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明細書 :時系列データの類似部分抽出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-139454 (P2015-139454A)
公開日 平成27年8月3日(2015.8.3)
発明の名称または考案の名称 時系列データの類似部分抽出方法
国際特許分類 A61B   5/1455      (2006.01)
FI A61B 5/14 322
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2014-011947 (P2014-011947)
出願日 平成26年1月27日(2014.1.27)
発明者または考案者 【氏名】廣安 知之
【氏名】福島 亜梨花
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
Fターム 4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
要約 【課題】解析者に負担をかけることなく、客観的な基準に従って複数の時系列データの類似部分を抽出可能な類似部分抽出方法を提供する。
【解決手段】i番目の第1ベクトルおよびj番目の第2ベクトルのコサイン類似度i,jを算出し、(1)コサイン類似度i,jが所定の許容閾値αよりも大きい場合は、セルi-1,j-1のスコアに該コサイン類似度i,jを加算したものをセルi,jのスコアとする一方、(2)コサイン類似度i,jが許容閾値αよりも小さい場合は、セルi-1,jのスコアにコサイン類似度i-1,jを加算したもの、またはセルi,j-1のスコアにコサイン類似度i,j-1を加算したものから、所定のペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとするスコアテーブル作成工程を含む。
【選択図】図4
特許請求の範囲 【請求項1】
任意の物理量を一定時間毎にn回(ただし、nは3以上の整数)測定することにより得た第1時系列データと、前記物理量を一定時間毎にm回(ただし、mは3以上の整数)測定することにより得た第2時系列データとの類似部分を抽出する方法であって、
前記第1時系列データを構成する連続する2つの測定点の差に基づいてn-1個の第1ベクトルを生成するとともに、前記第2時系列データを構成する連続する2つの測定点の差に基づいてm-1個の第2ベクトルを生成するベクトル化工程と、
前記第1ベクトルおよび前記第2ベクトルに基づいて、(n-1)×(m-1)個のセルで構成されたスコアテーブルを作成するステップであって、前記n-1個の第1ベクトルのうちのi番目(ただし、iはn-1以下の自然数)の第1ベクトルおよび前記m-1個の第2ベクトルのうちのj番目(ただし、jはm-1以下の自然数)の第2ベクトルのコサイン類似度i,jを算出し、(1)前記コサイン類似度i,jが所定の許容閾値よりも大きい場合は、セルi-1,j-1のスコアに該コサイン類似度i,jを加算したものをセルi,jのスコアとする一方、(2)前記コサイン類似度i,jが前記許容閾値よりも小さい場合は、セルi-1,jのスコアにコサイン類似度i-1,jを加算、またはセルi,j-1のスコアにコサイン類似度i,j-1を加算したものから、所定のペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとするスコアテーブル作成工程と、
前記スコアテーブルを構成する前記セルのうちの最もスコアの高いセルから出発して、該セルのスコアを算出する際に使用したスコアのセルをトレースバックして行き、前記トレースバックの軌跡に対応する前記第1ベクトルおよび前記第2ベクトルを特定するトレースバック工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記スコアテーブル作成工程において、(2)前記コサイン類似度i,jが前記許容閾値よりも小さい場合は、第1ベクトルi-1および第2ベクトルのコサイン類似度i-1,jと第1ベクトルおよび第2ベクトルj-1のコサイン類似度i,j-1との大小を比較し、(2-1)前記コサイン類似度i-1,jの方が大きい場合は、セルi-1,jのスコアに前記コサイン類似度i-1,jを加算し、前記ペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとする一方、(2-2)前記コサイン類似度i,j-1の方が大きい場合は、セルi,j-1のスコアに前記コサイン類似度i,j-1を加算し、前記ペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとする、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スコアテーブル作成工程において、(3)前記コサイン類似度i,j、前記コサイン類似度i-1,j、および前記コサイン類似度i,j-1のいずれもが前記許容閾値よりも小さい場合は、セルi-1,j-1のスコアから前記ペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとする、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペナルティ値をcos0°に設定したことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記物理量が局所的な脳活動により生じる血流量の増減であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の物理量の時間変動に関する複数の時系列データの類似部分を抽出する類似部分抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、fNIRS(functional Near-infrared Spectroscopy)装置を用いて測定した脳の局所的な領域における血流量の増減に基づいて脳機能を探ろうとする研究が注目を集めている(非特許文献1参照)。fNIRS装置としては、例えば、株式会社日立メディコ製のfNIRS装置(型名:ETG-7100)が知られている。このfNIRS装置によれば、0.1秒毎にサンプリングされた複数の測定点からなる最大120チャネルの時系列データを同時に得ることができる。
【0003】
脳機能を探るためには、この膨大な数の時系列データの中から時間変動が類似している部分を抽出することが有効である。類似部分を抽出することができれば、特定の脳活動において、脳のどの領域とどの領域とが連動しているのかを知ることができる。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】S.C.Bunce, M.T.Izzetoglu, K.Izztogle, B.Onaral and K.Pourrezaei, "Functional near-infrared spectroscopy", Engineering in Medicine and Biology Magazine, Vol. 25, No. 4, pp. 52-62, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常、上記類似部分の抽出は、解析者が経験に基づいて目視で行っている。このため、従来の類似部分の抽出は、(1)抽出結果に客観性がない、(2)時系列データの数が増えるにつれて解析者の負担が増大する、といった問題を有していた。また、脳活動の種類によっては、ある領域における血流量の時間変動を時間方向に圧縮/伸張したような血流量の時間変動が別の領域に現われることがあるが、これらを解析者が類似と判断するのは非常に困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、解析者に負担をかけることなく、客観的な基準に従って複数の時系列データの類似部分を精度良く抽出することができる類似部分抽出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る類似部分抽出方法は、任意の物理量を一定時間毎にn回(ただし、nは3以上の整数)測定することにより得た第1時系列データと、前記物理量を一定時間毎にm回(ただし、mは3以上の整数)測定することにより得た第2時系列データとの類似部分を抽出する方法であって、前記第1時系列データを構成する連続する2つの測定点の差に基づいてn-1個の第1ベクトルを生成するとともに、前記第2時系列データを構成する連続する2つの測定点の差に基づいてm-1個の第2ベクトルを生成するベクトル化工程と、前記第1ベクトルおよび前記第2ベクトルに基づいて、(n-1)×(m-1)個のセルで構成されたスコアテーブルを作成するステップであって、前記n-1個の第1ベクトルのうちのi番目(ただし、iはn-1以下の自然数)の第1ベクトルおよび前記m-1個の第2ベクトルのうちのj番目(ただし、jはm-1以下の自然数)の第2ベクトルのコサイン類似度i,jを算出し、(1)前記コサイン類似度i,jが所定の許容閾値よりも大きい場合は、セルi-1,j-1のスコアに該コサイン類似度i,jを加算したものをセルi,jのスコアとする一方、(2)前記コサイン類似度i,jが前記許容閾値よりも小さい場合は、セルi-1,jのスコアにコサイン類似度i-1,jを加算、またはセルi,j-1のスコアにコサイン類似度i,j-1を加算したものから、所定のペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとするスコアテーブル作成工程と、前記スコアテーブルを構成する前記セルのうちの最もスコアの高いセルから出発して、該セルのスコアを算出する際に使用したスコアのセルをトレースバックして行き、前記トレースバックの軌跡に対応する前記第1ベクトルおよび前記第2ベクトルを特定するトレースバック工程と、を含む。
【0008】
上記類似部分抽出方法は、例えば、前記スコアテーブル作成工程において、(2)前記コサイン類似度i,jが前記許容閾値よりも小さい場合は、第1ベクトルi-1および第2ベクトルのコサイン類似度i-1,jと第1ベクトルおよび第2ベクトルj-1のコサイン類似度i,j-1との大小を比較し、(2-1)前記コサイン類似度i-1,jの方が大きい場合は、セルi-1,jのスコアに前記コサイン類似度i-1,jを加算し、前記ペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとする一方、(2-2)前記コサイン類似度i,j-1の方が大きい場合は、セルi,j-1のスコアに前記コサイン類似度i,j-1を加算し、前記ペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとする。
【0009】
また、上記類似部分抽出方法は、前記スコアテーブル作成工程において、(3)前記コサイン類似度i,j、前記コサイン類似度i-1,j、および前記コサイン類似度i,j-1のいずれもが前記許容閾値よりも小さい場合は、セルi-1,j-1のスコアから前記ペナルティ値を減算したものをセルi,jのスコアとすることが好ましい。
【0010】
なお、上記類似部分抽出方法では、例えば、前記ペナルティ値をcos0°設定すればよい。
【0011】
上記類似部分抽出方法は、例えば、局所的な脳活動により生じる血流量の増減に関する時系列データの類似部分を抽出することができるが、対象とし得る物理量はこれに限定されない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、解析者に負担をかけることなく、客観的な基準に従って複数の時系列データの類似部分を抽出可能な類似部分抽出方法を提供することができる。特に、本発明に係る類似部分抽出方法よれば、時系列データの形のみに注目して類似部分を抽出するので、時間方向に圧縮/伸張された時系列データと圧縮/伸張される前の時系列データとの類似部分を抽出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】類似部分を有する2つの時系列データのグラフである。
【図2】本発明に係る類似部分抽出方法のフロー図である。
【図3】本発明に係る類似部分抽出方法のベクトル化工程を説明するための図である。
【図4】本発明に係る類似部分抽出方法のスコアテーブル作成工程を説明するための図である。
【図5】本発明に係る類似部分抽出方法のスコアテーブル作成工程で作成したスコアテーブルの具体例1を示す図である。
【図6】本発明に係る類似部分抽出方法のトレースバック工程で行ったトレースバックの具体例1を示す図である。
【図7】本発明に係る類似部分抽出方法のスコアテーブル作成工程で作成したスコアテーブルの具体例2を示す図である。
【図8】本発明に係る類似部分抽出方法のトレースバック工程で行ったトレースバックの具体例2を示す図である。
【図9】許容閾値αをcos15°に設定して類似部分を抽出した結果を示す図である。
【図10】許容閾値αをcos10°に設定して類似部分を抽出した結果を示す図である。
【図11】許容閾値αをcos20°に設定して類似部分を抽出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参考にしつつ、本発明に係る類似部分抽出方法の実施例について説明する。

【0015】
本発明の実施例に係る類似部分抽出方法は、任意の物理量を一定時間毎にn回(ただし、nは3以上の整数)測定することにより得た第1時系列データと、該物理量を一定時間毎にm回(ただし、mは3以上の整数)測定することにより得た第2時系列データとの類似部分を抽出する方法である。

【0016】
例えば、第1時系列データが、脳の局所領域における血流量の時間変動を示すデータ(図1A参照)であり、第2時系列データが、脳の別の局所領域における血流量の時間変動を示すデータ(図1B参照)である場合、類似部分抽出方法を実行することにより、第1時系列データの部分aと第2時系列データの部分bが類似していることを知ることができる。なお、本実施例に係る類似部分抽出方法によれば、第1時系列データの全体と第2時系列データの全体が類似している場合のみならず、第1時系列データの一部分が第2時系列データの一部分に類似している場合においても、類似部分を抽出することができる。第1時系列データの一部分と第2時系列データの一部分は、時間的に対応していなくてもよい。

【0017】
図2に示すように、本実施例に係る類似部分抽出方法は、順次実行される4つの工程、すなわち、ベクトル化工程S1、正規化工程S2、スコアテーブル作成工程S3およびトレースバック工程S4を含む。これらのうち、正規化工程S2は、スコアテーブル作成工程S3における計算を容易にするための工程であり、その必要がない場合は省略することができる。

【0018】
[ベクトル化工程]
ベクトル化工程S1では、第1時系列データを構成する時間的に連続する2つの測定点の差に基づいてn-1個の第1ベクトルを生成するとともに、第2時系列データを構成する連続する2つの測定点の差に基づいてm-1個の第2ベクトルを生成する。

【0019】
図3Aに示すように、第1時系列データが10個の測定点A~A10で構成されている場合は、測定点A(x,y)とA(x,y)との差に基づいて1番目の第1ベクトルvec_A(x-x、y-y)を生成し、測定点A(x,y)とA(x,y)との差に基づいて2番目の第1ベクトルvec_A(x-x、y-y)を生成し、・・・、測定点A10(x10,y10)とA(x,y)との差に基づいて9番目の第1ベクトルvec_A(x10-x、y10-y)を生成する(図3B、図3C参照)。

【0020】
同様に、第2時系列データが9個の測定点B~Bで構成されている場合は、測定点B(x,y)とB(x,y)との差に基づいて1番目の第2ベクトルvec_B(x-x、y-y)を生成し、測定点B(x,y)とB(x,y)との差に基づいて2番目の第2ベクトルvec_B(x-x、y-y)を生成し、・・・、測定点B(x,y)とB(x,y)との差に基づいて8番目の第2ベクトルvec_B(x-x、y-y)を生成する。

【0021】
なお、本明細書では、i番目(ただし、iはn-1以下の自然数)の第1ベクトルvec_Aのx成分およびy成分をそれぞれvec_x、vec_yと呼び、j番目(ただし、jはm-1以下の自然数)の第2ベクトルvec_Bのx成分およびy成分をそれぞれvec_p、vec_qと呼ぶこととする。第1時系列データおよび第2時系列データが同一のfNIRS装置で測定されたものである場合、vec_xおよびvec_pは、いずれも該fNIRS装置のサンプリング時間(例えば、0.1秒)に等しくなる。

【0022】
[正規化工程]
正規化工程S2では、第1ベクトルvec_Aのy成分vec_yおよび第2ベクトルvec_Bのy成分vec_qを、次式を用いて-1~+1の範囲内で正規化する。
【数1】
JP2015139454A_000003t.gif
ここで、vec_Yおよびvec_Qは、それぞれi番目の第1ベクトルvec_Aのy成分vec_yおよびj番目の第2ベクトルvec_Bのy成分vec_qを正規化したものである。また、maxおよびminは、それぞれvec_y(i=1,2,・・・,n-1)およびvec_q(j=1,2,・・・,m-1)の最大値および最小値である。

【0023】
[スコアテーブル作成工程]
スコアテーブル作成工程S3では、第1ベクトルvec_Aの正規化後のy成分vec_Y(i=1,2,・・・,n-1)および第2ベクトルvec_Bの正規化後のy成分vec_Q(j=1,2,・・・,m-1)に基づいてスコアテーブルを作成する。図4に示すように、スコアテーブルは(n-1)×(m-1)個のセルで構成されている。また、スコアテーブルには第0行および第0列が付加されている。第0行および第0列の各セルには、初期値である0を入れておく。

【0024】
その他のセルi,jには、vec_Yとvec_Qのコサイン類似度cosθi,jに基づいて算出したスコアを入れる。コサイン類似度cosθi,jは、2つの値(vec_Y、vec_Q)の類似度を評価するための指標であり、次式により算出することができる。
【数2】
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コサイン類似度cosθi,jは、+1に近ければ近いほど評価する2つの値が類似していることを示す一方、-1に近ければ近いほど評価する2つの値がかけ離れていることを示す。

【0025】
vec_Yとvec_Qのコサイン類似度cosθi,jが所定の許容閾値αよりも大きい場合、すなわち、第1ベクトルvec_Aと第2ベクトルvec_Bが完全に同一であるか、または許容し得る範囲内で相違している場合は、セルi,jのスコアを次式により算出されたSi,jとする。
【数3】
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ここで、Si-1,j-1は、先に算出されたセルi-1,j-1のスコアである。

【0026】
許容閾値αは、解析者が任意に設定できるパラメータである。例えば、解析者が許容閾値αをcos15°(=0.96593)に設定した場合は、第1ベクトルvec_Aと第2ベクトルvec_Bのなす角が15°よりも小さいとコサイン類似度cosθi,jが許容閾値αよりも大きくなり、反対に、第1ベクトルvec_Aと第2ベクトルvec_Bのなす角が15°よりも大きいとコサイン類似度cosθi,jが許容閾値αよりも小さくなる。

【0027】
解析者は、許容閾値αを調整することにより、抽出の曖昧さを任意に調整することができる。すなわち、解析者は、許容閾値αを下げることで、より多くの部分を類似部分として抽出することができる。一方、解析者は、許容閾値αを上げることで、類似度の高い部分だけを抽出することができる。

【0028】
コサイン類似度cosθi,jが許容閾値αよりも小さい場合、すなわち、第1ベクトルvec_Aと第2ベクトルvec_Bが許容し得る範囲を超えて相違している場合は、時間方向の圧縮/伸張を考慮するために、vec_Yi-1とvec_Qのコサイン類似度cosθi-1,j、およびvec_Yとvec_Qj-1のコサイン類似度cosθi,j-1を算出し、両者の大小を比較する。そして、コサイン類似度cosθi-1,jの方が大きい場合は、セルi,jのスコアを次式により算出されたSi,jとする。
【数4】
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一方、コサイン類似度cosθi,j-1の方が大きい場合は、セルi,jのスコアを次式により算出されたSi,jとする。
【数5】
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ここで、βはペナルティ値である。ペナルティ値βは、例えば、cos0°(=1)に設定される。これにより、(5)式の“cosθi-1,j-β”部分および(6)式の“cosθi,j-1-β”部分が必ず負数となり、その結果、セルi,jのスコアSi,jがSi-1,jまたはSi,j-1を超えるのを防ぐことができる。

【0029】
時間方向の圧縮/伸張を考慮するために算出したコサイン類似度cosθi-1,jおよびコサイン類似度cosθi,j-1のいずれもが許容閾値αよりも小さい場合は、(5)式または(6)式ではなく、次式によりセルi,jのスコアSi,jを算出する。
【数6】
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【0030】
なお、(4)~(7)式のいずれかでセルi,jのスコアSi,jを算出した結果、スコアSi,jが負数となった場合は、スコアSi,jを0に修正する。

【0031】
このように、スコアテーブル作成工程S3では、セルi,jのスコアSi,jを算出する際に、左上にあるセルi-1,j-1のスコアSi-1,j-1、左にあるセルi-1,jのスコアSi-1,j、および上にあるセルi,j-1のスコアSi,j-1のいずれかを使用する。したがって、セルi,jのスコアSi,jを算出するためには、上記3つのスコアを先に算出しておく必要がある。

【0032】
[トレースバック工程]
トレースバック工程S4では、スコアテーブルを構成する全セルのうちの最もスコアの高いセルから出発して、該セルのスコアを算出する際に使用したスコアのセルをトレースバックして行く。そして、これにより得られたトレースバックの軌跡に対応する第1ベクトルおよび第2ベクトルを特定する。

【0033】
例えば、セル4,4のスコアS4,4が最も高く、かつスコアS4,4が(4)式により算出されたものであった場合は、セル4,4からセル3,3に進み、セル3,3のスコアS3,3が(5)式により算出されたものであった場合は、セル3,3からセル2,3に進み、さらに、セル2,3のスコアS2,3が(4)式により算出されたものであった場合は、セル2,3からセル1,2に進む。この場合、トレースバックの軌跡は、セル4,4→セル3,3→セル2,3→セル1,2となる。上記の軌跡に対応する第1ベクトルおよび第2ベクトルは、vec_A1~4およびvec_B2~4である。したがって、この例では、第1時系列データの測定点Aと測定点Aの間の部分と、第2時系列データの測定点Bと測定点Bの間の部分が類似するとの判断がなされたことになる。

【0034】
続いて、スコアテーブル作成工程S3およびトレースバック工程S4の具体例1および具体例2について説明する。

【0035】
[具体例1]
具体例1では、第1ベクトルvec_A1~5の正規化後のy成分vec_Y1~5を0.14、0.15、0.13、0.13、-0.50とし、第2ベクトルvec_B1~5の正規化後のy成分vec_Q1~5を0.13、0.12、0.11、-0.42、-0.50とし、許容閾値αを0.9とした。

【0036】
図5に、スコアテーブル作成工程S3で作成したスコアテーブルを示す。スコアテーブルを構成する5×5=25個のセル1,1~5,5のスコアS1,1~5,5うち、セル1,1のスコアS1,1、セル5,2のスコアS5,2、セル2,4のスコアS2,4、およびセル2,5のスコアS2,5を算出する手順について以下に説明する。

【0037】
[スコアS1,1
(i)vec_Y1(=0.14)とvec_Q1(=0.13)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ1,1を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ1,1(=0.99995)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ1,1の方が大きいので、上記(4)式に従い、スコアS1,1を、セル1-1,1-1のスコアS0,0(=初期値0)とコサイン類似度cosθ1,1(=0.99995)の和(=0.99995)とする。

【0038】
[スコアS5,2
(i)vec_Y(=-0.50)とvec_Q(=0.12)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ5,2を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ5,2(=0.83477)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ5,2の方が小さいので、時間方向の圧縮/伸張を考慮するために、vec_Y5-1(=0.13)とvec_Q(=0.12)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ4,2を算出するとともに、vec_Y(=-0.50)とvec_Q2-1(=0.13)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ5,1を算出する。
(iv)算出したコサイン類似度cosθ4,2(=0.99995)とコサイン類似度cosθ5,1(=0.82931)の大小を比較するとともに、これらと許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(v)コサイン類似度cosθ5,1よりもコサイン類似度cosθ4,2の方が大きく、かつ許容閾値αよりもコサイン類似度cosθ5,1の方が大きいので、上記(5)式に従い、スコアS5,2を、セル5-1,2のスコアS4,2(=1.99995)とコサイン類似度cosθ4,2(=0.99995)の和からペナルティ値β(=1)を引いた値(=1.99990)とする。

【0039】
[スコアS2,4
(i)vec_Y(=0.15)とvec_Q(=-0.42)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ2,4を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ2,4(=0.85434)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ2,4の方が小さいので、時間方向の圧縮/伸張を考慮するために、vec_Y2-1(=0.14)とvec_Q(=-0.42)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ1,4を算出するとともに、vec_Y(=0.15)とvec_Q4-1(=0.11)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ2,3を算出する。
(iv)算出したコサイン類似度cosθ1,4(=0.85939)とコサイン類似度cosθ2,3(=0.99923)の大小を比較するとともに、これらと許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(v)コサイン類似度cosθ1,4よりもコサイン類似度cosθ2,3の方が大きく、かつ許容閾値αよりもコサイン類似度cosθ2,3の方が大きいので、上記(6)式に従い、スコアS2,4を、セル2,4-1のスコアS2,3(=1.99903)とコサイン類似度cosθ2,3(=0.99923)の和からペナルティ値β(=1)を引いた値(=1.99826)とする。

【0040】
[スコアS2,5
(i)vec_Y(=0.15)とvec_Q(=-0.50)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ2,5を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ2,5(=0.81819)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ2,5の方が小さいので、時間方向の圧縮/伸張を考慮するために、vec_Y2-1(=0.14)とvec_Q(=-0.50)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ1,5を算出するとともに、vec_Y(=0.15)とvec_Q5-1(=-0.42)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ2,4を算出する。
(iv)算出したコサイン類似度cosθ1,5(=0.82378)とコサイン類似度cosθ2,4(=0.85434)の大小を比較するとともに、これらと許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(v)コサイン類似度cosθ1,5よりもコサイン類似度cosθ2,4の方が大きいが、コサイン類似度cosθ2,4は許容閾値αよりも小さいので、上記(7)式に従い、スコアS2,5を、セル2-1,5-1のスコアS1,4(=0.99913)からペナルティ値β(=1)を引いた値(=-0.00087)とする。なお、スコアS2,5は負数なので、最終的に0に修正される。

【0041】
図6に、トレースバック工程S4で行ったトレースバックの軌跡を示す。最大スコアであるスコアS5,5(=3.99937)は(4)式により算出されたものなので、セル5,5の1つ前のセルはセル4,4である。セル4,4のスコアS4,4(=2.99937)は(6)式により算出されたものなので、セル4,4の1つ前のセルはセル4,3である。セル4,3のスコアS4,3(=2.99956)は(4)式により算出されたものなので、セル4,3の1つ前のセルはセル3,2である。セル3,2のスコアS3,2(=1.99976)は(4)式により算出されたものなので、セル3,2の1つ前のセルはセル2,1である。

【0042】
このトレースバックの軌跡(セル5,5→セル4,4→セル4,3→セル3,2→セル2,1)に対応する第1ベクトルおよび第2ベクトルは、vec_A2~5およびvec_B1~5である。したがって、具体例1では、第1時系列データの測定点Aと測定点Aの間の部分と、第2時系列データの測定点Bと測定点Bの間の部分が類似すると判断したことになる。

【0043】
[具体例2]
具体例2では、第1ベクトルvec_Aの正規化後のy成分vec_Yおよび第1ベクトルvec_Aの正規化後のy成分vec_Yをそれぞれ-0.30および0.70とし、それ以外の条件は全て具体例1と同じにした。

【0044】
図7に、スコアテーブル作成工程S3で作成したスコアテーブルを示す。スコアテーブルを構成する5×5=25個のセル1,1~5,5のスコアS1,1~5,5うち、セル1,1のスコアS1,1、セル2,4のスコアS2,4、セル2,5のスコアS2,5、およびセル4,5のスコアS3,5を算出する手順について以下に説明する。

【0045】
[スコアS1,1
(i)vec_Y1(=-0.30)とvec_Q1(=0.13)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ1,1を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ1,1(=0.91279)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ1,1の方が大きいので、上記(4)式に従い、スコアS1,1を、セル1-1,1-1のスコアS0,0(=初期値0)とコサイン類似度cosθ1,1(=0.91279)の和(=0.91279)とする。

【0046】
[スコアS2,4
(i)vec_Y(=0.15)とvec_Q(=-0.42)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ2,4を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ2,4(=0.85434)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ2,4の方が小さいので、時間方向の圧縮/伸張を考慮するために、vec_Y2-1(=-0.30)とvec_Q(=-0.42)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ1,4を算出するとともに、vec_Y(=0.15)とvec_Q4-1(=0.11)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ2,3を算出する。
(iv)算出したコサイン類似度cosθ1,4(=0.99437)とコサイン類似度cosθ2,3(=0.99923)の大小を比較するとともに、これらと許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(v)コサイン類似度cosθ1,4よりもコサイン類似度cosθ2,3の方が大きく、かつ許容閾値αよりもコサイン類似度cosθ2,3の方が大きいので、上記(6)式に従い、スコアS2,4を、セル2,4-1のスコアS2,3(=1.91599)とコサイン類似度cosθ2,3(=0.99923)の和からペナルティ値β(=1)を引いた値(=1.91522)とする。

【0047】
[スコアS2,5
(i)vec_Y(=0.15)とvec_Q(=-0.50)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ2,5を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ2,5(=0.81819)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ2,5の方が小さいので、時間方向の圧縮/伸張を考慮するために、vec_Y2-1(=-0.30)とvec_Q(=-0.50)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ1,5を算出するとともに、vec_Y(=0.15)とvec_Q5-1(=-0.42)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ2,4を算出する。
(iv)算出したコサイン類似度cosθ1,5(=0.98521)とコサイン類似度cosθ2,4(=0.85434)の大小を比較するとともに、これらと許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(v)コサイン類似度cosθ2,4よりもコサイン類似度cosθ1,5の方が大きく、かつ許容閾値αよりもコサイン類似度cosθ1,5の方が大きいので、上記(5)式に従い、スコアS2,5を、セル2-1,5のスコアS1,5(=0.98521)とコサイン類似度cosθ1,5(=0.98521)の和からペナルティ値β(=1)を引いた値(=0.97042)とする。

【0048】
[スコアS3,5
(i)vec_Y(=0.13)とvec_Q(=-0.50)を上記(3)式に代入し、コサイン類似度cosθ3,5を算出する。
(ii)算出したコサイン類似度cosθ3,5(=0.82931)と許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(iii)コサイン類似度cosθ3,5の方が小さいので、時間方向の圧縮/伸張を考慮するために、vec_Y3-1(=0.15)とvec_Q(=-0.50)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ2,5を算出するとともに、vec_Y(=0.13)とvec_Q5-1(=-0.42)を上記(3)式に代入してコサイン類似度cosθ3,4を算出する。
(iv)算出したコサイン類似度cosθ2,5(=0.81819)とコサイン類似度cosθ3,4(=0.86437)の大小を比較するとともに、これらと許容閾値α(=0.9)の大小を比較する。
(v)コサイン類似度cosθ2,5よりもコサイン類似度cosθ3,4の方が大きいが、コサイン類似度cosθ3,4は許容閾値αよりも小さいので、上記(7)式に従い、スコアS3,5を、セル3-1,5-1のスコアS2,4(=1.91522)からペナルティ値β(=1)を引いた値(=0.91522)とする。

【0049】
図8に、トレースバック工程S4で行ったトレースバックの軌跡を示す。最大スコアであるスコアS4,3(=2.99956)は(4)式により算出されたものなので、セル4,3の1つ前のセルはセル3,2である。セル3,2のスコアS3,2(=1.99976)も(4)式により算出されたものなので、セル3,2の1つ前のセルはセル2,1である。

【0050】
このトレースバックの軌跡(セル4,3→セル3,2→セル2,1)に対応する第1ベクトルおよび第2ベクトルは、vec_A2~4およびvec_B1~3である。したがって、具体例2では、第1時系列データの測定点Aと測定点Aの間の部分と、第2時系列データの測定点Bと測定点Bの間の部分が類似すると判断したことになる。

【0051】
最後に、fNIRS装置を用いて取得した血流量の時間変動に関する時系列データCH1と、同時に取得した時系列データCH2~24との類似部分を抽出した結果について説明する。

【0052】
図9は許容閾値αをcos15°に設定した場合、図10は許容閾値αをcos10°に設定した場合、そして図11は許容閾値αをcos20°に設定した場合の、各CHのCH1に類似すると判断された部分を示している。これらの図から明らかなように、実施例に係る類似部分抽出方法では、許容閾値αを大きくすることにより類似部分を漏れなく確実に抽出することができる一方、許容閾値αを小さくすることにより類似度の高い部分に絞った抽出を行うことができる。

【0053】
以上、本発明に係る類似部分抽出方法の実施例について説明してきたが、本発明の構成は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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