TOP > 国内特許検索 > 菌類の識別方法 > 明細書

明細書 :菌類の識別方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3694739号 (P3694739)
公開番号 特開2003-116554 (P2003-116554A)
登録日 平成17年7月8日(2005.7.8)
発行日 平成17年9月14日(2005.9.14)
公開日 平成15年4月22日(2003.4.22)
発明の名称または考案の名称 菌類の識別方法
国際特許分類 C12N 15/09      
C12Q  1/68      
G01N 33/53      
G01N 33/566     
G01N 33/569     
G01N 33/68      
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
G01N 33/53 M
G01N 33/566
G01N 33/569 B
G01N 33/68
請求項の数または発明の数 12
全頁数 24
出願番号 特願2001-309293 (P2001-309293)
出願日 平成13年10月5日(2001.10.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 DDBJデータベースの検索番号AB052750として電子通信回線を通じて発表
審査請求日 平成13年10月5日(2001.10.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】丸本 卓哉
【氏名】横山 和平
【氏名】立石 貴浩
【氏名】齋藤 雅典
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】田村 明照
参考文献・文献 特開平11-169181(JP,A)
特開平11-069999(JP,A)
特開平10-313899(JP,A)
特開平09-187293(JP,A)
特開2000-262291(JP,A)
特表平09-506002(JP,A)
調査した分野 C12N 15/00
C12Q 1/68
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
VA菌根菌と未知の菌類について、アイソザイム分析、及び核酸分析を行ない両菌類を比較することによって菌類を識別することを特徴とする菌類の識別方法であって、
核酸分析が、前記未知の菌類についての、配列表の配列番号1の塩基番号1-235で示される塩基配列の有無の調査であることを特徴とする菌類の識別方法。
【請求項2】
核酸分析が、配列表の配列番号1の塩基番号1-235で示される塩基配列に一部又は全部が相補的な塩基配列を有するDNA断片をプローブとして、前記プローブと相補的な塩基配列が前記未知の菌類に存在するか否かの分析であることを特徴とする請求項記載の菌類の識別方法。
【請求項3】
前記未知の菌類についての、配列表の配列番号1の塩基番号1-235で示される塩基配列の有無の調査を、前記塩基配列に基づき、VA菌根菌のゲノムDNAにハイブリダイズするプライマーを設計し、当該プライマー数種および既知のプライマーの組み合わせによりPCRを実施することで、再現性の良い未知の菌類に特異的なバンドを構成する塩基配列を検出することにより行なうことを特徴とする請求項1又は2項に記載の方法。
【請求項4】
前記相補的な塩基配列の分析を、前記プローブと前記未知の菌類に特異的なバンドを構成する塩基配列に対するハイブリダイゼーションにより行なう請求項2又は3項に記載の識別方法。
【請求項5】
前記プローブが配列表の配列番号2の塩基番号1-45で示される塩基配列からなることを特徴とする請求項24項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
菌類が、同種に属するか否かを識別することを特徴とする請求項1~5項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
菌類が、同系統に属するか否かを識別することを特徴とする請求項1~6項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アイソザイムが、酸性フォスファターゼ(ACP)、アルカリフォスファターゼ(AKP)、エステラーゼ(EST)、グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、へキソキナーゼ(HK)、ロイシンアミノぺプチダーゼ(LAP)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、アラニンアミノぺプチダーゼ(AAP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)、アコニターゼ(ACO)、アルコール脱水素酵素(ADH)、アミラーゼ(AMY)、ジアホラーゼ(DIA)、フマラーゼ(FM)、グルタミン酸脱水素酵素(GDH)、グリセリン酸脱水素酵素(G2D)、グルコキナーゼ(GK)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)、グルタチオンレダクターゼ(GR)、リンゴ酸酵素pH8.0(ME8)、リンゴ酸酵素pH7.0(ME7)、メナジオンレダクターゼ(MNR)、6-ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGD)、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)、ホスホグルコムターゼ(PGM)、パーオキシダーゼ(POD)、シキミ酸脱水素酵素(SKD)、ソルビトール脱水素酵素(SODH)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、及びテトラゾリウム酸化酵素(TZO)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
形態的特徴に基づき菌類を選別した後、前記アイソザイム分析及び核酸分析を行なうことを特徴とする請求項1~項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
形態的特徴が、接合胞子、配偶子、遊走子、遊走子のう、休眠胞子のう、厚膜のう、配偶子のう、胞子のう胞子、分生子、胞子のう、胞子のう柄、仮根、小胞子のう、菌糸、偽接合胞子、子のう果、子のう、子のう胞子、担子胞子、担子器、分生子柄、分生子柄束、分生子果、クランプ形成、隔壁、菌根からなる群から選択される少なくとも1種の大きさ及び/又は形態等の特徴であることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項11】
組織化学的特徴に基づき菌類を選別した後、前記アイソザイム分析及び核酸分析を行なうことを特徴とする請求項1~10項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
組織化学的特徴が、自家蛍光及び/又は糖鎖の存在であることを特徴とする請求項11記載の方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、菌類の識別方法に関し、特に、アイソザイムの分析及び核酸分析を行なうことによる菌類の識別方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、菌類の識別方法として、菌糸、胞子、及び繁殖器官等の形態的特徴に基づく方法が知られている。具体的に、胞子等の形態的特徴に基づく方法とは、分生子、胞子、子のう果、子のう、子のう胞子、接合胞子、担子胞子等の大きさを比較して、菌類の同定、分類を行なう方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の形態学的特徴に基づく方法では、同種内における菌糸、菌根レベルでの特定系統の識別が不可能であるという問題を有していた。すなわち、上述の形態学的特徴に基づく方法によれば、胞子の大きさ、菌糸の特徴、胞子の模様などの形態的な基準に基づき分別するにすぎず、同属の種のレベルまで絞り込むには、胞子、菌糸、繁殖器官等の微細構造、色などさらに詳細に形態的特徴を調べる必要がある。このような胞子、菌糸、繁殖器官等の微細構造、色などの詳細な形態的特徴による分類は、熟練を要し、種々の多数の胞子を観察し分類した経験を有する研究者以外の者にとっては、非常に難しいという問題がある。
【0004】
近年、菌根共生を生かした森林の再生や緑化技術が注目され、侵食地や荒廃地での樹木の導入に際して、接種菌を導入することが議論されている。例えば、菌根菌の緑化樹種及び草木への感染は、養分の吸収促進に伴う宿主植物の生育の増加をもたらすだけでなく、移植後の活着率の向上、水分ストレスに対する抵抗性等を宿主植物に付与し、その結果として、植生の早期回復が期待される。
【0005】
しかし、侵食地や荒廃地といった貧栄養の土壌環境では、菌根菌を含めた土壌微生物相は貧弱である。このような土壌環境へ菌類を導入した場合、土着菌とどのように共存し、または競争し生息するのかを詳細に解析することは上述の形態的特徴に基づく方法のみでは困難であった。したがって、上記の形態学的特徴以外に、菌類の種及び種内の同定やその多様性の評価の詳細を知る識別法の開発が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、菌糸体、菌根レベルでの特定系統の識別を可能とする菌類の識別法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、発明者らは、組織化学的、生化学的、分子生物学的観点から、菌類の特定系統株を識別する手法を鋭意研究した結果、本発明の菌類の識別法を見出すに至った。
【0008】
本発明の菌類の識別方法は、既知の菌類と未知の菌類について、アイソザイム分析及び核酸分析を行ない両菌類を比較することによって菌類を識別することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、核酸分析が、前記既知の菌類のRAPD(Random Amplified polymorphic DNA)解析により既知の菌類のDNAに特異的な塩基配列を決定し、前記未知の菌類についての前記特異的な塩基配列の有無の調査であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、既知の菌類のDNAに特異的な塩基配列の決定を、既知の菌類のRAPD 解析により得られた再現性の良いバンドについて塩基配列を決定し、この塩基配列に基づき既知の菌類のゲノムDNAにハイブリダイズするプライマーを設計し、当該プライマーを用いて行なうことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、既知の菌類のDNAに特異的な塩基配列の決定を、前記設計のプライマー数種および既知のプライマーの組み合わせによりPCRを実施することで、再現性の良い既知の菌に特異的なバンドを構成する塩基配列を検出することにより行なうことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、核酸分析が、前記特異的な塩基配列に一部又は全部が相補的な塩基配列を有するDNA断片をプローブとして、前記プローブと相補的な塩基配列が前記未知の菌類に存在するか否かの分析であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、前記未知の菌類についての前記特異的な塩基配列の有無の調査を、前記設計のプライマー数種および既知のプライマーの組み合わせによりPCRを実施することで、再現性の良い未知の菌類に特異的なバンドを構成する塩基配列を検出することにより行なうことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、前記相補的な塩基配列の分析を、前記プローブと前記未知の菌類に特異的なバンドを構成する塩基配列に対するハイブリダイゼーションにより行なうことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、菌類が、同種に属するか否かを識別することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、菌類が、同系統に属するか否かを識別することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、菌類が、菌根菌由来の菌類であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、菌根菌が、VA菌根菌であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、既知の菌類がVA菌根菌であり、前記プライマーの組み合わせによるPCRが配列表の配列番号1の塩基番号1-235で示される塩基配列部分のDNAを増幅することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、既知の菌類がVA菌根菌であり、前記プローブが配列表の配列番号2の塩基番号1-45で示される塩基配列からなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、アイソザイムが、酸性フォスファターゼ(ACP)、アルカリフォスファターゼ(AKP)、エステラーゼ(EST)、グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、へキソキナーゼ(HK)、ロイシンアミノぺプチダーゼ(LAP)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、アラニンアミノぺプチダーゼ(AAP)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AAT)、アコニターゼ(ACO)、アルコール脱水素酵素(ADH)、アミラーゼ(AMY)、ジアホラーゼ(DIA)、フマラーゼ(FM)、グルタミン酸脱水素酵素(GDH)、グリセリン酸脱水素酵素(G2D)、グルコキナーゼ(GK)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)、グルタチオンレダクターゼ(GR)、リンゴ酸酵素pH8.0(ME8)、リンゴ酸酵素pH7.0(ME7)、メナジオンレダクターゼ(MNR)、6-ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGD)、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)、ホスホグルコムターゼ(PGM)、パーオキシダーゼ(POD)、シキミ酸脱水素酵素(SKD)、ソルビトール脱水素酵素(SODH)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、及びテトラゾリウム酸化酵素(TZO)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、形態的特徴に基づき菌類を選別した後、前記アイソザイム分析及び核酸分析を行なうことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、形態的特徴が、接合胞子、配偶子、遊走子、遊走子のう、休眠胞子のう、厚膜のう、配偶子のう、胞子のう胞子、分生子、胞子のう、胞子のう柄、仮根、小胞子のう、菌糸、偽接合胞子、子のう果、子のう、子のう胞子、担子胞子、担子器、分生子柄、分生子柄束、分生子果、クランプ形成、隔壁、菌根からなる群から選択される少なくとも1種の大きさ及び/又は形態等の特徴である。
【0024】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、組織化学的特徴に基づき菌類を選別した後、前記アイソザイム分析及び核酸分析を行なうことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の菌類の識別方法の好ましい実施態様において、組織化学的特徴が、自家蛍光及び/又は糖鎖の存在であることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の菌類の識別方法において、対象となる菌類については特に限定されない。菌類は、モネラ、原生生物、植物、動物の4界とは、根本的に異なる独立の界に位置する。本発明の対象となる菌類としては、例えば、ツボカビ類、接合菌類、担子菌類、子のう菌類、不完全菌類などを挙げることができる。種々の菌類、例えば、接合菌類、子のう菌類、担子菌類等の中で、菌根菌と呼ばれるものがある。
【0027】
菌根とは、高等植物の根と土壌中の菌糸とが接触して共生的な関係を作っているとき、この両者の複合体をいう。一般に、菌類は、植物の根から有機物を得ており、一方、植物の根は、とかく不足する栄養塩類や水、そしてビタミン類を菌類から受けている。菌根菌は、主に、内生菌根菌と外生菌根菌を挙げることができる。内生菌根菌は、菌類が植物の根の細胞の内部に侵入して共生関係を作るものをいう。外生菌根菌は、植物細根の周囲に菌糸の層を形成し、さらに細根の皮層部の細胞間隙にも菌糸が侵入するが、植物の細胞の内部には入らないものをいう。本発明においては、内生菌根菌、外生菌根菌などの菌根菌を含め、広く菌類に適用できるものである。特に、貧栄養環境に生育する宿主植物へのリンの供給という観点から、菌根菌としては、VA菌根菌を挙げることができる。VA菌根菌は、接合菌類に属する菌である。VA菌根菌は、養分の枯渇した荒廃地の緑化のために、微生物資材として投与される代表的な菌類てあり、このような菌類の挙動を把握することが可能となれば、緑化に大きく貢献し得る。
【0028】
本発明の菌類の識別方法において、比較する一の菌類と他の一の菌類との種が、同種、異種であっても識別することができ、とりわけ、同種であっても系統の違いまで識別することができる。これは、後述するように、アイソザイム分析と核酸分析との組み合わせにより、菌類の種内における異系統間の識別精度を向上させることが可能となったことによるものである。
【0029】
本発明の菌類の識別方法は、アイソザイム分析及び核酸分析を利用する。
まず、アイソザイム分析の原理について説明する。アイソザイム法とは、個々のアイソザイムの電気泳動等による挙動の違いを利用して、菌類の系統を識別する方法をいう。また、アイソザイムとは、化学的に異なるタンパク質分子が同一の化学反応を触媒するような酵素群をいう。
【0030】
アイソザイム法について、具体的に説明すれば、たとえば、A→Bという生体反応がありこの反応を進める酵素をCとした場合、このCという酵素は、いくつかの種類が存在し、それぞれは異なる分子量を持つ。酵素はタンパク質であるため、電気泳動という手法を使用することで、タンパク質の分子サイズ、帯電状況の違いに基づき、Cを構成する個々の酵素を分別することができる。電気泳動は、通常ポリアクリルアミドゲルやアガロースゲルを担体とする。電気泳動におけるアイソザイムの移動の度合いは、アイソザイムの分子量と帯電状況に依存しており、この特徴に基づきタンパク質を分別する事ができる。
【0031】
電気泳動したこれら担体を特定の基質と染色剤を含む溶液につけて反応を進めると、特定の基質を触媒する酵素の存在する部分は染色され、バンドとして検出される。このようなバンド1本1本は同一の触媒活性を持つが分子量がことなる酵素である。このバンドパターンは、属、種、系統間で同一であったり、異なることがある。このようなパターンの違いにより、判別するのが、アイソザイム法である。
【0032】
アイソザイム法の手順としては、(1)菌類組織の無細胞抽出液の調製、(2)無細胞抽出液中のタンパク質(酵素)の濃度の測定、(3)電気泳動法、(4)各種タンパク質(酵素)の活性染色、(5)ザイモグラムによる解析を挙げることができる。
【0033】
菌類組織の無細胞抽出液の調製
まず、菌類の抽出液を採取することから始まる。サンプルとなる菌類は、凍結乾燥されたものでも良い。菌類のサンプルを適当な緩衝液中で希釈し、ホモジナイズする。ホモジナイズ後、0~25℃、好ましくは、0~10℃、8000~15000gで5~30分間遠心分離し、得られた上澄みを粗抽出液とすることができる。遠心分離の条件は、菌類の種類等によって、適宜変更することができ、上記範囲に限定されるものではない。
【0034】
抽出液中のタンパク質(酵素)の濃度の測定
タンパク質の濃度の測定は、常法により行なうことができ、例えば、UV法、Biuret法、Lowry法、BCA法、Bradford法等により行なうことができる。
【0035】
各種タンパク質の活性染色
染色法は、例えば、酸性フォスファターゼ(以下、ACPという。)、アルカリフォスファターゼ(以下、AKPという。)、エステラーゼ(以下、ESTという。)、グルタミン酸-オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(以下、GOTという。)、へキソキナーゼ(以下、HKという。)、ロイシンアミノぺプチダーゼ(以下、LAPという。)、リンゴ酸脱水素酵素(以下、MDHという。)、アラニンアミノぺプチダーゼ(以下、AAPという。)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下、AATという。)、アコニターゼ(以下、ACOという。)、アルコール脱水素酵素(以下、ADHという。)、アミラーゼ(以下、AMYという。)、ジアホラーゼ(以下、DIAという。)、フマラーゼ(以下、FMという。)、グルタミン酸脱水素酵素(以下、GDHという。)、グリセリン酸脱水素酵素(以下、G2Dという。)、グルコキナーゼ(以下、GKという。)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(以下、G6PDという。)、グルタチオンレダクターゼ(以下、GRという。)、リンゴ酸酵素pH8.0(以下、ME8という。)、リンゴ酸酵素pH7.0(以下、ME7という。)、メナジオンレダクターゼ(以下、MNRという。)、6-ホスホグルコン酸脱水素酵素(以下、6PGDという。)、ホスホグルコースイソメラーゼ(以下、PGIという。)、ホスホグルコムターゼ(以下、PGMという。)、パーオキシダーゼ(以下、PODという。)、シキミ酸脱水素酵素(以下、SKDという。)、ソルビトール脱水素酵素(以下、SODHという。)、トリオースリン酸イソメラーゼ(以下、TPIという。)、及びテトラゾリウム酸化酵素(以下、TZOという。)等の酵素、当該酵素に対する基質、酵素と基質により生じた反応生成物に対する染料を利用する方法である。
【0036】
すなわち、かかる染色法は、ある特定の酵素の電気泳動におけるバンド位置を知るのに、酵素と基質により生じた生成物の存在の有無を利用したものである。酵素と基質との反応により生成物を生じてもゲルによって固定化されているため、生成物の位置は、酵素の位置と一致する。生成物の位置は、染料によって染色されるので、生成物の位置、すなわち、酵素のバンドパターンを知ることができるのである。
【0037】
ザイモグラムの解析
電気泳動によって分離された特定の酵素の位置は、上述の染色法によってバンドパターンによって明らかとされる。ザイモグラムの解析は、各バンドのRf値((電気泳動の始点から各バンドの中心までの距離)/(電気泳動の始点からフロントラインまでの距離))を算出して行なうことができる。
【0038】
核酸分析
次に、核酸分析について説明する。核酸分析は、アイソザイム分析と同様に、種の特異性を把握するのに有効な手段である。個々の種によって特異的なアイソザイムが存在するのと同様に、特異的な塩基配列が存在するからである。
【0039】
菌類に特有の塩基配列を見出すにあたり、例えば、RFLP、PCR、RAPD法などを用いることができる。
【0040】
多様なPCR増幅産物を得ることが可能であるという観点から、菌類特有の塩基配列は、RAPD法により検出するのが好ましい。RAPD法は、通常のPCRと異なり、PCR反応条件、合成プライマーの塩基配列や長さなどを任意に変えることによって、得られる複数の部位から多様なPCR増幅産物のDNA多型(以下、RAPDという。)を利用する方法である。DNAの多型は、得られたPCR増幅産物を電気泳動にかけることによるバンドパターンにより把握することができる。
【0041】
具体的には、既知の菌類のRAPD(Random Amplified polymorphic DNA)解析により既知の菌類の一部の塩基配列を決定し、各種プライマーを設計する。これらプライマー及び既知のプライマー等を組み合わせてPCRを実施することにより、前記既知の菌のDNAに特異的な塩基配列を決定し、前記未知の菌類について、前記特異的な塩基配列の有無を調査することにより、既知の菌類と、未知の菌類とが同種か否か、さらに同系統に属するか否かについても知ることができる。
【0042】
RAPD法を利用して特異的な塩基配列を求めるには、各種のプライマーを用いて、菌類のゲノムDNAをランダムに増幅させ、電気泳動をかけた場合に安定したバンドを探すことにより行なうことができる。安定したバンドの再現性を確認して精度を上げることもできる。すなわち、安定なバンドが得られた場合、得られたバンドについて塩基配列を決定し、その菌類により特異的な配列を見出すことができる。
【0043】
また、安定なバンドの塩基配列に基づき種々のプライマーを設計し、これらプライマーおよび既知のプライマー等を組み合わせてPCRを実施することにより、さらに安定なバンドを見つけ出すこともできる。
【0044】
さらに、特異的な塩基配列を特定できれば、当該特異的塩基配列に一部又は全部が相補的な塩基配列を有するプローブを用いて、菌類の識別を行なうこともできる。すなわち、未知の菌類の核酸中に、既知の菌類に特異的な塩基配列が存在するか否かを調べ、特異的な塩基配列を有していれば、既知の菌類と同種、又は同系統に属する可能性が高いと判断することが可能である。逆に、特異的な配列を有していなければ、当該既知の菌類と異種、又は異系統に属する可能性が高いと判断することができる。
【0045】
当該プローブを用いれば、検査対象の菌類の核酸由来のバンドが不明瞭な場合であっても、当該プローブと検査対象の菌類の核酸とのハイブリダイゼーションを行なうことにより、菌類の識別を行なうことができる。
【0046】
なお、本発明の菌類の識別方法においては、上記のアイソザイム分析及び核酸分析により直接的に識別することができるが、以下に述べるような形態的特徴及び/又は組織化学的特徴による選別方法を導入することにより、選別の効率化等を上げることができる。
【0047】
形態的特徴による選別方法とは、菌糸、胞子、及び繁殖器官等の形態的特徴に基づく方法である。具体的に、胞子等の形態的特徴に基づく方法とは、接合胞子、配偶子、遊走子、遊走子のう、休眠胞子のう、厚膜のう、配偶子のう、胞子のう胞子、分生子、胞子のう、胞子のう柄、仮根、小胞子のう、菌糸、偽接合胞子、子のう果、子のう、子のう胞子、担子胞子、担子器、分生子柄、分生子柄束、分生子果、クランプ形成、隔壁、菌根からなる群から選択される少なくとも1種の大きさ及び/又は形態等を比較して、菌類の同定、分類を行なう方法である。このような形態的特徴によって予めおおまかに選別することで、時間、コストの面で有利とすることができる。
【0048】
菌類の種類によって、さらに説明すると以下のようになる。
菌類がツボカビ類の場合、それらの菌類は、接合胞子、遊走子、配偶子、遊走子のう、休眠胞子のう、厚膜のう等を有するので、これらの胞子、器官の有無、形態、及び/又は大きさ等に基づき識別可能である。
【0049】
菌類が、接合菌類の場合、それらの菌類は、接合胞子、配偶子のう、胞子のう胞子、胞子のう、胞子のう柄、仮根、分生子、小胞子のう、菌糸、偽接合胞子等を有するので、これらの胞子、器官の有無、形態、及び/又は大きさ等に基づき識別可能である。
【0050】
菌類が、子のう菌類の場合、それらの菌類は、子のう胞子、子のう、分生子、菌糸、子のう果等を有するので、これらの胞子、器官の有無、形態、及び/又は大きさ等に基づき識別可能である。
【0051】
菌類が、担子菌類の場合、それらの菌類は、担子胞子、担子器、分生子、分生子柄、担子器果、クランプ等を有するので、これらの胞子、器官の有無、形態、及び/又は大きさ等に基づき識別可能である。
【0052】
菌類が、不完全菌類の場合、それらの菌類は、分生子、分生子柄、分生子柄束、分生子果等を有するので、これらの胞子、器官の有無、形態、及び/又は大きさ等に基づき識別可能である。
【0053】
また、ツボカビ類、接合菌類は、隔壁を有さず、子のう菌類、担子菌類、不完全菌類は、隔壁を有するので、隔壁の有無によっても菌類を識別可能である。上述の記載に限定されず、従来から行なわれている形態的特徴に基づく識別方法もここで組み込んで使用できることは言うまでもない。
【0054】
また、組織化学的特徴による選別方法とは、例えば、自家蛍光や糖類の定性的分析などによる方法を挙げることができる。この組織化学的特徴による方法は、菌糸、菌糸体、胞子、胞子内容物の性質を利用するので、例えば、採取した胞子の各部が欠損していて、形態的特徴に基づいた選別をできない場合でも、行なうことができるという利点がある。
【0055】
まず、自家蛍光を利用した方法について説明する。自家蛍光(Autofluorescence)とは、特定の励起光をある物質に照射すると、物質の照射部分の成分が特定の波長の蛍光を発する現象をいう。自家蛍光を利用した菌類の識別方法とは、特定の励起光を菌類に照射し、発する蛍光の違いを利用して菌類の種類、系統等を判別する方法である。
【0056】
具体的には、菌類組織の一部をスライドグラス上に乗せ、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline;0.12M NaCl、0.0027M KCl、10mM リン酸緩衝液、pH7.5、以下PBSという。) でマウントし、これを蛍光顕微鏡(Nikon, OPTIPHOTO)で観察することにより行なうことができる。励起光およびフィルターのセットは、次のセットを使用することができるが、特に限定されるものではなく、菌類の種類、性質、顕微鏡の機種等の条件によって適宜変更することができる。
【0057】
例えば、1)UV 励起: 励起フィルター EX330-380、ダイクロイックミラー DM400、吸収フィルター BA420、2)V励起 : EX380-425、 DM430、BA450、3)B2励起:EX450-490、DM510、BA520などを使用することができる。
【0058】
自家蛍光があれば、サンプルは青白~青(UV)、緑~青緑(V)、黄~黄土~褐色(B2)に発色するので、発色の相違を利用して菌類の判別を行なうことができる。
【0059】
また、本発明においては、上述のアイソザイム分析及び核酸分析に加えて、糖類の定性的分析を行ない、更に菌類の識別効率を上げることができる。
【0060】
糖類の定性的分析による方法とは、糖の存在の有無を確認することを利用した方法である。この方法では、菌類菌糸や植物組織などの細胞壁表層を構成する特定の糖鎖に特異的に結合する物質(糖鎖認識プローブ)を用いて、結合の有無により特定の糖鎖の存在を確認することができる。
【0061】
糖鎖認識プローブとして1以上の蛍光色素および1以上のレクチン等を使用することができる。前者の蛍光色素としては、Calcofluor white M2R、Aniline blueを挙げることができる。好ましくは、Calcofluor white M2R、Aniline blue等を挙げることができる。
【0062】
Calcofluor white M2R、Aniline blueは、それぞれβ-1,4-glucan、β-1,3-glucanに特異的に結合する。Calcofluor white M2R溶液で処理した菌糸や菌根化したルートチップを蛍光顕微鏡を用いてUV 励起下(例えば、EX330-380, DM400、BA420)で観察すると、結合部分は青色の蛍光を示す。一方、Aniline blue溶液で処理したサンプルを蛍光顕微鏡を用いてV励起下(EX380-425, DM430、BA450)で観察すると、結合部分は緑色の蛍光を示す。これらの蛍光発光により特定糖鎖の存在を確認することができる。
【0063】
また、後者のレクチンとは、特定の糖鎖構造を認識するタンパク質であり、様々な種類のレクチンが動物、植物、微生物より単離、精製され、その糖結合特異性が判明している。Fluorescein isothiocyanate (FITC)という蛍光色素を特定糖鎖を認識するレクチンに結合させたものを、分析する試料に添加すると、レクチンが試料表層の特定糖鎖の存在する部分に結合する。この試料を蛍光顕微鏡下(B2励起:EX450-490, DM510, BA520 )で観察すると、レクチンが結合した部分はFITCに由来する緑色の蛍光を示し、その部分に特定糖鎖が存在することがわかる。このような性質を利用して、糖鎖の存在確認を行なうことができる。
【0064】
例えば、レクチンとして、Con A, Concanavalin A (from Canavalia ensiformis); WGA, wheat germ agglutinin (from Triticum vulgaris); LTA, lotus agglutinin (from Tetragonolobus purpureas); SBA, soy bean agglutinin (from Glycine max); PNA, peanut agglutinin (from Arachis hypogaea)を使用することができる。これらレクチンは以下の糖鎖に特異的に結合する。すなわち、Con Aは、 methyl-α-D-mannnopyranoside、D-mannose等の糖鎖に、WGAは、N-acetylneuraminic acid, N,N'-diacetylchitobiose等の糖鎖に、LTAは、L-fucose等の糖鎖に、SBAは、N-acetyl-D-galactosamine, D-galactose等の糖鎖に、PNAは、D-galactose, α-lactose等の糖鎖にそれぞれ結合する。
【0065】
これらの糖鎖の定性分析を予め行なうことによって、目的とする菌類を検出する際に、ある程度選別することができ、検出の効率を向上させることが可能となる。
【0066】
【実施例】
ここで、本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0067】
実施例1
菌株
本実施例においては、菌類として、VA菌根菌胞子を用いて特定系統株の検出を行なった。具体的に、既知の菌類として、VA菌根菌であるG. margarita MAFF520054株を用いた。さらに、表1に掲げるその他のVA菌根菌を供試菌として使用した。
【0068】
【表1】
JP0003694739B2_000002t.gif
【0069】
VA菌根菌胞子の増殖
供試VA菌根菌は、基本的に白クローバー、バヒアグラス、タマネギ等を宿主として増殖させた。滅菌処理した培土(赤玉土、白川砂、黒ボク土等を含む)に無菌播種し発芽した宿主植物苗を植え、あらかじめ表面殺菌したVA菌根菌胞子を苗の根の先端部分に置き、培土を載せた。グロスキャビネット内で45μM/m2s (3000lux以上)の光照射下、25℃で約3ヶ月栽培した。栽培終了時に、ポット内の培土を回収し、培土中の増殖したVA菌根菌胞子を、デカンテーション-ふるい分け法により収集した。得られた胞子は蒸留水に入れ超音波処理を数秒行い、胞子を洗浄した。
【0070】
粗酵素液の調製
VA菌根菌胞子をPBSで洗浄し、エッペンドルフチューブのふたのウェル内に入れた。これに、タンパク質抽出バッファー(10mM Tris-HCl、10mM NaHCO3、10mM MgCl2・6H2O、0.1mM EDTA-2Na 、10mM β-メルカプトエタノール、0.1% Triton X-100、pH7に調整、使用前に4℃で保存。)を加え、氷冷しながら精密ピンセットで胞子を1個づつ潰した。なお、G. margaritaの場合、75~100個の胞子をウェルにいれ、胞子15個に対し10μlの割合で抽出バッファーを添加した。抽出液はエッペンドルフチューブ内に回収し、4℃、11,700rpmで20分間遠心分離した。得られた上清を10μlづつエッペンドルフチューブに分注し、-70℃で凍結保存した。
【0071】
タンパク質濃度の測定
粗酵素液中のタンパク質濃度はBradford法に基づいたBio-Rad プロテインアセイキットII(Cat. No. 500-0002)を用いて測定した。Tris-HCl (0.05M, pH8.5)を用いて粗酵素液を適宜希釈した。この希釈液800μlに染色液(Bio-Rad, Cat. No. 500-0006)200μlを添加し、よく混合した後、25℃で5分間インキュベートした。この試料の595nmにおける吸光度を測定し、牛血清アルブミン(BSA)を標準タンパク質として作成した検量線を基にタンパク質濃度を測定した。
【0072】
電気泳動
泳動装置はミニプロティアン3セル(Bio-Rad, No.165-3302)を用いた。また、泳動用のゲルとして、7.5%ポリアクリルアミドゲル(Bio-RadレディーゲルJ, No.161-J311)、泳動バッファーとしてTris-Glycine バッファー(Bio-Rad、No.161-0734)を使用した。また、サンプルである粗酵素液は、サンプルバッファー(Bio-Rad native サンプルバッファー、No.161-0738)と1:1(w/w)の割合で良く混合した後、それぞれのウェルに20μlずつ分注した。泳動は、4℃、200Vの条件下で、ブロモフェノールブルーのフロントマーカーが所定の位置に移動するまで行なった(泳動時間にして約1時間)。泳動終了後直ちに活性染色に供した。
【0073】
各種タンパク質(酵素)の活性染色法
各種アイソザイムの活性染色は、下記の染色法を用いて25℃でインキュベートした。
【0074】
(i)酸性フォスファターゼ(Acid phosphatase;ACP)
0.15M 酢酸-NaOHバッファー(pH5.0)50mlにFast blue RR塩50mg を溶解し、ろ過により不溶物を除いた。この溶液に、基質としてα-ナフチルリン酸・2Naを50mg溶解し、ゲルを染色した。染色液が濁ったら同量の染色液と交換した。
【0075】
(ii)アルカリフォスファターゼ(Alkaline phosphatase;AKP)
0.05M Tris-NaOH-HClバッファー(pH8.7)50mlに、0.5M MgCl2 300μl、および0.25M MnCl2 600μlを加え、Fast blue RR 塩50mgを溶解した。不溶物をろ過により除去した後、α-ナフチルリン酸・2Na を50mgを溶解し、これを染色に使用した。染色液が濁った場合、同量の新しい染色液と交換した。
【0076】
(iii)エステラーゼ(Esterase;EST)
0.05M Tris-HClバッファー(pH7.1)50mlにFast blue RR塩50mgを溶解し、ろ過により不溶物を除去した。染色直前に1%α-ナフチル酢酸および1%β-ナフチル酢酸(ともに50%アセトン溶液に溶解)をそれぞれ1.5ml 加えた。この染色液に泳動の終了したゲルを浸し、染色した。染色液に濁りが見られたら新しい染色液50mlと交換し、さらに染色を行った。
【0077】
(iv)グルタミン酸-オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(Glutamate-oxaloacetate transaminase;GOT)
0.2M Tris-HClバッファー(0.04%EDTAを含む、pH8.0)30mlに、L-アスパラギン酸100mg、10% 2-ケトグルタル酸溶液1ml、および0.33%ピリドキサルリン酸溶液1.5mlを加え、1M Tris溶液を用いてpHを8.0に調整した。この溶液に、泳動の終了したゲルを25℃30分間浸漬した。20mlのTris-HClバッファー(0.04%EDTAを含む)にFast blue BB塩 100mgを溶解し、不溶物をろ過した溶液を調製し、先の溶液に加え、染色を行った。
【0078】
(v)グルコース-6-リン酸脱水素酵素(Glucose-6-Phosphate dehydrogenase;G6PD)
0.2M Tris-HClバッファー(0.04%EDTAを含む、pH8.0)50mlに、0.5% MgCl2溶液 1ml、0.67% NADP溶液 1ml、0.5% MTT tetrazorium 1ml、および1.25% グルコース-6-リン酸溶液1mlを加えて良く攪拌した。使用直前に0.5% PMS(Phenazine
methosulphate)溶液200μlを加え、染色に使用した。
(vi)ヘキソキナーゼ(Hexokinase;HK)
【0079】
0.2M Tris-HClバッファー(0.04%EDTAを含む、pH8.0) 50mlに、Glucose 0.5gを溶解し、さらにこれに0.5M MgCl2溶液 1ml、10% ATP溶液 1ml、0.67% NADP溶液 1ml、1% NAD溶液 1mlを加え、良く攪拌した。使用直前にグルコース-6-リン酸脱水素酵素 17unit、0.5% MTT tetrazolium溶液 1ml、および0.5% PMS溶液 200μlを加えて、染色を行った。
【0080】
(vii)ロイシンアミノペプチダーゼ(Leucine aminopeptidase;LAP)
0.2M Tris-Malateバッファー(pH5.5)50mlに、0.5%MgCl2溶液 5mlおよびL-Leucyl-β-naphthylamide 20mgを加えた。あらかじめTris-Malateバッファー5mlにFast black K塩 30mgを溶解させておいた溶液を、使用直前に加え、染色した。
【0081】
(viii)リンゴ酸脱水素酵素(Malate dehydrogenase;MDH)
0.05M Tris-HClバッファー(pH7.0)50mlに、1M DL-リンゴ酸溶液(0.98M炭酸ナトリウム溶液に溶解した)5ml、2.5%NAD溶液1ml、および1%NBT(Nitro Blue Tetrazolium)溶液1mlをそれぞれ加えて良く攪拌した。染色直前にこの溶液に0.5%PMS溶液 200μlを加え、染色を行った。
【0082】
ザイモグラムの解析
ノギスを用いて各バンドの泳動距離と幅を測定して各バンドの位置を記録した。さらに、フロントマーカーであるBPBの移動距離から、各バンドのRf値を以下の数式により算出した。
Rf=(泳動の始点から各バンドの中央までの距離)/(泳動の始点からフロントラインまでの距離)
【0083】
バンドの濃さは目視により3段階で評価した。各泳動図は、染色後のゲルをライトボックス上に設置して撮影した写真を基に作成した。
【0084】
アイソザイム分析の結果
G. margarita MAFF520054胞子の無細胞抽出液を用いて、8つの酵素系(EST、ACP、AKP、MDH、G6PD、GOT、HK、LAP)についてアイソザイム分析を実施した。アイソザイム分析から得られたザイモグラムを図1に示す。
【0085】
その結果、ACP以外の酵素系で薄いバンドが得られ、識別はかろうじて可能であった。本実施例においては、1酵素の分析に約15個の胞子を使用したことになるが、この胞子数で回収できる酵素の絶対量は非常に少ないため、薄いバンドしか得られなかった。よりシャープなバンドを得るには、約20個~数十個の胞子が必要であることが判明した。VA菌根菌の単一胞子レベルでのアイソザイム分析による識別には、単一胞子を宿主植物に接種しポット栽培等を行うことで、遺伝的に同一の胞子(クローン)を多数増殖させる作業をあらかじめ行い、このようにして得られた多数のクローンを用いて無細胞抽出液を調製し、アイソザイム分析に使用する必要があることが判明した。
【0086】
核酸分析
次に、核酸分析を行なった。
既知の菌として、VA菌根菌、Gigaspora margarita MAFF520054株を用いた。まず、G.margarita MAFF520054株のITS領域および5.8SrDNAの塩基配列を決定し、既従の配列とともに分子系統樹を作成し、系統間で系統樹上で何らかの分布の特異性があるかどうかを検討した。図2は、Gigaspora 属の5.8S rDNA及びITS領域の塩基配列に基づく分子系統樹を示す。図2中、mは、G. margaritaを、rは、G. roseaを、1は、単一胞子クローンを、10は、10胞子クローンを、C,A,Kは、それぞれG. margarita MAFF520054、 G. margarita Ni-A、 G. margarita MAFF520052を示す。
【0087】
次に、G. margarita MAFF520054株のゲノムDNAに特異的な塩基配列を検出することを目的として、Scutellospora属で見いだされた反復配列を3’-末端に持つ市販のランダムプライマーを用いてRAPD解析すると共に、再現性の高いバンドの塩基配列を決定して数種の新規なプライマーを設計した。さらに、既往の文献に記載のある反復配列やミニサテライトなどのプライマーや同プライマーの塩基配列を基に新たに設計したプライマーを用いて、PCRを実施した。以上のプライマーより2つのプライマーを選び、PCRを行い、G. margarita MAFF520054株に特異的なバンドを検出するプライマーセットを検索した。具体的には、以下の通り行なった。
【0088】
プライマー639Rの設計とプライマーセットM13/639Rについて
(1)Scutellospora の反復配列を3'-末端に持つ市販の12塩基ランダムプライマーを選定し、単一プライマーでRAPDを行った。このうち、比較的再現性の良いバンドを抽出し、それらの塩基配列を決定した。このうち、500bp以上の配列6本についてそれぞれの内部でセンス/アンチセンスプライマーを設計した(639F/R, 714F/R, 621F/R, 641F/R, 581F/R, 1014F/R)。621F/Rでは、 G.margarita MAFF520054株からは増幅産物は得られなかった。他のプライマーセットは、 G.margarita MAFF520054株特異的ではなかったが、PCR産物の高い再現性からG.margarita各系統のゲノム内にここで得られた配列が存在することが期待された。
【0089】
(2)既往の文献にある各種プライマーのうち、M13ミニサテライトプライマーと(GACA)4プライマーは、G. margarita MAFF520054株から、総合的なRAPDパターンは変動するものの、比較的再現性の良いメジャーバンドを生じた。また、前者は既往の文献で既にG.margaritaに対して用いられた経緯がある。これらのプライマーを単独に用いても系統間の識別はできなかったが、G. margarita各系統のゲノム内にここで得られた配列が存在することが期待された。
(3)この時点までに、M13ミニサテライト、(GACA)4、ITS1, ITS4及び(1)で設計した10種のプライマーは、G. margaritaゲノムに存在する配列に対応することが期待されたので、これらを2つずつ組み合わせてPCRを行った。その結果、M13と639Rの組み合わせの時にのみ、235bpのG. margarita MAFF520054株に特異的なバンドが形成された(図3)。
【0090】
実施例2
次に、核酸分析を、既知の菌類に特異的な塩基配列に一部又は全部が相補的な塩基配列を有するDNA断片をプローブとして、未知の菌類について相補的な塩基配列を検出して行なった。
【0091】
実施例1で得られた235bpの特異的な塩基配列をもとにして、プローブ(230PBC)を設計した。
【0092】
具体的には、M13/639RによるPCR産物のDNA配列を決定し、DDBJ/EMBL/GenBankデータベース上でFASTAプログラムを用いて相同性検索を行った。この結果、比較的広い範囲で既知のDNA配列と相同性が低かった領域(45塩基)を選び出し、プローブ領域とした。この配列を人工的に合成し(BEX株式会社)、ECL 3'オリゴラベリングキット(アマシャムファルマシア株式会社)あるいはDIG オリゴヌクレオチドテーリングキット(ロシュダイアグノスティック)で標識してプローブとした(図4)。
【0093】
G.margarita NAFF520054、G.margarita Ni-A、G.margarita NAFF520052、G.margarita INVAM及びG. margarita ネパール株の胞子から抽出したDNAを鋳型として、M13/639Rプライマーセットを用いたPCRと230PBCによるプロービングを行った。また、G. margarita MAFF520054株と同一のセラキンコン(G. margarita sp. CK、セントラル硝子社製)の胞子DNAについても、PCRとプロービングを実施した。その結果、G.margarita NAFF520054株及びセラキンコン(G. margarita sp. CK)胞子の235bpのバンドにハイブリダイズした(図5、6)。なお、 G.margarita NAFF520054は、セントラル硝子(株)の製造するVA菌根菌接種資材中に含まれる菌株であり、1992年に畜産草地試験場に分譲され、その後ポット培養法により継代培養したラボラトリーストレインである。 G.margarita NAFF520054と同資材中に含まれるG.margarita胞子は同一系統であるが、資材として緑化現場に導入されたものは便宜上G. margarita sp. CK株として、 G.margarita NAFF520054と区別して扱う。今回の実施例からも明らかなように、8年間個別に世代交代を繰り返したMAFF520054とCK株の両方について235bpのバンドに230PBCはハイブリダイズしたことから、実用上、この塩基配列は充分な安定性があることが判明した。
【0094】
したがって、当該プローブを用いれば、 G.margarita NAFF520054株およびsp. CK株を特異的に検出することが可能であり、たとえPCR後の電気泳動により検出されるバンドが不鮮明な場合であっても、特異的に標的とする菌類を容易に識別することができることが分かる。
【0095】
実施例3
次に、アイソザイム分析及び核酸分析を行なう前に、形態的特徴や組織化学的特徴によって選別した後に、菌類の識別を行なった。
【0096】
形態的特徴
供試菌株として、実施例1と同様に表1に記載のものを用いた。まず、雲仙普賢岳火砕流跡地試験区にコロナイズしたVA菌根菌及び接種VA菌根菌の形態的特徴を比較した。
【0097】
土着VA菌根菌胞子を採取するために、雲仙普賢岳中尾川流域の治山施工地において、試験区を設置した。試験区内に侵入し生育した植物を任意に10個体選び、根圏土壌に含まれるVA菌根菌胞子の同定、及び採取した植物根のVA菌根菌感染に関する分析を実施した。各VA菌根菌胞子を任意に選び、各胞子の形態的特徴を実体顕微鏡下で観察した。
【0098】
採取土壌より検出されたVA菌根菌胞子を形態的特徴に基づき、タイプ分けしたところ、5つのタイプに分類された。これらのVA菌根菌は、火砕流跡地周囲から風による飛散や雨水の流入などにより侵入し、宿主植物に感染、増殖したと考えられる。検出された胞子は、AcaulosporaceaeおよびGlomaceaeのいずれかに分類され、その直径は200μm以下であった。
【0099】
一般に、Gigasporaceaeに属する胞子は、GlomaceaeやAcaulosporaceaeの胞子に比べて大きく、その直径は300μm以上といわれている(図7)。図7は、各種VA菌根菌胞子の形態的特徴を示す。図7中、aはGigaspora margarita MAFF520054、bはGigaspora margarita MAFF520052、cはGigaspora margarita Ni-A、dはGlomus intraradices、eはAcaulospora longula MAFF520060を示す。
【0100】
本研究で標的としているG. margarita MAFF520054及び同種のNAFF520052およびNi-Aの胞子の平均直径は、350μmを超えていた。胞子の色は、3株ともWhite-pale yallowであり、形態は球状であり、大きさを除いた形態的特徴に特に大きな違いはなかった(図7a-c)。
【0101】
このような形態的特徴による選別は、G. margarita MAFF520054株と明らかに異なる形態の菌を、検出対象から効率的に除外することができ、アイソザイム分析、核酸分析の回数をより少なくし、検出時間を短縮できることが判明した。
【0102】
組織化学的特徴
次に、組織化学的特徴についても、同様に調べた。供試菌株として、実施例1と同様に表1に記載のものを用いた。
【0103】
G. margaritaを含む代表的なGlomales目のVA菌根菌数種の胞子壁およびSubtending hyphaeの表層の糖鎖構成を糖鎖認識プローブを用いて定性的に分析し、加えて自家蛍光についても分析を行なった。以上の分析により、G. margarita MAFF520054株に特異的な組織化学的マーカーを検索するだけでなく、供試VA菌根菌の識別における有効な組織化学的特徴の有無についても併せて検証した。
【0104】
VA菌根菌の胞子壁およびSubtending hyphaeの表層の構成糖鎖の定性的分析には、6種の糖鎖認識プローブを使用し、蛍光顕微鏡(OLYMPUS BX-FLA)を用いて結合に伴う蛍光の発生を観察した。自家蛍光は、U励起(励起フィルター、BP330-385;ダイクロイックミラー、DM400;吸収フィルター、BA420)、IB励起(BP400-410、DM455、BA455)及びIG励起(BP460-490、DM505、BA515IF)のもとで観察した。
【0105】
図8は、Gigaspora margarita MAFF520054の胞子の自家蛍光を示す図である。図8中、aは透過光を、bはU励起、cはIB励起、dはIG励起を示す。また、Cは、胞子内容物を、Sは、subtending hyphaeを、Wは、胞子壁を示す。組織化学的特徴を利用した特異的検出の対象であるG. margarita MAFF520054株の胞子壁は、U,IB及びIG励起下においていずれも強い自家蛍光を示した(図8)。さらに、Subtending hyphae及び胞子内容物も同様に自家蛍光を示した。同様の現象は、他のG. margarita2株、G. rosea及び同科のScuttellospora cerradensisにおいても認められた(図9)。図9は、Gigasporaceaeの胞子の自家蛍光を示す。図9中、a-dについては、Gigaspora roseaMAFF520062の透過光(a)、U励起(b)、IB励起(c)、IG励起(d)を示す。e‐fについては、Gigaspora margarita MAFF520052の透過光(e)、U励起(f)を示す。g-hについては、Scutellospora cerradensisMAFF520056の透過光(g)、U励起(h)を示す。また、Cは胞子内容物を、Sはsubtending hyphaeを、Wは胞子壁を、それぞれ示す。
【0106】
これに対して、Glomaceae及びAcaulosporaceaeでは、胞子壁及びsubtending hyphaeに自家蛍光は認めれらたが、胞子内容物には認められなかった(図10)。図10は、Glomaceae 及びAcaulosporaceaeの胞子の自家蛍光を示す。図10中、a-dについては、Glomus clarum-like MAFF520061の透過光(a)、U励起(b)、IB励起(c)、IG励起(d)を示す。e‐hについては、Glomus intradicesの透過光(e)、U励起(f)、IB励起(g)、IG励起(h)を示す。i-jについては、Glomus etunicatum MAFF520053の透過光(i)、U励起(j)を示す。k-lについては、Acaulospora longula MAFF520060の透過光(i)、U励起(j)を示す。また、Cは胞子内容物を、Sはsubtending hyphaeを、Wは胞子壁を、それぞれ示す。
【0107】
この結果は、今回供試したGlomales目9株に限定されるが、胞子内容物の自家蛍光は標的VA菌根菌を含むGigasporaceaeとGlomaceaeおよびAcaulosporaceaeとを区別する有効な指標として利用できることを示唆した。
【0108】
一方、糖鎖認識プローブであるCWとFITC結合レクチンの胞子壁及びsubtending hyphaeに対する反応性であるが、CWは、G. margarita MAFF520054およびその他のGigasporaceae の胞子壁に対して結合しなかった。結果を図11に示す。図11は、G. margarita MAFF520054の胞子壁及びsubtending hyphaeに対するCW及びWGAの反応を示す図である。図11中、aは、CWの反応(U励起)を示す。subtending hyphaeにCWが結合し、青色の蛍光を発した(矢印)。bは、aと同じ視野における透過光での観察を示す。cは、WGAの反応(IB励起)を示す。subtending hyphae に対してWGAが結合し、緑色の蛍光を発した(矢印)。一方、WGAは胞子壁表層には反応せず、自家蛍光を示すのみであった。さらに、他の4種のFITC結合レクチンもGigasporaceaeの胞子壁表層に対して反応性を示さなかった。一方、G. margarita MAFF520054、その他の2系統、およびG. rosea MAFF520062のsuntending hyphaeに対して、CWおよびWGAは結合した(図11)。
【0109】
また、図12は、Gigaspora rosea MAFF520062の胞子壁及びsubtending hyphaeに対するConA の反応を示す。図12中、aは、Con Aの結合に伴う緑色蛍光を示す。Suntenging hyphaeの周縁部に緑色粒子(矢印)が付着していた(IB励起)。bは、aと同じ視野における透過光での観察を示す。G. roseaのsubtending hyphaeでは、ConAの結合による粒子状の緑色蛍光が菌糸周縁部に認められた(図12)。
【0110】
また、図13はGlomaceaeの胞子壁及びsubtending hyphaeに対するCW及びFITC結合レクチンの反応を示す。a‐bは、Glomus clarum-like MAFF520061である。aは、胞子壁及びsubtending hyphae(矢印)に対するCWの反応を示す。bは、胞子壁に対するWGAの反応を示す。胞子壁の第一層にWGAが結合し、緑色の蛍光を発していた(矢印)。c-dは、Glomus intraradicesである。cは、胞子壁及びsubtending hyphae(矢印)に対するCWの反応を示す。菌糸周縁部に付着している顆粒状の物質(矢印)が緑色の蛍光を発していた。Glomaceae 3株では、CWは胞子壁およびSubtending hyphaeに対して結合した(図13a、c)。また、WGAは、G. clarum-like MAFF520061の胞子壁にのみ結合した(図13b)。各種FITCレクチンのsubtending hyphaeに対する反応性は、種によって異なっており、その結合は、菌糸同縁部に限定されていた(図13d)。
【0111】
今回の分析では、使用した6種の糖鎖認識プローブにより、標的VA菌根菌G. margarita MAFF520054の特異的マーカーを見つけだすことはできなかった。しかし、CWやWGAの胞子壁に対する反応性は、供試菌の範囲に限定されるが、科のレベルでの区別化や特定の種の識別に利用可能であることが判明した。
【0112】
そして、このような菌類に特有の組織化学的特徴を利用することにより、菌類を大まかに選別することができる否かを確認した。
【0113】
具体的に、上述の組織化学的特徴による選別を行なった後に、実施例1と同様のアイソザイム分析及び核酸分析を行なった。その結果、明らかに異なる組織化学的特徴を有する菌類を、検出対象から効率的に除外することができた。
【0114】
組織化学的特徴による選別を行なえば、対象となる菌類を絞ることができ、アイソザイム分析、核酸分析の回数をより少なくでき、検出時間を短縮できることが判明した。
【0115】
実施例4
次に、実際に、雲仙普賢岳の緑化施工区に既に微生物資材として投与されているVA菌根菌の挙動を調べた。すなわち、施工区に生育している植物に投与したVA菌根菌が感染し定着しているかについて調べた。
【0116】
1997年の施工時に植物種子とともにG. margarita sp. CK株が導入された雲仙普賢岳水無川火砕流跡地において、2001年3月に植物体を採取し、根圏土壌からVA菌根菌胞子を抽出した。植物個体当たりの胞子数を計数するとともに、形態的特徴、組織化学的特徴および核酸分析によりG. margarita sp. CK株の選別と識別を試みた。
【0117】
緑化施工区から採取したウィーピングラブグラス10個体のうち2個体の根圏土壌から、形態的特徴および組織化学的特徴に基づきGigaspora様と思われる胞子が選別された(表2、図14)。図14中、AはGigaspora様胞子を、Bは同胞子の直径の頻度分布を、CはGigaspora様以外の胞子を、Dは同胞子の直径の頻度分布を示す。図14のAにおいて、Gifasporaceaeに特徴的なbulbous suspensor (矢印で示す)が認められる。そのうち1個体のWLGから24個のGigaspora様胞子が採取され、そのうち10胞子をPCRとプロービングに供した。DNAが得られた8胞子に関しては、230PBCとハイブリする235bpのバンドが得られた(図15)。図15の上段泳動図において、矢印はITS領域増幅産物のバンドを示す。C及びfの胞子では、同バンドは検出されなかった(*印で示す)。残り8胞子については、バンドの出現によりDNAの存在が示された。図15の下段泳動図は、230PBCを用いたサザンハイブリダイゼ—ションの結果を示す。DNAが得られた8胞子について、230PBCとハイブリダイズする235bpのバンド(矢印)が得られた。
【0118】
【表2】
JP0003694739B2_000003t.gif
【0119】
以上の核酸分析等の解析により、緑化現場の土壌より採取したVA菌根菌と接種菌との同一性を確認することができた。
よって、前記分析手法により、特定系統のVA菌根菌を迅速に同定できることが確かめられ、緑化現場での接種VA菌根菌の土壌中での挙動を把握できることが判明した。
【0120】
よって、定期的に土着菌と接種菌とを比較することにより、種々の菌が混在する場合であっても、特定の菌をスクリーニングすることが可能であることが分かり、接種菌の土壌中での挙動を把握することができることが判明した。
【0121】
【発明の効果】
本発明の菌類の識別法によれば、同種内での異系統間の菌類を識別できるという有利な効果を奏する。
【0122】
また、本発明の菌類の識別法によれば、アイソザイム分析及び核酸分析によって、より精度よく菌類の同一性を判定することができ、ひいては、土壌に接種した場合の菌類の挙動を定期的に把握することもできるという有利な効果を奏する。
【0123】
【配列表】
<110>山口大学長
<120>菌類の識別方法
<130>U2001P063
<160>2
<210>1
<211>235
<212>核酸
<213>Gigaspora margarita C株
<400>1
gagggtggcg gttcttttat gacaacaata acaaaaagac caagaaagat ttataactcc 60
gaaagtggtt tctctcaaat aactaccgca atacttacat tctattcaat agtaaaagga 120
gggcggagta taacgacttc tacttacaac atctccatca tcatctaacc atttatcgca 180
tttttcgcag tagcgagtgt attgccaagt tgtggggtca tcttggcatt aggta 235
<210>2
<211>45
<212>核酸
<213>Gigaspora margarita MAFF520054
<400>2
ctaaccattt atcgcatttt tcgcagtagc gagtgtattg ccaag 45
【図面の簡単な説明】
【図1】 種々の酵素を用いたアイソザイム分析から得られたザイモグラムを示す図である。
【図2】 Gigaspora 属の5.8SrDNA及びITS領域の塩基配列に基づく分子系統樹を示す図である。
【図3】 M13/639Rプライマーによる各種胞子のPCR産物の比較を示す図である。
【図4】 G. margarita MAFF520054株を識別するためのプローブの一例を示す図である。
【図5】 プローブと、各菌類由来のPCR産物とのハイブリダイゼーションを示す図である。
【図6】 プローブと、各菌類由来のPCR産物とのハイブリダイゼーションを示す図である。
【図7】 各種VA菌根菌胞子の形態的特徴を示す図である。
【図8】 G. margarita MAFF520054の胞子の自家蛍光を示す図である。
【図9】 Gigasporaceaeの各種胞子の自家蛍光を示す図である。
【図10】 Glomaceae 及びAcaulosporaceaeの胞子の自家蛍光を示す図である。
【図11】 G. margarita MAFF520054の胞子壁およびsubtending hyphaeに対するCW及びWGAの反応を示す図である。
【図12】 Gigaspora rosea MAFF520062の胞子壁及びsubtending hyphaeに対するCon Aの反応を示す図である。
【図13】 Glomaceaeの胞子壁およびsubtending hyphaeに対するCW及びFITC結合レクチンの反応を示す図である。
【図14】 VA菌根菌を導入した緑化施工区より採取されたVA菌根菌胞子の特徴を示す図である。
【図15】 プローブと、緑化施工区の土壌より採取されたVA菌根菌胞子由来のPCR産物とのハイブリダイゼーションを示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14