TOP > 国内特許検索 > 蛍光染色による芽胞の迅速な検出方法 > 明細書

明細書 :蛍光染色による芽胞の迅速な検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成29年3月2日(2017.3.2)
発明の名称または考案の名称 蛍光染色による芽胞の迅速な検出方法
国際特許分類 C12Q   1/04        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
FI C12Q 1/04
C12N 1/20 A
G01N 33/48 M
G01N 33/48 P
国際予備審査の請求
全頁数 37
出願番号 特願2015-536581 (P2015-536581)
国際出願番号 PCT/JP2014/073792
国際公開番号 WO2015/037578
国際出願日 平成26年9月9日(2014.9.9)
国際公開日 平成27年3月19日(2015.3.19)
優先権出願番号 2013191121
優先日 平成25年9月13日(2013.9.13)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】高松 宏治
【氏名】桑名 利律子
【氏名】藤田 康弘
【氏名】木ノ内 智之
出願人 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
【識別番号】100174296、【弁理士】、【氏名又は名称】當麻 博文
【識別番号】100151301、【弁理士】、【氏名又は名称】戸崎 富哉
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
4B063
4B065
Fターム 2G045BB20
2G045BB24
2G045CB01
2G045FA16
2G045FA19
2G045FB12
4B063QA01
4B063QA07
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ16
4B063QQ17
4B063QQ61
4B063QR51
4B063QR75
4B063QS03
4B063QS36
4B063QX01
4B065AA01X
4B065AA15X
4B065AA19X
4B065AA23X
4B065AC12
4B065BA22
4B065BD21
4B065BD27
4B065BD50
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA50
要約 本発明は、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色して蛍光観察を行うことを特徴とする芽胞を検出する方法等を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
試料中の芽胞を検出する方法において、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色して蛍光観察を行うことを特徴とする芽胞を検出する方法。
【請求項2】
試料中の芽胞を検出する方法において、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色し、更に試料を脱色剤で脱色後、蛍光観察を行うことを特徴とする芽胞を検出する方法。
【請求項3】
芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤が、アリザリンレッドS、オーラミンO、オーラミンS、硫酸ベルベリン、カルコフロールホワイト、コンゴーレッド、5-ドデカノイルアミノフルオレセイン、エオシンY、エリスロシンB、エバンスブルー、マラカイトグリーン、ミトトラッカー(商標)グリーンFM、ナイルブルー、パラローズアニリン塩酸塩、フロキシンB、6-プロピオニル-2-ジメチルアミノナフタレン、ピロニンY、ローズベンガル、スルホローダミン101、ユビテックス2B、キシレノールオレンジおよびそれらの塩または遊離体からなる群の少なくとも1種である、請求項1または2に記載の芽胞を検出する方法。
【請求項4】
脱色剤がアルコールである、請求項2または3に記載の芽胞を検出する方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光染色剤を含む、芽胞検出キット。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法で染色された芽胞。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光染色による芽胞の迅速な検出方法に関する。より詳細には、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色して蛍光観察を行い、芽胞と栄養細胞とを識別して芽胞のみを迅速に検出する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
芽胞(spore)とは、一部の細菌が栄養状態や生育環境が悪化すると形成する極めて耐久性の高い細胞構造であり、芯部(コア)、皮層(コルテックス)、皮層を覆う芽胞殻(スポアコート)から構成される。芽胞を形成する細菌は、栄養細胞が生育に適した環境では分裂・増殖する。一方、栄養状態や生育環境が悪化すると、栄養細胞が不等分裂により母細胞と前芽胞を生じ、前芽胞はエンガルフメントが完了するとフォアスポアとなり、フォアスポアが成熟して芽胞になると母細胞の自己溶解により芽胞が細胞外に放出される。芽胞を形成する菌(以下、芽胞菌または芽胞形成菌という)は、クロストリジウム属のボツリヌス菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、バチルス属の枯草菌、セレウス菌、炭疽菌等が知られている。芽胞は、熱・紫外線・化学薬品等に対して高い抵抗性を示し、栄養源の枯渇した環境下でも長期間休眠状態を維持できるため、食品、医薬品または化粧品等の危害菌として知られている。
【0003】
食品や飲料に対する消費者ニーズが多様化し、さらにグローバル化により海外での工場生産が拡大する現状において、安全性の高い製品を低コストで供給するためには、芽胞に対する製品管理技術の向上が求められている。
【0004】
従来、芽胞検出法としては、可視光で観察する芽胞染色法(非特許文献1)や発芽した芽胞を蛍光染色する方法(非特許文献2)等が知られている。例えば、塗抹標本をマラカイトグリーンで染色し芽胞を可視光で観察するWirtz法、塗抹標本をメチレンブルーで染色し芽胞を可視光で観察するMoeller法等である。
しかし、可視光で観察するためには、十分に培養した上で菌体を加熱固定してから染色することが必要となり、培養装置等も必要な上に、培養時間も必要であるため、当該方法は簡便で迅速な検出法とは言い難い。
また前記の方法によって検出可能な芽胞は、発芽芽胞に限られ、休眠中の芽胞は細胞膜やDNAが露出していないために蛍光染色剤を浸透させることは困難である上に、芽胞とそれ以外の細胞を肉眼で正確に区別するには熟練を要し、自動計測も困難であるなど、前記の方法は汎用的な方法でもない。
【0005】
本発明者らは、芽胞の殺菌処理の効果を確認するために、芽胞を損傷させ、コア内部に存在するDNAを蛍光試薬で染色する方法を開発した(特許文献1)。当該方法は、芽胞菌を培養することなく、各種殺菌処理済の芽胞に対する殺菌若しくは静菌作用を確認することができる優れた方法である。しかし、該方法は芽胞を損傷させる工程等が必要である。
一方、芽胞を損傷処理させることなくチオフラビンTにより、蛍光染色させる方法が開示されている(非特許文献3、4)。該方法は、蛍光染色できることにより芽胞を迅速に検出することができる。しかし、これらの従来知られている方法では、芽胞が蛍光染色されるものの、栄養細胞も同時に染色されるために、芽胞と栄養細胞の識別ができず、芽胞のみを検出することができなかった。
よって、迅速かつ簡便な芽胞検出方法を開発することが望まれている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2013-27379号公報
【0007】

【非特許文献1】J Gen Microbiol. 1991. 137:607-613
【非特許文献2】Cytometry A. 2007. 71:143-153
【非特許文献3】J Clin Microbiol. 2011. 49:2966-2975
【非特許文献4】34th Annual International conference of the IEEE EMBS 2012. 2012:499-502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色して蛍光観察を行い、芽胞のみを迅速に検出する方法を提供することを課題とする。さらに本発明は、前記蛍光染色剤で芽胞を検出するキット、該染色された芽胞等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意工夫を重ねた結果、栄養細胞は染色せず、芽胞を特異的に染色可能な蛍光染色剤が存在すること、当該蛍光染色剤を使用すれば、芽胞のみを迅速に検出することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記[1]~[6]に関するものである。
[1]試料中の芽胞を検出する方法において、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色して蛍光観察を行うことを特徴とする芽胞を検出する方法。
[2]試料中の芽胞を検出する方法において、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色し、更に試料を脱色剤で脱色後、蛍光観察を行うことを特徴とする芽胞を検出する方法。
[3]芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤が、アリザリンレッドS、オーラミンO、オーラミンS、硫酸ベルベリン、カルコフロールホワイト、コンゴーレッド、5-ドデカノイルアミノフルオレセイン、エオシンY、エリスロシンB、エバンスブルー、マラカイトグリーン、ミトトラッカー(商標)グリーンFM、ナイルブルー、パラローズアニリン塩酸塩、フロキシンB、6-プロピオニル-2-ジメチルアミノナフタレン、ピロニンY、ローズベンガル、スルホローダミン101、ユビテックス2B、キシレノールオレンジおよびそれらの塩または遊離体からなる群の少なくとも1種である[1]または[2]に記載の芽胞を検出する方法。
[4]脱色剤がアルコールである、[2]または[3]に記載の方法。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の蛍光染色剤を含む、芽胞検出キット。
[5-1][1]~[4]のいずれかに記載の蛍光染色剤および[2]または[4]に記載の脱色剤を含む、芽胞検出キット。
[6][1]~[4]のいずれかに記載の方法で染色された芽胞。
【発明の効果】
【0011】
本発明の芽胞の検出方法は、栄養細胞は染色せず、芽胞を特異的に染色することで、芽胞のみを迅速に検出することができる。しかも、本発明の方法は、発芽能を有した芽胞をも検出することができる。芽胞検査は食品、医薬品、化粧品等の製造現場や医療現場等において必要とされており、高精度かつ迅速に芽胞を検出することができる本発明は、様々な分野に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】芽胞と栄養細胞との染色の相違を示す顕微鏡画像である。Schaeffer培地またはLB培地で培養した供試菌株にオーラミンOを加えて検鏡した結果を示す。
【図2】芽胞と栄養細胞との染色の相違を示す顕微鏡画像である。LB寒天培地で培養した供試菌株にオーラミンSを加えて検鏡した結果を示す。
【図3】芽胞と栄養細胞との染色の相違を示す顕微鏡画像である。培養した供試菌株にHoechst 33342及びオーラミンOを加えて検鏡した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、芽胞は染色されるが、栄養細胞は染色されない蛍光染色剤で試料を染色して蛍光観察を行い、蛍光が観察された場合に芽胞が試料中に含まれると判定する芽胞の検出方法を提供する。また、当該蛍光染色剤を含む芽胞の検出キット、及び当該蛍光染色剤で染色された芽胞も提供する。

【0014】
芽胞菌
芽胞(spore)とは、一部の細菌が栄養状態や生育環境が悪化すると形成する極めて耐久性の高い細胞構造であり、芯部(コア)、皮層(コルテックス)、皮層を覆う芽胞殻(スポアコート)から構成される。さらに、芽胞殻は、内側から順に芽胞内殻及び芽胞外殻の二層から構成される。芽胞の状態では細菌は新たに分裂することはできず、その代謝も限られており、このような芽胞は休眠細胞と呼ばれる。一方、前記細菌が増殖に適した環境に置かれると、芽胞が発芽して増殖・代謝能を有する菌体が作られる。これを芽胞と対比して、栄養細胞と呼ぶ。

【0015】
本発明において対象とする芽胞菌は、芽胞を形成する菌であればよい。具体的には、限定されるわけではないが、バチルス属、クロストリジウム属、スポロラクトバチルス属、ゲオバチルス属、パエニバチルス属、アリシクロバチルス属、サーモアネロバクター属、サーモアネロバクテリウム属、モーレラ属、アリシクロバチルス属、デスルフォトマキュラム属およびリシニバチルス属に属する細菌などが挙げられ、好ましくは、バチルス属、クロストリジウム属、ゲオバチルス属、パエニバチルス属、サーモアネロバクター属、アリシクロバチルス属、モーレラ属に属する細菌などが挙げられる。バチルス属に属する細菌としては、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・アトロフィウス(Bacillus atrophaeus)、セレウス菌(Bacillus cereus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、バチルス・シュードミコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バチルス・プミリス(Bacillus pumilis)、バチルス・サフェンシス(Bacillus safensis)、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・コアフイレンシス(Bacillus coahuilensis)等が挙げられるが、これらに限定されない。クロストリジウム属に属する細菌としては、例えば、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、クロストリジウム・テルモサッカロリティクム(Clostridium thermosaccharolyticum)等が挙げられるが、これらに限定されない。スポロラクトバチルス属に属する細菌としては、例えば、スポロラクトバチルス・イヌリナス(Sporolactobacillus inulinus)が挙げられるが、これに限定されない。ゲオバチルス属に属する細菌としては、例えば、ゲオバチルス・カウストフィラス(Geobacillus kaustophilus)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)が挙げられるが、これに限定されない。パエニバチルス属に属する細菌としては、例えば、パエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)、パエニバチルス・チアミノリティカス(Paenibacillus thiaminolyticus)が挙げられるが、これに限定されない。アリシクロバチルス属に属する細菌としては、例えば、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)等が挙げられるが、これらに限定されない。サーモアネロバクター属に属する細菌としては、例えば、サーモアネロバクター・マスラニイ(Thermoanaerobacter mathranii)、サーモアネロバクター・アセトエチリカス(Thermoanaerobacter acetoethylicus)、サーモアネロバクター・ブロキイsubsp.ブロキイ(Thermoanaerobacter brockii subsp. brockii)、サーモアネロバクター・ブロキイsubsp.フィンニ(Thermoanaerobacter brockii subsp. finni)、サーモアネロバクター・ブロキイsubsp.ラクチエチリカス(Thermoanaerobacter brockii subsp. lactiethylicus)、サーモアネロバクター・セルロリティカス(Thermoanaerobacter cellulolyticus)、サーモアネロバクター・エタノリカス(Thermoanaerobacter ethanolicus)、サーモアネロバクター・イタリカス(Thermoanaerobacter italicus)、サーモアネロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、サーモアネロバクター・シデロフィラス(Thermoanaerobacter siderophilus)、サーモアネロバクター・スルフロフィラス(Thermoanaerobacter sulfurophilus)、サーモアネロバクター・サーモコプリエ(Thermoanaerobacter thermocopriae)、サーモアネロバクター・サーモヒドロスルフリカス(Thermoanaerobacter thermohydrosulfuricus)、サーモアネロバクター・ウィエジェリイ(Thermoanaerobacter wiegelii)等が挙げられるが、これらに限定されない。サーモアネロバクテリウム属に属する細菌としては、例えば、サーモアネロバクテリウム・サーモサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、サーモアネロバクテリウム・アシジトレランス(Thermoanaerobacterium aciditolerans)、サーモアネロバクテリウム・アオテアロエンス(Thermoanaerobacterium aotearoense)、サーモアネロバクテリウム・ポリサッカロリティカム(Thermoanaerobacterium polysaccharolyticum)、サーモアネロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモアネロバクテリウム・サーモスルフリゲネス(Thermoanaerobacterium thermosulfurigenes)、サーモアネロバクテリウム・キシラノリティカム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)、サーモアネロバクテリウム・ゼアエ(Thermoanaerobacterium zeae)等が挙げられるが、これらに限定されない。モーレラ属に属する細菌としては、例えば、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)、モーレラ・グリセリニ(Moorella glycerini)、モーレラ・ムルデリ(Moorella mulderi)、モーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)等が挙げられるが、これらに限定されない。デスルフォトマキュラム属に属する細菌としては、例えば、デスルフォトマキュラム・ニグリフィカンス(Desulfotomaculum nigrificans)、デスルファトマキュラム・サーモアセトキシダンス(Desulfotomaculum thermoacetoxidans)、デスルファトマキュラム・サーモベンゾイカムsubsp.サーモベンゾイカム(Desulfotomaculum thermobenzoicum subsp. thermobenzoicum)、デスルファトマキュラム・サーモベンゾイカムsubsp.サーモシントロフィカム(Desulfotomaculum thermobenzoicum subsp. thermosyntrophicum)、デスルファトマキュラム・サーモシステルナム(Desulfotomaculum thermocisternum)、デスルファトマキュラム・サーモサポボランス(Desulfotomaculum thermosapovorans)、デスルファトマキュラム・サーモサブテラネウム(Desulfotomaculum thermosubterraneum)等が挙げられるが、これらに限定されない。リシニバチルス属に属する細菌としては、例えば、リシニバチルス・スフェリカス(Lysinibacillus sphaericus)等が挙げられるが、これに限定されない。
本発明は、発芽能を維持した休眠状態の芽胞も対象とすることができる。

【0016】
上記芽胞菌は、芽胞の耐熱性の温度を指標に分類することができる。例えば120℃前後が耐熱限度である好熱性グループ(例えば、Clostridium thermosaccharolyticum、Geobacillus stearothermophilus、Moorella thermoacetica、Thermoanaerobacter mathranii等)、100℃前後が耐熱限度である低、中温性グループ(Bacillus subtilis、Clostridium perfringens、Clostridium botulinum等)等とすることができる。さらに、染色パターンの違いを利用してグループ毎に分類することもできる。

【0017】
蛍光染色剤
本発明で使用する蛍光染色剤としては、栄養細胞は染色せず、芽胞のみを特異的に染色するものであればよい。また、前記蛍光染色剤は死細胞に対する染色性が低いことが好ましい。
具体的には、アリザリンレッドS、オーラミンO、オーラミンS、硫酸ベルベリン、カルコフロールホワイト、コンゴーレッド、5-ドデカノイルアミノフルオレセイン、エオシンY、エリスロシンB、エバンスブルー、マラカイトグリーン、ミトトラッカー(商標)グリーンFM、ナイルブルー、パラローズアニリン塩酸塩、フロキシンB、6-プロピオニル-2-ジメチルアミノナフタレン、ピロニンY、ローズベンガル、スルホローダミン101、ユビテックス2Bまたはキシレノールオレンジ等が挙げられる。好ましくは、アリザリンレッドS、オーラミンO、オーラミンS、カルコフロールホワイト、コンゴーレッド、エオシンY、エリスロシンB、エバンスブルー、ナイルブルー、パラローズアニリン塩酸塩、フロキシンB、ローズベンガル、スルホローダミン101、ユビテックス2Bまたはキシレノールオレンジであり、より好ましくはオーラミンO、オーラミンS、コンゴーレッド、ナイルブルー、フロキシンB、ローズベンガル、スルホローダミン101またはユビテックス2Bである。
また、本発明で使用する蛍光染色剤は、栄養細胞は染色せず、芽胞のみを特異的に染色するという特性が維持される限り、それらの塩または遊離体であってもよい。塩としては、酸(例:無機酸、有機酸) との塩や塩基(例:アルカリ金属、アルカリ土類金属など)との塩が挙げられる。無機酸との塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などとの塩が挙げられ、有機酸との塩としては、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などとの塩が挙げられる。また、遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
また、前記蛍光染色剤を複数(2種以上)組み合わせて使用することもできる。組み合わせとしては、例えば、オーラミンOまたはオーラミンSとコンゴーレッド、オーラミンOまたはオーラミンSとナイルブルー、オーラミンOまたはオーラミンSとフロキシンB、オーラミンOまたはオーラミンSとスルホローダミン101、オーラミンOまたはオーラミンSとユビテックス2B等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0018】
また、芽胞の生理状態(分裂可能な状態か休眠状態か、あるいは、死菌か生菌か、等)を識別することは実用上重要であるため、上記蛍光染色剤を、例えば、本発明者らの開発した特許文献1に記載の方法、すなわち、芽胞の加熱・薬剤処理といった殺菌処理により芽胞内部への蛍光染色試薬の浸透性が増すことを利用した芽胞形成細菌の芽胞の殺菌もしくは静菌作用を評価するための方法等に適用することもできる。

【0019】
さらに、上記蛍光染色剤で染色された芽胞は、飲料、食品、医薬品、化粧品等様々な製品や水質検査等における各種芽胞検査における指標(コントロール)として用いることができる。あるいは、本発明で染色された芽胞を利用して、芽胞の数または濃度を検出することもできる。

【0020】
試料
本発明が対象とする試料は、食品、飲料、医薬品(医療用医薬品、一般医薬品、または医薬部外品)、使い捨て医療用器具、化粧品等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0021】
食品としては、例えば、米類、パン類、麺類、缶詰類、スパイス、弁当類、惣菜食品、乳製品、和洋菓子(冷蔵品、冷凍品も含む)、調味料、栄養補助食品(サプリメント等)、食肉加工品(ハム、ソーセージ、ベーコン等)、水産加工品(練り製品等)等を挙げることができるが、これらに限定されない。

【0022】
飲料としては、例えば、各種清涼飲料水(アルコール分を含まない(アルコール分1%未満)飲用の液体物で、味や香りがある飲料水)、アルコール飲料等が挙げられるが、これらに限定されない。
より具体的には、各種清涼飲料水としては、コーヒー飲料(コーヒー:生豆換算で、内容量100g中コーヒー豆を5g以上使用したもの、コーヒー飲料:生豆換算で、内容量100g中コーヒー豆を2.5g以上5g未満使用したもの、コーヒー入り清涼飲料:生豆換算で、内容量100g中コーヒー豆を1g以上2.5g未満使用したもの)、炭酸飲料(炭酸水-ソーダ水、コーラ炭酸飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料、栄養ドリンク炭酸飲料等)、果実飲料(天然果汁、果汁飲料、果肉飲料、果汁入り混合飲料、果汁入り炭酸飲料、果汁系ニアウォーター、エード、フルーツシロップ等)、茶系飲料(ウーロン茶飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、むぎ茶飲料、ブレンド茶飲料等)、ミネラルウォーター、豆乳類、野菜飲料(トマトジュース、人参ジュース、野菜ジュース)、スポーツ飲料、その他(ドリンクスープ、ぜんざいドリンク、汁粉ドリンク、甘酒、ゼリー飲料、味噌汁等)、牛乳、乳飲料等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルコール飲料としては、ビール、ワイン、酎ハイ、リキュール、清酒、焼酎、ブランデー、ウィスキー等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、食品や飲料が含まれる形態としては、缶、瓶、ペットボトル、トレー、パウチ等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0023】
医薬品としては、通常の錠剤、散剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0024】
使い捨て医療用器具としては、注射器、注射針、コンタクトレンズ等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0025】
化粧品としては、化粧水、乳液、クレンジング、ファンデーション、アイライナー、アイシャドー、マスカラ、フェイスパウダー、頬紅、口紅、マニキュア等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0026】
染色と観察
本発明の染色方法は、常法の細胞蛍光染色で行うことができる。例えば、蛍光染色剤を、原液あるいは希釈して試料と混合し、終濃度0.0001~0.01%(W/V)(好ましくは0.001~0.01%(W/V))で数分~数時間染色させた後、試料を洗浄、脱色して顕微鏡観察を行う。その際の染色時間は、温度、染色具合等を考慮し、適宜調整することができる。温度は、芽胞が蛍光染色されるものであれば特に制限されないが、例えば、0~100℃、より好ましくは15~30℃が挙げられる。

【0027】
洗浄は、栄養細胞や試料中に食品片等由来により混在する夾雑物に付着した蛍光染色剤を効率的に除去するため、染色工程後に洗浄し、1~数回(2~4回)脱色剤で行うことが好ましい。その際の洗浄は、トリス塩酸緩衝液(例Tris HCl pH7.6)、リン酸緩衝液等の緩衝液及びこれらの組み合わせにより行うことができる。洗浄の際のpHは栄養細胞や夾雑物に付着した蛍光染色剤を除去するものであれば特に制限されず、例えば、pH4~10、より好ましくはpH6~8が挙げられる。
脱色剤は、栄養細胞や夾雑物に付着した蛍光染色剤を除去するものであれば特に制限されず、例えば、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール)が挙げられる。好ましくはエタノール、より好ましくは70%エタノールである。脱色剤は、試料や蛍光染色剤に合わせて適宜選択することができる。より確実に栄養細胞に付着した蛍光染色剤を効率的に除去するためには、少なくとも1回はアルコール(例えば、70%エタノール)で洗浄することがより好ましい。

【0028】
蛍光顕微鏡観察は、蛍光観察装置、対物レンズ、カメラアダプタレンズ、CCDカメラ等を装着した光学顕微鏡により行うことができる。また、蛍光染色された芽胞は、フローサイトメーター、バイオプローラ(登録商標)等の自動計測機器を用いることにより、自動で数量を確認することもできる。

【0029】
さらに、芽胞の染色性を高めるためには、染色時に加熱処理、または界面活性剤処理等を行ってもよい。芽胞の染色性を高めるものであれば、特に制限されないが、加熱温度としては、例えば、40~100℃、より好ましくは65~80℃、界面活性剤としては、例えば、Triton X-100、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、Tween 80が挙げられるが、より好ましくはTriton X-100である。これらの処理は組み合わせて行ってもよい。また本発明の検査対象とする試料によっては、予め酵素処理、界面活性剤処理、キレート剤処理、濃縮洗浄処理等を行ってもよい。

【0030】
上記試料の試料調製、蛍光染色、洗浄、顕微鏡観察などの一連の工程を自動化させて行うこともできる。

【0031】
キット
本発明は、上記蛍光染色剤を含む芽胞検出キットを提供する。
また一態様として、キットには蛍光染色剤とともに、脱色剤、希釈液、使用説明書等を含むことができる。

【0032】
以下、本発明を実施例及び参考例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例等は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。

【0033】
[実施例1]
各種蛍光試薬のBacillus subtilis 168 trpC2株に対する芽胞と栄養細胞の識別性について
(供試菌株)
Bacillus subtilis 168 trpC2を供試菌株として用いた。

【0034】
(菌液の調製)
培地はLB培地とSchaeffer培地を用いた。栄養細胞はL-brothで37℃、6時間培養したものを遠心回収し、10mM Tris HCl pH7.6で洗浄してから37℃で1時間染色した。芽胞はLB培地で一晩培養した細胞をSchaeffer液体培地に1%植菌し、37℃、24時間培養して得た。芽胞サンプルはSchaeffer培地中で染色するか、遠心回収してから10mM Tris HCl pH7.6で2回洗浄後、10mM Tris HCl pH7.6緩衝液中37℃で1時間染色した。また、オーラミンSの染色性を評価する場合は、LB寒天培地にBacillus subtilis 168 trpC2株を植菌し、37℃で24時間培養した後、細胞を回収してオーラミンS染色液に懸濁し5分間染色した。

【0035】
(蛍光試薬染色と洗浄処理)
使用した蛍光染色剤とそれらの製造・販売元を表1に示す。粉末状の蛍光染色剤は、濃度 0.1%または1mMとなるよう精製水またはDMSOに溶解し、保存溶液とした。液状の蛍光染色剤はそのまま保存溶液として用いた。これらの保存溶液を直接培地に加えるか、10mM Tris HCl pH7.6(オーラミンSの場合、10mM Tris HCl pH7.0)で希釈してから染色に用いた。各種蛍光染色剤の使用濃度も表1に示す。染色後の細胞は、1)無洗浄のまま、2)10mM Tris HCl pH7.6で2回洗浄後、3)70%エタノール水溶液による脱色と10mM Tris HCl pH7.6による洗浄を交互に2回繰り返した後、それぞれ検鏡した。

【0036】
(蛍光顕微鏡条件)
顕微鏡観察にはOLYMPUS社製の位相差装置付蛍光顕微鏡BX51を用いた。対物レンズは×100オイルレンズを用いた。CCDカメラは日本ローパー社のCoolSNAP ESを用いた。蛍光観察時にはOLYMPUS社製の蛍光ミラーユニットU-MNUA2(NUA)、U-MGFPHQ(GFP)、U-MRFPHQ(RFP)、HcRed(特注品)を用いた。
HcRed(特注品)はオリンパス社の空キューブ(フィルター未装着品)に、OMEGA OPTICAL社製のフィルターセットXF102-2を組み込んで用いた。フィルターセットXF102-2は励起フィルターと吸収フィルターで構成されており、励起フィルターは540-590nmの波長の光を透過し、吸収フィルターは610-700nmの波長の光を透過する。
それぞれの蛍光染色剤に対して使用した蛍光ミラーユニットを表1に示す。露光時間は、減光フィルターを用いない状態で枯草菌の無染色芽胞からバックグランド蛍光が観察されない条件に設定した(最長1~2秒)。染色した細胞の蛍光が強すぎて露光過剰になる場合は、5%または25%減光フィルターを用いて露光調整した。位相差顕微鏡観察像及び蛍光顕微鏡観察像はCCDカメラで撮影し、画像処理ソフトRS ImageExpress(日本ローパー社製)を用いて重ね合わせ画像を作成した。

【0037】
【表1-1】
JP2015037578A1_000002t.gif

【0038】
【表1-2】
JP2015037578A1_000003t.gif

【0039】
【表1-3】
JP2015037578A1_000004t.gif

【0040】
【表1-4】
JP2015037578A1_000005t.gif

【0041】
【表1-5】
JP2015037578A1_000006t.gif

【0042】
【表1-6】
JP2015037578A1_000007t.gif

【0043】
【表1-7】
JP2015037578A1_000008t.gif

【0044】
【表1-8】
JP2015037578A1_000009t.gif

【0045】
【表1-9】
JP2015037578A1_000010t.gif

【0046】
【表1-10】
JP2015037578A1_000011t.gif

【0047】
【表1-11】
JP2015037578A1_000012t.gif

【0048】
【表1-12】
JP2015037578A1_000013t.gif

【0049】
【表1-13】
JP2015037578A1_000014t.gif

【0050】
【表1-14】
JP2015037578A1_000015t.gif

【0051】
(結果1)
結果一覧を表2に示す。各種蛍光染色剤で染色した後、洗浄・脱色を行わなかったサンプル、10mM Tris HClで洗浄したサンプル、および70%エタノールで脱色したサンプルについて、それぞれ適切なフィルターキューブユニットを用いて蛍光顕微鏡観察し、結果をCCDカメラで撮影した。得られた画像について、(a)細胞が存在しない任意の場所における平均的な蛍光の値と、(b)栄養細胞、あるいは(c)芽胞における蛍光の最大値を、Image Express(ローパー社製ソフトウェア)を用いて測定した。b÷a=栄養細胞の染色指数として、c÷a=芽胞の染色指数として表し、染色指数が大きいほど染色性が良いと判断した。本実施例では、目視による染色の識別が可能な値として、蛍光指数2.5未満では目視により染色が確認できないため、蛍光指数2.5以上を染色性有りとした。なお、(*)は、損傷した栄養細胞または死細胞に対する染色性が生細胞に比べて増大したことを示す。ここで、染色性の増大とは、細胞の損傷または死滅によって、細胞の蛍光染色剤の排出機能が低下または喪失し、蛍光染色剤が細胞内に蓄積しやすくなり、結果として損傷した栄養細胞または死細胞の発する蛍光が増大することをいう。

【0052】
各種蛍光染色剤の染色性の違いについて、以下の(×)~(◎)の条件で検討した。
染色後、洗浄又はエタノール脱色を行わないサンプルについて、芽胞の染色指数が2.5未満または栄養細胞に対する染色指数が2.5以上の場合、芽胞特異的染色の適性なしとみなし、総合判定を(×)とした。
染色後、洗浄又はエタノール脱色を行わないサンプルについて、芽胞の染色指数が2.5以上、栄養細胞に対する染色指数が2.5未満の場合、限定された条件で芽胞特異的染色の適性ありとみなし、総合判定を(△)とした。
染色後、10mM Tris HClで水洗したサンプルについて、芽胞の染色指数が2.5以上、栄養細胞に対する染色指数が2.5未満の場合、検査対象物の種類や染色方法によっては芽胞特異的染色の適性ありとみなし、総合判定を(○)とした。
染色後、70%エタノールで脱色したサンプルについて、芽胞の染色指数が2.5以上、栄養細胞に対する染色指数が2.5未満の場合、多様な検査対象物に対して芽胞特異的染色の適性ありとみなし、総合判定を(◎)とした。
なお、損傷細胞や死細胞に対する染色性の増大が認められた蛍光染色剤について、使用条件により芽胞検出の実用性を損なう可能性があるものは、それぞれ等級を下げて、(◎)を(○)に、(○)を(△)に、(△)を(×)とした。
なお、カルコフロールホワイトについては、成熟芽胞に対する染色性が低かったが、形成途中の芽胞を強く染めたことから、使用条件によっては有効と判断し、(○)とした。

【0053】
42種類の蛍光染色剤のうち、オーラミンO(Auramine O)、オーラミンS(Auramine S)、コンゴーレッド(Congo Red)、ナイルブルー(Nile blue (Basic Blue 12))、フロキシンB(Phloxine B)、ローズベンガル(Rose Bengal)、スルホローダミン101(Sulforodamine 101)およびユビテックス2B(Uvitex 2B)の8種に関しては、芽胞と強い親和性を示し、かつ栄養細胞に染色性を示さず、最も適した染色剤であった(◎)。

【0054】
アリザリンレッドS(Alizarin Red S)、カルコフロールホワイト(Calcofluo White)、エオシンY(Eosin Y)、エリスロシンB(Erythrosine B)、エバンスブルー(Evans Blue)、パラローズアニリン塩酸塩(Pararosaniline Hydrochloride (Fuchsine))、キシレノールオレンジ(Xylenol Orange)の7種に関しては、70%エタノールで芽胞は脱色されるが、10mM Tris HClの洗浄では脱色されず、芽胞への親和性は中程度あり、かつ栄養細胞に染色性を示さなかった(○)。

【0055】
硫酸ベルベリン(Berberine Sulfate Hydrate)、5-ドデカノイルアミノフルオレセイン(5-dodecanoylaminofluorecein)、マラカイトグリーン(Malachite Green)、ミトトラッカー(商標)グリーン FM(Mito TrackerTM Green FM)、6-プロピオニル-2-ジメチルアミノナフタレン(6-propionyl-2-dimethylaminonaphthalene (prodan))、ピロニンY(Pyronin Y)の6種に関しては、芽胞と栄養細胞の染色性において、芽胞の方がやや親和性が高く、極限られた条件によっては、芽胞の識別が可能と考えられた(△)。

【0056】
特定の蛍光染色剤が栄養細胞は染色せず、芽胞に対し特異的に染色する理由については以下と考えられる。
芽胞の構造は電子顕微鏡観察などによって明らかにされており、主な芽胞特異的構造体としてコルテックスとスポアコートが知られている。上記蛍光染色剤は、これらの構造体全体または構造体に含まれる特定の物質に対する親和性が高く、栄養細胞または死細胞に対する親和性が低いと考えられた。枯草菌においては、コルテックスやスポアコートの形成異常を生じる変異株が知られており、これらの変異芽胞に対する染色性の違いを基に、各種蛍光染色剤の染色部位を確認した。例えば、カルコフロールホワイトはコルテックス欠損芽胞において染色性が低下し、オーラミンO、コンゴーレッド、スルホローダミン101などはスポアコート欠損芽胞において染色性が低下した。

【0057】
カルコフロールホワイトは真菌の細胞壁に含まれる多糖に親和性を示すことから、真菌の検出用に用いられる。一方、芽胞のコルテックスにもペプチドグリカンなどの多糖が含まれており、それがカルコフロールホワイトによって染色されると考えられた。カルコフロールホワイト以外の蛍光染色剤であっても、コルテックス特異的な成分に親和性を示すものは芽胞染色に適用できる。ただし、スポアコートの存在によりコルテックス内への高分子の浸透性が制限されるため、コルテックス特異的な蛍光染色剤はスポアコートが未発達な芽胞か、スポアコートが損傷した芽胞の染色に限定される。ユビテックスB2も真菌の細胞壁に含まれる多糖に結合するため真菌検出に用いられる。ユビテックスB2はカルコフロールホワイトと異なり、スポアコートの欠損変異芽胞において染色性が低下した。スポアコートはタンパク質、糖質、脂質など多様な物質を含む多層構造体である。ユビテックスB2はスポアコート特異的な多糖を染色すると考えられた。

【0058】
芽胞のスポアコートを構成するタンパク質、糖質、脂質や、スポアコートに集積する金属イオンのいずれかに親和性を示す蛍光染色剤は、芽胞染色に適応可能と考えられる。オーラミンとナイルブルーは1つのNH2基を、パラローズアニリンは3つのNH2基を持つ塩基性染色剤である。これらはスポアコートの酸性成分に親和性を示すと考えられる。実際、ナイルブルーからNH2基が失われたナイルレッドでは、芽胞に対する染色特異性が低下したことから、芽胞染色におけるNH2基の重要性が示唆された。アリザリンレッドSは1つのSO3Na基を、スルホローダミン101は2つのSO3H基を、キシレノールオレンジは4つのCOOH基を持つ染色剤である。これらはスポアコートの塩基性成分に親和性を示すと考えられる。コンゴーレッドはSO3Na基とNH2基を2つずつ持ち、エバンスブルーは2つのNH2基と4つのSO3基を持つ染色剤である。これらはスポアコートの酸性・塩基性成分の両方に親和性を示す可能性がある。フロキシンBとローズベンガルはClと、BrまたはIを、エリスロシンはIを含む蛍光染色剤である。これらのハロゲンを含む蛍光染色剤の染色対象物質については不明であるが、芽胞の何らかの成分に対して親和性を示すと推定される。

【0059】
参考として、最も染色適正の高いオーラミンOに関して蛍光顕微鏡写真を図1に示す。Schaeffer培地で培養して得た枯草菌の芽胞は位相差顕微鏡で白く見え、オーラミンOで染色した芽胞は蛍光顕微鏡で緑色蛍光を示した。一方、LB培地で培養して得た枯草菌の栄養細胞は位相差顕微鏡観察で黒く見え、蛍光顕微鏡観察で栄養細胞は緑色蛍光を示さなかった。また、オーラミンSに関して蛍光顕微鏡写真を図2に示す。蛍光顕微鏡下で青色光を照射したところ、芽胞周辺部に緑色蛍光が観察された。また、栄養細胞はほとんど染色されなかった。この結果はオーラミンOを用いた染色とほぼ同じであった。染色していない芽胞では同じ条件で緑色蛍光が観察されなかった。このように、○~◎の15種の試薬を用いれば、迅速、簡便に芽胞特異的染色が可能である。

【0060】
【表2-1】
JP2015037578A1_000016t.gif

【0061】
【表2-2】
JP2015037578A1_000017t.gif

【0062】
[実施例2]
各種芽胞菌に対するオーラミンOの芽胞染色性について
(供試菌株)
表3に示す供試菌株を使用した。食品や飲料中で問題となる芽胞菌24菌種、28株を用いた。

【0063】
(芽胞の調製と精製)
芽胞の調製は、それぞれの菌株に適した芽胞形成培地を用いた。芽胞形成培地と精製法は、スポア実験マニュアル(技報堂出版、1995年)に従った。

【0064】
(染色と顕微鏡観察)
実施例1の方法に従い、染色と顕微鏡観察を行った。

【0065】
(結果2)
(オーラミンOの芽胞染色剤適応菌種について)
芽胞への親和性が極めて高く、栄養細胞への親和性の低かったオーラミンOに関して、食品や飲料中で問題となる各種芽胞菌24菌種、28株について、芽胞が染色されるか確認した。結果も表3に示す。すべての菌株で芽胞を染色することが確認でき、芽胞染色剤として、ユニバーサルな効果があることが確認できた。また、28株に全て対して、栄養細胞には染色性を示さなかった。

【0066】
【表3】
JP2015037578A1_000018t.gif

【0067】
[実施例3]
各種芽胞菌に対するコンゴ—レッドおよびナイルブルーの芽胞染色性について
(供試菌株)
表4に示す供試菌株を使用した。

【0068】
(芽胞の調製)
芽胞の調製は、上記の供試菌株を寒天培地に植菌し(表4)、30℃で2日間または4日間培養することで行った。

【0069】
(染色と顕微鏡観察)
実施例1の方法に従い、染色と顕微鏡観察を行った。

【0070】
(結果3)
(コンゴ—レッドおよびナイルブルーの芽胞染色剤適応菌種について)
どちらの蛍光染色剤も枯草菌(Bacillus subtilis 168)の芽胞に対する染色性は良好であったが、他の菌種の芽胞に対しては染色性・特異性がやや劣る結果となった(表4)。コンゴーレッドはB. sphaericus NBRC 3526を除いた成熟芽胞(72時間サンプル)に対して良好な染色性を示した。一方、ナイルブルーはコンゴーレッドと異なる染色性を示した。以上の結果から、コンゴーレッドおよびナイルブルーは特定菌種の芽胞を検出・同定するために単独または組み合わせることにより、有効に用いることができる。

【0071】
【表4】
JP2015037578A1_000019t.gif

【0072】
[実施例4]
芽胞検出キット
芽胞の検出や数量計測に用いるための芽胞検出キットとして、以下の組み合わせのキットを作成した。
溶液A(1% オーラミンO DMSO溶液)
溶液B(0.01% オーラミンO、10mM Tris-HCL pH7.0水溶液)
希釈液(10mM Tris-HCL pH7.0水溶液)

【0073】
芽胞を含む水溶液を検査する場合は、溶液Aを1/100量加えて懸濁し、室温で5分放置してから蛍光顕微鏡などで観察する。染色芽胞は青色光を照射すると緑色蛍光を発する。
粒子状のサンプルまたは遠心分離によって得られた菌体のペレットを検査する場合は、溶液Bを適量加えて懸濁し、室温で5分放置してから蛍光顕微鏡などで観察する。染色芽胞は青色光を照射すると緑色蛍光を発する。芽胞数が多すぎて観察しにくい場合は、希釈液を用いて水溶液、サンプルまたはペレットを希釈すればよい。

【0074】
芽胞および栄養細胞検出キット
芽胞及び栄養細胞を別々に検出する場合や、芽胞と栄養細胞の数量計測に用いるための芽胞検出キットとして、以下の組み合わせのキットを作成した。
溶液C(1% オーラミンO DMSO溶液)
溶液D(1% ヘキスト33342水溶液)
溶液E(0.01% オーラミンO、0.01% ヘキスト33342、10mM Tris-HCL pH7.0水溶液)
希釈液(10mM Tris-HCL pH7.0水溶液)

【0075】
芽胞を含む水溶液を検査する場合は、溶液CとDをそれぞれ1/100量ずつ加えて懸濁し、室温で5分放置してから蛍光顕微鏡などで観察する。細菌の栄養細胞はDNAが染色されて紫外線を照射すると青色蛍光を、染色芽胞は青色光を照射すると緑色蛍光を発する。
粒子状のサンプルまたは遠心分離によって得られた菌体のペレットを検査する場合は、溶液Eを適量加えて懸濁し、室温で5分放置してから蛍光顕微鏡などで観察する。細菌の栄養細胞はDNAが染色されて紫外線を照射すると青色蛍光を、染色芽胞は青色光を照射すると緑色蛍光を発する。芽胞数が多すぎて観察しにくい場合は、希釈液を用いて水溶液、サンプルまたはペレットを希釈すればよい。

【0076】
枯草菌(Bacillus subtilis 168)をLB寒天培地で37℃、24時間培養して得られたコロニーを、上記希釈液(10mM Tris-HCL pH7.0水溶液)に懸濁し、溶液C及び溶液Dを加えて染色した。蛍光顕微鏡観察の結果を図3に示す。画像処理ソフトRS ImageExpress(日本ローパー社製)を用いて重ね合わせ画像を作成したところ、栄養細胞と芽胞が明確に識別された。

【0077】
本発明を好ましい態様を強調して説明してきたが、好ましい態様が変更され得ることは当業者にとって自明である。

【0078】
ここで述べられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の芽胞の検出方法は、栄養細胞ではなく芽胞を特異的に染色することで、芽胞のみを迅速に検出することができる。芽胞検査は食品、医薬品、化粧品等の製造現場や医療現場等において必要とされており、高精度かつ迅速に芽胞を検出することができる本発明は、様々な分野に大きく貢献することができる。
本出願は、日本で出願された特願2013-191121(出願日:平成25年9月13日)を基礎としており、その内容はすべて本明細書に包含されるものとする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2