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明細書 :新規トリテルペン、その製造方法及びそれを含有する組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-197500 (P2017-197500A)
公開日 平成29年11月2日(2017.11.2)
発明の名称または考案の名称 新規トリテルペン、その製造方法及びそれを含有する組成物
国際特許分類 C07J  63/00        (2006.01)
A61K  31/19        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61K  31/704       (2006.01)
A61K  35/64        (2015.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI C07J 63/00 CSP
A61K 31/19
A61P 25/28
A61K 31/704
A61K 35/64
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 30
出願番号 特願2016-091377 (P2016-091377)
出願日 平成28年4月28日(2016.4.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 公開A 掲載アドレス:http://nenkai.pharm.or.jp/136/web/ http://nenkai.pharm.or.jp/136/pc/imulti_result.asp http://nenkai.pharm.or.jp/136/pc/ipdfview.asp?i=3549 掲載日 :平成28年2月1日 公開B 研究集会名:日本薬学会第136年会 開催日 :平成28年3月26日~29日 公開日 :平成28年3月28日 公開C 公開者 :国立大学法人東京農工大学 公開日 :平成28年4月21日
発明者または考案者 【氏名】天竺桂 弘子
【氏名】高取 薫
【氏名】福澤 侃
出願人 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
【識別番号】505082350
【氏名又は名称】学校法人 明治薬科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904、【弁理士】、【氏名又は名称】島村 直己
【識別番号】100180932、【弁理士】、【氏名又は名称】和田 洋子
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
4C087
4C091
4C206
Fターム 4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB21
4C087CA11
4C087CA26
4C087CA37
4C087NA14
4C087ZA16
4C087ZB26
4C091AA06
4C091BB02
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE04
4C091EE06
4C091FF02
4C091FF06
4C091GG03
4C091GG05
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM01
4C091NN01
4C091PA03
4C091PA05
4C091PA12
4C091PB10
4C091QQ02
4C091QQ05
4C091QQ15
4C091RR13
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206DA13
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA16
4C206ZB26
要約 【課題】本発明は、新規トリテルペン、その製造方法及びそれを含有する組成物を提供する。
【解決手段】式(I):
【化1】
JP2017197500A_000021t.gif
[式中、Rは、水素原子、又はメチル基であり;Rは、水素原子、又はメチル基であり;但し、R及びRは異なる置換基である]で示されるトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP2017197500A_000018t.gif
[式中、
は、水素原子、又はメチル基であり;
は、水素原子、又はメチル基であり;
但し、R及びRは異なる置換基である]
で示されるトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体。
【請求項2】
式(I)が、下記式:
【化2】
JP2017197500A_000019t.gif
である、請求項1に記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体。
【請求項3】
3位水酸基に糖残基が結合した配糖体である、請求項1又は2に記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体。
【請求項4】
以下:
【化3】
JP2017197500A_000020t.gif
からなる群から選択される化合物。
【請求項5】
アマミナナフシ代謝残渣より抽出・精製することを特徴とする、請求項4に記載の化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の化合物から選択される少なくとも1種を含有するアマミナナフシ代謝残渣由来の組成物。
【請求項7】
前記組成物がアマミナナフシ代謝残渣の抽出物又はその処理物である、請求項6に記載のアマミナナフシ代謝残渣由来の組成物。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体から選択される少なくとも1種、請求項4に記載の化合物から選択される少なくとも1種、或いは請求項6又は7に記載の組成物を有効成分として含有する、アミロイドβ凝集阻害剤。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体から選択される少なくとも1種、請求項4に記載の化合物から選択される少なくとも1種、或いは請求項6又は7に記載の組成物を有効成分として含有する、抗認知症剤。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体から選択される少なくとも1種、請求項4に記載の化合物から選択される少なくとも1種、或いは請求項6又は7に記載の組成物を有効成分として含有する、抗腫瘍剤。
【請求項11】
医薬品又は食品である、請求項8に記載のアミロイドβ凝集阻害剤。
【請求項12】
医薬品又は食品である、請求項9に記載の抗認知症剤。
【請求項13】
医薬品又は食品である、請求項10に記載の抗腫瘍剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規トリテルペン、その製造方法及びそれを含有する組成物に関する。また本発明は、新規トリテルペンを有効成分として含有する、アミロイドβ凝集阻害剤、抗認知症剤及び抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)は初老期に発症して進行性痴呆を呈し、有効な治療法もなく数年で死に至る難病である。高齢化社会を迎え患者数は年々増加しており、早期診断・治療・予防法の確立が急務である。病理学的にAD脳では老人斑として知られるアミロイドベータ蛋白質(以下、Aβ、アミロイドβともいう)の沈着や、異常にリン酸化したタウ蛋白質の蓄積により神経原線維の変化を伴って脳の広汎な神経細胞死が引き起こされる(非特許文献1)。現在AD治療薬として、Aβの産生に関与するβ-セクレターゼ阻害やAβ凝集阻害を標的とした化合物の探索が広く行われている。
【0003】
ハイスループットにAβ凝集阻害活性の有無の評価を行う方法として、チオフラビンT(THT)法が汎用された1次スクリーニング法の一つとして用いられており、天然物由来成分についても報告がある。例えば、ツバキ科のチャノキ(茶の木)Camellia sinensis var. assamica花部から単離された新規サポニンであるトリテルペン配糖体のfloraassamsaponin III、IV、VIIにはAβ凝集阻害活性を有することが報告されている(非特許文献2)。また、中国薬用植物として知られるSalvia miltiorrhizaの主成分であるcryptotanshinoneはSTAT3のリン酸化阻害(非特許文献3)の他にAβ凝集阻害活性があることが報告されている(非特許文献4)。さらには、天然物化合物のフラボノイドとして広く知られるミリセチンはAβの産生に関与するβ-セクレターゼ阻害活性(非特許文献5)に加えAβ凝集阻害活性(非特許文献6)も報告されている。
【0004】
これまでに天然物由来の生理活性物質の探索では、植物及び菌類を主な出発材料として用いていたが、単離可能な有用物質は探索され尽くされており、新たな出発材料として適切な素材が見つからない点が問題となっていた。上述したように、植物由来天然物材料からAβ凝集阻害活性物質の探索が行われているが、昆虫を出発材料としたAβ凝集阻害活性物質の探索は行われていなかった。
【0005】
昆虫は世界中に110万種類以上存在することが知られており、ヒトが利用できないアルカロイド類等を含む植物でさえも利用することができる(非特許文献7)。アルカロイド類は多くの薬理作用があり、中には抗ガン作用を持つ化合物も知られている(非特許文献8)。この他にもヒトにとっては毒である成分も昆虫種によってはそれらを生体システムの維持に組み込み、巧みに利用している。また昆虫はその体内において植物や動物体から吸収した成分を濃縮し、ヒトが吸収しやすい形にも変えることができる(非特許文献9)。このように昆虫はヒトにとって有用な物質をその体内に持つ種類が存在する。これまでにも昆虫からは多くの有用物質が発見されているが、医薬品候補化合物として化合物の単離・構造決定はほとんどなされていない。
【0006】
一方で、昆虫体内で強力な抗ガン作用を持つものとしてモンシロチョウからピエリシンが国立がんセンターの若林らにより偶然発見されている(非特許文献10)が、ピエリシンは高分子であるタンパク質であるために、医薬品としての製剤化が困難であるという問題点があり、現在も強力な広範囲の癌に作用する抗癌活性を有するものの医薬品としての開発はされていない。また、昆虫資源類からAβ凝集阻害を有する化合物はこれまでに単離・同定されていない。
以上より、新たな素材から単離可能な有用物質が求められていた。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Sennvik, K.et al,Neurosci. Lett.278,169-172,2000
【非特許文献2】Ohta T. et al.,Tetrahedron,71,846-851,2015
【非特許文献3】Liang Lu et al.,Mol.Cell.Biochem.,381,273-282,2013
【非特許文献4】Zhengrong Mei et al.,Neurochem. Res.,37,622-628,2012
【非特許文献5】Shimmyo Yoshiari et al.,Biochemica et Biophysica Acta,1780,819-825,2008
【非特許文献6】Ono K., et al,J.Biological Chem.,287,14631-14643,2012
【非特許文献7】Bezzerides A, et al.Proc Natl Acad Sci U S A,101,9029-9032(2004)
【非特許文献8】Jiang J, et al.Molecules.14,1852-1859(2009)
【非特許文献9】Boppre M. J Chem Ecol;16,165-185(1989)
【非特許文献10】Watanabe M et al.Proc Natl Acad Sci U S A.96,10608-10613(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規トリテルペン、その製造方法及びそれを含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、アマミナナフシの代謝残渣から有用物質の探索を行い、アマミナナフシの代謝残渣由来の化合物及び組成物が高いアミロイドβ凝集阻害活性を有することを見出した。当該化合物は、背景技術の説明において上に挙げた化合物類と異なる構造を有する。
【0010】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)式(I):
【化1】
JP2017197500A_000003t.gif
[式中、
は、水素原子、又はメチル基であり;
は、水素原子、又はメチル基であり;
但し、R及びRは異なる置換基である]
で示されるトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体。
(2)式(I)が、下記式:
【化2】
JP2017197500A_000004t.gif
である、上記(1)に記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体。
(3)3位水酸基に糖残基が結合した配糖体である、上記(1)又は(2)に記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体。
(4)以下:
【化3】
JP2017197500A_000005t.gif
からなる群から選択される化合物。
(5)アマミナナフシ代謝残渣より抽出・精製することを特徴とする、上記(4)に記載の化合物の製造方法。
(6)上記(4)に記載の化合物から選択される少なくとも1種を含有するアマミナナフシ代謝残渣由来の組成物。
(7)前記組成物がアマミナナフシ代謝残渣の抽出物又はその処理物である、上記(6)に記載のアマミナナフシ代謝残渣由来の組成物。
(8)上記(1)~(3)のいずれかに記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体から選択される少なくとも1種、上記(4)に記載の化合物から選択される少なくとも1種、或いは上記(6)又は(7)に記載の組成物を有効成分として含有する、アミロイドβ凝集阻害剤。
(9)上記(1)~(3)のいずれかに記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体から選択される少なくとも1種、上記(4)に記載の化合物から選択される少なくとも1種、或いは上記(6)又は(7)に記載の組成物を有効成分として含有する、抗認知症剤。
(10)上記(1)~(3)のいずれかに記載のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体から選択される少なくとも1種、上記(4)に記載の化合物から選択される少なくとも1種、或いは上記(6)又は(7)に記載の組成物を有効成分として含有する、抗腫瘍剤。
(11)医薬品又は食品である、上記(8)に記載のアミロイドβ凝集阻害剤。
(12)医薬品又は食品である、上記(9)に記載の抗認知症剤。
(13)医薬品又は食品である、上記(10)に記載の抗腫瘍剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体、及びこれを含有する組成物は、高いアミロイドβ凝集阻害活性を有し、高いアミロイドβ凝集阻害剤として用いることができる。本発明のトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体、及びこれを含有する組成物は、抗認知症剤又は抗腫瘍剤として用いることができる。本発明の製造方法によれば、上記のような活性を有するトリテルペン又はそれらの配糖体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、アマミナナフシ(Entoria okinawaensis)の糞のクロロホルム抽出物からの本発明の化合物:式(I-1)の化合物(EO-3)、式(I-2)の化合物(EO-4)、式(I-3)の化合物(EO-5)、及び式(I-4)の化合物(EO-6)の抽出・単離スキームを示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明の化合物:式(I-1)の化合物(EO-3)の構造と、HMBC相関及びNOESY相関と物性値を示す図である。
【図2B】図2Bは、本発明の化合物:式(I-2)の化合物(EO-4)の構造と、HMBC相関及びNOESY相関と物性値を示す図である。
【図2C】図2Cは、本発明の化合物:式(I-3)の化合物(EO-5)の構造と、HMBC相関及びNOESY相関と物性値を示す図である。
【図2D】図2Dは、本発明の化合物:式(I-4)の化合物(EO-6)の構造と、HMBC相関及びNOESY相関と物性値を示す図である。
【図3】図3は、アマミナナフシの糞のクロロホルム抽出物から得られた分画とシラカシの葉のクロロホルム抽出物をHPLCにより分析した結果を示す図である。
【図4】図4は、式(I-3)の化合物(EO-5)及び式(I-4)の化合物(EO-6)、アマミナナフシの糞のクロロホルム抽出物、及び、シラカシの葉のクロロホルム抽出物をLC-MSにより分析した結果を示す図である。
【図5】図5は、MTT-アッセイの概略図である。
【図6】図6は、チオフラビン-T法の概略図である。
【図7】図7(a)は、本発明の化合物:式(I-1)の化合物(EO-3)及び式(I-2)の化合物(EO-4)に対して、チオフラビン-T法によりアミロイドβ凝集阻害活性を評価した結果を示す図である。図7(b)は、式(I-3)の化合物(EO-5)及び式(I-4)の化合物(EO-6)に対して、チオフラビン-T法によりアミロイドβ凝集阻害活性を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、式(I):
【化4】
JP2017197500A_000006t.gif
[式中、
は、水素原子、又はメチル基であり;
は、水素原子、又はメチル基であり;
但し、R及びRは異なる置換基である]
で示されるトリテルペン、その塩若しくはエステル、又はそれらの配糖体(以下、式(I)の化合物ともいう)に関する。本発明の式(I)の化合物は、高いアミロイドβ凝集阻害活性を示し、また、本発明の式(I)の化合物は、癌細胞に対して高い細胞毒性を示す。

【0014】
本発明の式(I)で示される化合物は、19位及び20位における絶対配置はR体及びS体のいずれであってもよく、またラセミ体であってもよい。また、式(I)において、RとRが相互にシス配置であることが好ましい。具体的には、式(I)は、以下:
【化5】
JP2017197500A_000007t.gif
であることが好ましい。

【0015】
式(I)で示されるトリテルペンの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩等の有機塩基塩等が挙げられ、式(I)で示されるトリテルペンは、式(I)中の水酸基の内1~4個の位置、好ましくは17位のカルボキシ基で塩を形成しうる。

【0016】
式(I)で示されるトリテルペンのエステルとしては、特に制限はなく、例えばメチルエステル、エチルエステル等のアルキルエステルが挙げられる。これらのエステルは、常法に従い、例えば、酸性触媒下、メタノール等の対応するアルコール化合物と式(I)で示されるトリテルペンとを反応させることで得ることができる。また式(I)で示されるトリテルペンのエステルとしては、酢酸等の脂肪酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸とのエステル等を含む。脂肪酸とは飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を含み、鎖長については短鎖、中鎖及び長鎖を含み、具体的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、デセン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また芳香族脂肪酸とは、安息香酸、安息香酸のオルト、メタ及び/またはパラ位にアミノ基、水酸基等の置換基を有するものも含まれ、ナフトエ酸等の多環芳香族のカルボン酸も含む。式(I)で示されるトリテルペンは、式(I)中の水酸基の内1~4個の位置でエステルを形成しうる。これらのエステルは、常法に従い、例えば、酸性触媒下、対応するカルボン酸と式(I)で示されるトリテルペンとを反応させることで得ることができる。

【0017】
式(I)で示されるトリテルペンの配糖体を形成する糖残基としては、糖単位1~10、好ましくは1~5の単糖又はオリゴ糖、特に好ましくは単糖が挙げられる。糖残基としては、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン等の六炭糖類、アラビノース、キシロース、リボース等の五炭糖類、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソホロース等の二糖類、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース等や、でんぷん、セルロース、キチン、キトサン等の加水分解物(例えば、局方デキストリン、アクロデキストリン、ブリテッシュガム、セロデキストリン等)等を挙げることができ、これらの中で、アラビノース、キシロース、リボース等の五炭糖類が好ましい。式(I)で示されるトリテルペンは、式(I)中の水酸基の内1~4個の位置、好ましくは3位の水酸基で配糖体を形成しうる。これらの配糖体は、常法に従い、例えば、酸性触媒下、対応する糖と式(I)で示されるトリテルペンとを反応させることで得ることができる。

【0018】
上記式(I)で示されるトリテルペンの配糖体としては以下:
【化6】
JP2017197500A_000008t.gif
が好ましい。

【0019】
本発明は、式(I-1)~(I-4)で示される化合物の製造方法にも関する(以下、本発明の化合物の製造方法ともいう)。本発明の化合物の製造方法は、アマミナナフシ代謝残渣より抽出・精製することを特徴とする。アマミナナフシ代謝残渣からの式(I-1)~(I-4)で示される化合物の抽出・精製工程については、式(I-1)~(I-4)で示される化合物から選択される少なくとも1種を含有する組成物に関する下記の記載を引用するものとする。

【0020】
本発明は、式(I-1)~(I-4)で示される化合物から選択される少なくとも1種を含有するアマミナナフシ代謝残渣由来の組成物にも関する(以下、本発明の組成物ともいう)。本発明の組成物は、高いアミロイドβ凝集阻害活性を示し、また本発明の組成物は、癌細胞に対して高い細胞毒性を示す。

【0021】
本発明の組成物は、アマミナナフシ代謝残渣に由来する。アマミナナフシ代謝残渣としては、最終代謝残渣が好ましく、糞が挙げられる。本発明者らは、これまで利用されたことがなかった植食性昆虫の最終代謝残渣である糞に着目した。昆虫はごく一部のモデル昆虫類(ショウジョウバエ・ハマダラカ・カイコ・コクヌストモドキ・タバコスズメガ)を除いて生体内における代謝機構が未だ明らかにされていない。また昆虫の形態は多様であり、種の数だけ代謝系のバリエーションが存在することが予測される。

【0022】
上記アマミナナフシとしては、所望の代謝系を活性化する観点から、例えば温度及び明暗周期等の条件が調整された環境で生育されたものを用いることが好ましい。具体的には、温度としては約25~28℃であることが好ましく、明暗周期としては明期約16時間、暗期約8時間の周期であることが好ましい。また上記アマミナナフシとしては、餌として例えば、ブナ科コナラ属カシ類、バラ科及びカエデ科を含む植物を摂取させたものを用いることが好ましい。このような植物としては、シラカシ(Quercus myrsinifolia)、ウラジロガシ(Quercus stenophylla)、マテバシイ(Lithocarpus edulis)、バラ(Rosa)、イロハモミジ(Acer plmatum)及びヤマザクラ(Cerasus jamasakura)等が挙げられる。用いる植物の部分は、特に限定されず、全ての植物体を使用できるが、茎つきの葉を用いることが好ましい。

【0023】
本発明の組成物は、アマミナナフシ代謝残渣の抽出物(以下、抽出物という)又はその処理物(以下、処理物という)であることが好ましい。処理物とは、抽出物に分離、精製、単離等の各種処理の少なくとも1つを施したものである。

【0024】
抽出溶媒としては、水;脂肪族炭化水素類、例えばヘキサン、クロロホルム;アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール;エステル類、例えば酢酸エチル等の酢酸エステル;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等が挙げられる。抽出物を一旦溶媒除去して乾燥物として用いる場合には、前述した任意の溶媒を単独で又は混合して用いることができる。一方、抽出物を溶媒に溶解した状態で用いる場合には、人体に対して有害な作用を示さない溶媒を用いる必要があり、この場合には、水、エタノール又はこれらの混合物を用いることが好ましい。抽出に際して、アマミナナフシ代謝残渣は、そのまま用いることができ、また乾燥後に破砕又は粉砕して溶媒との接触を高めることもできる。

【0025】
一実施形態において、本発明の抽出物は、アマミナナフシ代謝残渣1kg当たり、好ましくは3~4Lの抽出溶媒で、好ましくは3~5回抽出することができる。抽出温度は、好ましくは室温ないし加圧下での沸点の範囲内であり、抽出時間は、抽出温度等により異なるが、好ましくは20~48時間であり、さらに好ましくは20~24時間である。

【0026】
このようにして得られた抽出液は、必要に応じて、布、ステンレスフィルター、濾紙、濾過滅菌用フィルター等で濾過して不溶物、不純物等を除去してもよい。また、濾過後の抽出液に、スプレードライ処理、フリーズドライ処理、超臨界処理等、エバポレート処理を施してもよい。

【0027】
好ましい一実施形態において、本発明の抽出物は、アマミナナフシ代謝残渣1kg当たり、好ましくは3~4Lの抽出溶媒で、好ましくは3~5回抽出することができる。抽出温度は、好ましくは室温であり、抽出時間は、好ましくは20~24時間又は24~48時間である。

【0028】
このようにして得られた抽出液は、濾紙で濾過して不溶物、不純物等を除去してもよい。また、濾過後の抽出液に、エバポレート処理を施してもよい。

【0029】
このようにして得られた抽出物又はその処理物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、吸着・逆相分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等の各種精製手段により処理し、さらに活性を高めた処理物としてもよい。

【0030】
本発明の抽出物としては、例えば、アマミナナフシ代謝残渣、好ましくは糞のクロロホルム抽出物等が挙げられる。具体的にはアマミナナフシ代謝残渣をノルマルヘキサンで抽出後、アマミナナフシ代謝残渣をクロロホルムで抽出して得られたクロロホルムエキスが挙げられる。

【0031】
本発明の処理物としては、例えば、上記抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(例えば移動相としてクロロホルム/メタノールを用い、好ましくはメタノール濃度を次第に高くする濃度勾配で用いる)を用いて分取した溶出画分、好ましくは5:1~0:1クロロホルム:メタノール溶出画分(図1中の分離1により得られるFr.3)が挙げられる。

【0032】
本発明の処理物としては、上記溶出画分(図1中の分離1により得られるFr.3)をさらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(例えば移動相としてクロロホルム/メタノールを用い、好ましくはメタノール濃度を次第に高くする濃度勾配で用いる)を用いて分取した溶出画分、好ましくは5:1クロロホルム:メタノール溶出画分(図1中の分離2により得られるFr.3-5)が挙げられる。

【0033】
本発明の処理物としては、上記溶出画分(図1中の分離2により得られるFr.3-5)由来の画分を、例えば逆相HPLC(例えばInertSustain(商標)C18,5μm,カラム内径1cmx長さ25cm、例えば移動相としてメタノール:水=80:20を用いる)を用いて分取した溶出画分が挙げられる(図1中の分離10により得られるPeak A及びB)。図1中のPeak Aからは式(I-3)で示される化合物(化合物EO-5)が得られ、Peak Bからは式(I-4)で示される化合物(化合物EO-6)が得られる。

【0034】
また、本発明の処理物としては、例えば、上記抽出物(図1中の分離1により得られるFr.3)を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(例えば移動相としてクロロホルム/メタノールを用い、好ましくはメタノール濃度を次第に高くする濃度勾配で用いる)を用いて分取した溶出画分、好ましくは20:1クロロホルム:メタノール溶出画分(図1中の分離2により得られるFr.3-2)が挙げられる。

【0035】
本発明の処理物としては、例えば、上記抽出物(図1中の分離2により得られるFr.3-2)由来の画分を、ODSカラムクロマトグラフィー(例えば移動相としてメタノールを用いる)を用いて分取した溶出画分(図1中の分離3により得られるFr.3-2-1)を、さらに、ODSカラムクロマトグラフィー(例えば移動相としてメタノール/水を用い、好ましくはメタノール濃度を次第に高くする濃度勾配で用いる)を用いて分取した溶出画分、好ましくは80:20メタノール:水溶出画分(図1中の分離4により得られるFr.3-2-1-2)が挙げられる。

【0036】
本発明の処理物としては、上記溶出画分(図1中の分離4により得られるFr.3-2-1-2)由来の画分を、例えば逆相HPLC(例えばInertSustain(商標)C18,5μm,カラム内径1cmx長さ25cm、例えば移動相としてメタノール:水=80:20を用いる)を用いて分取した溶出画分が挙げられる(図1中の分離6により得られるPeak 1及び2)。図1中のPeak 1からは式(I-1)で示される化合物(化合物EO-3)が得られ、Peak 2からは式(I-2)で示される化合物(化合物EO-4)が得られる。

【0037】
本発明の組成物は、式(I-1)~(I-4)で示される化合物から選択される少なくとも1種を、組成物全量を100質量部として、好ましくは0.2~0.3質量部、又は好ましくは0.3質量部以上含有する。

【0038】
本発明は、式(I)の化合物から選択される少なくとも1種、式(I-1)~(I-4)で示される化合物から選択される少なくとも1種、或いは本発明の組成物を有効成分として含有する、アミロイドβ凝集阻害剤(以下、本発明のアミロイドβ凝集阻害剤ともいう)にも関する。本発明の組成物は、そのまま本発明のアミロイドβ凝集阻害剤の有効成分として使用することができる。本発明のアミロイドβ凝集阻害剤は医薬品であってもよく、食品であってもよい。本発明において、「アミロイドβ凝集阻害剤」が適用することができる症状としては、アルツハイマー型認知症が挙げられる。

【0039】
本発明は、式(I)の化合物から選択される少なくとも1種、式(I-1)~(I-4)で示される化合物から選択される少なくとも1種、或いは本発明の組成物を有効成分として含有する、抗認知症剤(以下、本発明の抗認知症剤ともいう)にも関する。本発明の組成物は、そのまま本発明の抗認知症剤の有効成分として使用することができる。本発明の抗認知症剤は医薬品であってもよく、食品であってもよい。本発明において、「認知症」としては、アルツハイマー型認知症が挙げられる。

【0040】
本発明は、式(I)の化合物から選択される少なくとも1種、式(I-1)~(I-4)で示される化合物から選択される少なくとも1種、或いは本発明の組成物を有効成分として含有する、抗腫瘍剤(以下、本発明の抗腫瘍剤ともいう)にも関する。本発明の組成物は、そのまま本発明の抗腫瘍剤の有効成分として使用することができる。本発明の抗腫瘍剤は医薬品であってもよく、食品であってもよい。

【0041】
本発明において、「腫瘍」には固形腫瘍及び造血器腫瘍が含まれる。ここで、固形腫瘍は、例えば、脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌、胆のう・胆管癌、肝癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、卵巣癌、絨毛上皮癌、子宮体癌、子宮頸癌、腎盂・尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、睾丸癌、胎児性癌、ウイルス腫瘍、皮膚癌、皮膚線維腫、悪性黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、ユーイング腫、軟部肉腫等であり、好ましくは子宮頸癌及び肝癌である。一方、造血器腫瘍は、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病(HCL)、成人T細胞白血病(ATL)等の白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(例えばB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫等)等のリンパ腫、多発性骨髄腫等である。

【0042】
本発明のアミロイドβ凝集阻害剤、抗認知症剤又は抗腫瘍剤に含まれる式(I)の化合物、及び式(I-1)~(I-4)で示される化合物は、合成により製造されたものであってもよい。

【0043】
本発明のアミロイドβ凝集阻害剤、抗認知症剤又は抗腫瘍剤は、公知の食品用担体又は医薬用担体と組合せて製剤化することができる。投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤として使用される。また、本発明のアミロイドβ凝集阻害剤、抗認知症剤又は抗腫瘍剤は、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として使用してもよい。また、本発明のアミロイドβ凝集阻害剤、抗認知症剤又は抗腫瘍剤は、食品、チューインガム、飲料等に添加して、いわゆる特定保健用食品(例えば、癌予防食品)等とすることもできる。

【0044】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。

【0045】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。

【0046】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。

【0047】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。

【0048】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。

【0049】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。

【0050】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。

【0051】
また、本発明のアミロイドβ凝集阻害剤、抗認知症剤又は抗腫瘍剤は、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
1.アマミナナフシの糞の抽出物、その処理物の調製、及び式(I-1)の化合物(EO-3)、式(I-2)の化合物(EO-4)、式(I-3)の化合物(EO-5)、及び式(I-4)の化合物(EO-6)の単離
上記抽出・単離スキームを図1に示す。
[1]アマミナナフシの糞の抽出:アマミナナフシ(Entoria okinawaensis)の糞を400mLのノルマルヘキサンで一昼夜、室温(20~25℃)、3回抽出後、400mLのクロロホルムで一昼夜、室温(20~25℃)、3回抽出し、引き続き400mLのメタノールで一昼夜、室温(20~25℃)、3回抽出して、それぞれのエキスを作成した(ノルマルヘキサン抽出エキス:1.3g、クロロホルム抽出エキス:1.4g、メタノール抽出エキス:3.1g)。
【実施例】
【0054】
[2]クロロホルム抽出エキス及びメタノール抽出エキスは、1mg/mLとなるようにジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解し、ヒト肝癌細胞(HepG2)に最終濃度1μg/mLで添加し、72時間まで細胞の形態変化を観察した。強い癌細胞死が誘導されたクロロホルム抽出エキスについてその後の分離操作を行った。またMTT-アッセイ(下記「4.MTT-アッセイによる細胞毒性試験」参照)によりクロロホルム抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性は48.4μg/mlであった。
【実施例】
【0055】
[3]クロロホルム抽出エキスについて以下に示した分離1の分離条件により分離、精製した。
<分離1>
(i)シリカゲルカラムクロマトグラフィー:シリカゲル65g[KANTO CHEMICAL Silica Gel 60N(中性)63-210μm]、内径3cmx高さ17.5cm
(ii)溶出溶媒:クロロホルム:メタノール=50:1(150mL)→30:1(186mL)→15:1(160mL)→10:1(132mL)→5:1(120mL)→0:1(250mL)の混合溶液を溶出溶媒とし、順次カラムに流した。
(iii)分取物:3つのフラクション(Fr.1、2、3)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK Silica Gel 60F254)を行った。展開溶媒としてクロロホルム:メタノール=5:1を用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0056】
[4]Fr.3(359.9mg)について、以下の分離2の条件により分離、精製した。
<分離2>
(i)シリカゲルカラムクロマトグラフィー:シリカゲル65g[KANTO CHEMICAL Silica Gel 60N(中性)63-210μm]、内径3cmx高さ17.5cm
(ii)溶出溶媒:クロロホルム:メタノール=20:1(210mL)→10:1(220mL)→5:1(240mL)→0:1(200mL)の混合溶液を溶出溶媒とし、順次カラムに流した。
(iii)分取物:7つのフラクション(Fr.3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6、3-7)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK Silica Gel 60F254)を行った。展開溶媒としてクロロホルム:メタノール=5:1を用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0057】
[5]Fr.3-2(144.1mg)について、以下の分離3の条件により分離した。(EO-3、EO-4分離、精製-1)
<分離3>
(i)ODSカラムクロマトグラフィー:ODS28g[センシュー科学 PEGASIL PREP ODS-7515-12-A]、内径2.3cmx高さ15cm
(ii)溶出溶媒:メタノールを溶出溶媒とし、順次カラムに流した。
(iii)分取物:3つのフラクション(Fr.3-2-1、3-2-2、3-2-3)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK RP-18 F254)を行った。展開溶媒としてメタノールを用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0058】
[6]Fr.3-2-1(82.1mg)について、以下の分離4の条件により分離した。(EO-3、EO-4分離、精製-2)
<分離4>
(i)ODSカラムクロマトグラフィー:ODS28g[センシュー科学 PEGASIL PREP ODS-7515-12-A]、内径2.3cmx高さ15cm
(ii)溶出溶媒:メタノール:水=80:20(100mL)→90:10(50mL)→100:0(100mL)を溶出溶媒とし、順次カラムに流した。
(iii)分取物:4つのフラクション(Fr.3-2-1-1、3-2-1-2、3-2-1-3、3-2-1-4)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK RP-18 F254)を行った。展開溶媒としてメタノールを用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0059】
[7]Fr.3-2-1-2(37.1mg)について、以下の分離5の条件により分離した。(EO-3、EO-4分離、精製-3)
<分離5>
(i)セファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー:LH-20[セファデックスLH-20]、内径1.0cmx高さ35cm
(ii)溶出溶媒:メタノール(100mL)を順次カラムに流し、10mLずつ分取した。
(iii)分取物:4つのフラクション(Fr.3-2-1-2-1、3-2-1-2-2、3-2-1-2-3、3-2-1-2-4)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK RP-18 F254)を行った。展開溶媒としてメタノールを用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0060】
[8]Fr.3-2-1-2-3(13.7mg)について、以下の分離6の条件により分離、精製した。(EO-3、EO-4分離、精製-4)
<分離6>
(i)逆相HPLC:[カラム:InertSustain(商標)C18、5μm、カラム内径1cmx長さ25cm]
ポンプ:JASCO PU980、UV検出器:JASCO UV970
(ii)溶出溶媒:メタノール:水=80:20を溶出溶媒とし、流速2.0mL/min、UV検出222nm、サンプル濃度0.48mg/1mL、80%MeOHの条件で分離した。
(iii)分取物:主に2つのピーク(リテンションタイム16.2min、18.0min)が検出され、それぞれpeak-1、peak-2とした。各ピークについてTLC(MERCK RP-18 F254又はMERCK Silica Gel 60F254、展開溶媒としてメタノールまたはクロロホルム:メタノール=5:1を用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。)その結果、peak-1とpeak-2はそれぞれTLCで単一スポットとして検出され、これらの画分の溶媒を留去すると白色粉末が得られた。得られたpeak-1、peak-2をそれぞれEO-3、EO-4とした。
【実施例】
【0061】
[9]Fr.3-5(15.1mg)について、以下の分離7の条件により分離、精製した。(EO-5、EO-6分離、精製-1)
<分離7>
(i)セファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー:LH-20[セファデックスLH-20]、内径1.0cmx高さ40cm
(ii)溶出溶媒:メタノール(60mL)を順次カラムに流し、10mLずつ分取した。
(iii)分取物:3つのフラクション(Fr.3-5-1、3-5-2、3-5-3)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK RP-18 F254)を行った。展開溶媒としてメタノールを用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0062】
[10]Fr.3-5-2(12.7mg)について、以下の分離8の条件により分離した。(EO-5、EO-6分離、精製-2)
<分離8>
(i)ODSカラムクロマトグラフィー:ODS13g[センシュー科学 PEGASIL PREP ODS-7515-12-A]、内径1.0cmx高さ20cm
(ii)溶出溶媒:メタノール:水=50:50(50mL)→80:20(50mL)→100:0(50mL)を溶出溶媒とし、順次カラムに流し10mLずつ分取した。
(iii)分取物:3つのフラクション(Fr.3-5-2-1、3-5-2-2、3-5-2-3)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK RP-18 F254)を行った。展開溶媒としてメタノールを用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0063】
[11]Fr.3-5-2-2(8.5mg)について、以下の分離9の条件により分離した。(EO-5、EO-6分離、精製-3)
<分離9>
(i)ODSカラムクロマトグラフィー:ODS10g[センシュー科学 PEGASIL PREP ODS-7515-12-A]、内径1.0cmx高さ10cm
(ii)溶出溶媒:メタノール(100mL)溶出溶媒とし、カラムに流した。
(iii)分取物:2つのフラクション(Fr.3-5-2-2-1、3-5-2-2-2)に分画した。各フラクションについてTLC(MERCK RP-18 F254)を行った。展開溶媒としてメタノールを用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。
【実施例】
【0064】
[12]Fr.3-5-2-2-2(6.9mg)について、以下の分離10の条件により分離、精製した。(EO-5、EO-6分離、精製-4)
<分離10>
(i)逆相HPLC:[カラム:InertSustain(商標)C18、5μm、カラム内径1cmx長さ25cm]
ポンプ:JASCO PU980、UV検出器:JASCO UV970
(ii)溶出溶媒:メタノール:水=80:20を溶出溶媒とし、流速1.5 mL/min、UV検出222nm、サンプル濃度1.0mg/1mL、80%MeOHの条件で分離した。
(iii)分取物:主に2つのピーク(リテンションタイム15.2min、16.4min)が検出され、それぞれpeak-A、peak-Bとした。各ピークについてTLC(MERCK RP-18 F254又はMERCK Silica Gel 60F254、展開溶媒としてメタノールまたはクロロホルム:メタノール=5:1を用いて展開後、50%硫酸メタノール溶液を噴霧し、110℃で加熱して検出した。)その結果、peak-1とpeak-2はそれぞれTLCで単一スポットとして検出され、これらの画分の溶媒を留去すると白色粉末が得られた。得られたpeak-A、peak-BをそれぞれEO-5、EO-6とした。
【実施例】
【0065】
2.構造決定
前記白色粉末EO-3、EO-4、EO-5、EO-6の4種の化合物についてのスペクトルデータを下記表1-4に示す。
【実施例】
【0066】
【表1】
JP2017197500A_000009t.gif
JP2017197500A_000010t.gif
【実施例】
【0067】
【表2】
JP2017197500A_000011t.gif
JP2017197500A_000012t.gif
【実施例】
【0068】
【表3】
JP2017197500A_000013t.gif
JP2017197500A_000014t.gif
【実施例】
【0069】
【表4】
JP2017197500A_000015t.gif
JP2017197500A_000016t.gif
【実施例】
【0070】
EO-3とEO-4は13C-NMRから炭素数30であり、H-NMRと13C-NMRのシグナルパターンより、トリテルペンであることが推測された。また、EO-5とEO-6はH-NMRと13C-NMRより、それぞれEO-3とEO-4の3位に五炭糖のアラビノースが結合した構造であることが推測された。さらに、二次元NMRを詳細に解析することにより、各炭素と水素の結合様式を明らかにすることができ、最終的に下記式に示される新規な構造を有するトリテルペン及びその配糖体であると決定した。EO-3、EO-4、EO-5、EO-6は、現在までに単離された報告はなく、今回初めて単離された化合物であった。
【実施例】
【0071】
3.HPLC及びLC-MSによる分析
得られたEO-3、EO-4、EO-5、EO-6についてHPLCによる分析を行ったところ、餌であるシラカシ(Quercus myrsinifolia)の葉のクロロホルム抽出物にはEO-3及びEO-4のピークは認められなかった(図3)。EO-5及びEO-6についてLC-MSによる分析を行ったところ、シラカシの葉のクロロホルム抽出物には、保持時間:24min付近に認められたEO-5及びEO-6由来の[M-H]:619のピークは認められなかった(図4)。従ってEO-3~6の化合物はアマミナナフシの糞にのみ含まれる化合物であることが明らかとなった。
【実施例】
【0072】
4.MTT-アッセイによる細胞毒性試験
MTT-アッセイは下記の方法により行った(図5)。
【実施例】
【0073】
抽出エキスまたは単離した化合物をDMSO(ジメチルスルフォキシド)に溶解後、96ウェル細胞プレートに2x10/ウェルにて播種したHela細胞に化合物の濃度を段階的に変えて添加した。各薬剤濃度においてDMSOの最終濃度は0.1%となるように調整した。72時間後に細胞にMTT試薬を添加し、4時間37度にて培養したのち、反応停止薬(イソプロパノール/塩酸溶液)にて反応を停止するとともに細胞を溶解し、570nmの吸収を測定した。細胞生存率は、0.1%DMSOを添加した細胞を100とし算出した。
【実施例】
【0074】
Hela細胞を用いた細胞毒性試験の結果、EO-3、EO-4、EO-5及びEO-6、特にEO-5はHeLa細胞に対して毒性を示すことが分かった。
【実施例】
【0075】
【表5】
JP2017197500A_000017t.gif
【実施例】
【0076】
5.アミロイドβタンパク質(Aβ)凝集阻害活性の評価
本発明により単離・同定した4種類の化合物におけるAβ凝集阻害活性は内木らによって報告された方法(Hironobu Naiki et al,Anal.Biochem.,177,244-249,1989参照)を参考にしたTHT法により評価した(図6)。ミリセチンをポジティブコントロール化合物として用いた。その結果、本研究において単離・同定したEO-3、EO-4、EO-5、EO-6は、コントロールと比較して4種ともに高いAβ凝集阻害活性が認められた(図7)。また、EO-3以外の化合物において濃度依存的にAβ凝集阻害活性を示した(図7)。これにより、これまでに報告されているトリテルペン配糖体(サポニン)の約半分の濃度でAβ凝集阻害活性を示し、強い活性物質であることがわかった。
【実施例】
【0077】
EO-3、EO-4、EO-5、EO-6は、脳内のアミロイドβタンパク質の蓄積・凝集を抑制し、神経細胞死を回避することで、アルツハイマー病の進行抑制治療を目指した医薬品開発に役立つことが期待できる。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図2D】
4
【図3】
5
【図4】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
9