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明細書 :劇症1型糖尿病の検出方法及びバイオマーカー並びにキット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-042024 (P2016-042024A)
公開日 平成28年3月31日(2016.3.31)
発明の名称または考案の名称 劇症1型糖尿病の検出方法及びバイオマーカー並びにキット
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/53 N
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2014-164940 (P2014-164940)
出願日 平成26年8月13日(2014.8.13)
発明者または考案者 【氏名】長谷田 文孝
【氏名】花房 俊昭
【氏名】今川 彰久
出願人 【識別番号】502437894
【氏名又は名称】学校法人大阪医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】劇症1型糖尿病を診断するための技術を提供する。
【解決手段】患者の血液サンプル中の抗CD300E抗体量を測定することを特徴とする、劇症1型糖尿病の検出方法である。血液サンプルが血漿又は血清である。抗CD300E抗体からなる劇症1型糖尿病のバイオマーカーである。抗CD300E抗体に対する抗体を含む劇症1型糖尿病の検出用キットであり、CD300Eをさらに含むキットである。抗CD300E抗体に対する抗体を含む抗CD300E抗体の抗体価検査キットであり、CD300Eをさらに含むキットである。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
患者の血液サンプル中の抗CD300E抗体量を測定することを特徴とする、劇症1型糖尿病の検出方法。
【請求項2】
血液サンプルが血漿又は血清である、請求項1に記載の劇症1型糖尿病の検出方法。
【請求項3】
抗CD300E抗体からなる劇症1型糖尿病のバイオマーカー。
【請求項4】
抗CD300E抗体に対する抗体を含む劇症1型糖尿病の検出用キット。
【請求項5】
CD300Eをさらに含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
抗CD300E抗体に対する抗体を含む抗CD300E抗体の抗体価検査キット。
【請求項7】
CD300Eをさらに含む、請求項6に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、劇症1型糖尿病の検出方法及びバイオマーカー並びにキットに関する。
【背景技術】
【0002】
劇症1型糖尿病は、非常に急速な膵β細胞破壊により、診断及び治療が遅れれば致死的となる。外来初診時の迅速診断にて、2型糖尿病や自己免疫性1型糖尿病との鑑別診断が可能になれば、即座の入院加療により患者の予後やQOLを改善できる。
【0003】
例えば特許文献1は、検体中の、アミラーゼα2-Aと免疫学的に反応する抗体を検出することにより劇症1型糖尿病を検査することを記載し、特許文献2及び3は、検体中の、HSP10と免疫学的に反応する抗体を検出することにより劇症1型糖尿病を検査できることを記載するが、感度の点で改良の余地があった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-275527
【特許文献2】特開2009-294040
【特許文献3】特開2012-225941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、劇症1型糖尿病を診断するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以下の劇症1型糖尿病の検出方法及びバイオマーカー並びにキットを提供するものである。
項1. 患者の血液サンプル中の抗CD300E抗体量を測定することを特徴とする、劇症1型糖尿病の検出方法。
項2. 血液サンプルが血漿又は血清である、項1に記載の劇症1型糖尿病の検出方法。
項3. 抗CD300E抗体からなる劇症1型糖尿病のバイオマーカー。
項4. 抗CD300E抗体に対する抗体を含む劇症1型糖尿病の検出用キット。
項5. CD300Eをさらに含む、項4に記載のキット。
項6. 抗CD300E抗体に対する抗体を含む抗CD300E抗体の抗体価検査キット。
項7. CD300Eをさらに含む、項6に記載のキット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高速かつ高い精度で劇症1型糖尿病を検査することができる劇症1型糖尿病の検出方法、バイオマーカー、キットを提供することができる。
【0008】
劇症1型糖尿病(FT1D)は、急速な膵βの廃絶により高血糖やケトアシドーシスによる昏睡を来し、治療が遅れれば致死的となる。急性期から回復後も血糖のコントロールが困難であり、糖尿病に伴う様々な合併症(網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化症)のリスクが高くなる疾患である。外来初診時の診断で通常の自己免疫性1型糖尿病と鑑別診断できれば即座の入院加療により患者の予後やQOLを改善できる。
【0009】
劇症1型糖尿病(FT1D)は、外来初診時に感冒様の症状を呈することが多いが、本発明によれば、劇症1型糖尿病(FT1D)の鑑別診断が可能であるので、患者の予後やQOLを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】サンプルの希釈倍率とODの関係を示す
【図1B】CD300E抗体の血清中の力価をELISAを用いて測定した結果を示す。
【図1C】CD300E抗体の血清中の力価をELISAを用いて測定した結果を示す。
【図2】健常対象者と劇症1型糖尿病患者のROC解析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
劇症1型糖尿病(FT1D)は、疾患の発症時において膵β細胞が完全に破壊されてインスリンの欠損を伴う1型糖尿病のサブタイプであり、T細胞とマクロファージの大量の細胞浸潤が膵島及び膵外分泌腺において検出される。劇症1型糖尿病(FT1D)は、急性期に適切な治療を行うことが救命につながり、早期に劇症1型糖尿病(FT1D)の診断ができない場合には救命率の低下につながる。

【0012】
劇症1型糖尿病(FT1D)を診断するためのバイオマーカーとして、CD300Eに対する抗体を用いる。本発明では血液サンプル中のCD300Eに対する抗体価を検出することで劇症1型糖尿病(FT1D)の診断を確実に行うことができる。CD300EはCMRF35-like molecule 2としても知られている。CD300Eヒト組換え蛋白質は、市販品があるので、本発明のキットにCD300Eに対するヒト組換え蛋白質を使用する場合には、市販品を使用すればよい。

【0013】
本発明はヒトを対象としており、血液サンプルは、ヒト由来である。

【0014】
血液サンプルとしては、血漿、血清、血球(赤血球、白血球)が挙げられ、好ましくは血漿または血清が例示される。

【0015】
本発明のキットは、抗CD300E抗体を検出することができる抗体を含む。このような抗体としてはマウス、ラット、ヤギ、ウサギ、イヌなどの非ヒト哺乳動物由来のヒト抗体に対する抗体を挙げることができる。この抗体は、CD300E抗体に特異的な抗体であってもよく、ヒト抗体に広く結合する抗体であってもよい。ヒト抗体に広く結合する抗体はCD300E(抗原蛋白質)と組み合わせてキットに使用することができる。

【0016】
例えばCD300Eをプレートのウェルに固定化しておき、ここにヒト血液サンプル(好ましくはヒト血清又は血漿)を希釈して添加し、これを洗浄後、ヒト抗体に広く結合する非ヒト哺乳動物由来の抗体を添加することで、ヒト血液サンプル中に存在する抗CD300E抗体を検出できる。ヒト抗体に広く結合する非ヒト哺乳動物由来の抗体は、蛍光物質又は酵素などで標識しておくことが好ましい。標識としては、Alexa-350、Alexa-430、Alexa-488、Alexa-532、Alexa-546、Alexa-555、Alexa-568、Alexa-594、Alexa-633、Alexa-647、Alexa-660、Alexa-680、Alexa-750、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、BODIPY 505/515、インチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、Oregon greenなどの蛍光物質が挙げられる。酵素としては、ペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)などが挙げられる。キットには、ウェルを有するプレート、反応停止液、洗浄液、緩衝液、標準溶液、製造業者の指示書などが含まれていてもよい。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
実施例において、以下の略号を使用する。
FT1D: fulminant type 1 diabetes 劇症1型糖尿病
T1AD:type 1 diabetes 自己免疫性1型糖尿病
AITD:自己免疫性甲状腺疾患
T2D:2型糖尿病
HC:健常者
【実施例】
【0019】
実施例1
方法:
(1)参加者
はじめに、HLAをマッチさせた3人の劇症1型糖尿病患者血清の6検体(急性期1検体と慢性期1検体、1人につき2検体)について(表1)、9418種類の網羅的抗体解析(Invitrogen ProtoArray(登録商標)、 Human Protein Microarray v5.0)を蛍光により行った。次に劇症1型糖尿病患者(FT1D)17人(急性期と慢性期療法)、自己免疫性1型糖尿病(T1AD)32人、2型糖尿病(T2D)30人、自己免疫性甲状腺疾患(AITD)20人、健常対象者(HC)30人において、血清中の抗CD300E抗体価をELISA法にて測定した(表2)。
【実施例】
【0020】
(2)血清解析
ProtoArray(登録商標) Human Protein Microarrays (Invitrogen)を購入し、製造業者の指示書に従い使用した。簡潔に述べると、アレイは合成ブロッキング剤でブロックし、10μl の患者の血清を加えた。アレイは次いで洗浄され、Alexia Fluor(登録商標)647 色素標識されたヤギ抗-ヒトIgGを検出用に加えた。洗浄及び乾燥後、アレイをマイクロアレイスキャナ(Axion 4200AL with GenePix Pro Software, Molecular Devices, Sunnyvale, CA 94089) を用いてスキャンした。
【実施例】
【0021】
(3)ELISAを用いたCD300E自己抗体の定量
CD300Eヒト組換え蛋白質(protein accession number: AAI00889.1, Abnova, Waterloo NSW 2017, Australia)を購入した。96ウェル平底プレート(Nunc-ImmunoTM MicroWellTM96 well solid plate, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)を5ng/50μl/ウェル濃度のCD300E蛋白質でコートし、終夜4℃でインキュベートした。洗浄後、プレートを1% BSA (Sigma-Aldrich) (200μl/ウェル)で1時間ブロックした。次いで、プレートを洗浄し、希釈した患者の血清(1% BSAで1:100希釈) (100μl/ウェル)を2連(duplicate)で加え、2時間インキュベートした。洗浄後、1% BSA中の抗-ヒトIgG-HRPヤギIgG/Fab’(MBL) (1:4000)を加え(100μl/ウェル)暗所で2時間4℃でインキュベートした。プレートを洗浄し、次いで100μl TMB基質溶液(Thermo)で7分間室温でインキュベートした。反応は100μl 0.18M H2SO4 (Wako)を添加することにより停止し、吸光度を450nmの光学密度(OD)により測定した。サンプルの希釈倍率とODの関係を図1Aに示す。
【実施例】
【0022】
(4)統計解析
解析は両側不対スチューデントt-検定(two-tailed unpaired Student’s t-test)、対応のあるt検定 (paired t-test)及びROC(receiver operating characteristic)解析(JMP(登録商標) 10, SAS Institute and GraphPad Prism 6 Software)を用いて行った。全ての試験において、p値<0.05は統計的に有意であるとした。【0023】
結果
(1)3名のFT1D (各患者において1サンプルは急性期及び1サンプルは慢性期)患者の6個の血清サンプルについての血清解析
9418抗体の血清解析により、急性期における3名のFT1D患者(急性期/慢性期比>1.4)の全てにおいて高いシグナルを示す9個の抗体を検出した (表3)。 9個の抗体の中で、FT1D 患者のCD300E (CMRF35-like molecule 2) の急性期/慢性期比は9418抗体の中で最も高かった。
【実施例】
【0024】
(2)CD300E抗体の血清中の力価をELISAを用いて測定した。
CD300E抗体の力価はFT1D患者(急性期)で 0.1085±0.0380 (平均±SD, 任意単位) , FT1D患者(慢性期)で0.0812 ± 0.0160、T1AD患者で0.0771±0.0171, T2D患者で0.0710±0.0171, AITD患者で0.0701±0.0116、HCで0.0641±0.0078であった(図1B) 。CD300E抗体の有意に高い力価は急性期のFT1D患者血清(対T1AD患者; P=0.0002, 対T2D患者; P<0.0001, 対AITD患者; P<0.0001, 対HC; P<0.0001)において検出され、慢性期のFT1D患者においても検出された(対T2D患者; P=0.0210, 対AITD患者; P=0.0003, 対HC; P<0.0001)。【0025】
CD300E抗体の力価は急性期のFT1D患者で慢性期の患者よりも高い(P=0.0047, paired t-test;図1C )。CD300E抗体の有意に高い血清中の力価はHCと比較してT1AD患者及びT2D患者の血清(各々P=0.0003, P=0155)においても検出された.
【実施例】
【0026】
全ての糖尿病患者について、抗体の力価と年齢、性別、HbA1c, 血漿グルコース、GAD又はIA-2 抗体レベルについて有意な関係はなかった。
【実施例】
【0027】
健常対象者と劇症1型糖尿病患者のROC解析
HCと(n=30) 劇症1型糖尿病患者(FT1D (n=17))のROC解析を行うと、ROC曲線下の面積は0.844であった。感度(sensitivity)及び特異度(specificity)は、各々70.6%及び100%であった(図2).
【実施例】
【0028】
【表1】
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【実施例】
【0029】
【表2】
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【実施例】
【0030】
【表3】
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図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図2】
3