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明細書 :新規なユビキチンリガーゼおよびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5234865号 (P5234865)
登録日 平成25年4月5日(2013.4.5)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
発明の名称または考案の名称 新規なユビキチンリガーゼおよびその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/00        (2006.01)
C12Q   1/25        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/00
C12Q 1/25
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 101
請求項の数または発明の数 7
全頁数 23
出願番号 特願2011-525944 (P2011-525944)
出願日 平成22年8月6日(2010.8.6)
国際出願番号 PCT/JP2010/063345
国際公開番号 WO2011/016540
国際公開日 平成23年2月10日(2011.2.10)
優先権出願番号 2009184878
優先日 平成21年8月7日(2009.8.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年12月14日(2011.12.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
発明者または考案者 【氏名】岩井 一宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100077012、【弁理士】、【氏名又は名称】岩谷 龍
審査官 【審査官】渡邉 潤也
参考文献・文献 Nat.Cell Biol.,2009 Feb,11(2),p.123-32
EMBO J.,2006 Oct 18,25(20),p.4877-87
Vega A.et al.,Accession:NM_030974[gi:118918414],Definition: Homo sapiens SHANK-associated RH domain interactor (SHARPIN), mRNA.",NCBI Entrez Nucleotide[online];16-NOV-2008 uploaded,NCBI,[retrieved on 7 January 2013],Retrieved from the Internet:<URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/118918414?sat=13&satkey=9254343>
調査した分野 GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
CAplus/BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)と(2)との複合体、または、(a)と(1)と(2)との複合体からなるユビキチンリガーゼ。
(a)HOIPの一部からなり、少なくともUBA領域およびRING-IBR-RING領域を含むタンパク質
(1)HOIL-1L、もしくは、HOIL-1Lの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質
(2)Sharpin、もしくは、Sharpinの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質
【請求項2】
前記(1)が、配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号5で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であり、前記(2)が、配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号12で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項1に記載のユビキチンリガーゼ。
【請求項3】
前記(a)が、配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号7で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項1に記載のユビキチンリガーゼ。
【請求項4】
被験物質を請求項1~3のいずれかに記載のユビキチンリガーゼと接触させる工程と、
前記ユビキチンリガーゼの活性レベルを測定する工程と、
前記活性レベルを、被験物質を接触させないときの活性レベルと比較する工程とを包含することを特徴とする直鎖状ポリユビキチン化阻害物質のスクリーニング方法。
【請求項5】
請求項1に記載のユビキチンリガーゼを製造する方法であって、
以下の(a)および(2)のタンパク質、または、(a)および(1)および(2)のタンパク質を組み換えタンパク質として細菌に発現させるタンパク質発現工程と、
細菌内または培地中から(a)と(2)との複合体、または、(a)と(1)と(2)との複合体を精製する複合体精製工程とを包含し、
細菌に発現させる組み換えタンパク質の少なくとも一種にタグ配列が付加されており、当該タグ配列を利用した1段階の精製により複合体を回収することを特徴とするユビキチンリガーゼの製造方法。
(a)HOIPの一部からなり、少なくともUBA領域およびRING-IBR-RING領域を含むタンパク質
(1)HOIL-1L、もしくは、HOIL-1Lの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク
2)Sharpin、もしくは、Sharpinの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質
【請求項6】
前記(1)が、配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号5で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であり、前記(2)が、配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号12で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項に記載のユビキチンリガーゼの製造方法。
【請求項7】
前記(a)が、配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号7で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である請求項に記載のユビキチンリガーゼの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なユビキチンリガーゼおよびその利用に関するものであり、詳細には、複数のタンパク質の複合体からなる新規なユビキチンリガーゼ、当該ユビキチンリガーゼの構成タンパク質を発現する発現ベクター、当該発現ベクターが導入された形質転換体、および当該ユビキチンリガーゼを用いる直鎖状ポリユビキチン化阻害物質のスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユビキチン修飾系はユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)の3種の酵素群の働きで、ユビキチンリガーゼが選択的に識別する基質、主としてタンパク質にユビキチンが数珠状に連なったポリユビキチン鎖を付加することで、タンパク質の機能を制御する翻訳後修飾系である。発見当初は、ポリユビキチン化タンパク質はすべて分解に導かれると考えられてきたが、その概念は拡大し、現在では多彩な様式でタンパク質の機能を制御することが明らかになっている。生体にはユビキチン間の結合様式が異なる多様なポリユビキチン鎖が存在し、その種類によって修飾されたタンパク質の制御様式が異なることが示されつつある。従来のポリユビキチン鎖はユビキチンのリジン側鎖を介したイソペプチド結合によって生成されると考えられてきたが、本発明者はN末端のメチオニンを介する直鎖状ポリユビキチン鎖が形成されること、および、直鎖状ポリユビキチン化がNF-κBの活性化に関わることを世界に先駆けて示した。
【0003】
具体的には、本発明者は、HOIL-1LとHOIPとの複合体が直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼであることを見出し、HOIL-1LとHOIPとの複合体をLUBAC(linear ubiquitin chain assemble complex)と命名した(非特許文献1参照)。また、LUBACユビキチンリガーゼは、NF-κB活性化の古典的経路において、IκBキナーゼを活性化する段階に関与しており、IκBキナーゼであるIKK複合体を構成するNEMO(NF-κB essential modulator)を直鎖状ユビキチン化することで、NF-κBの選択的な活性化を引き起こすことを明らかにした(非特許文献2参照)。
【0004】
さらに本発明者は、Sharpinも直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼの構成成分であることを見出し、Sharpin、HOIL-1LとHOIPの3つのタンパク質、またはHOIL-1LとHOIPもしくはSharpinとHOIPの2つのタンパク質で構成されるユビキチンリガーゼ複合体をLUBACと呼称することにした。Sharpinに関しては、cpdmマウスと呼ばれるSharpinの自然変異マウスは、慢性皮膚炎やパイエル板の欠損など免疫系の異常等の症状を呈することが報告されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Kurisako, T. et al. A ubiquitin ligase complex assembles linear polyubiquitin chains. EMBO J., 25. 4877-4887 (2006)
【非特許文献2】Tokunaga, F. et al. Involvement of linear polyubiquitylation of NEMO in NF-κB activation. Nature Cell Biol., 11. 123-132 (2009)
【非特許文献3】Seymour, R. E. et al. Spontaneous mutations in the mouse Sharpin gene result in multiorgan inflammation, immune system dysregulation and dermatitis. Genes Immun., 8. 416-421 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、リコンビナントLUBACを効率的に発現するLUBAC発現系の樹立を試みているが、未だ高効率の発現系が得られるに至っていない。そこで、本発明は、直鎖状ポリユビキチン鎖形成活性を有し、効率よく発現および精製が可能な新規なユビキチンリガーゼを提供し、当該ユビキチンリガーゼの構成タンパク質を発現する発現ベクター、当該発現ベクターが導入された形質転換体、および当該ユビキチンリガーゼを用いる直鎖状ポリユビキチン化阻害物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の発明を包含する。
[1]以下の(a)および(b)の複合体からなるユビキチンリガーゼ。
(a)HOIPの一部からなり、少なくともUBA領域およびRING-IBR-RING領域を含むタンパク質
(b)前記(a)と複合体を形成する1種または2種以上のタンパク質
[2]前記(b)が、HOIPのUBA領域と結合可能な領域を含むタンパク質である前記[1]に記載のユビキチンリガーゼ。
[3]前記(b)が、以下の(1)および/または(2)である前記[2]に記載のユビキチンリガーゼ。
(1)HOIL-1L、もしくは、HOIL-1Lの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質
(2)Sharpin、もしくは、Sharpinの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質
[4]前記(1)が、配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号5で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であり、前記(2)が、配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号12で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である前記[3]に記載のユビキチンリガーゼ。
[5]前記(a)が、配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号7で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質である前記[1]に記載のユビキチンリガーゼ。
[6]以下の(A)および/または(B)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(A)HOIPの一部からなり、少なくともUBA領域およびRING-IBR-RING領域を含み、下記(B)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質
(B)前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現する1種または2種以上のタンパク質
[7]前記(B)が、HOIPのUBA領域と結合可能な領域を含み、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質である前記[6]に記載の発現ベクター。
[8]前記(B)が、以下の(I)および/または(II)である前記[7]に記載の発現ベクター。
(I)HOIL-1L、もしくは、HOIL-1Lの一部からなり、少なくともUBL領域を含み、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質
(II)Sharpin、もしくは、Sharpinの一部からなり、少なくともUBL領域を含み、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質
[9]前記(I)が、配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号5で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質であり、前記(II)が、配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号12で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質である前記[8]に記載の発現ベクター。
[10]前記(A)が、配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または、配列番号7で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、前記(B)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質である前記[6]に記載の発現ベクター。
[11]前記(I)をコードするポリヌクレオチドが、配列番号6で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチド、または、配列番号6で表わされる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり、前記(II)をコードするポリヌクレオチドが、配列番号13で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチド、または、配列番号13で表わされる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである前記[9]に記載の発現ベクター。
[12]前記(A)をコードするポリヌクレオチドが、配列番号8で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチド、または、配列番号8で表わされる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、前記(B)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである前記[10]に記載の発現ベクター。
[13]前記[6]~[12]のいずれかに記載の発現ベクターが導入された形質転換体。
[14]被験物質を前記[1]~[5]のいずれかに記載のユビキチンリガーゼと接触させる工程と、前記ユビキチンリガーゼの活性レベルを測定する工程と、前記活性レベルを、被験物質を接触させないときの活性レベルと比較する工程とを包含することを特徴とする直鎖状ポリユビキチン化阻害物質のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規なユビキチンリガーゼを提供することができる。また、当該ユビキチンリガーゼの構成タンパク質を発現する発現ベクター、当該発現ベクターが導入された形質転換体を提供することができる。本発明のユビキチンリガーゼは、本発明の発現ベクターおよび形質転換体を用いて高効率で発現させ、高収率で精製することができる。また、本発明のユビキチンリガーゼを用いて、直鎖状ポリユビキチン化阻害物質のスクリーニング方法を提供することができる。得られる直鎖状ポリユビキチン化阻害物質はNF-κBの活性化を選択的に阻害できるので、NF-κBが関与する各種疾病の予防薬または治療薬の有効成分候補となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)】HOIL-1LとHOIPとから構成されるLUBACの構造およびLUBACによる直鎖状ユビキチン生成機構の説明図である。
【図1(b)】SharpinとHOIPとから構成されるLUBACの構造およびLUBACによる直鎖状ユビキチン生成機構の説明図である。
【図1(c)】HOIL-1LとSharpinとHOIPの3者から構成されるLUBACの構造を示す図である。
【図2】LUBACによるNF-κB活性化メカニズムの模式図である。
【図3】pETDuet-1 petit-LUBACの構造を示す図である。
【図4】大腸菌で発現させたpetit-LUBACをSDS-PAGEに供した結果を示す図である。
【図5】petit-LUBACの直鎖状ポリユビキチン形成活性を確認した結果を示す図である。
【図6】pETDuet-1 petit-Sharpinの構造を示す図である。
【図7】大腸菌で発現させたpetit-SharpinをSDS-PAGEに供した結果を示す図である。
【図8】petit-Sharpinの直鎖状ポリユビキチン形成活性を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔LUBACについて〕
LUBAC(linear ubiquitin chain assemble complex)は本発明者が見出したユビキチンリガーゼである。図1(a)、図1(b)、図1(c)にそれぞれ示したように、LUBACはHOIL-1L、HOIP、Sharpinの3種類、あるいはHOIL-1LとHOIP、SharpinとHOIPの2種類のタンパク質からなる複合体型のユビキチンリガーゼであり、直鎖状ポリユビキチン鎖を生成する活性を有している。

【0011】
HOIL-1Lは、HOIL-1(heme-oxidized IRP2 ligase-1)よりもN末端が伸長しているスプライシングアイソフォームであり、細胞内の主要なHOIL-1として見出された。図1(a)に示したように、HOIL-1Lは58kDであり、N末端側からUBLドメイン(UBL)、Npl4型ジンクフィンガードメイン(NZF)、RING-IBR-RINGドメインを有している。HOIL-1Lは配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、これをコードする遺伝子の塩基配列は配列番号2で表わされる。HOIL-1Lは、RBCK1またはRNF54とも称される。HOIL-1Lをコードする遺伝子(RBCK1, transcript variant 2)の塩基配列は、DDBJ/GenBank/EMBLにアクセッション番号:NM_031229として登録されている。

【0012】
HOIL-1L会合タンパク質として同定されたHOIP(HOIL-1L-interacting protein)は、図1(a)に示したように、N末端領域にp97/VCPと結合するPUBドメイン(PUB)を持ち、続いて3つのジンクフィンガードメイン(ZF、NZF、NZF)、UBAドメイン(UBA)、RING-IBR-RINGドメインからなる120kDのタンパク質である。HOIPは配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、これをコードする遺伝子の塩基配列は配列番号4で表わされる。HOIPはRNF31とも称される。HOIPをコードする遺伝子の塩基配列は、DDBJ/GenBank/EMBLにアクセッション番号:AB265810として登録されている。

【0013】
HOIL-1LとHOIPは複合体を形成し、細胞内ではオリゴマーとして存在していると考えられる。そして、本発明者は、HOIL-1L-HOIP複合体が、従来知られているユビキチンのリジン側鎖を介したイソペプチド結合によって生成されるポリユビキチン鎖でなく、N末端のメチオニンを介する直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ活性を有することを見出した(非特許文献1)。

【0014】
さらに本発明者は、Sharpin(SHANK-associated RH domain-interacting protein)も直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼの構成成分であることを見出した。つまり、HOIL-1LとSharpinとHOIP複合体(図1(c)参照)、およびSharpin-HOIP複合体(図1(b)参照)が、従来知られているユビキチンのリジン側鎖を介したイソペプチド結合によって生成されるポリユビキチン鎖でなく、N末端のメチオニンを介する直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ活性を有することを見出した。図1(b)、(c)に示したように、Sharpinは40kDであり、N末端側からコイルドコイルドメイン(CC)、UBLドメイン(UBL)、Npl4型ジンクフィンガードメイン(NZF)、RING-IBR-RINGドメインを有している。Sharpinは配列番号10で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、これをコードする遺伝子の塩基配列は配列番号11で表わされる。Sharpinをコードする遺伝子の塩基配列は、DDBJ/GenBank/EMBLにアクセッション番号:FJ655995として登録されている。

【0015】
図1(c)に示したように、HOIL-1LとSharpinとHOIPとは、3者の複合体を形成することができる。生体内では、これら3者から構成される複合体が安定に存在し、HOIL-1LとHOIP、またはSharpinとHOIPからなる複合体は不安定であることを本発明者は見出している。

【0016】
〔LUBACによる選択的NF-κB活性化メカニズムについて〕
NF-κBは種々の刺激で活性化される転写因子であり、細胞増殖、炎症、免疫応答等に関わっているだけではなく、多発性骨髄腫をはじめとする種々のガンで活性亢進が知られており、その選択的活性化阻害剤はリウマチ・アレルギー性疾患や抗ガン剤の優れたターゲットであると考えられている。

【0017】
図2にHOIL-1LとHOIPとから構成されるLUBACによるNF-κB活性化メカニズムの模式図を示した。なお、SharpinとHOIPとから構成されるLUBAC、HOIL-1LとSharpinとHOIPとから構成されるLUBACによるNF-κB活性化も同様である。図2に示したように、NF-κBはヘテロ2量体からなる転写因子で、未刺激の状態では阻害タンパク質であるIκBαと結合して細胞質に存在している。種々の刺激によってIKK複合体が活性化され、その結果としてIκBαがリン酸化され、分解へと導かれる。IκBαから遊離したNF-κBは核に移行し、種々の遺伝子の転写を亢進させる。それゆえ、シグナル依存的なNF-κB活性化の理解には刺激依存的なIKK複合体の活性化機構の解明が必須であり、多くの研究が行われてきたが、現在、従来想定されていたドグマが崩れつつあり、未だコンセンサスが得られていないのが現状である。

【0018】
本発明者は、LUBACユビキチンリガーゼが、TNF-α等の刺激依存的にIKK複合体の活性調節サブユニットとして機能しているNEMOと選択的に結合して、NEMOを直鎖状ポリユビキチン化し、これによりIKK複合体を活性化させることでNF-κBの活性化を引き起こすことを明らかにした(非特許文献2)。また、これまで調べた限りではLUBACによるNEMOの直鎖状ポリユビキチン化はNF-κBを選択的に活性化させると考えられる。

【0019】
〔新規ユビキチンリガーゼ〕
本発明のユビキチンリガーゼは、以下の(a)および(b)の複合体からなるものであればよい。
(a)HOIPの一部からなり、少なくともUBA領域およびRING-IBR-RING領域を含むタンパク質
(b)前記(a)と複合体を形成する1種または2種以上のタンパク質

【0020】
上記(b)は、(a)と複合体を形成し、ユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質であれば特に限定されない。(b)は2種以上でもよく、したがって、本発明のユビキチンリガーゼは、(a)を含む3種以上のタンパク質の複合体であってもよい。(b)として好ましくは、HOIPのUBA領域と結合可能な領域を含むタンパク質が挙げられ、より好ましくは、(1)HOIL-1L、またはHOIL-1Lの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質、(2)Sharpin、またはSharpinの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質、などが挙げられる。本発明のユビキチンリガーゼは、(a)と(1)との複合体、(a)と(2)との複合体、(a)と(1)と(2)との複合体からなることがより好ましい。

【0021】
HOIL-1Lの全長は上述のように配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、UBL領域は配列番号1の第70位~第130位に該当する。したがって上記(1)がHOIL-1Lの場合は、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であればよく、上記(1)がHOIL-1Lの一部からなり少なくともUBL領域を含むタンパク質、つまりUBL領域を含むHOIL-1Lの部分タンパク質である場合は、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質において、その全長を含まず、少なくとも第70位~第130位のアミノ酸配列を含むタンパク質であればよい。好ましくはNpl4型ジンクフィンガードメイン(NZF)を含まないHOIL-1Lの部分タンパク質であり、より好ましくはNZFおよびRING-IBR-RINGドメインを含まないHOIL-1Lの部分タンパク質である(図1(a)参照)。

【0022】
本明細書において、HOIL-1Lは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質に限定されず、HOIPと複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できる限りにおいて、HOIL-1Lの変異体であってもよい。このようなHOIL-1Lの変異体や、当該HOIL-1Lの変異体において、UBL領域に相当する領域を含む部分タンパク質は、本発明の(b)の(1)のタンパク質として好適に用いることができる。HOIL-1Lの変異体としては、例えば、配列番号1で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、HOIPと複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できるタンパク質が挙げられる。また、HOIL-1LのUBL領域と同様の領域を有するタンパク質、または当該タンパク質のUBL領域に該当する領域を含む部分タンパク質は、(b)のタンパク質として好適に用いることができる。

【0023】
(b)の(1)のタンパク質としてさらに好ましいタンパク質は、配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。配列番号5で表わされるアミノ酸配列は、配列番号1の第1位~第191位に該当する。もちろん、上記(a)のタンパク質と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できる限りにおいて、配列番号5で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も好適に用いることができる。

【0024】
Sharpinの全長は上述のように配列番号10で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、UBL領域は配列番号10の第240位~第300位に該当する。したがって上記(2)がSharpinの場合は、配列番号10で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であればよく、上記(2)がSharpinの一部からなり、少なくともUBL領域を含むタンパク質、つまりUBL領域を含むSharpinの部分タンパク質である場合は、配列番号10で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分タンパク質において、少なくとも第240位~第300位のアミノ酸配列を含むタンパク質であればよい。好ましくはNpl4型ジンクフィンガードメイン(NZF)を含まないSharpinの部分タンパク質であり、より好ましくはNZFおよびコイルドコイルドメイン(CC)を含まないSharpinの部分タンパク質である(図1(b)参照)。

【0025】
本明細書において、Sharpinは、配列番号10で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質に限定されず、HOIPと複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できる限りにおいて、Sharpinの変異体であってもよい。このようなSharpinの変異体や、当該Sharpinの変異体において、UBL領域に相当する領域を含む部分タンパク質は、本発明の(b)の(2)のタンパク質として好適に用いることができる。Sharpinの変異体としては、例えば、配列番号10で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、HOIPと複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できるタンパク質が挙げられる。また、SharpinのUBL領域と同様の領域を有するタンパク質、または当該タンパク質のUBL領域に該当する領域を含む部分タンパク質は、(b)のタンパク質として好適に用いることができる。

【0026】
(b)の(2)のタンパク質としてさらに好ましいタンパク質は、配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。配列番号12で表わされるアミノ酸配列は、配列番号10の第172位~第346位に該当する。もちろん、上記(a)のタンパク質と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できる限りにおいて、配列番号12で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も好適に用いることができる。

【0027】
上記(a)は、HOIPの一部からなり、少なくともUBA領域およびRING-IBR-RING領域を含むタンパク質であれば特に限定されない。HOIL-1Lの全長は上述のように配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、UBA領域は配列番号3の第564位~第615位に該当し、RING-IBR-RING領域は配列番号3の第699位~第901位に該当し、UBA領域のN末端からRING-IBR-RING領域のC末端までの領域は配列番号3の第564位~第901位に該当する。したがって(a)は、配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質の部分タンパク質であって、少なくとも第564位~第901位のアミノ酸配列を含むタンパク質であればよい。好ましくは3つのジンクフィンガードメイン(ZF、NZF、NZF)を含まない部分タンパク質であり、より好ましくは、PUBドメイン(PUB)および3つのジンクフィンガードメイン(ZF、NZF、NZF)を含まない部分タンパク質である(図1(a)、(b)参照)。

【0028】
本明細書において、HOIPは、配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質に限定されず、HOIL-1Lと複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できる限りにおいて、HOIPの変異体であってもよい。このようなHOIPの変異体において、UBA領域およびRING-IBR-RING領域に相当する領域を含む部分タンパク質は、本発明の(a)のタンパク質として好適に用いることができる。HOIPの変異体としては、例えば、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、HOIL-1Lと複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できるタンパク質が挙げられる。

【0029】
(a)のタンパク質としてさらに好ましいタンパク質は、配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。配列番号7で表わされるアミノ酸配列は、配列番号3の第474位~第1072位に該当する。もちろん、上記(b)のタンパク質と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現できる限りにおいて、配列番号7で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質も(a)のタンパク質として好適に用いることができる。

【0030】
「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。このような変異タンパク質は、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するタンパク質に限定されるものではなく、天然に存在するタンパク質を単離精製したものであってもよい。タンパク質のアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、当該タンパク質の構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけでなく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。

【0031】
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または付加を有する。好ましくは、サイレント置換、欠失、および付加であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、タンパク質の活性を変化させない。保存性置換と見られる代表的なものは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。

【0032】
本発明のユビキチンリガーゼは付加的なペプチドを含むものであってもよい。付加的なペプチドとしては、例えば、ポリヒスチジンタグ(His-tag)やMyc、FLAG等のエピトープ標識ペプチドが挙げられる。

【0033】
本発明のユビキチンリガーゼは、例えば、公知の遺伝子工学的手法により、上記(a)のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に挿入した組み換え発現ベクターおよび上記(b)のタンパク質をコードする遺伝子を発現可能に挿入した組み換え発現ベクターをそれぞれ構築し、これらを適当な宿主細胞に共導入して組み換えタンパク質として発現させ、形成された複合体を宿主細胞内または培地中から精製することにより製造することができる。また、複数のタンパク質を1つのベクターで共発現可能な組み換え発現ベクターを用いることもできる。

【0034】
また、本発明のユビキチンリガーゼは、例えば、in vitro転写・翻訳系を用いて製造することもできる。この方法で行う場合には、上記(a)のタンパク質をコードするDNA断片および上記(b)のタンパク質をコードするDNA断片と、公知のin vitro転写・翻訳系(例えば、大腸菌、小麦胚芽細胞、ウサギ網状赤血球の無細胞抽出液を用いる系)を用いることができる。

【0035】
得られたタンパク質が複合体を形成していること、およびユビキチンリガーゼ活性を有していることは、公知の方法を用いて確認することができる。複合体形成の確認は、例えば、得られたタンパク質をSDS-PAGEに供し、複数のタンパク質のバンドが出現することにより行うことができる。ユビキチンリガーゼ活性の有無は、例えば、得られたタンパク質と、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ATPおよびユビキチンを混和して反応(例えば、37℃で5分~1時間程度)させたときに、直鎖状ポリユビキチン鎖が生成されるか否かによって確認することができる。

【0036】
〔発現ベクター〕
本発明の発現ベクターは、(A)および/または(B)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターであればよい。
(A)HOIPの一部からなり、少なくともUBA領域およびRING-IBR-RING領域を含み、下記(B)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質
(B)前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現する1種または2種以上のタンパク質

【0037】
(B)は、本発明のユビキチンリガーゼを構成する上記(b)のタンパク質であればよい。すなわち、(B)として好ましくは、HOIPのUBA領域と結合可能な領域を含み、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質が挙げられ、より好ましくは、(I)HOIL-1L、もしくは、HOIL-1Lの一部からなり、少なくともUBL領域を含み、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質、(II)Sharpin、もしくは、Sharpinの一部からなり、少なくともUBL領域を含み、前記(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質、などが挙げられる。

【0038】
(I)のHOIL-1Lの一部からなり、少なくともUBL領域を含み、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質、つまりUBL領域を含むHOIL-1Lの部分タンパク質であって(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質は、具体的には配列番号1で表わされるアミノ酸配列の一部からなり、少なくとも第70位~第130位のアミノ酸配列を含むタンパク質であり、例えば、配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質が好適に用いられる。また、配列番号5で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質も好適である。

【0039】
HOIL-1Lをコードするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。当該塩基配列において、UBL領域をコードする塩基配列は第208位~第390位である。したがって、(I)がHOIL-1Lである場合、これをコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号2で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドを好適に用いることができ、(I)がUBL領域を含むHOIL-1Lの部分タンパク質である場合、当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号2で表わされる塩基配列の一部からなり、第208位~第390位の塩基配列を含むポリヌクレオチドを好適に用いることができる。

【0040】
配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号6で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。また、配列番号6で表わされる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するHOIL-1Lの部分タンパク質をコードするポリヌクレオチドも好適に用いることができる。

【0041】
(II)のSharpinの一部からなり、少なくともUBL領域を含み、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質、つまりUBL領域を含むSharpinの部分タンパク質であって(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質は、具体的には配列番号10で表わされるアミノ酸配列の一部からなり、少なくとも第240位~第300位のアミノ酸配列を含むタンパク質であり、例えば、配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質が好適に用いられる。また、配列番号12で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質も好適である。

【0042】
Sharpinをコードするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号11で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。当該塩基配列において、UBL領域をコードする塩基配列は第718位~第900位である。したがって、(II)がSharpinである場合、これをコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号11で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドを好適に用いることができ、(II)がUBL領域を含むSharpinの部分タンパク質である場合、当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドとして、例えば配列番号11で表わされる塩基配列の一部からなり、第718位~第900位の塩基配列を含むポリヌクレオチドを好適に用いることができる。

【0043】
配列番号12で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号13で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。また、配列番号13で表わされる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、(A)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するSharpinの部分タンパク質をコードするポリヌクレオチドも好適に用いることができる。

【0044】
(A)は、本発明のユビキチンリガーゼを構成する上記(a)のタンパク質であればよい。好ましくは、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の一部からなり、少なくとも第564位~第901位のアミノ酸配列を含み、(B)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質が挙げられ、より好ましくは、配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。また、配列番号7で表わされるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、(B)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するタンパク質も好適である。

【0045】
HOIPをコードするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号4で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。当該塩基配列において、UBA領域のN末端からRING-IBR-RING領域のC末端までの領域をコードする塩基配列は第1690位~第2703位である。したがって、(A)をコードするポリヌクレオチドとして、配列番号4で表わされる塩基配列の一部からなり、第1690位~第2703位の塩基配列を含むポリヌクレオチドを好適に用いることができる。

【0046】
配列番号7で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば配列番号8で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。また、配列番号8で表わされる塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、(B)と複合体を形成してユビキチンリガーゼ活性を発現するHOIPの部分タンパク質をコードするポリヌクレオチドも好適に用いることができる。

【0047】
本明細書において「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用される。本発明のポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在することができる。DNAは、二本鎖でもよく一本鎖でもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)、または、非コード鎖(アンチセンス鎖)のいずれであってもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、その5’側または3’側でタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合されていてもよい。

【0048】
ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(2001)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高く(ハイブリダイズし難く)なり、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。適切なハイブリダイゼーション温度は、塩基配列やその塩基配列の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとして用いる場合、50℃以下の温度が好ましい。

【0049】
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ」とは、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。

【0050】
本発明の発現ベクターに使用するポリヌクレオチドを取得する方法としては、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、配列番号6で表わされる塩基配列の5’側および3’側の配列(またはその相補配列)に基づいてそれぞれプライマーを設計し、これらプライマーを用いてゲノムDNAまたはcDNA等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、配列番号6で表わされる塩基配列からなるポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。

【0051】
本発明の発現ベクターには、以下の発現ベクターが含まれる。
(i) 上記(A)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター
(ii) 上記(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター
(iii) 上記(A)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよび上記(B)のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの両方を含むベクター
また、(B)のタンパク質が2種以上の場合は、(A)を含めて3種以上のタンパク質をそれぞれコードするポリヌクレオチドを適宜組み合わせて2種以上のポリヌクレオチドを含む共発現ベクターとしてもよい。
本発明の発現ベクターは、RNAポリメラーゼの認識配列を有するプラスミドベクターが好ましい。2種以上のポリヌクレオチドを含む場合は、RNAポリメラーゼの認識配列を2か所以上有することが好ましい。このようなプラスミドベクターは、公知のベクターを適宜選択して用いることができ、市販のプラスミドベクターを容易に入手することができる。

【0052】
組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。ベクターの具体的な種類は限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明のユビキチンリガーゼの構成タンパク質を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これとユビキチンリガーゼの構成タンパク質をコードするポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んで発現ベクターを作製すればよい。

【0053】
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性遺伝子等、E.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子等が挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、本発明に係るポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。あるいは、本発明に係るポリペプチドを融合ポリペプチドとして発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光ポリペプチドGFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明に係るポリペプチドをGFP融合ポリペプチドとして発現させてもよい。

【0054】
上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞、動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)などが挙げられる。上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。

【0055】
本発明のユビキチンリガーゼが2種類のタンパク質の複合体である場合は、(A)および(B)をそれぞれコードする2種類のポリヌクレオチドを含む発現ベクター(共発現ベクター)を宿主細胞に導入するか、または、(A)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターと、(B)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを宿主細胞に共導入すればよい。
本発明のユビキチンリガーゼが3種類以上のタンパク質の複合体である場合は、複合体を構成するタンパク質をコードするポリヌクレオチドをそれぞれ含む発現ベクターを宿主細胞に共導入するか、単一のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターと共発現ベクターとを適宜組み合わせて複合体を構成するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に導入すればよい。
複合体を構成するタンパク質をコードするポリヌクレオチドがすべて導入された宿主細胞(形質転換体)を、培養、栽培または飼育した後、培養物などから慣用的な手法(例えば、濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど)に従って、本発明のユビキチンリガーゼを回収、精製することができる。

【0056】
〔形質転換体〕
本発明は、上記本発明の発現ベクターが導入された形質転換体を提供する。本発明の形質転換体は、上記本発明の発現ベクターのいずれか1つが導入されているものであればよく、本発明のユビキチンリガーゼを構成するすべてのタンパク質をコードするポリヌクレオチドが同時に導入されていることは要しない。本明細書において「形質転換体」は、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含む。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞として例示した各種微生物、植物または動物が挙げられる。

【0057】
本発明の形質転換体のうち、本発明のユビキチンリガーゼを構成するタンパク質をコードするポリヌクレオチドがすべて導入されている形質転換体は、本発明のユビキチンリガーゼの製造に好適に使用することができる。これらの形質転換体は、本発明のユビキチンリガーゼを安定的に発現するものであることが好ましいが、一過性に発現するものでもよい。

【0058】
ここで、上述のように、本発明者はリコンビナントLUBACを効率的に発現するLUBAC発現系、すなわち、全長のHOIL-1Lと全長のHOIP、または全長のSharpinと全長のHOIPとを効率的に発現して複合体が形成されるLUBAC発現系の樹立を試みているが、未だ高効率の発現系が得られるに至っていない。具体的には、非特許文献1の[Materials and methods]の“Preparation of recombinant proteins”において記載されているように、本発明者は、細菌で発現させたLUBACの調製を、ニッケルアフィニティーゲル、HiTrapQ、およびゲル濾過という3段階の精製段階を経て行っていた。すなわち、非特許文献1の発現系において、3段階もの精製を行わなければリコンビナントLUBACを取得することができなかった。この記載から、従来のリコンビナントLUBAC発現系では、効率的な発現ができなかったことが理解できる。これに対して、本発明の発現ベクターおよび形質転換体を用いれば、後段の実施例に記載のように、ニッケルアフィニティーゲルによる1段階の精製で本発明のユビキチンリガーゼを容易に取得できることが示された。

【0059】
したがって、本発明により提供される新規なユビキチンリガーゼ、その発現ベクターおよび形質転換体は、従来樹立することができなかった直鎖状ポリユビキチン鎖形成活性を有するユビキチンリガーゼの高効率発現と高収率の精製を可能とするものであり、極めて有用性の高い発明である。

【0060】
〔スクリーニング方法〕
本発明のスクリーニング方法は、被験物質を本発明のユビキチンリガーゼと接触させる工程、被験物質と接触させたユビキチンリガーゼの活性レベルを測定する工程、測定した活性レベルを、被験物質を接触させないときの活性レベルと比較する工程、を包含するものであればよい。本発明のスクリーニング方法により、直鎖状ポリユビキチン化阻害物質を簡便かつ効率的にスクリーニングすることができる。

【0061】
被験物質と本発明のユビキチンリガーゼとの接触は、例えば、ユビキチンリガーゼを含む溶液に被験物質を添加し、溶解または懸濁させることにより行うことができる。接触時間、接触温度は特に限定されず、適宜選択すればよい。また、被験物質を接触させない対照群を設けることが好ましい。

【0062】
ユビキチンリガーゼの活性レベルの測定は、測定対象のユビキチンリガーゼ、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ATPおよびユビキチンを混和して反応させ(例えば、37℃で5分~1時間程度)、生成した直鎖状ポリユビキチン鎖を定量することにより行うことができる。E1、E2、ATP、ユビキチンは市販のものも使用可能である。

【0063】
被験物質を接触させたユビキチンリガーゼの活性レベルを、被験物質を接触させていないユビキチンリガーゼの活性レベルと比較することで、被験物質が直鎖状ポリユビキチン化阻害物質であるか否かを判定することができる。被験物質を接触させていないユビキチンリガーゼの活性レベルと比較して、被験物質を接触させたユビキチンリガーゼの活性レベルが低ければ、被験物質が直鎖状ポリユビキチン化阻害物質であると判定できる。好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下であるときに直鎖状ポリユビキチン化阻害物質であると判定する。

【0064】
上述のように、本発明者はLUBACユビキチンリガーゼが、NF-κB活性化の古典的経路において、IKK複合体のNEMOと選択的に結合して、NEMOを直鎖状ポリユビキチン化し、これによりIKK複合体を活性化させることでNF-κBの活性化を引き起こすことを明らかにしており(非特許文献2参照)、LUBACによるNEMOの直鎖状ポリユビキチン化はNF-κBを選択的に活性化させることも見出している。本発明のユビキチンリガーゼは、LUBACを構成するHOIL-1Lの部分タンパク質とHOIPの部分タンパク質との複合体、Sharpinの部分タンパク質とHOIPの部分タンパク質との複合体、または、HOIL-1Lの部分タンパク質とSharpinの部分タンパク質とHOIPの部分タンパク質との複合体であるので、本発明のスクリーニング方法により得られる直鎖状ポリユビキチン化阻害物質は、NEMOの直鎖状ポリユビキチン化を阻害し、その結果NF-κBの活性化を選択的に阻害する物質であると考えられる。したがって、本発明のスクリーニング方法により得られる直鎖状ポリユビキチン化阻害物質は、NF-κBが関与する各種疾病の予防薬または治療薬の有効成分候補物質として極めて有用である。

【0065】
NF-κBが関与する疾病としては、例えば、慢性関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、気管支ぜんそく、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などが挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、HOIL-1Lの第1位~第191位アミノ酸配列(配列番号7)からなるタンパク質を「HOIL-1L(1-191)」と称し、HOIPの第474位~第1072位のアミノ酸配列(配列番号5)からなるタンパク質を「HOIP(474-1072)」と称する。また、本発明のユビキチンリガーゼを「petit-LUBAC」と称する。
【実施例】
【0067】
〔実施例1:petit-LUBAC発現ベクターの構築〕
共発現用ベクターであるpETDuet-1ベクター(Novagen社製)のMCS1のHis-Tagの下流にHOIP(474-1072)をコードするDNA(配列番号6)を挿入し、MCS2にHOIL-1L(1-191)をコードするDNA(配列番号8)を挿入することにより、petit-LUBAC発現ベクターpETDuet-1 petit-LUBACを構築した(図3参照)。このpETDuet-1 petit-LUBACにより、2種類のタンパク質、すなわちHOIP(474-1072)の上流(N末端側)に「MRGSHHHHHHSQDPNSENLYFQ」(配列番号9)が付加されたタンパク質、および、HOIL-1L(1-191)が発現される。
【実施例】
【0068】
〔実施例2:petit-LUBACの発現および精製〕
以下の手順により、petit-LUBACの発現および精製を行った。
(1)pETDuet-1 petit-LUBACをBL21(DE3)RILに形質転換し、LB-アンピシリンプレートに播種。
(2)1つのコロニーを2mLのLBアンピシリン培地で37℃一晩培養。
(3)(2)の培養液1mLを50mLのLBアンピシリン培地に添加し、37℃でOD600=0.6になるまで培養。
(4)(3)の培養液50mL(全量)を1LのLBアンピシリン培地に加え、28℃でOD600=0.6になるまで培養。
(5)IPTGを終濃度0.4mMになるように加え、28℃でさらに2時間培養。
(6)大腸菌を集菌し、80mLのsonication培地(20mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、タンパク質分解酵素阻害剤)に懸濁。
(7)超音波破砕機で大腸菌を破砕。
(8)大腸菌破砕液を15,000rpm、4℃で20分間遠心し、上清(大腸菌抽出液)を回収。
(9)大腸菌抽出液に終濃度0.2mMのイミダゾールを添加。
(10)Ni-NTAビーズ 1mLを加え、4℃で1時間反応。
(11)洗浄液1(20mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、3mM イミダゾール)にて洗浄。
(12)洗浄液2(20mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、20mM イミダゾール)にて洗浄。
(13)溶出液(20mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、200mM イミダゾール)にて溶出。
(14)PD-10カラムにて20mM Tris-HCl pH 7.5、1mM DTTにバッファー置換して、-80℃で保存。
【実施例】
【0069】
得られた精製物をSDS-PAGEに供した。結果を図4に示した。図4から明らかなように、HOIP(474-1072)のバンドとHOIL-1L(1-191)のバンドの2本のバンドが現れた。この結果から、HOIP(474-1072)とHOIL-1L(1-191)とが複合体を形成し、petit-LUBACとして存在していることが明らかとなった。
【実施例】
【0070】
〔実施例3:petit-LUBACによる直鎖状ポリユビキチン形成活性の確認〕
ユビキチン活性化酵素(E1)、UbcH5c(E2)、ATP、ユビキチンの混合溶液に、実施例2で得られたpetit-LUBACを、4段階の濃度(無添加を含む)で添加し、37℃でインキュベートしてポリユビキチン生成の有無を電気泳動により確認した。
結果を図5に示した。図5において左のレーンから順に、petit-LUBAC無添加、低濃度添加、中濃度添加、高濃度添加の結果である。図5から明らかなように、petit-LUBACを添加すると濃度に依存してラダー状のバンドが出現し、ポリユビキチンが形成されていることが示された。この結果から、petit-LUBACは直鎖状ポリユビキチン形成活性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0071】
〔実施例4:petit-Sharpin発現ベクターの構築〕
共発現用ベクターであるpETDuet-1ベクター(Novagen社製)のMCS1のHis-Tagの下流にHOIP(474-1072)をコードするDNA(配列番号6)を挿入し、MCS2にSharpin(172-346)をコードするDNA(配列番号13)を挿入することにより、petit-Sharpin発現ベクターpETDuet-1 petit-Sharpinを構築した(図6参照)。このpETDuet-1 petit-Sharpinにより、2種類のタンパク質、すなわちHOIP(474-1072)の上流(N末端側)に「MRGSHHHHHHSQDPNSENLYFQ」(配列番号9)が付加されたタンパク質、および、Sharpin(172-346)のN末端にメチオニンが付加されたタンパク質が発現される。
【実施例】
【0072】
〔実施例5:petit-Sharpinの発現および精製〕
以下の手順により、petit-Sharpinの発現および精製を行った。
(1)pETDuet-1 petit-SharpinをBL21(DE3)RILに形質転換し、LB-アンピシリンプレートに播種。
(2)1つのコロニーを2mLのLBアンピシリン培地で37℃一晩培養。
(3)(2)の培養液1mLを50mLのLBアンピシリン培地に添加し、37℃でOD600=0.6になるまで培養。
(4)(3)の培養液50mL(全量)を1LのLBアンピシリン培地に加え、28℃でOD600=0.6になるまで培養。
(5)IPTGを終濃度0.4mMになるように加え、28℃でさらに2時間培養。
(6)大腸菌を集菌し、80mLのsonication培地(20mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、タンパク質分解酵素阻害剤)に懸濁。
(7)超音波破砕機で大腸菌を破砕。
(8)大腸菌破砕液を15,000rpm、4℃で20分間遠心し、上清(大腸菌抽出液)を回収。
(9)大腸菌抽出液に終濃度0.2mMのイミダゾールを添加。
(10)Ni-NTAビーズ 1mLを加え、4℃で1時間反応。
(11)洗浄液1(20mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、3mM イミダゾール)にて洗浄。
(12)洗浄液2(20mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、20mM イミダゾール)にて洗浄。
(13)溶出液(20mM Tris-HCl pH 7.5、150mM NaCl、5mM 2-ME、200mM イミダゾール)にて溶出。
(14)PD-10カラムにて20mM Tris-HCl pH 7.5、1mM DTTにバッファー置換して、-80℃で保存。
【実施例】
【0073】
得られた精製物をSDS-PAGEに供した。結果を図7に示した。図7から明らかなように、HOIP(474-1072)のバンドとSharpin(172-346)のバンドの2本のバンドが現れた。この結果から、HOIP(474-1072)とSharpin(172-346)とが複合体を形成し、petit-Sharpinとして存在していることが明らかとなった。
【実施例】
【0074】
〔実施例6:petit-Sharpinによる直鎖状ポリユビキチン形成活性の確認〕
ユビキチン活性化酵素(E1)、UbcH5c(E2)、ATP、ユビキチンの混合溶液に、実施例5で得られたpetit-Sharpinを、4段階の濃度(無添加を含む)で添加し、37℃でインキュベートしてポリユビキチン生成の有無を電気泳動により確認した。
結果を図8に示した。図8において左のレーンから順に、petit-Sharpin無添加、低濃度添加、中濃度添加、高濃度添加の結果である。図8から明らかなように、petit-Sharpinを添加すると濃度に依存してラダー状のバンドが出現し、ポリユビキチンが形成されていることが示された。この結果から、petit-Sharpinは直鎖状ポリユビキチン形成活性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0075】
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のユビキチンリガーゼは、NF-κBが関与する各種疾病の予防薬または治療薬の有効成分候補物質のスクリーニングに用いることができ、極めて有用である。
図面
【図1(a)】
0
【図1(b)】
1
【図1(c)】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6】
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【図7】
8
【図8】
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