が可能となり、長期的視野に立って動物の健康管理が可能となる。

【0061】
なお、上記の各実施の形態において、獣医学的診断の基準となる動物の体温の範囲等の数値を示したが、これらは動物の個体ごとに設定することができる。また、上記の実施の形態では、本発明を牛に適用した例を示したが、本発明は牛、豚や馬など産業動物に限られず、犬や猫などの伴侶動物、鹿や猿などの野生動物、その他実験動物に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 半導体チップ、 2 中継器、 3 インターネット回線、 4 データ処理装置、 5 端末装置、 11 パッケージ、 12 温度センサ、 13 送信回路、 14 被覆材。
図面
【図1】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図2】
7
【図3】
8