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明細書 :炭素繊維炭素複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-174784 (P2015-174784A)
公開日 平成27年10月5日(2015.10.5)
発明の名称または考案の名称 炭素繊維炭素複合材料の製造方法
国際特許分類 C04B  35/83        (2006.01)
C04B  35/80        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
C01B  31/36        (2006.01)
FI C04B 35/52 E
C04B 35/80 B
C04B 35/80 A
C01B 31/02 101A
C01B 31/36 601H
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2014-051125 (P2014-051125)
出願日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発明者または考案者 【氏名】藤井 透
【氏名】大窪 和也
【氏名】木村 匡宏
【氏名】藤谷 亮平
【氏名】小武内 清貴
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4G132
4G146
Fターム 4G132AA01
4G132AA72
4G132AB01
4G132AB13
4G132AB18
4G132BA11
4G132GA14
4G132GA15
4G132GA22
4G132GA25
4G146AA01
4G146AA19
4G146AB05
4G146AC17B
4G146AC21B
4G146AD17
4G146AD19
4G146AD26
4G146BA01
4G146BA18
4G146BA40
4G146BA42
4G146BB05
4G146BB06
4G146BB10
4G146BB22
4G146BC03
4G146BC07
4G146BC23
4G146BC33B
4G146BC34B
4G146BC35B
4G146BC37B
4G146BC46
4G146DA32
4G146MA14
4G146MB05
4G146MB14
4G146MB26
4G146MB28
4G146NA01
4G146NB09
4G146NB14
4G146NB18
4G146QA02
要約 【課題】摩擦係数の温度依存性が低減できるC/C複合材料の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】ガラス繊維3が分散混合された炭素前駆体樹脂であるフェノール樹脂液2が満たされた浸漬槽4中に、炭素繊維材1を通し、ガラス繊維分散フェノール樹脂液2を炭素繊維1に付着させたのち、ワインディング装置5のボビン51に巻き取って、積層体を形成した。そして、この積層体のフェノール樹脂を硬化させてCFRPを得た後、このCFRPを焼成してフェノール樹脂を炭化させてC/C複合材料の製造するようにした。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
炭素繊維材が炭素前駆体樹脂によって固められた炭素繊維強化樹脂を焼成して前記炭素前駆体樹脂を炭化する工程を備える炭素繊維炭素複合材料の製造方法であって、
前記炭素繊維強化樹脂中にガラス繊維を分散配合しておくことを特徴とする炭素繊維炭素複合材料の製造方法。
【請求項2】
炭素前駆体樹脂溶液中にガラス繊維を分散したガラス繊維分散液を炭素繊維材に付着させる工程と、
このガラス繊維分散液が付着した付着体を積層したのち、炭素前駆体樹脂を硬化させて炭素繊維強化樹脂を得る請求項1に記載の炭素繊維炭素複合材料の製造方法。
【請求項3】
炭素繊維材をガラス繊維分散液槽に浸漬してガラス繊維分散液を炭素繊維に付着させる請求項2に記載の炭素繊維炭素複合材料。
【請求項4】
炭素前駆体樹脂がフェノール樹脂である請求項1~請求項3のいずれかに記載の炭素繊維炭素複合材料。
【請求項5】
チョップドガラス繊維を炭素前駆体樹脂溶液中に分散させる請求項1~請求項4のいずれかに記載の炭素繊維炭素複合材料の製造方法。
【請求項6】
不活性ガス雰囲気中で焼成する請求項1~請求項5のいずれかに記載の炭素繊維炭素複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維炭素複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維炭素複合材料(以下、「C/C複合材料」と記す)は、強化繊維を炭素繊維,マトリクスを炭素とした複合材料である。
このC/C複合材料は比強度,比弾性率が高く、耐熱性に優れており、不活性雰囲気下では2000℃以上の高温状態でも高強度を有することからFRPの弱点を補う材料として期待されている(非特許文献1~4参照)。
【0003】
一方、C/C複合材料の作製方法として樹脂含浸法が一般的な手法である。
樹脂含浸法とは,炭素繊維に炭素前駆体樹脂(焼成によって炭化してマトリクスを構成する炭素となる樹脂)となる熱硬化性樹脂液を含浸させたのち、炭素前駆体樹脂を熱硬化させて炭素繊維強化樹脂(以下、「CFRP」と記す)を得たのち、このCFRPを焼成することで炭素前駆体樹脂を炭素化する手法である。
【0004】
また、C/C複合材料は金属よりも軽量で摩擦・制動特性が良いなどの利点が挙げられることから、これらの特性を活かして、航空機やフォーミュラカーのディスクブレーキなどの高速高負荷用摩擦材などに利用され、今後も様々な分野への応用が期待されている 。
しかし、C/C複合材料は、摩擦係数の温度依存性が大きく、特に低温における摩擦係数が低いなどの問題がある(非特許文献5)。よって、C/C複合材料を摩擦材として用いる場合には使用温度などに制限がある。
【0005】
この問題点を解決するために様々な手法が考えられている。その一つとして本発明の発明者が、熱CVD法を用いてC/C複合材料の表面にカーボンナノチューブ(CNT)を生成する手法を先に研究した(非特許文献6)
この手法によれば、低温での摩擦係数が向上するのであるが、表面にCNTを生成した場合、摩耗に伴って表面のCNTが摩損し、それに伴い摩擦係数も低下し、摩擦係数の温度依存性を完全に解消するには至らないことがわかった。
したがって、これらの問題点を伴わない新たな摩擦係数の安定化手法が望まれている。
【0006】
他方、炭化ケイ素(SiC)は一般に高強度,耐摩耗性などに優れた特性を有するため金属や高分子材料に代わる摺動材料として、特に極低温,超高温,超真空などの極限条件における適用が期待される素材である。また、SiCには耐酸化作用があり、C/C複合材料の酸化による機械的特性の劣化を補う材料として研究が進められている(非特許文献7~13)。
また、従来のC/C複合材料において、高温域で使用で摩擦係数が高く、低温域での使用で摩擦係数が低くなる原因は、低温域では摩擦によって削られた炭素の摩擦粉が大きい状態で摩擦面に残り、接触面積が少なくなるため、摩擦係数が低くなり、高温域では熱によって炭素の摩擦粉が酸化されて小さなものとなり、摩擦面が小さい摩擦粉で緻密な表面状態になるため摩擦係数が高いものとなるためであることが過去の研究(非特許文献14)によって明らかにされている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】山地 俊輔,馬場 信一,石原 正博,二次元炭素繊維強化炭素複合材料の空気酸化挙動‐熱膨張張特性への影響‐,日本機械学会材料力学部門講演会講演論文集(2003),pp.145-146
【非特許文献2】村上 和美,国枝 義彦,兼松 秀行,沖 猛雄,熱処理温度変えたPAN系C/Cコンポジット表面のX線回折およびサイクリッボルタモグラム特性,表面技術,Vol. 47,1996 ,No.7,pp.633-637
【非特許文献3】浴永 直孝, 瀬高 俊哉, 牛嶋 裕次,C/Cコンポジット,TANSO,Vol. 2009 ,2009, No. 239 ,pp.184-194
【非特許文献4】金枝 敏明,阪口 淳一,金谷 輝人,炭素繊維強化炭素複合材料(C/C コンポジット)切削の研究,日本機械学会論文(C編),65巻,635号,1999,pp.352-357
【非特許文献5】Haytam Kasem ,SylvieBonnamy ,YvesBerthier, PascaleJacquemard, Characterization of surface grooves and scratches induced by friction of C/C composites at low and high temperatures,Tribology International,Volume 43,Issues 11, November 2010,pp.1951-1959
【非特許文献6】小武内 清貴, 竹内 康徳, 大窪 和也, 藤井 透,“炭化MFCの炭素前駆体樹脂への添加によるC/C複合材料の機械的特性の向上”,同志社大学理工学研究報告,51(3)(2010),pp.26-31
【非特許文献7】石沢 修一,町田 隆志,C/Cコンポジットの高温強度に及ぼす酸化摩耗の影響,日本機械学会論文集(A集),63巻,608号,pp.189-194
【非特許文献8】田代 徹也,藤原 順介,竹中 康裕,C/C-SiCコンポジットの研削加工,砥粒加工学会誌Vol.51(2007),No.7,pp.428-433
【非特許文献9】向後 保雄,八田 博志,大蔵 明光,後藤 恭博,澤田 豊,清宮 義博,鎗居 俊雄,簡便法によるC/C複合材料へのSiCコーティングと耐酸化性評価,日本金属学会誌 第62巻 第2号(1998),pp.197-206
【非特許文献10】谷 英治,菖蒲 一久,反応焼結による炭素繊維強化SiC/Cコンポジットの作製,日本セラミック協会学術論文誌,105[8](1997),pp.703-706
【非特許文献11】外尾 道太,佐々木 寛,広中 清一郎,炭素/炭化ケイ素複合材料の摩擦・摩耗特性,日本セラミック協会学術論文誌,108[2](2000),pp.191-195
【非特許文献12】楊 林,岡崎 修司,橋本 正明,山本 雄二,SiC,TiおよびTiCの摩擦摩耗に及ぼす雰囲気と組み合わせの影響,日本機械学会論文集(C編)64巻627号(1998),pp.300-307
【非特許文献13】Xuan Zhou,Dongmei Zhu,Qiao Xie,Fa Luo,Wancheng Zhou,Friction and wear properties of C/C-SiC braking composites,Ceramics International,Volume 38,Issue 3,April 2012,pp.2467-2473
【非特許文献14】Christopher Byrne, Zhiyuan Wang, Influence of thermal properties on friction performance of carbon composites, Carbon 39 (2001) ,pp.1789-1801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、摩擦係数の温度依存性が低減できるC/C複合材料の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかるC/C複合材料の製造方法は、炭素繊維材が炭素前駆体樹脂によって固められた炭素繊維強化樹脂を焼成して前記炭素前駆体樹脂を炭化する工程を備える炭素繊維炭素複合材料の製造方法であって、前記炭素繊維強化樹脂中にガラス繊維を分散配合しておくことを特徴としている。
【0010】
本発明にかかるC/C複合材料の製造方法は、上記のようにCFRP中にガラス繊維を分散配合できれば、特に限定されないが、たとえば、炭素前駆体樹脂溶液中にガラス繊維を分散したガラス繊維分散液を炭素繊維に付着させる工程とこのガラス繊維分散液が付着した付着体を積層したのち、炭素前駆体樹脂を硬化させてCFRPを得ることができる。
【0011】
炭素繊維材へガラス繊維分散液を付着させる方法としては、特に限定されないが、例えば、炭素繊維材をガラス繊維分散液槽に浸漬してガラス繊維分散液を炭素繊維に付着させる方法、炭素繊維にガラス繊維分散液を噴霧して付着させる方法、ロールコーター法を用いて付着させる方法等が挙げられ、炭素繊維をガラス繊維分散液槽に浸漬してガラス繊維分散液を炭素繊維に付着させる方法が好適である。
【0012】
また、炭素繊維材が、長尺の炭素繊維材の場合、巻き取り機等によって炭素繊維材を巻き取る途中で、ガラス繊維分散液槽に連続的に浸漬したり、ガラス繊維分散液を噴霧したりすることができる。
そして、巻き取り機側で巻き取りつつ、所定の厚み(得ようとするC/C複合材料に応じた厚み)に積層することができる。
【0013】
また、短尺のマット状の炭素繊維材の場合は、バッチ式でガラス繊維分散液を付着させるようにしてもよい。
そして、短尺のマット状の炭素繊維材の場合も、所定の厚み(得ようとするC/C複合材料に応じた厚み)に積層することができる。
上記のように積層された積層体は、必要に応じて炭素前駆体樹脂を半硬化状態としたのち、この半硬化体を型内に入れて所定の形状に成形した状態で本硬化させることができる。
【0014】
本発明にかかるC/C複合材料の製造方法において、炭素繊維材としては、特に限定されないが、モノフィラメント、チョップドストランド、チョップドストランドマット、ロービング、ロービングクロス、ガラスヤーンなどが挙げられる。
また、炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維のいずれでも構わないが、PAN系炭素繊維が好適である。
【0015】
炭素前駆体樹脂としては、焼成によりマトリクスとなる炭素を形成することができれば、特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられ、フェノール樹脂が好適である。
【0016】
ガラス繊維としては、炭素前駆体樹脂液中にうまく均一に分散できるとともに、炭素前駆体樹脂液とともに炭素繊維にうまく付着し、かつ、CFRPの炭素繊維と炭素繊維との間に入り込むようにできれば、特に限定されないが、繊維長が、8~10mm、繊維径が 15~19μmのチョップドガラス繊維が好適である。
【0017】
CFRPの焼成条件は、炭素前駆体樹脂を炭化できるとともに、ガラス繊維を構成するSiが炭素と反応してSiCになれば、特に限定されないが、低温焼成工程、中温焼成工程、高温焼成工程の3段階で行うことが好ましい。
そして、特に限定されないが、低温焼成工程は、900~1100℃、中温焼成工程は、1300~1500℃、高温焼成工程は、2000~2400℃で行うことが好ましい。
【0018】
また、CFRPの焼成は、炭素前駆体樹脂がうまく炭化できれば、特に限定されないが、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
不活性ガスとしては、特に限定されないが、アルゴン、ヘリウム、窒素等が挙げられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法は、以上のように、炭素繊維材が炭素前駆体樹脂によって固められた炭素繊維強化樹脂を焼成して前記炭素前駆体樹脂を炭化する工程を備える炭素繊維炭素複合材料の製造方法であって、前記炭素繊維強化樹脂中にガラス繊維を分散配合しておくようにしたので、焼成工程において、炭素前駆体樹脂の炭化によって形成される炭素の一部、あるいは、炭素繊維材を構成する炭素の一部が、ガラス繊維を構成するSi元素と反応し、C/C複合材料中にガラス繊維由来のSiCが分散された状態になる。
そして、この分散されたSiCによって、摩擦係数の温度依存性が低減されると考えられる。すなわち、所謂、摩擦面においてSiCによる“ひっかき効果”が発揮されて、高温域はもとより、低温域においても安定した摩擦係数が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のC/C複合材料の製造方法の1つの実施の形態であって、そのCFRPの製造工程の概略を説明する図である。
【図2】実施例1および比較例3で得られたC/C複合材料試験片のX線回折データを対比してあらわすグラフである。
【図3】摩擦係数の温度依存性を測定するために用いた摩擦試験機を説明する図である。
【図4】実施例1、比較例1,2でそれぞれ得たC/C複合材料試験片の摩擦係数の温度依存性を対比してあらわすグラフである。
【図5】実施例1で得られたC/C複合材料試験片同士を摩擦させた後の摩擦面の状態の走査型電子顕微鏡で撮像した写真の写しであって、同図(a)が常温で摩擦させたとき、同図(b)が300℃で摩擦させたときをあらわしている。
【図6】比較例1で得られたC/C複合材料試験片同士を摩擦させた後の摩擦面の状態の走査型電子顕微鏡で撮像した写真の写しであって、同図(a)が常温で摩擦させたとき、同図(b)が300℃で摩擦させたときをあらわしている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかるC/C複合材料の製造方法の1例を詳しく説明する。
このC/C複合材料の製造方法は、図1に示すように、ガラス繊維3が分散された炭化前駆体樹脂であるフェノール樹脂液2を満たした浸漬槽4内に炭素繊維材1を通し、樹脂液とともにガラス繊維を炭素繊維材1に付着させた状態で炭素繊維材1を連続的にワインディング装置5のボビン51に巻き取って所定厚みおよび幅の筒状積層体6を形成する。
なお、積層厚みおよび筒軸方向の長さは、得ようとするC/C複合材料の大きさや厚みに応じて適宜決定される。
そして、ボビン51とともに、筒状積層体6をオーブン7に入れ、オーブン7中で、所定温度に保ちフェノール樹脂を半硬化させてCFRP前駆体(半硬化体)8を得たのち、ボビン51からCFRP前駆体8を抜き取り、CFRP前駆体8をプレス型9に入れ、加熱プレスして本硬化させてCFRP10を得る。
次に、このCFRP10をそのまま、あるいは必要に応じてカットしたのち、不活性ガス雰囲気であるアルゴン中で、フェノール樹脂が炭化するように焼成し、C/C複合材料を得る。

【0022】
以下に、本発明にかかるC/C複合材料の製造方法の具体的な実施例と、比較例を説明する。

【0023】
(実施例1)
炭素前駆体樹脂であるフェノール樹脂(住友ベークライト社,工業用フェノールレジン PR-51697)をエタノールで希釈(重量比でフェノール:エタノール=1:2)して、炭素前駆体樹脂液であるフェノール樹脂液を得た。
このフェノール樹脂液に対し1重量%の割合で繊維径17μm,長さ9mmのチョップドガラス繊維(日本電気硝子社製)を添加し、プロセスホモジナイザー(silverson社,L4-RT,)を用いて、5000rpmの条件で30分攪拌して、ガラス繊維分散フェノール樹脂液2を得た。
PAN系炭素繊維(TORAY社製,TORAYCA,M40JB-6000)を上記ガラス繊維分散樹脂液に通して、炭素繊維にガラス繊維分散樹脂液を付着させた後、フィラメントワインディング装置のボビンに巻き取りピッチが1.25mm,積層数が20となるように連続的に巻き付けた。

【0024】
上記のようにして炭素繊維を巻きつけたホビンを、定温乾燥器(アドバンテック東洋社,FC-610)を用いて60℃で24時間保持し、予備硬化させてCFRP前駆体を作製した。
予備硬化後、ホビンからCFRP前駆体を切り出し、150℃,15MPa,1時間の条件でヒートプレス機(河中産業社,HB200HB)を用いて本硬化させてCFRPを得た。

【0025】
このCFRPをダイヤモンドカッターで20mm四方、厚さ3mmの試験片に切り分けた。得られた試験片を、プログラム環状電気炉(アズワン株式会社,TMF-500N)を用いてアルゴン雰囲気下800℃に1時間保持して焼成して第1焼成体を得た。
得られた第1焼成体を高性能真空置換型マルチ雰囲気炉(丸祥電気社,SPX1518-16V)にいれ、炉内をアルゴンガスで満たした状態で15℃/minで1400℃まで昇温し、1400℃で1時間保持した後、1400℃で1時間保持して焼成した後炉冷して第2焼成体を得た。

【0026】
得られた第2焼成体を黒鉛化炉の炭素製炉心管に入れて炭素製炉心管に直接電流を通電して、通電電流を600A各通電電流で10分間保持しながら100Aずつ通電電流を1000Aまで上げて炭素製炉心管を昇温したのち、1000Aの電流を通電させて1時間保持して第2焼成体を焼成した。このときの炉内の温度を、放射温度計を用いて測定したところ2200℃であった。
その後、炉内を水冷して、C/C複合材料試験片Aを得た。

【0027】
(比較例1)
ガラス繊維に代えて黒色炭化珪素粉(太平洋ランダム社,粒径8μm)を炭素前駆体樹脂液に対し1重量%の割合で添加して炭化珪素分散樹脂液を得た。
そして、ガラス繊維分散樹脂液に代えてこの炭化珪素分散樹脂液中に炭素繊維を通した以外は、上記実施例1と同様にしてC/C複合材料試験片Bを得た。

【0028】
(比較例2)
ガラス繊維を分散していない実施例1のフェノール樹脂液中に直接炭素繊維を通した以外は、上記実施例1と同様にしてC/C複合材料試験片Cを得た

【0029】
(比較例3)
ガラス繊維に代えて黒色炭化珪素粉(太平洋ランダム社,粒径8μm)を炭素前駆体樹脂液に対し50重量%の割合で添加して炭化珪素分散樹脂液を得た。
そして、ガラス繊維分散樹脂液に代えてこの炭化珪素分散樹脂液中に炭素繊維を通した以外は、上記実施例1と同様にしてC/C複合材料試験片Dを得た。

【0030】
(C/C複合材料のX線回折)
上記実施例1で得られたC/C複合材料試験片Aおよび比較例4で得られたC/C複合材料試験片Dを、それぞれX線回折装置(リガク社,RINT-2200VK)の試験台に固定し、試験台を中心とした円周方向からX線を照射し回折パターンを測定し、その結果を図2に対比して示した。

【0031】
なお、測定方法は汎用測定(集中法)D/texを用い、測定条件は走査範囲を2θ=10~80°,ステップを0.01°,スピード計数時間(スキャン速度)を9.0,管電圧を40kV,管電流を30mAとした。
図2に示すように、C/C複合材料試験片AおよびC/C複合材料試験片Dのいずれにおいても、θ=36°,60°,72°付近に回折線のピークがあることが確認できた。この回折線を、解析ソフト(リガク社,PDXL2)を用いて同定解析を行ったところSiCのピークと重なることが確認できた。
このことから、C/C複合材料試験片Aにおいては、Si元素を含むガラス繊維と炭素前駆体樹脂との焼成段階での反応によりSiCが生成されていると確認できた。

【0032】
(C/C複合材料の摩擦係数の温度依存性試験)
図3に示すACモータ,トルク計,試験片取り付け部,ロードセル,接触式変位計、ヒータから構成された摩擦試験機を自作し、C/C複合材料試料片A~Cの各試料片を一対ずつ用意し、一対のうち、一方の試験片をACモータ側の取り付け部に取り付けるとともに、もう一方の試験片を上下の試験片の面が重なるように、ヒータを備えた上方の取り付け部に固定した。
そののち、錘を用いて上下の試験片間の接触面間に1.0MPaの押し付け力を与えながら、ACモータを用いて回転トルクを与えた。また、ヒータを用いて試験片の温度を室温,100℃,200℃,300℃と変更し、各温度での摩擦係数を、回転数を300rpm、サンプリング間隔を5ms、計測時間を300sでそれぞれ計測した。

【0033】
各試験片の摩擦係数の測定結果を図4に対比して示す。
図4に示すように、試験片B,Cの場合、常温では摩擦係数が低くなっているのに対し、本発明の製造方法で得られた試験片Aは、常温でも、100℃以上の温度域とほぼ同程度か少し高い摩擦係数を示し、摩擦係数の温度依存性を低減されていることがわかる。
すなわち、SiC粉を直接添加しただけでは試験片Bのように、常温(低温域)まで高い摩擦係数を備えたC/C複合材料が得られないのに対し、本発明の製造方法を用いれば、摩擦係数に温度依存性がなく、高温域だけでなく低温域においても摩擦材として安定した摩擦効果が得られるC/C複合材料を製造できることがよくわかる。
また、この摩擦係数の向上は、上記X線回折により確認されたように、焼成工程において炭素前駆体樹脂が炭化するに伴い、CFRP中に添加されたガラス繊維の少なくとも一部のSi元素と、炭素前駆体樹脂から形成された炭素の一部あるいは炭素繊維を構成する炭素の一部とが反応してSiCが形成され、炭素層内部にSiCが分散されたC/C複合材料となるためであると考えられる。

【0034】
(試験片の摩擦面の観察)
上記摩擦係数の温度依存性試験と同様に試験片Aおよび試験片Cについて、それぞれ常温および300℃の摩擦係数の測定と同じ押し付け力、回転数で下側の試験片を300秒間回転させた後、摩擦試験機から試験片を取り外し、その摩擦面の表面観察を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行い、それぞれその結果を撮像して図5、図6に示した。

【0035】
(表面の観察結果)
図5(a)に示すように、試験片Aを常温で摩擦させた場合には、表面に一方向に配向した炭素繊維が表面に露出するとともに、摩擦方向にスクラッチ痕とみられるくぼみ(図5(a)中、長円で囲んだ部分)が形成されていることがわかった。
図5(b)に示すように、試験片Aを300℃で摩擦させた場合には、炭素繊維が表面に大きく露出せず、表面が炭素の細かい摩擦粉でほぼ全面が覆われているとともに、スクラッチ痕とみられるくぼみ(図5(b)中、長円で囲んだ部分)が形成されていることがわかった。
上記図5(a),(b)のスクラッチ痕は、焼成によって炭素層の内部に形成されたSiCが試験片同士の摩擦面間に混入し、試験片の摩擦面に発生した傷であることが考えられる。また、SiCが試験片の摩擦面間に混入することによって、摩擦面同士の接触面積が大幅に減少し、従来のガラス繊維が無添加のCFRPを焼成して得たC/C複合材料の摩擦係数が温度依存性を有することの原因であった表面の影響を受けにくい。そして、引き換えに、生成したSiCが対向する相手方の摩擦面を削ることによる“ひっかき効果”によって大きな摩擦抵抗が発生し、低温域(常温)においても高温域と略同程度か少し高い摩擦係数を得られると考えられる。
すなわち、ガラス繊維を添加しC/C複合材料内部にSiCを生成させることにより摩擦係数の温度依存性は低減されたと考えられる。

【0036】
一方、試験片Cを常温下で摩擦させた場合には、図6(a)に示すように、表面が炭素の摩擦粉で覆われているとともに、一部に大きな炭素の摩擦粉(図6(a)中、長円で囲った部分)が存在していることが観察された。すなわち、摩擦面において、この炭素の大きな摩擦粉が形成されているため、炭素の接触面積が減り、摩擦係数が低くなると考えられる。
また、試験片Cを300℃で摩擦させた場合には、図6(b)に示すように、炭素の大きな摩擦粉が少なく炭素の緻密な膜が形成されているため、常温より大きな摩擦係数が得られると考えられる。

【0037】
本発明は、上記の実施の形態や実施例に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、炭素繊維材を炭素前駆体樹脂液に通した後、ワインディング装置のボビンに巻き取って積層体を得るようにしていたが、炭素繊維マットを用い、ハンドレイアップ法で積層するようにしても構わない。
また、上記の実施の形態では、オーブン中で半硬化させてCFRP前駆体を得るようになっていたが、常温で半硬化させるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1 炭素繊維材
2 フェノール樹脂液(炭化前駆体樹脂液)
3 ガラス繊維
4 浸漬槽
5 ワインディング装置
51 ボビン
6 筒状積層体
7 オーブン
8 CFRP前駆体
9 プレス型
10 CFRP
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図2】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5